学的視点
著者
菅原 計
著者別名
Sugawara Kei
雑誌名
経営論集
巻
40
ページ
15-36
発行年
1994-03-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005691/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja課 税所 得 の侵 食化 現 象 に対 す る税 務 会 計 学 的視 点
菅
原
計 目 次 はじめに1 .税務会計学における課税所得概念 (1) 課税所得の真実公正性 (2) 「公正処理基準」における公正性の意味(3 ) 課税所得概念定立のための税務会計認識 (4) 課税所得侵食化現象の認識2. 租税特別措置による課税所得の侵食化現象 巾 政策税制による特例措置 (2) 特例措置による免税所得 (3) 特例措 置による償却費の増大3. 税務会計処理に埋没する課税所得の侵食化現象 剛 当為 としての税務会計認識 (2) 税務会計学における真実性4 .真実公正な課税所得概念の形成要因た る税務会計認識 剛 税務会計認識の独自性 (2) 税務会計認識 と税務会計原則 おわりに はじめに 税務会計 学研究の 目的 は, 真実公正 な課税所 得概 念 を解 明 し, もう て公正 な課税制度 を実現す るこ とにあ る。 真実公 正 な課税所 得概念 とは,あ るべ き 当為的所 得概 念で あ り, その当為 的所 得概 念 を明 らか にす るた めには,先 ず実定租 税法 の基 に実践 さ れてい る実在的税務会計 にお け る課税所 得 計算の問 題点を明 らか にしなけ ればな らない。 法人 課税所 得を計 算す るた めには,税務上 い くつ かの前提 があ る。第一 に, 会 計制度 に依 存し なけ れば な らないこ と, 第二 に複雑 な計 算 はで きるだけ避 け, 単純で なけ れば な らないこ と, 第三 に商法 との法 的整 合性 をで きるだ け 保 持す る必 要があ るこ と, 第四 に公 共性 の配慮が必要で あ るこ とな どをあ げ るこ とがで きる。 こ れ ら, 会計 制度 依存性, 単綺 陛, 法的整 合性, 公共性 な どの諸前提 は, 税制上 いづ れ も重要 な ものであ るが,真 実公 正 な課税所得 概 念 か らみれば, こ れらの前提 に名 を借 りて本来あ るべ き課 税所 得 が侵 食さ れ てい る事実 も存在 す る。 課税所 得変貌論研 究 は, 課税所 得 の拡大現象 と侵 食化現 象 を その発生形 態 や発生 要因 につ いて分析 し, その原因 を明 らかにす るもので あ るが, この変 貌論研 究を通し てあ るべ き課税所 得概念を解明 するこ とに その意義 があ る。 こ こで は,近年 ます ます変 貌著 しい課税所得 の侵食化現象 を とりあ げ, かか る侵食化 要因の分析 を通 して本来あ るべ き課税所得 とは何 かを明 らか にし, もっ て理念的税 務会計 にお け る税 務会計認識及 び測定 を通 し て, あ るべ き真 実公正 な課税所 得計算 が実在 的税務 会計 におい てどの よ うに形成 さ れるべ き かを理論的 に検 討す るレ 1 。税務会計学に おけ る課税 所得 概念 (1) 課税所得 の真実公正 性 税務会 計学の 目的 はレ 公正 課税 を実現 す るこ とで あ る。一般 に, 公正 課税 におけ る公正 性 とは次 の ように考 えら れてい る。「最良 の所得 課税 シ ステムの 重要 な目標 は,公正性(fairness)で なければ ならない。この公正 性 は,一般 に水平的 公平 (horizontalequity ) と垂 直的公平(verticalequity ) とい う 二つ の下位区分 に分 け ら れる。(1)」す な わち,所得課税 にお け る公正 性 とは,水 平的公平 と垂 直的公平 を共 に満 た す時 に成立 す る目標概 念であ る。 水平的公 平 とは,租税 がすべ ての納 税者 に公平 に配分 さ れるこ とを意味 し, 垂 直的公 平 とは,所得 に応 じ て負担力 が異 な るこ とを意味 す る。 こ れ らの要 素 を満 た した公正 な課税所 得(fairtaxableincome ) とは,個 々の負担 能力 に応 じた 所得で なければ な らないが, さ ら に他 の納税者 間 との公平性 が 付加 さ れた真 実な課税所得で な ければ ならな いこ とを意味す る。
一般 に, 最 良 の 租 税 とは, (1)公 平 (equitable )又 は 公 正 (fair) で あ るこ と,(2)経 済 的 に効 果 的 (economicallyefficient )で あ る こ と,(3)確 実 で 恣 意 性(certainandnotarbitrary )の な い こ と,(4)徴 税 費 が低 コ スト(lowcost ) で あ るこ と,m 税 務 行 政 と納 税 者 の承 諾 (compliance) の基 にで き るだ け 単 純 であ る とい う簡 便 性 (convenient ) が 要 求 さ れ る とい う(2)。 税務 会 計 学 にお い ては , 公 平 性 及 び 税務 運 営 配 慮 は 税 務 会 計 公 準 とし て, 経 済的 効 果 性 , 恣 意 性 排 除 , 簡 便 性 は, それ ぞ れ税務 会 計 原 則 で あ る公 共 政 策 配慮 の 原 則 , 計 算恣 意 排 除 の 原 則 , 計 算 簡 便 性 の 原 則 とし て捉 え ら れ て い る。 もっ と も, 課 税所 得 は , その 他 に 実質 課 税 主 義 の 原 則, 損 金 控 除 規 制 の 原 則, 負 担 能 力 主 義 の 原 則 , 資 本 剰 余 除外 の 原 則 , 計 算基 準 明 確 性 の 原 則 , 企 業 自主 計 算 の 原則等 が 総 合 的 に適 用 さ れ る こ と によ り認 識 測 定 さ れ る。 し か し なが ら, 一 般 に最 良 の 租 税 とさ れ る要 素 の 中 に含 ま れ る経済 的 効 果 性 , 徴 税 費 の 低 コ スト の た め の 租 税 運 営 の 簡 素 化 , タ ック ス ・ コ ンプ ラ イ ア ン スに基 づ く租 税 計 算 の 簡 便 性 は, 確 か に重 要 な要 素 で は あ るが, 真 実 公 正 な 課税所 得 概 念 か ら検 討 し て み る と, 必 ず し もプ ラ ス面 ば か りで な く, む し ろ 課 税所 得 が こ れ ら の 理 由 に 名 を借 り て侵 食化 さ れて い る とい う事 実 も見 逃 す こ とがで き な い。 「真 実公 正 な課 税 所 得 」(trueandfairtaxableincome)◇ とい う場 合 の「真 実 」 とい う意 味 は, 納 税主 体 た る企 業 実 体 に帰 属 す る正 し い 所 得 を意 味 に それは資 本 取 引 を除 く経済 力 の 実 現 純 増 加 額 の す べ て を源 泉 とす る課 税 適 状 にあ る正 し い 所 得 を意 味 す る。 しか し, 課 税所 得 の 真 実性 は, さ ら に公 正 性 が 付与 さ れた もの で な け れば な ら な い。「公 正 」 とは,個 別 の 企業 実体 にお け る特殊 性 を超 えて, 他 の企 業 との 租 税 負 担 の 公平 及 び 企 業 相 互 間 の 租 税 配 分 が 公平 に正 し く行 わ れ るこ とを 意 味 す るレ し か し な が ら,「課 税 所 得 概 念 」自体, 極 め て 複雑 な要 素 が 絡 み合 う て お り, 何 が 「真 実 公正 な 課 税 所 得 」 を構 成 す るか は, その 依 っ て立 つ 立 場 , 理 論 , 分 析 視 点 等 に よっ て 異 な る場 合 が 多 い。 こ こで は, 税 務 会 計 学 の 原 理 論 と し て形 成 さ れ た 「 真 実 公 正 な課 税 所 得 」 概 念 を基 礎 とし て, 現 実 の 課 税 所 得 が い か に侵 食 化 さ れて い る か を 明 らか に す る。 (2) 「公正処理基 準」 にお け る公 正性 の意味 法人税法 第22条 第4 項 の「一 般 に公 正 妥当 と認 めら れる会計処 理の基 準」
