アットホームな雰囲気と
高度医療の両立
神奈川県横浜市の「ミルキーウェイ 動物病院」は、横浜市営地下鉄 吉野町 駅から歩いて3分ほどの場所にある。 温かなピンク色の大きな看板が目印 だ。幹線道路にも近く、交通の便がよ い。 院長の真弓博臣先生は、1997年に 麻布大学獣医学部を卒業。横浜市の動 物病院に勤め、2年後には副院長に就 任した。翌2000年からは東京都内に ある分院の院長も兼任。そして2002年、 独立して現在の場所にミルキーウェイ 動物病院を開院した。 「獣医師として私が目指しているの は、“究極の町医者であること”です。 私は“町医者”である自分を誇りに思っ ています。それは、動物に関すること ならどんな小さなことでも気軽に相談 できて、いつでも訪れることのできる、 身近なホームドクターでありたい、と ずっと願ってきたからです。だからと いって、『町医者だからこれはムリで す』『それはできません』という言い訳 はしたくない。必要なときには高度医 療も提供していけるように、超音波画 像装置や高周波多機能メス、内視鏡シ ステムなどの最新の医療設備を備えて います。私自身も獣医師の勉強会や研 修会(湘南木曜会、東中野小動物臨床 研究会など)に積極的に参加して、常 に知識や技術のアップデートをはかっ「求められたら応える」
を信条に
動物に寄り添う
“究極の町医者”
を目指す
今月の病院
神奈川県・ミルキーウェイ動物病院
病院前のベンチ (上段左から)獣医師の真弓統子先生、院長の真弓博臣先生。 (下段左から)トリマー兼動物看護師の橘木弘樹さん、前田千恵美さん、灘辺弥生さん、動物看護師の礒部友絵さんRe p o r t
病院
ています」。 この、「求められたら応える」という のが、真弓先生の、そしてミルキーウェ イ動物病院の信条だ。 同院の獣医師は院長の真弓先生と、 その奥さまである統子先生のお二人。 院長先生は横浜市獣医師会 学術委員 や麻布大学同窓会の横浜市支部事務局 の仕事も担っているため、統子先生は 院長先生が病院を空けるときの診療を 行ったり、手術時の麻酔管理などを担 当されている。その一方で、統子先生 は現在、子育て中ということもあり、 診察に携わるのは実質、院長先生お一 人だ。にもかかわらず、この病院には 休診日がない。日曜・祝日は診療時間 をやや短縮し、木曜日は午前のみ予約 診療制ではあるが、臨時休診日を除き 毎日診察が受けられる。日曜・祝日以 外は往診にも応じる。 また、真弓先生はカルテに記載され た飼い主さんの電話番号を、すべて自 分の携帯電話に登録している。夜間な どの診療時間外は、病院に電話すると 先生の携帯電話に転送されるが、登録 された飼い主さんの番号であれば極力 電話に出るようにしているそうだ。 「もちろん、いつでも必ず電話に出 ます、とお約束はできません。私にも 生活があるし、睡眠も大切です。でも、 飼い主さんは困り果てて電話してこら れるわけですから、できる限りは相談 に乗ってあげたい。その上で、自分で 対応できることなら病院に戻って対応 病院外観 明るい待合室。リラック スしてお待ちいただけ るよう、コーヒーやミネ ラルウォーターのサー バーが設置され、自由 に飲めるようになって いる トリミングを利用したワンちゃんの 写真を待合室に貼っている。ワン ちゃんは皆バンダナを付けている が、これはトリマー兼動物看護師の 灘辺弥生さんが発案したサービスの 一つ。無料でバンダナを提供し、写 真撮影をしているそうだ 待合室には、今年「認定動物看 護師」となった動物看護師の礒 部友絵さんの登録証を掲示して いる。これにより飼い主さんの 信頼度もアップする 各メーカーのポスターや手づ くりのPOPが目を引く受付 病院見取図 待合室 休憩室 手術室 兼 処置スペース X線室 検査スペース 入 口 診察室① 診察室② 兼 エコー室 受付 薬局 ICU 入院室 トリミング室 ミルキーウェイ動物病院 住所:神奈川県横浜市南区南吉田町4-40-23 TEL:045-252-0012 開院:2002年4月 診療時間:午前9時∼12時、午後4時∼8時 (日・祝は午前9時∼12時、午後1時∼4時) 休診日:なし(木曜日の午前のみ予約診療) 病院敷地面積:25坪 スタッフ構成:獣医師2名、動物看護師4名 http://www.milkyway-ah.com/
