16 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 明治大学では,東日本大震災被災地をハード面とソ フト面で長期に支援する体制を作った。ソフト面では, 授業科目として学部間共通総合講座に,「東日本大震 災に伴うボランティア実習」(2 単位)を新設した。 ハード面では,液状化被害の激しかった千葉県浦安市 に浦安ボランティア活動拠点を設け,そこを中心に被 災地サポートのボランティア活動ができる体制を作っ た。この両輪を回転させることにより東日本大震災の 復興支援を行う仕組みを構築した。
Ⅰ.「東日本大震災に伴うボランティア実
習」の設置
明治大学では,東日本大震災関連のボランティア活 動に従事した学生に単位を認定する「東日本大震災に 伴うボランティア実習」を 2011 年度に開講した。こ れは全学部の学生が履修できる学部間共通総合講座と して設けた。被災地対象ボランティアへの単位付与は 全国でも数少ない例である。学生のボランティア参加 を後押しして震災被災地支援につなげるとともに,ボ ランティア活動を通じて学生の自主性や社会性を育む ねらいがある。同時に,経済の復興をサポートする経 済教育の意味合いも持たせた。 この講座では実際のボランティア活動のほか,事前 講義,事後講座(活動報告書の作成・提出,報告会で の発表)などを含めて計 60 時間以上の実習に従事し た学生に 2 単位を認定する。 5 月に開設し 7 月までを前期とした。そして 8 月以 降を後期講座とし,後期講座を夏休みコースと秋期 コースの 2 つのコースに分けて実行するものとした。 講座の構成としては次のようになっている。 【事前授業:事後授業と合わせて 20 時間】 授業の第 1 回〜第 3 回を事前に座学で行った。この 講座の説明を受け,ボランティアの在り方について学 ぶこととした。ボランティア経験者らを講師に招き, 学生たちに講義をしていただいた。また,受講生のグ ループ分けを行い,その後グループ単位でボランティ アの実践活動を行った。 【実践:40 時間】 ボランティア活動の実践について,2 つのステップ に分ける。 第 1 ステップ(16 時間):浦安事前研修 被災地では,自己満足的なボランティアは迷惑であ る。そこで東京近郊の被災地である浦安市において, その実践のための事前教育を行った。浦安市は液状化 により市民生活は混乱し,インフラや住宅が大きな被 害を受けた。まずそこで合計 2 日間(1 日 8 時間× 2 日)の実践を行った。 1 日目は浦安被災地調査である。被災地がどのよう な状況であるか,まず浦安で調査する。前述で決めた グループごとに浦安市内の調査を行った。浦安の実態 調査として,液状化の被害の現状を調べるとともに, インタビュー調査を浦安市民に行い,報告書にまとめ た。 2 日目は被災地浦安でのボランティア活動である。 東北や浦安といった被災地の商品を販売するサポート を行ったり,被災地浦安市民の要望に応じてのボラン ティア体験を行った。学生たちは,自分たちが事前に 考えていたボランティア活動の内容や,厳しさとは違 うことを実感した。 第 2 ステップ(24 時間):実際のボランティア実習 第 1 ステップを経験した受講者が第 2 ステップの コース 1 とコース 2 に分かれる。 コース 1:浦安でのボランティア活動をそのまま続け るコース ・浦安市の小中学校では震災後の 3 月の間授業がで きなかったためカリキュラムの補習支援を行う ・被災地の商品・産物を土日に販売(浦安市内)東日本大震災ボランティアを
通しての経済教育で
学生を育てる!
