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Vol. 52 No. 2, 音声言語医学 52: ,2011 原 著 発達性読み書き障害児と小学生の典型発達児における漢字書取の誤反応分析 小学生の読み書きスクリーニング検査 (STRAW) を用いて 1) 井村純子 春原 1,2) 則子 金子真人 2,4) T

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音声言語医学 52:165 ─ 172,2011 

原  著

発達性読み書き障害児と小学生の典型発達児における

漢字書取の誤反応分析

─小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)を用いて─

井村 純子1)     春原 則子1,2)  宇野  彰2,3)  金子 真人2,4)  Taeko N. Wydell5)      粟屋 徳子2,6)  後藤多可志1,2)  狐塚 順子2,3)  新家 尚子7) 要 約:典型発達児と発達性読み書き障害(DD)児における漢字書字の特徴の相違を明ら かにするため,「小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)」を用いて,通常学級在籍 の典型発達児 708 名と DD 児 21 名の漢字単語書取の反応を比較,検討した.DD 児 21 名全員 に音韻情報処理過程と視覚情報処理過程双方の障害を認めた.漢字書字において DD 群は典型 発達群に比べ無反応が多く,また形態的に似ていない非実在文字を書く傾向があった.さらに 漢字の構成要素間の間隔が広いという特徴や,文字が傾く特徴が認められた.DD 群の漢字書 字には視覚的な情報処理機能の低下が影響している可能性が示唆された.典型発達群では正答 率と音声提示による親密度との間に有意に高い相関を認めた一方,DD 群では正答率と音声提 示による単語心像性および画数との間に有意に高い相関を認めた.これらの知見は,DD 児の 漢字書字指導において考慮されるべきであると考えられた. 牽引用語:小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW),発達性読み書き障害,典型 発達児,誤反応分析,漢字書取 目白大学保健医療学部1):〒339-8501 さいたま市岩槻区浮谷 320 NPO 法人 LD・Dyslexia センター2):〒272-0033 千葉県市川市市川南 3-1-1-315 筑波大学大学院人間総合科学研究科3):〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1 帝京平成大学健康メディカル学部4):〒170-8445 東京都豊島区池袋 2-51-4 Brunel University, Centre for Cognition and Neuroimaging5):Uxbridge, Middlesex, UB8 3PH, UK 東京都済生会中央病院リハビリテーション科6):〒108-0073 東京都港区三田 1-4-17 河北総合病院リハビリテーション科7):〒166-8588 東京都杉並区阿佐谷北 1-7-3 1)Faculty of Health Sciences, Mejiro University: 320 Ukiya, Iwatsuki, Saitama 339-8501, Japan 2)LD/Dyslexia Centre: 3-1-1-315, Ichikawaminami, Ichikawa, Chiba 272-0033, Japan 3)Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba: 1-1-1, Tennohdai, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8577,  Japan 4)Faculty of Medical Science for Health, Teikyo Heisei University: 2-51-4, Higashi-Ikebukuro, Toshima-ku, Tokyo 170-8445, Japan 5)Brunel University, Centre for Cognition and Neuroimaging: Uxbridge, Middlesex, UB8 3PH, UK 6)Department of Rehabilitation, Saiseikai Central Hospital: 1-4-17, Mita, Minato-ku, Tokyo 108-0073, Japan 7)Department of Rehabilitation, Kawakita General Hospital: 1-7-3, Asagayakita , Suginami-ku, Tokyo 166-8588, Japan 2010 年 10 月 8 日受稿 2010 年 12 月 8 日受理