しますし、できないことであれば夜間 や早朝でも診察を受けられる『DVMs どうぶつ医療センター横浜』をご案内 します」。 真弓先生はDVMsグループの取締役 も務めているので、橋渡しもスムーズ にできるし、時には飼い主さんにつき 添って一緒にセンターに赴くこともあ るそうだ。
「すべては患者のために」を
スタッフ全員に徹底
真弓先生がもう一つ、大切にしてい る信条がある。それは「フォー・ザ・ペ イシャント」、つまり「すべては患者 のため」ということだ。先生はスタッ フにもそれを徹底するよう求めてい る。 「例えば、間違えて飼い主さんに適 正な濃度の10倍の薬を渡してしまった とします。それに気づいたとき、最初 に『どうしよう、先生に怒られる!』と 慌てるようでは、動物病院のスタッフ として失格なんです。『あのコの体に異 常が出たらどうしよう!』とまずは動 物の体を心配すべきでしょう。動物病 院のスタッフがいちばんに考えなけれ ばいけないのは動物のことです。自分 の保身ではありません。私はスタッフ にいつも話しています。『失敗は責めな い。失敗には必ず理由がある。なぜ失 敗したのか、その理由を考えなさい。 そして小さな失敗のうちにその芽が摘 めるように、必ず失敗は報告してほし い。命を扱う現場では、大きな失敗は 許されないんだよ』と」。 先生自身も「患者のために」を徹底し ている。例えば、飼い主さんがトリミ ングに動物を連れて来たとき、あるい は動物を連れてフードの受け取りに来 られたときなど、診察中でない限り、 問診や聴診をして動物の様子をみて、 飼い主さんと対話をする。予防医学に 力を入れている真弓先生は、それをあ 手術室兼処置スペース。高周波多機能 メスやビデオ内視鏡システム、DICOM Viewerなどが完備されている 手術室兼処置スペース内の、目立つ場所にかけられ た入院ボード(写真左)。現在入院中の患者の名前 と治療内容、その日のスケジュールが時系列に並ん でいる。小さいメモ(写真右)には、さらに細かい 入院患者の情報を書き込み、入院ボードに貼り付け るようにしているくまでサービスとして行っているのだ。 また、先生は飼い主さんに対してで きる限り丁寧な説明を心掛けている。 飼い主さんが納得できるまで時間と言 葉を惜しまない。大学病院や高度医療 センターなどへ紹介する際も「うちで はわからないから大学病院へ」ではな く、「こういう状態だから大学病院へ」 ときちんと今の状況を説明するように している。それが飼い主さんからの信 頼の元になっているのだ。
褒めて任せる姿勢で
動物看護師を「育てる」
真弓先生は、獣医師と動物看護師は 対等な立場だと考えている。動物看護 師は、独自の視点から獣医師に対して も積極的に意見をいうべきである、と。 実際、日々の業務のなかには動物看 護師でないとわからない、気づかないこ とも多いと感じているそうだ。だから、 動物看護師の国家資格化にも大賛成。 今年2月に行われた動物看護職試験 を受験したスタッフには、病院の予算 から資料を購入したりして積極的に バックアップしている。また、日ごろ から院外のセミナーに参加するスタッ フには、受講後、ほかのスタッフにも 内容を伝達することを条件に、費用の 補助をしているという。 さらに、真弓先生は診断・処方・手 術・予後の判定以外はどんどん動物看 護師に任せ、経験の幅を広げさせてい る。動物看護師を「使う」のではなく、 「育てる」ことを意識しているのだ。 「大きな動物病院では、自分の担当 外の業務はできないこともあるかもし れませんが、うちのような小さな動物 病院は、一人でありとあらゆる業務を 担当しなければならないので、自ずと オールマイティな動物看護師になれ る。うちのスタッフには、将来どこの 動物病院に転職しても恥ずかしくない だけの知識と技術を身に付けさせてあ げたいと思っています。実は、病院経 営においていちばん難しいのは人材の 育成です。以前、私はスタッフを『切 れる刀』にするつもりで育てていまし た。つまり、刀鍛冶がするように、鉄 を熱して叩いて鍛える、という方針で すね。でも、それではうまくいかない ことがわかってきた。