司会 今日は事前に予告していた通り,ゲストスピーカーの先生にご講演をしてもらい ます。法学会の講演会でもあるんですけども,今日来ていただいて講演していただくの は光定洋介先生。先生はあすかアセットマネジメント株式会社チーフファンドマネー ジャー,あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社取締役ファウンディングパートナ ー,今大学教授としての肩書は産業能率大学経営学部教授です。マルチに活躍されてい る方です。ご講演の前に略歴をちょっとご紹介させていただきたいと思います。光定先 生は早稲田大学法学部をご卒業後,早稲田大学大学院ファイナンス研究科でMBA を取 得,首席で修了後,東京工業大学で博士号を取得されています。CFA 協会認定証券ア ナリスト,これはアメリカ証券アナリストというふうに略されていますけど,アメリカ の証券アナリスト資格,それを取得されている。日本証券アナリスト協会の検定会員。 年以上の投資経験があり,日本債券信用銀行,現在のあおぞら銀行ですね,こちら やガートモア社(現ヘンダーソングローバルインベスターズジャパン株式会社),ユニ ゾンキャピタルでディレクターをされていました。その後,あすかアセットマネジメン トにてファンドマネジメントやインベスター兼企業価値向上支援に従事されています。 ガートモア社においては,日本の投資信託では初となるロングショート型の絶対利回り を追求した投資信託を開発し,高い評価を得ています。ユニゾンキャピタルではバイア ンド投資を実践し,日本で株式市場やプライベートエクイティ市場で幅広い経験を持つ 数少ないファンドマネージャーです。ユニゾンでは多くM&A 取引と企業経営及び経営 強化をリードし,東ハト等で社外役員もご経験され,企業価値向上に貢献されています。 そういう意味で投資家の経験と経営者の経験と両方の経験を有する稀有な存在と言えま す。 年からは企業価値向上を支援するあすかバリューアップファンドの創業メン
投資ファンドの基本的仕組み
光
定
洋
介
バーとしてファンドを立ち上げ同ファンドの責任者に就任されています。同ファンド は,「ユーリカヘッジ」により 年に「ベストアジアンイベントドリブンファンド」 を受賞,また, 年「AsiaHedge」に最終ノミネート, 年には「ユーリカヘッジ」 最終ノミネートされているんですね。また経営コンサルティングで有名な産業能率大学 で研究・教育にも取り組み,学術的な視点も持ち合わせておられます。代表的な著書は 「完全版投資ファンドのすべて」というのがあります。これは私も読ませていただいた ものであり,投資ファンドを理解するための教科書と言われている本です。以上が光定 先生のご略歴ということなんですけども,長々と略歴をご紹介するのもあまりよくない と思いますので,早速ご講演に入っていただこうかと思っています。それでは光定先生, ご準備よろしいでしょうか。 は じ め に 溝渕先生,ご紹介いただきましてありがとうございました。香川大学法学会の事務局 の方,今日はお招きいただきましてありがとうございました。ここにいらっしゃる方の 大半は 年生だというふうに認識しております。一部それ以外の方もいらっしゃるとお 聞きしています。実はこんなに長いこと,もう 歳を超えてるんですけど,人生で四 国に来たのは初めてなんです。四国に溝渕先生に呼んでもらえて,本当に感謝ですよ。 空気がおいしい水がおいしい。食べ物もおいしい,昨日の夜に食べさせてもらいました。 うどんもおいしかった。でも意外に香川はいろんな人が来ているんだなと思ったのは, フェイスブックでいろんな人が友達でいるのですが,その多くから色々とレコメンドを もらいました。自分の大学の大学院の卒業生, 人だけの方に聞いてみたら,もうい ろんなレスポンスがあって。あの店に行ったほうがいい,あの通りは気をつけろとかね, いろんなことが。意外と多くの人が,たった 人のサンプルでこんなにいっぱい香川 県に対する反応が来るということはみんな比較的ここへ来てるところなんだなというふ うに思いました。だからやりようによってはここの場所というのは,いろんな人を呼べ る可能性もあると。地方再生をどうやるかは地元にいらっしゃる方の知恵とアイデアと 実行力と,これにかかってくるのかなと,昨日 泊して思いました。 今日は投資ファンドについて話します。時間の関係で全部は話をできませんが,皆さ んは法学部だから,投資ファンドと法律がどう関係するかというところを中心に話をし たいと思います。
投資ファンドについて ⑴ 資金の流れとファンド 僕が昨日ずっと見させてもらって,香川県というのはつくづく実業のエリアなんだな と。例えば車で走った。走るといたるところに岩石が落ちてこないようにとかね,道を 拡張しますとかねやってる工事いっぱいあります。商店街, 時, 時になると閉まっ ちゃうけど商売をして けていると。これは実業ですね。ところが世の中にはその実業 で けたお金を,僕のホテルの隣に四国銀行があったけど,多分みんな四国銀行とか何 とか銀行とかに預けて,その預けたお金の一部が大体東京に流れてるんですね。で,東 京に流れたお金が東京の投資ファンド,たくさんあって,うちだけじゃないですが,そ こで余ったお金を運用する流れがあるんです。より良い投資箇所に再配分するために。 本当だったら四国の中でお金が回れば良いのですが。例えば,四国銀行で預かったお金 は四国の中で,もっといいオリーブの木を育てるプロジェクトとかそういうのにお金が 回っていけばいいんだけど,四国の中でお金が余っちゃって。みんな預金して,みんな の預金が,そのエリアの中で回っているのは大体 割とか 割とか言われていますよ ね。 割とか 割のお金は預金や国債などとしてどっか別のところで運用されてしま う。そのお金が回り回って全部東京に来る。そういう意味で東京に行くお金が増長して いる。これが一つの金の流れです。 