TMT計画の状況
1
① 太陽系外に生命存在の兆侯を探る
② 初代星・初代銀河の検出を目指し、宇宙における構造形成の起源に迫る
③ 宇宙膨張の直接測定に挑戦し、ダークエネルギーの性質の解明をめざす
学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会(平成28年3月24日)
自然科学研究機構 国立天文台
資料3-1 科学技術・学術審議会 学術分科会研究環境基盤部会 学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会(第51回) H28.03.2430m光学赤外線望遠鏡(TMT)計画
【建設概要】
1.44m 六角鏡492枚+交換用82枚
日本の建設費375億円+国内経費40億円
2018(平成30)年度 山頂建設再開予定
2027(平成39)年度
完成予定
(当初2023年度)
日本(自然科学研究機構) 、中国(国家天文台)、インド(TMT連携機構)
米国(カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、米国天文学大学連合)
カナダ(天文学大学連合)
【日本の分担】
望遠鏡本体の製造・組立
主鏡材574枚の製作
主鏡材175枚の研磨
第一期観測装置の一部製作・組立
分担金 (TMT国際天文台運営費等)
2
日本 米国 カナダ 中国 インド 山頂施設 ○ ○ ○ ○ ○ 山麓施設 ○ ○ ○ ○ ○ ドーム ○ 望遠鏡製作・組立 ○ 主鏡材 ○ 主鏡研磨 ○ ○ ○ ○ 主鏡支持機構 ○ 副鏡 ○ 第三鏡 ○ 鏡洗浄蒸着機構 ○ 主鏡制御 ○ ○ 望遠鏡制御 ○ ○ 補償光学 ○ レーザー ○ 観測装置 ○ ○ ○ ○ ○ 天文台運営費等 ○ ○ ○ ○ ○【
建設における役割分担
】
建設スケジュールの変更について
• 建設地情勢による遅れ:
山頂建設工事を2015(平成27)年4月より開始する予定であ
ったが、反対運動の活発化及びハワイ州最高裁判所による保護
地区利用許可(CDUP)を無効とする判決(同年12月)を受け、
建設に必要な同許可の再審査が必要となった。現状、2018(平
成30)年4月の工事再開を目指している。なお、これにより完
成は2027(平成39)年となる。
• 技術的要因による遅れ:
望遠鏡の現地据付作業として、国際詳細設計審査会において
当初の24ヶ月に対して、日本が示した32ヶ月が適当であると
判断され、山頂工事日程を8ヶ月延伸する。
3
下記の理由により当初計画よりスケジュールに遅れが発生し、
2027(平成39)年10月の完成となる見込み
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028
国際協力枠組形成
建設
運用
マイルストーン
日本:望遠鏡本体
▼2014.10 起工式、現地建設開始「TMT計画」の建設スケジュールの延伸(案)
年度 延伸後 詳細設計、製造、輸送、据付・調整 完成▼ 当初予定 H28.3.24 ▼2018.4 現地建設開始 ▼2016.2 CDUP認可手続き開始 ▼2017.1~5 CDUP再認可 ▼2014.5 TMT国際天文台設立日本:主鏡
鏡材製造、主鏡研磨・外形加工・支持機構搭載 • 土地利用許可の再審査に伴い、ハワイ現地の建設は2018(平成30)年度に開始となるため、カナダのドーム 建設工程にあわせ、日本の望遠鏡本体の製造開始時期を見直し。 • 全体工程の後年への移行に伴い、完成年度が2027(平成39)年度に延伸。 • 米国・中国・インドについても、関連する部品の輸送・据付が2027(平成39)年度まで延伸。 完成▽ 詳細設計、製造、輸送、据付・調整 鏡材製造、主鏡研磨・外形加工・支持機構搭載日本:観測装置
設計、製造、輸送、据付・調整設計、製造、輸送、据付・調整 ▼2022.8 ドーム外装完成 ▼2025.4 主鏡搭載開始ハワイ現地建設をめぐる動き
• 2014年10月:起工式
抗議活動により一時中断
• 2015年4月:反対運動の活発化に伴い、山
頂工事を中断
• 2015年5月:ハワイ州知事がTMT支持とマ
ウナケア管理方針を発表
(p12~13参照)• 2015年6月:工事再開を予定したが、反対
派の道路閉鎖などにより中断
• 2015年11月:ハワイ州警察の協力のもと工
事再開を予定したが、ハワイ州最高裁から
工事一時停止命令
• 2015年12月:ハワイ州最高裁が承認手続の
瑕疵を理由に保護地区利用許可(CDUP)を無
効とし、審査を差し戻す判決
(p14~16参照)• 2016年2月:ハワイ州土地・天然資源委員
会(BLNR)に審査が差し戻され、委員会が手
