Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
「景 観 指 導
の
考
え
方
」
特 集
号
に
よ
せ て
Foreword
onSpecial
Issue
‘‘Guiding
Concept
for
anOrderly
Visual
Landscape
Design
”佐 藤
優
九州芸術 工科 大学
SATO
,Masaru
Kyushu lnstitute of Design
景 観デザ インは
、
普通のデ ザ インの分 野 と は異な る 大 き な特 徴を持っ てい る。
そ れは、
デザイン は・
般 に 産業の 側 に 立っ て仕 事をする が、
景 観デザ イン はそれらの 「生産 性 」や 「経 済 性 」と対立 し な が ら 市 民のた めに 「快 適な 生活 」を求め る特殊
な 分 野で あ る。 長 期的、
総 合 的 に 見 れ ば 地域 経 済の発展 につ な が る はずだ が、
今 す ぐに ビルや看 板をつ く りたい 関係 者とは どうし て も意 見が対立する。 景 観 指 導の 現 場では 「あ な たの利益 も追求して ほ しい が、
私た ち は専 門 家と して市 民の幸
せ を考
えて意 見 を述べ て い ま す。
あ な た がこの街に参 加した時に地 域が より よく発展する ように配 慮して くだ さい 」と言 うこ と に してい る。景 観 問題は 、 1970 年代を境 と して 主 に 「交逓 問 題」、 「ラン ドス ケ
ー
プ」、
そ し て 「デザ イン」の、3
つ の 観 点か ら と ら え られ て き た。 口本では1970
年代 後 半に、
汚 くて うるさい都 市が 生 活の 場 と して 敬 遠 さ れる ようにな り、
都 心の 空洞化が進ん で きた。 日 本の都 市 景 観問 題は、
都 市に魅 力が なくなっ てい く 中で、
まず 歩 行 者 空 間の 確 保 とい う形で出て き た。
交 通 事 故も急 速に増えて深 刻な 状態に 陥っ てい た。 そ ん な中でOECD
(
経 済 協 力開発 機 構 )が 1971 年に 環境 と交通 に 関する作 業 部 会を 設けて、
1974 年に 「都 市の中 に歩 く人 問のた めの空 間をつ くろう」 と い うレポー
トを ま と め た。 日本では、
1975年
に 「楽
しく歩 ける街 」と して紹介 さ れ た。一
方、
ラン ドス ケー
プの 分 野で も同時 期に名 著が た く さん出てい る。都 市の構 造 的な構 成 要 素を見 直 し、
その デザイン を検 討してい る例が多い 。Garrett
Eckbo
の 「Urban
Landscape
Design
」カs’
1964年
に出版 さ れ、
日本 語訳は同 名で 1970 年に出版さ れ てい る。 その 「序」
で 「・
・
わ か りやすい 形とい っ て も そこ に は連 続 性とア ク セ ン ト、
ま と ま りの 中の 変化、
予期 しない 驚 き な ど が な け れば な ら ない・・
」 と述べ、
Eckbo
氏の 基本 的な考
え 方を示してい る。 ま た、
景 観は人間 と自然との相互作 用である と も述べ て、
ラ ン ドス ケー
プ か らの立場を鮮明 に してい る。 ま た、
今で も重要なテキス ト に なっ てい る KevinLynch
の 「Managing
theSense
of a Region 」は1976
年に 出版さ れ
、
日本 語 訳は 「知 覚 環 境の計 画 」と して 1979 年に出版さ れ た。「
・・
体験 さ れ る環境の質
を 地 域の尺 度で計画 すべ きだ・
・
」と述べ、
場 所の外 観、
音、
匂い、
感 触に 関する質の計 画とマ ネー
ジメ ン ト につ い て論じて い る。入 間の イメー
ジ と 活 動に焦 点 を当てたこ とに特 徴が あ る。こ の ふ たつ の 書は、今日に も通 用する景観へ の ふ たつ の 観 点を著わ し てい る。 す な わ ち
、「
連 続 性 」と 「感 覚 」である。 景観の問題 は、
人 間 が 造っ た物と 人 間自身が周辺 と どの よう
に関係して い くか、
あるい は そ れ らの 関係を どの ように感 知 する かとい う問 題 で ある。
景観 を左 右 する こ れ らの 要 素は、
数値で規 定し にくい デザインの問 題であ る。背 景が千差 万別 で あるば か りで な く、
表 現の コ ンセプ トも無 数にあ る。こ の よ う な 有 機 的 な 問 題 に 対 して どの ように対 処 し てい く か がこれ か ら の課 題で ある。 律 に数 字 で最 低 限の規 則をつ くる こ と は 望 ま し く ない が、
臨 機 応 変の指 導も 成 り 立 ち難い。
例 え ば、
屋 外 広告物 を規 制 し ようと す る と、
い くつ かの 予想さ れる方 面 か ら反対の 声があが る。 主に 「経 済 活 動は自由であ るべ きだ」とい う論 旨である。 そ れに加えて、 公平 と最 低 限を原 則と してい る行政には自ずか ら 限界が あ り、 す ぐれ た 豊 か な景観
をつ く りに くい体 質を 持っ て い る。こ れ は根 本 的な背 景の違い である。 景観は 地域の 住民のもの である
。
行政の もの で はな く、
まして や 企業の もの では ない。
現在の 景 観問 題の一
部は、
地 域に密 着 して い ない 企 業が、
地 域に責任を持た ない サ ラ リー
マ ン の 手によっ て、
自由経 済を大義 名分 と2 SPECFAL ISSUE OF JSSD vot
.
