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新潟県保健環境科学研究所年報第 24 巻 加工食品中の残留農薬分析法の検討 小林ゆかり, 土田由里子, 岩崎奈津美, 丹治敏英 Determination of Residual Pesticides in Processed Foods Yukari Kobayashi, Yuri

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Academic year: 2021

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(1)

加工食品中の残留農薬分析法の検討

小林ゆかり,土田由里子,岩崎奈津美,丹治敏英

Determination of Residual Pesticides in Processed Foods

Yukari Kobayashi, Yuriko Tsuchida, Natsumi Iwasaki and Toshihide Tanji

:加工食品, 有機リン系農薬, カルバメート系農薬, GC/MS, LC/MS/MS

Keywords

は じ め に

2008年1月に発生した中国産冷凍ギョウザによる有機リ

ン系農薬中毒事件を契機に,加工食品の安全性に対する関

心が高まったことから,新潟県においても加工食品中の残

留農薬の調査を行うこととなった.

加工食品中の残留農薬の試験法については,有機リン系

農薬を対象に,試料を無水硫酸ナトリウムで脱水しながら

酢酸エチルで抽出して測定する方法が,厚生労働省医薬食

品局食品安全部基準審査課から示された .しかし,この

1)

方法では,精製操作を行わないため分析機器が汚れやすく,

多くの試料を安定して測定するには問題があった.また,

大垣ら がゲル浸透クロマトグラフ(GPC)による精製方

2)

法で良好な結果を得ているが,この方法は大量の溶媒が必

要となる短所がある.

有機リン系農薬42種及びカルバメート系農

本研究では,

,簡便な精製操作によって加工食品中の残

薬7種を対象に

留農薬を分析する方法を検討した.

試験方法

2.1

市販の冷凍ギョウザ及びレトルトカレーを用いた.

2.2

試薬等

農薬標準品:和光純薬工業(株),林純薬工業(株),関東

化学(株),Dr.Ehrenstorfer GmbH及びRiedel-de Haën製の

残留農薬試験用標準品を用いた.

有機溶媒等:アセトン,酢酸エチル及びメタノールは関

東化学(株)製,ヘキサンは和光純薬工業(株)製の残留農薬

試験用,その他は試薬特級を用いた.

ミニカラム:VARIAN製 MEGA BOND ELUT C18(1000mg)

(以下,C18)及びVARIAN製 BOND ELUT PSA(500mg (以

下,PSA)を用いた.

0.2μmフィルター:Waters製Acrodisc GHPを用いた.

2.3

装置及び測定条件

2.3.1

GC/MS

装 置 : (株)島 津 製 作 所 製

GCMS-QP5050A

カラム:Agilent Technologies製

DB-5MS( 0.25mm

i.d.× 30m,膜 厚 0.25μ m)

プ レ カ ラ ム : ヒ ュ ー ズ ド シ リ カ チ ュ ー ブ ( 2m)

カ ラ ム 温 度 : 50℃ (1min)→ 25℃ /min→ 125℃ (0min)

→ 10℃ /min→ 300℃ (8.5min)

注 入 口 温 度 : 250℃

イ ン タ ー フ ェ ー ス 温 度 : 280℃

キ ャ リ ア ガ ス : 高 純 度 ヘ リ ウ ム ,1.5mL/min

注 入 量 : 2μ L( ス プ リ ッ ト レ ス )

イ オ ン 化 法 : EI

測 定 モ ー ド : SIM

2.3.2

LC/MS/MS

装 置 : Waters製 Micromass Quattro Premier XE 及び

Acquity UPLC system

カラム:Waters製 XTerra MS C18(3.5μm,2.1×150mm)

カ ラ ム 温 度 : 40℃

注 入 量 : 5μ L

移 動 相 : (A)5mmol/L酢 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 ,(B)メ

タ ノ ー ル ,グラジエント条件:(B)5%(0min)→90%(15min)

→90%(25min),流速:0.2mL/min

イオン化法:ESI(ポジティブ)

測定モード:MRM

キャピラリ電圧:1kV

イオン源温度:120℃

2.4

試験溶液調製法

試験溶液調製法を図1から3に示した.A法(図1)は

厚生労働省の方法 をもとに,アセトニトリル/ヘキサン

1)

分配による脱脂操作及びミニカラムによる精製操作を加え

たものである.ミニカラムの選択にあたっては,厚生労働

省の通知試験法 及び吉岡らの方法 を参考とし,脂質等

3) 4)

を除去するためにC18を,色素や脂肪酸等を除去するため

にPSAを用いた.B法(図2)は,A法における抽出からア

セトニトリル/ヘキサン分配までの操作の短縮を試みたも

のである.C法(図3)は,B法での検討結果から,精製条

件の一部変更を行ったものである.