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は じ め に 発達性読み書き障害(developmental dyslexia; DD) では,書字に困難の生じることが知られているが1-5) これまで本邦ではその特徴について詳細に検討した報 告は少ない.ひらがなとカタカナの書字については, 鈴木ら6)が発達性読み書き障害(DD)児と典型発達 児の書字の特徴を分析し,両者において質的な差があ ることを見出している.一方,漢字に関しては同様の 研究はなく,2 例の DD 児に関する久保田ら7)の報告 も定性的な分析のみであり,また,典型発達群との比 較はなされていない.DD 群の書字における誤反応特 徴を検討するためには,まず典型発達群の誤反応の特 徴を知ることが不可欠であり,そのうえで DD 群との 定量的,定性的な比較が行われることが必要であると 考えられる.本邦において通常学級に通う小学生を対 象とした研究としては,国立国語研究所8)が東京都の 公立小,中学校各 28 校の児童生徒を対象に,1 学年 前に学習する学年配当漢字の書字における誤反応分析 を行い,児童生徒の漢字の習得状況を検討している. しかしこの調査では,対象に読み書き障害児や軽度知 的障害児が含まれている可能性を否定できない.また, 刺激単語が対象者によって異なるという問題点もあ り,この研究のみから典型発達群の書字における誤反 応の特徴を明確にするのは困難であると思われる. そこで本研究では,以上の問題点を踏まえ,全般的 知能を確認したうえで,各学年共通の課題を用いて, 通常学級に通う多数の典型発達児の漢字書字について 分析し,発達性読み書き障害児の結果をそれと比較す ることによって,発達性読み書き障害児における漢字 書字の特徴を明らかにすることを目的とした. 方 法 1 .対象 1 )典型発達(N)群 東京近郊の公立小学校 4 校の通常学級在籍の小学 2 年から 6 年生で,「小学生の読み書きスクリーニング 検査 ; STRAW」9)の基準値作成における対象者 1202 名である.この 1202 名はいずれも,レーヴン色彩マ トリックス検査(RCPM)10)および STRAW の音読と

Error Analysis of Writing to Dictation of Kanji Words 

in Japanese Children with Developmental Dyslexia 

and Normally Developed Children

─Using Screening Test of Reading and Writing for 

Japanese Primary School Children (STRAW

)

Junko Imura1), Noriko Haruhara1,2), Akira Uno2,3), Masato Kaneko2,4), Taeko N. Wydell5), 

Noriko Awaya2,6), Takashi Goto1,2), Junko Kozuka2,3) and Naoko Shinya7)

Abstract: We analyzed errors in writing to dictation of Kanji words in 708 children with 

normal development and 21 children with developmental dyslexia using the Screening Test  of Reading and Writing for Japanese Primary School Children (STRAW).  The 21 children  with dyslexia had disorders in both phonological and visual information processing.  As a  result, the dyslexic group showed more no-responses than the normal group, and it had a  tendency  to  write  morphologically  different  letters.    The  children  with  developmental  dyslexia showed error patterns dissimilar to those of the normal group, commonly leaving a  wide space between each component of Kanji characters and writing letters at a slant.   Furthermore, in the dyslexic group there were significant correlations between correct rate  and imageability of words, and number of strokes.  These results suggest that deficit of  visual information processing is likely to affect the Kanji writing of children with dyslexia.

Key words:  Screening Test of Reading and Writing for Japanese Primary School Children 

(STRAW), developmental dyslexia, normal children, error analysis, writing to  dictation of Kanji words

