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夏季における温州ミカン樹の水管理の指標としての葉の蒸散速度-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報告 第35巻 第1号 5∼12,1983

夏季における温州ミカン樹の水管理の指標と

Lての菓の蒸散速度

葦渾 正義,割石 俊哉,真部 桂

LEAF TRANSPILATION RATE AS ANINDICATOR OFIRRIGATION

TIMING FOR SATSUMA MANDARIN TREESIN SUMMER

MasayoshiAsf‡IZAWA,Toshiya WARIISHIand Katsura MANABE

Effects ofsolarradiation,air temperature and drought of soilon transpiration of satsuma

mandarintrees were observedinsummerseason,andtranspirationrateasanindicatorofirrig’ation timingWaS Studied= Transpirationrate ofcurren七SPring・leaveswas measuredwith a a11tOpOrO−

111etel∴

Under condition where soilmoisture was adequate,tranSpiration before sunrise and after

SunSetWaSremarkably】ower,andincreasedrapidlyaftersunrise.Thetranspiration rate of sun leaves between9:00a,m..tO8‥000r4:00p.m…OnCleardaywashighest.Therewasclosecorrelation betweentranspir・ationrateand solarradiation,and transpiration ratein the daytime on cIoudy

day(belowlO,000lux)decreasedabout50percent than that,On Clear day.Acomparative rela− tionship was obserVed between transpirationrate and airtemperature,butthe effect ofair tem・

Perature WaS]ower as comparedwith solaIradiation.

Under condition where soilmois七ure decreased as days went on,tranSPiration ratein the daytime on clear day was rapidlylower。Inthetrees ofthis condition,tranSPiration rate varied markedly amongleaves。Fruit growthwasinhibitedinproportiontothedecreasingofsoilmoisture,

and fruitgrOWth nearly stopped when transpiration ratelowered to about50per centin the

daytimeりItis proposed thatin the field wark transpiration rate can be used for the estimation

Ofirrigation time巾 温州ミカソ樹の春菓の蒸散におよばす照度,温度,土壌乾燥の影響について,か−トポロメ1一夕1−を用いて,夏季 に調査した。そ・して潅水時期の判定の指標としての蒸散速度にンついて検討した。 1..蒸散速度ほ,日出前と日没後にはいちぢるしく低かったが,日中にほはなはだ高くなり,午前9時∼年度3時 または4時の蒸散速度はほぼ同程度であった。蒸散速度と照度との間に.は密接な関係があり,照度が1万1ux以下に なると,蒸散速度は約2分の1に低下した。蒸散速度は温度が高くなるにつれて低下したが,その影響層度は照度よ りも相当に低かった。 2‖ 蒸散速度は土壊の乾燥に・ともなっていちぢるしく低くなり,土壌水分の適度樹では実による個体差が少なかっ たが,乾燥樹でははなほだ大であった。 3・・土壌の乾燥につれて果実の肥大は緩慢になり,その後停止した。果実の肥大停止席の日中の蒸散速度は適湿樹 の約2分の1であった。このことより実用的には,か−トポロメ・−クーで春其の蒸散速度を測り,その低下を目安に 潅水時期をきめるがよいと思われる。

