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茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
Author(s)
本田, 敏明; 小野, なつみ; 小林, 朋可; 二田, 隆寛; 前田, 健
人
Citation
茨城大学教育学部紀要(教育総合)(増刊号): 425-444
Issue Date
2014
URL
http://hdl.handle.net/10109/12005
Rights
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教員の ICT スキル向上について
-グラウンデッド・セオリー・アプローチを中心に-
本田 敏明 *・小野 なつみ **・小林 朋可 **・二田 隆寛 **・前田 健人 **
(2014 年 8 月 8 日 受理)
A Study of Teachers’ ICT Skills
: Adopting Grounded Theory Approach
Toshiaki HONDA*, Natsumi ONO**, Tomoka KOBAYASHI**,
Takahiro HUTADA** and Kento MAEDA**
(Received August 8 , 2014) はじめに 「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(文部科学省)の結果によると1),日本の 7割近くの教員が「授業中にICTを活用して指導する能力」を有しているという。しかし,その ICT活用の具体的な内容や教員間のデジタル・デバイドについては必ずしも明らかにはされていな い。教員間のICT利用能力の両極化ともいえる現状をいかに解決していけばよいのか,本論文では, グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいた解決策について,理論的提案を行うこととする。 Ⅰ グラウンデッド・セオリー・アプローチとは何か 1 グラウンデッド・セオリー・アプローチの特徴
グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded Theory Approach,以下,GTAと略)はA.ス トラウス,B.グレーザーによって創出された質的調査の方法論である2)。ここでは,ある概念を
明らかにするのに,その概念に内包するカテゴリー,あるいはクラスを抽出し,それぞれのカテゴ リーの特性を構造的側面やプロセス的側面などから階層化,関連づけを行いそこから仮説を導き出 し,最終的に理論化していくというものである。ここでは思弁的な方法ではなく,データ収集とデー
茨城大学教育学部情報教育研究室(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Laboratory of Information Education, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
茨城大学教育学部情報文化課程(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Under Graduate, Course of Information Culture, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
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の多くの業務をこのテーマと関係させて業務の要素を抽出し,階層化することで何が必要で何が足 りないのかを明らかにするためである。ふたつには,教員の個人的能力を全体としての学校組織の 中でどう位置づけ,どう解決していくのかを明らかにするためである。 GTAはすでに複雑な事象の問題解決に成果を上げていると言われるが(例えばアメリカにおけ る看護学の例4)),日本の学校におけるこの分野での応用は執筆者の管見では皆無に近い。過去か ら繰り返される教員のICT能力の調査と研修の強化の繰り返しというパターンではなかなか根本 的な問題解決には至らず,本GTAをひとつの解決策として提案する。 