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母斑・母斑細胞母斑なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

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Academic year: 2021

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a.母斑細胞母斑 

nevus cell nevus

同 義 語: 色 素 性 母 斑(nevus pigmentosus),pigmented

ne-vus,nevocellular nevus,nevomelanocytic nevus

未分化なメラノサイト系細胞である母斑細胞の増殖による.

小さなものは俗にいう“ほくろ”.

母斑 

nevus

A.メラノサイト系母斑

(図 20.1)

 melanocytic nevi

メラノ サイト系 母斑 母斑細胞母斑 境界母斑 複合母斑 真皮内母斑 (通常型) (特殊型) 真皮メラノ サイト系母斑 青色母斑 太田母斑 (伊藤母斑) 遅発性両側性 太田母斑様色素斑 蒙古斑 巨大先天性色素性母斑 分離母斑 爪甲黒色線条型母斑 Spitz 母斑 Clark 母斑 Sutton 母斑

図20.1 メラノサイト系母斑の分類 図20.2① 母斑細胞母斑(nevus cell nevus) 母斑(nevus)とは,遺伝的または胎生的要因に基づいて,生涯のさまざまな時期に発現し,きわめて緩慢に 発育し,色調あるいは形の異常を主体とする限局性の皮膚奇形である.一般的に“ほくろ”“生まれつきのあざ” と呼ばれるものを含む概念である.遺伝的モザイクなどを原因として,種々の段階に分化した細胞が集合し,皮 膚奇形を形成したものと考えられる.病変を構成する細胞(母斑細胞)の種類により,メラノサイト系(母斑細 胞母斑など),表皮系(疣ゆう贅ぜい状表皮母斑など),間葉系(結合組織母斑など),血管系(血管腫および血管奇形) に分類すると理解しやすい.本章では代表的な母斑について解説する.なお血管系は 21 章で取り上げる. 神経皮膚症候群(neurocutaneous syndrome)とは,皮膚に母斑を形成するだけでなく,その母斑性の病変 が全身の諸器官にも生じ,中枢神経症状などを含んで一つのまとまった病像を呈するようになったものをいう. 神経皮膚症候群は日本では母斑症(phakomatosis)という診断名で慣用的にまとめられることも多いが, phakomatosis という病名は国際的には使われない方向にある.

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章 母斑と神経皮膚症候群

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直径 20 cm を越える巨大な母斑細胞母斑で有毛性のものは 獣皮様母斑と呼ばれ,悪性黒色腫を発生しやすい. 病理組織学的には,境界母斑,複合母斑,真皮内母斑に分類 される. ●ダーモスコピー所見が診断に重要. 色 素 性 母 斑 が 同 義 語 と し て 用 い ら れ る こ と が あ る が, amelanotic(メラニン欠乏)なものもあり,母斑細胞母斑 という診断名が推奨される. 症状 褐色ないし黒色,ときに正常皮膚色の色素斑あるいは腫瘤で, 表面は平滑〜疣状であり,ときに硬毛を伴う(図 20.2).臨床 的には色素斑の大きさから 3 つに分類する.小型(直径 1.5 cm まで)の母斑細胞母斑は,いわゆる“黒子(ほくろ,mole)” と呼ばれ,大部分は後天性である.生下時には存在せず,3 〜 4 歳頃から生じて次第に増加する.20 〜 30 歳代をピークとし て(日本人で平均約 10 個,白色人種で 20 〜 50 個)以後は退色, 脂肪組織や線維性組織で置き換わる.直径 1.5 〜 20 cm のもの は“黒あざ”と呼ばれ,頭頸部に好発する.多くは先天性で生 下時から存在し,成長とともに拡大,明瞭化する.直径 20 cm 以上のものは巨大先天性色素性母斑と呼ばれる.そのほか,特 殊な臨床像をとるものがある. 病因

神経堤(neural crest)由来の母斑細胞(nevus cell)が異常増 殖することにより,黒褐色の色素斑が皮膚に生じる.神経堤由 来の細胞にはメラノサイトと Schwann 細胞があるが,このどシュワン ちらにも分化しきれずに中途半端のままの状態になっているも のが母斑細胞である(図 20.3).一般的に遺伝性を認めない.