2.5

添加回収試験

試料中0.1μg/gとなるよう農薬混合標準液を添加し,2.

4試験溶液調製法に示した方法で,n=3の併行試験を行った.

(2)

細切均一化した試料 10g  ←無水硫酸ナトリウム 90g  ←酢酸エチル 1回目100mL,2回目50mL 高速ホモジナイズ 遠心分離  3000rpm 5分間 酢酸エチル層 減圧濃縮,窒素乾固 アセトニトリル/ヘキサン分配  ヘキサン30mL,ヘキサン飽和アセトニトリル30mL×2回 アセトニトリル層濃縮  (ヘキサン層→脂肪量測定) 定容  4mL(アセトニトリル) C18精製  アセトニトリル5mlコンディショニング  抽出液1mL負荷,アセトニトリル3mL溶出 減圧濃縮,窒素乾固 溶解  アセトン/ヘキサン(1:1) 2ml PSA精製  アセトン/ヘキサン(1:1)5mlコンディショニング  試料液2mLを負荷,アセトン/ヘキサン(1:1)10mL溶出 減圧濃縮,窒素乾固 定容  2.5mL(アセトン)(1mLが試料1g相当) GC/MS 0.2ml 分取 窒素乾固 定容  1mL(メタノール)(1mLが試料0.2g相当) 0.2μmフィルターろ過 LC/MS/MS

図1 試験溶液調製法(A法)

細切均一化した試料 10g  ←ヘキサン 25mL  ←アセトニトリル 1回目50mL,2回目25mL 高速ホモジナイズ 遠心分離  3000rpm 5分間 アセトニトリル層  (ヘキサン層→脂肪量測定) 定容  100mL(アセトニトリル) C18精製  アセトニトリル5mlコンディショニング  抽出液25mL負荷,アセトニトリル2mL溶出 脱水  無水硫酸ナトリウム 減圧濃縮,窒素乾固 溶解  アセトン/ヘキサン(1:1) 2ml PSA精製  アセトン/ヘキサン(1:1)5mlコンディショニング  試料液2mLを負荷,アセトン/ヘキサン(1:1)10mL溶出 減圧濃縮,窒素乾固 定容  2.5mL(アセトン)(1mLが試料1g相当) GC/MS 0.2ml 分取 窒素乾固 定容  1mL(メタノール)(1mLが試料0.2g相当) 0.2μmフィルターろ過 LC/MS/MS

図2 試験溶液調製法(B法)

2.6

試料マトリックスの影響の検討

農薬が含まれない試料を用いて,2.4試験溶液調製法に

示した方法で調製した試験溶液に,農薬混合標準液を添加

し,2.5添加回収試験における回収率100%に相当する濃度

にしたもの(以下,マトリックス標準)を調製した.通常

の溶媒で調製した標準液(以下,溶媒標準)とマトリック

ス標準とを比較し,試料マトリックスが測定に及ぼす影響

について検討した.

結果と考察

3.1

脂肪抽出量の比較

試料のサンプリング誤差を確認するためと,抽出効率の

参考とするため,A法,B法それぞれの抽出過程で得られる

ヘキサン層を濃縮乾固し,脂肪量の測定を行った.結果を

表1に示した.

脂肪量のばらつきは,冷凍ギョウザのB法で相対標準偏

差(RSD)が3.3%となった他は1.5%前後であり,10gの試料量

で十分サンプリング誤差を無視できることがわかった.