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書取の得点が各学年平均の−1.5 SD 以上であった.今 回はこのうち,漢字書取で誤反応が見られた 708 名を 分析対象とした. 2 )発達性読み書き障害(DD)群 小学 2 年から 6 年生までの右利き 20 名,左利き 1 名の合計 21 名で,いずれも専門機関および医療機関 にて全般的な知能や要素的な認知機能,読み書きに関 する学習到達度検査にて,発達性読み書き障害と診断 評価されている.全例 WISC-Ⅲ知能検査の VIQ か PIQ が 85 以上,かつ/もしくは RCPM の得点が同年 齢典型発達群の−1.5 SD 以上で,全般的な知的発達に 遅れはないと考えられた.要素的な認知機能検査とし ては,語彙力の指標として標準抽象語理解力検査(The  Standardized  Comprehension  Test  of  Abstract  Words; SCTAW),音韻認識課題として単語の逆唱課 題,視覚認知機能検査として 6 者択一の線画同定課題 の Matching Familiar Figure Test(MFFT)と Rey-Osterrieth の 複 雑 図 形(Rey-Rey-Osterrieth Complex  Figure Test; ROCFT)の模写課題,非言語性視覚記 憶課題として ROCFT の直後および遅延再生課題を 行った.DD 群 21 名全員に音韻情報処理過程と視覚 情報処理過程双方の障害を認めた(表 1).また,グー パー交互テストで錯行為やリズムの不正が見られた か,手指の構成模倣において錯行為が見られた児童を 協調運動困難(coordination difficulty; CD)ありとし た.また,RCPM において難度の高い課題で正答し たにもかかわらず容易な課題で誤ったり,MFFT 誤 反応(いわゆるお手つき)が多い場合を不注意傾向あ りとした.21 名のうち 5 名に CD,1 名に不注意傾向, 6 名に CD と不注意傾向の双方が認められた.全例 STRAW においてひらがな,カタカナ,漢字のいず れか,あるいはいくつかで音読や書取の成績が同年齢 典型発達群の−1.5 SD 未満であった. 2 .手続き STRAW の書取課題は,典型発達(N)群は集団 式で,発達性読み書き障害(DD)群は個別式で実施 されている.また,刺激単語は 2,3 年生では小学校 1 年生配当漢字,3 年生以上は 2 学年下の学年配当漢 字が使用されている.刺激単語の数は各学年 20 語で あった. 漢字書取における誤反応を,先行研究7,11−13)を参考 に,著者を含む 3 名の言語聴覚士が分類した.分析は 表 1 発達性読み書き障害群の認知機能検査の成績 症例 性別 学年 (/36)RCPM SCTAW正答数 (/45) MFFT ROCFT 単語の逆唱課題 CD 不注意傾 向 WISC−Ⅲ 正答 数 誤答数 平均初発反応時間 (秒) 模写 課題 (点) 直後再生 課題 (点) 遅延再生 課題 (点) 3 モーラ語 4 モーラ語 正答数 (/10) 所要時間平均 (/10)正答数 所要時間平均 VIQ PIQ FIQ

1 M 2 123 122 123 26 23 5 12 5.8 12 10 7* 6 9.75** 5 23.5** + 2 M 2 87 90 88 22** 23 12 0 27.3** 27 5.5** 4.5** 10 23.7** 8 41.7** 3 F 2 73 89 79 23** 16 118** 7.08 16 2** 1.5** 0 19** 0 + 4 F 3 96 71 82 23** 18314 22 21 9 63 9.75** 4 8.9 5 M 3 115 104 111 30 31 6 12 16.2 28 5* 51 7.90 6 F 3 82 93 86 18** 20 6 6 13 13.59.5 7 2 13.5** 0 7 F 3 85 84 82 28* 25 9 4 24.6 18 12 0** 0 0 + + 8 M 3 99 79 87 23** 19 7 11 10.5 28 10 55 14.8** 7 31** + + 9 F 3 85 65 73 27* 23 7 5 29.37** 1** 2** 6 45.7** 0 10 M 3 82 92 86 28* 21 4 184.83 21 12 610 6.94 4 22.41** + + 11 M 4 86 84 85 29* 29 4 1410.9 20 52** 6 11.8** 6 11.7 + 12 M 4 87 99 93 32 25 6 10* 16.2 20 13.5 6.58 6.1 6 14.8+ 13 M 4 106 106 107 36 28 8 6 19.9 20.5 14 6* 4 7.53 8.7 14 M 4 84 87 84 33 23 7 13* 8 18 87 9 13.8** 3 35.3** + 15 M 4 81 94 86 26** 23 12 0 1727 88 9 5.6 4 26** 16 M 4 108 83 96 23** 30 318 3.35 19.5 3.53** 7 2.1 1 14.2+ + 17 M 5 100 76 88 27** 33 5 21** 13 26 1.5** 4** 4 18.2** 3 15.8** + + 18 M 5 110 104 108 32 35 7 8 15* 31 8.58.510 3.49 15.7** 19 F 5 81 85 81 19** 20** 6 1111 33 17 97 2 5 9.5+ + 20 F 6 95 92 93 26** 38 5 149.7 34 12127 9.2** 2 16** + 21 M 6 91 72 79 28** 33 9 4 17.26 24 1118.5 10 5.38** 10 15.86** **:典型発達児の平均−2 SD 以下であった項目,:典型発達児の平均−1.5 SD 以下であった項目,RCPM:Raven’s Coloured  Progressive Matrices(レーヴン色彩マトリックス検査),SCTAW:The Standardized Comprehension Test of Abstract Words(標 準抽象語理解力検査),MFFT:Matching Familiar Figure Test,ROCFT:Rey-Osterrieth Complex Figure Test,CD:協調運動 困難(coordination difficulty)

