• 検索結果がありません。

食思も低下し, 呼吸による消耗が増えるのと合わせて食事量が減少するという, 二重の意味でエネルギーが不足して体力を失います 社会生活が困難になることでストレスが増し,QOLが低下してしまいます また, 線維化が高度となると, 拡散障害の進行によって酸素 化のみならず二酸化炭素の排出も低下し, 胸郭運

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "食思も低下し, 呼吸による消耗が増えるのと合わせて食事量が減少するという, 二重の意味でエネルギーが不足して体力を失います 社会生活が困難になることでストレスが増し,QOLが低下してしまいます また, 線維化が高度となると, 拡散障害の進行によって酸素 化のみならず二酸化炭素の排出も低下し, 胸郭運"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

特集 2 関連図で分かりやすい!

呼吸器疾患のアセスメント&ケア

∼患者情報を上手に掘り下げて看護支援へつなげよう

線維化して硬化した肺は動きが悪くなります。 拘束性換気障害を起こし,肺活量は低下しま す。安静にしている時には気づきにくいのです が,少しでも酸素要求量が増えると…つまり, 軽度の労作でも急速に低酸素血症と呼吸困難を 起こします。息切れや呼吸困難が日常化する と,身体活動性は低下し,あまり動かなくなる ことで運動耐容能が低下します。実際に動く力 が落ちてしまい,廃用性症候群の進行に伴って 呼吸筋力も失われ,ますます動くことが苦しく なり,動けなくなります。呼吸困難と疲労から

ポイント

●多様な病態で,重篤な労作時呼吸困難感を引 き起こし,がんに匹敵する予後不良なものを 含む。 ●急性増悪を予防する日常療養支援が重要で, 病態が理解しにくく,継続的な看護が必要で ある。 ●その人の生活を見つめ,病みのステージをしっ かりつなぐチーム看護の発揮が欠かせない。 社会医療法人 中信勤労者医療協会 松本協立病院  慢性呼吸器疾患看護認定看護師

大澤 拓

2003年長野県看護大学卒業後,松本協立病院入職,2011年より日本 呼吸ケア・リハビリテーション学会会員となる。2017年慢性呼吸器疾 患看護認定看護師資格を取得,現在に至る。

間質性肺炎

間質性肺炎の基礎知識

肺の間質とは

 間質性肺炎を学ぶためにはまず,「間質」が 何かを押さえる必要があります。間質とは,正 常な肺胞の外側にある肺胞壁などの壁の部分 (肺胞上皮細胞は除く)のことです(図1)。こ の間質に炎症や線維化が生じる疾患を間質性肺 炎と言います。ちなみに,通常の細菌性肺炎は, 肺胞の中,肺実質に炎症を起こします。

間質性肺炎とは

 間質性肺炎は,何らかの原因で間質に繰り返 し損傷が起こり,炎症細胞が集まって浮腫が生 じ,間質が分厚くなります。この時点ではまだ 可逆性がありますが,多くの場合,線維芽細胞 が膠原線維を産生し,進行すると線維化という 不可逆性の変化を起こします。線維化した組識 は,周囲の組織を引っ張るように縮んで硬化し ます。ここまで進行し,変化した部分の治療は 難しく,線維化の拡大は予後不良因子となりま す。

症状

 間質性肺炎の進行によって起こる変化を関連 図にしました(図2)。炎症で分厚く変化し, 肺胞腔 線維芽細胞 血管 マクロ ファージ 間質 Ⅰ型肺胞上皮 細胞 Ⅱ型肺胞上皮 細胞

図1 肺胞の構造

(2)

食思も低下し,呼吸による消耗が増えるのと合 わせて食事量が減少するという,二重の意味で エネルギーが不足して体力を失います。  社会生活が困難になることでストレスが増 し,QOLが低下してしまいます。また,線維化 が高度となると,拡散障害の進行によって酸素 化のみならず二酸化炭素の排出も低下し,胸郭 運動の低下も相まって,当初はさほど問題にな らなかったⅡ型呼吸不全が出現します。