A法とB法の脂肪量を比較すると,レトルトカレーではほ

表1 ヘキサン層に抽出された脂肪量の比較(n=5) 冷凍ギョウザ レトルトカレー 脂肪量(mg/g) RSD(%) 脂肪量(mg/g) RSD(%) A法 96.8 1.56 41.4 1.60 B法 92.1 3.30 41.8 1.37 細切均一化した試料 20g  ←ヘキサン 25mL  ←アセトニトリル 1回目50mL,2回目25mL 高速ホモジナイズ 遠心分離  3000rpm 5分間 アセトニトリル層 定容  100mL(アセトニトリル) C18精製  アセトニトリル5mlコンディショニング  抽出液5mL負荷,アセトニトリル/水(8:2)10mL溶出 脱水  無水硫酸ナトリウム 減圧濃縮,窒素乾固 溶解  アセトン/ヘキサン(1:1) 2ml PSA精製  アセトン/ヘキサン(1:1)5mlコンディショニング  試料液2mLを負荷,アセトン/ヘキサン(1:1)20mL溶出 減圧濃縮,窒素乾固 定容  2mL(アセトン)(1mLが試料0.5g相当) GC/MS 0.2ml 分取 窒素乾固 定容 1mL(メタノール)(1mLが試料0.1g相当) 0.2μmフィルターろ過 LC/MS/MS

図3 試験溶液調製法(C法)

(3)

とんど差がなかったが,冷凍ギョウザではA法に比べB法で

の脂肪量がやや少ない結果となった.この原因の一つとし

て,冷凍ギョウザをB法で抽出したとき遠心分離後に沈殿

物が再浮遊しやすく,ヘキサン層が回収しにくかったこと

が考えられる.この点を考慮すると,B法でもA法と大差な

く脂肪の抽出が可能であり,比較的脂溶性の高い農薬であ

っても問題なく液層に移行できると考えられた.

3.2

A法,B法による試験結果

8種類の農薬について,A法及びB法による添加回収試験

を行った結果を表2に示した.

冷凍ギョウザ

GC/MS測定

LC/MS/MS測定

A法

B法

A法

B法

 農薬名

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

acephate

430.2 ( 10.70 )

5.00

261.7 (

7.54 )

4.23

82.0 (

5.14 )

1.01

66.3 (

3.28 )

0.98

bendiocarb

112.3 (

3.00 )

1.22

111.8 (

2.20 )

1.23

87.9 (

3.82 )

1.00

89.6 (

4.58 )

1.03

carbaryl

102.9 (

2.53 )

1.05

106.7 (

2.06 )

1.16

84.3 (

3.03 )

1.00

90.2 (

3.59 )

1.00

edifenphos

157.2 (

3.89 )

1.69

174.6 (

4.20 )

2.03

74.4 (

3.65 )

0.93

81.4 (

3.42 )

0.91

malathion

148.8 (

1.26 )

1.66

164.5 (

0.70 )

1.80

83.5 (

5.26 )

0.99

88.6 (

4.04 )

0.99

methamidophos

112.4 (

1.56 )

1.05

121.6 (

1.77 )

1.72

80.6 (

4.56 )

0.96

62.5 (

1.78 )

1.02

pirimicarb

0.0 (  -  )

1.18

93.6 (

5.32 )

1.17

0.0 (  -  )

1.00

74.2 (

7.24 )

1.01

tolclofos-methyl

106.7 (

0.75 )

1.20

104.1 (

2.55 )

1.20

84.8 (

7.04 )

0.96

85.9 (

2.12 )

0.90

レトルトカレー

GC/MS測定

LC/MS/MS測定

A法

B法

A法

B法

 農薬名

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

回収率

(%)

( RSD(%) )

マトリック

ス影響

acephate

159.0 (

5.25 )

1.94

456.0 (

6.96 )

7.13

97.4 (

4.21 )

1.00

72.6 ( 11.12 )

0.96

bendiocarb

104.1 (

4.92 )

1.14

101.5 (

3.50 )

1.10

93.3 (

2.95 )

1.01

88.9 (

2.29 )

1.00

carbaryl

85.7 ( 10.15 )

0.93

83.0 (

2.49 )

0.98

94.7 (

1.84 )

1.00

89.0 (

2.37 )

1.00

edifenphos

146.4 (

1.95 )

1.61

155.9 (

2.63 )

1.67

89.6 (

0.43 )

0.92

86.0 (

2.00 )

0.95

malathion

113.9 (

2.51 )

1.25

133.8 (

6.15 )

1.47

94.9 (

4.10 )

1.00

93.0 (

5.67 )

1.01

methamidophos

155.9 (

4.27 )

1.86

161.9 (

1.52 )

2.29

86.9 (

3.50 )

0.98

73.0 ( 11.41 )

0.99

pirimicarb

0.0 (  -  )

1.08

83.1 (

4.97 )

0.97

0.0 (  -  )

1.01

83.5 (

2.42 )

