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炭水化物水酸基の相対的反応性について : メチル4,6-ο-ベンジリデン-β-D-グルコピラノシドの非プロトン性溶媒中での選択的エステル化反応

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(1)

平 成13年12A(2001年) 一9一

炭 水 化 物水 酸基 の相 対 的反 応 性 につ い て

一 メ チ ル4

,6-0一

ベ ン ジ リ デ ン ーβ一D一グ ル コ ピ ラ ノ シ ドの

非 プ ロ トン性 溶媒 中で の選 択 的エ ステル 化 反応

加納 千路,近 藤 陽太郎

Selective Esterification of Methyl4,6-0-Benzylidene-1D-Glucopyranoside

in Various Aprotic Solvents

Chiji Kano and YOtaro Kondo

Methyl 4,6-0-benzylidene-flD-glucopyranoside was benzoylated with a limited amount of benzoic anhydride in a series of aprotic solvents in the presence of sodium benzoate. Partial benzoylation of the glucoside in acetonitril, dichloromethane, N,N-dimethylformamide and pyridine, respectively, gave the preponderance of 3-0-benzoate over 2-0-benzoate as shown by quantitative TLC, while the benzoylation in acetone gave the higher yield of 2-0-benzoate than that of 3-0-benzoate. This reverse result suggests that acetone has a certain activating solvent effect on the reactivity of HO-2 in methyl 4,6-O-benzylidene-f-D-glucopyranoside derivatives toward benzoylation with benzoic anhydride.

1.は じ め に 糖 質 化 学 の初 期 の 発 展 は,デ ン プ ンや 寒 天,そ の 他 色 々 な 多 糖 が 生 体 高 分 子 と して発 見 され た こ と に あ る。 糖 質 は植 物 界 や 動 物 界 に最 も 多 量 に 存 在 す る 有 機 化 合 物 で あ り,今 日で は 食 品 工 業,繊 維 工 業, 製 紙 工 業 な どで 原 料 と して 広 く用 い られ て い る 。 糖 質 の 多 くは,炭 素 と水 が 合 併 したCx(H20)vの 一 般 式 で 表 され る の で,炭 水 化 物 ま た は,含 水 炭 素 と呼 ば れ て き た 。 例 え ば グ ル コ ー ス で は, C6Hl206[C6(H20)6],ス ク ロ ー ス で は C12H22011 [C12(H20)ll】 の よ うに な る が, carbohydrate(炭 水 化 物)と い う名 称 は,こ れ らが 炭 素 の 水 和 物 で あ る と い う間 違 っ た 考 え 方 か ら生 じた も の で あ る。 現 在 で は タ ンパ ク質,脂 質 に 対 応 した"糖 質"の 名 称 が 使 わ れ る よ うに な っ た1)。 ま た,糖 質 は タ ン パ ク 質, 脂 質 と と も に 生 物 体 の 生 命 維 持 に 欠 く こ と の で き な い 重 要 な 物 質 で あ る こ と も分 か っ て い る。 植 物 は 光 合 成 に よ り二 酸 化 炭 素 を 炭 水 化 物 に 変 換 して い る が,そ の 代 表 的 な 生 成 物 が セ ル ロー ス とデ ン プ ン で 京都女子大学家政学部食物栄養学科食品学第二研 究室 あ る。 セ ル ロー ス は植 物 の 構 造 原 料 と して 働 く重 要 な 成 分 で あ り,堅 固 な 細 胞 壁 や 繊 維 質,木 質 組 織 な ど を形 作 っ て い る。デ ン プ ン は 炭 水 化 物 を貯 蔵 して, あ とで 食 糧 や エ ネ ル ギ ー 源 と し て 用 い る形 態 を も っ た も の で あ る。 デ ン プ ン を加 水 分 解 して 得 られ る グ ル コ ー ス は,高 等 動 物 に と っ て 血 液 中 に 欠 く こ との で き な い 成 分 で あ る 。 ま た,リ ボ0ス とデ オ キ シ リ ボ ー ス の2つ の 糖 も 遺 伝 因 子 を 形 成 す る必 須 物 質 で あ る。他 に も数 多 くの 炭 水 化 物 が 補 酵 素 や 抗 生 物 質, 軟 骨 組 織 甲殻 類 の 皮 殻,バ ク テ リア の 細 胞 壁 な ど を形 作 る重 要 な 成 分 と して 機 能 して い る。 糖 質 は構 造 に よ っ て 単 糖(monosaccharide),オ リ ゴ 糖 (oligosaccharide),多 糖(polysaccharide)の 三 つ に 分 類 され る。 糖 類(saccharide)と い う言 葉 は,ラ テ ン語 のsaccharide(糖)に 由来 し,単 純 な 構造 を も っ た糖 質 が 一 般 に 甘 味 を呈 す る こ とが 多 い の で こ の名 称 が あ る。 こ の よ うに 分 類 され た3種 類 の糖 質 は加 水 分 解 を介 して 互 い に 関 連 を も っ て い る。 多 糖 を加 水 分解 す る と オ リゴ 糖 を 生 じ,そ の オ リゴ糖 を さ ら に加 水 分 解 す る と単 糖 を 生 じる 。 単 糖 と呼 ば れ る も の は,そ れ 以 上 加 水 分 解 され な い 糖 質 の こ と で あ る。 糖 質 の 有 機 反 応 の 多 く は,反 応 試 薬 と糖 質 中 の水 酸 基 ま た は カ ル ボ ニ ル 基 との 有 機 反 応 で あ り,有 機