3 GTA による実践化の概要 GTAによって問題の根本的な解決を試みるには,信頼に足るある一定程度のデータ量とさまざ まな分析手順が必要になる。本研究では,分析結果の信頼性よりはとりあえず限られたデータ量に 基づいて実践化の手順を確立することを優先することとし,今後の実現可能性を示すことを主目的 とした。特に本研究で重視した手順は以下の通りである。 「教員のデジタル・デバイドを生み出す要因の予測と要素の抽出」−「抽出した要素のカテゴリー 化」−「関係する要素ないしカテゴリー間のリンク」−「全体構造のモデル化」 以下では,上述の手順による実践過程について述べることとする。 Ⅱ 教員のデジタル・デバイドとグラウンデッド・セオリー 1 教員のデジタル・デバイドを取り巻く要因 教員のデジタル・デバイドをGTAを用いて調査するにあたって,教員のデジタル・デバイドの 現状を知る必要がある。今回のモデルケースにおいては教員のデジタル・デバイドの現状を調査す る前段階として,教員のデジタル・デバイドを筆者側で想定した。この際,使用した方法はブレイ ンストーミングである。次段階としてブレインストーミングを用いて考え出した要素の所属するカ テゴリーを創造した。今回は,要素を4つのカテゴリーに分類した。私たちが教員のデジタル・デ バイドを作り出している可能性があると考えた要素は以下の通りである(表Ⅱ-1~4)。
これらの要素をカテゴリーのもと,筆者たちで因果関係や順序に従い構造を想定した。表Ⅱ-4 の個人プロフィールを例としてあげると,性別や年齢といった前提条件にあたる要素が得意意識に 影響を与えているなどといった体系化を行った。この仮の構造をモデルとして次段階にあたる教員 のデジタル・デバイドの調査へと移行した。 2 教員のデジタル・デバイドの現状を調べる 教員のデジタル・デバイドを作り出す構造を想定したので,その構造に基づきデジタル・デバイ ドの現状の調査を行った。GTAにおいて,対象集団における調査の方法はインタビューなどが選 択されうるが,今回はアンケートを実施し,現役高等学校教員,中学校教員,小学校教員,特別支 援学校教員を含む合計28名を対象に調査を行った。実際の科学的な調査をする際は,複数の調査 方法を用いそれぞれの方法における特色を踏まえたうえで考察を行うことと,調査対象の絶対数を 増やすことでより精緻で正確な研究結果を得ることができるだろう。アンケートの作成に当たって は,ブレインストーミングで想定した要素が,デジタル・デバイドの要因となっているかを知るこ ととデジタル・デバイドの現状を見極めるという2つの目的がある。よって,アンケートの回答方 法も要素の性質にあわせ,それぞれの項目に対しイエス/ノーの2択方式,記入方式,選択方式, 能力を1~5段階に分ける段階方式などから適切なものを使用した。アンケートの各項目と回答 方式については表Ⅱ-5,6の通りである。
3 調査の集計 表Ⅱ-5,6のアンケートの結果を集計した。集計は表計算ソフトを用い行った。表計算ソフトを 使うことの利点としては,GTAにおいて膨大な情報を扱うことになりがちだがこのようなソフト を使うことによって,特定のデータに基づきほかの全データの並び替えや関連性の発見が容易とな ることが挙げられるだろう。集計結果については表Ⅱ-7,8の通りである。集計の際は選択問題と, はい・いいえをはじめとする2択問題を中心に一つの表にまとめている。選択問題の表記について はパソコンを選択していた場合,パのように選択したものの頭文字のみを表記しているものと選択 肢そのものの表記がある。これらの関連については今回は1~28の無作為につけた番号を用いる ことで管理している。 4 教員のデジタル・デバイドに関する分析 教員のデジタル・デバイドを作り出す要因や環境を発見するために,このアンケートの各データ の関連付けを行った。方法に関しては,クロス集計を行った。これは複数の質問項目の内容をかけ あわせ比較する方法であり,それぞれの要素の関連の仕方を調べることができる。クロス集計の結 果は表Ⅱ-9の通りである。表Ⅱ-9は個人プロフィールカテゴリーの項目2番年齢と4番ICT利用 を得意と感じるか,不得意と感じるか,プロフィールカテゴリーの項目1番のPC所有歴の3項目 に関するクロス集計である。表Ⅱ-9中にある調査番号とは,アンケート集計の表中にあった調査