分類

 間質性肺炎は,原因がはっきりしているもの なのか,不明なものなのかを分けて考えます。 病態 高炭酸ガス血症 高炭酸ガス血症

進行する肺間質の炎症・線維化

治療 鎮咳薬 悪循環の形成 進行 抗炎症・免疫抑制・ 抗線維化薬 NPPV,IPPV, 薬物療法 HFNC(低FiO2) 症状・状態 呼吸数上昇 気道刺激の増加 胸郭可動性低下 呼吸筋力低下 不安・恐れ 社会活動の減少 乾性咳嗽 安静時呼吸困難感 身体活動性低下 運動耐容能低下 エネルギーインバランス 抑うつ 呼吸仕事量増加 食事摂取量 低下 VC低下 肺胞低換気 低酸素血症 拡散障害 観察・ケア 薬剤有害事象の観察・支持治療の支援・対象ケア,治療の説明,生活指導, 家族支援,就労・社会活動支援,経済状況把握,医療福祉制度利用支援 動脈血液ガス分析,胸部X線・CT, 精密肺機能検査,呼吸数,呼吸形 態,呼吸補助筋の状況,感染徴候, 生活状況問診,検査・治療につい ての十分な説明と傾聴 フィッティング等ストレス 軽減,意思決定支援 アクションプラン 在宅酸素教育 コンディショニング リラクセーション 胸郭介助 マッサージ ストレッチ 胸郭可動域訓練 十分な酸素投与,評価 コンディショニング,リラクセーション 呼吸法,パニックコントロール 動作要領の教育 社会資源・介護保険との連携 在宅支援スタッフとの連携・在宅酸素旅行の支援 患者会・孤立しないつながりの形成 コンディショニング リラクセーション 呼吸法 パニックコントロール 低栄養・るい痩 就労状況,生活ニーズ 社会的・家族内役割の把握, 生活の中での活動性の維持 室温調整(低め) 刺激の除去 安楽な体位調整 顔∼頸部・前胸部をうちわで扇ぐ タッチング,マッサージ リラクセーション 胸郭介助 食事・栄養指導 補助栄養食品など の工夫 労作時呼吸困難感 在宅酸素療法 呼吸リハビリテーション

図2 間質性肺炎の進行による病態関連図

(3)

原因が分かっているものは 所見に応じて,膠原病肺, 過敏性肺臓炎,薬剤性肺傷 害などに分類され,原因の 除去と抗炎症薬などによる 治療に移ります。  原因が不明なものは「特 発性間質性肺炎(ideopathic interstitial puemonias: IIPs)」と言い,病理組織 学的所見に基づいて分類・ 診断されます。  本稿では,特発性肺線維

症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の患 者の診断から在宅療養までのさまざまな場面で の病態・患者情報のアセスメントと,具体的な ケアへのつながりを一緒に考えてみましょう。

関連図で理解する「間質性

肺炎」のアセスメント&ケア

事例

B氏,60代,男性 疾患名:IPF(来院時は未診断) 既往歴:Ⅱ型糖尿病,COPD 喫煙歴:30本/日×25年(40代で禁煙) 飲酒量:多い 今回の入院の契機:乾性咳嗽と労作時の呼吸 困難感が顕著となったため,かかりつけ診 療所より紹介され,精密検査・治療のため に入院となった。

診断期

 診断前評価時の看護師のかかわりのポイント を次に示します。 ・問診がとても重要である ・呼吸機能検査や胸部CTの所見は看護師も必 ず確認する ・バイタルサインと身体所見を丁寧に観察する  フィジカルアセスメントを丁寧にするのは基 本ですが,コミュニケーションの中でその人の 生活をとらえ,ニーズが何か,現在の病態の脅 威はどこにあるのかを考えます(図3)。

