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三次元連通気孔構造ハイドロキシアパタイトを用いた骨造成術 - 新たに歯科領域での使用が認められた ネオボーン の臨床応用 - 堤一純堤デンタルクリニック ( 大阪府 ) 公設国際貢献大学校教授 ( 国際保健医療学部 ) HA -TCP HA -TCP The Journal of Oral Impl

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Academic year: 2021

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(1)

インプラント治療において骨造成術や

骨増大術の応用は不可欠な要素となって

きた。それに伴い、骨移植材の需要も高

まっているのは確かである。しかし、国

内では許認可の下に使用できる骨移植材

は限られている。最も安全で有効な骨移

植材は自家骨であるとされているが、自

家骨を使用する場合は、患者の外科的侵

襲も増し、ドナーサイトなどにも制限が

あり移植骨が無尽蔵に採取できるわけで

はない。そのような背景の中、歯科医は

有効な骨移植材を求めて、各々の責任の

範囲で国内外の骨移植材を入手し、臨床

応用しているのが現状である。また、そ

れらの骨移植材の中にはヒト由来や動

物由来の材料も含まれており、確率は低

いものの未だ感染等の可能性の問題が指

摘されている。そこで、化学合成された

骨補填材であるハイドロキシアパタイト

(HA)や β-TCP などが脚光を浴びてくる

ことになるが、これまで用いられてきた

HA は高密度焼結体であり、内部空隙もほ

とん ど存在しないことから骨に置換する

ことはなかった。β-TCP においては歯科

用として許認可を受けた材料はなく、入

手可能ではあるものの、臨床使用時には

吸収速度が速すぎて必要な骨量が期待す

るほどには得られなかった。

そんな中、株式会社エム・エム・ティー

(本社:大阪)から歯科用として許認可を

受けた新しいタイプの三次元連通気孔構

造ハイドロキシアパタイトの骨補填材「ネ

オボーン」が発売された。本稿では、こ

の「ネオボーン」を使用した骨造成術を

供覧し、その実力を検証したい。

(2)

ネオボーンの特徴と特性

ネオボーンは骨組織の主成分である

ハイドロキシアパタイトの単一成分で

構成された骨補填材で、整形外科領域

に登場した 2003 年 9 月以降、その臨床

現場で良好な成績をおさめている。HA

自体の生体親和性や骨伝導能について

は周知のとおりなので割愛するが、従

来の HA 補填材と大きく異なる部分は、

三次元連通気孔構造という形状にある。

独自の成形技術である「起泡ゲル化技

術」を応用することで、直径 150µm の

多数の気孔が連なり、さらに連なった

気孔同士が平均直径 40µm の気孔間連

通部によって交通した多孔体構造を有

している(図 A、B)。この多孔体構造

によって、骨内への移植後はネオボー

ンの内部にまで組織細胞が進入して新

生骨の形成を促進する内部骨形成を実

現している。つまり、補填材の内外で

骨伝導能を発揮することで、極めて強

力な骨再生のメカニズムが働くと考え

られる。

また、72%∼ 78%という気孔率を持

ちながら圧縮強さは

12 ∼ 18MPa(代

表値)と海綿骨の数倍程度の適度な強

度も有しており、取扱いも容易である。

歯科用としては、1 ∼ 2mm の球状タイ

プ(図 A)と 0.5 ∼ 1mm の顆粒タイプ

(図 C)が販売されている。

図 A:球状タイプのネオボーン(左)とその表面の SEM 像(右:倍率 35 倍)。 図 C:顆粒タイプのネオボーン(左)とその表面の SEM 像(右:倍率 35 倍)。 図 B:三次元連通気孔構造の模式図。 気孔間連通部 気孔 (株)エム・エム・ティー提供 (株)エム・エム・ティー提供 (株)エム・エム・ティー提供

(3)