によ るとい う規 定 は, 公正 妥当 な会 計 に準拠 す るこ とを確 認 した規 定であ る が, この「公正 処理基 準」 とは,「企業会 計原則」 その もので は な く,「客観 的 な規範性 を もつ公正 妥当 と認 められ る会計処 理の基準 とい う意味で あ り, 文章化 さ れた基 準 があ るこ とを予 定 している わけで はな い」(3)とされ るが, 具 体的 に客観 的 な規範性 あ る「公正妥 当な会計処 理基 準」 とは何 かが明 らかに さ れなけ れば な らない。 税法上 の 「公 正処 理基準」 とは, 課税所得 算定 の前提 となる会 計制度依存 性 に基因 した もので あ り, 課税所得 の算定基 礎 とな る収益 及 び費用 の認識処 理基 準が「公正 処理基 準」 によるこ とを確認 した もので あ る。 し かし, 真実 公正 な課税所 得 を認 識測定 すべし とす る税務会 計学 か ら みれば, これは単な る収益 及 び費用 の会 計処 理上 の問題だ けで な く, 益 金及 び損金 認識 の問題 と して捉 えなけ ればな らない。課税所得 の認識 は, 税 務会 計 認識 として展開さ れ, 税務会計 認識 の認識対象 は個別企業 に生 起す る取 引 事象で あ る。税務会 計認 識は,犬こ の個別取 引事象 を益 金及 び損金 に分解 し, 認識 し, 統合 するこ とにより, 課 税 可能 な所得 を認識 し ようとす る。 ニ 税務会計 にお け るかか る課税所得 の認識プ ロ セ スにお い て,会 計 及び商法 が深 く関係 す るこ とか ら, 税務会計 認識は, 財務会 計認識 と商法 会計 認識 を 前提 とし なが ら独 自 に展開さ れる重層構 造 として捉 える こ とがで きる。真実 公正 な課税所 得 ぱ, 税務会 計公 準及び税務会 計原則 によっ て形成 さ れるもの で あ るが, 個別取 引 の具体的 認識 にあ たって は, 主 体的 認識 要件 た る不偏的 中立 性, 客体 的認 識要件 た る経済 的実質性及 び担 税能力性 を適用 す るこ とに より判 断 す るこ とにな る ○ 法 人税法上 の 「公正処 理基準」 とぱ, 直接 的 に「企業会 計 原則 」 を意味す る もので な く, 社会 的一般 通念 に従っ て公正妥 当性 があ ると判 断 さ れた広 い 意味 の会 計処 理 の基 準 を意味す る もので あ り,「 その中心 をなす のは,企業会 計原則 や商法 お よび証券取 引法の計算規定で あ るが, それに止 ま らず,確立 した会 計慣行 を広 く含 む と解すべ きであろ う」(4)とし なが ら,こ の公 正処理基 準 とい う用語 の意義 につ いては次の三つの点 に注 意 す る必 要があ る という見 解 があ る。 第一 は,「企業 会 計 原則」の内容 や確立 した会 計 噴行 が必 ずし も公正 妥当 と は限 らないこ と,第二 は,「企業 会計原則」や確立 した会 計 噴行 が決 して網羅 的で あ る とぱい えな いこ と, 第三 に, 公正 妥当 な会計 処理 の基準 は, 法的救
済 を排 除 す る もので あ っ て は な ら な い こ との 三 点 で あ る(5)。 第一 の 点 は ,「企 業 会 計 原 則 」や会 計 噴行 が 必 ず し も公 正 妥 当性 が あ る とは 限 らな い こ とか ら, 一 般 に税法 上 の 公 正 処 理 基 準 が 「企 業 会 計 原 則 」 を直 接 意 味 す る もの で は な い とさ れ る。問題 は,「 公 正 」 とい う意 味 が会 計上 使 わ れ る場 合 と税 務 上 使 わ れ る場 合 とで は 意 味 が 異 な る とい う こ とで あ る。 会 計上 使 われ る 「公 正 」 は, 一 般 に公正 妥 当 と認 め ら れ た会 計 原 則 又 は会 計基 準 に 従 っ て, 企 業 自主 経 理 の 原則 に よ り個 別 企業 の 経 営 成 績 や 財 政 状 態 が 適正 に 表 示 さ れ て い る こ とを 意味 す るの に対 し, 税 務 上 使 わ れ る 「公 正 」 ぱ, 租 税 負 担 の公 平 な 配 分 を理 念 とす る課 税 所 得 の 真 実 な把 握 の 意 味 で 使 わ れ る。 税務 会 計 は , 財 務 会 計 上 認識 ・ 測 定 さ れた 会 計 表 現 を対 象 に, い か な る認 識 基 準 が どの よ う に適 用 さ れ て処 理 さ れた か を 分 析 し , その 結果 , 税務 会 計 上 の認 識 と し て その ま ま受 容 で き るか 否 か を識 別 し な け れば な らな い。 こ の こ とはレ 財 務 会 計 認 識 を通 し て 認識 さ れた収 益 及 び費 用 ・ 損 失 を益 金 及 び損 金 として 認 識 で き るか 否 か を識 別 す るこ とで あ り, 金 額 的 に限 定 す べ き場 合 に は, 限 定 す べ き測 定 方 法 及 び測 定 の た め の 適 確 な処 理 を 選 択 決 定 す る必要 が あ る。 第二 の 点 の 「企 業 会 計 原 則 」 や会 計 肌行 が 網 羅 的 で な い こ とは, 確 かで あ る。 法 人 税 法 が 対 象 とす る法 人 は, 内 国法 人 に 限 らず 外 国 法 人 に もお よ び, 株 式会 社, 有 限 会 社 , 合 資 会 社 , 合 名 会 社 及 び相 互 会 社 等 の 普 通 法 人 は も と よ り, 協 同 組 合 , 公 益 法 人, 人 格 の な い社 団 等 を 含 み, こ れ らの 中 小 法 人 か ら大法 人 まで の 全 て の法 人 を含 む か ら, 税法 の 所 得 計 算 規 定 は い きお い 網 羅 的で あ るこ とを 必要 とす る。 課 税所 得 の 認 識 にあ た っ て, 会 計 原則 又 は会 計 論 理 に よ る基 本 思 考 を 基 に し て, 会 計 上 一 般 に 認 め ら れて い る公 正 妥 当 な 処 理 を その ま ま税 務 会 計 処 理 として是 認 す る場 合 と, 基 本 的 には会 計上 の 認 識 を 是 認 し な が ら, 所 得 測 定 に お い て一 定 の 限 度 を 設 け る場 合 と, 担 税 力 及 び社 会 的 公 正 の観 点 か ら, 独 自 の税 務 会 計 処 理 を 必要 とす る場 合 が あ る。 網 羅 的 に 細 部 に い た る税務 上 の 解 釈 と七 て 公 表 さ れ て い るの が「通 達 」で あ るが,「通 達 」が 税務 運営 上 効 力 を有 す る た め に は 少 な くて も税務 会 計 上 の 「公 正 処 理 基 準 」 で あ るこ とを満 た す必 要 が あ る。 こ れ らを 明確 に 識 別 す るた め に, 税 務 会 計 認識 を 必 要 とす る。 第三 の 公 正 妥 当 な 処 理 が, 法 的 救 済 を 排 除 す る場 合 があ っ て は な らな い こ
とはい うまで もない。 この例 として, 土地 の譲渡益を公正 妥当 な処 理 に基づ き申告・納付 したが,相 手の代 金 未納 に対 して契約を解 除した場合, 後発的 理由 による更生 の請求 を認 めて救済 を図 るべ きとす るが6),更生 の請求 は課税 所 得の修正であ るか ら,「公 正処理基 準」によっ て法 的救 済 が排 除 さ れる根拠 的 理由 とさ れてはなら ならない。 「別段 の定 め」は,租 税法 律主義 の前提 か ら,「公正処 理基準」に優 先す る ものであ るが,この「別段 の定 め」に は,「公正処理基準」の確認 規定 も含 ま れてい る。 その意味で 「別 段 の定 め」 は三つ に分類 さ れる という。「 第一 は, 一般 に公正 妥当 と認 めら れる会計処 理 の基 準 を確認 す る性 質 の もので あ る。 た とえば資産の評価益 の益 金不算 入の 規 定(25条),資産 の評価損 の損金不算 入の規定 (33条), 役員賞 与 の損 金不 算入 の規 定(35条1 項), 法人 税の損金 不算 入(38 条1 項)等 は, この種 の規定であ る。 第二 は, 一般 に公正 妥 当 と 認 め られる会 計処理の基 準 を前提 としつつ も, 画一 的処理 の必要 か ら, 統一 的 な基 準を設定 し, また は一 定の 限度 を設 け, あ るい は それを部分的 に修 正 す るこ とを内容 とす る規 定で あ る。 た な卸資産 の評価 に関す る規定 (29条 ), 減 価償却 に関 す る規定(31 条 ),引 当金 に関す る規定(52条以 下)等 が その例 であ る。 第三 は, 租税政 策上 また は経済政 策上の理由 か ら, 一般 に公正 妥当 と認 められ る会計処 理の基 準 に対 す る例 外を定 める規定であ る。 た とえば, 受取 配当の益 金不算 入 に関 す る規 定(23 条),特別減価償却 や準備金 に関す る 規定(租 特42 条の5 以下 ・54 条以 下 ),交 際費の損金不 算入 に関 す る規定(同62 条)等 がこ れで あ る。」(7) このように,「別段 の定 め」 にお いて も,「公正 妥当 な会計 処理の基 準」を 確 認す るもの とそれを前提 とす る ものが含 まれてい る。 従っ て, 税務会 計学 にお け る「公正処 理基準」 の性 格 は, 次 のよ うに特徴づ け るこ とがで きる。1 ) 「企業会 計原則」 その ものを指 す もので はないが,「企業 会計 原則」を 含 めた公正 妥当な処理 の基 準が含 まれる。2 ) 公正妥当 な会 計処理で あ るか否 か は, 会計理論 によっ て公正 妥当性 が 付与 さ れた もので な け れば な らない。3 ) 真 実公正 な課税所 得 を認識 す るた めの基礎 となる企業利益 の算定基準 として「公正 処理基 準」 が要求 さ れてい るこ と。4 ) 会 計上 の公正 概念 と税務 会計上 の公 正概念は類 似概念で はあ るが, 異 なる概念であ るこ と。