 場面1 

  紹介受診し,精密肺機能検査を受けたとこ ろで患者と話をした。歩行して病室に戻る と修正Borg(ボルグ)スケール:5(表1) であり,外見上も息切れが著明で呼吸数は 38回/分であった。前日の6分間歩行試験 では著明な低酸素が見られていた(表2)。 「仕事は続けたい」と外来では言っていた が,「酸素もしなければいけないし,もう 観念して退職しようと思う」と発言あり。 新しい治療と生活に対し,不安の表出が見 られた。 身体所見 呼吸様式 呼吸補助筋の緊張 ばち指,るい痩 チアノーゼ 聴診:捻髪音 (fine crackles) 症状 乾性咳嗽 労作時呼吸困難 動悸,食思不振 バイタルサイン 呼吸数,脈拍, 血圧,SpO2 簡易評価 安静時,労作時 排泄時,入浴時 詳細評価 動脈血液ガス 6分間歩行試験 胸部単純X線 下肺野優位のスリガラス状陰影 肺容量減少 精密肺機能検査 肺活量(VC,FVC)低下 1秒率(FEV1.0%)変化なし 拡散能(DLCO)低下 胸部CT スリガラス状陰影 蜂巣肺 血清マーカー KL-6,SP-D,SP-A上昇 外科的生検 胸腔鏡下肺生検 開胸肺生検 問診・生活環境聴取 環境面,社会面 価値観,ニーズ 身体所見や症状の観察,簡易評価は 看護師が積極的にかかわります。 特に,その人の生活面の情報を得て, 実際の生活に近い動作を評価するこ とは重要です。 診断にかかわる内容も把握しておき,医師や多職 種のチームで良好なコミュニケーションを心がけ ます。 共通のゴールを目指して現状を理解しておくこと で患者の支援をスムーズにすることができます。 肺機能・酸素化能の評価 間質性肺炎の診断

図3 診断前評価時の看護師のかかわり

(4)

 アセスメントとケアの視点  

呼吸困難

 一般的に,労作性に強い呼吸困難を認めま す。B氏は息切れが客観的には著明ですが,呼 吸数やSpO2の変化に比して自覚症状は薄い傾 向があります。慢性経過の場合,呼吸困難閾値 が上がり,SpO2がかなり低下しないと息苦し さを感じないこともあるため,呼吸数の上昇や 努力呼吸の有無,脈拍などを総合して呼吸状態 をアセスメントします。自覚症状が薄い場合に は,SpO2モニタを活用して,意識的に数値変 化で休憩のタイミングをつかんでもらうような 工夫をします。

各種検査の説明

 診断がついていない場合,種々の検査を行い ます。混乱を招かないように適宜検査の内容を B氏に説明し,疑問に答えます。医師と情報を 共有し,診断を理解しておくことも重要です。

社会生活の維持

 在宅酸素(home oxygen therapy:HOT)を 導入するからといって,必ずしも退職する必要 はありません。むしろ,HOTを活用して社会 生活を維持することこそ望ましいことです。具 体的な仕事の状況に合わせてHOTのデバイス を選定するなど,可能な限り希望する生活に合 う形の療養を支援します。

治療・回復期~退院支援期

 治療や退院支援に向けた看護師のかかわりの ポイントを次に示します。 ・病態や治療の理解状況を適宜確認する ・薬剤副作用の観察とマネジメントを丁寧に行う ・経済的負担への配慮をする

 場面2 

  検査所見を総合し,臨床的にIPFと診断さ れ,抗線維化薬ニンテダニブ(オフェブ®) が処方されることとなった。薬剤師から副 作用説明を受けた後で訪室すると,表情が 暗く,副作用や経済的負担への不安を表出 していた。  アセスメントとケアの視点  

病態や治療の理解状況

 IPFは分かりにくく,一般的ではありません。 例えば,肺がんと言われれば何とか治療をしよ うと考えるかもしれません。しかし,IPFと言 われて自覚症状があまりない場合,高額な治療 費と副作用がある治療に踏み切る気持ちになる 0 0.5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 感じない 非常に弱い やや弱い 弱い 多少強い 強い とても強い 非常に強い (Nothing at all) (Very very weak)

(Very weak) (Weak) (Some what strong)

(Strong) (Very strong) (Very very strong)

