開花期高温処理が日本型水稲の花粉発芽に及ぼす影響
諸隈正裕・田尾桂子
EFFECTS OF HIGH TEMPERArURE TREATMENT ON THE FLOWERING OF
JAPONICA RICE ON POLLEN GERMINATION
Masahiro MoROKUMA and Keiko TAOThe e飴cts of high tempeIatuIe treatment On theflowerlng Of five.JaPOnicaIice cultivars on pollen
geIminationweIeinvestlgatedlThestudyfbcussedontheef托cthightemperaturehadonpollengerminationon
thestigmasofspikeletsandtheirgrowthonculturemedium
InhightemperaturetIeatmentat35℃,SPikeletfbrtility,amOngStallcultivarswasaveraged,andobservedto
have decreased by aboutlO%below the controlThelargeSt declinein spikelet fbrtility was observedin
Koganebare
ThenumberofgerminatedpollengrainsonthestlgmaSOfspikeletsvariedgIeatlyamongstthecultivars,yet
similartendenciesofgerminationwereobseIVedinindividualtIeatmentCOnditions
KoganebaIeShowedthegreatestdecreaseinthepeICentageOfpollengerminationonthestigmasofspikelets
duringthe35℃heattreatment,COmPaIedwiththatofthecontrolThiscanbeattributedtothef己wnumberof
POllengrainsshedonthestigmasofspikelets
Amongstallcultivars,theaveIagePerCentageOfpollengerminationonculturemediumat35℃heattreatment,
wassimilartothecontrol,/yetdif托IedamongthecultivarstendingtobelowerinKoganebareAfter pollen shedding on culture medium,there werelarge diffbIenCeSin the percentage of’pollen
germination,after5minutes,amOngStthecultivarslThesewereaveragedtogetherandobservedtobegreater
thanthecontroIpercentageofpollengerminationat35℃heattreatmentNodifftrencesamongstthecultivars
wereobservedafteIlOminutesofpollengermination
In Koganebare,the growth ofpollentubes onculture mediumwas observedto bebelow thatofthe other
Cultivarsandthelengthoftheanthersappearedshortened
Keywords:HightempeTature,Po11engermination,Japonicarice,Spikeletsterility
で発生が認められており(56),インド型水稲を中心にそ の原因と対策について−の研究が行われてきた(789).しか しながら,日本型水稲を用いた研究は限られており(10),今 後の温暖化の進行を考慮すると,日本型水稲についても 開花期の高湿不稔に関する基礎的な知見を収集しておく ことは極めて重要であると考えられる. イネの開花期高温に対する耐性は雄ずいより雌ずいで 大きいことがインド型水稲を用いた研究の中で確かめら れているL8).またその報告の中で,雄ずいにおける高温 障害としては,①拓の裂開あるいは飛散の不良による受 粉不良,(参柱頭上での花粉の発芽不良,の2つがあり, そのいずれが主因となるかは品種により異なるものと結 緒 イネの高温による障害は生育時期により様々な種腰が 認められている巾 なかでも開花期の高湿による不受精は 最も大きな被害を与える(ユ2)現在,大気中のCO2濃度は年間1.5ppmvの割合で増
加を続けている(3Jけ 気象的予測モデルを用いた温暖化に伴う我が国水稲の収量変化予測によると,西日本では減
収し,また収量の変動係数も大きくなると予測されてお
り,これらは高温障害の発生に起因すると考えられてい
る(4)また,開花期における高温不稔は熱帯圏の多くの国々
脚注:本報告の一部は日本作物学会第207回講演会で発表した.