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単語単位と文字単位に分けて,以下のように行った. 統計処理には SPSS 14.0J を使用した. 1 )単語単位における誤り分析 1 文字語の誤反応は無反応(NR)と錯書に分類した. 2 文字語の誤反応は 1 文字の誤りと 2 文字の誤りに分 類し,さらに 2 文字の誤りを,2 文字とも NR,1 文 字の NR と 1 文字の錯書,2 文字とも錯書の 3 パタン に分類した.N 群と DD 群の 2 群における,全反応に 占める各誤反応の割合に関して対応のない 1 元配置の 分散分析を行った. また,各群における単語ごとの正答率について,音 声提示による親密度,頻度,心像性の単語属性と総画 数の観点から検討した.単語属性値は,NTT データ ベースシリーズ日本語の語彙特性14-16)を用いた.各単 語属性(音声提示による親密度,頻度,心像性)およ び総画数と,各単語の正答率との間の Pearson の相 関係数を算出した. 2 )文字単位における誤り分析 文字単位の誤りは,実在文字と非実在文字に分類し た. (1)実在文字への誤り 実在文字の誤りにおける特徴を,①同音異字,②類 音異字,③形態類似文字,④意味的関連文字,⑤  ① ~④の複合的な誤り,⑥転置,⑦構成要素間の広い間 隔(1 文字内の構成要素間の間隔が一構成要素分以上 離れた場合),⑧文字の傾き(線が 15 度以上傾いた場 合),⑨枠からのはみ出し(縦 1.3 cm,横 6 cm の枠 から上か下にはみ出した場合),⑩その他の誤り(① ~⑨に分類できない誤り)の 10 カテゴリーに分類し (表 2),両群を比較した.また,⑦構成要素間の広い 間隔,⑧文字の傾き,および⑨枠からのはみ出しの特 徴について,各 DD 児の認知機能や合併症状との関連 を検討した. (2)非実在文字への誤り 非実在文字は,目標文字と形態的にどの程度似てい るのか(以下,形態的類似度)を,3 通りの方法で検 討したところ,以下の方法で算出した結果が 3 名の言 語聴覚士の主観的な形態的類似度の平均に最も近かっ たことから,この方法を用いた.まず,各漢字の構成 要素を辞書17)の記載に従い,部首とその他の部分に 分け,各部首を1要素とみなし,部首以外の部分につ いては,分解すると部首ないしは1つの漢字として存 在する形態であれば 1 要素とした.ただし,その画数 が目標文字の全画数の 2 割未満の場合は 1 要素とはみ なさないこととした.たとえば「昼」では,部首の「日」 は 1 要素とし,「一」は 1 つの漢字として存在するが, 全画数の 2 割未満のため 1 要素とはみなさないため, 「昼」の構成要素数は 2 となる.このように,文字ご とに決めた構成要素が目標文字と同じであった数(正 答構成要素数)に正答できた画数を加え,文字ごとの 全構成要素数と総画数の和における割合を算出する分 析方法で形態的類似度とした.N 群と DD 群の各学年 における非実在文字の形態的類似度の平均値につい て,対応のない 1 元配置の分散分析にて分析した. 非実在文字の正答構成要素数+非実在文字の正答画数 目標文字の構成要素数+目標文字の総画数 ×100=形態的類似度(%) 結 果 1 .両群の平均正答率 漢字単語書取における平均正答率は,すべての学年 において発達性読み書き障害(DD)群よりも典型発 達(N)群で高かった.DD 群において,同学年の典 型発達児平均の−1.5 SD 以下の得点が 4 名,−2 SD 以下が 5 名,−3 SD 以下が 12 名認められた. 2 .単語単位での誤り分析 1 )1 文字語の誤り N 群と DD 群それぞれの,誤反応数に占める各誤反 応パタンの割合を比較した.その結果,2 年生以外の 全学年で N 群に比べ DD 群で無反応の割合が有意に 大きかった(図 1)[ 3 年生(F(1, 61)=102.29,p<.01), 表 2 誤りのカテゴリーと実際に見られた誤り例 誤反応のカテゴリー 誤反応例 ①同音異字 日本 →  ②類音異字 大工 →  ③形態類似文字 東京 →  ④意味的関連文字 散歩 →  ⑤複合的な誤り 兄弟 →  ⑥転置 商売 →  ⑦構成要素間の広い間隔 町  →  ⑧文字の傾きの誤り 正月 →  ⑨枠からのはみ出し 東京 →  ⑩その他 火山 → 