The Journal of Economic Education No.31, September, 2012Economic Education of Support for Revival after Japan Earthquake Disaster
Mizuno, Katsushi
水野 勝之(明治大学) The Japan Society for Economic Education
17 ・住宅や公的施設にたまった泥の撤去 ・浦安市民を元気づけるためのマジックショーなど のイベント ・その他 コース 2:東北現地でのボランティアを行うコース 岩手県大船渡市を訪問し,ボタンティア活動を行う。 大船渡市社会福祉協議会のボランティアセンターが募 集しているボランティアに参加するとともに,自分た ちの企画でのボランティアを行う。前者では津波の後 の片付け,整地作業,後者では独自の被災地サポート を行った。 【事後授業:事後授業と合わせて 20 時間】 *報告会 報告会でグループごとにボランティア活動について のプレゼンを行う。各グループとも持ち時間は 20 分 で,パワーポイントを使って報告した。 *レポート提出 これまでの報告書をまとめてレポートとして提出す ることとした。グループごとに作成した。 以上が構成である。2011 年度は,この講座を前期, 夏休み,後期の 3 回行った。2012 年度も同じ形で継続 している。
Ⅱ.浦安ボランティア活動拠点の設立
明治大学では,2011 年 5 月に震災復興支援センター を設立し,その事業の一環として千葉県浦安市に「浦 安ボランティア活動拠点」を設置した。これまで本学 会でも報告させていただいた空き店舗事業の応用であ る。今回の震災を受けて,液状化の激しかった浦安の 中の空き店舗を借りて,そこを拠点にボランティア活 動を行うこととした。浦安だけでなく,東日本大震災 で被災を受けた,さまざまな地域の復興支援を計画し ての設置である。学生が,都心から最も近い被災地浦 安市の復興をサポートしていくと同時に,大船渡市, 気仙沼市,郡山市等の東北各被災地の産品販売をこの 拠点で行う。ここを中心に,被災地間をつなぎ,長期 的な視野に立った復興支援を行うネットワークを築く。 この拠点でのボランティア活動は明治大学の大学生に よって実践される。 2011 年 6 月 5 日(日)にオープンした「浦安ボラン ティア活動拠点」の場所は,浦安の中でも最も液状化 の被害の大きかった今川である(千葉県浦安市今川 1-13-15)。活動時間は毎週 月・木・金・土・日の 10:00-18:00 とした。 そこでの活動内容は次のとおりである。 1.学生による浦安でのボランティア活動 市民から依頼のあった要望に対応していく。その要 請を受けてボランティアを行う。2011 年度は 8 月に明 海が丘夏祭り,9 月に今川祭り,新浦安祭りに参加し, 東北の被災地の物販販売を行った。 2.被災地(浦安市,東北各地域)との連携 東北被災地サポートマルシェ。基本的に毎週土日・ 各 9:30-12:00,16:30-18:00 にスーパーマーケッ ト K-fresh の店頭で東北被災地の商品を販売した。 2011 年 9 月からは午前のみとなったが,日曜日の午前 中は販売場所を,より多くの人の集まる浦安魚市場と した。 3.市内各小中学校での支援(子ども教育支援 のケース) 2011 年 3 月 11 日は拠点のある付近の小中学校が一 番被害を受けた。小中学校と連携し子どもたちの教育 支援を行った。Ⅲ.「経済教育」を中心に
経済教育からの観点では,東北被災地と浦安市との 間に経済の循環を作ることを目的に,学生がボラン ティア活動を行うこととした。東北被災地サポートマ ルシェと名付け,前述のように,浦安ボランティア活 動拠点に隣接するスーパーマーケットの前を借りて, 東北被災地の商品・産物を大学生が毎週土日継続的に 販売した。東北の経済活性・雇用を促進するためであ る。岩手県釜石市,大船渡市,福島県郡山市の商品を 中心に販売した。他方,地元浦安も経済が大きな被害 を受けているので,浦安復興のため,浦安の商品も販 売した。実行したのは,前述の「東日本大震災に伴う ボランティア実習」の受講学生に加えて,各学部のゼ ミナールの学生,明大ボランティアセンターから派遣 された学生である。 浦安は日本有数の所得の高いまちの一つである。地 方や外国から浦安に来た人たちが,東京ディズニーラ ンドだけでなく浦安市内のホテルなどでも支出を行い, 浦安は潤ってきた。東北の産品を浦安市内で販売し, 浦安に集まったお金を東北被災地に還元する仕組みを 作り上げる,つまり日本の新たな経済循環を作り上げ The Japan Society for Economic Education18 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 る,これを学生の力で実現したかった。このような経 済活動の一翼をになっているということを参加学生た ちは理解し,ボランティア活動に励んだ。まさに実践 的経済教育であると考えている。 浦安ボランティア活動拠点は,浦安の市民団体であ る NPO 法人好浦会(すきうらかい)が委託を受け, 運営している。学生の提案を基に好浦会が仕入れ,販 売をサポートする体制をとってきた。 6月の開店当初は,1日3万円の売り上げがあったが, 12 月,1 月ごろには 1 日 1000 円という日もあった。次 第に風化していく状況を大学生がそれを肌で感じるこ とができ,社会状況の変化と売り上げの推移の関係を 勉強できたことと思う。その中で,ボランティアとし て,また経済社会の一員として何を課題にし,その問 題点をどのように解決していくかを考える機会とも なった。