香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 98 論づけている.しかしながら,日本型水稲の稔実や雄ず いの機能障害に対する開花期高温の影響について品種間 で比較した研究は行われていない. 本報告では,日本型水稲5品種を用いて,開花期高温 処理が稔実や柱頭上及び人工培地上における花粉発芽に 及ぼす影響について比較検討した. 材料および方法 1.供試ネオ料 供試材料には現在日本で広く栽培されている日本型水 稲品種,コシヒカリ,ひとめぼゴ↑,黄金晴,日本晴,ヒ ノヒカリの5品種を用いた. 2.材料の育成 材料は,1997年5月31日に成苗ポットに播種し,1ケ月
後に菓齢6∼7の苗を1/5000aワグネルポットに1ポッ
ト3本ずつ移植し,屋外で栽培した.各ポットには基肥 として化成肥料(N:P205:K20=16:16:16)を3gずつ与え, 植物の生育状態をみて適宜追肥した. 3.処理装置 高温処理には自作の温度処理装置を用いた(図1). 温度処理装置は1/5000aワグネルポットを1個収納でき るチャンバー部(50×50×100clll)と温度制御部(50×15×18cm)から構成されている.温度制御部はラジエー
タとフアンからなり,温度調節器(TRし108H,トーマス 科学器械社製)で水温を調節したラジエータを介して, フアンでチャンバー内に送風することによりチャンバー 内の温度を制御した.なおチャンバーには透明なアクリ ル板(5111111厚)を使用した.温度処理装置は2台作製 し,チャンバー内上部に混線度記録計(TR−72,ティア ンドデイ社製)をそれぞれ備え付け,5分ごとにチャン バー内の気温及び相対湿度を測定した. 4.処理方法 上記処理装置を用いて,各品種の出穂開花期に35℃・8時間(8:00∼16:00)の高温処理を4日間(35℃区)
行った.高温処理中の相対湿度は60∼70%であった.高温処理中における夜間(17:00∼7:00)の気温及び相
対渥度はそれぞれ28℃,73%に維持した.なお屋外で出 穂開花した個体を対照区とした. 5.調査方法 (1)稔実奉 稔実率を調査するため,処理日以外に開花した穎 花には黒マジックで印を付け,35℃処理中の穎花(無 印)と区別した.なお子房が膨らんでいたものを稔 実した穎花とみなし,稔実率を求めた. (2)柱頭上の花粉調査Fig.1Apparatusfbrhightemperaturetreatment.
高温処理中に開花した穎花は閉穎前に採取し,す ぐにFAA固定液(ホルマリン:酢酸:50%エタノー ル=5:5:90)中に固定した.これらの穎花から柱 頭を取り出し,プレパラート上でコットンブルーを 頭上の受粉数と発芽花粉数を 用いて染色した後,柱 それぞれ光学顕微鏡(BHB,オリンパス社製)で調 査した.両処理区とも各品種12粒の穎花について調 査した. (3)人工培地上の花粉調査 人工培地上花粉発芽の調査は刈谷の方法に従っ たり−).両処理区とも開穎直後の穎花を採取し,すぐ に4.5cl¶シャーレ内の寒天培地上に花粉を置床した. 培地組成は寒天濃度1%,ショ糖濃度20%,ホウ酸 20pp】mとした.約20℃の恒温器内で20分花粉を培養 した後,花粉発芽の様子を実体顕微鏡(SMZ−10,ニ コン社製)で観察し,写真を撮影した.発芽した花 粉管が花粉直径の半分以上である場合に発芽とみな し,発芽率を求めた.調査は8∼11穎花について行い,1穎花につき200∼・300粒の花粉を調査した. また両処理区とも,上記とは別に花粉置床後5分 ごとに20分までの花粉発芽の様子せ写真撮影し,発 芽率の経時変化を調査した(4反復). 同様に,花粉置床後3分ごとに18分まで撮影した 写真から,花粉管伸長の様子を調査した(10花粉). (4)薪長 各品種とも12の紡を調査し,所長を求めた. (5)統計解析 統計解析には,分散分析後,ポストホックテスト としてダンカンの多重範囲検定法を用いた. 2.稔実率 対照区及び35℃区における各品種の稔実率を表1に示 した.35℃区における稔実率はひとめぼれ以外はいずれ も対照区より低かったが,低下の割合は平均して約10% と小さく,最も低下した黄金晴で20%の低下であった. 3.柱頭上受粉数 対・照区及び35℃区における各品種の柱頭上受粉数を図
3に示した。柱頭上受粉数には顕著な品種間差異が認め
られたが両区とも同様な傾向を示し,受粉数はコシヒカ リで最も多く,ひとめぼれとヒノヒカリ,日本晴,黄金 晴の順に減少した.いずれの品種においても35℃区にお ける受粉数は対照区より減少し,その割合は44∼95%と 品種間で著しく異なり(平均58%),黄金晴で最も大き く減少した. 4.柱頭上の花粉発芽 対照区及び35℃区における各品種の柱頭上発芽花粉数 を図4に示した.発芽花粉数は両区とも受粉数と同様な 傾向であったル 対照区及び35℃区における各品種の柱頭上発芽花粉数 で分類した穎花の割合を図5に示した.対照区では各品 種とも80%以上の穎花で10粒以上の花粉が発芽しており, ひとめぼれとコシヒカリでは35℃区においても調査した すべての穎花で10粒以上が発芽していた.一・方35℃区に おける黄金晴では,75%の穎花で柱頭上に花粉が全く付 着していなかった. 対照区及び35℃区における各品種の柱頭上花粉発芽率 を表2に示した.35℃区での発芽率は対照区より有意に 低下した.また対照区では発芽率に有意な品種間差異は 結 果 1.チャンバー内の気温及び相対湿度 35℃処理中に測定したチャンバ1−・内の気温及び相対湿 度の推移の一例を図2に示した.35℃区における全品種 の処理中平均気温及び平均相対湿度はそれぞれ35.3℃及 び622%であった. ︵整合還召n占むA一馬lむ出 0 5 0 5 0 7 6 6 5 5 ∴ご=こ〓二こ・エ≡三・〓′ 8 10 12 14 TimeofdayFig2 rime cour・Se Of air temperature and relative