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4 年生(F(1, 169)=57.56,p<.01),5 年生(F(1, 185) =23.56,p<.01),6 年生(F(1, 165)=59.45,p<.01)]. 2 )2 文字語の誤り 全学年で N 群に比べ DD 群で,2 文字とも誤った単 語の割合が有意に大きかった(図 1)[ 2 年生(F(1, 139) =22.11,p<.01),3 年生(F(1, 61)=212.19,p<.01),4 年 生(F(1, 169)=561.76,p<.01),5 年 生(F(1, 185) =30.49,p<.01),6 年生(F(1, 165)=43.74,p<.01)].さ らに,N 群に比べて DD 群で 2 文字とも無反応の割合 が有意に大きかった(図 1)[2 年生(F(1, 139)=7.35, p<.01),3 年生(F(1, 61)=343.29,p<.01),4 年生(F(1,  160)=149.34, p<.01), 5 年生(F(1, 185)=40.90, p<.01), 6 年生(F(1, 165)=58.69,p<.01)]. 3 )各単語の正答率と属性および画数との関連 N 群において,正答率と親密度の間に有意に高い正 の相関が認められた(r=.28,p<.05).DD 群において は,正答率と心像性に有意に高い正の相関が(r=.35, p<.01),画数との間に有意に高い負の相関が認められ た(r=−.41,p<.01). 3 .文字単位での誤り分析 両群とも実在文字に比べて非実在文字への誤りが多 かった.実在文字への誤りでは,N 群は形態類似文字 への置換がその他の誤りより多い傾向であった.一方, DD 群では N 群に比べ,構成要素間の広い間隔や,文 字の傾き,枠からのはみ出しが多い傾向が認められた (表 3).また,形態的類似度は,全学年で N 群が DD 群に比べて高く,2 年生(F(1, 140)=4.40,p<.05),3 年生(F(1, 49)=7.75,p<.01),5 年生(F(1, 350)=5.08, p<.05)で有意差が認められた(図 2). 4 .発達性読み書き障害(DD)群の書字の特徴と 認知機能 DD 群のなかで,「構成要素間の広い間隔」が認め られた(+)群と認められなかった(−)群における, 視覚情報処理課題の得点を比較した.その結果,前者 では Rey-Osterrieth の複雑図形(ROCFT)の課題の すべてで得点が低く,直後再生において両群間に有意 差 が 認 め ら れ た(F(1,19)=8.93,p<.05). ま た, Matching Familiar Figure Test(MFFT) の 平 均 初 発反応時間においても,(+)群が(−)群に比し有 意に遅かった(F(1,19)=28.72,p<.01). また,全文字数に対する「枠からはみ出した文字」 の割合と各 DD 児の合併症の関連を検討した.その結 果,CD(協調運動困難;coordination difficulty)と 不注意傾向の双方を認めた群における割合の平均値は 19.2%,CD のみを認めた群が 8.3%,不注意傾向のみ 0 20 40 100 80 60 (%) NR 錯書 正答 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 ** * * ** ** D D 群 N 群 DD 群 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 1 文字語における反応(誤り方) 1 文字語の誤りにおける無反応(NR)の比較を示した. 0 20 40 100 80 60 (%) 2文字の誤り 1文字の誤り 正答 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 ** ** ** ** ** D D 群 N 群 DD 群 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 2 文字語における反応(誤った文字数) 2 文字語の誤りにおける 2 文字の誤りの比較を示した. 0 20 40 100 80 60 (%) 2文字錯書 1文字の誤り 正答 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 ** ** ** ** ** D D 群 N 群 DD 群 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 1文字 NR 2文字 NR 2 文字語における反応(誤り方) 2 文字語の誤りにおける 2 文字の無反応(NR)の比較を示した. 図 1 単語単位における誤りの比較 N群:典型発達群(n=708),DD 群:発達性読み書き障害群 (n=21),**:p<.01

