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ポートフォリオマネジメントを通じた戦略の展開

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Academic year: 2021

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(1)

ポートフォリオ

マネジメントを通じた

戦略の展開

リスクに基づくアプローチ

Insights on

governance, risk

and compliance

(2)
(3)

はじめに

今日の経済活動において、競争は一段とその激しさを増しています。市場の動向や市 場の変動、利益への絶え間ない圧力とステークホルダーの厳しい要求を反映して、世界 経済は相互の関係や依存が深まる一方であり、将来の予測も不可能に近くなっていま す。多くの企業はこうした新しい経済環境に完全には適合できていませんが、手をこま ねいている余裕はなく、新たな環境への適応が必要との認識が高まりつつあります。こ の結果、多くの企業が業務改革を実施して経費削減、顧客重視経営の実践、ステークホ ルダーの信頼回復、情報通信技術の拡充や新たなビジネスモデルの確立を図ろうとし ています。 多くの企業にとって、長期的な成功はこのような改革プログラムの成否にかかっていま す。失敗が許される余地は決して大きくなく、改革を行う環境も厳しさを増しています。 今日の市場の混乱で方向性を失ったビジネスは、多数のプログラムやプロジェクトを並 行して実施しながらビジネスの機能を維持しなければなりません。多くの多国籍企業で は、何百ものプログラムやプロジェクトがさまざまな職能や地域にまたがって同時に実 施されています。その複雑さゆえに、企業は「物事を適切に行う」ことと「正しいことを 行う」ことの両面で四苦八苦しています。プログラムやプロジェクトの成果が乏しい企業 が多いのはこのためです。 物事を適切に行う 往々にして、企業はプログラムやプロジェクトの実施に伴って問題に 直面することがあります。投資先として正しいプログラムやプロジェクトを選択したとし ても、実施した取組みが問題を引き起こし、成果が出るまでに時間やコストがかかりすぎ るおそれがあります。この結果、企業がなけなしの資本を賢く使おうとしている矢先に、 プログラムやプロジェクトが予想通りの成果を上げられず、対応を余儀なくされます。 正しいことを行う またそれ以上に根本的な問題として、企業は投資先として適切なプ ログラムやプロジェクトの選択に苦慮する場合があります。不適切なプログラムやプロ ジェクトは企業戦略の支えにならず、企業に十分な価値を加えません。戦略を実際のプ ログラムやプロジェクトに置き換えることがテーマである以上、これはポートフォリオマ ネジメントの範疇に入ります。効果的なポートフォリオマネジメントは 、 企業に正しいこ とを行う仕組みをもたらします。本レポートでは、効率的なポートフォリオマネジメント を行うためのリスクに基づく手法を取り上げていきます。

(4)

企業は「ポートフォリオ」「プログラム」「プロジェクト」の三つのレベルに沿ったマネ ジメントによって改革プログラムを実行する必要があります。各レベルの目的は全く異 なりますが、一貫性を保つことで効果的な改革を実現できます。プロジェクトマネジメ ントが具体的な成果を主眼とするのに対し、ポートフォリオマネジメントでは企業の目 標や目的との整合性に基づいて、どのプログラムやプロジェクトを実施すべきかを決定 する意思決定プロセスが重要です。プログラムマネジメントは両者の中間プロセスとし て、業務へのメリットに重点を置きます。各レベルのマネジメントの目的を以下にまと めました。 レベル 定義 主な目的 ポートフォリオ 事業戦略を支援し、戦略目標に 従って成果を挙げるために組織 的に管理された一連のプログラ ムやプロジェクト 「正しいことを行う」ことに 重点 プログラム 業務目標や成果を達成するため に組織的に管理された、相互に 関連する一連のプロジェクト 成果を上げることに重点 プロジェクト 固有の製品、サービス、結果を生 み出すための一時的な取組み 「物事を適切に行う」ことに 重点

「物事を適切に行い」

ながら

「正しいことを行う」

(5)