humidityinside the chamber during high tempe−
rature treatment Thblel。Effbctsofhightemperaturetreatmentonspikelet
fertilitylnJaPOnicaricecultivars
0 0 0 0 0 5 0 5 211 Su叫空地已む〓Od︼〇.〇N Fertility(%) Cultivar contro1 35℃ 810 87.9(109) 912 808(89) 弘2 756(90) 785 631(80) お1 727(88) HitomeboIe Koshihikari NipponbaIe KoganebaTe HinohikaIiHitomebore KoshihikariNipponbare Koganebare Hi†10hikari
Cultivar
Fig3 E能cts of high temperature treatment on the number・Of’pollen grains shed on the stlgmaS Of SPikeletsin jaPOnica rice cultivars‖ Verticalbars indicate the standard eIrOrS Of means。Di飴rent lettersdenotesignincantdi飴renceatP<005
Mean 836 76.0(91)
*valuesinparenthesisindicatetheratiooffbrtilityat35℃tothe
香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 100 0 0 5 0 2 2
Thble2.E飴ctsofhightemperaturetreatmentonpo11en
geIminationpercentageonthe stigmasof
SPikeletsinJaPOnicarice cultivars
Su還h瑚u芸OdpU︸雲雇一弘ち.〇N Pollengemination(%) Cultivar contro1 35℃ 0 0 5 0 1 1 818a 86.9(106)a 75‖aa 82.8(109)a 88.1a 840(95)a 818a 21“6(26)b 879a 76.3(87)a HitomeboIe KoshihikaIi Nipponbare KoganebaIe HinohikaIiHitomebore KoshihikariNipponbare Koganebar’e Hinohikari
Cultivar
Mean 831 703(85) Di飴rentletters denote signi茄cant di飴rence at P<0.05Values
in parenthesisindicate the ratio ofpercentage ofpollen germi−
nation at35℃to the control
Fig.4 E飴cts of high temperature treatment on the
number’OfgeIminatedpollen grains on the stlgmaS
Ofspikeletsin.]apOnica rice cultivars.Verticalbars
indicate the standard errors of means.Dif‡もrent
lettersdenotesignincantdiffbrenceatP<0.05
5 0 5 887 宗一ご≡亡・︶﹂ ︵芭∽竜一ぷ竃∽ち亀d盲むじし£ 0 0 4 220 40 60 80100120140
0 2 1 ■■.−No.ofger・minatedpo11engrains
Fig”6 Relationships between the number of geIminated
POllen grains and spikelet fbrtilityin japonica rice
cultivars 80 60 40 20 0 認められなかったが,35℃区では黄金時の発芽率が他の 品種より有意に低かった. 両処理区における各品種の柱頭上発芽花粉数と稔実率
との関係を図6に示した.両者の間には1%水準で有意
な相関関係が認められた. 5.人工培地上の花粉発芽 対照区及び35℃区における各品種の人工培地上での花 粉発芽率を表3に示した即 発芽率には処理間での差はみ られなかったが,両区とも品種間で有意な差が認められ, ヒノヒカリで花粉発芽率が最も高く(90%以上),黄金 晴で最も低かった(78%).. 対照区及び35℃区における人工培地上花粉発芽率の経 時変化を品種ごとに図7に示した.ひとめぼれでは,両 Hitomebor・eKoshihikariNipponbar・eKoganebar・e HinohikariCultivar
Fig5 Proportion ofthe spikelets gr’OuPed by the number
Of germinated pollen grains on the stlgmaS Of
SPikeletsin)aPOnicaricecultivars.Thble3.E脆ctsofhightemperaturetreatmentonpollen
germinationpercentageonculturemediumin
JaPOnicaricecultivars
PollengeIminationonculturemedium(%) Cultivar contro1 35℃911ab
819(90)a 朗‖3bc 807(96)a 86.乃 886(102)a782cd
78.5(100)b95.4a