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を認めた群が 16.6%,双方とも認めない群が 2.8%で あった.双方を認めた群は認めない群と比べても  (χ2=17.28,df=1,p<.01),また CD のみを認めた群 (χ2=5.14,df=1,p<.05),もしくは不注意傾向のみ を認めた群(χ2=5.21,df=1,p<.05)に比べても有 意に大きかった. 考 察 1 .発達性読み書き障害群における漢字書字の特徴 と,認知機能や合併症状との関連について 本研究の結果,漢字の書字において発達性読み書き 障害(DD)群は典型発達(N)群よりも誤反応が多く, 誤り方では無反応が多かった.一方,両群とも非実在 文字への誤りが多く,N 群では次いで形態的に類似し た実在文字への置換が多い傾向が見られ,これらの点 については,国立国語研究所8)の調査と同様の結果で あった.しかし,非実在文字では,DD 群は N 群と比 較して目標文字に似ていない形態への誤りが多かっ た.漢字書字の習得は,まず手本となる文字を視覚的 に認知し,それを記憶する過程が必要と考えられ る18).これまで,漢字書字に特異的な障害を示す児童 において,視覚情報処理過程の低下が報告されてい る1,3,19,20).本研究対象の DD 児も,全例で視覚情報処 理課題の得点が低下しており,無反応の多さや形態的 に似ていない非実在文字への誤りの多さには視覚情報 処理能力の低下が関与している可能性が考えられる. さらに DD 群では,構成要素間の間隔が広いという 特徴や,文字の傾きが大きいという特徴が多い傾向が 認められ,典型発達群との間に誤反応に質的な差のあ る可能性が考えられた.構成要素間の間隔の広い DD 群はそうでない DD 群に比して,MFFT の平均初発 時間が有意に遅く,ROCFT の直後再生課題の得点が 有意に低かった.MFFT は,視覚失認例では反応時 間が遅く正答数が少ないという報告がある21).DD 群 で認められた構成要素間の間隔が広いという特徴は, 視覚的認知力の低下と視覚的記憶力の低下の双方,も しくはいずれかの影響を示唆する結果と解釈できるの ではないかと考えられた. また,協調運動の困難さや不注意傾向のどちらか, もしくは双方を認める DD 群は,どちらの症状も認め ない DD 群に比べて,枠からはみ出した文字の割合が 有意に大きかった.したがって,漢字書字において枠 からはみ出すという特徴は発達性読み書き障害自体の 特徴というよりも,協調運動困難や不注意傾向が関与 している可能性が考えられた. 表 3 実在文字と非実在文字への誤り 実在文字 非実在文字 ①同音異字 ②類音異字 ③形態類似文字 ④意味的関連文字 ⑤複合的な誤り① + ③ ⑥転置 ⑦その他 構成要素間の広い間隔 文字の傾き 枠からのはみ出し 小計(実在文字) 鏡映文字 鏡映文字以外の誤り 小計(非実在文字) N 群 104 29 198 44 54 24 40 36 16 47 592 7 997 1004 % 18 4.9 33 7.4 9.1 4.1 6.8 6.1 2.7 7.9 100 0.7 99 100 DD 群 5 2 3 1 4 9 5 18 10 15 72 0 115 115 % 6.9 2.8 4.2 1.4 5.6 13 6.9 25 14 21 100 0 100 100   N群:典型発達群,DD 群:発達性読み書き障害群 図 2 文字単位における誤りの比較 N群:典型発達群,DD 群:発達性読み書き障害群 非実在文字における形態類似度の比較を示した. 0 20 40 100 80 60 (%) N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 DD 群 N 群 * ** D D 群 N 群 DD 群 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生