(2)

化学の研究対象となるものでは,反応機構を単純化 するために単糖を使って糖質の有機化学は進歩して きたZ,3)。糖質水酸基のこれまでの研究において,水 酸基の反応性は二級のものより一級のものが高く, 糖類ではへミアセタール性の水酸基を有するため, C-1位の,いわゆるグルコシド性の水酸基が,他の 一級や二級水酸基よりもその反応性は高いというこ とが知られている。しかし 二級水酸基間同志での 反応性の違いについてはあまり理解されていないよ うである4,5)。 そこでこの研究では,グルコースよりメチル

f

r

D

ー グルコピラノシドを経てメチル 4,6-0一べンジリデ ン

-

f

r

D

ーグルコピラノシドを調製し,その選択的エ ステル化反応を行うことで, equatorial に配向して 立体障害の少ないC-2位と C-3位の二級水酸基聞の 反応性の違いを検討した。

I

I

.

実 験 方 法

1

. 装 置 融点は柳本製作所 YanacoMPで測定した。薄層ク ロマトグラフィーによる生成物の定量は, Silica gel 60G棒状クロマトグラムを用い,ベンゼ、ン:アセト ン (49: 1)で展開し,水素炎イオン化検出器を装着 したヤトロン Iatoroscanner M K圃5とヤトロン Iatoro recorderTC-llで行った。薄層クロマトグラフィー による生成物の定性はメルク社Silicagel 60 Gを使用 し,展開溶媒としてベンゼン:アセトン (9: 1)を 用いて行った。 2. メチルペンタ-0'-:アセチJ

I

r

P

-

Dイ

f

ルコピラノシ ド

(

3

)

の合成6) 無水a-Dーグワレコース (1)(180g)を HzO(240ml) に溶かした溶液をマグネチックスターラーで撹枠し ながら,メチル化剤である硫酸ジメチル(110ml)を 加え,続いて円筒分液ロートを用いて, HzO (360ml) に NaOH (120g) を溶かした溶液を滴下した。この 時,電気定温ウォーターパスを用い 250

C

に保温し た。一晩撹枠後,過剰の硫酸ジメチルを分解するた めにアンモニア水 (40ml)を加え, 30分間撹枠し, 次に 3M HZS04 で中和した。続いて,ロータリ エパポレーターにより減圧下で濃縮し,エタノール と共沸させて十分水分を除くとシロップ状の残濯が できた。これをさらに

P

Z

0

5上で減圧乾燥させた。ア セチノレ化するため,生成したシロップを乾燥ピリジ ン (400ml)に溶かし,氷冷下で無水酢酸 (600ml) を加え, 20時間室温で撹枠した。これを分液ロート に入れ,メカニカルスターラーで撹枠しながら氷水 中に滴下すると結品が析出した。精製のためにエタ ノール中で、活性炭処理を行い再結晶化を行うと,メ チルベンタ-0-アセチル

-

f

T

Dーグルコピラノシド(3) の結晶が得られた(収量:149g,収率:41 %)。 3. メチル

P

-

Dグルコピラノシド (2)の合成 糖のアセチル基は,他の一般的なエステルと同じ ようにアルカリであるナトリウムメトキシドなどに より加水分解され,糖(アルコール)と酸(酢酸) を生じる。乾燥させたメチルペンタ-0-アセチル

-

f

r

Dーグノレコピラノシド

(

3

)

(30g) をジクロロメタン (78ml)に溶かし,使用直前に作ったナトリウムメ トキシド(金属 Na

o

.