もう一つのお金の流れは,みんなも払ってる人がいると思うんだけど年金ですね。国 民年金。みんな払ってますよね。少なくとも社会人(サラリーマン)になると厚生年金 を払わなければならない。厚生年金というのは,僕の給料が 万円とすると, 万円 から ∼ 万円くらい,毎月勝手に天引きされちゃうんです。この ∼ 万円がどうな るかというと,簡単に言うと国民全員分,全部東京に行って,そこでGPIF だとか企業 年金連合会とか,そういう年金を集めて運用する諸団体にいくんです。小さいオフィス なんですけど,預かっているお金は 兆円以上。そこにお金が集まる。彼らは彼らで, またこのお金をどうやって運用すればいいか。だってなにしろ,マイナスにすると困る し,ゼロでも困るし,何パーセントかで運用しなければならない。そのお金の一部がこ ういう投資ファンドに流れてくる。そういう流れになっているんですね。だからここに いるとそういうお金の流れって意外に見えないんだけど,もうちょっと一歩ひいて,日 本全体を皆さん眺めてみたら,今日私が預金した 万円はどう流れていくのかなって考 えてみたら,いろんなところでこういうものの入り口が見えてくる。そうすると視点が 広がるんじゃないかと思いました。 自己紹介はさっきしましたけど,私は 年に社会人になったんですね。今は何年 でしょう。 年, 年もやってるんだね,社会人。社会人を 年もやって,よう
やくいろんなものが見えてきた。でも今のこの知識をもって 年前に戻りたい。そう したら,もっと大 けができると。でも僕はもう 年過ぎちゃったから,残念なこと にこっから先は死ぬのを待つだけ。みんなは今,こういうおじさんの話を聞いて, 年前に戻った気になって,今から 年分やればすごくお金持ちになれるチャンスがあ る。 ⑵ 株式投資について 僕は 年に大学を卒業したんだけど,いわゆる株の投資を始めたのは高校生の時。 高校生の時にお小遣いをもらうと大体,当時 万くらいたまったのかな。その 万円 で株価 円くらいの会社の株式を 万円分くらい買って,とんとん拍子 万が 万で 売れて,それでまたその 万で新しい株を買って。 万が 万。そういうことで株って バイトより かるんだなと思って,高校の時からやってました。最初は全然わからな かった。なぜ値段が上がるのか下がるのか,株価ってどうやって決まるのか。全然分か らなかった。ギャンブルですよ。でもそれを始めた事によって新聞を読むようになった。 そうすることによって経済とかいろんな知識を得ようという,自分の中からインセン ティブが生まれて。じゃあ就職するんだったら,そういう仕事に就きたいと思った。そ こで,就職する時の会社訪問,会社のOB とか OG が話をしてくれるわけ。あなたはな んの仕事をしているんですか,と。そうすると,中には「俺は会社の資金を運用してる よ,大体 本くらいかな。」という答えが返ってくる人がいた。最初は 本の意味 も分からないわけ。ああ, 本ですか。 万円くらいかな。 億円くらいかな。実 は一人 本, 億円運用してると,後から分かってビックリです。その 億円を この株に投資するとか,あの株に投資するとかこんな話を聞いて。えっ,この人一人で 億円やってるの。確かにそうなんだよね。さっき言ったように,すごく巨大なお金 が一つの運用機関とか一つの金融機関とか,一つのさっき言った資金運用団体に集まっ てしまう。それに対して,集まってしまった団体は従業員の数はそんなに多くないので, その金融機関というのは一人当たり多くの金額を動かさないと成り立たない。確かにそ うだなと,そういうふうに思ったんだけど,そんな仕事がしたいなと思って銀行でそん な仕事をさせてもらったり,外資系の運用会社でそういうことをさせてもらったり。そ こまでは多分みんな想像している株の投資ということなんです。要は,ここまでの仕事 は,株が上がりそうだから株を買おうという感じですね。簡単に言っちゃうと。 でもよくよく突き詰めていくと,株の本当の価値ってなんでしょう。皆さんは,株式 とかはやらなかったですか?
⑶ 株式の法的な権利とプライベートエクイティについて 株式はもちろん,配当金をもらうとかそういう権利はあるんだけれども,それとは別 に会社の経営に関与するという権利もあるんです。すなわち, 割超の株を持つと会社 の経営にも関与できるのです。だから株式市場で発行済みの %, %を買うんじゃな くて, %超の株をもってより経営に近いことをやってみたいと思うようになったんで す。それが投資信託のような上場株の運用と,プライベートエクイティ運用の違いなん ですね。プライベートエクイティとなると同じ株を買ってくるんでも %超買っちゃ う。 %超買っちゃうとどうなるか。社長と相談をして,社長に対して今の経営体制で はよくないと,経営を変えていこうとか,場合によっちゃ経営陣を変えようということ も言えるのです。 %超の株を買うとそれによって会社の経営にも関与していくことが できるんですね。 先ほど略歴をいくつか紹介してくれましたけども,プライベートエクイティで,当時, 私がやって,今でも印象に残っているのは,東ハトという会社なんですね。東ハトって 知ってます? 東ハト知ってる方,あまりいないですか? キャラメルコーンを知って る方。あら,ぽつぽつという感じなんですね。暴君ハバネロを知ってる人。ああ,暴君 のほうが効果があったんだね。 年の東ハトってどういう会社だったか。 年っ てみんないくつですか。今は 年, 年前かな。今みんなは 歳,そうすると , 歳? その頃の東ハトというのはゴルフ場をいっぱい持っていた。東ハトのお菓 子は かっていた。お菓子は かっている,ゴルフ場はそうじゃない。何が起こるか。 お菓子で かったお金で本当は何をしなくちゃいけないか。その金を使って。お菓子の 事業が未来永劫続くように再投資しなければならない。あの事業の最大の投資は工場と 広告宣伝ですよ。若い人にもみんな常に知ってもらわないと。広告宣伝,テレビコマー シャルなど。