) 何 が 公 正 妥 当 な会 計 処 理 で あ る か は, 個 々 の取 引 に お け る税務 会 計 認 識 を 通 し て具 体 的 に判 断 さ れ, その積 み重 ね に よ り公正 妥 当 な税 務 会 計 処 理 基 準 が形 成 さ れ る。 (3) 課 税 所 得 概 念 定 立 の た めの 税 務 会 計 認 識 あ るべ き課 税 所 得 は, 真 実 性 及 び 公 正 性 を 満 た す もので な け れば な ら な い が , 問題 ぱ個 別 企業 にお け る特 定 の 経 済 取 引 にお い て , 何 を所 得 に取 込 み, 何 を所 得 か ら除 外 す る と真 実 公 正 性 が 満 た さ れ るかで あ る。 こ れ は, 税務 会 計 認識 の 問 題 で あ る。税務 会 計 認 識 は,個 別 事 象取 引 を 分 析 す る こ とに よ り, 課 税所 得 の2 つ の構 成 因 子 た る益 金 及 び 損 金 を 識 別 し, 測 定 の た め の税 務 会 計 処理 を 選 択 す る こ とで あ る。 ・ ・j ㎜ 税務 会 計 認識 は, 税務 会 計 公 準 及 び 税務 会 計 原 則 を 具体 的 内 容 とす る税 務 会 計 原理 論 体 系 を その判 断 基 準 とす る。税 務 会 計 原 則 は,課 税所 得 を 認 識 し, 測 定 す るた め の税 務 会 計 的 原 理 思 考 の 中 心 的 役 割 を担 う もので あ る。 税 務 会 計 的思 考 と は,「企業 会 計│青報 を基 礎 的 デ ー タ とし て その う え に展 開 す る租 税 目 的 の た め の会 計 の分 野 に お け る課 税 的 事 実 の 認識 お よ び測 定 の プ ロ セ ス に み られ る税務 会 計 特 有 の計 算 思 考 で あ る。」(8)こ の 税 務 会 計 原 則 は, 実 質 課 税 主 義 の原 則 , 計 算 恣 意 排 除 の 原 則 , 損 金 控 除 規 制 の 原 則 , 負 担 能 力主 義 の 原 則 , 資 本 剰 余 除外 の 原 則 , 計 算 基 準 明 確 性 の 原 則 , 計 算 簡 便 性 の 原 則, 企 業 自主 計 算 の 原 則, 公 共 政 策 配 慮 の 原 則 とい う 九 つ の 税 務会 計 原 則 か らな る。 こ れ ら の税 務 会 計 原 則 が , 税 務 会 計 の 計 算 原 理 的 思 考 とし て作 用 す る こ と に よ り, 真 実 公正 な課 税 所 得 概 念 が 形 成 さ れ る と考 え ら れ る。 税務 会 計 認 識 は, 課 税 所 得 の 原 理 的 思 考 た る税 務 会 計 原 則 の 理 論 的 体系 を判 断 の根 拠 とし て, 現 実 の 取 引 事 象 を税 務会 計 事 象 と し て表 現 す るこ とで あ る。 税務 会 計 認 識 は, 個 別 経 済 取 引 事 象 を対 象 と し て, 課 税 的 事 実 が あ るか 否 か を識 別 し, 課 税的 事 実 で あ れば, それを 益 金 又 は損 金 と し て認 識 す べ き か否 か, 認 識 す る とす れ ば, 具 体 的 にい か な る科 目 を適 合 さ せ, 測 定 の た め に い か な る処 理 基 準 を選 択 す べ きか を判 断 す る もの で あ る。 課 税 所 得 を 認 識 す るた め に は, 税 務 会 計 認 識 を必 要 とし, 税 務 会 計 認 識 は 税 務 会 計 独 自 の 認 識 要 件 を 必 要 とす る。 この 認 識 要 件 は, 三 つ の 要 件 か ら成 り立 つ。 第一 は 不 偏 的 中立 性 , 第二 は 経 済 的 実 質 性, 第三 は 担 税 能 力性 で あ る。 不 偏 的 中 立性 とは, 認 識 す るに あ だっ て の判 断 主 体 者 の 拘 束 的 要件 で あ
り, 経済的 実質 性 とは,し認 識す るにあ だっ ての判断主 体 者の 実質的思 考の必 要性 を強調 した主体的 要件 と, 認識対 象を法的形式で はな く経 済的 実質 に基 づ い て課税関係 を認識 しよ うとす る客体 的要件 か ら成 る。 客体的 要件 として の経済的実質性 は, 経済取 引 その ものの客観性, 合理 性, 正 常性 を その判 断 要素 として, 取 引の実質 に即 して課税関係 を認識す るこ とを意味 す る。 担税 能力性 とは, 課 税所 得 の認識 にあ たっ て, 課税適状 にあ る真 の負 担能力あ る 所得で あ るか否 か を判断 す る客体的 要件で あ り,判 断 要素 は課税適状 性 と益 金・損 金対応性 か ら成 る。 課税所 得は, 納 税者 に帰属 する真 に担税 力あ る所 得で な け れば な らず, そ れは,水平的公平 (horizontalequity ) と垂 直的公平 (verticalequity ) を 共 に満 たした真実公 正 な所 得で なければ な らない。 税務会 計認 識 は, 正 しい 益金認識 と損 金認識 を通 して, あ るべ き課税所得概 念 を明 らかに し, これを 実在的税務会計 にお いて実現 し よう とす る税務会計学 的基 礎思 考を もた らす もので あ る。 ト (4) 課税所得侵 食化現 象の認 識 税務会 計学的視 点 からみ ると,現行法人所 得税制 にお け る課税所 得計 算ぱ, 課税ベ ー スが著 し く侵食化 さ れてい ると捉 えるこ とがで き る。 課 税所 得変貌 現象論 の先駆的 研究 者であ る富岡教授 は, 課税所 得侵 食化 現象 の 発生 形態 な い しは発生要 因を次 の六点 に要約 してい る(9)。1) 商法・企業 の会 計 噴行 との調整の名 の もとに なされ た課税所得 の侵 食 化現象。2 ) 税制簡素化 の 名の もとになさ れた課税所得の侵 食化 現象。3) 企業 の自主 的経理 尊重 の名の もとになさ れた課税所 得の侵 食化 現象。4 ) 一 般 に公正 妥 当 と認 めら れる会計 処理の基準 の尊重 の名 の も とになさ れた課税所 得 の侵食化 現象。5 ) 租 税の公共政 策配慮 の名 の もとになさ れた課税所 得 の侵 食化 現象。6 ) 租税制 度上 の仕 組 みを建前 とす る名の もとになさ れた課税所 得 の侵食 化 現象。 こ れらの要因 が複雑 に絡 み合っ て,課税所 得の侵食化 現象 があ らわれ るが, 具体的 には, 商法上 の繰 延資産 に対 す る税法上 の早 期償 却の容 認, 営業権 の 自由償 却, 資産計上 すべ き前払 費用の現金基準 によ る損 金の許 容, 未収 収益