そうなると、企業が予定通り予算内でプロジェクトを終了しても、 プロジェクトから得られる価値が最適化されなかったり、企業の 戦略と一致しないケースも起こり得るでしょう。投資リソースが 限られている時ほど、企業は潜在的な価値の流出を食い止めよ うと努力します。それだけに、プロジェクトポートフォリオに対す る見通しが悪くコントロール能力に乏しい大企業の間で、価値流 出の防止に特化したポートフォリオマネジメントが注目を集める ようになってきています。 およそ10年にわたってPRiNCE2(1996年、英 国 商 務 局 )、 PMBoK®1996年、プロジェクト・マネジメント協会)、スクラ ムなど、より専門的な方法論が開発されて以来、企業はプロジェ クトマネジメントに多額の投資を行い、その結果として企業の プロジェクトマネジメント能力は強化されました。しかし、プロ ジェクトマネジメントにすぐれた企業であっても、成熟したポー トフォリオマネジメントプロセスを導入していない場合は、プ ログラムやプロジェクトと戦略との整合性に問題が生じます。 ポート フォリオ マネジメント プログラムマネジメント プロジェクトマネジメント 正しいことを 行う 物事を適切に 行う 成果を上げる

主な目的

主な活動

• 戦略との適合と一致 • ガバナンス • 機敏性 • 資金の(再)配分 • 範囲 • クオリティ • コスト • 時間 • 実証と検証 • 優先順位付け • リソース

(6)

ポートフォリオ

マネジメントの

課題

多くの企業はプロジェクトポートフォリオのマネジメントに苦慮しています。企業が抱え る典型的な問題には次のようなものがあります。 • 同時進行のプロジェクトが多すぎて焦点が定まらないため、結局は成果が上がらない • 戦略目標がプロジェクトやプログラムに支えられていない • 戦略目標に支えられていないプロジェクトやプログラムに対して投資を行う (企業戦略に合致していない) ポートフォリオマネジメントにまつわる課題の全体像を以下にまとめました。 戦略 ガバナンス マネジメントと 能力 データと ツール • ポートフォリオと企業戦略の整合性が理解されていない • (規制やコスト削減など)一つの戦略要因に合致したプロジェクトの数 が多すぎ、往々にして重複している • 「絶対必要」という位置づけのプロジェクトが多すぎる • 企業全体におけるプロジェクトの優先順位付けが効果的でない • 低調なプロジェクトを中止する有効な手法が存在しない • ビジネスケースが効果的に精査されず、成果が非現実的 • 日常的なプロジェクトがポートフォリオ外で管理されている • 各プロジェクト間のスケジューリングが調整できずに、達成に問題が 生じる • ポートフォリオマネジメントにおける経験や能力の不足 • プロジェクトマネジメントのスキルや経験が企業の成功に不可欠と みなされていない • 変化を吸収する企業の能力の不足 • プロジェクト、職能、事業単位間でポートフォリオのデータが一貫 していない • 効果的な報告ツールや集約ツールの欠如 • 経営陣の目から見て報告が効果的でない • プロジェクトチームが報告することを負担に感じている • 事業目標の未達 • 成果の遅れ、または成果が不十分 • 不適切なプロジェクトの実施に伴う オポチュニティ・コスト(機会費用) • リソース配分が非効率的 • スケジュールの長期化や期日の遅れ • 意思決定と問題解決に一貫性がない • 戦略実施が非効果的 • 実施が非効率的 • ポートフォリオマネジメントに一貫性が ない • クオリティスキルに乏しく、成果物に 悪影響を与える • 期限に間に合わず費用が増大する • ポートフォリオ内のプログラムや プロジェクトへの認識が低い • モニタリングや報告が効果的でない • データの質が悪い • 重要課題が早期に特定されない ポートフォリオマネジメントの課題 関連するリスク

(7)

こうした問題を克服するためには、企業がポートフォリオマネジメ ントに取組んで以下の主な目的を達成することが必要です。 1. プログラムとプロジェクトの戦略的な整合性を強化して、企業 戦略に寄与しない取組みの実施を防ぐ 2. 投資収益を最大にするために、ポートフォリオ全体の経済的 価値を高める。このステップでは、プログラムやプロジェクト がビジネスにもたらす具体的な成果に注力します 3. 企業独自の基準に基づいた、プログラムやプロジェクトに関す る経営陣の意思決定を強化する。基準には「取組みは定めら れたEA(エンタープライズアーキテクチャ)にどう適合する か?」「リスクや相互依存との兼ね合いは?」「企業はコンプ ライアンスの取組みにどう対応するか?」などが含まれます 下図に示した三方向からのアプローチにより、企業がプログラム やプロジェクトへの投資から最大の価値を引き出すことが可能 になります。 経済価値 意思決定の 枠組み 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 ポートフォリオマネジメントの目的 戦略の一致 戦略との適合 : ポートフォリオは戦略的事業目標に合致しているか? 戦略との一致: 組織はどうすれば一貫性のあるトップダウンの戦略一致 を図ることができるか? (下のレベルまで浸透させる能力) ガバナンス: 企業はどうすればプロジェクトやプログラムの成果やリスク を管理してポートフォリオからの全体的な価値創出を最大化できるか? 機敏性: 戦略目標を変更した場合、企業はいかにしてポートフォリオを 再編するか? リソース: 企業はどのようにして供給と需要を一致させるか? 資金調達に関する意思決定の根拠(例えばビジネスケース)は何か? プログラムの余剰予算をどのように特定し他のプログラムに割り振るか? 相互依存: 相互依存はどのように管理されているか? リスクと課題: プロジェクト/プログラムにまつわるリスクや予算超過など の問題が、いかにして意思決定プロセスに織り込まれているか?