を行った人物へつけた無作為の番号のことである。年齢とPC所有歴の項目から算出したPCを所 持した年齢(上記表では差の項目)が低いほど左に表示されている。差の項目と得意・不得意の項 目を比較している。結果は10代からPCを所持している人物で得意(アンケート中では○と表記) と回答した割合は80.0%,20代は86.7%と得意と感じている割合が大半を占めていることに対し, 30代で所持した人の中で得意と回答した人は25%,40代は33.3%と得意と感じる割合が極めて落 ち込んだ。このことから,PCを所有し始める年齢とICTを利用することへの得意意識・不得意意 識との間には因果関係があることが考えられる。 表Ⅱ-10は個人プロフィールカテゴリーの項目4番のICT利用への得意意識とプライベートカ テゴリーの4番のネットワークコミュニケーションとの間のクロス集計である。この二つの項目を 見ると,得意意識とネットワークコミュニケーションの経験の有無の結果が似通っていることがわ かる。ICTの利用が得意と感じていて,さらにネットワークコミュニケーションを行ったことがあ ると回答した割合にして78.9%であったことに対して,ICTの利用を不得意に感じている中でネッ トワークコミュニケーションを行った経験のある割合は22.2%にとどまった。この2つにも因果 関係が存在する可能性があるといえる。また,この2項目の場合,ネットワークコミュニケーショ ンを行ったこと得意意識を生み出すことへ作用しているのか,得意意識がネットワークコミュニ ケーションを行うという行動をもたらすのか,インタビューなどを通してさらなる展開をさせてい くことも可能だろう。 表Ⅱ-11中のパソコンスキルカテゴリー2番情報機器の所有に関する回答のパはパソコン,スは スマートフォン,ガはガラパゴスケータイ,タはタブレット機器の略である。このクロス集計はネッ トワークコミュニケーション体験と情報機器の所持内容を比較したものである。クロス集計の比率 を詳しく説明した図Ⅱ-1,図Ⅱ-2からもわかる通り,ネットワークコミュニケーション経験の有 無と,情報機器の所有,特に携帯端末の種類において関係が見られた。また,ネットワークコミュ
ニケーションの項目はパソコンスキルカテゴリー3番の1日あたりの情報機器に触れている時間の 項目においても関係が見られた。ネットワークコミュニケーションの経験があると回答した集団の 1日あたりの平均情報機器使用時間は3.23時間であったことに対して,ネットワークコミュニケー ションの経験がないと回答した集団の平均時間は2.70時間ともう一方の集団に対してやや少ない 結果となっている。ここにも因果関係が成立する可能性があるといえるだろう。 表Ⅱ-12は個人プロフィールカテゴリー2番年齢とパソコンスキルカテゴリー2番の情報機器の 所有についての比較であり,図Ⅱ-3は表Ⅱ-12のデータを折れ線グラフとして視覚化したもので ある。この比較から年齢ごとの所有機器に偏りが存在する可能性が示されている。特に,スマート フォンとガラパゴスケータイの所有率はそれぞれの30代,40代,50代ごとに推移が見られる。 表Ⅱ-13は個人プロフィールカテゴリー8番の所属学部を文系・理系の2種類に分け,その2種 類と使用OSの分布について比較したものである。図Ⅱ-4は表Ⅱ-13の結果を図示している。結果, 理系は比較的旧型のOSが多く分布したことに対し,文系は新型のOSの方に多く分布した。
5 教員のデジタル・デバイドの構造 クロス集計と要素の関連性を組み合わせ,構造化したのが図Ⅱ-5である。教員のデジタル・デ バイドを取り巻く4つのカテゴリーとその中にある要素,さらにそれぞれのカテゴリーを越え影響 を及ぼしあっている項目がまとめられている。今回の調査・研究は大規模なものではなく,GTA による科学的な分析としては成立しうるものではないが,上記のように問題を取り巻く要素を分析 し,さらには具体的な発見を見出すまでの展開する可能性があるといえるだろう。