0.99

tolclofos-methyl

94.6 (

5.24 )

1.07

90.7 (

2.98 )

1.02

91.1 (

4.97 )

1.01

89.4 (

8.03 )

1.04

注) マトリックス影響=マトリックス標準のピーク面積/同一濃度の溶媒標準のピーク面積

表2 冷凍ギョウザ及びレトルトカレーを用いた添加回収試験結果(A法,B法)

A法では,冷凍ギョウザ,レトルトカレーともにピリミ

カルブの回収率が0%となった.原因を調べるため,C18に

農薬混合標準液(0.1μg/mL)1mLを負荷し,溶出条件を変

えて溶出状況を調べたところ,ピリミカルブはアセトニト

リルではC18から溶出しにくいことがわかった(図4 .A

法ではC18への負荷液量が少ないためピリミカルブが回収

できなかったのに対し,B法では負荷液量が25mLと多く,

また抽出液に試料由来の水分が含まれていることもあって

ピリミカルブが回収できたと考えられる.

0 20 40 60 80 100 ① ② ① ② ① ② ① ② 回収 率 (% ) 6~10mL 4~6mL 2~4mL 負荷~2mL 図4 C18からの各農薬の溶出  (①;アセトニトリル溶出  ②;アセトニトリル/水(8:2)溶出) acephate carbaryl edifenphos pirimicarb

溶出液量

一方B法では,C18精製の際に,抽出液中の着色成分がミ

ニカラム上部に留まらずに拡散,溶出されてしまった.こ

れは,ミニカラムに負荷する抽出液量がA法に比べて多い

ことが原因と考えられた.B法でC18精製の効果を十分得る

ためには,ミニカラムへ負荷する抽出液の量を減らす必要

があると考えられた.

GC/MSとLC/MS/MSによる測定結果を比較すると,GC/MSに

よる測定では,A法,B法とも回収率が100%を超える農薬が

多かった.特に,アセフェートは回収率400%を超える場合

もあった.また,アセフェートやメタミドホスは,標準溶

液と試験溶液とで検出されたピークの保持時間がずれ,同

定に支障があった.溶媒標準とマトリックス標準とを比較

した場合も,ピーク面積の差や保持時間のずれが見られた

ことから,これらはいずれも試料マトリックスの影響によ

るものと考えられた.

LC/MS/MSによる測定では,B法の冷凍ギョウザでアセフ

ェート及びメタミドホスの回収率が70%を若干下回ったほ

かは,概ね良好な結果が得られた.溶媒標準とマトリック

ス標準との測定結果にほとんど差はなく,試料マトリック

スの影響はほとんどないと考えられた.

3.3

C法による試験結果

前述の結果からB法を一部変更したC法について,対象農

薬を増やして検討した.C法では,試料の濃縮率をなるべ

(4)

く変えずにC18への負荷液量を減らすために,試料量を20g,

C18への負荷液量を5mLとした.C18からの溶出にはアセト

ニトリル/水(2:8)10mLを用いた.また,PSAのロットが変

わるとアセフェートが十分溶出しない場合があったため,

溶出に用いるアセトン/ヘキサン(1:1)の液量を20mLに変更

した.

各農薬の添加回収試験結果を表3に示した.

GC/MSによる測定では回収率が100%を超える農薬が多く

あり,定量できた47農薬のうち,冷凍ギョウザで19農薬,

レトルトカレーで32農薬が回収率120%を超えた.溶媒標準

のピーク面積に対するマトリックス標準のピーク面積の比

を求めると,多くの農薬で1倍を超えており,冷凍ギョウ

ザで8農薬,レトルトカレーで11農薬が2倍を超えた.ホ

スメットは冷凍ギョウザ,レトルトカレーとも約5倍の差

があった.このことから,試料マトリックスの影響で回収

率が高めの値となるものが多いと考えられた.マトリック

ス標準で回収率を補正すると,回収率が120%を超えるもの

はなくなり,冷凍ギョウザで38農薬,レトルトカレーで37

農薬が回収率70∼120%の範囲となった.未知試料を分析す

る際は試料マトリックスの影響を十分考慮して定量を行う

必要があると考えられる.ジクロルボスは回収率が低く,

冷凍ギョウザ,レトルトカレーとも約30%の回収率となっ

たが,これは濃縮操作時に揮散したものと考えられた.