5gをメタノール 100mlに溶か して調製) (90ml)を撹枠しながら加えた。 3時間, 室温で撹枠,脱アセチル化を行った後, Amberlite IR120 (H+) 用いて中和し,ガラスフィルターで吸 引滴過後,ロータリーエバポレーターで減圧濃縮す ると結晶が析出した。この結晶を最小量のエタノー ルから再結晶化すると,メチル

f

r

D

ーグルコピラノシ ド (2) が得られた(収量:14.6g,収率:91%)。

4

.

メチル

4

6-0

ーベンジリデン

-

P

-

Dーグルコピラノ シド

(

4

)

の合成 メチル

f

r

D

ーグルコピラノシド (2)を酸触媒の

ρ

-トルエンスルホン酸の存在下で,ベンズアルデヒド ジメチルアセタールと縮合させると,環状アセター ルで、ある 4,6-0ィくンジリデン誘導体

(

4

)

が生成す る7)。このベンジリデン誘導体は六員環をもっピラ ノシドのC-6位および C-4位の水酸基の保護基とし て多用される。 乾燥メチル

f

r

D

グルコピラノシド (2) (4.0g) に N,N-ジメチルホルムアミド (16ml),ベンズ、アルデ、 ヒドジメチルアセタール (6ml)と

p

-

トルエンスル ホン酸 (10mg) を加え,ロータリーエパポレーター を使用し,水温 600Cで 1時間回転させながら減圧 還流させた。その後, トリエチルアミンを過剰に加 えて中和し,水温 850C でエバポレーターで減圧乾 固した。これに氷水を加えて砕き,結晶を吸引漏過 し冷水でよく洗い回収すると,メチル 4,6-0ーベン ジリデン

-

f

T

Dーグソレコピラノシド (4)が得られた (収量:4. 7g,収率:80%)。

5

.

メチル

4

6-0

ーベンジリデン

-

P

-

Dーグルコピラノ シド

(

4

)

の選択的工ステル化反応 エステル化反応は基本的には以前に報告した実験 法8)に準じた。メチル

4

,6-0ーベンジリデン

f

r

D

ーグ ルコピラノシド (4)(100mg),無水安息香酸(1.5mol. equivs.,....,_4. Omol. equivs) と無水安息香酸ナトリウ ム (150mg'"'-' 250mg)) 加え,非プロトン性溶媒で

(3)

平成13年12月 (2001年) あるアセトニトリル,アセトン,ジクロロメタン, N,N-ジメチルホルムアミド,ピリジンの 5種の溶媒 (4ml)に懸濁し,ウォーターパス上, 600C10 間還流または加温した。 10時間後,漏過して固形物 を除き,ジクロロメタンで抽出し,炭酸水素ナトリ ウムで1回, H20で3回洗浄した。硫酸ナトリウム を加えて脱水し,績過,滴液をロータリーエパポレー ターで減圧濃縮すると結晶が析出した。この結晶を ジクロロメタンに溶かし 薄層クロマトグラフィー を行うと 4つの生成物が見られたので,これら 4つ の定量比を

I

a

t

o

r

os

c

a

n

MK-5

により求めた。 生成物に対する生成比の時間的変化(タイムコー ス)を調べるための実験では,メチル 4,6-0ーベン ジリデン

-

f

T

Dーグルコピラノシド

(

4

)

400mgを用 い, 5つの溶媒の中からアセトン,ジクロロメタン, ピリジンを選び,それぞれ 16ml使用した。その際, 使用した無水安息香酸はアセトンとジクロロメタン では最適値4.0モル当量を,ピリジンでは最適値1.5 モル当量を加えた。反応時間は 30分, 1時間, 2時 間, 4時間, 6時間, 8時間, 10時間に設定した。反 応液はウォーターパスを 600