ところがゴルフ場で損をしているから,お菓子の方で 億, 億 かる んだけど,この 億, 億が全部ゴルフ場の赤字の穴埋めに使われてしまう。 僕が 年に社会に出た時,キャラメルコーン,知ってる人手を上げて下さいとい うと,多分全員手を上げる。東ハトはわかんなかったかもしれないけど,キャラメルコ ーンは分かる。ポテコ。みんな手を上げる。 年の僕は 歳。一回覚えた物って意 外に忘れないんだね。だから 年, 歳。 歳前後の世代の同級生に,キャラメル コーン知ってる人っていうとみんな手を上げる。ところがすごいなと思ったのが, 年代に広告宣伝を絞っていたから, 年, 歳になった若者にキャラメルコーンを 知っている人と聞くと,シーン。誰も知らない。ところが 歳のおじさんに手を上げ てというと,みんな知ってる。これは広告宣伝の効果なんだね。 年間広告宣伝を絞っ てしまったら,会社ってこんなになっちゃうんだとわかりました。だから,持続的に成
長するために広告宣伝して下さいよという一つのメッセージになる。 僕らは当然,何を考えているかというと,この会社がおかしくなってる原因はゴルフ 場の赤字,処方箋はゴルフ場をやめることだった。ゴルフ場を切り離す。新しいお菓子 の会社,そこの株を %超保有する,すなわちお菓子部門を買収して。お菓子の会社 に広告宣伝の予算を投下して,新しい広告宣伝をやっていこうと。 ⑷ プライベートエクイティと法律 ここでどういう法律知識が必要になってくるでしょうか? どなたかいらっしゃいま せんか。これ考えないとダメだよね。ずーっと赤字だったんだよな,全社的には。銀行 にはいっぱい借金がある。その中でゴルフ場を切り離そうと考えている。銀行はゴルフ 場と東ハトのお菓子がパックになった会社にお金を貸したんだよね。そのうち優良なお 菓子の部門だけをこっちに譲渡すると,銀行からどう見えるか。いいもんだけ持って行 かれて,たまらないよね,お金を貸してる銀行は,残りかすのゴルフ場だけにお金を貸 してることになっちゃう。だからそういう事業を,良い所と悪い所を切り離してもいい 条件というのがあるんだよね。それが法律に引っかかってくる。切り離していい条件は 会社が債務超過じゃないこと。会社が債務超過になっていたら切り離しはできない。会 社が債務超過じゃない状態ならば,会社の通常の意思決定としてできる。でも意思決定
ができるといっても,この優良部門を 円で売る, 円は安いでしょう。債務超過じゃ ないんだからちゃんと適正な価格で売らないとこっちの銀行が納得してくれない。そこ は銀行が納得する価格で売る必要がある。銀行の押印がいる,価格という意味で。かつ 全体としては債務超過であってはならない。そういうことを法律で縛ることによって債 権者と企業側,相互の間をある程度整合性がとれるようにしてるんだよね。万一そんな こと言っても経営判断だといって,もし仮にお菓子の部門を 円で売っちゃったとす る。そうすると何ができるでしょうか? 債権者の銀行の方は詐害行為取消権というの で訴えてやる,そんなの無効だということができるんですね。法律にいろいろ書いてあ る。そういうことを僕も一個一個勉強して買収ができた。その過程で弁護士を探し,弁 護士と一晩中議論をやりあって,それじゃ詐害行為取消権になっちゃう,とか,担保解 除してくれとか,ほかにも色々な問題があるんだけど,そんな事を乗り越えて営業譲渡 をした。だから,法律の勉強というのは必要なんです。 ⑸ 投資ファンドについて ところで,さっきご紹介いただきましたように, 年からあすかというところで ファンドの運用をやっています。投資ファンドの基本については,先ほどご紹介いただ きました「投資ファンドのすべて」という本を皆さんぜひ読んでいただければありがた いです。投資ファンドには様々な種類があります。でも今日は時間の制約上,二つだけ, このスライドの上の二つだけしか話しません。後は皆さん私の本を読んでください。そ もそもファンドとは何でしょうか。さっき言った東ハトを買収しましょうという話だっ て,ファンドという資金のプールがあったから銀行と渡り合えて, 億というお金を 集めることができたんです。でもそれはファンドに 億円くらいの資金があったから です。 億円いったんまとめて資金を集めて,その集めた資金をそういうバイアウト 投資, %超の株式を投資する案件に投資する,そうやって使いますよという約束の下 で 億円使ってこういうことができた。定義は簡単なんですよ。投資家から,すなわ ちお金を持っている人から,お金を集めて,いい案件に投資をしてそこで収益を得る。 その収益の一部を自分の手数料にすると。大体運用額の ∼ %を毎年人件費とかそ ういうのに当てさせていただき, かったお金の ∼ %を成功報酬でもらいます。 運用する会社が %の手数料をもらって, かったお金の %をもらいますよと。だ からこの運用する会社の経営陣も,その年間の手数料 %で固定費を賄わないといけな いんだよ。 億円の %といったら 億ですからね。 億で優秀な社員に,一人大体 年収 千万円から 千万円くらい払って, 人近く集めればそれで 億いっちゃうな。 それとあと場所,オフィスね。 千万円くらい。大体チャラです,それで。でも 人