ネオボーンの臨床応用

CASE 01 上顎臼歯部への大規模な骨造成

図 01-01:下顎のインプラント治療を希望して 来院された初診時のパノラマ X 線像(2007 年 6 月)。右側上顎結節部にインプラントが植立さ れ、磁性アタッチメントが装着されていた。上 顎残存歯は予後不良のため抜歯対象であった。 図 01-04:下顎のインプラント治療後のパノラ マ X 線像。上顎は粘膜および右側上顎結節部 のインプラントに支持を求めた床義歯にて対 処した。 図 01-02:下顎のインプラント治療がインテグ レーションを獲得し、上部構造装着前の口腔 内所見(2007 年 10 月)。 図 01-05:下顎のインプラント治療が快適で あったことを理由に、上顎へもインプラント 治療を希望された。 図 01-03:下顎のインプラント上部構造装着後 の口腔内所見(2007 年 10 月)。 図 01-06:上顎の CT 断層像(右側大臼歯部)。 上顎洞底部から歯槽頂までの骨量はほとんど なかった。 図 01-07:上顎の CT 断層像(右側小臼歯から 犬歯部)。上顎洞底の含気化が著しく、上顎洞 は犬歯の上部まで拡がっていた。 図 01-08:上顎の CT 断層像(前歯部)。上顎 洞底の含気化が右側前歯部にまで拡がってい る上に、大きな切歯孔が存在した。前歯部へ のインプラント埋入は困難と診断した。 図 01-09:上顎の CT 断層像(左側臼歯部)。 洞内病変が認められ、サイナスリフトの先立 ち副鼻腔炎根治術が必要であった。また、洞 底骨は一部存在していなかった(赤枠)。

(4)

図 01-10:CT データから製作した上顎 3D モ デル。左側臼歯部歯槽骨の陥凹が著しい。 図 01-12:上顎右側臼歯部のラテラルアプロー チのサイナスリフト術を示す。切開時の口腔 内所見。 図 01-15:使用したハイドロキシアパタイト骨 補填材「ネオボーン」。 図 01-18:ネオボーンの填入が完了した口腔内 所見。 図 01-16:骨移植材としては、PRP を混合し た形状の異なるネオボーンを準備した。 図 01-19:填入したネオボーン上をメンブレン で被覆した。 図 01-13:粘膜骨膜弁を剥離し、骨開窓部に骨 溝を形成した。 図 01-14:慎重に洞粘膜を挙上した。 図 01-17:PRP を混合したネオボーンを洞内 へ填入していく。 図 01-20:メンブレンを固定用ピンで固定する。 図 01-11:CT データから製作した上顎 3D モデル の洞内観。左側は一部骨が存在していなかった。 Steged approach による骨造成が必要と判断し、 左側臼歯部はオンレーグラフト、右側臼歯部はラテ ラルアプローチのサイナスリフトを計画した。

(5)

図 01-21:上顎左側臼歯部のオンレーグラフト の骨造成術を示す。切開時の口腔内所見。 図 01-24:脱灰乾燥骨のブロックをスクリュー で固定した。 図 01-27:縫合が終了した状態。 図 01-30:術後約 5 ヵ月のパノラマ X 線像。 図 01-22:オトガイ部からの骨ブロックの採取は患 者の同意が得られなかったため、移植骨には患者の 同意を得た上で脱灰乾燥骨のブロック(LifeNet 社) を使用した。 図 01-25:移植した脱灰乾燥骨のブロックの周 囲にネオボーンを填入して自然な造骨形態を 形成した。 図 01-28:術後約 5 ヵ月の口腔内正面観。 図 01-23:脱灰乾燥骨のブロックを所定の位置 に適合させた状態。 図 01-26:脱灰乾燥骨のブロックおよびネオ ボーンをメンブレンで被覆した。 図 01-29:術後約 5 ヵ月の口腔内上顎咬合面観。 図 01-31:術後約 5 ヵ月の上顎右側大臼歯部 付近の CT 断層像。

(6)