の現 金基 準 に よ る益 金 認 識 の 脱 落 , 減価 償 却 資 産 とし て計 上 す べ き重 要 資 産 の少 額 を理 由 とす る損 金 算 入, 重 要性 の 原則 適 用 に よ る資 産 非 計 上 , 資 産 評 価 基準 の恣 意 的 な変 更 , 租 税 特 別 措 置法 に よ る税 の軽 減 又 は優 遇 措 置 な ど を あ げ る こ とが で き る。 2 。租税特別 措置に よる課 税所得の 侵食化現象 巾 政策税 制 によ る特例措 置 課税所 得の侵蝕 化現象(erosionoftaxableincome )は,基 本税制 に も見 られるが, な によ り も租税特 別措 置 による税の軽減措 置及 び優遇措 置 として 表 れてい る。租税特別措 置法 は,その 第1 条で法 の趣 旨 を次 の よ うに述 べ る。 「この法律 は, 当分 の間, 所 得税,法 人税,相 続税, 贈 与税, 登録免許 税, 消 費税……を軽減 し, 若 し くは免除 し,若し くは還 付し, 又 はこ れらの税 に 係 る納税義務, 課 税標準若 し くは税額の計算, 申告書 の提 出期 限若 し くは徴 収 につ き…・・・特例 を設 け るこ とにつ いて規定す る もの とす る。」 あ る特定の経 済政策 や産業政 策 は, 税制上特例 を設 け るこ とによ り, その 経済的効果 を実現 す るこ とがで きるが,真実公正 な課税所 得概 念 からみ れば 課税ベ ー スは包括的 所得で例 外 の ない もので なければ ならず, 特 定の政 策 税 制 は課税 の公平 性 及び公正性 を犠牲 にし て初 めて達成 さ れ るこ とになる。 こ れらの政策税 制 は, 補助金 と異 な り,法 人 に とっ て も制約が ゆ るい もの にな り,政府 に とっ て も財政 法あ るいは国会で の予 算審議 に制約 さ れない隠 れた る補助金の性格 を有 す る。 アメリカで は,この税 の軽減 及び優遇措 置 は,財政 にお け る租税支 出(taxexpenditure) とし て論 じ ら れてお り,効果 のあ る もの もあ るが,「租税支 出 (taxexpenditures ) は, 租税 節約(補助金)が特 定 の行動 を誘引 す る価値 をはるかに超 え る とい う理由 か ら効果 がない」(10)1批判 さ れて い る。 租税特 別措 置に よる税の減 免及 び優遇措 置は, 負担 の公平 を 犠牲 にす るだ けで なく実 は,「 もっ と本源的 な租税 目的であ る『収 入調達 』を も犠牲 にして い るので あ る。 租税 の減 免 ない し繰 延べに よっ て租税収 入 を犠牲 にして, 一 種 の補助 金 ないし貸付金 に類 す る財政行為 を行っ てい るわけで あ る。 財政 の 『古典的 』理論で は, 必要 な収 入 は租税で調達 す るこ とに よっ て, 財政支 出 において政策 目的 のた め に補助 金等の支出 を行 うこ とになろ う。 ところ が, ここでは収入 を減少 させ るこ とで 給付を行っ て いるので あ る。」(11〉
租税特別措 置による課税所得の侵食化現象は,第一に,本来損金として認 識で きない ものを特例により損金算入するこ とによる課税所得の侵食化,第 二 に , 本来減 価償却で ない ものを減 価償 却の特例 として割 増償却及 び特別償 却を認めるこ とにより,正規の償却費を超 える損金を許容するこ とによる課 税所得の侵食化がある。 これらは,明らかに真実公正な課税所得概念からみ れば所得 として認識すべきものであ り,損金性が認められない ものである。 (2) 特例 措 置によ る免税所 得 特 例措 置 としての免税所 得 には, 技術 等海 外取 引に係 る所得の特別控 除, 新鉱 床探鉱 費又 は海外新鉱床探鉱 費 の特 別控 除, 収 用換地 等の所 得 の特別控 除, 医療法 人の所得 の特別控 除, 農業 生 産法 人の 免税対 象 飼育牛 の売却 に係 る所 得の特別控 除 などがあ る。 こ れらは, 特別控 除 とし て損金算入額 を拡大 す るこ とによ り所得の金額 を減少 させ, 結果 的 に それに見合 う所得 を免除し よう とす る もので あ る。 技術等 海外取 引 に係 る所 得の特別控 除 (措 法58 ) は, 自己 の研究成果 に基 づ き取 得 した工 業所有権又 は ノーハ ウ等 の譲 渡又 は提供, 技術指導 に係 る役 務 の提供等 の技術等海外取 引か ら生 じ る収入 金額 の一定割 合 を損金 として算 入 す る とい う ものであ る。損 金算入で きる金 額 は,工業 所 有権 等の技術等海 外取 引 によ る収 入金額の8 % と技術 役務 の海外取 引 によ る収 入金額の16 % と の合計 額 か, その事業 年度の所 得金額 の40 % のい ずれか低 い金額で あ る。 こ の こ とは, 本来 損金性の ない ものを技術等 海外取 引 を理由 に,所 得の40 %を 限度 として, 所 得免除しよ う とする もの てあ り, 公正 な租税 配分 を阻害す る 課税所得 の侵食化 とい える。 新鉱 床探鉱 費又 は海外新鉱 床探鉱 費の特 別控 除 (措法58 の3 ) は, その前 提 とし て探鉱 準備 金又 は海 外探鉱 準備 金 を有 す る法 人であ るこ とが必要であ る。こ れらの準 備金 は,新 しい埋蔵鉱 物 を採 掘 す るための支 出 に備 えるた め, 収入 金額の13 %又 は所得金額 の50 %を 限度 とし て積 立 てた もので, 積立時 に 損金 として算入 さ れる。 十 こ れ らの探 鉱 準備金を有す る法 人が, 新鉱床探 鉱 費の支 出又 は探鉱 用機械 設備の償 却を した場 合には, こ れらの支 出又 は償却 の損金額 の他に損金算入 額 を特 別控 除 として認めよ う とする もので あ る。 損 金に算入で きる金額は, 当該新鉱 床探鉱 費 の支 出額 と当該探鉱 用機 械 設備 の償 却額 との合 計額,探鉱
準 備 金 の取 崩 額,当 該 事業 年 度 の所 得 の金 額 の う ち,最 も少 な い 金 額 に よ る。 新 鉱 床 探 鉱 費 そ れ 自体 は, 損 金 匪 が 認 め ら れ る もの で あ るが , 準 備 金 と連動 し てお り, その取 崩 し に よ る益 金 を損 金 と相 殺 す る こ とに よ り, 益 金 算 入 と な る取 崩 益 を 所 得 か ら免 除 し よ う とす る もので あ る。 収 用 換 地 等 の 場 合 の所 得 の特 別控 除( 措 法65 の2), 特 定 土 地 区 画 整 理 事業 等 のた め に土 地 等 を譲 渡 し た 場合 の所 得 の 特 別 控 除( 措 法65 の3) ,特 定 住 宅 地 造成 事業 等 の た め に土 地 等 を譲 渡 した場 合 の 所 得 の 特 別 控 除( 措 法65 の4) , 農 地保 有 の 合 理 化 の た め に農 地 等 を譲 渡 し た 場 合 の 所 得 の特 別 控 除( 措 法65 の5) 等 も,本来 所 得 とし て 認識 す べ き もの を最 高5,000 万 円 を限 度 とし て損 金 に算 入 す るこ とに よ り所 得 を免 除 し よ う とす る もの で あ る。 医療 法 人 で, 社 会 保 険 診 療 につ き支 払 い を 受 け る金 額 が5,000 万 円以 下 の 場 合 には, 特 定 の 経 費率 に基 づ き損 金 算 入 す る こ とが で き る( 措 法67) 。2,500 万 円以 下 の 報 酬 金 額 につ い て は 経 費 率 が72 %,2,500 万 円 を超 え3,000 万 円 以 下 の金 額 につ い て は70 %,3,000 万 円 を超 え4,000 万 円 以 下 の 金 額 につ い て は62 %,4,000 万 円 を超 え5,000 万 円 以 下 の金 額 につ い て は57 % となっ て い る。 こ れらの 保 険 診 療 報 酬 に よ る所 得 は, 実際 の 損 金 額 を超 え る所 得 部 分 につ い て も経 費 率 適 用 に よ る損 金 額 が 認 め ら れ所 得 が 免 除 さ れ て い る。 農業 生 産 法 人 の 肉用 牛 の売 却 に係 る所 得 の 課 税 の特 例( 措 法67 の3) は, 肉 用牛 の売 却 の う ち に, 免 税 対 象 飼 育牛( 家 畜 改良 増 殖 法 に よ り登 録 さ れて い る肉 用 牛 又 は売 却 価 格 が100 万 円 未 満) が あ る と きは ,当 該 免 税対 象 飼 育 牛 の売 却 に よ る利 益 に相 当 す る金 額 を 当 該事 業 年 度 の 所 得 の 計 算 上 損 金 の 額 に 算 入す る とい う もので あ る。 こ れ は, 本来 損 金 どし て 認 識 さ れ えな い売 却 利 益 を損 金 とし て 算 入 す るこ とに よ り, 当該 利 益 に相 当 す る所 得 を免 除 し よ う とす る もの で あ り, 課 税所 得 の侵 食 化 現 象 は も とよ り, それ ば か りか, 益 金 及 び損 金 概 念 その もの を混 乱 さ せ るこ とに もな る。 (3) 特例措置による償却費の増大 特別償却及び割増償却ぱ,損金性のあ る普通減価償却 とは異なり,取得資 産の一定率又 は普通減価償却費の限度額に一定串 を掛 けた ものを特別減価償 却費又は割増減価償却費として損金算入がで きるとす るもので,課税の延期 による利用資金の増大 と合理化機械への投資刺激,投下資本の早期回収によ る投資リスクの減少などいくつかの利点があ る。しかし,「特別償却は,づ