Ⅲ 学生のデジタル・デバイドへのアプローチ 前章では,教員のデジタル・デバイドに関して,ICTスキルの質的研究を行った。次の段階として, 我々は学生を対象に,教員の場合と同じくGTA適用手順を当てはめて,学生のデジタル・デバイ ドを取り巻く要素の構造について考察した。基本となる手順は変わらず,前回のブレインストーミ ングによって挙がった教員のデジタル・デバイドをとりまく要素の中から,学生にも共通する点を 抽出し,その抽出した要素を今回は3つのグループ(「個人プロフィール」「プライベート」「具体 的なICT利用」)に分類した。次に,それらの要素から関連する質問項目を新たに練り直し,学生 を対象としたアンケート(「ICT利用に関する調査」)を制作,実施を行った。対象は茨城大学の学 生58名である。次にアンケートの結果を単純集計し,学生のICT利用に関する傾向を分析した後, それぞれの質問項目からクロス集計を行い,上に記述した3つのグループの内部,また他のグルー プの要素との関連付けを行い,構造表を作成した。以下で学生用のアンケート項目,アンケート集 計結果,クロス集計結果,構造表をグラフや図を交えながら説明していくことにする。あくまでこ の研究はGTAの適用手順に当てはめた実験的なものである。 1 学生用アンケート項目の一覧 学生を対象に行ったアンケートの項目は以下のとおりである。
教員を対象としたアンケートとの変更点として,「学校での立場」に関する質問項目を削り,一 部の質問を「個人プロフィール」に吸収した。また,「パソコン等のスキル」の質問項目から一部 を抽出し,「具体的なICT利用」として新たに作り直した。 2 アンケート集計結果 アンケートの集計方法は教員を対象としたアンケートの場合と同じ方法で行った。集計結果を以 下にグラフで表した。 1)個人プロフィール
2)プライベートにおけるICT利用
3 クロス集計 「2 アンケート集計結果」で得た集計結果をそれぞれ1対1で比較し,共通する,あるいは結 びつきの強い質問項目があるかどうかを検証するクロス集計を行った。その結果を元に,3つのグ ループに分類された要素同士の関連付けを行い,「学生のデジタル・デバイドを取り巻く要因」の 構造表を作成した。 今回のクロス集計によって,結びつきが強いと考えられる質問項目(要素)が10組見受けられた。 それを以下に解説を含めて記した。なお,②の集計結果と対応している。 ● Ⅰ- 2.年齢 × Ⅱ-1.パソコンの所有 今回,アンケートの対象者は18~21歳であったため,18・19歳,20・21歳に分けてパソコン の平均所有年数を計算した。(1ヵ月≒0.085年とする)その結果,18・19歳のパソコンの平均所 有年数は1.7年(約1年と9ヶ月),20・21歳は3.5年(約3年と6ヶ月)となった。年齢によっ てパソコンの所有年数に違いが出ることから,上二つの要素は関連性があると言える。 ● Ⅰ- 2.年齢 × Ⅲ-8. 使用しているOS 年齢別に使用しているOSを比較した結果,年齢によってそれぞれの使用OSに変化が表れた。(図 Ⅲ-22参照)このことから,二つの要素は関連性があるといえる。 ● Ⅰ- 3. ICT利用への得意・不得意意識 × Ⅱ-1.パソコンの所有 ● Ⅰ- 3. ICT利用への得意・不得意意識 × Ⅲ-3. 一日あたりの情報機器に触れている時間 ● Ⅰ- 3. ICT利用への得意・不得意意識 × Ⅲ-4. 検索エンジンの理解(PCの利用詳細) ● Ⅰ- 3. ICT利用への得意・不得意意識 × Ⅲ-5. ICTに関する用語の理解(PCの利用詳細) 上記4つの組を,ICT利用の得意・不得意を基準に,図23にまとめた。左からそれぞれ,パソ コンの平均所有年数・一日あたりの情報機器に触れている平均時間・検索エンジンに対して理解力 を点数化した平均(「すごく思う」が5,「まあまあ思う」が4,「どちらとも言えない」が3,「あま り思わない」が4,「まったく思わない」が1とする)・. ICTに関する用語の理解力を点数化した 平均(検索エンジンの理解力の点数化と同じ方法)を表している。いずれにおいても,得意な場合 は数値が高く,不得意な場合の数値が低いことから,上記4つの要素は各々関連性が高いと言える。