の優秀な人がこの 億円というお金を運用して成果を出す。そうしないと投資家との WinWin の関係はできない。 ⑹ 投資ファンドと法律 ここにいるみんなも小さい運用ファンドをやろうと思えばできると思った人もいるの では。例えば, 万円ずつ集めて,それで箱を作ってその箱の中で上場の株に投資を するというようなことをすれば,これはこれで投資ファンドですよ。ただしそれをみん なが勝手にやったら,法律上どういう問題が起こりますか? 友達に,私,運用したいんだ,上場株投資したいんだ, 万でできると思う,そう 思って両隣,近所に座ってる友人に声をかけて,全部で 万円になった。手数料もい らない, かったら かった分の 割だけちょうだいって。これは十分ファンドですよ。 これでファンドの事業は始められる。ところが勝手にこれをやると法律上どういう問題 が起こるかそこをしっかりと勉強して欲しい。今のことは法律上の問題さえクリアすれ ば,やる事は出来るんだよ。何をどういう法律上の問題をクリアしなければならないか。 それは僕も必死になって考えたんです。考えて初めて答えがわかるんだけど,ここでは 答えを言わないから皆さん勉強して下さい。 例えばラーメンファンド。ラーメン屋さんをやりたいという友人がいるけど,自分で はお金を集められないと。 万くらいあればラーメン屋さんはできるんだよね。だか ら自分がラーメンファンドを始めて, ∼ 人から 万円ずつ集めて, ∼ 万 円くらい集めて,これはラーメンファンドだと。そういう箱にお金を入れてラーメンの お店の事業に投資すると。そこから出てきた利益を 割は私がもらいますけど, 割は 皆さんに還元します。これがラーメンファンドです。簡単,でも法律上の壁はクリアし ないといけない。どういう法律上の壁をクリアしないといけないか。ぜひ皆さん考えて 下さい。あとで⒁で説明します。 ⑺ 投資ファンドの歴史 すこし,歴史の話をしたいと思います。もともとは投資信託が開始されたのが,大体 年代, 年代くらいです。このファンドというビジネスが本格的なビジネスと して成り立ち始めたのは 年代の後半くらいですね。みんなが 歳くらいの頃に一世 を風靡したんですね。どうしてこれが一世風靡したかというのは,後で時間があればお 話ししますけど。ここではいったん飛ばしましょう。 年くらいからスタートした ものの,最初のうち, 年代くらいまではほとんど残高もなかった。この 年の後 半くらいから,ここから一気にいろんな種類のファンドというものができ始める。ここ
に何があったか。なぜか,誰か分かる人? なんで 年代の後半から一気に拡大し たか,それは日本の銀行が抱えていた不良債権処理問題なんです。日本の銀行は 年代の後半に自分の会社のバランスシートにこびりついた不良債権,これを外したくて 外したくてしょうがなかった。とにかくバランスシートから外したい。みんな解決策が 見つからないけど,銀行は貸倒引当金というのを積んでいるから,バランスシートから 落としさえすれば貸倒引当金というのを利益に組み戻すことによって,損益上のインパ クトは抑えられる。例えば の債権を で第三者に売って の損をしたように見え るんだけど,バランスシートの反対には貸倒引当金が 余っていて,ネットの利益は なんですね。 銀行はとにかくバランスシートから不良債権を外したかった。この時にバランスシー トから外すのを助けてやろうという名目で外国からやってきたのがいわゆる外資系の ファンドです。ここが始まりなんです。それまで日本人にはそういうファンドがあると いう知識が少なかった,残念ながら。アメリカは同じことを 年初頭に経験してい る。アメリカは 年に同じことを経験してファンドが盛り上がった。日本は , 年 にようやくそんな仕事があるんだと気付いた。その時に銀行は不良債権をまとめてファ ンドに売ったんですね。 の債権を くらいで売って,銀行のバランスシートに の引当金を積んでるから銀行はプラスマイナスゼロ。銀行の指標がありますよね。不良 債権比率は,不良債権÷総資産だから,不良債権が 減った分,不良債権比率が少な くなっている。では, で買ったそのどうしようもない不良債権をどうするか? こ の不良債権処理会社がサービサーとして回収に回ってくる。 以上回収できればこの 人は かりますよね。 もう少しひどかった例も知ってますか? 一番わかりやすい例でいうと,例えばそ の不良債権の中に,A会社に対する 億円の不良債権がある。A会社は 億円の 借金をして大変だ。でも銀行は 億円の引当金を積んでるから 億円で売却しても 大丈夫。そこで投資ファンドにA会社に対する債権を 億円で売る。銀行がファンド に売ったのは 億円のA社向けの債権で,それをファンドに 億円で売った。銀行 は,その時点で 億円損をしてるけど,さっき言った引当金を 億円積んでるから損 益は 。不良債権比率は改善する。A会社向けの債権を 億円で買った投資ファンド の人はどうするか? A会社に行くわけです。「A社さん,おたく 億も借金して大 変だよね。借金を 億円にしてあげようかと。 億円返してくれるといい」と持ち掛 けるのです。そうするとA社は 億円お金を返すだけで 億の借金がチャラになっ ちゃう。それによって再生が進んだりするケースもある。だけど税法上いろいろ気を 付けないといけないことがあるんだけど,そんなことが当時はあったんですね。そんな
方法があったんだといって,日本の銀行もそれに気が付いた。地方でも同じ問題がある だろうといって,東京の銀行が同じビジネスを東京で立ち上げて,地方にそれを売り込 みに行った。それが , 年の頃の動きですね。だんだんそんなのが増えてきまし た。 ⑻ 会社のサイクルと投資ファンド 資料の 枚目まで飛びましょう。バイアウトファンドと書いてあるのは %超の株 を買うファンドのこと。それからアクティビストファンドというのは,株式の %を 持たないんだけど, %未満の株でいろいろな株主の権利を行使するファンドのことで す。この二つのファンドでは,法律的な知識が必要になります。法学部なのでここのとこ ろをご紹介していきたいなと思います。僕が 年に会社に入った頃にすごく売れた 本があるんです。会社の寿命 年。知ってる? 知らない? 僕の時にはすごいバカ 売れしたの。商社冬の時代,会社の寿命 年。商社冬の時代は商社にとっては衝撃的 だった。会社の寿命 年はみんなに衝撃的だった。なぜなら会社は 年で潰れちゃ うって。あれ, 年で潰れちゃうのか,みんなそう思うでしょ。でも本を読むと確かに そうだなと思うんだけど,例えば生き残ってる会社っていっぱいあるよね。花王にしたっ て 年企業っていっぱいあるよね。だけど中小会社ってオーナーが一代で立ち上げる んです。