9 No.
22002 デ ザ イン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
し て
、
地 域の 秩 序を 変 えようい るの が 典 型 的 な 図式 である。 積 極 的に屋 外 広 告物を活用 したい 繁 華 街で は存分 に その魅力を競っ てほ しい が、地 域へ の愛 着 を損ねる可能性 が あ る もの は 住 民の 意 志に よっ ては ねの けたい ものだ。 そ れで は、
地域に とっ て何 を だ い じにし なけれ ば な ら ない の か。 感 情 論で はな く、
客 観的 な指
針は示せ るの か。私も多 くの景観 行政 に か か わ っ て きて 感じ るの は
、
行政 は担 当 者が3
年 単 位ほどで替わ っ て い くの で継 続 的で 蓄積的 な指 導を しに くい こ と と、
一
方の 住 民は専 門性に欠 け、
本 質 的に 私的な 利益を基 盤に してい て、
双 方に限 界が ある こ とで ある。
最終的に は、
大 学や研 究 者に指 導 力を発 揮 する こ とが求め ら れ る。 長 期 的なビジョ ン を維 持し、
ニ ュー
トラ ルな 立場に立つ こ とは、
大 学本来の 特質 で あ る。
ところ が問 題は、その研 究 者 個 人の資 質に負 うとこ ろが大 きい とい う点であ る。指 導 能 力の閻題につ い て疑 問 に 思 うこ と は少な く ない。
ま た、
各個人の研 究の基 盤はさ ま ざ まである にもか か わ ら ず、
応用 領 域であ る景 観の問 題は複 合 的 な 課 題を含ん でい る。 内科の 医 者 が外 科を診 療 するような もの である。大 都 市の 場合に は得
手不得手
を分 担 するこ とがで きるが、小 さ な都 市や農 村で は活用できる専門 家の 数や 分 野 に 限 度 が あ り、
し か も居 住 し て い ない ハ ンデ ィが あ る。
つ まり課 題 は2
つ あっ て、
その ひ とつ は景 観 指 導の 能 力で あ り、
も うひとつ は地域の ハ ンデ ィにっ い て で ある。こ の特 集 号で
「
景 観 指 導の考え方 」につ い て とり あ げた趣 旨は、
指導
の 方法を相互に協 議 して共 有 す る必 要を感 じたか らであ る。行
政の 陶で は事
例 紹 介 を し たり協議をする機 会が若 干なりとも設 け られて い る。 とこ ろが、
指 導をする側の研 究 者間は個人的 な会 話に留
まっ てい るの では ない か。 ま してやその 両者 を結ぶ会議は ほ と ん ど ない。
まずは研 究 者の立 場か ら景 観 指 導の考 え方 を集め て検討 を す る.
L
壌 を つ く り、次には行 政と研 究 者が一
緒 になっ て ディス カッ ション をする場をつ く りたい。 そこ で、
第一
段 階 と して景観に 関 す る 指導者 と して活 躍 してい る 方々 の論 考をい ただ くこと に し た。こ れ まで に も本 学 会の特 集号で は
、
類 似の 観点 が い くつ か示さ れて い る。例え ば1994 年の 日原 もとこ 編 集の 「景観と デ ザ イン」であ る。 こ こ では か な り 幅 広 く景 観デ ザ イン の 研 究と実態を 把握して い る。 ま た、 本 学 会で発 表 され た景 観に関する研 究リス ト をつ くっ てい る。景 観デザ イン のイン デ ック ス的な 役 割 を果 た す貴重 な特 集 号であ る。1999
年の堀田明 裕・
田中みなみ編 集の 「高 齢 社 会と デ ザ イン」
で は、
特に高 齢 化に伴っ て デザ イン面か ら取 り組むべ き杜 会 的課題 につ い て、い くつ かの論 点を明ら かに して い る。 利用者の 観 点か ら は、
誰 もが快適 に 生活でき る よ うな ま ちづ く りは、
景観の 観 点か ら も重 要 な テー
マ である。
2000
年の森田昌嗣 編 集の 「都.
市環 境 の レジ ビ リテ ィ とアン ビギュ イテ ィ」は、
基本 的に は同じようなア プロー
チで は ない か と思 う。
わ か り やすさ と多様 性は、
景 観の観 点か ら言 えば単 純化や 秩 序化と自由競争ま た は創造性との対 極 的な概 念で あ り、
その 間 にこそ指 導の コ ンセ プ トが あ る。
「景 観 指 導 」の特 集で は、
こ の 問題 を も う少 し具体的 に と ら え、現 場の指 導にあたっ てい る先生方の鴇 富 な経 験 を 基 本 に、
方 法と研究の課 題を ま と めてい た だい た。 企画の意 図を明確に しない ま ま、
先生方の そ れ ぞ れの 解 釈に依 存して し まっ たこ と をおわ び し、
そ れ で も な お かつ す ば ら しい原 稿を寄せて くだ さっ た皆 様に深 く感 謝し たい。
また、
韓国で は近年 景 観 問題 に対 し て国家 的に関心が高まっ てきてお り、
私 自 身 も何 度 か招 聘さ れてい るが、
そ の ような中で高 名な 指 導 者で ある金明 錫 氏 が 寄 稿 してく だ さっ たこ とに は別 記 して お礼 申しあ げ、
この こ とが さ らに両国の 景 観 向E
につ な がる こと を期 待 する。
景 観は、
多 様な技 術や分 野を総 合して 生活の ビ ジョ ン を導
く実 践的課題 であ る。 さ ま ざ ま なアプ ロー
チ の発 展 を期 待 し、
さ ら に そ れ ら を結 合させて い く場の確立 を望みたい。デ ザイ ン学研究 特 集号 sPECIAL ISSUE OF JSSD vol