的 に償 却 を早 めるとい う目的で は な く,特 定の産業 に対す る特定 の目的 を も っ た差 別的 な償 却制度で あ」(12)り,減 価償却 とい うより もむしろ無利 息貸付 と 同 様 な効果 があ る。 特別 償却の主 な もの として は, エ ネ ルギ ー需給構 造改革推進 設備等 の取 得 価額 の30 %相 当額 を特別 償却で き るエ ネ ルギ ー需給構 造改 革推 進設備 等の特 別償却( 措法42 の5) √取 得価額 の30 %相 当額 を特 別償却で きる電子機 器利 用 設備の特別 償却( 措 法42 の6), 同 じ く30%相 当額 を特別償却で きる事業 基盤 強化 設備 の特 別償却( 措 法42 の7), 一 定 の青 色申告法人が特定 の設備等 を取 得 した場合 の特 定設備等 の特別 償却( 措 法43), 特 定施設の取得価 額の13 %相 当額 を特別 償却で きる民 間事業 者 の能力の活用 に より整 備 され る特定 の施 設 の特 別償却( 措法43 の2), その他地震 防災対 策用資産の特別償 却( 措法44), 高度技術工業集積地域 にお ける高度技術工業 用設備 の特別償 却(措法44 の2), 産業構 造転換用 設備等の特 別償 却( 措法44 の4), 特 定余暇 利用施 設の特別 償 却( 措 法44 の5), 特定 電気通 信設 備の特別 償却( 措法44 の6), 商業 施 設等 の特 別償却( 措 法44 の8), 中小 企業者 の機械等 の特別 償却( 措法45 の2) 等 があ る。 割 増償却の主 な もの は, 普 通償 却限 度額の20 %相 当額 を5 年 間割 増償却 が で きる中小企業 構 造改善計画 を実施 す る商工 組合等 の構成員 の機械等 の割 増 償却( 措 法46), 障害者雇 用割合 が100 分 の50で あ る場合 その事業 年 度末 に有 す る一定 の機械 装置の普 通償 却限 度額 の24 %相 当額 の割増 償却 がで きる障害 者を雇用 す る場合の機械 等 の割増償 却( 措法46 の2), 普通 償却 限度額 の20 % 相 当額 を5 年 間割増償却 がで きる特 定対 内投 資事業 用資産 の割増償 却( 措 法46 の3) 及び農業 経営改 善計 画等 を実施 す る法人の機械等 の割増償却( 措 法46 の4), その他新 築貸家住 宅等 の割増 償却( 措法47) 等 があ る。 これらの うち, エネル ギー 需給構 造改 革推 進設備等の特別 償却,電 子機 器 利 用設備 の特別 償却, 事業 基盤 強化 設備 の特 別償却, 高度省 力化 投資促 進税 制, 製品輸入額 が増加 した場合 の製 造用機械 の割増償却 は, 税額控除 との選 択 が認 められ る。 損金算 入 は, 課税所 得 の減少 を もた らす が税 額控除 は税 そ の ものの減少 を もた らす もので あ る。 特別 償却及 び割 増償却 を損金 経理 に よっ て計上 す る と, 資産 の帳簿 価額 は その分減 少す るこ とになるが, か か る償却 が商法 の相 当の償却( 商34) に低 触す る虞 があ る。 そこで, 税法 は, 準 備金方式 による特別償却 の計上 も認 め
て い る(措 法52 の3 )。特 別 償 却 準 備 金 を積 立 て た 場合 に は,翌 事 業 年 度 か ら7 年 間 に わたっ て均 等 額 を 取 崩 し て益 金 に算 入 す るこ と に な る。 真実 公 正 な課 税所 得 概 念 を 理 念 とす る税 務会 計 学 か らみ れば , こ れ ら は 明 ら か に返 還 を条 件 とす る貸 付 金 で あ り, そ れ と同 じ効 果 を減 価 償 却 の特 例 と い う特 別 償 却 又 は割 増 償 却 に よ っ て 税収 を 犠牲 に し て 実現 し よ う とす る もの で あ る。 その 結果 , 設定 時 の 課 税 所 得 は極 端 に侵 食 さ れ る こ とに な る。 それ は また, 普 通 減 価 償 却 制 度 に も影 響 を与 え, 耐 用年 数 の短 縮 承 認 及 び増 加 償 却 の承 認 にお け る基 準 の緩 和 化 に 結 び つ き, 基 本 税 制 にお け る課 税 所 得 の 変 貌 現 象 とし て 現 れ る こ とに もな る。 3 。税務会 計処理に 埋没する 課税 所得の 侵食化 現象 田 当為 としての税務会計 認識 租税特別措 置によ る課税所 得の変貌 現象 は,是正 し なければ な らず, 例外 又 は特例 によらない,同一 所得 に対 して同一 課税 を実 現す る真の公平且 つ公 正 な課税制度を実現 しなけ れば ならない。 ただ, 租税 の公共政 策 配慮 の原則 か ら,特 に特例を必要 とす る経 済的事 情及 び経済政策 の も とに特定 の刺激 的 誘因効果 を期待 して成立 した特別 措 置で あ るか ら, それな りに一定 の意義 も 認 められる。 しかしなが ら, 課税 の公平 性 か らみ れば明 らか に特 定の企業又 は業 種 に租 税特 恵をあ た えるものであ るから, その経済的 効果 を 実証的 に検 討 し,一 定 期 間にお いて経済 効果 が認 め。られない もの又 は一 定の効果 を達 成 した ものに つ いては積極 的に廃 止し, 現在 の特 別措 置 を大 幅に減少 する方向 性で整理統 合 し,基本税 制の もとで 真実 公正 な課税所 得計 算制度 が形成 さ れる必要 があ る。十 税制調査会 の答申書 におい て も,租 税特別措 置は,「税負担 の公平 等の税制 の基本理念の例外措 置 とし て講 じ ら れて い る ものであ るこ と,また,長期化, 肥大化 しが ちな ものであ るこ とを忘 れて はな らない。 したがっ て, このよ う な租税特別措 置 につ いては, 今後 とも,政 策 目的・効果 につい て絶 えず吟 味 し,一層 の整 理合理化 を推 し進 めて い く必 要があ る。」(13)1述 べてい る。 租税特別措 置に よる準備 金,特別 償 却,割増償 却 など,一連 の特 例措 置 は, 不公平・不公正 な課税所 得 の侵食 を もた らす もので あ るが, 課税所 得変貌現 象 にお けるより重要 な問題 は, 税務 会計処 理 のメカニ ズ ムに埋没 さ れた変貌
現象を摘出 し それを是正 す るこ とが より重要で あ るとす る次 の提 言は傾聴 に 値 す る。「こ れら租 税特別措 置のよ うに極 めて多 くの問題 を含 みな が ら も正面 か ら堂々 と登 場 し, 多 くの国民的検 討の対象 とさ れて, その批判的 洗 礼の過 程 にさ らさ れて い る もので はな く, それぱ,企業 の公表 財 務 諸表 の うえに顕 現化 す るこ と もな く, 単に,税務会計処理 のメカニ ズ ムを通じ て問題点 が埋 没化 さ れてし まい,一 般 には√統計的 に も容易 には把 えら れ難 い側面 を有 す る点 に最 大 の特 徴が あ る事柄 につ いてであ る。 こ れらぱ,例 えば, 試験研究費,開発 費等 の繰延 資産 や無 形 固定資産た る 営業権 の自由償 却制度 の導入 にみら れるように, 課税所 得 の事 実上 の縮小化 を現象 せ しめ, し か も√ これらは,企業 経理の う ちに,潜 在化 せ しめられ, 一般 にぱ表現 せし め られず に,租 税負担 の実質上 の較 差 を形 成 せし め,この こ とが租 税 にお け る公平 原理の著 しい 『衰退現象 』 を もた らし てい るのであ る。」㈲ ■■ 課税所得 の変貌現 象 を是正す るた めには, 真実公 正 な課税所 得概 念 を定立 し, この当為 的 課税所得概 念か ら現 象 として現 れてい る課税 ベー スの侵 食化 を抑 制 し, 是正 す るこ とが必要で あ る。 真実公正 な課税所 得概 念 を定立す る た めには,課 税所得 の二つ の認識 要素た る益 金及 び損金 の正 しい 認識を出発 点 としなけ れば な らない。 税務会計 認識は, 課税所 得の積 極的 因 子た る益金 と消極 的因子 た る損 金 を正 し く認識 す るこ とによ り, 租税 実務上 真 実公正 な 課 税所 得概念 を定着 さ せ, もっ て課 税所 得の変貌現 象 を是正 し よう とす るも ので あ る。 益金 及び損金 とい う概 念 は,税務会計 固有 の概念で あ るが,会 計上 の収益 及 び費用・損失 とい う概 念 と密接 な関 連性 を有す る。 そこで, 収益 概念 と益 金概念 及び費用 ・損失概 念 と損金概念 の共 通性 と異質性 を明確 に しなければ ならない。 税務会 計認識 は, この両者 の共通性 と異質性 を識 別 し ながら,税 務会 計 固有 の益金 及 び損 金概念の特質 を明 らか にす る もので あ る。 この共通 性 と異質性 の識別 は, 税務会 計認識 の三重構 造を解 明す るこ とで あ り, それ は, 財務会計 認識 と商法会 計認識 と税務会計 認識 の重 複部分 と非重 複部分を 識別す るこ とで あ る。 : ただ し,税務 会計 認識 は, 現実の実務 認識 を解 明 しなが ら√あ るべ き認識 すな わち真実 な認識 を実現 す るた めの高度 な判断プ ロセ スを提 供 す る もので あ る。 従っ て, あ るべ き税務会計 認識 は,あ るべ き財務会 計 認識 とあ るべ き
商 法会 計 認 識 を 前 提 に成立 す る こ とにな る。 こ の 当 為 概 念 は, 通 常, 実 在 的 行 為 に対 して そ れ を 当為 理 論 に よっ て 修正 す る こ とを 意 味 す る。 その場 合 , 税務 会 計 認 識 の 三 重 構 造 にお い て, 明確 にさ れ たあ る べ き財 務 会 計 認 識 及 び 商 法会 計 認 識 は 税 務 会 計 の認 識 論 レベ ノVで の 当 為 概 念 で あ っ て , 財 務 会 計 及 び商法 会 計 にお け る 当為 概 念 その もの を 意味 す る もの で は な い。 (2) 税 務 会 計 学 にお け る真 実 性FASB に よ れば, 会 計I青報 は, 利 害 関係 者 の 意 思 決 定 (dicisionmaking) の た め に 有 用 な 情 報 (usefulinformation) で な け れ ば な ら ず, それは 信 頼 性(reliability)と目的適合性(relevance )に依存す る。七か し,「信頼ド4(reliability) は,必 ず し も確 実 性 (certainty )や正 確 性 (precision )を 意 味 す る もので は な い。」叩なぜ な ら, 信 頼性 は 意 思 決 定 目的 に依 存 す る か らで あ る とい う。 わが 国 「企 業 会 計 原則 」 の一 般 原則 にお け る真 実性 の 原 則 も絶 対 的 真 実 性 を意 味 す る もの で は な く, 相 対 的 真 実性 を表 す もの とさ れ る。 こ れは, 現 在 の会 計 が 換 価 価 格 を 評 価 基 礎 とせ ず, 取 得 原 価 を評 価 基 礎 とす る ところ か ら 期 間 配分 計 算 とな り, この 配 分 計 算 に は経 営 者 の将 来 に対 す る予 測 が混 入 す る とこ ろ か ら 「今 日の 財 務 諸 表 は主 観 的 な真 実 をあ ら わ し て い る もので あ る こ とを 意 味 す る。」06) 税務 会 計 学 上 の 真 実性 は, か か る主 観 的 真 実 を前 提 と しな が ら も, 取 引 事 実 の客 観 的 真 実性 を重 要視 し, 課 税 関 係 を認 識 す る に あ た っ て は さ らに取 引 の 実質 性 を も加 味 し な け れば な ら な い。 財 務 会 計 は , 個 別 企 業 の経 営 者 が 作 成 した 財 務 諸 表 を利 害 関 係 者 の 意思 決 定 に資 す るた め の 情 報 とし て提 供 す る こ とを 目 的 と す る もの で あ る の に対 し, 税務 会 計 は, 租 税 負 担 の公 正 な配 分 として の 課 税 所 得 を計 算 す る もので あ る。 した がっ て, 税 務 会 計 学 上 の 認 識 は, 取 引 事 実 の 真 実 性 , 実 質 性 を基 礎 とし て, 租 税 の 公 正 な 配分 た る課 税所 得 を正 確 に把 握 す るこ とを先 ず 基 本 とし な け れば な ら な い。 「企 業 会 計 原 則 」 は, 重 要 性 (materiality ) の 原 則 が 適 用 さ れた 場 合 には 簡 便 な処 理 が 可 能で あ り,その 簡 便 な処 理(convenientmethods )もまた正 規 の簿 記 の 原 則 に従 っ た もの と認 め ら れ る とす る。 こ こで 財 務 会 計 の 目的 が 「企業 の 財 務 内 容 を 明 らか に し, 企 業 の 状 況 に 関 す る利 害 関 係 者 の判 断 を誤 らせ な い よ う に す る こ とにあ る」(会 原 注解 [ 注1 ]) とす れば , 重 要性 の乏 し い もの につ い て, 厳 密 な会 計 処 理 に よ らな くて も明 瞭 性 を 損 な う もので は
ないこ とになる。 し かし, 税務会計学 的視点 に立 てば, 重要性の原則が 適用 さ れた簡便 な処 理に よるこ とが直 ちに正 規の簿 記 の原則 に従っ た もの として認 めら れるこ と には ならない。 ここで, 正 しい処理 とは,正 規の簿 記の 原則 に従 っ た処理で あ るか ら, 簡便 な処理 と正規 の簿 記 によ る処 理 とは, 自 ずか ら異 な る処 理 を もたらすこ とにな る。 税務会計上 の計 算簡便性 の原則 は, 単な る重 要性 に乏 しい とい う主観的判断 による もので は な く,「租税負担の公平性 お よび負 担能 力性 を著 しく阻害 しない限 りにお いて,‥・・‥計 算の経済性 を配慮 し, また は 計 算 の 弾力化 を配慮 し, 可 及的 に簡 便 化 を期 す るこ とを要請 す る原則で あ る。」(17) 「企業会 計原則」 は, 重要性 の原則 の適用例 として, 消耗品, 消耗工具 器 具備品 その他の貯蔵品 の うち, 重要性 の乏 しい もの につ いて, 買 入時又 は払 出時の 費用処 理, 重要性 の乏 しい経過 勘定項 目につ いて支出時処 理, 重要性 の乏 しい引 当金の非計上, 重要性 の乏 し い棚卸資産 の付随費用 につ いての費 用処理,分割返済 の定 めがあ る長期の 債権 又 は債務で1 年以内 に到来す る も ので 重要性 の乏しい もの は固定資 産又 は固定負債 として表示で きるこ とをあ げ る。 この重要性 の原則 が適用 さ れた財務 諸表 を前提 として, 課税所 得の調整計 算がお こな われ る と, 本来 課税所 得 とし て認識 しなけ ればな らない ものが企 業 経理の処理 の中に埋没 して し まい, それが税務会計 認識の認識対 象 にす ら ならな くなっ てし まう。 税務 会計 学的 に は, これらは企業 経理の 中 に潜在化 せし められた課税所 得の侵 食化 現 象 として捉 えられ る。 ところが, 税務上 か か る処 理が「一般 に公正 妥当 と認 められ る会計処理」 を理由 として容認さ れ てい る。 これは,真 実公正 な課税所 得概 念か らみて,明 らか に問題で あ り, 税務会 計処理 に埋没 さ れた課 税所 得の侵 食化 現象 とい える。 減価 償却資産で,使 用可 能期間 が1 年未満 又 は取得価 額が20 万円 未満で あ る資産 につ い ては, その事業 の用 に供 した 日の属す る事業 年度 にお いて損金 経理 を条件 に損金 に算入す るこ とがで きる(法令133)。 こ れは, 使 用可能期 間 と耐用年 数を混同 してお り, 使用 可能期 間 と金額基準 を同 格 に扱っ てい る が, 減価償 却の損金認識 からみ れば明 らか に両者 は異 な る。 税務上 の減価償 却 は, 取得価 額を耐用年 数 によっ て期間 配分 した当該事業年 度分 を損 金 とし て認識 す る もので あ り, 金額で 配分 の適正額 を認識す る もので は ない。確 か