よし,頑張ろうってオーナーが立ち上げるのが 歳から 歳として,そこか ら 年経つと何が起こるかというと,彼はおじいちゃんになっちゃうんですね。そし たら子供が会社を引き継ぐ。もしこの中にオーナーのご子息さんがいらっしゃったら大 変申し訳ないんだけど,統計的に経済学で分析すると,オーナーの子供が会社を継いで うまくいく例より,うまくいかない例の方が多い。こういう分析があるんだよね。 話は脱線するけど,ただ面白いことに,子供が継いでうまくいく例がある。どういう 場合か? 日本には婿養子という制度がある。娘さんがいい旦那を連れてくる。おそら く,娘さんが連れて来たって,お父さんが後継者に相応しくないと思ったらだめだと 言ってるんだろうね。娘さんがいい旦那を連れて来て,お父さんがこいつならと言った 婿養子が会社を継いだ場合は傾向としてうまくいく。これは経営学の研究の中で良く言 われる話です。大体考えたってわかるよね。オギャーと生まれた子供が優秀か優秀でな いか,確率は二分の一。お父さんが優秀だからといって必ずしも子供が優秀ではないよ ね,というのが一つの会社の寿命 年の解釈。あともう一つの会社の寿命が 年の解 釈はこういうものです。今何かあるものが売れ始めてるとする。しかし 年もすれば プロダクトがすたれてくる。時間にすると大体 年くらいだったんですね。スライド にあるように,会社というのはサイクルがある。そのサイクルの中で,さっき言った
%よりも少ない出資のマイノリティ投資を受けた方が良い時期もあれば, %超のマ ジョリティ投資を受けた方が良い時期がある。マイノリティの中は細分化され,できた ばかりの会社であればベンチャーキャピタルというファンドに投資してもらうのが良 い。ファンドの種類はスライドにあるように,出資比率をどうするかと言う視点と, ファンドが得意とする分野はどういう分野か(ベンチャー投資や,事業再生投資,また, 事業を更に伸ばすのが得意なバイアウトファンドなど)という視点で,分けることがで きる。 スライドの 枚目にいきましょう。じゃあ,そのバイアウトランドというのは,ど ういうものかといいますと,投資した企業のマジョリティ %超ですね,これを取得 しましてその会社の企業の価値を高める。数年後に株式を売却してファンドはキャピタ ルゲインを得る。私はさっき言った東ハトを買収した時も,ゴルフ場の部分を切り離し て,お菓子の東ハトだけを再生させ,純粋なお菓子の東ハトになった。どうやって再生 するか? ⑼ 東ハト再生の事例 もうちょっとだけ元の話に戻すと,東ハトは債務超過だったから,民事再生法という 法律を使わないと切り離しはできなかったんですね。裁判所で民事再生法を申請する。 民事再生法は,この会社を再生するというふうに法律の名前になってるんだけど,新聞 の見出しはどうなってるか知ってる? 「東ハトは民事再生へ」なんて書かない。大体 「東ハト倒産へ」って。特に経済紙じゃないような一般紙だと「東ハト倒産」ですよ。 民事再生はそうじゃない,事業を再生させるために不良な部分を切り離しましょうとい う意味なんですが。そんなこと一般の社員にも分からない。「うち倒産?」 どうするみんな。入った会社が倒産ってなったら。逆にみんなが経営者だったらどう やってみんなで再生しようとしますかね。僕らがその時考えたのは会社というのはヒト とモノとカネ。それら 要素の何があって何が足りないか,これを考えなきゃいけない。 ヒト,やっぱり元気なくなるよね。モノ,生産力はすごいね。違うものを出さなきゃい けない。でも人が元気ないからそんな良いアイデアは出てこない。カネ,これは広告宣 伝や工場に投資しなきゃいけない。 たまたまその時サッカーの中田英寿氏という選手がいた。当時 歳代。中田英寿氏 というのはすごく頭が良かった。彼は次のステップも考えていた。次のステップの一つ はやっぱり企業の経営だった。じゃあ中田さんに頼んでみようかと。中田さんに東ハト の広報の,テレビCM ではなくて,執行役員として来てくれないかといってリクルー トしてみた。そしたら快諾してもらい来て下さった。
執行役員だからTV 広告にはでないけど,スポーツ紙が「サッカー中田選手,東ハト の役員就任へ」ってバーッと大きな記事に出してくれて,すごい宣伝効果もあった。今 までしゅんとしていた社員の人たち,うちの会社に中田がいるんだよと,元気になっ た。社員が元気になると会社が変わるんだよね。今までマーケティング的に甘いお菓子, キャラメルコーンが中心だったんだけど,ちょっと違う味を売ってもいいんじゃないか と。例えば辛い味。当時 年,皆さんが 歳くらい? 歳くらいの時,辛いお菓 子はなにがあった? 歳くらいの時は辛いのは食べないのかな。カラムーチョなんで すね。カラムーチョのシェアを奪える辛いお菓子を設計したんです。社員はやる気があ るから地球の反対側までいって世界一辛い唐辛子を探してきましたっていって,それが ハバネロという唐辛子だったんだね。当時は,普通はね唐辛子粉みたいなのを上から 降りかけるんだけども,東ハトは技術があるから生地にまでそれを練りこんだんだ。 辛さ倍増みたいな感じで。それに,若いモニターの意見も聞いてみた。そうすると, ものすごい,超ウマイとかそういう言葉がいっぱい返ってきた。そうか,みんなそう 言ってるんなら売れるかもしれないなっていって売り出したら,お菓子市場では,爆発 的な売り物になった。さらに広告宣伝を変えたりして,会社再生もうまくいったんです ね。 そんな事を考えながら会社の価値を高めるんだけど,一方でファンドの限界というの があるんです。それは当時の社員の人にも言われましたけど,こうやって今,やってい ただいていますけど,数年後にはファンドは売却するんですかねと。そうです,その通 りです。 年から 年したらファンドはイグジットします。最終的に東ハトの株式は山 崎製パンに売却しました。だから今は東ハトは山崎製パンの子会社です。でも良くなっ た後での株式譲渡だから,ステークホルダー皆にとって良かったと思ってます。買収直 後によく言っていたのは,厳しい状態で同業他社に売られると,乗っ取られちゃうかも しれない。でも元気いっぱいになってからどっかの子会社になれば,乗っ取られるわけ じゃなくて活躍の舞台が広がる訳だからさらなる成長ができるのではないでしょうか, と。 ⑽ 投資ファンドの企業価値向上策と法律 バイアウトファンドがマジョリティで投資した後にやるべきことは,スライドにある ①∼④のことです。 番目にあるのは,どうやったら営業利益が増えるかというのを 考えていくんですね。資料にあるようにその他にも手元の現金を増やすとか,マルチ プルって書いてあるのはみんなわかるかどうかわからないけど,PER とか株式市場に よる評価を拡大させることです。あと 番目に書いているのが財務レバレッジ。借金を