● Ⅰ- 3. ICT利用への得意・不得意意識 × Ⅲ-6. 情報機器のエラーの対処方法(PCの利用詳細) ICT利用が「得意」と答えた人と,「不得意」と答えた人に分けて,それぞれの情報機器のエラー の対処方法を知っている人の割合を調べた結果,得意かつエラー対処方法を知っている人は57.9%, 不得意かつエラー対処方法を知っている人は12.8%であるという結果が出た。得意か不得意かによっ て,エラー対処に対する知識の違いがあることから,上記の二つの要素は関連性があると言える。 ● Ⅰ- 4. ICT利用において恩恵を受けたか × Ⅲ-3. 一日あたりの情報(電子)機器に触れている時間 ● Ⅰ- 5. ICT利用において損失を被ったか × Ⅲ-3. 一日あたりの情報(電子)機器に触れている時間 ICT利用においての恩恵・損失の有無と,一日あたりの情報機器に触れている時間の集計データを 照らし合わせたところ,図Ⅲ-25の通り,情報機器に触れている時間の平均が変わるという結果になっ た。恩恵・損失がある場合とない場合とで,情報機器に触れている時間が上下することから,上記 の二つの要素は関連性があると言える。
● Ⅱ-1.パソコンの所有 × Ⅲ-8. 使用しているOS 今回,アンケートの対象者となった,学生58名のうち,23名がwindows8を使用していたため, windows8を使用している学生と,それ以外のOSを使用する学生それぞれのパソコン所持年数の平 均を照らし合わせた。その結果,windows8を使用している学生のパソコン平均所持年数は約1.8年 (1年10ヶ月),それ以外のOSを使用している学生の平均所持年数は約4年となった。使用してい るOSによって,パソコン平均所有年数が異なることから,上記二つの要素は関連性が高いと言える。 4.構造表 「3.クロス集計」において,関連性が高いと考えられた要素同士を線で結んでいった結果が,図 Ⅲ-26の「学生のデジタル・デバイドを生み出す要因」の構造表である。教員のデジタル・デバイド に関する構造表との比較は,次の章で行う。 Ⅳ 教員と学生のデジタル・デバイド比較 1 教員と学生の構造表 今までは教員と学生のデジタル・デバイドについて個別に見てきたが,ここからはこの2つを比 較していくことにする。教員と学生の構造表を合わせたものは,図Ⅳ-1の通りである。
この構造表は,アンケートの同じ質問項目で,教員と学生の回答の割合が大幅に異なっていると ころや,クロス集計をした結果,教員にも学生にも見られた共通点同士を繋げている。以下ではこ の構造表の関係性をもとに,教員と学生を比較していく。 ただし,教員のアンケートの回答者は28名,学生は58名とかなり少なく,データの質に問題が あると思われる。よって,以下で述べる研究結果や考察は,仮説に留まるものである点に留意する 必要がある。この研究は,あくまでGTAを用いた研究を,実例を示すことによってより具体的に論 じることが目的である。 2 情報機器の所有率と使用アプリ 情報機器の所有について質問したところ,特にスマートフォンとガラパゴスケータイの所有率に 大幅な違いが見られた。 スマートフォンの所有率は,教員は42.9%,学生は86.2%で,学生の方が約2倍の割合でスマー トフォンを所有していることが分かる。ガラパゴスケータイの所有率は,教員が42.9%,学生が6.9% であり,教員にとってガラパゴスケータイはまだ主流であるのに対し,学生にはほとんど使用され ていないことが分かる(図Ⅳ-2)。 また,スマートフォン,タブレットを使用している人に,「どのようなアプリを使用していますか」 という質問をしたところ,表Ⅳ-1のような結果が出た。
大きく差が見られたのがLINE,Twitter,ゲーム,天気である。特にLINEは,教員が28.6%であ るのに対し,学生は100%である。ここでもう1つ注目したいのは,メールの使用率である。教員は 100%,学生は90.7%と大幅な差は見られないが,メールとLINEを比べてみると,連絡の手段とし て学生はメールよりもLINEを使用していることになる。現時点ではその差は小さいが,若い世代の 間でLINEがメールにとって変えられる日がいつか来るであろう。 Twitterも教員が21.4%で学生が81.5%,ゲームは教員が57.1%,学生が83.3%と,学生の使用率 が大幅に高くなっている。これは暇つぶしなど,娯楽をアプリで楽しむのが教員よりも学生の方が 多いということだろう。
天気は,教員57.1%に対し学生75.9%と,やはり学生の方が使用の割合は高くなっている。理由 として考えられるのは,おそらく学生は,一人暮らしの場合は家にテレビがない,新聞を取ってい ないことや,学校やアルバイト等でテレビを見る機会が減り,ニュースで天気予報を確認しないた めに,アプリで天気を確認しているのではないかと考えられる。