図 01-33:術後約 5 ヵ月の上顎前歯部付近の CT 断層像。 図 01-34:術後約 5 ヵ月の上顎左側犬歯部か ら小臼歯部付近の CT 断層像。 図 01-35:術後約 5 ヵ月の上顎左側大臼歯部 付近の CT 断層像。 図 01-36:術後約 5 ヵ月でインプラント埋入 を行った。インプラント治癒期間中の暫間義 歯を支持する目的で残していた右側上顎結節 部のインプラントを撤去する。 図 01-39:粘膜骨膜弁剥離時の口腔内所見。 図 01-37:撤去したインプラント。 図 01-40:小臼歯部はインプラントの初期固定 を得るためにオステオトームを使用してイン プラント床形成を行った。 図 01-42:埋入したインプラント周囲に再度ネオ ボーンを補填した。 図 01-38:上顎右側臼歯部からインプラントの 埋入を行った。切開時の口腔内所見。 図 01-41:通法に従いインプラントの埋入を 行った。 図 01-32:術後約 5 ヵ月の上顎右側小臼歯部 から犬歯部付近の CT 断層像。

(7)

図 01-43:上顎左側臼歯部のインプラント埋入 手術を示す。粘膜骨膜弁を切開・剥離した口 腔内所見。 図 01-46:骨開窓が完了した口腔内所見。 図 01-49:インプラント床を形成したら、洞粘 膜挙上部にネオボーンを填入した。 図 01-44:脱灰乾燥骨のブロックを固定してい たスクリューを除去した。 図 01-47:慎重に洞粘膜を挙上した。 図 01-50:通法に従いすべてのインプラントを 埋入した。 図 01-45:上顎左側臼歯部はオンレーグラフト を行い、初期固定を得られるだけの骨量は確保 できたが、さらに垂直的骨量を確保するために ラテラルアプローチのサイナスリフトを併用し てインプラントの埋入を行うこととした。ラウ ンドバーを用いて骨開窓部に骨溝形成を行う。 図 01-48:洞粘膜を十分に挙上したらインプラ ント床を形成しインプラントを埋入する。初期 固定を得るためにオステオトームを使用した。 図 01-51:埋入したインプラント周囲にもネオ ボーンを補填し、骨開窓部とともにメンブレン で被覆した。 図 01-52:縫合が終了した上顎咬合面観。 図 01-53:上部構造装着後のパノラマ X 線像。

(8)

図 02-02:21 12 部欠損症例で唇側骨板全 体に陥凹が認められた。また 2 部は唇側骨板 に裂開が存在した。 図 02-05:21 12 部の唇側骨板陥凹部およ び 2 部の裂開部にネオボーンを填入し、人工 硬膜で被覆した。 図 02-03:21 12 部にインプラント埋入後 の口腔内所見。2 部は唇側骨板裂開部からフィ クスチャーが露出している。 図 02-01:術前のパノラマ X 線像。 図 02-07:インプラント埋入後のパノラマ X 線 像。 図 02-06:縫合が終了した口腔内上顎咬合面観。 図 02-04:GBR のメンブレンには人工硬膜(グ ンゼ株式会社)を使用した。この人工硬膜は適 度な強度を有しており、一定の期間が経過する と生体内に吸収される。トリミングを行った上 で、基底骨付近にピンで固定した。 図 02-08:上部構造装着後の口腔内正面観。 図 02-09:上部構造装着後の口腔内咬合面観。

(9)

ネオボーンに関する主要な文献 文献請求先 株式会社エム・エム・ティー 〒 540-0008 大阪市中央区大手前 2-1-2 TEL. 06-6941-8255 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9)

Tamai N, et al.: J. Biomed. Mater. Res. 59, 110-117, 2001. 玉井宣行 他:関節外科,21, 1272-1278, 2002.

玉井宣行 他:Orthopaedic Ceramic Implants, 21, 21-24, 2001.

Myoui A, et al.: In Wise DL (ed). Biomaterials Handbook -Advanced Applications of Basic Sciences and Bioengineering. pp427-440, Marcel Dekker. New York, NY, 2003. 名井 陽 他:Orthopaedic Ceramic Implants, 21, 103-106, 2001.

名井 陽 他:臨床整形外科,36, 1381-1388, 2001. 藤井昌一 他:日本整形外科学会雑誌,77, S67, 2003. 名井 陽 他:日本整形外科学会雑誌,77, S129, 2003. 赤川安正 他:日本口腔科学会雑誌,56, 400-104, 2007.