LC/MS/MSによる測定では,定量できた43農薬のうち,冷

凍ギョウザで40農薬,レトルトカレーで41農薬が回収率70

∼120%の範囲となった.溶媒標準とマトリックス標準を比

較した場合に顕著な差は見られず,回収率をマトリックス

標準で補正してもあまり影響なかった.エチオフェンカル

ブは冷凍ギョウザで,プロチオホス,テルブホスは冷凍ギ

ョウザ及びレトルトカレーでともに,回収率が約60%とな

った.これらはGC/MSによる測定(マトリックス補正後)

でも同様の結果となったが,原因は不明であり,今後さら

に検討する必要がある.

ホスメットはLC/MS/MSによる測定中,標準液のピーク面

積が変動することがあった.詳しく調べたところ,メタノ

ール中で劣化することがわかった.10℃で保存した場合,

0.025μg/mLメタノール溶液のピーク面積が,調製から4

時間後に約80%,16時間後に約50%まで低下した(図5 .

今回の添加回収試験では,試験溶液の調製とほぼ同時に標

準液を調製し,また,試験溶液と標準液を交互にLC/MS/MS

で測定したため,試験溶液と標準液が同程度に劣化して,

見かけ上良好な回収率となったと考えられる.ホスメット

はGC/MS測定では試料マトリックスの影響が大きく,正確

な測定は難しいと考えられるため,試験溶液をアセトニト

リル等メタノール以外の溶媒で調製してLC/MS/MSで測定す

るなど,さらに検討が必要である.

なお,今回のLC/MS/MS測定における移動相の条件は,A

法,B法検討時のものをそのまま使用したが,保持時間15

分前後に多くの農薬が集中して検出されるため,C法で検

討した農薬に対応するには,あまり良好な条件ではなかっ

た.移動相条件についてもさらに検討する必要があると考

えられた.

加工食品中の残留農薬分析法について,冷凍ギョウザ

及びレトルトカレーを用いて検討した.試料をアセトニト

リル及びヘキサンで抽出し,C18及びPSAミニカラム精製を

行う方法で,有機リン系農薬42種,カルバメート系農薬7

種を対象に添加回収試験を行った.測定にはGC/MS及びLC/

MS/MSを用いた.

その結果,有機リン系農薬38種,カルバメート系農薬

6種について概ね良好に分析することが可能と考えられた

が,GC/MSによる測定では試料マトリックスの影響に留意

する必要があった.

1) 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課事務連

絡:食品中に残留する有機リン系農薬に係る試験法

について,平成20年3月7日

2)大垣有紀,他:三重県保健環境研究所年報,

10

,25

(2008).

3) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知:食品に残留

する農薬,飼料添加物又は動物用医薬品の成分である

物質の試験法について,平成17年1月24日,食安発第

0124001号

4)吉岡直樹,秋山由美,辻正彦:兵庫県立健康環境科学

研究センター年報,

,165 (2002).

図5 phosmet(メタノール溶液)のピーク面積の変化 0 50000 100000 150000 200000 0 4 8 12 16 20 24 経過時間(hr) pe ak a re a

(5)