(8)

ポートフォリオ

マネジメントの

実践

ポートフォリオマネジメントのプロセスは、通常1年に数回程度実施すべきものです。 企業が展開する事業、社風、規模に合わせてその都度カスタマイズが必要ですが、一 般的には次のようなステップが重要とみなされています。具体的には、 1. 戦略から取組みへの変換 2. プログラムとプロジェクトの細分化 3. ポートフォリオの最適化 4. ポートフォリオの承認 5. ポートフォリオのリスク評価と改善策 最後のステップはプログラムやプロジェクトの実施、すなわち「物事を適切に行う」こと と重要な関連がありますが、ポートフォリオマネジメントとも深くつながっています。い わば両者の要ともいえるものです。 戦略から取組みへの 変換 プログラムと プロジェクトの細分化 ポートフォリオの 最適化 ポートフォリオの リスク評価と改善策 ポートフォリオの 承認 • 戦 略 を 分 析 し 目 標 を 確 認 する • 既 存 の 取 組 み を 最 適 化 し て、現在のポートフォリオ で未達の目標をかなえる • 新たな戦略的取組みを定義 する • 新たな決定事項を定義され たプログラムやプロジェク トに置き換える • 詳しいプランとそれのおよ ぶ範囲、具体的なビジネス ケースを定めた趣意書を作 成する • 現 在 のポートフォリオを評 価 する • 合意した意思決定の枠組みを 基に(プログラムやプロジェク トの追加や撤回を通じて)最適 なポートフォリオを選択する • 需要と供給を一致させる • EA(エンタープライズアーキテ クチャ)コントロールの確立 • 合意した意思決定の枠組みを 基にポートフォリオに優先順位 を付ける • 最適化されたポートフォリ オの実施を承認する • 優先順位付けの結果を一本 化する • 上層部が点検し承認する • プログラムガバナンス、プロ ジェクトマネジメント、解決 策の間の相互依存リスクを評 価する • 現状を評価する • プログラムとプロジェクトの 改善の機会を特定する • ポートフォリオの最適化の機 会を特定する 戦略 目的 目的 目的 決定事項新たな プログラム定義した プロジェクト プロジェクト プロジェクト  目的 目的 決定事項の最適化 プロジェクト定義した プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト

  

戦略の一致 A B C E F G H P Q K X J L Y 監 視 加 速 必 須 評 価 中 止 現状 将来 段階的な改善プラン 現在のポートフォリオ 更新したポートフォリオ • 戦略の一致 • 経済価値 • 意思決定の枠組み • 経済価値 • 戦略の一致 • 意思決定の枠組み • 意思決定の枠組み 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致

経 済 価 値 戦略目標 戦略目標

ポートフォリオマネジメントの

プロセス

(9)

戦略から取組みへの 変換 プログラムと プロジェクトの細分化 ポートフォリオの 最適化 ポートフォリオの リスク評価と改善策 ポートフォリオの 承認 • 戦 略 を 分 析 し 目 標 を 確 認 する • 既 存 の 取 組 み を 最 適 化 し て、現在のポートフォリオ で未達の目標をかなえる • 新たな戦略的取組みを定義 する • 新たな決定事項を定義され たプログラムやプロジェク トに置き換える • 詳しいプランとそれのおよ ぶ範囲、具体的なビジネス ケースを定めた趣意書を作 成する • 現 在 のポートフォリオを評 価 する • 合意した意思決定の枠組みを 基に(プログラムやプロジェク トの追加や撤回を通じて)最適 なポートフォリオを選択する • 需要と供給を一致させる • EA(エンタープライズアーキテ クチャ)コントロールの確立 • 合意した意思決定の枠組みを 基にポートフォリオに優先順位 を付ける • 最適化されたポートフォリ オの実施を承認する • 優先順位付けの結果を一本 化する • 上層部が点検し承認する • プログラムガバナンス、プロ ジェクトマネジメント、解決 策の間の相互依存リスクを評 価する • 現状を評価する • プログラムとプロジェクトの 改善の機会を特定する • ポートフォリオの最適化の機 会を特定する 戦略 目的 目的 目的 決定事項新たな プログラム定義した プロジェクト プロジェクト プロジェクト  目的 目的 決定事項の最適化 プロジェクト定義した プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト プロジェクト