表1 修正Borgスケール     息切れの強さを数字で直接表現してもらう 開始1分45秒でSp02:80%以下となり中断。著明な肩呼吸。 3分14秒の休憩で再開。総歩行距離202m 予測値の41% 終了5分後でも,Sp02:88% 脈拍75/分であった。 Sp02 (%) (回/分)脈拍 開始前 Sp02:88% 脈拍:74/分 血圧:125/83mmHg 修正Borgスケール:0.5 修正Borg その也 0分 1分 2分 3分 4分 5分 6分 90 85 64 64 76 84 83 76 112 92 92 83 83 112 0.5 3 4 2 2 5 休憩 再開

表2 B氏の入院前6分間歩行試験結果

(5)

かというハードルがあります。それでも,IPF 患者の生存期間の中央値は,診断されてから約 3年と,決してがんと比べて軽い疾患ではあり ません。急性増悪を起こさなければ長い経過を たどることもあるので希望が持てるように支援 していくべきですが,シビアな疾患であること を理解してもらう必要があります。

治療薬剤

 IPFではない間質性肺炎の場合,治療薬の中 心的な役割を果たすのはステロイド薬です。副 作用が多く(表3),治療開始後急に中断がで きないため,適応は慎重に検討されます。治療 開始後は副作用症状の出現などによる状態変化 に気を付けて観察します。急性呼吸不全を起こ した場合には,ステロイドパルス療法(メチル プレドニゾロン500 ~1,000mg/日を3日間点 滴投与する)が行われます。IPFでも急性増悪 に対しては行われることがあります。感染症に 厳重に警戒してケアに当たります。  同様に,間質性肺炎の分類診断や併存症など から免疫抑制薬(アザチオプリン,シクロスポ リン,タクロリムス,シクロホスファミド)が 使用されることもあり,感染症に注意が必要で す。IPFに対する抗線維化薬は,現在ピルフェ ニドン(ピレスパ®)とニンテダニブ(オフェ ブ®の2種類が存在します。線維化を抑え,肺 活量の低下を遅らせます(表4)。副作用のケ アを行いながら継続を支援します。

包括的呼吸リハビリテーション

 身体活動性や社会性をできるだけ維持できる ように,動作の仕方や休憩の取り方を一緒に練 習します。HOTが必要になることが多く,酸 素吸入流量の設定や使用デバイスの選定・動作 要領などの教育的かかわりが必要です(図4)。  高タンパク・高エネルギーの食事摂取に向け た栄養面の工夫や在宅に向けた教育もリハビリ テーションの一環であり,リハビリセラピスト や栄養士と連携してかかわります。

経済的側面の支援

 IPFに対する抗線維化薬は高価です。自己負 担3割の場合,30日分の処方とすると,ピレ スパ®は推奨維持量で約5万6千円/月,オフェ ブ®は約11万8千円/月かかることになります。 そこで,高額療養費制度を活用して医療費が軽 減できないかを検討します。  重症度が低い患者でも,治療開始以降にIPF 治療による医療費総額が33,330円を超える月 が12カ月の間に3回ある場合は,難病医療費 助成制度の対象となります。また,制度適用後 に医療費総額が5万円を超える月が12カ月の 間に6回以上ある場合は,自己負担がより軽減 免疫抑制作用に よる易感染性 糖尿病 脂質異常症 骨粗鬆症 胃潰瘍 精神変調,不眠, 幻覚 凝固亢進 満月様顔貌 (ムーンフェイス) 血清IgG,β-Dグルカンなどの モニタリング ST合剤内服,感染症発症時に治療 血糖,HbA1C測定 食事療法,薬物療法 血中コレステロールの測定 食事療法,薬物療法 骨塩定量測定,予防内服 H2ブロッカー,PPIの内服 状況に合わせて薬物療法 Dダイマー測定,血栓発症時に治療 ステロイド減量 副作用 対策

表3 ステロイド薬の主な副作用 ピルフェニドン (ピレスパ ) ニンテダニブ (オフェブ ) 光線過敏症,胃腸症状 下痢,食思不振,肝機能障害 抗線維化薬 副作用

表4 抗線維化薬と副作用

(6)

されます。重症度や所得額,年齢区分によって 金額が変動するので,医事スタッフ・医療福祉 相談員と連携して支援します。呼吸機能障害の 適応がある場合は,申請して取得後,自治体の 適応に合わせて福祉医療受給者申請をすれば, 数カ月後に医療費が還付されます。