してある程度レバレッジをかけるということ。スライドにある①②③④に関する個別の 説明がその次のスライド。①営業利益をどうやって増やしますかというところを詳しく 書いています。その次の②どうやって現金を増やしますか。③マルチプルを拡大します か,というのが 枚目に書いています。それから④財務レバレッジ。どうやって増や しますか。簡単に言うと自己資金だけで会社を買ったらだめですよと。ある程度借金を して会社を買うのが普通ですよということですね。その借金の額をいくらくらいにする かというのを考えるのも大事な仕事ですよというふうなことが説明されています。 ここでいう借金をLBO というんですけど,レバレッジドバイアウト(LBO)って聞 いたことあります? LBO。これ買収する時に,買収する会社の資産を担保に借り入れ することなんですね。法律的に関係あるんで若干説明しておくと,LBO の融資は債務 不履行の条件が細かく書いてある。こういう条件になったら,借り手は期限の利益を喪 失し,お金を返さないといけない。例えば二期連続赤字になるとか。もし,二期連続赤 字になる見込みなら借り入れ時から,事業計画に合わせた(例えばうちの会社はこうい う事業計画だから二期連続赤字になる。それは最初から認めておいてくれ)交渉が可能 になる。事業計画は会社毎に違うからね。 ここでも弁護士が大活躍ですよ。銀行側の弁護士も,それからお金を借りる側の弁護 士も大活躍。この条件で本当にいいのかと。弁護士も事業計画の内容が分かってないと。 だって事業計画上, , 年目は赤字なんだけど, 年赤字だったらお金返しますって いうのを認めたら変な弁護士だよね,そんなの。だから弁護士も事業を分かってないと いけない。僕らも当然弁護士に事業と財務の説明をする。こういう事業内容だからこう なりますよって。で,契約書を結ぶわけですね。だからこのLBO というのは普通の銀 行融資とは違う。銀行側もこれを出したくて仕方がない。なぜかというと,収益源にな る。普通の銀行の融資というのは,お金を出してもそれ自体には手数料は発生しない。 でもLBO の場合は,これだけ大変な手間をかけてるから,銀行がお金を出した瞬間, 貸出額の一定割合が銀行の収益になる。だから銀行の収益のかさ上げにもつながるんで 彼らはやりたい。借り手側にも法律を含めた知識がないといけない。これがLBO なん です。 ⑾ LBO の功罪 そのLBO についてファイナンス上,いい点もあるし,悪い点もあります。特に悪い 点で借りる側が気を付けないといけないのが財務制限条項,これは通常の銀行融資には ないですからね。例えばいくら以上の設備投資をする場合には銀行に相談をしないとい けないとか,そういうのを契約書に全部入れるんです。バイアウトローンの特徴って書
いてありますね。でもそれも事業のことをちゃんと理解できる弁護士とか,あるいは企 業の法務の方がいれば大丈夫です。LBO の功罪についてはこのページに書いています。 それから 枚目は皆さんに関係ないと思いますが,もし逆にお金を出す立場に立った 時はどういうふうなところを見てバイアウトファンドを選んだらいいかと,ファンドの 選定のスキルということが説明されています。 枚目ですが,さっき言いました出口 戦略ということでやっぱり 年から 年するとファンドは株式を売却しないといけな い。 枚目はファンドのストラクチャーですね。どういうふうなストラクチャーを使 うか。後でもう少し詳しく説明します。 ⑿ ファンドのストラクチャーと法律 このファンドのストラクチャーといった時に法律が大切になる。ファンド自身のスト ラクチャーについて,皆さんにもう少し詳しく説明しますと,さっきラーメンファンド をやるって言った話をしましたね。そうするとラーメンファンドのお金の受け皿,お金 を一回プールする場所が必要になる。そのお金をプールする受け皿をどういう法的な枠 組みにしてもらうかというのが法律上の問題です。もう一つのストラクチャーの問題は 東ハトのお菓子部門を買収した。買収時にはどういうストラクチャーを作ろうかという ことです。すなわち,お金を集めるプールの問題と,買収する場合の買収の際のストラ クチャー,これらが法律の問題が生じる部分です。 今から法律に関係することを中心に話していきます。まず最初に,会社を買収する際, どういうふうな法律的な枠組みを考えないといけないのか。それはここに書いてある M&A の基礎知識,ストラクチャーと書いてあるところです。 枚目を見てもらいます と,会社を買収するっていう時に,一番手っ取り早いのが会社の株を買い取ることです ね。株を買い取る方法のほかには,第三者割当増資があります。第三者割当の他に,営 業譲渡(事業譲渡)もあります。あまり全部一杯やっちゃうと話がごちゃごちゃしちゃ うから,今日はこの三つだけにします。後は資料をつけていますから興味のある人は見 て下さい。 株式の買い取り,第三者割当増資,営業譲渡の三つ。要は会社を買収する時にどう やって買うのかということですね。株式を買い取るのが一つの方法,第三者割当増資を するのも一つの方法,営業譲渡も一つの方法。どれにするんだということを一番最初に 決めないといけない。それぞれ法律的にどういう関係が起こってくるのか。この図を見 て下さい。概略的に整理していますから。株式の買い取り,一番最初のやつ。買いたい よという人はここにいます。今この会社はこれくらいの株主に保有されています。よく 見てね。この株主に現金が行きます。株が動きます。結果としてどうなるかというと,