91.2(96)a HitomeboIe KosbibikaIi Nipponbare KoganebaIe HinohikaIi ニ≡\丁ヱ〓〓−・≡三ごニtニきこ、− Mean 871 842(97) Diffbrentlettersdenotesignificantdi飴renCeatP<O105Valuesin parenthesisindicate the ratio ofpercentage ofpollen germi−
nationat35℃tothe contIOl
︵芭已○−葛u召し弘已芸Od
Fig.8 Time couISe Oflength ofpo11en tubes on culture
mediumin.JaPOnicaricecultivars
Table4.ThelengthofantherinJaPOnicaricecultivars
Cultivar Lengthofanther(rrm) 2.18a 216aa l,86b l76c 214aa HitomeboIe KoshihikaIi Nipponbare KoganebaIe HinobikaIi 80 60 40 20 0 Mean 2022 Di飴rentlettersdenotesigni鮎antdi飴renceatP<0。05 の推移を品種ごとに図8に示した.黄金晴では両区とも 花粉置床後3分での花粉管の長さは他の品種より短く, また置床後18分での花粉管の長さも短くなる傾向がみら れ,特に35℃区では有意に短かった. 6.薪長 各品種の所長を表4に示した.薪長は日本晴と黄金暗 が他の品種より有意に短く,黄金時の荊が最も短かった. 0 5 10 15 20 Timeafter・Shedding(min)Fig7 Time course ofpollen geImination percentage on
culturemediumin)apOmicaricecultivars
区とも花粉置床後5分までに20分後における発芽花粉総 数の約80%がすでに発芽していた.一・方35℃区における 日本晴とヒノヒカリでは,花粉置床後5分で比較すると 発芽率はひとめぼれの約半分と低かった.しかし両区と も花粉置床後10分までには発芽花粉総数の80%以上が発 芽していた. 対照区及び35℃区における人工培地上での花粉管伸長 考 察 イネ花粉の人工発芽については古くから多くの報告が香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 102
花粉が10個以上の穎花の割合と稔実率との間には相関
係数0β98(データは示していない)といういずれも高い 相関関係が認められ,同様な結果が得られた.これらの 結果から,品種間での関係を考える場合においても柱頭 上発芽花粉数やその頻度が高温下での稔実を左右する主 要な要因であると推察される.また本研究では,柱頭上 平均受粉数と柱頭上平均発芽花粉数との間にも処理や品 種に関わらず密接な関係(相関係数0‖993)が認められた. このことと人工培地上での実験から得られた発芽能力に ついての結果とを考え合わせると,本研究に供試した品 種では,柱頭上での受粉不良が高温処理による稔実低下 の主要因であると考えられる.また,高温処理による稔 実の品種間での違いは柱頭上受粉数と花粉の発芽能力与二 対する品種間での反応の差異によるものと考えられる. 柱頭上への受粉能力は耐暑性の選抜指標となり得る重 要な特性であると考えられており(15),また柱頭上受粉数 の品種間差異は,高温下だけではなく適温下においても 認められている(9).本研究においても,35℃処理により 柱頭上受粉数は対照区の約半分に低下したものの両区と も同様な品種間差異が認められた(図3).特に東金晴 では35℃処理による受粉数の低下は著しかった. 蒋長と低温に対する穂ばらみ期不稔との間には密接な 関係が翠められている(16).本研究では,高温に対する感 受性が最も高かった黄金暗において薪長が最も短かった ことから,高温障害においても両者の密接な関係が示唆 される㊥ 今後はさらに品種数を増やして所長との関係を 検討していきたい. 本研究では,稔実率,柱頭上受粉数,花粉発芽率や所 長など多くの項目において,黄金晴の高温に対する感受 性は他の品種より高いことを示唆する結果が得られた. 柱頭上における受粉数の多少は前の裂開のタイミングと 裂開程度で示される裂開特性に依存していると考えられ ている(8).黄金晴では,人工培地上における花粉発芽率 の実験において,高温処理中に採取した穎花から培地上 に花粉を落とせないことが多かった.このことから黄金 晴では,開穎直後には高温処理によりまだ所が不裂開で ある穎花が多く,前の裂開程度と裂開のタイミングの両 方が柱頭上受粉数の低下をもたらしたものと推察される. しかし柱頭上受粉数の極端な低さに対して−稔実率が63% と比較的高かった理由は不明であり,これらの点につい ては今後さらに詳細に検討していきたい. 多くのインド型水稲を用いた開花期高温処理(35℃)の結果,稔実率は0∼90%の広範囲に及び,顕著な品種
間差異が得られている(717).本報告における日本型水稲 の稔実率は,63∼88%の範囲であり,対照区に比べて約 10%の低下にすぎなかった(表1).インド型水稲を用あり,イネの花粉発芽における高温限界は40∼45℃であ
ると言われている(12).しかし,開花期高温と花粉の発芽
との関係に関する研究は極めて少ない(13)小 本研究の結果,
人工培地上での発芽率,発芽率の経時変化及び花療管の 伸長はいずれも35℃処理により有意に低下することはなかった(表3,図6,図7).これらの結果から,35℃
の高温処理は人工培地上での花粉発芽,つまり花粉の発
芽能力に対してほとんど影響を及げさないものと考えられる.ところが,予備実験として38℃処痙を行い,その
時に採取した花粉では,対照区に比べて人工培地上の発
芽率は約30%低下し,有意な差が認められた(データは
示していない).このことは,38℃というより帝温な条
件になると,花粉の発芽能力自体が障害を受けることを
示唆している.