図20.2② 母斑細胞母斑(nevus cell nevus)

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病理所見 増殖している母斑細胞の存在部位から,境界母斑,複合母斑, 真皮内母斑の 3 型に分類される.それぞれ臨床像が特徴的であ る(図 20.3). 診断・鑑別診断 悪性黒色腫との鑑別が重要であり(22 章 p.457 参照),ダー モスコピー所見(3 章 p.51 参照)が有用である. 治療 ダーモスコピー所見からも良性と考えられる母斑細胞母斑は 経過観察とする.長径 6 mm を越える掌しょうせき蹠病変や,比較的大き なものでは,悪性化リスクや整容的側面から外科的切除を基本 とする.巨大先天性色素性母斑は切除,削皮術および植皮が行 われるが,大きすぎて切除できない場合は悪性黒色腫の発生に 注意しながら慎重に経過観察する.

通常型

1.境界母斑 

junctional nevus 母斑細胞が真皮表皮接合部に限局する.機能的によりメラノ サイトに近く(メラニン産生能が高く),形態的には角化細胞 に類似した弱好酸性の細胞質を有するサイコロ状の大型細胞で 構成される.

2.複合母斑 

compound nevus 境界母斑と真皮内母斑の混合型で,小型の母斑細胞母斑が多い.

図20.2③ 母斑細胞母斑(nevus cell nevus)

図20.3 母斑細胞の起源および母斑細胞母斑の病理組織型 ⋮⋮ 神経堤細胞 母斑細胞母斑 の病理組織型 母斑細胞 メラノサイト Schwann 細胞 A B C A:境界母斑 C:真皮内母斑 分化 B:複合母斑 あざ(birthmark)

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3.真皮内母斑 

intradermal nevus 母斑細胞がほぼ真皮に限局する(図 20.4).深部に行くほど メラニン産生能が低下し,サイコロ状からやや小型で紡錘形, Schwann 細胞に類似した外観に変化する.体幹に生じた有茎性・ 乳頭状表面のものを Uウンナnna 色素性母斑,顔面に好発し半ドーム 状,軟毛を伴うものを Mミーシャーiescher 母斑という.

特殊型

1.巨大先天性色素性母斑 

giant congenital melanocytic nevus

一般的に直径 20 cm を越えるものをいう.出生時から存在し, ときに黒色の剛毛を伴う(獣皮様母斑,図 20.5).悪性黒色腫 のリスクがあり,まれに中枢神経症状を伴う(神経皮膚黒皮症, p.379 参照).

2.分離母斑 

divided nevus 主に眼瞼の上下に分布する中型の母斑細胞母斑.目を閉じる と一つの病変にみえるが眼を開けると眼裂により 2 つに分割さ れる.ほとんどが出生時から存在し,黒褐色を呈する(図 20.6).

3.爪甲黒色線条型母斑 

melanonychia striata type nevus

爪甲に縦走する黒色線条をきたす(図 20.7).19 章 p.350 も 参照.大部分は爪母に生じた母斑細胞母斑であるが,線条が爪 の外にまで及ぶ場合は悪性黒色腫の可能性が高い(Hutchinsonハッチンソン 徴候).

4.S

スピッツ

pitz 母斑 

Spitz nevus

同義語:若年性黒色腫(juvenile melanoma),spindle and

epi-thelioid cell nevus

●青少年に好発する母斑細胞母斑の一種.

頭頸部などに突然出現,比較的急速に直径 1 cm 程度まで拡

大.周囲が紅色調を呈する場合もある.

●臨床的,病理組織学的に悪性黒色腫に類似することもある

図20.5 巨大先天性母斑細胞母斑〔giant congeni-tal (nevus cell) nevus〕

図20.6 分離母斑(divided nevus)

図20.7 爪甲黒色線条型母斑(melanonychia stri-ata type nevus)