  

戦略の一致 A B C E F G H P Q K X J L Y 監 視 加 速 必 須 評 価 中 止 現状 将来 段階的な改善プラン 現在のポートフォリオ 更新したポートフォリオ • 戦略の一致 • 経済価値 • 意思決定の枠組み • 経済価値 • 戦略の一致 • 意思決定の枠組み • 意思決定の枠組み 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致 意思決定の枠組み 経済価値 戦略の一致

経 済 価 値 戦略目標 戦略目標

ポートフォリオマネジメントの

プロセス

(10)

ステップ

1

 戦略から取組みへの変換

最初のステップでは戦略の整合性を図ることに注力します。こ こで戦略目標を確認し既存の取組みに関連付けます。企業が目 標に掲げる成果を達成するためのプログラムとプロジェクトをま とめた戦略的取組みを通じて、ビジョンが実現されていくわけで す。戦略的取組みは戦略目標や戦略目的と同一ではありません。 戦略目標を達成する手段であり、「何を」よりも「どのようにして」 に重点を置き、通常は機能横断的な能力を活用して組織全体で 努力することを指します。戦略的取組みが単独のプログラムと 一致することもありますが、そこに複数のプログラムやプロジェ クトが含まれることも考えられます。例えば新興市場での成長を 戦略目標に掲げている場合、新興市場における財務管理や流通 経路の強化に白羽の矢が立てられるでしょう。関連するプログラ ムやプロジェクトとして、現地のサプライチェーンを管理するた めの立案組織の設立が考えられます。また、それをサポートする ICT(情報通信技術)も必要になるでしょう。 つまり、このステップの目的は、戦略的取組みによって戦略目標 が適切にサポートされているかを明確にすることです。図示す ることにより、「サポートされていない」または「サポートが不十 分な」戦略目標が浮き彫りになり、これをサポートする取組みが ない、または明確でないことが判明します。こうした目標に対し ては、新たな取組みを定めるか取組みを最適化します。また、こ のステップを通じて企業内の現行の取組みで戦略目標に合致し ていないものも検出できます。

ステップ

2

 プログラムとプロジェクトの細分化

このステップでは、新しい取組みや明確にした取組みの経済価値 を最適化することが主眼となります。これらを実際のプログラム やプロジェクトに具体化することが重要です。これを目的として、 上層部の決定事項に基づき詳しいプランとそれのおよぶ範囲、 具体的なビジネスケース、リスクの可能性を盛り込んだプロジェ クト趣意書を作成していきます。このステップではリスクが重要 な役割を果たします。企業が定義するプログラムやプロジェクト の範囲がおおまかすぎることがよくありますが、そうなるとパラ メータの設定範囲が広すぎて目標を外し失敗する確率が高くな ります。このステップを成功に導くために重要なのは、大規模な プログラムやプロジェクトを採用することではなく、段階的アプ ローチにより戦略的取組みを分割し、具体的にビジネスの成果 を測定できるような、扱いやすい小規模なプログラムを採用する ことなのです。

ポートフォリオマネジメントの実践

(11)