慢性期・在宅療養

 慢性期・在宅療養に向けた看護師のかかわり のポイントを次に示します。 ・安全な行動を促し続ける ・アドヒアランスの良くない行動も否定はせ ず,気持ちを受け止め,その意味をアセスメ ントする ・いずれ迎える病勢の進行や増悪を意識してか かわりをつなげる

 場面3 

  退院後,定期受診で来院した際にA氏と話 をした。「だいぶ体調も良くなってきたの で,最近はちょっと車からコンビニに入る くらいなら酸素を外して行ってくるよ。酸 素の数字が下がるけど,少しじっとしてい れば戻りも多少良い気がするんだ」「いつ 酸素が外せるか?」という発言も聞かれた。  アセスメントとケアの視点  

急性増悪の予防

 間質性肺炎は多様な経過をたどりますが,急 性増悪は一気に病状を悪化させるため,可能な 限り避ける努力をします。感染を契機に増悪す るケースが多く,感染予防が重要です。過労・ 睡眠不足を避けて規則正しい生活をすること や,手洗い含嗽を励行します。病状が安定して いるのならばインフルエンザや肺炎球菌の予防 接種を勧めます。

在宅酸素管理

 自覚症状が薄い場合は特に,退院後に酸素の 管理が乱れがちになることがあります。社会生 活を送る中での体裁の悪さであったり,操作の 煩わしさであったり,あるいは,良くなってい るのではないか,良くなりたい,という期待が そうさせることもあります。少しの間酸素の流 量を減量してみたり,外してみたり,という行 動も決して珍しくありません。大切なことは, 行動を否定したり,最初から論理的に説得しよ うとしたりしないことです。丁寧に客観的な現 状を伝えながら,本人の気持ちには肯定的に寄 り添い,一見問題に見える行動の元になってい るものが何なのかを表出してもらえるようにか かわり続けます。その行動の奥には,私たちと の信頼関係を深め,新しいかかわりが生まれる 手がかりがあるのです。そのほか,訪問看護な ど,在宅でかかわるチームとの連携も重要にな ります。 息苦しくなる4つの動作を意識する 腕を挙げる動作 腕を使い繰り返す動作 腹部を圧迫する動作 瞬間的な大きな動作(息を止める動作) ・洗濯物干しをする ・かぶりの服を脱ぎ着する ・髪を洗う  ・高い所のものを取る ・掃除機をかける  ・歯みがきをする ・拭き掃除をする ・ゴシゴシと体を洗う ・草むしりをする ・靴下やズボンをはく ・足を洗う  ・掃除機をかける ・下にあるものを取る ・顔を洗う   ・排便をする ・会話をする   ・食事をする ・重いものを持ち上げる

図4 息切れへの対処

(7)

身体活動性の維持

 過度な負荷のかかるトレーニングは逆効果に なってしまいますが,日常生活動作を継続する ことで体力の維持ができるように支援します。 肺性心の予防の観点からも労作時の低酸素を避 けるため,「十分な酸素を投与する」「低酸素に なってしまう前に休憩を入れる」の2点を行え るよう,その人の生活の中で工夫します。休憩 できる場所をつくったり,日誌のような形で負 荷のかかる場面を明確にして対応を考えたりし ましょう。上手に活動できるようになれば,プ ロバイダの協力を得て高流量酸素を使用しながら 家族で旅行に行くこともできるようになります。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 急性増悪や急変を起こした時の対応をどうす るのか,自身の気持ちと家族や周囲の気持ちが ずれていないかを,シビアな場面を迎える可能 性が高い病態だからこそ,比較的病状が安定し ている時からそうした話を互いにしておくこと が大切です。生きること,大切にしている考え 方や価値観といったコミュニケーションを継続 するプロセスがACPを形成していきます。どの ような人生を生きてきて,これからをどう生き たいのか,周囲の人々が本人とどう過ごしたい のかを見極めながら,受け止めて伴走していく かかわりが求められます。

急性増悪

 急性増悪時の看護師のかかわりのポイントを 次に示します。 ・できる限り呼吸困難の症状の緩和に努める ・治療の副作用のアセスメントを丁寧に行う ・本人・家族の不安を受け止めて寄り添う