続きを開始
5
2015年4月
2015年6月
ハワイ州最高裁判決の内容
「土地・天然資源委員会(BLNR)が
公聴会を開く前に条件付き
とは言え、保護地区利用許可(CDUP)を出したのは不適切
で、
許可は有効とはならない。我々は 土地・天然資源委員会が承認
した利用許可と(それを有効とした)巡回裁判所の判断を無効と
し、
土地・天然資源委員会あるいは新たな審査官の面前で、また
は 本判決に従った別の手続きにより公聴会が開催されるよう差
し戻し
をおこなう。」
6
※最高裁で無効とされた巡回裁判所(2014年5月)での主な判決内容
BLNRが公聴会開催前に条件付CDUPを認可したことは、CDUP無効の根拠にはあたらない。
原告による「ハワイ州規則で定められた保護地区利用のための8要件(p15参照)に違反し
ている」という主張は認めるに足る理由がなく、CDUP無効の根拠にはあたらない。
ネイティブ・ハワイアンの慣習的・伝統的プラクティスに関連したBLNRの判断に明白な誤
りはなく、CDUP無効の根拠にはあたらない。
認可されたCDUPは既に適切なマウナケア包括管理計画(CMP)の影響下にあり、原告が求
めるような新たな管理計画を策定する必要はない。
マウナケア天文台をめぐる動き
7
○1990年代後半からマウナケアの天文台に対して以下を理由とした反対運動が展開されてきている
① 聖なるマウナケア山頂に望遠鏡を建設すること【対応策:下記a, c, e, f 】
② マウナケアの生態系や環境の破壊のおそれがあること【下記c, d, f】
③ ハワイ大学によるマウナケアの管理が不適切であること【下記b, d 】
④ マウナケア山頂の天文台の数が一向に減らないこと【下記d】
○地元住民に向けた取り組み
a. 2000年代から、地元コミュニティとの交流、教育・普及事業、地元学生向けインターンシップ
等を開始(Journey through the Universe、Astro Day、Onizuka Day、Akamai Program、
Huiana Programなど)(p19参照)
b. 2000年、マウナケアの管理体制改善のため、マウナケアを管理するマウナケア管理事務所
(OMKM)とハワイの文化について助言をおこなうネイティブ・ハワイアンのメンバーからなる
諮問会議(カフクマウナ)をハワイ大学ヒロ校に設置
c. 2006年、
天文学とハワイ文化に関する一般向けの教育施設として、イミロア天文学センター
(p20参照)
を設立
(国立天文台もその設立と運営に貢献:4D2Uシアターの導入、天文学振興
財団からの毎年の寄付)
d. 2009年、ハワイ大学は国立天文台ハワイ観測所および他のマウナケアの天文台と協力してマウ
ナケア包括管理計画(CMP)を策定
e. 10年ほど前より、国立天文台ハワイ観測所では
ハワイの文化を学ぶセミナーを実施
(p21参照)
f.
2016年1月より、
地元住民向けの山頂の天文台の見学会を定期実施
(p21参照)
ハワイ州世論は引き続きTMT建設支持
•
2015年10月(最高裁判決前)
TMT国際天文台 世論調査
Ward Research Inc. が実施、回答数 613※
「マウナケアでのTMT建設を進めるべきか?」
賛成 62%
反対 29%
(ネイティブ・ハワイアンに限定すると賛成44%、反対49%)
•
2015年12月28日~2016年1月9日(最高裁判決後)
Honolulu Star-Advertiser紙世論調査
Ward Research Inc. が実施、回答数 619 ※
「マウナケアでのTMT建設を進めるべきか?」
賛成 67%
反対 27%
(ネイティブ・ハワイアンに限定すると賛成39%、反対59%)
8
※誤差は4%程度
TMTとして地元住民の
理解を得るためにおこなってきた活動
9
① 2007年よりTMT国際天文台評議員会Henry Yang議長(カリフォルニア大学
サンタバーバラ校学長)を始めとするTMT関係者が数十回にわたりハワイを
訪問し、現地の様々な方々との対話を通して課題の整理と対応策を検討
その結果、地元に直接貢献する対策として以下を実施することを決定
土地使用料(毎年100万ドル規模)を主にマウナケアの管理・保護に利用
ハワイ島の子供の科学・技術教育を支援する奨学基金(THINK Fund:
p22~23参照)を創設(2014年11月:毎年100万ドル規模の貢献)
科学・技術教育促進のイベントを後援(p24参照)
② 2007年よりTMTのスタッフが現地滞在(オフィス:国立天文台ハワイ観測
所)し、地元住民との対話を継続して理解を得るよう活動
③ 国立天文台ハワイ観測所のTMTに対する協力