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香川大学農学部学術報告 第35巻 第1号(1983) 緒 p 瀬戸内沿岸地域は少雨,多日照■で,とくに.梅雨明け後の夏季に.ほ乾燥する年が多い。温州ミカソの果実はこ.の夏季 に欄巴大盛期であるが,土壌乾燥のために.その肥大が強く抑え.られて,成熟果が小玉になる。この乾燥障害を防止する ため,近年,潅水が多く行われている。果樹園の潅水に.当って最初に.重安なことほ.,潅水開始時期の適確な判定であ る。この判定の指標として,テンーンヨ∴ンメ・一夕・−で土堺水分の減少度を測定する方法,プレッシャ血・チャンバーで 其の水ポテンシャルの低下度を測定する方法やダイヤルゲ・−ジなどで果実の肥大畳を測定する方法などが提唱され, 奨められているが,実用にほ−長一靡があり,果樹園における実際の潅水開始の時期の判定ほ,一応の見当でなされ ている有様である。筆者らは,土壌乾煉によって根における吸水最が減少すると,菓における蒸散最も減少するとこ ろから,オ1−・トポロメ・−タ・−で菓の蒸散速度を測定し,この蒸散速度の減少度をもって湛水時期の判定ができないか について調査を行った。その結果,土壌乾燥に.よって菓からの蒸散が2倍程度スロ−・になった時を,判定の指標にす るがよいとの結論に達した。なお,オ−・トポロメ・−タ・−ほ小型で果樹園への携帯に.便,着生粟について数秒で蒸散速 度(時間)の変化が測定できる。 材料および方法 ‡天候,照度,温度,土壌乾燥と蒸散速度 この調査は温州ミカン実の蒸散におよばす照度,温度,土壌乾燥の影響を具体的に知るとともに,フトー・トポロメ1− タ・−・でどの程度蒸散盈の変化が把握できるかについて,検討するために行った。なお,蒸散畳ほオ−トポロメ・−・タ・−・ で測った其の蒸散時間をキャリプレーショソして,蒸散抵抗値としてあらわすことが正しいが,厳密にほこのキャリ プレ−シ ョソに問題があるので,本実験ではキャリプレー・ショソを行わず,蒸散時間であらわした。潅水時期の判定 の指標としてほ,蒸散抵抗値を求めなくとも,蒸散時間でも可能と認められる。 (1)天候と蒸散速度 露地植の普通温州5年生樹について,9月9日の蜃天日と9月16日の晴天日に.,午前6時∼午後6時の問,1時間 ごとに.蒸散速度(オ・−・トポロメ1−・クーーで陽光部の春菓5枚に.ついて測定)と照度(照度計),温度・湿度(乾湿球温 度計)を測定した。土墳水分は前日に.潅水して適湿状態とした。 (2)照度と蒸散速度 貫地植の普通温州5年生樹の樹冠上面をワラムシロで覆ったしゃ光樹と無しゃ光樹を設け,5月26日(晴天)の午 前5時∼午後6時の問,1時間ごとに.両樹の蒸散速度と照度,温度・湿度を測定した。土壌水分は適湿状態とし,蒸 散速度,照度・温度・湿度の測定方法は前実験と同様である。 (3)温度と蒸散速度 フ・デイトトロンの15・20・25◇C室とコイトトロンの300C室(各室の湿度は約75%)で,土壌水分適度で発育の 普通温州2年生樹について,5月下旬と12月上旬の晴天日と蚤天日に,午前11∼12時に.蒸散速度を測定した。5月下 旬の測定菓は春菓,12月上旬の測定実は秋葉で,両者とも陽光部5菓の蒸散速度を測定した。 ¢)土壌乾燥と蒸散速度 大型コンクリ・−・ト鉢(直径80cm,深さ90cm,壌土)植の普通温州8年生樹を用い,6月4日より潅水を中止し た乾燥区と土壌水分を適度に保った適湿区∵を設け,乾燥区の春菓が掩莫した6月9日より14日までの間,年前11∼ 12時にり 両区とも陽光部の春菓10枚の蒸散速度を測定した。6月10日に・春菓の拇案下垂がいちぢるしくなったの で,蒸散速度の測定後に潅水して土壌水分を適度に・保った。春菓10枚の蒸散速度を測定したのは,土壌乾燥が強くな るにつれて蒸散速度の個体差が大きくなるので,この個体差について検討す−るためである。 この実験とは別に,良家の普通温州成木園のうちより,晴耕園と草生園を選び,6月25日の午後1∼3時に,陽