C

に保ち,時間ごとに

CH20H

』 F

OH

1 1 -2mlを採取した。櫨過により圃形物を除き,ジクロ ロメタンで抽出し,得られた溶液を定量薄層クロマ トグラフィー用の試料とした。

皿.結果と考察

単糖の二級水酸基の部分的なベンゾイル化は,一 糖,アミノ糖,ケト糖などの調製に有用な中間体で あり,簡便な合成ルートを与える。ベンゾイル化す るために,さまざまなエステル化試薬(塩化ベンゾ イル,無水安息香酸,シアン化ベンゾイルなど)が 報告9)されている。この実験では二級水酸基との反 応機構を解明するために,ベンゾイル化剤として, 温和に反応する酸無水物の無水安息香酸を用い,メ チル 4,6-0ーベンジリデン-jJ-Dーグルコピラノシド (4)の二級水酸基 (C・2位, C-3位の水酸基)を部 分的ベンゾイル化し,溶媒,ベンゾイル化剤の濃度, 反応時間などの因子が,どのようにエステル化の選 択性に影響を与えるか検討した。 実験の対象となるメチル4,6-0ーベンジリデン

-

f

T

Dグ、ルコピラノシド (4)を調製するための反応経路 を図 1に示す。 α'-Dグルコース(1)を出発原料と

CH20Ac

』 F 4 『

OH

OAc

、 , ノ - - - a i

・ 、

M

e

t

h

y

l

s

-D

-

G

l

u

c

o

s

i

d

e

(2)

M

e

t

h

y

l

s

-D

-

G

l

u

c

o

s

i

d

e

P

e

n

t

a

a

c

e

t

a

t

e

(3)

α

-

D

-

G

l

u

c

o

s

e

OH

M

e

t

h

y

I

4

6

-

0

-

B

e

y

l

i

d

e

n

e

-

s

D

-

G

l

u

c

o

s

i

d

e

(4) 図1 α-D- グルコースからメチル 4 , 6・0- ベンジリデン -~D- グルコピラノシドの合成経路

(4)

d OBz Starting Material (4) 2,3・Di・0・Benzoate(7) OBz 2-0-Be回oate(6) 図

2

メチル

4

6

-

0

-

ベンジリデンーβD-グルコピラノシドの選択的ベンゾイル化反応経路 し,jJ-メチル配糖体を合成するためには選択性に極 めて優れたジメチル硫酸一水酸化ナトリウム法を用 いて

a

-

Dーグノレコースの

C

・1位の水酸基をメチル化 し,jJ-Dーグルコピラノシド

(

2

)

を得る。中和の際, 無機塩が多量に生成するため水溶性のメチル

f

T

Dーグ ノレコピラノシドと分別することが難しいので,これ を一旦アセチル化して水不溶のメチルベンタ-0-ア セチル-jJ-D グ、ルコピラノシド (3)とし,水中で結 晶化することで無機塩を除く。次いでこの酢酸エス テル (3)を定法通りアルカリにより加水分解して酢 酸とアルコール (4) を得る。アルコ ~Jレであるメチ ル 4,

6-0

ーベンジリデン jJ-Dーグルコピラノシド (4) は結晶性に優れ,エチルアルコールから再結晶化す ると容易に酢酸から分離することができる。 次にメチル4,

6-0

ーベンジリデン

-

f

T

Dーグルコピラ ノシド (4)の選択的べンゾイル化反応の反応経路を 図2に示す。出発物 (4)を無水安息香酸でベンゾイ ル化を行うと,反応の第一段階目では2つの経路を 通ってメチル4,

6-0

ーベンジリデン

-

f

T

D-グルコピラ ノシドのモノエステルを与える。即ち, aの経路は メチル 4,

6-0

ーベンジリデン

-

f

T

Dーグルコピラノシド (4)のC-3位の水酸基がベンゾイル化され,メチル 3-0ベンゾイルー4,6-0ーベンジリデン

-

f

T

D-グルコ ピラノシド

(

5

)

を与え,

b

の経路はメチル4,

6-0

ベ ンジリデン-jJ-D-グルコピラノシド

(

4

)