3 ICT の得意・不得意を決める要因 教員と学生のクロス集計を比較したところ,ICTの得意・不得意に関わる項目に共通点が見られた。 1つ目はエラーの対処に関する質問,2つ目は検索エンジンに関する質問,3つ目は用語の意味の理 解についての質問である。 まず,「ICTを使うことは得意に感じるか,不得意に感じるか」という質問に対して,得意と感じ る割合が,教員では67.9%,学生では32.8%,不得意と感じる割合は,教員では28.6%,学生では 62.1%であり,教員の方がICT使用を得意と感じるという結果が出た。 また,「情報機器を使用していてエラーが発生した場合,その対処法を知っていますか」という質 問では,「はい」と答えた割合は教員では64.3%,学生では27.6%で,「いいえ」と答えた割合では 教員は28.6%,学生は67.2%であった。 この2つの質問から,情報機器の操作に関しては,教員の方が得意であるという結果が得られた。 その理由として,これはあくまで仮説だが,教員の方が情報機器の使用年数が学生に比べて長く, また,仕事等で様々な機能を使う機会が多いからではないかと思われる。 表Ⅳ-3の通り,教員においても学生においても,ICTの使用が得意であると回答している人は エラーの対処法も知っており,不得意と回答している人はエラーの対処法は分からないという相関 関係が見られた。 また,「あなたは,検索エンジンについてきちんと理解していると思いますか」という質問と「用 語の意味(cookieやOSなど)について理解できていると思いますか」という質問をより理解できて
いる方を5,理解できていない方を1とした,5段階評価で聞いたところ,ICTが得意と回答した人 の方が不得意と回答した人よりも平均の数値が高いという結果が出た(表Ⅳ-4)。 以上のことから,ICTの使用を得意と感じるか不得意と感じるか,その決め手として,エラーの対 処法を知っているか否か,検索エンジンの理解,用語の理解が大きく関わっていると言えるだろう。 おわりに 以上,GTAに基づいた教師と学生とのデータの比較を行った。本論冒頭でも述べたように,本研 究は限られたデータ量によるGTA実践化の手順の確立を優先することであり,分析結果の信頼性よ りは今後の実現可能性を示すことを主目的としたものである。しかし,最終的に本論「図Ⅳ-1 構 造表(教員+学生)」で示したように,下記のようなGTA実践化の一定の手順の有効性については 示すことができたと考える。 「教員のデジタル・デバイドを生み出す要因の予測と要素の抽出」−「抽出した要素のカテゴリー化」 −「関係する要素ないしカテゴリー間のリンク」−「全体構造のモデル化」 しかし,GTA実践化の手順はまだ多くのものがあり,それらを同様の方法で明らかにしていくの が今後の課題である 以下では,今後の手順の見通しについてまとめておくことに留め,具体化については今後の課題 としたい。 ・ 作業分析 あるタイムスパンでの時系列データの収集と集計
問題点の抽出,コーチングの仕組み,教授カリキュラムマップの作成 ・ 外部評価 行政,研究者,保護者等 ・ 実施 実施報告と比較分析 ・ 結果の活用 半標準化 ・ 熟練者のパラダイム・モデル構築 共有 注 1) http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/__icsFiles/afieldfile/2013/09/17/1339524_02.pdf. 2) 才木クレイグヒル滋子『実践グラウンデッド・セオリー・アプローチ』,新曜社,2012. 3)http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~ysekigch/qual/grounded.htmlhttp://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~ysekigch/qual/ grounded.html 4) キャシー・シャーマズ著,抱井尚子・末田清子監訳『グラウンデッド・セオリーの構築 社会構成主義からの 挑戦』,ナカニシヤ出版,2011.