花粉の発芽能力には,35℃処理による影響はみられな
かったが,品種間では処理に関係なく差異がみられた.
両処理区とも人工培地上の発芽率は黄金暗が他の品種より有意に低く(表3),また花粉管の伸長についても同
様な結果が得られた(図7).これらの結果は,高温条
件下だけではなく好適条件下においても花粉の発芽能力には品種間差異があり,特に黄金晴は他の品種より花粉
の発芽能力が劣ることが明らかとなった.
本研究では,柱頭上の花粉発芽率は35℃処理により有
意に低下した(表2).しかしこの低下は黄金晴のみで
顕著であり,他の品種では大きな低下はみられなかった.
ここで黄金晴の柱頭上発芽花粉数で分類した穎花の割合に着目すると,75%の穎花で花粉発芽は全くなく(図5),
もともとこれらの穎花では柱頭上に花粉が付着して−いなかった.そこで柱頭上に花粉が付着していた穎花のみに
ついて発芽率を再計算すると,87%となったことから,
柱頭上での発芽率に対する35℃処理の影響は小さく,花
粉が付着していた穎花の割合の低さが柱頭上発芽率の顕著な低下を引き起こしたものと考えられる.
人工培地上発芽率と柱頭上発芽率との間には密接な関係が認められている(13).しかしながら,本研究では両者
の間に密接な関係はみられなかった.上記の報告は,1つ
の品種で異なる温度条件下で得られた結果であり,本研
究では複数の品種間での関係であることから,このよう
な差異が生じたのかもしれない.
柱頭上平均発芽花粉数と稔実撃との間には密接な関係が認められている(10〉.また受精が確実に行われるために
は,柱頭上で10個以上の花粉が発芽することが必要であ
るといわれており(14),柱頭上での発芽花粉が10個以上の
穎花の割合と稔実率との間にも密接な関係が認められている(8).本研究においても,柱頭上平均発芽花粉数と稔
実率との間には相関係数0‖783(図6),柱頭上での発芽
いた研究結果と併せて考えると,本研究に供試した日本 型水稲5品種の高温に対する穎花の感受性は低く,比較 的高温に対する耐性が強いものと考えられる.今後は, より多くの品種を用いて高温不稔の品種間差異について− 検討し,さらに柱頭上受粉数の品種間差異を引き起こす 要因についても明確にしていきたい. 処理間では同様な傾向であった.黄金晴では,柱頭上花 粉発芽率は35℃処理により大きく低下したが,それは柱 頭に付着する花粉数の少なさに起因していた.人工培地 上花粉発芽率は35℃処理による低下はみられなかったが, 品種間で異なり,黄金晴で低い傾向がみられた.人工培 地に置床した後,初期(置床後5分)には発芽率に大き
な品種間差がみられ,その差は35℃処理により大きく
なったが,置床後10分には差がみられなくなった.黄金 晴では,人工培地上での花粉管伸長が劣り,また蔚長も 燈かった. 要 約 日本型水稲5品種を用いて,開花期高温処理が柱頭上 及び人工培地上における花粉発芽に及ぼす影響について 比較検討した. 開花期における35℃処理により,稔実率は5品種で平 均すると約10%低下し,低下の割合は黄金晴で最も大き かった.柱頭上発芽花粉数は品種間で顕著に異なったが, 謝 辞 香川大学農学部桶谷彰人数授には日本型水稲品種の種 子を快くお分けいただき感謝致します.引 用 文 献
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