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聾渾正義,割石俊哉,真部 桂=夏季に・おける温州ミカン樹の水管理の指標としての其の蒸散速度 7 光部の春菓10枚の蒸散速度を測定した。昭和57年の5∼6月ほ例年とほ異なり空梅雨で,6月下旬にはとくに草生 園の土壁乾燥が相当に威かった。 Ⅱ 潅水時期の判定 大型コンクリ・−・ト鉢植(壌土,容水盈32,.7%,水分当盈22り6%)の普通温州8年生樹を用い,8月上旬(潅水中 止…8月2日),9月上旬(潅水中止‥8月28日)と10月上∼下旬(潅水中止10月1日)に土壌を乾燥させた3 乾燥区と,土壌水分をつねに適度に腐った適湿区の計4区を設けた。乾燥区と適湿区この陽光部の春菓5杖の蒸散速度 をか−・トポロメ−ターーで,果実10果の横径をダイヤルゲ・−ジで,毎日午前11∼12時に測定した。8月上旬乾燥区で は8月10日に果実が収縮,9月上旬乾燥区では9月4日に果実が収縮したので潅水して,以後ほ土壌水分を適度に 保った。しかし,10月上∼下旬乾燥区では乾燥が強くなっても果実が収縮しなかったので,ほぼ1カ月問,乾燥状 態においた。 蒸散速度と果径の測定後,乾燥区と適湿区の土壌を深さ10∼20emの部位より毎日30∼40g’採取し,乾燥器で24 時間乾燥して,乾士重比の土壌水分を算出した。なお,この土壌について容水盈を調べ,容水盛比であらわした。漁 家の普通温州成木草生園(北西面,債斜約15度,商標20×25m,植付距離2∩4×2・・4m)について,空梅雨で土壌 乾燥の強くなった7月6日の午後2∼4時と7日の午前に.19mmの降雨があったので,この午後2∼4時に・14樹の 蒸散速度を測定した。 実 験 結 果 Ⅰ天候,照度,温度,土壌乾燥と蒸散速度 (1)天候と.蒸散適度 9月上∼中旬の晴天日と曇天日に.おける春其 の蒸散速度と天候の関係は,第1図のようであ る。 蒸散は日出とともに急に盛んに.なり,晴天日 の午前9時・∼午後3時の蒸散速度は3∼4秒 で,日出前,日没後の4分の1∼3分の1に過 ぎない。この実験の曇天日の午前中の蒸散速度 は晴天日の蒸散速度と等しいが,午後の蒸散速 度は晴天日より2倍程度遅い。この曇天日の蒸 散速度と照度との問には密接な関係が認めら れ,照度2∼3万ルックスの時の蒸散速度ほ晴 天(7・∼10万ルックス)の時と等しいが,10,000 ルックス以下に.なると相当に.遅くなった。すな わち,蒸散速度の日変化ほいらぢるしく,晴天 日にほ日中(午前9時∼午後3時)の蒸散は盛 んであるが,日中の時刻による差ほ少ない。 (2)照度と蒸散速度 5月下旬の晴天日に.おけるしゃ光樹と無しゃ 光樹の春菓の蒸散速度の日変化は,第2図のよ 照10 皮 万1ux 5 +哺天日 …−−−一 畳天日 蒸 笠10 度 SeC 5 一′一々 ♪−′ 6

8 10 12pM

2 AM 4 6 第1図 夏季の晴天日と蜃天日における蒸散速度の日変化 うである。 しゃ光樹の午前6時∼年後4時の蒸散速度は10±1秒,無しゃ光樹のそれは5±1秒で,しゃ光樹の蒸散は無しゃ 光樹より約2倍スロ−であった。このしゃ光樹の照度は日中でも1万ルックス以下で,いちぢるしく低かった。前案 険と本実験を通じて,蒸散速度は照度に.よって大きく左右され,照度が1万ルックス以下になれば,蒸散盈は約2分

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香川大学農学部学術報告 第35巻 第1号(1983) 6 8 10 12 2 AM 時 l指J PM 4 6 第2回 春季のしゃ光樹と無しゃ光樹における蒸散速度の日変化 の1に低下することがうかがわれた。 (3)温度と蒸散速度 15∼800Cの恒温室における5月下旬および12月上 旬の,晴天日と曇天日の日中の蒸散速度ほ,第3図の ようである。 300Cに.おける晴天日の蒸散速度ほ5月下旬と12月 上旬でほぼ等しく,約2.5秒であった。しかし,湿度 の低くなるにつれて,蒸散速度は反比例的に.遅くな り,150Cの5月下旬の蒸散速度は5秒をこえ,12月 上旬では6秒をこえた。蜃天日の蒸散速度は5月下 旬,12月上旬ともに.晴天日より遅かったが,両者の 問・では後者の方が一層遅かった。 (4)土壌乾燥と蒸散速度 4 00 6 蒸散速度胱

15c 20 25 30 1も。20 25 30

三川卜旬春葉 12月上旬秋葉 第3図 温度と蒸散速度の関係 乾燥区と適湿区の春菓10枚の日中における蒸散速度は,第4図のようである。 乾燥区でほ土壌乾燥が進み,春薬の掩菓やや下垂した場合には,蒸散速度の個体差がいちぢるしくなったが,牲水 して4日もたつとほぼ適湿区と同様に,個体差がわずかになった。このことから,オ−・トポロメ・−・タ・−で陽光部の春 菓5∼10枚の蒸散速度を調べ,個体差の少ない場合(平均値±1∼2秒)には,土壌水分ほ適度であるが,個体差の 大きな場合(平均値±4∼5秒)に.は,土壌乾燥の強くなっていることが推察される。 次に,昨年ほ空梅雨で6月下旬に強く土壌乾燥したので,この実験的観察と農家の温州ミカン園における状態とが 一致するか否かをみるため,清耕園と草生園に・ついて薬による蒸散速度の個体差を調査した。その結果は第5図のよ うで,蒸散速度の個体差は清耕園では未だそれ程でなかったが,草生園では大きく,とくに.草生繁茂の多いⅡ園では いちぢるしかった。