地元住民との対話やコミュニケーション方法について、すばる望遠鏡の建
設時の経験を基に助言
ハワイ文化を学ぶセミナーや地元住民を対象とした見学会を通して、ネイ
ティブ・ハワイアンの方々との交流や相互理解を深めることに寄与
今後の対応・予定
2015年12月、各パートナー機関とも保護地区利用許可
(CDUP)の再取得を目指す方向で合意し、検討を開始。12月
に電話会議でTMT国際天文台の臨時評議員会を3回開催した上
で、2016年2月3~4日の定例評議員会にてCDUPの再取得をめ
ざすことを合意した。(CDUP再取得までに要する時間と手続
き、また今後考えられるリスクとそれへの対応策も合意し、現
在実行中)
CDUPの手続はハワイ大学とハワイ州土地・天然資源委員会で
行われるが、
TMT国際天文台としても迅速円滑に進むよう積極
的に関与
(例:公聴会での説明等)をしていく。
今後とも地元の理解を得る取組を進めていく。
10
参考資料
D. Ige ハワイ州知事の声明(2015年5月)
12
TMT建設への支持を表明すると共に、マウ
ナケア保護区のより適切な管理のために、
ハワイ大学への10項目の要請を発表した。
1. 今後、より適切な業務を行う責任を負う。
2. これがマウナケア山頂で望遠鏡計画が検
討される最後のエリアであるという約束
について、正式にそして法的にも義務を
負う。
3. TMTが運用されるようになる時までに、
既存の全ての望遠鏡のうちできるだけ多
くの望遠鏡(少なくとも25%)を解
体・廃棄する(本年より開始する)。
ほか7項目
ハワイ大学の対応
マウナケア管理責任改善のためのアクションプランの概要を発表(2015年6月)
13
CFHT
Gemini
IRTF
Keck I, II すばる
SMA
JCMT
CSO
UKIRT
UH2.2m
UH0.9m
VLBA
※この写真では見えない赤字で示した望遠鏡の撤去が決定
• TMT計画の建設用地を、マウナケアにおける望遠鏡計画として最後の新
規天文台建設地とする。
• TMT運用開始前に既存の望遠鏡のうち25%を撤去し土地を回復させる実
施計画を2015年末までに発表する。
既存望遠鏡のうち以下の3台を解体・撤去することを発表(~2015年10月)
• CSO(2009年に発表済み)
• UH0.9m(2015年7月)
• UKIRT(2015年10月)
TMT建設に要する行政手続き
(1)
環境影響評価(EIS)
:
2008年9月手続き開始、2010年5月承認
(2) 建設のための
保護地区利用許可(CDUP)
:
2010年9月申請、2013年4月承認
(3) 土地の
転貸借許可(サブリース)
:
2014年5月申請、同年7月承認
マウナケア山頂の科学保護地区全体は、ハワイ大学がハワイ州
から借り受けて管理を行っている。
上記の手続は、ハワイ大学がハワイ州の土地・天然資源委員会
(BLNR)に申請し承認を得る。
TMTの建設に必要な行政手続は全て完了していた
14
裁判の詳細
ハワイ州土地・天然資源委員会 (BLNR) によるTMT計画の保護地区利用許可(CDUP) 承
認に関する異議申立
被上訴人: BLNR、土地・天然資源局 (DLNR)、DLNR局長、ハワイ大学ヒロ校 (UHH)
15
【主な争点】
CDUPに関する公聴会 (contested case hearing) が未開催のままBLNRがCDUP
を認可したことから、適正な手続きが行われたのかという点
保護地区利用申請(CDUA)が、保護地区の開発許可に必要な8要件に適合してい
たかどうかという点(8要件とは、① 保護地区の目的、② 利用地の目的、および
③ 沿岸域管理規則に準じていること。④ 現存する天然資源に重大な悪影響をおよ
ぼさないこと。⑤ 周辺地域に悪影響をおよぼさないこと。⑥ 物理的・環境的な現
況を維持すること。⑦ 土地利用を細分化したり強化したりしないこと。⑧ 公衆衛
生・安全性・福祉に対して重大な悪影響をおよぼさないこと)
CDUPは適切ではないマウナケア包括管理管画(CMP)の下にある点
文化的、天然、歴史的資源への影響の分析と軽減策が不完全な点
保護地区利用許可と裁判の経緯
16
年月日 動き
2008 10月 環境影響評価 (Environmental Impact Statement;EIS) についての意見聴取会を7回開催 2009 5-6月 環境影響評価案提出、一般公聴会を開催
7月 TMT計画が建設候補地としてマウナケアを選定 2010
5月 環境影響評価をハワイ州が承認
9月 ハワイ大学ヒロ校が、TMTへの保護地区利用申請 (Conservation District Use Application: CDUA) をハワイ州に提出
