Title
高分子固体中及び液体中のマイクロ・ナノ孔の自己圧壊( 内
容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
宮田, 利彰
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 工博甲第519号
Issue Date
2017-03-25
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/56179
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。1 別紙様式第15号(論文内容の要旨及び論文審査の結果の要旨) 氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 宮田 利彰(岐阜県) 博 士(工学) 甲第519号 平成29年3月25日 物質工学専攻 高分子固体中及び液体中のマイクロ・ナノ孔の自己圧壊 (Self-collapsing of micro/nano pore in polymer solid and water) (主 査)教授 土田 亮 (副 査)教授 武野 明義 准教授 木村 浩 論 文 内 容 の 要 旨 ナノメートルオーダーの材料,それらを含む材料に関する研究開発が盛んであるが,自然に生じる材料 中の孔や泡もそのサイズが小さくなることで特異的な挙動を示す。孔が数十ナノメートル程度になると, その界面張力により自己圧縮力が働く。本論文では,高分子固体中のナノ孔と水中のマイクロ・ナノバブ ルに着目し,それぞれ自己圧縮力とその結果として生じる自己圧壊に関して検討した。また,高分子固体 中のナノ孔に関して,孔径を制御することで薬剤の担持が可能である点について検討し,水中のマイクロ・ ナノバブルに関しては自己圧壊を利用した高分子表面の改質に関して応用展開を行った。 まず高分子固体中のナノ孔についてである。高分子の特徴的な初期破壊現象のひとつであるクレーズは, 内部にナノメートルサイズのボイド(孔)が存在しており,その径を熱によって収縮できるため,含浸後 にボイドを閉じることで薬剤の担持が可能である。ここで,クレーズは,熱処理により緩和することが報 告されているが,これらは,クレーズ発生時の残留応力の解放により起こると説明されている。しかし, 本論文では,熱緩和では説明できない現象であることを示し,ボイド界面に生じる Laplace 圧に注目した。 Laplace 圧は径に反比例して大きくなりボイドを自己圧縮させる。この自己収縮については,熱緩和と区 別するためヒーリングと呼ぶ。種々の高分子の周期クレーズを熱処理によりヒーリングさせた。ポリプロ ピレン(PP),ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)において,クレーズのヒーリン グ開始温度は約 60ºC となった。それぞれガラス転移温度Tgが異なるがヒーリング開始温度は同じである。 また,熱処理により残留応力を取り去ったクレーズにおいても,ヒーリング開始温度は同じである。そこ で,分子鎖の絡み合い数が異なる PMMA を用意し,クレーズのヒーリングを観察したところ,分子量依存性 は見られなかった。以上のことから,このヒーリングは分子鎖の熱運動に起因する分子拡散ではなく, Laplace 圧が原因であることが分かる。 次に,水中のマイクロ・ナノバブルについて述べる。同じく界面を持つ液体中の気泡においても Laplace 圧は生じる。マイクロバブルの Laplace 圧は,気泡径の縮小と気体の溶解量の上昇に寄与するが,本論文 ではその収縮と圧壊の際に生じる表面改質力に着目した。内包気体に酸化力の強いオゾンを用い,ポリエ ステルと炭素繊維(CF)の改質を試みた。ポリエステルの改質において,マイクロバブル水の温度および pH の依存性を検討したところ,オゾンの酸化力による直接反応が優先していた。しかし,溶存オゾン濃度 と改質効率が一致しなかったため,溶存オゾン濃度を一定とし反応温度のみ変化させ,活性化エネルギー を推定した。その結果,ポリエステルとオゾンの反応が律速となっていることが分かった。以上の知見よ り,溶存オゾン濃度を高めると同時に,試料のみ局所的に温度を高めることで,反応律速の問題を解決し, 従来の数倍の速度で処理が可能になった。次に CF の表面改質について検討した。現在,求められる炭素繊 維強化プラスチック(CFRP)は,タクトタイムが短く出来る熱可塑性樹脂マトリックスである。特に PP が 期待されているが,CF との界面接着強度に劣る点が問題である。CF にオゾンマイクロバブル処理を行うこ とで界面せん断強度が向上した。しかし,内包気体を窒素に変更した結果,オゾンガスより高い効果があ った。窒素に酸化力は期待できない為,バブルの自己圧壊によるフリーラジカルの発生が原因である。マ イクロバブルによる表面改質は,気泡ガスの直接反応またはバブルの自己圧壊力により起こることが判明
2 した。これらの表面改質効果は,自己圧壊が試料表面近傍で生じることで必要であり,特にバブルが吸着 した状態が望ましい。そこで,高分子表面のバブルの吸着特性について検討するため,疎水傾向の PS と親 水傾向の PMMA をマイクロメートルサイズに相分離させた PS/PMMA フィルムを作成し,バブルの吸着をナノ グラムの感度を持つ水晶振動子マイクロバランス法にて観察した。その結果,疎水成分である PS 組成比が 上昇すると吸着速度が上昇することが分かった。また,組成比だけでなく,ドメインサイズにも影響を受 け,ドメインが小さくなると吸着に寄与しなくなった。また,吸着効率の高い疎水 PS 領域がガスの影響を 受け易く,表面に凹凸構造を有するフィルムが得られる。 論文審査結果の要旨 本論文は,固体/気体界面,液体/気体界面に働く Laplace 圧に注目し,材料の改質及びその応用に関 して検討を行ったものである。本論文で得られた知見は以下のとおりである。 (1)固体/気体界面に注目したクレーズのヒーリングでは,ガラス転移温度,融点の熱転移点及び分子量 から独立していることを明らかにし,熱運動以外の要因について示した。固体/気体界面の Laplace 圧に よってクレーズ中のボイドが圧壊していることを新たに示した。 (2)液体/気体界面に注目したマイクロバブルでは,ポリエステルと炭素繊維の表面改質に関して検討し た。内包気体がオゾンのみではなく,酸化力が無い窒素を内包気体にしても改質効果があることを解明し, Laplace 圧による改質の効果について新たに示した。 (3)マイクロバブルの処理に重要な処理物への吸着性について検討し,ミクロサイズの海島構造を持つフ ィルム表面への吸着性について示した。また,吸着性の違いとオゾンマイクロバブルによるエッジングを 利用した特異的な表面構造を持つフィルムの作成が可能であることを示した。 以上のことから,本論文では,高分子固体中のナノ孔と水中のマイクロ・ナノバブルの自己圧壊力を明 らかにすると同時に,その応用例としてマイクロバブルによる高分子表面改質について新たな手法を開発 している。特に,マイクロ・ナノバブルを用いた材料改質は同時期に研究されていた結果が論文として数 報発表されているのみであり,新規性が高いと言える。また,高分子表面へのマイクロバブルの吸着性に ついても検討しており,工業面だけでなく学術面でも意義・価値のあるものと判断される。 最終試験結果の要旨 以上のことから,審査委員全員一致で,本論文が岐阜大学大学院工学研究科の学位論文として相応しい ものであると判定した。 発表論文(論文名,著者,掲載誌名,巻号,ページ)
1. Keishi Naito, Akiyoshi Takeno, Ryota Morifuji, Toshiaki Miyata, Minoru Miwa, Shinya Takahashi, : Variation of periodic crazing based on polymer blends of an ultra-high and a low molecular weight poly(methyl methacrylate), Journal of Applied Polymer Science, First published: 22 September 2016, DOI: 10.1002/app.44332
2. 宮田利彰,武野明義,三島佑太,高橋紳矢: オゾンマイクロバブルによるポリエステル繊維の表面改質,高分子論文集,