私は歯に衣着せ ず、いいたいことをガーっといってし まう性格なので、こちらは育てるつも りでいっていることもそうは受け取っ 薬局(写真左)。薬を飼い主さんにお渡しする際は、3重チェックをかかさない。 例えば、毎月同じ薬を取りに来られる方で、事前準備が可能な場合の手順は次 のようになっている。①獣医師の指示のもと薬を準備して薬袋に入れる。②そ のとき、薬袋のなかに薬をつくった動物看護師の名前が書かれた札を入れる。 ③次にチェックする人は、薬袋のなかに入っている薬の内容を確認した後、カ レンダーに書かれた患者名にマーカーで印を入れ、薬袋のなかに「チェック済 み」の札を入れる。④会計時にもう一度、薬を薬袋から出して確認する、とい う流れになっているRe p o r t
病院
検査スペースてもらえず、どんどん人が辞めていっ てしまったんです。最近は『光るダイ ヤモンド』を育てるつもりでいます。 職人がダイヤモンドの原石をやさしく 研磨するように、その人の素質を活か して削るべきところだけを削り、なる べく褒めて育てる。そのせいか、最近 になってやっとやる気があってレベル の高いスタッフがそろってきました」。 確かに、同院のスタッフは勉強熱心 で、物事に自発的に取り組む。院内の 掲示物などがすべてスタッフの手によ るのはもちろん、トリミングキャン ペーンの企画立案をしたり、手づくり の犬のおやつをカウンターで配った り、入院した動物が退院するときに飼 い主さんにお渡しする看護日誌を作成 したりと、この病院独自の試みは、す べて真弓先生からの「強制」ではなく、 スタッフ自身の発案で始められてい る。 「スタッフは院内セミナーで栄養学を 学んだりして知識と自信をつけ、自分 たちが何をすべきかがわかっています。 だから、私も信頼して任せられる。ス タッフには『責任は僕が取るので、やり たいことはどんどんやってくれ』という んです。私は、金は出すが口は出さな い主義(笑)。それがモチベーション アップにつながると思うからです」。
「これでいい」で終わらせず
常に「もっと」を目指したい
ミルキーウェイ動物病院には、4名 の動物看護師がいる。 チーフを務めるのが、灘辺弥生さん (1985年生、ヤマザキ動物専門学校卒、 勤務歴2年)。 彼女は以前、別の動物病院でトリ マーとして働いていた。やがて、経験 を積むためにトリミングサロンへ転 職。しかし、健康な動物だけを対象と するだけでなく、やはり動物が元気に なるお手伝いがしたいと、この動物病 院に就職を決めた。 灘辺さんはアイデアマンだ。例えば、 サロンでの経験を活かし、トリミング をしたコにリボンをつけるサービスを 提案したのが彼女。このリボンは灘辺 さんのお手製だ。夏と年末年始にはト リミングキャンペーンを行っている が、取材にうかがった7月は、利用者 にバンダナというスペシャルプレゼン トを用意していた。数種類から選べる このバンダナも、ほかのスタッフに協 力してもらいながら灘辺さんが製作し ている。 さらに、受付カウンターに「ご自由 にどうぞ」と置かれた犬用のおやつも、 灘辺さんの手づくりだ。7月は、アレ ルギーに配慮して、小麦粉を片栗粉に、 牛乳をスキムミルクに替えた特製の卵 ボウロ。 「以前は、サービスとして診察後に 市販のトリーツをあげていたんです が、小型犬や緊張しやすいコはあまり 食べてくれなかったんです。そこで、 院内セミナーで学んだ栄養学の知識を 活かして自分でつくってみたら、動物 たちの食いつきが全然違うんですよ! 病院嫌いだったコが、一度おやつをあ げたらそれを覚えていて、嫌がらずに 病院に入ってくるようになったほどで 薬品の場所がひと目でわかるよう、扉の裏に、置 いている薬品を一段ごとにわかりやすく明記して いる 第2診察室兼エコー室 第1診察室 ICUす。散歩の途中で病院のドアを叩き、 おやつを催促するコもいるんです。喜 ばれるとうれしくて、今月は何をつく ろうかと楽しみになりました」。 もちろん、このおやつにはアレル ギーのある動物や体調の悪い動物には 与えないよう注意書きも添えられてい る。 灘辺さんは動物病院での業務に関し て、「これでいい」と思わないようにし ているそうだ。