ステップ

3

 ポートフォリオの最適化

第3のステップでは意思決定の枠組みをつくり、次のステップに おける経営陣の意思決定に向けて準備をします。これを可能に するために、プログラムやプロジェクトを開始/中止、加速/減速 する案を含めて最適化されたプログラムの作成が必要です。あ るポートフォリオ案を最適化するには、意思決定の枠組みを用意 する際にその企業特有の要因を取り入れるべきです。あらゆる ケースでこの枠組みを活用し、経済価値の創出と戦略の一致を 最適化する必要があります。価値創出の具体的な内容はもちろ ん業界、組織、地域によって異なります。 プロセスを促進するための適切な情報はもちろん、企業のプログ ラムとプロジェクトすべてを集約した概要が、ポートフォリオの最 適化のカギを握っています。一般的に、概要には費用対効果、必 要なリソース、リスク、ビジネス上のメリット、戦略目標との関連や 相互依存などの情報が含まれます。こうすることで定義された企 業の意思決定の枠組みに基づいて最適化されたプログラムやプ ロジェクトを選択し、優先順位を付けることが可能になります。 企業の意思決定の枠組みにおいてまず重要な尺度となるのは、 必要なリソースの量です。ポートフォリオを実行可能にするには、 企業がプログラムやプロジェクトを実践するのに十分なリソース を確保する必要があります。 ほとんどの場合、企業は処理できないほどのプロジェクトを推進 する傾向があり、プロジェクトやプログラムの実施をめぐる問題 が悪化して進歩が見られなくなる「プロジェクトの大渋滞」に陥り ます。この問題を解決するため、企業は需要と供給を一致させ る仕組みを導入する必要があります。 相互依存の管理も企業の間で広く活用されています。企業はEA (エンタープライズアーキテクチャ)などの制御を利用して情報 通信技術システム、ビジネスプロセス、組織などの面から現状と 理想的な将来の姿を定義します。これにより、プログラムやプロ ジェクトがビジョンに適合しているかを評価し、相互依存を検出 し管理することが可能になります。ポートフォリオ管理がプロセ スとガバナンスに重点を置く一方で、EA(エンタープライズアー キテクチャ)は必要な内容を提供します。 もうひとつの重要な尺度はリスクです。まず、過剰な(トップダウ ン)リスクを伴うプロジェクトやプログラムの実施を防ぐために は、企業のポートフォリオを企業のリスク要求度に一致させるこ とが不可欠です。第二に、検出された(ボトムアップの)リスクや 問題は、プロジェクトやプログラムを開始、中止、加速する際に考 慮することができます。詳細はステップ5をご覧ください。

(12)

ポートフォリオマネジメントの実践

ステップ

4

 ポートフォリオの承認

一般的に、企業は収益のかなりの部分をプログラムやプロジェク トに投資します。そのため、企業の経営陣が最適化したポートフォ リオをあらかじめ正式承認しておくプロセスが欠かせません。ス テップ3で最適化したポートフォリオは、その予備段階として大切 です。下図はさまざまな提案を含む最適化されたポートフォリオ を示したものです。これを見ると、プロジェクトの見通しとして中 止すべき(経済価値: 低/戦略との一致度: 低)、加速すべき(経 済価値: 高/戦略との一致度: 高)、必須(経済価値: 低/戦略 との一致度: 高)、監視が必要(経済価値: 高/戦略との一致度: 低)、評価すべき(経済価値: 低/戦略との一致度: 中程度)など が一目瞭然となります。円の大きさは通常「リスク」や「予算」を 表し、経営陣の意思決定に役立つ追加情報を提供します。

ステップ

5

 ポートフォリオのリスク評価と改善策

最後のステップではプロジェクトやプログラムの実施との関連付 けを行います。このステップでプログラムやプロジェクトをリスク や課題にしたがって点検することで、分析力や意思決定力の向上 につながります。実践段階では、これが経済価値が最大のプログ ラムであったり、企業にとって最大のリスクを伴うプログラムで あったりするわけです。

さらに…

リスクの点検で回収された情報をポートフォリオ最適化のプロセ ス(ステップ3)に盛り込み、問題のあるプログラムの改善策を講 じます。リスク管理努力をより重大なリスクに集中することが必 要です。このため、組織改革をスムーズに進めるためには、大規 模で複雑、かつリスクを伴うプログラムに対して最大の注意を払 うべきです。ポートフォリオ全体を大局的に見るアプローチを通 じて、組織改革がしっかり実践できます。すなわち、進行中のす べての取組みを中央から俯瞰することで、経営陣は重要なリスク を監視し、リスクを考慮しつつ意思決定することができるように なるのです。

戦略との一致

A

B

C

E

F

G

H

P

Q

K

X

J

L

Y

(13)