こういう状態で新しい買い手が株を持つ。これは分かりました。今お金はどこに行きま した? お金は旧株主のところに行きましたね。 次に,第三者割当増資。会社が新しい株券を発行します。新しい株券を発行して,会 社に買い手が現金を払い込みます。新しい株券は買い手の元にいきます。最終的に現金 はどこに行きましたか? 会社です。これが第三者割当増資と株式買い取りの一番大き な違いです。現金が株の売り手に行くのか,それとも会社に入るのか,これはこれから この会社を成長させていく上で,現金が新たに必要なビジネスなのか,それとももう現 金はいらないビジネスなのかによって変わってきます。例えばさっきの東ハトのよう に,これから現金を追加して,テレビコマーシャルをいっぱいやらないといけないと いった場合,一番の,最初の株の持ち主にお金が行っちゃったら会社には行かないです よね。だから,選択肢としては排除されるのです。逆に,もうキャッシュフローは既存 事業で十分まわっていて,お金いらないよという会社であれば最初の株式の買い取り (株式譲渡)を選択する。ここをまず考えないといけない。会社が現金を必要としてい るかどうか。それによって第三者割当増資にするか,株の普通の売買にするかというの が決まってくる。 これは今,株の売買の話をしましたね。じゃあ,ある会社が,別の会社の借金を保証 していて,それが財務諸表に載っていなかったとする。今買い手が %の株式を買っ た。その債務は,誰が負担するか? それは新しい買い手なんです(会社が存続する限 りにおいて)。そんなものは当然ないと思って株を買ってしまった。そんなものを保証 させられたらたまらない。そこで,それを避けるために,株式の譲渡に際しては表明保 証という,いわば売り手の証明書みたいなものをつけるのです。それから,そうしたも のが後から出て来ないためにも,デューディリジェンス(精査)というプロセスが大切 になるのです。 大体会社って,危なくなってくると何をするか分かんないんですね。そういう隠れた 負債がある懸念がある場合は,営業譲渡を選択します。営業譲渡の場合は,会社のこの 事業に関する部分は譲り受けるけど,それ以外は不要ですということができるのです。 この手法の一番いい所は,いやな負債は引き受ける必要がないのです。だからさっき話 した隠れた負債とか,そういうのは全部,売り手の会社に置いておけるんです。いいも のだけを全部持ってくることができる,そういうメリットがあります。ところが,営業 譲渡の場合は,こっちへ移るときに,全従業員の合意が必要だとか,資産を一つ一つ, この資産を移すとか移さないとか,ということをチェックしないといけない。こういう 面倒くささはあります。こういうふうなそれぞれのストラクチャーのメリットやデメ リットがあるんで,法的な知識が必要になります。
最後にまとめてあります。さっき言った現金がどこに行くか。スライドのページでい うと 枚目ですね。現金が会社のところに行くか株主のところに行くか。一番最初の 株の買い取りの場合は,株主に行っちゃうんだけど,第三者譲渡の場合は会社にいきま す。ここが大きな違いですね。また,株式譲渡や第三者割当の場合は負債も債務も含め て全部新たな買い手が引き受けないといけないのに対して,営業譲渡の場合には,必要 なものだけ持ってこれますよ。ただ,その部門の従業員の同意が必要になるんで大変で す。全員の印鑑が必要だということですね。あと,株主総会はどういう決議が必要かと いうのも問題になります。営業譲渡の場合,資産の大半を占めるような重要なものを譲 渡する場合には,重要な営業資産については株主総会での特別決議といって 分の 以 上の決議を得なくてはいけない。それに対して,株の買い取りの場合は,その資産規模 割合によりますが,売る側の方は別に総会決議はいらない(取締役会決議は要する場合 もある)。第三者割当の場合は,授業枠内であれば取締役会決議で可能になる。 それから面倒くさいのが許認可ですね。株の売買の時は許認可は全部引き継ぎますけ ど,営業譲渡の場合は引き継げません。許認可を新しく取得する必要がある。 ⒀ M&A の流れと法律 次に,M&A の流れですけど,さっき言ったどういう手法で M&A を行うんだという ところから始まって,隠れた債務はないの? 資産は劣化していない? などといった 資産・負債・売買契約・仕入れ契約・従業員契約などのデューディリジェンス(精査) を行います。このデューディリジェンスをしっかりやらないと変なものまで引き継いで しまうので,デューディリジェンスというのはすごく大事になってきます。いったい何 をデューディリジェンスするのかというのは次のページにありまして, 枚目ですね。 ここでは弁護士さんがまたもや大活躍です。諸契約ですね。本当にこの会社が契約をし ているのか。時々あるんですね,古い会社だとすると,あまりにも古すぎて昔の販売契 約がないとか。そうすると買収した後におたくとは販売契約がないから販売しませんよ と言われるリスクがある,そういうのがないか全部契約書をチェックするんですね。そ れから,訴状,かかっている訴状があるかないか。ここらへんは法務部,企業の法務部 は大活躍。今会社で優秀な法務部の人が少ないのが問題になっていますから。あと雇用 ですね,最近問題なのはブラック企業でないかどうかとか。デューディリジェンスは, 日本語では精査といいます。精査,これがすごく大事になってきます。その他,環境と いうのも最近大事ですね。工場の跡地を買収しました。工場の跡地から汚染物質や放射 能が発見されました。この除去費用は誰が負担するんですか? 前のオーナーですか, 新しいオーナーですか。新しいオーナーですよね。さっきと一緒。だから変なものを買っ