C

2

位の 水酸基がベンゾイル化され,メチル

2

-

0

ベンゾイル -4,6-0ーベンジリデン-jJ-Dーグルコピラノシド

(

6

)

を 与える。反応の第二段階目では,3-0-ベンゾ、エート

(

5

)

および

2

-

0

ーベンゾエート

(

6

)

は更に過剰の無 水安息香酸と反応すると, cおよび

d

の経路を通っ て最終産物メチル 2,3-di-Oーベンゾイル -4,

6-0

ーベ ンジリデン-jJ-Dーグ、ノレコピラノシド (7)に至る。こ こで重要なことは 4つの全ての経路 a'"'-'dで反応速 度が異なることである。従って反応の第一段階で, 仮に反応経路bを通るよりも経路

a

を通る方が速い とすると,生成するモノベンゾエートの割合は 3-0-ベンゾエート

(

5

)

2

-

0

-

ベンゾエート

(

6

)

より も大きくなる。しかしながら,反応がさらに第2段 階に進むことを考慮すると,例えば経路cを通る方 が経路dを通るよりも早いのなら,3-0ーベンゾエー ト

(

5

)

2

-

0

ベンゾェート

(

6

)

より早く消費さ れることとなる。従って 最終生産物の生成比のみ を考慮して,異なる 2つの水酸基聞の見かけの反応 速度の違いを決定づけることは必ずしも正しいとは いえないのである10)。 メチノレ 4,

6-0

ーベンジリデン-jJ-Dーグルコピラノシ ド(4)のC-2位と C-3位の二級水酸基の反応性の違 いは, C-1位のメトキシ基の配向によって著しく異

(5)

平成 13年 12月 (2001年) 13 -表1 メチノレ 4,6・0-ベンジリデン明βD-グルコピラノシド (4)の1.5モル当量無水安息香酸による選択的べ ンゾイル化反応 生成物(モル%) 溶 媒 2,3-Di-O-Be回oate(7) 2-0-Benzoate (6) 3-O-Benzoate(5) Starting Material (4) アセトニトリル 1.2 30.0 アセトン 1.4 38.4 ジクロロメタン 3.0 21. 8 N,N-ジメチルホルム 0.0 35.1 アミド ピリジン 26.8 24.2 なることが知られている。 α」配糖体のメチル基は

F

配糖体の場合と異なり, axial配向していて, C-2位 の水酸基はC・1位のメトキシ基と分子間で水素結合 することが可能なため,HO・2の反応性は HO-3のそ れと比較して,著しく高いことが知られている。HO・ 3周辺の立体的な混み具合が反応性に影響を与えて いるとも考えられるが,分子間水素結合のような静 電子引力もまた重要な因子として働くに違いないO

F

配糖体にはこのような分子間水素結合は存在しな いと考えられており,試薬が水酸基を攻撃する際に その周辺の立体的障害を均等視できるので,それ以 外の静電子的な因子の影響を調べることができるも のと考えられる。従ってエステル化(求核的アシル 置換反応)の反応機構を考えるとき,エステル化試 薬と反応中間体が形成する遷移状態に対して,溶媒 が静電子的に影響を与えて水酸基の反応性が変化す るといういわゆる溶媒効果が期待できる。 そこでエステル化に使用することができると考え られる非プロトン性の溶媒の中からアセトニトリ ル,アセトン,ジクロロメタン,

N

N

ージメチルホ ルムアミド,ピリジンの5種を選び,ベンゾイル化 における溶媒効果について検討した(表1)。反応は メチル4,6-0ーベンジリデン

-

f

r

D

ーグルコピラノシド (4)を1.5モル当量の無水安息香酸と安息香酸ナト リウムの存在下,非プロトン性溶媒中, 600Cで 10 時間撹枠しながら,保温あるいは還流煮沸した。反 応速度は出発物の残存率から分かるように,ジクロ ロメタンでは緩やかであり,他の4種の溶媒ではジ クロロメタンより早いものの大差はなかった。しか し,ピリジン中では,