 場面4 

  発熱と咳嗽の訴えがあり,訪問看護が緊急 受診を誘導し来院。胸部CTで新たな浸潤 影が出現しており,細菌性肺炎と診断され 入院となった。強い低酸素であり,50回/ 分の頻呼吸と補助筋を使用した努力呼吸が 強かったため,ハイフローセラピー(High-flow nasal cannula:HFNC)を開始し,呼 吸状態は落ち着いた。抗菌薬の点滴で治療 する方針となった。  アセスメントとケアの視点  

薬物療法

 今回は抗菌薬で落ち着くかもしれませんが, これを契機に間質影の悪化を起こす可能性も頭 に入れて慎重に見守る必要があります。IPFの 急性増悪となれば,ステロイドパルス療法が行 われるかもしれません。

酸素療法・補助換気療法

 HFNCは頻呼吸で吸気流速が速く,酸素化が 不良な場合に,その吸気流速に追いつく流量を 出力でき, FiO2を規定することができます。加 温加湿や解剖学的死腔のウォッシュアウト効果 も間質性肺炎の病態には良い効果が期待できる と考えます。非侵襲的陽圧換気(Noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)や侵襲的 陽圧換気(Invasive positive pressure ventilation: IPPV)といった機械的な補助換気の適応につ いては,本人の意思や病態・年齢・間質性肺炎 の種類・治療への反応性・それまでの治療経過 などの要因を考慮し,十分な説明をし,同意を 得た上で実施する必要があります。

(8)

呼吸困難の緩和

 急性増悪の直後,あるいは終末期において, 呼吸困難は耐え難い苦痛になります。非薬物の ケアとしては,寒くない程度に室温を下げる, 刺激を取り除く(まぶしい位置のライトを消す など),楽な体位を取る,うちわなどで顔周辺 を扇ぐ,ゆっくり会話しタッチングやマッサー ジ,徒手胸郭介助などを行います。

不安

 呼吸困難が強く,各種の治療に不安が増しや すい状態です。コンディショニングやリラク セーションでパニックにならないようにしなが ら不安な点を聴き取り,患者に説明や励ましの 声をかけます。

おわりに

 一口に間質性肺炎と言っても,その病態や経 過は多様です。各病期でかかわるスタッフも変 わりやすい中で,病態が激しく変動することも あります。病院の中でも,外来と入院部門,また, 在宅のスタッフがチームとなって患者と家族を 支えていくことが求められます。チームアプ ローチや各種のツールを用いてみんなで支援す る体制を1つずつつくっていくことが重要です。 参考文献 1)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリ テーション委員会他編:呼吸リハビリテーションマニュ アル―患者教育の考え方と実践,P.92 ~93,照林社, 2007. 2)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリ テーション委員会ワーキンググループ他編:呼吸リハビ リテーションマニュアル―運動療法 第2版,P.80 ~82, 照林社,2012. 3)大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター,石原英樹 編,竹川幸恵,荻野洋子監修:病棟・外来・訪問HOTス タッフ必携 在宅酸素療法ケアマニュアル,メディカ出 版,2012. 4)本間生夫監修,田中一正,柿崎藤泰編:改訂第2版 呼 吸リハビリテーションの理論と技術,メジカルビュー社, 2014. 5)ベーリンガーインゲルハイムホームページ:山口聡監 修「オフェブ 診療サポートオフェブによるIPF治療医 療費自己負担計算ツール」  https://www.boehringerplus.jp/ja/product-pages/ofev/ medical-treatment-support/medical-cost/tool(2018年 11月閲覧)

参照

関連したドキュメント

が有意味どころか真ですらあるとすれば,この命題が言及している当の事物も

健康人の基本的条件として,快食,快眠ならび に快便の三原則が必須と言われている.しかし

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

えて リア 会を設 したのです そして、 リア で 会を開 して、そこに 者を 込 ような仕 けをしました そして 会を必 開 して、オブザーバーにも必 の けをし ます

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

父親が入会されることも多くなっています。月に 1 回の頻度で、交流会を SEED テラスに

Q7 

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその