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第1章 財務諸表

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Academic year: 2021

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テーマ 7 純資産会計

1. 純資産の概念と分類

純資産は、資産と負債の差額として求められる(純資産=資産-負債)。純資産は、その 発生源泉を重視し、Ⅰ.株主資本、Ⅱ.評価・換算差額等、Ⅲ.新株予約権の 3 つに分類 される。 Ⅰ 株主資本 1 資本金 2 資本剰余金 ⅰ 資本準備金 ⅱ その他資本剰余金 3 利益剰余金 ⅰ 利益準備金 ⅱ その他利益剰余金 a 任意積立金 b 繰越利益剰余金 4 自己株式 株主資本合計 Ⅱ 評価・換算差額等 1 その他有価証券評価差額金 2 繰延ヘッジ損益 3 土地再評価差額金 4 (為替換算調整勘定) 評価・換算差額等合計 Ⅲ 新株予約権 Ⅳ (少数株主持分) 純資産合計 *為替換算調整勘定と少数株主持分は連結の場合にのみ現れる項目である。 純資産 株主資本 評価・換算差額等 新株予約権 自己資本

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2. 株主資本

株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金および自己株式に区分される。このうち、 資本金と資本剰余金は株主から出資を受けた部分であるという意味で払込資本と呼ばれる。 利益剰余金は株主からの出資を受けた元本を元手に会社が増やした部分で、留保利益とも 呼ばれる。 2.1 資本金 会社の設立または株式発行の際、株主となるものが払込みを行った金額である。ただし、 払込みを受けた金額のうち 1/2 を超えない額を資本金に組み入れないことができる。株主か ら払込みを受けた金額のうち、資本金に組み入れた金額が貸借対照表額である。 原則 (借) 現 金 100 (貸) 資 本 金 100 例外 (借) 現 金 100 (貸) 資 本 金 50 資 本 準 備 金 50 2.2 資本剰余金 資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に分類される。 会社の設立または株式発行の際、株主からの払込額のうち、資本金に組み入れなかった 部分は株式払込剰余金と呼ばれ、資本剰余金の一項目である資本準備金として積み立てる。 他にも、吸収合併や新設合併で生じた資本準備金、株式交換や株式移転で生じた資本準備 金、吸収分割や新設分割で生じた資本準備金も含まれる。 また、資本金の減少により生じた資本金減少差益や資本準備金の取崩し、自己株式をそ の取得原価以上の金額で処分した差益は、この資本準備金に類似する性格を持っており、 その他資本剰余金として示される。これらの項目は、株主からの資本の払込みと類似する 性格を有しているために、払込資本と呼ばれる。 資本金 資本剰余金 利益剰余金 ▲自己株式 株主資本 資本金 資本準備金 その他資本剰余金 利益準備金 その他利益剰余金 ▲自己株式 払込資本 留保利益 払込資本 の控除

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2.3 利益剰余金 利益剰余金は留保利益とも呼ばれ、企業が稼得した利益のうち配当せずに企業内に蓄積 されたものをいう。利益剰余金は、利益準備金とその他利益剰余金に分類される。利益準 備金は、会社法によって設定が強制されるものであり、その他利益剰余金は、企業が経営 上必要と認めた場合に設定する任意積立金、当期純利益、および前期からの繰越利益の合 計である繰越利益剰余金から構成される。 会社法では、株主への配当などによって資産の社外流出が生じた場合、当該流出額の 1/10 に相当する額を、資本準備金または利益準備金として積み立てることを要求している。こ の際、その他資本剰余金から配当した場合には資本準備金を、利益剰余金から配当した場 合には利益準備金をそれぞれ積み立てることが要求されているが、資本準備金と利益準備 金の合計が資本金の 1/4 に達するまでそれが必要とされる。 2.4 自己株式 会社が過去に発行した自社の株式を保有している場合、この株式を自己株式あるいは金 庫株という。自己株式は、株主総会の承認を得て、分配可能額の限度内で取得可能である。 取得された自己株式は、第三者への売却や転換社債・新株予約権付社債などの新株予約権 の行使をする者への交付など種々の用途に利用される。 自己株式は、実質的に資本の払戻しであるため、株主資本から控除する形式で表示され、 取得するために要した金額が貸借対照表価額となる。自己株式の売却や交付は増資に準じ るので、自己株式を処分した際に生じた売却益は資本剰余金の性格を有しており、その他 資本剰余金に含まれる。 <自己株式の会計処理> • 取得された自己株式は、B/S 上では、取得原価をもって純資産の部の株主資本の末尾 に控除形式で表示される。 取得時 (借) 自 己 株 式 100 (貸) 現 金 100 • 自己株式処分差益は、B/S 上では、その他資本剰余金の部に表示される。 処分時 (借) 現 金 預 金 120 (貸) 自 己 株 式 100 自己株式処分差益 20 *自己株式処分差損が発生した場合には、①自己株式処分差益、②その他資本剰余金、③繰越利益 剰余金の順で相殺する。

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3. 評価・換算差額等

原則として、取得原価で評価される土地などの資産の評価にあたって時価による評価が 認められている場合、その評価差額を損益計算書を経由させずに、直接、貸借対照表の純 資産の評価・換算差額等に計上する。これは、評価差額を認識することは、収益の実現主 義の原則に反することになり、また、これらの損益は金額も大きく、当期純利益に算入す ると、利益数値の解釈が混乱するおそれがあるために、これらの損益を当期純利益から除 外するとともに、貸借対照表の評価・換算差額等に表示する。 これらの項目には、その他の有価証券の評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額 金、為替換算調整勘定が含まれる。 項 目 説 明 その他有価証券 評価差額金 その他有価証券を時価評価した際の取得原価と時価との差額であり、 損益計算書に評価損益を計上するのではなく、貸借対照表に直接計上 される 繰延ヘッジ損益 金融商品について価格が下落する可能性が存在し、その損失の発生を 回避するための対処(リスクヘッジ)がなされている場合、その損失 の発生を回避するための対処の結果が確定するまで損益とせず、繰り 延べたもの 土地再評価差額金 「土地の再評価に関する法律」に従って、企業が事業用の土地を再評 価した際に、生じた取得原価と時価との差額があり、評価益は損益計 算書には計上されず、貸借対照表に直接計上される 為替換算調整勘定 為替換算調整勘定とは、在外子会社及び関連会社の財務諸表を円換算 する際に発生する貸借差額を処理する勘定科目で、連結貸借対照表の 固有の勘定科目であり、貸借対照表の純資産の部に計上される

4. 新株予約権

新株予約権とは、会社に対して一定期間、あらかじめ定めた一定の価額で株式の交付を 請求できる権利である。会計上は、その権利を割り当てられた者が権利行使のとき、また は払込期日までに払い込んだ金額を新株予約権として表示する。現在の株主からの払込資 本とは発生源泉が異なるので、区別して記載される。 新株予約権には、普通社債に新株予約権が付加された転換社債、そして、新株発行決議 時に優先的に新株を発行する義務を負う新株引受権、新株発行決議にかかわらず新株を発 行する義務を負う新株予約権が含まれる。さらに、労働サービスの提供の対価として、特 に会社の従業員・役員などに対して付与されるストック・オプションもこれに含まれる。

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コラム:株主資本等変動計算書 すべての会社は、純資産の部の各項目の変動事由を報告するために、株主資本等変動計算書 を作成しなければならない。株主資本等変動計算書は、純資産の部と同様に、株主資本、評 価・換算差額等、新株予約権に区分され、それぞれの内訳および増減額が記載される。株主 資本等変動計算書を読むことで、事業年度における配当、自己株式の取得、増資などの状況 や、発行済株式数などの変動が一覧できる。

5 ストック・オプション

ストック・オプションとは、会社の取締役または従業員等が、あらかじめ決められた価額 (権利行使価格)で一定期間(権利行使期間)内に自社株式の購入を選択できる権利のこ とをいう。ストック・オプションは、新株予約権の有利発行のケースと位置づけられる。 • ストック・オプション付与日から権利確定日までの対象勤務期間 各期末 (借) 株 式 報 酬 費 用 100 (貸) 新 株 予 約 権 100 • ストック・オプション権利確定日から権利行使期間の最終日 権利行使時 (借) 現 金 預 金 300 (貸) 資 本 金 500 新 株 予 約 権 200 権利失効時 (借) 新 株 予 約 権 200 (貸) 新株予約権戻入益 200

6. 分配可能額

6.1 分配可能額とは 株式会社では、株主の有限責任制が採用されている。そのため、債権者の権利は会社の 純財産によってのみ保証されることになる。従って、会社の財産が配当により無制限に社 外に流出してしまえば、債権者の権利が著しく害されることになる。そこで、会社法は、 債権者の保護と株主と債権者の利害の調整の観点により、剰余金の配当が可能な上限額を 分配可能額として制定し、分配可能額を超える配当を禁止している。 そして、この配当できる金額の上限を分配可能額という。この分配可能額は、前期末の 剰余金の額を基礎として、以下のプロセスにより計算される。 STEP1 効力発生日の剰余金の額の計算 STEP2 分配可能額の計算