2011 2月
ハワイ州土地・天然資源委員会 (BLNR) は、係争が発生した場合にはBLNRがそれを解決し 最終承認するまでは建設を開始できない等の条件付で保護地区利用許可 (Conservation District Use Permission: CDUP) を承認
8-9月 合計で7回にわたるCDUPに関する公聴会を開催 2012 11月 審査官(Hearing Officer)がCDUP認可を提言する報告書をBLNRに提出 2013 4月12日 BLNRがTMT計画にCDUPを認可する決定を発表 5月13日 反対派が巡回裁判所に、BLNRによるTMT計画のCDUP認可に対する異議申立 2014 5月5日 巡回裁判所(Judge Nakamura)がBLNRによるCDUP認可を支持する最終決定を発表 6月3日 反対派が巡回裁判所による決定を不服として中間控訴裁判所(ICA)に控訴【⇒ICAは保留】 2015 6月5日 反対派の申請をうけ、ハワイ州最高裁判所(HSC)がICAからHSCへ移送することを承認 12月2日 HSCがBLNRによるTMT計画のCDUPを無効とする判決
17
TMT建設許可承認までの取組み
環境影響評価の公聴会(2009年6月)
環境影響評価(EIS)
山頂の景観へ与える影響も評価されている
地元でのTMT支持のキャンペーン(2013年2月)
ハワイ州最高裁の判決を受けての反応
• ハワイ州知事 David Ige 古く旧式の機器を新しいものと交換するための既存望遠鏡用地の再開発と同様に、マウナケア山頂の30メートル望遠鏡(TMT) の建 設を支持する(2015年12月17日) 最高裁判決はTMT計画を否定しているわけではなく、州の承認プロセスに問題があると言っているのであり、人々の話を聞く実質的 な機会をもつことを求めている。(2016年1月25日)• Richard Naiwieha Wurdemann(反対派の弁護人)
反対派は、あらゆる点について本案件の申立をおこなうことを計画している。例えば、なぜ UHH が TMT の代わりにCDUPの申請を おこない許可を受ける権利を有しているのか、等。 • Kealoha Pisciotta(反対派) 我々が誠実な対話を持てるのであれば、何かしらの妥協点が見いだせるのかもしれない。恐らくこれまでには考えようもなかった妥 協点である。しかし、TMT側は基本的な質問に対してオープンでなければならない。 • ハワイ人関連問題事務局(OHA) OHAは最高裁の判決を尊重する。我々にとって最優先なのは、ハワイのすべての人々のために責任をもってマウナケアを確実に管理 するということと、この神聖な山に崇敬の念を持ち続けるということである。OHAはすべての関係者に対し、憲法や州の法律、規則 で定められているように責任をもってマウナケアを管理し、我々の伝統上および慣習上の権利やプラクティスを保護するよう求め続 ける。我々の土地や文化的資源を守るために確実に適正な手続きがとられるよう最高裁が監視してくれたことに、OHAは感謝してい る。
• Kona-Kahala商工会議所会頭 Kirstin Kahaloa
もしTMTが建設されないこととなれば、ハワイ州はもう天文学研究を招きたくない、という強烈なメッセージを発信することになる だろう。最高裁の判決により、ハワイ州はビジネスの地として最悪の州だという汚名は増強される。 • ハワイ島商工会議所副会長 Bill Walter システムが非常に複雑で、州政府さえも決定のための明確な手段を我々に示すことができないということがわかった。政府がプロセ スを定義し、それに従ったにもかかわらず政府が拒否するようなプロセスをベースにした決定は、まさにガバナンスの失敗である。
18
ハワイ島での教育・普及事業
Journey through the Universe
(2月〜3月の10日間)
主催: Gemini Observatory,
DOE(教育委員会), `Imiloa など
Janice Harvey
(Gemini)
学校訪問授業(約8,000人の生徒)
教師とのワークショップ(約100人)
ファミリー・サイエンス・ナイト
国立天文台ハワイ観測所やTIOからも参加
19
イミロア天文学センター
`Imiloa Astronomy Center of Hawaii
1990年代に、マウナケア山頂の天文台群とハワイ文化を保護しよう とする人たちとの対立が表面化した。これに心を痛めた故ダニエル・ イノウエ上院議員が、互いをよく理解することで対立を緩和し、ハワイ の将来を担う子どもたちのためにと、連邦政府から2800万ドルの予 算を得て、2006年にイミロア天文学センターの設立に至った