に, 少 額 な 資産 の非 計 上 も計 算 簡 便 性 の 原 則 か ら 必要 な場 合 もあ り う るが , 少 額 多 量 資 産 又 は 少 額 重 要 資 産 に まで 拡 大 適 用 さ れ る もの で は な い。 同 様 の 処 理 が繰 延 資 産 に もみ ら れ る。 繰 延 資 産 で , その 支 出 額 が20 万 円 未 満 で あ る もの につ い て は, その支 出 す る 日 の 属 す る事 業 年 度 の 損 金 に算 入 で き る(法 令134 ) とさ れ る。 し か し, 本 来 税 務 上 の期 間 配分 の基 準 は,益 金 と の 対 応 関 係 の 中で , 損 金 とし て 認 識 さ れ る もので あ っ て, 金 額 に よっ て損 金 認 識 が お き る もので は な い。 こ の よ うな 損 金 経 理 が 是 認 さ れ るこ とに よ り, 課 税所 得 の侵 食 化 現 象 が 助 長 さ れ る。 / さ ら に, 繰 延 資 産 につ い て は, 商 法 との 調 整 か ら, 創業 費 , 建 設利 息, 開 業 費, 試 験 研 究 費, 開 発 費, 新 株 発 行 費, 社 債 発 行 費 , 社 債 発 行 差 金 の一 部 につ い て 自由 償 却 が 認 め ら れ て い る(法 令64 )。こ れ らは ,営 業 権 の 自由 償 却 と と もに, 課 税 所 得 が極 端 に侵 食 さ れ る要 因 を もた ら し て い る とい え る。 税 務 会 計 学 上 の認 識 論 か らい えば , 損 金 は 単 な る金 額 に よっ て 認 識 さ れ るべ き もので は な く, 損 金 認識 に あ た っ て よ り重 要 な の は質 的 認識 な ので あ る。 事 務 用 消 耗 品 , 作 業 用 消耗 品 , 包 装 材 料 , 広 告 宣伝 用 印 刷 物 , 見 本品 その 他 こ れ ら に準 ず る棚 卸資 産 の取 得 に要 し た 費 用 の 額 は, 継 続 し て その取 得 を し た 日 の属 す る事業 年 度 の損 金 の 額 に 算 入 して い る場 合 に は これ を認 め る(法 基 通2 −2-15 ) とす るが, こ れ ら は棚 卸 資 産 の 取 得 に 関 連 し で生 じ た支 出 額 に限 定 さ れ て い る もので あ る か ら, 基 本 的 に 棚 卸 資 産 で あ り, 販 売 時 に売 上 原 価 に含 め ら れ て損 金 認 識 さ れ る もので あ る。 継 続 適 用 して い る場 合 に は, 結 局期 間 を超 えて 平 準 化 さ れ る が, 単年 度 で の 真 実 公 正 な 課 税 所 得 を認 識 す る にあ た っ て は損 金 算 入額 を 増 加 さ せ る こ と に な り課 税 所 得 が 侵 食 さ れ る こ と にな る。 こ れ も損 金 認識 の 問 題 とな る。 未収 収 益 とな る貸 付 金, 預 金 , 貯 金 等 の 利 子 は, 発 生 基 準 に よ り益 金 認 識 が起 き る もの で あ るが, 継 続 処 理 を 条 件 し し て受 取 期 日に益 金 算 入 す る こ と も認 め ら れ る(法 基 通2 −1-24 )。こ れ は,益 金 とし て 既 に発 生 し て い る価値 増 加分 を 当 該 事業 年 度 の益 金 で は な く, 次 期 以 降 の事 業 年 度 の 益 金 とし て 認 識 す る こ とにな る。 こ れ も真 実 公 正 な 課 税 所 得 概 念 か らみ れば 課 税所 得 の侵 食 化 現 象 として 捉 え ら れ る。 同 じ よ う な例 は, 受 取 配 当 (法 基 通2 −1-28 ), 受 取 地 代 ,家 賃 等(法基 通2 −1-29 ), 工 業 所 有 権 又 は ノーハ ウ の使 用 料 (法 基 通2 −1-30) に も見 られ る。 逆 に, 前 払 費 用 は, 支 出 が 生 じ た 事 業 年 度 の 損 金 と して 認 識 す るこ とはで
きず,次期 の事業 年 度 にお ける損金 として認識 すべ き ものであ るが,「一年以 内 に提供 を受 け る役務 に係 る ものを支払っ た場合 にお い て√ その支 払った額 に相当 す る金額 を継続 して その支払っ た 日の属す る事業 年 度の損 金の額 に算 入してい る ときは, こ れを認 め る。」(法基 通2 −2-14 ) と, 一年以 内 の全 て の支出 金額 を当該 事業 年 度の損金 として計上で きる。 こ れは, 本来 当該事業 年 度の損 金で ない ものを当該事業年 度の損金 に算入 す る ものであ る。 なお, これらの処理 が会 計上 の重 要性 の原則の課税所 得計 算 への適用であ るとす るな らば, 前受収 益及 び未払 費用の簡便処理 の規定 がな いの は,真実 公正 な課税所得概 念 か らみれば,首尾一貫性 に欠け る認識で あ る。 重要性 に 乏しい とい う論理 を前提 に,資産 のみの非計上 により未収収益 は益 金 に算 入 せず, 前払費 用は損金 に算入 す るとい う処理は, 一貫性 に欠 け る と同時 に課 税所得 の不当 な侵 食化 を もた らす もの と言 えよう。 棚卸 資産の付随 費用 (引取運賃,荷役 費, 運送保険 料, 購入手 数料,関税 その他当該資産 の購 入のた め に要 した費用) は, 原則 として資産 を構成 す る 要素 とな る もので あ るが, 間接付随 費用 (買 入事務, 検収, 整理, 選別,手 入 れ, 移管 費,保 管費 )が購 入代価 の3 %以 内であ る場合 に は損 金算 入 とし て認め られ る(法基 通5 −1 −1, 法基通5 −1−3 )。取 得原価 とは,通常,購 入代価 に その棚 卸資産 を消費 し又 は販売 の用 に供 す るた め に直接 要 したすべ ての費用が含 まれ る ものであ るか ら, これを3 %以 内で あ れば重 要性 に乏し い とい う理由で, 一般管 理費又 は販売 費 として損金 算入 を認 め るこ とは課税 所 得算 定 にお いて必 ず し も合理性 があ る とはいえない。 会計 及 び監 査上 にお いて も, 何 が 重 要であ り何 が重 要で な い かの重要性 (materiality)の判断基 準 につ いては, 未だ明確 な もの はな い。す な わち,「重 要性 の決 定 に際 して, 質的要 因 と量的要因が二重 に影 響 を及ぼ すた め に, そ の概念 を画一的 に定 め るの は難 し く, また, 単一 の一 般 的 に認 めら れた量的 基準を確立 しよ う とす る試 みは無益で あ る。」(.8随 さ えい われ る。 この ように 画一的 に判 断 す るの が難 しい財務会 計上 の重要性 の原則 を税務上 安 易 に適 用 す るこ とに より, 本来 あ るべ き課税所得が不 当に侵 食さ れて い るこ とを指摘 しなけ ればな らない。問題 は,会計上 の重 要性 の原則 と融合 す るこ とにより, 企業 経理上潜 在化 さ れ, 課税所得 が変貌 す る現 象こ そ, 税務会 計上 課税所得 の侵 食化現 象 とし て捉 えなけ ればな らない。重 要な こ とぱ, 課 税所 得の認識 にあ たっ て,量 的 測定(quantitymeasurement )の前 に それが益 金 又 は損金
と し て 認 識 で き る か 否 か の 質 的 認 識(qualityrecognition ) を 問 題 に し な け れ ば な ら な い こ と で あ る 。 4. 真実公正 な課税 所得概 念の形成要因 たる 税務会計認 識 (1ト 税務会 計認識 の独自性 課税所得(taxableincome )の変貌化現象 を鮮明 にし,こ れを是正 す るこ とによりあ るべ き課税所 得概 念を定立 し, こ れを もって 存在 的税 務会計 を理 念的税務会 計 に近づ け る努力 をし なけ れば ならない。 税務会 計認 識 は,正 し い益金認識及 び損金 認識 を通 してあ るべ き課税所 得概 念 を定立 す るための適 正・妥当な高 度 な価値判 断プ ロセ スを提供 す る もので あ る。 課税所得 は, 真 に担税力あ る所 得で なけ れば ならず, それは真 実 公正 な所 得でなけ れば な らない。 真 実公正 な課税所得概 念を定立 す るこ とは, 税務 会 計の理念で あ る国家 と企業 との租税利害 の真 の調 和的 解決 を実現 し,「租 税を めぐる動的 社会秩 序 の形 成要 因」(19)を もたらすこ とにつ なが る。 真に担税力あ る真 実公正 な課税所 得 を測定 す るた めには, 課税所 得 を認 識 す るための税務会計 認識 を必要 とす る。 その ための認 識要件 として, ここで は不偏的中立 性,経 済的 実質性, 担税能力性 をあげ る。 これ らの 税務会計独 自の認識要件 を適用 す るこ とによ り,所得 その ものを正 し く捉 えよう とす る。 税務会計 ぱ, 財務会計 及 び商法会計 とい う制度会 計 と密接 な関係 を有 す るか ら, 税務会計 認識 もまた, 財務会計認識及 び商法会計認識 と密接 な関連 を有 す る。適正 な財務会計 認識及 び商法会計認識 が行 われたこ とを前提 として, 適正 な企業利 益 を もとに, 真 実公正 な課税所得 を導 出す るた め に税務会 計上 の独 自の認識 が適用さ れ る。 (2) 税務会 計認識 と税務会 計原則 課税所得 の計算体系 は, 財務会計 に依存して初 めて可能 となる計 算体系で あ り,これを税務会 計上 明 らか にした もの と七 て企業 自主計 算 の原則 があ る。 企業 自主計算 の原則 は, 基 本的 に, 課税所得 の計算 が企業 経 理を拘 束し ては ならないこ とを前提 とし, 課税所得の計 算にあ たっ て企業 の 自主経 理を尊重 す る税務会計 原則で あ る。 重 要性の原則 は, 財務会 計上 の原則で あ るか ら, それが会計上 適正 妥当 で あ る限 り税務会計 にお いて も許容 さ れ るべ きであ る が, 真実公正 な課税所得 概念 か らみれば, そこに質 的重要性 の認識 が必 要 と