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が,良性疾患であり自然退縮することもある. 症状 小児に生じることが多いが,青壮年に発症することもある. 数 mm 〜 2 cm 大くらいまでの半球状および淡紅色,赤褐色〜 黒色の小結節で,通常は単発性である(図 20.8).主に頭頸部 に突然出現し拡大する.ときに色素沈着を伴って黒褐色の病像 を呈し(Rリードeed 母斑),悪性黒色腫との鑑別が困難である.しか し,本症は良性疾患であり一定以上の拡大や浸潤をきたすこと はない. 病理所見・診断 複合母斑の形態をとるが,紡錘状,類上皮細胞状,異型細胞 状,多核巨細胞状といった多様な形態の母斑細胞が混在する. 真皮の浮腫,毛細血管拡張,炎症細胞浸潤を認めることもある. これらの所見は悪性黒色腫と類似しており,しばしば鑑別が困 難である.本症では母斑細胞母斑の基本的構造が保たれており, 構築が対称性,逆三角形で深部に行くほど細胞が小型化する. また,母斑細胞内の胞巣内に Kamino 小体(Kamino body)とカミノ 呼ばれるエオジン好染,PAS 染色陽性の均質な無構造物質を 約 70%に伴い診断の補助となる(図 20.9).ダーモスコピーで は辺縁に特徴的な模様(starburst pattern)がみられ,診断に有 用となる(3 章 p.53 参照). 図20.9 Spitz 母斑の病理組織像 a:弱拡大像.b:強拡大像.エオジンに好染される Kamino小体(矢印)を認める. a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp

図20.8 Spitz 母斑(Spitz nevus)

a∼ d,f:臨床像.e:d のダーモスコピー所見.g:f のダーモスコピー所見. a b c d e f h a b c d e f gg h ii jj kk ll mm nn oo pp a b c d e f h a b caa dbb ecc fdd aa ggee bb hff cc iigg dd aajjhh ee bbkkii ff cclljj gg ddmmkk hh eennll ii ffoomm jj ggppnn kk hh oo ll ii pp mm jj nn kk oo ll pp mm nn oo pp a b c d e f h a b c d aae bbf ccgg ddh eeii ffjj ggkk hhll iimm jjnn kkoo llpp mm nn oo pp

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治療

外科的切除.悪性化はないが,悪性黒色腫との鑑別を慎重に 行う必要がある.

5.C

クラーク

lark 母斑 

Clark nevus

同義語:異型母斑(dysplastic nevus),非典型母斑(atypical nevus) 思春期前後から生じる.直径 5 mm 以上の斑状ないし扁平に わずかに隆起した母斑細胞母斑であるが,①不整形,②境界不 明瞭,③濃淡差のある色調,のうち 2 つ以上の特徴を有するも のをいう.基本的には良性疾患であり,加齢とともに消退する. 病理組織学的に複合母斑ないし境界母斑の所見を呈する.悪性 黒色腫との鑑別および発症の可能性があり,ダーモスコピーを 用いた経過観察が必要である.多発性に Clark 母斑を生じ家系 内にも同様の臨床像を呈する場合には悪性黒色腫のリスクが高 く,異型母斑症候群(dysplastic nevus syndrome,常染色体優性 遺伝)と呼ばれる.

s

Sutton 母斑 サットン → 16 章 p.288 参照.

b. 真皮メラノサイト系母斑 

dermal melanocytic nevi

真皮メラノサイトが増殖する疾患群としては,青色母斑,蒙 古斑や太田母斑などがあり(図 20.1),疾患によって細胞の分 布と臨床像が異なる(図 20.10). 図20.11 青色母斑(blue nevus) 表皮 真皮 皮下 組織 青色母斑 太田母斑 伊藤母斑 遅発性両側性 太田母斑様色素斑 蒙古斑 真皮∼皮下組織 で腫瘍性増殖 真皮上∼中層で のまばらな分布 と基底層のメラ ニン顆粒増加 真皮上層でのま ばらな分布と基 底層の色素沈着 真皮中∼下層 でのまばらな 分布 図20.10 真皮メラノサイト系母斑の分類とメラノサイトの分布様式

図 20.1 メラノサイト系母斑の分類 図 20.2① 母斑細胞母斑(nevus cell nevus)
図 20.2② 母斑細胞母斑(nevus cell nevus)
図 20.2③ 母斑細胞母斑(nevus cell nevus)
図 20.5 巨大先天性母斑細胞母斑〔giant congeni- congeni-tal  (nevus cell)  nevus〕
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参照

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