おわりに

ネオボーンは従来の骨補填材とは大

きく異なる。ネオボーンの三次元連通

気孔構造が毛細管現象を引き起こし、

PRP がすばやく浸透していくのを見る

と驚きすら覚えるほどである。PRP と

の相性は非常に良く、GBR やサイナス

リフトをネオボーンと PRP のみで行っ

ているが、すべて良好な臨床結果を得

ている。

自家骨採取の必要性は、ブロック骨

の移植以外は全く必要としなくなり、患

者のみならず術者の負担も軽減し、手術

時間の短縮にも大きく貢献している。

ネオボーンを補填した部位は、補填

直後においてその気孔率の高さから X

線透過性を示す。しかし、2 ヵ月後あ

たりから X 線透過性は低下して徐々に

周囲骨と同様の X 線透過性を示してく

る。これは、まさにネオボーンの周囲

だけでなく内部にまで骨形成に起因す

る細胞が進入して、新生骨の形成を促

進していると考えられる。X 線不透過

性を示す従来の焼結体 HA とは異なり、

ネオボーンは空洞球を呈した気孔体の

内外に線維性骨あるいは仮骨の形成を

早期に達成させるものと思われる。骨

の欠損部にただ補填するという感覚で

はなく、骨が再生するための足場を効

率よく提供しているという実感を得て

いる。長期症例の経過を見ると、経時

的に X 線透過性が周囲骨とほぼ同等と

なり、その後は周囲骨とともに骨硬化

も進んでいることから、骨のリモデリ

ングを阻害していないどころか、リモ

デリングのメカニズムに順応している

のではないかとも思われる。

ネオボーンは保険適用の指定を受け

ており、購入価格は 1g 6,480 円(税別)

と他の骨補填材よりもかなり安価であ

る。

歯科医療で使用する骨補填材は、整

形外科領域などと異なり炎症部位や病

変除去部位に使用されることも多い。

それだけに材料としての条件はハード

ルも高い。骨再生が行われるための基

本的な条件を無視して使用すると、良

好な結果が得られないケースも増える

可能性がある。そのような結果が、材

料自体の信頼性に波及し、使用するこ

と自体に影響を及ぼすようなことだけ

は避けたいと考える。国内初の有用性

の高い骨補填材の登場は朗報であり、

今後はより安全で低侵襲の骨造成術を

模索していきたい。

筆者紹介

堤 一純

(理学博士) 堤デンタルクリニック 院長 公設国際貢献大学校 教授(国際保健医療学部)

図 01-10:CT データから製作した上顎 3D モ デル。左側臼歯部歯槽骨の陥凹が著しい。 図 01-12:上顎右側臼歯部のラテラルアプロー チのサイナスリフト術を示す。切開時の口腔 内所見。 図 01-15:使用したハイドロキシアパタイト骨 補填材「ネオボーン」。 図 01-18:ネオボーンの填入が完了した口腔内 所見。 図 01-16:骨移植材としては、PRP を混合した形状の異なるネオボーンを準備した。図 01-19:填入したネオボーン上をメンブレンで被覆した。図 01-13:粘膜骨膜弁を剥離し、
図 01-43:上顎左側臼歯部のインプラント埋入 手術を示す。粘膜骨膜弁を切開・剥離した口 腔内所見。 図 01-46:骨開窓が完了した口腔内所見。 図 01-49:インプラント床を形成したら、洞粘 膜挙上部にネオボーンを填入した。 図 01-44:脱灰乾燥骨のブロックを固定していたスクリューを除去した。図 01-47:慎重に洞粘膜を挙上した。 図 01-50:通法に従いすべてのインプラントを埋入した。図 01-45:上顎左側臼歯部はオンレーグラフトを行い、初期固定を得られるだけの骨量は確保できたが、さらに
図 02-02:21 12  部欠損症例で唇側骨板全 体に陥凹が認められた。また  2  部は唇側骨板 に裂開が存在した。 図 02-05:21 12  部の唇側骨板陥凹部およ び  2  部の裂開部にネオボーンを填入し、人工 硬膜で被覆した。 図 02-03:21 12  部にインプラント埋入後の口腔内所見。2 部は唇側骨板裂開部からフィクスチャーが露出している。図 02-01:術前のパノラマ X 線像。 図 02-07:インプラント埋入後のパノラマ X 線 像。 図 02-06:縫合が終了した口腔内上顎

参照

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