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2 .単語属性効果について これまで健常成人の音読において,単語属性の影響 が認められることが報告されているが22),小学生の音 読や書字における単語属性効果については,小児の データベースがないこともあり,本邦ではほとんど検 討されていない.今回予備的に成人用のデータベース を用いて検討した結果,典型発達の小学生において親 密度効果が認められた.一方,発達性読み書き障害 (DD)群では心像性効果と画数の影響が認められた. 鈴 木ら6)は, 主 に 小 学 1 ~ 3 年 の 低 学 年 で,N 群, DD 群の双方においてひらがな,カタカナ単語の書字 に心像性効果が認められたと報告しており,一部同様 の結果が得られた.心像性は単語から喚起されるイ メージの思い浮かべやすさであり16),具象性との相関 が高いことが報告されている16).具体的な語は意味が より想起されやすいと考えられるが,今回用いた語は すべて具象語であったことから,発達性読み書き障害 児は漢字書取の際に,音声提示された単語から意味を 想起し,意味から文字形態への変換を介して漢字を書 字していた可能性が考えられる.一方,典型発達児は 意味に依存していなくても書字が可能であったため心 象性効果が見られず,親密度効果が認められたのでは ないかと考えられた. 画数に関しては河村ら23)が,漢字の読み書きに困 難のある児童において,指導後の漢字書字の正答率に 総画数の影響があったと報告している.河村らの研究 では詳細な認知機能検査が行われていないため,単純 に比較できないが,読み書きに困難のある児童は書字 においては特に画数の多い文字が困難な可能性が考え られる.また,徳田24)は,晴眼児と弱視児を対象に 漢字の読みと書きの検査を行った結果,弱視児は書字 において点画の誤りや目標語の形態に類似した実在し ない文字への置換が多く,特に画数が多くより複雑な 漢字でその傾向が強かったと報告している.徳田24) の研究における対象者の障害は視力に関してであり, 中枢性の認知障害とは異なる.一方,本研究で対象と した DD 児で認められた視覚認知障害は中枢性のもの と考えられる.しかし,両者で同様の誤りが多い傾向 が認められたことから,視力障害と視覚認知障害は全 く異なる水準での障害ではあるが,結果的に似たよう な誤りを呈する可能性が考えられた.また DD 群では 視覚的な記憶力においても低下が認められていること から,特に画数の多い漢字で DD 群において誤りが多 い理由として,視覚的記憶における困難さも要因の一 つと考えられるのではないかと思われた. 3 .臨床への示唆と今後の課題 今回明らかになった典型発達児と発達性読み書き障 害児の漢字書字の誤反応における質的な差や併存する 症状と誤反応との関連は,通常学級に在籍する発達性 読み書き障害児と学習不足による読み書きが困難な児 童とを判別するための基礎的な資料となると考えられ る.また,発達性読み書き障害児の漢字書字に心像性 や画数が影響していることが示されたことから,発達 性読み書き障害児の漢字書字指導においては,画数の 少ない文字や,より具象性の高い単語から開始するこ とがよいのではないかと考えられる. 単語属性については,小児用のデータベースがまだ 開発されていないため,本研究では予備的に成人の データベースを使用したが,今後は小児のデータベー スを作成して検討することが望ましいと考えられる. 謝辞 本稿を作成するにあたり,多くのご助言を頂きました 筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授 大六一志博士に心 より御礼申し上げます.また,多くのご協力を頂きました筑波 大学宇野研究室の皆様に深く感謝致します. 文   献 1)井潤知美,宇野 彰,小林美緒:かなに比べて漢字に強い 読み書き障害を示した1例.小児の精神と神経,41(2・3): 169-173,2001. 2)宇野 彰,金子真人,春原則子,他:発達性読み書き障害 ―神経心理学的および認知神経心理学的分析―.失語症研 究,22(2):130-136,2002. 3)粟屋徳子,宇野 彰,庄司敦子,他:音韻処理能力と視覚 情報処理能力の双方に障害を認めた発達性書字障害児の 1 症例.小児の精神と神経,43(2):131-138,2003. 4)春原則子,宇野 彰,金子真人:発達性読み書き障害児に おける実験的漢字書字訓練―認知機能特性に基づいた訓練 方法の効果―.音声言語医学,46:10-15,2005. 5)藤吉昭江,宇野 彰,川崎聡大,他:漢字書字困難児にお ける方法別の書字訓練効果―単語属性条件を統制した単語 群を用いた検討―.音声言語医学,51:12-18,2010. 6)鈴木香菜美,宇野 彰,春原則子,他:発達性読み書き障 害群のひらがなとカタカナの書字における特徴―小学生の 読み書きスクリーニング検査(STRAW)を用いて―.音 声言語医学,51:1-11,2010. 7)久保田あや子,窪島 務:発達性読み書き障害(Dyslexia) 児の錯読・錯書に関する研究(2)―錯読・錯書のケース分 析―.滋賀大学教育実践総合センター紀要  パイディア, 13:117-126,2005. 8)国立国語研究所:常用漢字の習得と指導  付 ・ 分類学習漢 字表,東京書籍,東京,1994. 9)宇野 彰,春原則子,金子真人,他:小学生の読み書きス ク リ ー ニ ン グ 検 査 ― 発 達 性 読 み 書 き 障 害( 発 達 性 dyslexia)検出のために―,インテルナ出版,東京,2006. 10)杉下守弘,山崎久美子:日本版レーヴン色彩マトリックス