冷凍ギョウザ レ トルトカレー (参考) 定量イオン及び定量下限 GC/MS測定 L C/MS/MS測定 G C/MS測定 LC/MS/MS測定   GC/MS LC/MS/MS  農薬名 回収率 (%) ( RSD(% )) マトリック ス影響 補正後 回収率 回収率 (%) ( RSD(% )) マトリック ス影響 補正後 回収率 回収率 (%) ( RSD(% )) マトリック ス影響 補正後 回収率 回収率 (%) ( RSD(% )) マトリック ス影響 補正後 回収率 定量 イオン プリカーサー イオン プロダク ト イオン acephate 122.2 ( 2.75 ) 1.74 70.4 77.2 ( 3.85 ) 1.09 70.7 119.1 ( 16.13 ) 1.82 65 .4 76.6 ( 13.14 ) 0.95 81.0 94 0.2 183.9 142.8 0.003 aldicarb  ※1 89.5 ( 1.98 ) 1.08 82.6  ※1 88.0 ( 3.12 ) 1.00 87.7 - - 208.1 115.4 0 .002 bendiocarb 97.5 ( 5.15 ) 0.99 98.8 94.8 ( 3.63 ) 1.22 77.5 83.1 ( 2.64 ) 0.98 84. 6 104.3 ( 1.92 ) 0.97 107.2 151 0.04 224.1 108.9 0.0004 butamifos 104.1 ( 2.73 ) 1.29 80.4 85.5 ( 4.23 ) 1.06 80.8 124.9 ( 6.74 ) 1.42 87 .9 93.8 ( 2.01 ) 0.90 104.1 286 0.02 333.2 179.8 0.0003 cadusafos 108.3 ( 4.51 ) 1.44 75.4 82.0 ( 2.83 ) 1.04 78.6 112.2 ( 1.46 ) 1.45 77 .4 93.3 ( 2.67 ) 0.95 98.5 159 0.008 271.1 130.5 0.0004 carbaryl 87.1 ( 5.53 ) 0.93 93.8 91.1 ( 3.57 ) 1.12 81.1 85.7 ( 6.09 ) 0.87 98.6 1 04.6 ( 3.22 ) 0.98 106.8 144 0.04 202.0 144.9 0.0006 chlorfenvinphos-E 114.2 ( 4.08 ) 1.34 85.2 88.4 ( 3.63 ) 1.03 86.2 123.8 ( 6.4 4 ) 1.45 85.2 96.0 ( 2.52 ) 0.96 100.0 269 0.03 359.1 126.6 0.003 chlorfenvinphos-Z 103.3 ( 4.16 ) 1.50 68.8 89.7 ( 4.51 ) 0.97 92.1 124.0 ( 3.7 1 ) 1.43 86.7 98.9 ( 2.39 ) 0.95 104.1 269 0.02 359.1 126.6 0.003 chlorpyrifos 96.5 ( 8.49 ) 1.20 80.3 71.8 ( 2.11 ) 1.08 66.5 102.3 ( 4.84 ) 1.29 79.4 80.2 ( 3.44 ) 0.98 81.7 314 0.01 351.9 199.7 0.0005 chlorpyrifos-methyl 111.9 ( 2.61 ) 1.40 79.7 89.8 ( 7.46 ) 1.12 80.4 118.7 ( 3 .13 ) 1.48 80.1 90.7 ( 3.91 ) 0.89 101.6 286 0.003 323.9 124.5 0.001 cyanophos 121.9 ( 3.41 ) 1.56 78.0  ※2 133.4 ( 1.70 ) 1.81 73.7  ※2 243 0.01 244 .0 101.4 0.03 diazinon 103.0 ( 5.29 ) 1.39 74.1 85.3 ( 2.44 ) 1.14 75.0 104.8 ( 5.31 ) 1.40 75. 0 90.6 ( 1.82 ) 0.93 97.8 179 0.008 305.1 168.7 0.0002 dichlorvos 36.8 ( 12.78 ) 1.29 28.6  ※2 36.5 ( 26.85 ) 1.25 29.2  ※2 185 0.006 2 20.3 108.9 0.01 dimethoate 180.9 ( 1.51 ) 2.41 75.1 89.7 ( 1.39 ) 1.15 78.2 181.3 ( 6.28 ) 2.62 6 9.1 97.6 ( 8.30 ) 0.97 101.0 87 0.05 230.1 124.6 0.001 dimethylvinphos-E 125.0 ( 2.81 ) 1.45 86.5 87.1 ( 8.87 ) 1.08 80.6 142.0 ( 3.0 9 ) 1.81 78.4 94.2 ( 3.97 ) 0.89 105.7 295 0.02 333.1 126.7 0.003 dimethylvinphos-Z 102.7 ( 6.68 ) 1.35 75.9 82.7 ( 1.58 ) 1.06 78.3 137.2 ( 4.5 8 ) 1.45 94.9 90.5 ( 5.00 ) 0.92 98.0 295 0.02 333.1 126.7 0.003 edifenphos 165.3 ( 4.26 ) 2.10 78.9 82.9 ( 2.72 ) 1.02 81.1 179.3 ( 7.42 ) 2.40 7 4.7 95.5 ( 1.16 ) 0.93 102.5 310 0.02 311.2 282.9 0.0005 EPN 124.3 ( 8.64 ) 1.47 84.5 92.1 ( 7.05 ) 1.00 92.6 136.3 ( 5.93 ) 1.62 84.3 93.3 ( 9.77 ) 1.05 88.5 157 0.01 324.1 156.5 0.007 ethiofencarb 135.7 ( 12.44 ) 2.30 59.0 58.8 ( 10.15 ) 1.08 54.3 166.0 ( 2.44 ) 2 .42 68.6 76.9 ( 8.10 ) 0.93 82.5 107 0.03 226.1 106.7 0.0008 ethion 128.2 ( 8.22 ) 1.74 73.7 82.3 ( 2.31 ) 1.03 79.7 134.8 ( 5.14 ) 1.85 73.0 9 3.1 ( 1.86 ) 0.88 105.4 231 0.008 385.0 198.8 0.0003 ethoprophos 117.3 ( 4.54 ) 1.38 85.2 84.8 ( 2.32 ) 1.04 81.4 123.7 ( 3.83 ) 1.42 86.9 90.9 ( 3.96 ) 0.89 102.3 158 0.01 243.1 130.6 0.002 etrimfos 123.5 ( 4.72 ) 1.61 76.7 87.1 ( 1.77 ) 1.05 83.2 124.4 ( 6.78 ) 1.55 80. 2 91.1 ( 1.27 ) 0.93 97.7 292 0.01 293.1 124.6 0.0002 fenitrothion 124.8 ( 5.38 ) 1.76 70.8  ※2 164.1 ( 6.63 ) 2.26 72.5  ※2 277 0.03 278.0 124.7 0.05 fenobucarb 118.5 ( 1.20 ) 1.31 90.5 92.5 ( 4.69 ) 1.14 81.3 131.1 ( 5.65 ) 1.38 9 5.1 99.3 ( 3.89 ) 0.95 104.1 121 0.004 208.2 94.6 0.0004 fensulufothion 149.4 ( 6.69 ) 1.71 87.1 93.4 ( 1.93 ) 1.12 83.2 153.8 ( 3.74 ) 2 .01 76.5 99.1 ( 2.92 ) 0.98 101.5 292 0.01 309.1 156.7 0.001 fenthion 107.1 ( 5.65 ) 1.35 79.6 87.2 ( 2.63 ) 1.09 80.2 121.4 ( 2.89 ) 1.61 75. 6 92.3 ( 6.70 ) 0.99 93.5 278 0.006 279.0 168.7 0.003 fosthiazate 143.1 ( 2.60 ) 1.83 78.2 95.2 ( 2.95 ) 1.15 82.6 170.7 ( 5.34 ) 2.14 79.7 102.2 ( 6.00 ) 0.97 104.9 195 0.08 284.1 103.5 0.001 isofenphos 117.0 ( 6.21 ) 1.51 77.5 85.3 ( 3.13 ) 1.07 79.4 130.9 ( 5.69 ) 1.61 8 1.5 94.8 ( 0.11 ) 0.92 103.2 255 0.04 346.2 244.9 0.0002 isofenphos-oxon 111.7 ( 5.49 ) 1.65 67.8 90.6 ( 2.70 ) 1.08 83.8 164.3 ( 4.29 ) 1.99 82.8 94.6 ( 4.41 ) 0.91 103.4 229 0.02 330.2 200.8 0.001 malathion 117.8 ( 8.91 ) 1.78 66.2 89.2 ( 5.22 ) 1.12 79.6 135.3 ( 6.17 ) 1.61 83 .8 99.6 ( 2.47 ) 0.96 104.1 173 0.03 331.2 98.6 0.0008 methamidophos 106.7 ( 0.78 ) 1.34 79.9 75.3 ( 4.42 ) 1.09 69.1 85.3 ( 17.29 ) 1 .25 68.0 74.8 ( 10.49 ) 0.97 76.8 94 0.05 141.8 93.5 0.0009 methidathion 151.6 ( 5.15 ) 2.08 72.8 92.6 ( 3.14 ) 1.14 81.1 175.9 ( 7.95 ) 2.3 7 74.1 99.9 ( 3.62 ) 0.93 107.0 145 0.03 303.0 144.6 0.001 oxamyl  ※3 88.7 ( 3.19 ) 1.19 74.5  ※3 90.0 ( 14.83 ) 0.99 91.2 72 0.08 237.2 71. 