「ここは改善したい」と いう点をみつけ、「もっとこうしたら いいのでは?」と解決策を考えるよう にしている。その際には、休みを利用 してペットショップや動物病院をあち こち巡り、他院での取り組みなども参 考にするそうだ。 「私はトリミングが専門なので、ト リミングに関してはサロンに負けたく ないと思っています。皮膚病だったり、 心臓に疾患を持っていたりして、普通 のサロンでは断られてしまう動物も受 け入れることができるのが、動物病院 の強み。私にとってのやりがいでもあ ります。でも、それと同時に、動物看 護師としてももっと勉強したい、しな ければいけないと思っています。検査 などを担当すると、自分は未熟だなと 思わされる場面もまだまだ多いんで す。私は、動物看護師は獣医師と飼い 主さんや動物との間に入って両者をつ なぐ、橋渡し役だと思っています。今 は十分それができているとはいえませ んが、それでもなるべく診察前に飼い 主さんとたくさんお話しして病気の情 報を引き出し、先生にお伝えできるよ うに努力しています」。
動物看護職試験を
通して自信を得ました
礒部友絵さん(1985年生、日本獣医 X線室 入院室 トリミング室 病院独自でつくっている看護日誌。入院動物の様子を記入し、退院日に飼い主さんへお渡ししている。飼い主 さんからは「入院中の様子がとてもよくわかる」と喜ばれているRe p o r t
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生命科学大学卒、勤務歴2年)は、大 学の先生が院長の真弓先生と同期だっ たため、就職先を決める際に紹介され てこの動物病院を見学に訪れた。その とき、アットホームな雰囲気と、受付 から専門的なことまで、幅広い業務を 担当できる点に惹かれて就職を決め た。 「でも、いちばん素晴らしいと感じ たのは、院長先生の丁寧な診察です。 先生は病気についてもお薬について も、飼い主さんが理解するまで時間を かけて詳しく説明される。飼い主さん のどんな疑問にも、親身になって答え ていたんです。そういう先生の姿勢は、 今もまったく変わりません」。 礒辺さんは、一般業務に加え、手術 補助をメインで務めている。避妊・去 勢手術はもちろんのこと、椎間板ヘル ニアや膀胱腫瘍などの難しい症例に立 ち合うこともある。はじめての症例の 場合は、事前に手術の流れを予習し、 どういうふうに動けばいいのかイメー ジトレーニングをするそうだ。 もともと獣医師を志望していた礒辺 さん。一度は進路を変えて食品系の短 大を卒業しながら、やはり動物にかか わる仕事がしたい、と動物看護師を目 指して大学に入り直した彼女にとっ て、こうした専門性の高い現場に身を 置けることは、大きな喜びにつながっ ている。 また、礒部さんは今年行われた動物 看護職試験に合格した、「認定動物看護 師」第1号でもある。 「1回目の試験ですから、当然過去 問題集などもありませんし、傾向もわ からない。何をどう勉強したらいいか、 戸惑いました。その分、合格したこと は大きな自信になりましたね。でも、 それ以上に意義があったのは、特別な 勉強をしなくても、試験で問われたよ うな知識はすでに自分の身に付いてい る、と認識できたことです。院長に教 えていただいたこと、自分が動物病院 でやっていることは、十分、世のなか で通用する知識なのだ、と改めて実感 できました。教えてくださった先生に 感謝しています」。 礒辺さんは、大学で動物行動学を学 んでいるため、動物のしつけの分野に 関心を持っている。飼い主さんがどう いうことを心配しているのかを的確に 捉え、ものいえぬ動物が何を求めてい るのかを自然とわかってあげられる、 そういう動物看護師を目指しているそ うだ。そのために、今もセミナーに参 加したり、動物行動学の本を読んで勉 強を続けている。 「将来はパピークラスを開催できる ようになりたいのですが、まだ知識も スキルもそこまで至っていません。こ れからも勉強を重ねていくつもりで す」。
皮膚病の動物がきれいになる。
自分の存在意義を感じる瞬間