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葦澤正義,割石俊哉,真部 桂:夏季に.おける温州ミカソ樹の水管理の指標としての菓の蒸散速度 9 5 0 22 蒸散速度批 15 10 5 0 % 10 11 12 14 月 r】 第4図 乾燥処理の濯水前・後に.おける春菓の蒸散速度の個体差 滑耕園 草生関Ⅰ 草生園ⅠⅠ 第5国 情耕・草生園の土壌乾燥時における 春菓の蒸散速度の個体差 Ⅰ 潅水時期の判定 8月上旬に.土壌乾燥させた乾燥区と土壌水分を適度に保った適湿区の,果実の肥大,日中の蒸散速度,土壌水分の 状態は第6図,9月上旬に.おける乾燥区と適湿区の同状態は第7図,10月上∼下旬に.おけるそれほ第8図のようであ る。

8月上旬と9月上旬の両乾燥区でほ,土壌水分の低下とともに果実の肥大は緩慢→停止→収縮した。この果実の肥

大のほぼ停止した時の土壌水分は,水分当盛付近であった。 適湿区の蒸散速度は早く2∼8秒であったが,乾燥区では果実の肥大が停止一収縮するようになると遅くなり,適 湿区の2倍をこえた。なお,果実がやや収縮した乾燥区へ潅水して,土壌水分を適度に保つと,果実は急速に肥大し, 蒸散速度は,1∼2日後には,適湿区とほぼ等しくなった。10月上∼下旬の乾燥区でほ土壌水分が水分当畳付近に低 下し,蒸散速度が相当遅くなっても,果実の肥大停止の兆候は認められなかった。この適湿区の蒸散速度は4∼5砂 の場合が多く,夏季の2∼3秒よりも相当に遅かった。草生ミカン園の個々の樹について,乾燥の強くなった7月6 日の午後と,翌日午前に19mmの降雨があった午後に.,オ・−・トポロメ・−・タ・−・で蒸散速度を調査した結果は,第9図 のようである。6日には蒸散速度が6い5砂をこえ.る樹が傾斜の上∼中部に多かったが,19mmの降雨後に.ほ急に早 くなった。この調査は実際のミカン園に.ついて,オ・1−トポロメ・一夕・−で蒸散を調査し,個々の樹の水分状態の把握が 容易にできるかどうかを検討するため行った。

(6)

香川大学濃学部学術報告 第85巻 弟1号(1983) 10 7mJm

0 0 0 0 ◎ 0 0

14 0 ◎ ◎ 禿 ′ I ′ m.e 0 ▼■■■■− ー_J % 4 6 8 10 12 0 0 6 4 2 00 80 1 土壌水分容水敦% 月 日 第6図 8月上旬の乾燥処理による果実の肥大と蒸散速度の関係 0 0 4 6 土壌水分容水簸%

・、rノト乾燥区 ーーー ーーー 、、 % 3 5 7 % 30 月 日 :テ「 ̄第7図 9月上旬の乾燥処理による果実の肥大と蒸散速度の関係

(7)

葦澤正義,割石俊哉,真部 桂‥夏季に・おける温州ミカン樹の水管理の指標としての実の蒸散速度 11 21 6mm 2 ●● ● 蒸散速度 ;8)

ノ■l、りこき誼竺小芸● 40 4。,(41)≡5卿43839 41 ’り、U】′ 846494 8 5 田 7

・・・・・・一・.... m.e. ■l■ 、■● 七城水分容水魚% 弊 5 10 15 20 月 日 第8図10月の乾燥処理に.よる果実の肥大と 蒸散速度の関係 第9図 草生ミカン園に.おける乾燥時と降雨後の 樹別蒸散速度の状態 考 察 蒸散畳としてほ,オ・−トポロメ・−・タ・−で測定したミカン菓の蒸散時間をキャリプレ・−・ショソして,蒸散抵抗値とし であらわすことが正しい。このキャリプレーショソほ温度一席,湿度85%以上の下で,キャリプレ・−・ショソプレ・− トについて行ない,センサ・−・の特性を求めなければならないが,こ.のセンサ・−の特性は温度によって変化するので, あらゆる温度について求めることが必要という問題がある。そ・こで本実験ではキャリブレー・ショソを行なわず,蒸散 速度であらわLた。これはミカン樹の潅水時期の判定の指標としては,蒸散抵抗値を用いなくとも,蒸散速度(実際 に.むま.蒸散時間)で可能との見解によっている。 ミカン菓の蒸散速度の変化が,か−トポロメ1−・クー・でどの程度詳らかに把握できるかを検討する意味・で,まず天候, 照度,温度,土壌乾燥と蒸散速度の関係について調査した。蒸散急に影響する環境要因には,照度,気温,風速,湿 度と土壌水分がある。この環境要因に加えて気孔閲歴,クチクラ抵抗,菓の大きさ・形,根群の大きさ,根の吸水能 力などの植物側の要因が相互に密接に閑適して−,蒸散風紀影響をおよぼしている(5)●(8〉蒸散は昼間に盛んで夜間に.はほ とんど停止するため,一層の日周期リズムを示す。すなわち,夜が明けるとまず光が急敢に強くなり,これに遅れて 気温と蒸散がほぼ同時に上昇し,昼過ぎに叔大備に達する。夕暮れに・なるとその強さが低下するが,気温の低下はこ れに・遅れるところから,蒸散の低下は光の強さの低下とほぼ同時におきる。このことから蒸散を第1次的に鹿足して いる環境要因は,光の照射であることがわかる(11)。 本実験の夏季の天候と蒸散速度の日変化およびしゃ光,無しゃ光樹の蒸散速度の日変化においても,蒸散速度と照 度との間には密接な関係が認められ,日中に照度が1万ルックス以下になれば,蒸散速度がスロ・−・になり,蒸散時間 ほ約2倍になった。か−・トポロメ・一夕一による測定では,午前8ないし9時から午後3ないし4時の高照度の時であ れば,測定の時間によってその倍が余り異ならないので,ミカン園の個々の樹の蒸散速度を比較する場合に,ゆとり をもって測定できる。次に・,土壌水分と蒸散の関係では,蒸散の盛んな日中には,板における吸水が蒸散に追いつか なくなり,菓の水ポテン㌧ンヤルが低下し,気孔が閉じて,蒸散速度が低下する。この蒸散>吸水の不均衡は土葬水分 の低下に・ほぼ比例して大きくなり,夜間の吸水に・よって樹体の水不足が解消しないと,果実の肥大が始まらない。本 実験の乾燥樹の蒸散速度ほ乾燥程度の強くなるにつれて,適湿樹よりいちぢるしくスローに.なり,蒸散>吸水の不均 衡の大きなことがうかがわれた。この乾燥樹の蒸散速度は菓に・よっての個体差が大きいが,これは土壌水分の低下に. つれて,水の移行最が実に・よって異なることを示しており,興味深い。このことからか−・トポロメ−タ1−で蒸散時間 を調べ ,葉に・よっての個体差の度合から土壌乾燥の程度を推定することができる。

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香川大学農学部学術報告 第35巻 第1号(1983) 12

果樹のかん水開始の時期でほ,新柄や果実の生長のほぼ停止した時が基準とされ,小林(7)はこの時の土壌水分を水

分当盈(pF2..7∼3‖0)とし,具体的には根群分布土層へテソショソメ−・タ・−せ埋設しておき,そ・の示度から時期を

定めるがよい。葦澤はブドウ(1)・(2),鈴木,山下はミカンく12)●(1∂)について,小林と同様に・土壌水分が水分当盈付近に・な

ると,果実の生長のきわめて緩慢∼停止することを認めている。テンショソメ、−サー・は土壌水分の測定にはよい器具

であるが,地形や土壌組成,土性の異なる広い果樹園で湛水時期を判定するには,多数のメ−タ・−・を設置しなければ

ならず,理論としてはよいが,実際にほ困難である。蒸散>吸水に・よって生ずる樹体の水不足度をプレッシャ1 ̄チャ

ンバ、−・で測定し,果実肥大のほぼ停止した時の甲m乱Ⅹ値をもって潅水の時期とする研究が行なわれ,問苧谷ら(9〉●く10)