な る。 従っ て, 真 実公正 な課税所得 を把握 す るた めには, 企業 経理 にお ける恣意 性 を排除 しな ければな らず, そのた めの税務会 計 原則 として計 算恣意排除 の 原則 があ る。こ れは,「納税者 間 にお け る課 税所 得 の計算 の公平 性を維持 す る た め, 財務会 計 にお いて認 め られてい る会 計 方法 の採 用,適 用, 変更等 に特 定 の制約 を加 えるこ とによっ て, 課税所 得 の概 念構 成お よび計 測 において企 業 の恣 意的 な会 計方法 の介入 を排 除 すべ きであ る とす る原則で あ る。」“ 従っ て, この計算恣 意排除の原則 は,会 計方法 選択適 用 によ る継 続性, 首尾一貫 性, 重 要性 判断抑 制が その構 成要 素 とな る個 別 原則 を導 くこ とにな る。 税務会 計原則 にお ける計 算簡便性 の原則 は,課 税所 得の計算 経済性及 び計 算弾力性 の見地 か ら, 税務 運営配慮 及 び納 税者 の計算 複雑性 からの解放 とい う税制 の簡 素化 か ら必要な原則であ るが,「租 税負 担 の公平性 お よび租税負担 能力性 の見地 からす る計算 の適正性 が確保 さ れ る限 りにおい て, 特定 の範 囲 と条件 の もとに,本来 の厳 密 な計算方法 に例 外 を設 け, 経済性 を配慮 した簡 便 な計 算方式 を選択的 に適 用す るこ とを許容 す る もの」(21)であっ て,租税負担 の公平 性 が損 なわれ る税制 の簡 素化 に よ る課 税所 得 の侵 食化現 象 まで も許容 す る もので はない。 租税 の特殊 な機 能 と七で経済政 策的役 割 と社会 政 策的役割 とが期待さ れて い る。 かか る公共政 策 が,課税所 得 に少 なからず影響 す るところか ら税務会 計上 公共政 策配慮 の原則があ る。 租税特 別措 置 によ る政 策税制 は, 税務会計 上 は この公共政策 配慮の原則 によ る もので あ るが,こ れは,「政策 目的の合理 性,政 策 手段の有効性, 附随 して生 ず る弊害 を超 越 す る政策効果 が期待 さ れ る合 理的 な論拠 の も とに介入 す るもの」(22)で あ るか ら,常 に弊害 と効果 を分析 しなが ら, 是正 していかな ければ な らない。 おわりに 現実 に計算 さ れる課税所得 は, 税法, 会計│貫行 及 び租 税政策 により形成さ れ, その時々 の経済状況 を反映 し た複雑 な ものであ り, 一義的 に定義す るこ とは困難 な概念であ る。 しかしなが ら, 税務会 計学 的 にぱ,あ るべ き課税所 得 とはいか な るもので あ るかを明確 にし, もっ て真 実公正 な課 税所 得概念 と は何 か を明 らかにす る必要があ る。 その意味で, 税務会 計公準 を前提 として 展 開さ れ る税務会計 原則 は,あ るべ き課税所 得 概念 を解明す る重 要な判断基
準 とな る。 税務 会 計 認 識 は, か か る 税 務 会 計 原 則 に 基 づ い て形 成 さ れ るあ るべ き 課 税 所 得概 念 を も とに, 具 体 的 に課 税 所 得 の構 成 因 子 た る各 事 業 年 度 にお け る益 金 及 び損 金 を正 し く確 定 す る こ と にあ る。 か か る理念 的 税 務 会 計 にお け る税 務 会 計 認 識 は, 現 行 税 制 に お け る課 税 所 得 侵 食 化 現 象 の 形 成 要 因 を 鮮 明 に す る こ とに よ り, あ るべ き税 務 会 計 思 考 を 実 在 的 税務 会 計 に お い て 実 現 す るた め に必要 とな る。 理 念 的 税 務 会 計 が , 実在 的 税 務 会 計 に イ ン パ ク ト を 与 え る こ とに よ り, 税 務会 計上 の 「公 正 処 理 基 準 」 の具 体 的 内 容 が 明 らか にさ れ, 税 制上 あ るべ き課 税 所 得 概 念 に基 づ く計 算 原 理 思 考 が 定 着 す る こ とに な る。 か か る税 務 会 計 学 の 分 析 視 点 に た っ た 課 税 所 得 認識 の積 み 重 ねは, 課 税 所 得 の真 実 な把 握 とい う税 制 上 の 意 義 は も ちろ んで あ るが , そ れに 加 え て広 義 の法 制 度 会 計 に対 して も重 要 な 意 義 を有 す る もの とな る。 (1994 よ20 ) (注)(1)WilliamA.Klein&JosephBankman,Federa □\ncomeTaxation (Boston:Little,BrownandCompany,1993),p.l9. (2)Jamesw.Pratt&WilliamN.Kulsrud,ed.,FederalTaxation (1993Edition ) (Boston:RichardD. ・Irwin,Inc.,1992),p.1-31∼1-32. (3) 中村 忠, 成松洋一 『企業 会計 と法 人税』 税務 経理協会,1992 年,104 頁。 (4) 金子宏 『租 税法 』弘文堂,1989 年,224 頁。 (5) 同 書,224 頁。 (6) 同 書,226 頁。 (7) 同 書,225 頁。 (8) 富 岡幸雄 『税務会 計学』森 山書店,1986 年,81 頁。 (9) 富 岡幸雄「税務会計 の動向 にみ る課税所得 の変貌化現 象 一法人所得 税制にお け るタック ス・ベ ー スの侵 食化現 象 の検 討−」,『会 計』(第105 巻第1 号)森山書店,1974 年,112 頁。 (10)Stanleys.Surrey&PaulR.McDaniel,TaxExpenditures (Cambridge,Massachusetts:HarvardUniversityPress,1985 ),p.83. (11) 和田 八束 『租税特 別措 置』有 斐閣,1992 年,9 頁。 (12) 同書,134 頁。 (13) 税制調 査会 「今後 の税 制 のあ り方 につ いての答申」1993 年,11 月19 日, 第二, 一,II 法 人所得課 税2(3)。 (14) 富岡幸雄, 前掲書,『税務会計 学 』,161 頁。
(15)FinancialAccountingStandardsBoard,StatementofFinancialAccountingConceptsNo2 −QualitativeCharacteristicsofAccountingInformation,May1980,paragraph72. (16) 飯 野利夫 『財務会 計論 』同 文館,1983 年,2-16 。 ㈲ 富岡幸雄, 前掲 書,r 税務会計 学』,94 頁。 ㈲VincentM.O'Reilly,MurrayB.Hirsch,PhilipL.Defliese,andHenryR.Jaenicke,Montgomery バsAuditing(NewYork:JohnWiley&SonsInc.,1990 ). 中央監 査法人訳 『モ ントゴメ リーの監 査論』 中央 経済社,1993 年,237 頁。 剛 吟 剛D 外 呼OMMy 角 ︰ψM ︰ ψ 富 岡 幸 雄 『税 務 会 計 論 講 義 』 中 央 経 済 社,1993 年,3 頁 。 富 岡 幸 雄 , 前 掲 書 ,『 税 務 会 計 学 』,86 頁 。 同 書 ,95 頁 。 同 書,98 頁 。