橘木弘樹さん(1989年生、カコトリ ミングスクール卒、勤務歴2年)は、 ミルキーウェイ動物病院で唯一の男性 動物看護師だ。 「でも、専門学校時代からクラスの ほとんどが女性という環境にいました から、仕事がやりにくいとはまったく 感じませんね。もう慣れました」と笑 顔をみせる。 橘木さんはトリマーだが、トリミン グ技術を向上させるだけでなく、動物 全般について学びたいと、あえて動物 病院への就職を選んだ。大きな動物病 院ではなく個人病院を志望したのも、 幅広い仕事を担当できるのではないか と思ったからだ。 「この病院はいろいろな業務を動物 看護師に任せてくれるので、非常に意 欲がわきます。ここまで多様な経験を 積める動物病院は、そうそうないので はないでしょうか。ただ、僕はトリマー の勉強しかしていないので、看護に関 する知識が浅い。特に急患が来るとど うしても対応が遅れてしまい、歯がゆ い思いをしています。もっと勉強しな ければいけないと、院外のセミナーな どにもなるべく参加するようにしてい ます」。 それでも、トリマーである橘木さん は、やはりトリミングして動物が美し くなったことを飼い主さんが喜んでく れる瞬間が何よりうれしいという。 「特に、皮膚病だからとサロンでト リミングを断られた犬が、薬浴を続け て症状が改善し、みるみるきれいに なっていくのをみていると、自分がこ こにいる意義を感じます」。 将来は独立も視野に入れ、経営に関 することも学んでいきたいそうだ。臨機応変に対応できる
動物看護師を目指して
最後に、この4月に入社したばかり の前田千恵美さん(1991年生、東京ス 定期的に行っている、メーカーの方を呼んでの院内セミナーの様子クール・オブ・ビジネス卒、勤務歴3 カ月)をご紹介しよう。 前田さんもトリマーだ。院長の真弓 先生は、動物看護師の資格を持つ人よ りもトリマーの資格を持つ人を多く採 用している。それは、スタッフ数が限 られる個人病院では、両方できる人が ベスト、という理由による。さらに、 動物看護の知識や技術は自分がいくら でも教えるが、トリミングは自分には 教えられないからだという。真弓先生 はトリミングも医療の一環ととらえて いるのだ。 前田さんはまだ院内の仕事の流れを 覚えている段階だというが、それでも メーカーからフードが納品されたとき は、いわれなくても賞味期限を確認す るなど、細かいところまで先輩の指導 をしっかり守っている。 「私は、先輩スタッフが受付で丁寧 に気持ちよく飼い主さんに対応する姿 に憧れて、この動物病院を志望しまし た。自分でも笑顔や明るい声のトーン を心掛けてはいるのですが、なかなか 実行できないときもありますね。今、 特に難しいと感じているのが診察室で の保定です。トリミング中なら多少動 物が動いても大丈夫ですが、採血のと きなどに動物が動いたら本当に危険。 神経を使います。どうしたら動物に負 担がかからないか、実践を重ねながら 学んでいます。まだミスも多く、わか らないこともたくさんあるのですが、 飼い主さんにご迷惑をかけないよう、 疑問があれば手の空いている先輩にそ の場ですぐ確認するようにしていま す。早く先輩たちのような臨機応変に 動ける動物看護師になりたいです」。 最後に、豪放磊落な真弓先生は、時 にスタッフにもドカンと雷を落とす、と ご自身でおっしゃっていましたが、怖 くはないですか? とスタッフの皆さん にお聞きしてみた。すると、答えは全 員が「NO」。 「確かに真弓先生は時にいい方がキ ツイですが、やみくもに怒るわけでは ありません。いっていることはいつも 正論だし、動物と飼い主さんのために 怒っている、私たちのためを思って注 意してくれていることが伝わるので、 反感を感じたことはありません。そ れに、先生は怒った後はけろっと『さ あ、楽しくお昼を食べよう』なんておっ しゃって、あとに引きずらないんです。 だから、怒ってくれた先生の期待に応 えようと、こちらも自然に頑張ってし まいます」。 真弓先生の「光るダイヤモンドをつく る」という人材育成方針は、間違いなく 成果を上げているようだ。 (藤島一紗) 血液検査を行っている、トリマー兼動物看護師の前 田千恵美さん 薬の準備をしている、動物看護師の礒部友絵さん 犬の顔まわりの毛をカットしている、トリマー兼動 物看護師の橘木弘樹さん マイクロバブルで犬の体をきれいに洗う、トリマー 兼動物看護師の灘辺弥生さん