は,温州ミカソの生長停止時の甲m乱Ⅹは,菓では−15∼−20bar,果実では−7∼−8barで,果実の品質よりする

限界のかん水開始時の甲m乱Ⅹは・−7ba‡以上で,甲m乱Ⅹをこれ以下に・しない水管理が必要であるとし,葦滞ら(き〉もほ

ぼ同様のことを認めている。ただし,この中m乱Ⅹと生長の関係ほ魔物の種規で異なるようで,JoI・dan(¢)は,綿の菜

面積と草丈ほ甲m&Ⅹが一8barに.なると停止する,BoyeI(4)は,実の生長は甲m8Ⅹが−4barになると,ヒマワリ

は0%,ダイズほ25%,トウ1モロコシほ20%まで低下することを報告している。このプレッシャ1−チャンバ1−は果

樹園へ携行して,採取実に.ついで比較的短時間で測定できることはよいが,甲m乱Ⅹ値の測定は日の出前の短時間に・限

られるので,実際栽培では容易でない。上述のような土壌水分や樹体の水不足度の測定によらず,直接生産の目的物

である果実の肥大を測定し,このほぼ停止した時をもって檻水時期とす−る方法も提唱されているが,ダイヤルゲ・−・ジ

などで果実の肥大をしばしば測定しなければならず,これも実用に・は容易でない。このようなことから実験的は別と

して,実際栽培では一応の見当でかん水の時期がきめられている。オ・・−トポり・一夕−では着生菓について,数秒で

蒸散速度の測定ができ,測定時間は日中であれば相当に幅があるので,実用に・容易である。8月上旬と9月上旬に・潅

水を中止して土壌乾燥させた場合には,土壌水分が水分当量付近に低下した時に・,果実の肥大はほぼ停止し,実の蒸

散速度は50%ほどスP一になり,果実が少し収縮した時の蒸散速度ほ50%以上スロ・−・(蒸散時間が適湿区の2倍以

上)に.なった。このことより蒸散時間が適湿樹の約2倍(5∼6秒)を,潅水時期の判定の指標にするがよいと思わ

れる。葦浮く1)ほブドウ樹の蒸散畳を重畳法で調査し,土壌水分の低下に・よって蒸散畳が約2分の1に減少した時に,

果実の肥大のほぼ停止したことを認めており,オ・−・トポロメ1−サーによる本実験の結果ほ・これと一激している。なお,

10月にも土壌乾燥させたが,土壌水分が水分当量付近軋低下しても,果実は緩慢に肥大し,8月上旬および9月上旬

の乾燥の場合のようにり果実の収縮がみられなかった。蒸散>吸水の不均衡に・よって生ずる果実より枝葉への水分の

移行について,葦澤(1)ほ,果実の未熟期に漉この移行が容易に・なされるが,成熟の進むにつれて次第に周難に/なり,

成熟果では殆んど移行しないことを報告している。本実験の10月の乾燥処理で果実の収縮のみられなかったことは,

成熟が相当に進んだためと思われる。 懐斜地の温州ミカソ成木・草生園について,土壌乾燥時と降雨後に,樹によっての蒸散速度の個体差と変化状態を 調査したところ,オ・−・トポロメt−サーでよくその状態の把握できることがわかった。 本研究を進めるに当って,橘清美研究補佐員に・種々ご協力をいただいた。ここに厚く謝意を表する。 引 用 文 献 (1975)り (8)小西国義:植物の生長と発育,48∼57,養賢堂,東 京(1982). (9)間苧谷 徹,町田 裕‥園学雑,45,329∼334 (1977). (1)聾澤正義:香川大農紀要,17,1∼69(1964) (2) :農及園,46、1155∼1160・1421∼1426 (1971) (3)∴‥香川大農学報,30,133∼142(1979) 匝)BoYER,T.S∴クエα彿£Pん財β宜0∼・,亜,283・−285 (1970). (5)石原 邦(分担):植物生理学 5 水とイオソ, 78∼107,朝倉書店,東京(1981) (6)JoRDAN,W.R.:Agron”Journ,62,699−701 (1970) (7)小林 章‥果樹環境論,205∼飢6,養賢堂,東京 、nV、¶7 ′nr ノ‖r :園学殊,49,41∼48(1980). 増田芳雄:植物生理学,124∼139,培風館,東京 (1977). 8う 鈴木鉄男:農及園,50,919∼920(1975). ㈹ 山下畳良(分担):果樹園の土壌管理と施肥技術, 194∼197,博友社,東京(1982). (1983年5月31日受理)

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