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検査,日本文化科学社,東京,1993.

11)Hatta T, Kawakami A and Tamaoka K: Writing error in  Japanese  kanji:  A  study  with  Japanese  students  and  foreign learners of Japanese. Read Writ, 10: 457-470, 1998. 12)小尾 眞,熊谷恵子:中学生における個別指導対象の生徒 の学習のつまずきと認知処理―学業成績と漢字書き取りテ ストの誤り分析から―.筑波大学自立活動研究,13:91-95,2000. 13)石井麻衣,雲井未歓,小池 敏:学習障害児における漢字 書字の特徴―誤書字と情報処理過程の偏りとの関係につい て―.LD 研究,12(3):333-343,2003. 14)天野成昭,近藤公久:NTT データベースシリーズ 日本語 の語彙特性,第1巻,単語親密度,三省堂,東京,1999. 15)天野成昭,近藤公久:NTT データベースシリーズ 日本語 の語彙特性,第7巻,(1)単語頻度(2)文字頻度,三省堂, 東京,2000. 16)佐久間尚子,伊集院睦雄,伏見貴夫,他:NTT データベー スシリーズ  日本語の語彙特性,第 8 巻,単語心像性,三 省堂,東京,2005. 17)長澤規矩也編著:三省堂漢和辞典,第 4 版,三省堂,東京, 1971. 18)宇野 彰,加我牧子,稲垣真澄:漢字書字に特異的な障害 を呈した学習障害の1例―認知心理学的および神経心理学 的分析―.脳と発達,27:395-400,1995. 19)宇野 彰,上林靖子:ADHD を伴い書字障害を呈した学 習障害児―書字障害に関する認知神経心理学的検討―.小 児の精神と神経,38(2):117-123,1998. 20)酒井 厚,宇野 彰,細金奈奈,他:カタカナと漢字に関 する発達性読み書き障害の1症例―認知神経心理学的分析 ―.小児の精神と神経,42(4):333-338,2002. 21)濱谷美緒:「視覚性注意障害」と「視覚性認知障害」との 鑑別評価となる指標抽出の試み―AD/HD 児と視覚失認 例,発達性 dyslexia 児への CPT と MFFT の適応を通し て―.筑波大学卒業論文,2007. 22)Shibahara  N and Kondo T: Variables affecting naming  latency for Japanese Kanji a re-analysis of Yamazaki,et  al.(1997).Percept Mot Skills,95(1): 741-745, 2002. 23)河村 暁,新妻由希枝,益田 慎,他:ワーキングメモリ に困難のある LD 児の漢字の読み書き学習における単語の 熟知度と漢字の画数・複雑性の影響.LD 研究,16(1): 49-61,2007. 24)徳田克己:弱視児の漢字読み書き課題における誤答の分析. 弱視教育,24(4):19-32,1987. 別刷請求先:〒339-8501 さいたま市岩槻区浮谷 320       目白大学保健医療学部       井村純子

参照

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