2

3

-

d

i

-

0

ベンゾPエートの収 率が高いのが特徴であった。注目されるのはアセト ン中での反応結果であり,他の4種の溶媒中では 3 0ーベンゾエートが 2-0-ベンゾエートよりも多く生 成しているのに対し,逆の結果,即ち 2-0ーベンゾ 48.0 20.8 34.5 25. 7 25.4 49.8 36.3 28.6 27.0 22.0 エートの収率が 3-0-ベンゾエートそれより高かっ た。この事実はアセトンには他の4種の溶媒とは異 なる反応作用機作(溶媒効果)が存在するもと考え られる。 先に述べたように,このベンゾイル化の場合は二 段階で進行するので,それらの反応速度がどのよう に生成物の比率に影響を与えるかを考えると, 2,3

-d

i

-

O

-

ベンゾPエートが生成していることが重要であ る。 5種類の溶媒のうちアセトン,ジクロロメタン とピリジンの3種の溶媒について,無水安息香酸を 1モル当量から 4モル当量まで変化させ,生成する ベンゾエートとモノベンゾエートの比率から実験に 最適と考えられる条件を検討したところ,アセトン とジクロロメタン中では 4モル当量の無水安息香酸 が,ピリジン中では1.5モル当量の無水安息香酸に よるベンゾイル化が最も適すると考えられる結果 (データ示さず)が得られたので, 3種の溶媒中でベ ンゾイル化を行い,反応の時間経過による生成物の 比率の変化を追跡した(図 3a"-'図 3c)0 3種の溶媒 中では,し1ずれも反応2時間までは3-0ーベンゾエー トの収率が2-0ーベンゾエートの収率より高かった。 このことはモノベンゾエートを生じる第一段階の反 応で,経路

a

を通る反応よりも経路bを通る反応が より有利であることを示しており,反応の第二段階 の反応速度よりも早く,経路 a,b を通る反応より も経路c,dを通る反応の方が遅いと考えられる。何 故なら,もしその逆の経路 c,

d

を通る反応が経路 a, bを通る反応よりも有利なら,モノベンゾエート は速やかにジベンゾエートとなり,反応中間体とし ては殆ど存在しなし、かあるいはごくわずかしか検知 されないはずである。アセトンを溶媒として用いた 場合(図 3a),他の 2つの溶媒中とは異なり, 2-0-ベンゾPエートの収率は 3-0ーベンゾエートの収率よ り僅かに低いのではあるが,収率の程度は若干増加

(6)

A 2,3・Di-O-Benzoate o 2-0-Benzoate ム 3-0-Benzoate • Starting Material Benzoylation in Acetone Benzoylation in Dichrolomethane Benzoylation in Pyridi問 100 80 n u n u a U A U 守 ( ポ ) 万 一 ω 一 ﹀ 20

o 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Reaction Time (hr) Reaction Time (hr) Reaction Time (hr)

図3 メチル4,6-0-ベンジリデン

-

s

-

D-グルコピラノシド、の非プロトン性溶媒(アセトン,ジクロロメタン, ピリジン)中でのべンゾイル化反応の時間的変化 していることが分かる(但し このとき試薬が HO-3を攻撃する速度を超えることはなし、)。このことは アセトン中では他の 2つの溶媒中に比べてメチル 4,6-0ーベンジりデン

jrD

グルコピラノシド (4)の HO-2の反応性が幾分増加することを示している。反 応2時間以降はジクロロメタンとピリジン中で反応 は同じような傾向にあり,第一段階と同様 3-0ベ ンゾエートの収率が 2-0ベンゾエートの収率より 高かった。このことから,ジベンゾエートに至る経 路cとdの反応速度にはそれほど顕著な差はないも のと考えられる。ジベンソ、エートの生成収率から考 えると,極性の最も弱いジクロロメタン中での反応 速度が最も遅いことが分かる。このことはジクロロ メタンのような無極性の溶媒中では静電気的引力が 弱く,顕著な溶媒効果を発揮できないことを示して いる。興味深いのはアセトン中の反応で, 2時間以 降では2-0ベンゾェートの収率が3-0ベンゾ、エー トの収率より高く,他の2例とは逆の結果を得たこ とである。このことは反応の第二段階での速度に変 化が起ったことを示しており,アセトンの溶媒効果 に起因するものと考えられ,3-0べンゾエートから 2,3-di-0ーベンゾエートへの経路cの反応速度が 2-Oィくンゾエートから 2,3-di-0--/くンゾエートへの経 路dの反応速度を上回ることを示している。その結 果,反応の第二段階における出発物である 3-0ーベ ンゾエートの収率が減り 2-0ーベンゾエートより存 在率が低下したものと結論付けることができる。言 い換えると 3-0-ベンゾエートの H O・2が 2-0ベ ンゾエートのHO-3よりも反応性に富むということ である。このことも反応の第一段階でアセトンの溶 媒効果により出発物