ちゃったら,環境の負債を背負ってしまうことになる。 ちょっと一枚戻りますけども, 枚目でデューディリジェンスがあってお互い値段 の合意が取締役会でできたら,LOI(基本合意書,Letter of Intent)を締結します。会社 のプレスリリースはこの段階でなされます。でも本当にM&A が完了するのは最終契約 時なんです。でも,新聞発表されるのはLOI の段階なんです。この LOI と最終契約の 間でよく揉めることがあるんです。それで,破談になったケースもあります。 ⒁ ファンドの資金集めと法律 さっきの 枚目に戻りますけど,⑹で考えておいて欲しかったのがこれですね。 ファンドの資金集めの段階でどういうことに法律的な事が関係してくるか。あなたが ラーメンファンドを作りました。ラーメンファンド,勝手にお金を集めてもいいのか。 その法律的な枠組みはどうなっているのか。そこについて話をして今日の話を終了した いと思います。ページは飛びますが,ファンドビジネスに関する資料ということで,ス ライドの 枚目にいきます。これは,これからファンドが伸びるぞということを言い たい資料なんだけど,何を言ってるかというと,バブル以前は,世の中に物がなかっ た。物がなかったから何が必要だったかというと,大きな工場,大きな工場を作るため には大きなお金を集めた大銀行が必要だった。大銀行を中心にある程度,規制に守られ つつ大きな工場を作り,物を規格化し,それを大量生産することが時代の要請だった。 ところがだんだんと時代が豊かになってきて,物があふれてくると,個性が求められる 時代になる。 さっきのラーメン屋だったら,昔は醬油味の同じ味でよかったのが,私は味 味,私 は塩味がいい,いろんな個性が豊かになってくる。そうするとお金の出し方もバラバラ になってくるんじゃないか。そうなってくると大企業中心の融資だけではまかないきれ ない,もう少し個別のニーズに応じたファンドのようなものが,そしてまた,借り入れ ではなくてエクイティ性の資金が必要になる。すなわち,個別ニーズに対応した,エク イティ性の資金の出し手が必要な時代になってくるというのが,今日の言いたかったこ とでした。要は時代なんですね。だからファンドはこれからしばらく伸びる事業だと思 います。アイデアさえあれば。全くの思いつきで話していますが,例えばオリーブラー メンを作りたいとかさ,新しいアイデアがあれば資金がついてくる可能性があります。 だけど銀行に行っても相手にされない。実績や担保がないと。でもファンドはアイデア だけで出資してくれる可能性がある,それがエクイティ性資金の良いところです。皆さ んが,じゃあ,ファンドを作ってお金を集めて,例えばオリーブラーメンファンドをや ろうと思ったとする。
しかし,法律の枠組みは結構勉強しないといけない。こういうふうになっています。 これは,金融庁のホームページなんですけど,これが投資家です。隣近所の方からお金 を集める時には,隣近所の方がみんな投資家になります。ラーメンファンドを運用する 人たちは,その人たちそれぞれ登録が必要であったり,適格機関投資家等特例業者とい う比較的緩いものでも届け出が必要になってきます。お金を集める際も勝手にお金を集 めるのはいけないので,何らかの登録や届け出を金融庁にしないとお金を集めてはいけ ないことになっています。なぜかというと,それが噓かもしれないからですね。そうい うことを避けるために法律上,金融商品取引法,金商法と呼ばれているものがあります。 結構堅く縛られているということなんですね。思いついた,じゃあやりましょうかって お金を集めればいいかというと必ずしもそうじゃない。 あともう一つ。このビークルというのがお金を入れる入れ物なんですが,それにも 色々な種類があります。例えば民法上の組合ってありますよね。民法上の組合の場合, 法律上の問題は,組合員は無限責任なんですね。何かというと,例えば,ラーメンファ ンド始めました, 人が 万円ずつ出して 万集まりました,とします。ところが, ファンド事業をやっている人が,その 万の出資を使った上にさらに借金もした方が いいと考えて借金もしたとします,勝手にファンド名義でね。例えばファンド(民法上 の組合)が , 万円の借金をしたとしましょう。ところが事業が失敗した。お金を出 した人は一人 万出したから,追加損失はなくそれで終わりと思っていたら,後から 借金の請求書が来てしまう。一人当たり , 万円の / 相当の。これが無限責任で すね。お金出した側は,出したお金以上に損したくないと思っているから,民法上の組 合にしちゃうと無限責任という問題が起こる。それに対して新しい法律ができたのが投 資事業有限責任組合法と言われている法律で,この法律に基づいたファンドの投資家は 有限責任とうたわれている。ファンドの運営者は無限責任ですけども,投資家は有限責 任であると。その代わりに,ファンドの監査とかファンドの登記が必要になってくると いうことがあります。 最 後 に このように,投資ファンドの運営にあたっては法律の知識が大変重要になってきま す。皆さん,今,法律をしっかり勉強すると,将来,こうした業務に関連する仕事に就 くことも可能になります。こうした業務は比較的人気の高い業務だと思います。 ちょうど時間になりましたので終わりにしたいと思います。どうもありがとうござい ました。
司会 ありがとうございました。バイアウトファンドを中心にご自分のご経験を踏まえ て分かりやすく投資ファンドについてご講義いただきました。これで授業を終わりに します。どうもご苦労様でした,お疲れ様でした。最後に光定先生に拍手をお願いしま す。 (みつさだ・ようすけ 産業能率大学教授・あすかコーポレイトアドバイザリー 株式会社 取締役ファウンディングパートナー) 【編集注】 本稿は,平成 年 月 日に行われた香川大学法学会講演会の記録である。