6 0.0004 parathion 124.2 ( 3.39 ) 1.50 82.8  ※2 129.5 ( 4.68 ) 1.58 82.1  ※2 291 0.02 292 .0 235.9 0.09 parathion-methyl 146.3 ( 3.46 ) 1.86 78.7  ※1 170.7 ( 7.20 ) 2.12 80.4  ※1 263 0.02 - - - phenthoate 106.7 ( 4.61 ) 1.36 78.4 90.2 ( 2.12 ) 1.09 82.7 126.7 ( 5.53 ) 1.58 8 0.1 96.9 ( 2.79 ) 0.93 104.0 274 0.01 321.1 162.7 0.0005 phorate 99.3 ( 2.29 ) 1.47 67.4 71.9 ( 4.34 ) 0.95 75.8 112.3 ( 5.11 ) 1.43 78.4 8 1.5 ( 17.50 ) 1.03 79.3 260 0.01 261.0 198.8 0.005 phosalone 220.5 ( 11.09 ) 2.54 86.7 91.4 ( 1.60 ) 1.08 85.0 193.9 ( 6.63 ) 2.71 7 1.6 99.0 ( 1.49 ) 0.99 100.4 182 0.02 368.1 181.8 0.0004 phosmet 280.6 ( 6.24 ) 4.65 57.5 107.7 ( 7.66 ) 1.37 78.7 319.9 ( 6.16 ) 5.57 55. 4 108.2 ( 15.34 ) 1.36 79.5 160 0.02 318.0 159.7 0.001 pirimicarb 118.3 ( 2.53 ) 1.43 82.7 93.2 ( 5.48 ) 1.18 78.8 121.0 ( 4.02 ) 1.36 8 8.9 96.8 ( 4.76 ) 0.95 101.4 166 0.002 239.2 71.6 0.0002 pirimiphos-methyl 116.3 ( 0.79 ) 1.44 80.7 86.0 ( 0.24 ) 1.03 83.8 125.2 ( 3.8 8 ) 1.59 78.7 90.3 ( 2.79 ) 0.94 95.9 290 0.01 306.1 163.8 0.0002 profenofos 111.3 ( 1.84 ) 1.46 76.5 77.9 ( 4.75 ) 1.00 77.8 159.4 ( 8.26 ) 1.77 9 0.2 84.5 ( 2.32 ) 0.93 90.9 339 0.05 375.0 304.9 0.0004 prothiofos 80.4 ( 3.23 ) 1.44 55.7 63.0 ( 7.02 ) 1.09 57.8 83.4 ( 5.89 ) 1.53 54. 4 62.8 ( 12.15 ) 1.01 62.4 309 0.02 345.0 240.8 0.01 pyraclophos 283.0 ( 6.40 ) 3.30 85.7 87.8 ( 3.15 ) 1.11 79.5 267.5 ( 2.90 ) 3.71 72.2 96.8 ( 0.94 ) 0.89 109.3 360 0.02 361.2 256.9 0.0002 pyridaphenthion 177.5 ( 9.03 ) 2.07 85.7 88.3 ( 3.70 ) 1.06 83.5 101.5 ( 9.69 ) 1.51 67.3 93.5 ( 4.42 ) 0.88 105.9 340 0.02 341.1 188.8 0.0008 quinalphos 110.0 ( 4.44 ) 1.52 72.6 86.2 ( 2.73 ) 1.04 82.8 123.3 ( 3.57 ) 1.46 8 4.6 94.1 ( 4.29 ) 0.90 104.1 146 0.02 299.1 146.5 0.0005 terbufos 93.9 ( 8.31 ) 1.37 68.4 69.3 ( 20.24 ) 1.14 60.8 104.3 ( 7.63 ) 1.61 64. 9 67.2 ( 15.60 ) 1.04 64.7 231 0.004 289.0 56.6 0.002 thiometon 110.8 ( 8.57 ) 1.53 72.6  ※1 116.1 ( 7.33 ) 1.68 69.1  ※1 8 8 0.007 - - - tolclofos-methyl 107.1 ( 4.57 ) 1.32 80.9 91.8 ( 7.74 ) 1.07 85.6 115.5 ( 5.31 ) 1.40 82.4 95.5 ( 4.83 ) 0.93 102.8 265 0.002 301.0 174.7 0.002 注) マトリックス影響=マトリックス 標準のピーク面積/同一濃度の溶媒標準のピーク面積     補正後回収率=回収率/マトリックス影響     定量下限;S/N=10とな る 濃度     ※1;標準品のピークが確認できなかった ※ 2;感度不足のため 定量困難だった ※3;試験溶液の妨害ピークのため定量できなかっ た 表3 冷凍ギョウザ及びレトルトカレーを用いた添加回収試験結果(C法) 定量下限 (μg/mL) 定量下限 (μg/mL)

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