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6.2 効力発生日の剰余金の額の計算 分配の効力発生日(分配時)の剰余金は、前期末の剰余金の額に前期末から効力発生日 までの剰余金の変動要因を反映して計算する。なお、前期末の剰余金の額とは、前期末の 貸借対照表におけるその他資本剰余金+その他利益剰余金となる。 6.3 分配可能額の計算 分配の効力発生日(分配時)の剰余金の額から、①自己株式による分配制限、②のれん 等調整額による分配制限、③その他有価証券評価差額金による分配制限を控除して分配可 能額を求める。 ① 自己株式による分配制限 分配可能額の計算にあたり、以下の項目を剰余金の額から控除する。 • 効力発生日における自己株式の帳簿価額 • 前期末から効力発生日までに自己株式を処分した場合の自己株式処分対価 ② のれん等調整額による分配制限 のれん等調整額とは、資産の部に計上したのれんの額の 2 分の 1 と繰延資産に計上 した額の合計額をいう。のれんと繰延資産はそれ自体には換金可能性はなく、株主 に対して会社財産の払戻しを認めるのは適当ではないため、分配可能額の算定にあ たって控除される。 のれん等調整額が前期末貸借対照表における資本等金額(資本金、資本準備金及び 株 主 資 本 資 本 金 資本剰余金 利益剰余金 △自己株式 資 本 準 備 金 その他資本剰余金 利 益 準 備 金 その他利益剰余金 任 意 積 立 金 その他利益剰余 金 剰 余 金

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利益準備金の合計額)を超過している場合には、分配可能額を計算する上で、その 超過額または一定額を剰余金から控除する。 ③ その他有価証券評価差額金による分配制限 前期末貸借対照表に、その他有価証券評価差額金が計上されている場合、その金額 は剰余金には含まれない。しかし、その他有価証券評価差額金がマイナスの場合に は、その分の会社財産の社外流出を防ぐ必要があり分配可能額の計算上、控除する。

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【問題 1】 次の文章の( )内に入る適切な語句を記入しなさい。 1. 純資産の部は、それが生じた源泉によって、株主が出資した部分である( )、 特 定 の 資 産 ・ 負 債 に つ い て そ の 取 得 原 価 と 時 価 に よ る 評 価 額 と の 差 額 で あ る ( )、将来株主となることを前提に会社が受け入れた金額である ( )に分類される。また、株主資本は、株主が払い込んだ部分である ( )とその元本を元手にして会社が増やした部分である( ) から構成される。 2. 株式会社が発行済みの自社株式を買い戻し、これを保有している場合、その株式を ( )という。これは、一定の制限の下で、自由に取得することができるが、 この保有は株主に対する会社財産の( )と考えられ、株主資本の末尾に一 括して( )する形式で表示される。 3. 発行済みの自社株式を買い戻して保有したものを( )といい、( ) とも呼ばれる。実質的には、株主に対する資本の払戻しに相当するので、( ) の合計から控除する形式で示される。 原則として、取得原価で評価される有価証券や土地などの資産の評価にあたって時価 による評価が認められる場合、それによって生じた( )は、( ) を経由させずに貸借対照表に計上する。 【問題 2】 次の文章が正しければ○を、間違っていれば×を記入しなさい。 純資産の部には、利益準備金、資本準備金、自己株式、その他有価証券評価差額金 等が含まれる。 利益準備金として積立てる金額は、剰余金の配当を実施する場合、資本準備金と利 益準備金の額が資本金の 2 分の 1 に達するまで配当額の 10 分の 1 の金額を積立てな ければならない。 評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整 勘定、土地再評価差額金の 4 つである。

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【問題 3】 貸借対照表の純資産の部を構成する以下の要素の金額から株主資本の金額を求めなさい。 利 益 準 備 金 1,000 新 株 予 約 権 1,000 評価・換算差額等 2,000 自 己 株 式 3,000 繰 越 利 益 剰 余 金 6,000 資 本 金 8,000 答え 【問題 4】 てづか株式会社の貸借対照表は、以下のとおりであった。当期の金銭による分配可能額は いくらですか。 <資料> 貸借対照表 (単位百万円) 諸 資 産 10,000 諸 負 債 3,100 資 本 金 2,800 資本準備金 50 利益準備金 150 任意積立金 2,000 繰越利益剰余金 1,000 自己株式 △250 土地再評価差額金 850 その他有価証券評価差額金 300 10,000 10,000 分配可能額 百万円

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【問題 5】 次の図は、貸借対照表の構造を示している。空欄に入る用語を解答欄に記入しなさい。 貸借対照表 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬

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