(

4

)

のH O・2の反応性が幾分増 加した結果と一致するもので,3-0-ベンゾエートの HO-2のほうが 2-0ーベンゾエートのHO-3より反応 性が高いなら,より早く 2,3-di-0-ベンゾエートへ 変化するので,3-0ーベンゾエートが消費されるた め,3-0ーベンゾエートの残存収率が減少して,つい には 2-0ーベンゾPエートの収率が3-0ーベンゾエート の収率を上回る結果となったものであり,メチル 4,6-0ーベンジリデシ

-

j

r

D

-

グルコピラノシドの選択 的ベンゾイル化反応の第一段階でも第二段階でも, ア セ ト ン は メ チ ル4,6-0ベンジリデン

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Dグル コピラノシドの HO-2の反応性を高めることが分 かった。このことは明らかにこのベンゾイル化反応 において,アセトンにある種の溶媒効果が存在する ことを示している。

N. ま と め

メチル 4,6-0ーベンジリデン

-jrD

ーグルコピラノシ ドを非プロトン性溶媒であるアセトニトリル,アセ トン,ジクロロメタン,N,Nジメチルホルムアミド とピリジン中,安息香酸ナトリウム存在下で無水安 息香酸とそれぞれ選択的ベンゾイル化を行し、比較し

(7)

平成 13年 12月 (2001年) たところ,アセトンに顕著な溶媒効果を認めた。ア セトン以外の溶媒中でのベンゾイル化では 3-0ーベ ンゾイル誘導体が主生成物であったが,アセトン中 では 2-0-ベンゾイル誘導体が主生成物であった。 これはジクロロメタンやピリジン中での反応と異な り,アセトンの溶媒効果によりメチル 4,6-0 ベン ジリデン

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グルコピラノシドの HO-2の反応性 が高められた結果と結論付けることができた。しか し,メチル 4,6-0ベンジリデン-a-Dグルコピラノ シドのように,どちらか一方の水酸基が極端に優先 的に反応するとし、う条件は得られなかった。

参 考 文 献

1)R. D. Guthrie: Guthrie and Honeyman's Introduc -tion to Carbohydrate Chemistry, Oxford Univer幽 一一 15 sity Press, England (1974)[糖質化学,山本和 彦訳,共立出版,東京 (1977) ] 2) S. Coffey edited: Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, l

F

2nd edition, Elsevier, London (1967) 3)後藤良造,猪川三郎,世良明,大谷晋一:単糖 類の化学,丸善,東京 (1988) 4)近藤陽太郎:本誌, 15 (1994) 5)近藤陽太郎:本誌, 1 (1996) 6) H. H. Schlubach and K. Maurer: B飢, 57,1686 (1924) 7) M. E. Evans:Carbohyd.rRes., 21, 473(1972) 8) Y. Kondo:Agric. Biol. Chem., 41, 2089 (1977) 9) A. H. Haines:Advan. Carbohydr.Chem. Biochem., 33, 11 (1976) 10)

J

.

Lehrfeld: Carbohyd.rRes., 39, 364(1975)

図 3 メチル 4 , 6 ‑ 0 ‑ ベンジリデン ‑ s ‑ D‑ グルコピラノシド、の非プロトン性溶媒(アセトン,ジクロロメタン, ピリジン)中でのべンゾイル化反応の時間的変化 していることが分かる(但し このとき試薬が HO‑ 3 を攻撃する速度を超えることはなし、)。このことは アセトン中では他の 2 つの溶媒中に比べてメチル 4 , 6‑0 ーベンジりデン jrD グルコピラノシド ( 4 ) の HO‑2 の反応性が幾分増加することを示している。反 応 2 時間以降はジクロロメタンとピリジン中

参照

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