アーンスト・アンド・ヤングではトップダウン型とボトムアップ型の リスク活動を区別しています。トップダウン型のリスク活動には、 企業を最大のリスクにさらすプログラムやプロジェクトの(リス ク)監視が含まれます。ポートフォリオのリスク管理は、業務、法 務、コンプライアンス、財務面のリスクを一体的に管理するため に企業が活用している企業リスク管理に近いリスクへのアプロー チを提供します。この活動後の例として、ポートフォリオに含まれ るプログラムやプロジェクトを監視するための内部または外部の 監査計画が挙げられます。 ボトムアップ型リスク活動は、経営陣が意思決定する際に関連す るリスク情報を考慮に入れることを主眼としています。最も重 要なプログラムやプロジェクト内のリスクや課題、相互依存など を分類し、その概要をつかむことで、このような「リスクインテリ ジェンス」を獲得できます。そして経営陣はその知識を意思決定 に活かせます。ポートフォリオリスク管理への総合的なアプロー チにより、経営陣に強力な情報資産ができ、ポートフォリオを最 適化する際(ステップ3)にプロジェクトやプログラムのリスクを 念頭に置くことができるわけです。経営陣が主要リスクに積極的 に対応できる点がこのステップの柱なのです。

ボトムアップ型リスク活動

• ポートフォリオの意思決定の際にプロ ジェクトやプログラムのリスクを考慮 に入れる(リスクインテリジェンス)

ポートフォリオ

プログラムとプロジェクト

トップダウン型リスク活動

• リスク点検とハイリスクなプログラム やプロジェクトの監視 • 企業のリスク要求度に沿った低リス クのプログラムやプロジェクトによる ポートフォリオの選定 • リスク言語、ポリシー、尺度を定める

(14)

本レポートで、組織改革に伴うリスクの総合的な管理を可能にする、リスクに基づく革新 的なポートフォリオ管理法をご紹介しました。より重大なリスクへの集中的な対応を企 業に迫るこの手法を実践することで、改革努力が成功する可能性が大きく向上します。 さらに、この手法ではプログラムやプロジェクトに共通のリスク言語が生まれ、企業のリ スク管理文化が強化されます。これを実現するために企業が取るべきステップを以下に まとめました。

具体的な行動

リスク管理文化を強化する主なステップ

1.

企業戦略と改革の目標を見直す

2.

戦略目標を取組みに変換する

3.

戦略的取組みを最適化して戦略の整合性を高める

4.

プロジェクト趣意書により戦略的取組みをプログラムやプロジェクトに変換 する

5.

現在のプロジェクトとプログラムのポートフォリオを評価する

6. EA

(エンタープライズアーキテクチャ)の整合性、リスク、ビジネスケース、 その他の基準を基に新たなプログラムやプロジェクトを追加することで ポートフォリオを最適化する

7.

需要と供給のバランスを取り、プロジェクトの大渋滞を引き起こす可能性 のあるプログラムをチェックし、プロジェクトを中止する可能性を残して おく

8.

経営陣の意思決定をサポートするために、監視、評価、加速、中止、必須 プロジェクトの総合的な概要を作成する

9.

ハイリスクおよび必須のプログラムやプロジェクトのリスク評価を実施する

10.

リスクと課題の情報を活用して経営陣の決定とポートフォリオの最適化を サポートする

(15)
(16)

Ernst & Young

アーンスト・アンド・ヤングについて アーンスト・アンド・ヤングは、アシュアランス、税務、 トランザクションおよびアドバイザリーサービスの分 野における世界的なリーダーです。全世界の16万7 千人の構成員は、共通のバリュー(価値観)に基づい て、品質において徹底した責任を果します。私どもは、 クライアント、構成員、そして社会の可能性の実現に 向けて、プラスの変化をもたらすよう支援します。 「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・アンド・ヤング・ グローバル・リミテッドのメンバーファームで構成されるグロー バル・ネットワークを指し、各メンバーファームは法的に独立した 組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、 英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供してい ません。詳しくは、www.ey.com にて紹介しています。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、アーンスト・アンド・ヤング のメンバーファームです。全国に拠点を持ち、日本最 大級の人員を擁する監査法人業界のリーダーです。 品質を最優先に、監査および保証業務をはじめ、各種 財務関連アドバイザリーサービスなどを提供していま す。アーンスト・アンド・ヤングのグローバル・ネット ワークを通じて、日本を取り巻く世界経済、社会にお ける資本市場への信任を確保し、その機能を向上す るため、可能性の実現を追求します。詳しくは、www. shinnihon.or.jp にて紹介しています。

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ED None お問い合わせ先 新日本有限責任監査法人 ITリスクアドバイザリー部 〒100-6028 東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 霞が関ビルディング28F Tel: 03 3503 1704 E-mail: [email protected]

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