Title
悪性脳腫瘍に対する光化学治療の基礎的研究 -- エキシマ・
ダイ・レーザーを用いて --( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
村川, 孝次
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1015号
Issue Date
1995-12-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15260
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 村 川 孝 次(大阪府)
博
士(医学)
乙第1015 号 平成 7 年12 月 20 日 学位規則第4条第2項該当悪性脳腫瘍lこ対する光化学治療の基礎的研究
一エキシマ・ダイ・レーザーを用いて-(主査)教授 山 田 弘 (副査)教授 森秀
樹
教授 佐 治 重 畳 論 文内
容 の 要旨
現在,神経膠芽腫などの悪性脳腫瘍に対しては未だ十分な治療法はなく,可及的な腫瘍摘出の後,放射線療法, 免疫化学療法などの補助治療が加えられ,治療成績の向上が計られている○これら悪性脳腫瘍では,手術後の局 所再発を抑えることにより,治療効果を上げることができると考えられるo光化学治療(Photodynamic therapy;PDT)はこの局所制御を目的とした補助療法であり,悪性腫瘍組織内に特異的に集積される光感受性 物質を前投与した後・適合する波長の光を照射することで光感受性物質を励起させ,分子レベルでの光化学反応 によって選択的な腫瘍組織を破壊する療法である。 光感受性物質の主流はへマトポルフィリン誘導体(HematoporphyrinDerivatives;HpD)であり,腫瘍親 和性が高い0光源は蛍光灯に始まり,現在のアルゴン・ダイ・レーザー(ArgonDyeLaser;ADL)へと発達 してきた。しかし,光感受性物質の励起効率や,光の組織透過性が十分でないという問題点があり,組織深遠度 の向上を目指して研究が進められている0本研究にて申請者は,PDT効果の向上を目的に光源として全く新し く開発された,組織深遠性に優れたエキシマ・ダイ・レーザー(ExcimerDyeLaser;EDL)を用いて,ラッ ト脳腫敷こ対してPDTを行い,その有効性をADLと比較検討し,考察を加えた。 EDLから照射されるレーザー光はパルス光で,その尖頭値は最高600kwであり,従来の連続光のADLの 約10鳩である。一方・パルス幅は8±2nsecで,平均出力として換算した場合ADLとはぼ同じ値であり,この 出力特性により局所組織での熱発生が少なく,組織への光深遠度の大きい照射が可能とされている。 対象および方法 1)よ几Uよけ0 細胞浮遊培養液(C6・T9・GH-1細胞)にHpDを希釈投与し,2時間混合培養した。洗浄後,マルチウェル プレートに分注し・光ファイバー(直径0・4〟m)をincubatorに導き,ウェル上からレーザー照射を行った。 HpD濃度(0・1・10,50〃g/nl)・レーザー出力(1パルスエネルギー0,1.0,2.5mJ)を条件設定し,経時 的に殺細胞効果をトリバンプルーを用いたDyeexclusionmethodにて比較検討した。 2)わu血0 ①c6移植脳腫瘍ラットモデル:Wistarラット脳にC6細胞を刺入移植して脳腫瘍モデルを作成した。移植第20 日目にHpDを経静脈投与し48時間後に関頭を行い・光ファイバーにて導出したレーザー光を,腫瘍接触照射し たoHpD濃度(2・5・10mg/kg),レーザー出力(1パルスエネルギー0・5,1.0,2.0,4.OmJ),繰り返し周波数 (30・40・60Hz),照射総エネルギー量(15,30,60J)を条件設定し照射乱病理組織学的に検討した。また,腫 瘍表面から腫瘍壊死を認めた範囲の最大径(深さと幅)を測定し腫瘍壊死深遠度として評価し比較した。 ②Ethylnitrosourea誘発脳腫瘍ラットモデル:N-ethyl-n-nitrosourea(ENU)水溶液を妊娠雌性Wistarラッ トに経静脈投与し・出生した仔ラット生後約6ケ月の異常身体症状が出現したものに,MagneticResonance 111Imaging(MRI)撮影を行い脳内腫瘍を確認した。HpDの経静脈投与48時間後にレーザー照射した。MRI画像 の情報を基に腫瘍に最も近い脳表面から接触照射した群と,半定位的に腫瘍のほぼ中心に光ファイバーを穿刺照 射した群を設け,照射48時間後に病理組織学的に検討した。また他の群では,照射後1週間毎にMRI撮影を行 い,腫瘍およびPDT施行部位を経過観察し,4週間後に病理組織学的に検討した。 結 果 1)玩=元けO EDLの殺細胞効果はHpD濃度,レーザー出力に相関した。HpD投与単独レーザー照射単独ではt殺細胞効 果を認めなかった。EDLの殺細胞効果はADLと同等であったが,iT"itTVでは培養細胞がmonolayerに存在 しているため,レーザー光の組織透過力は比較できない。 2)よ几Uわ0 ①C6移植脳腫瘍ラットにおいて,HpD投与単独群では変化は認められず,レーザー照射単独群では光ファイ バー先端接触部の軽度の機械的損傷のみであった。PDT群では,レーザー照射に一致した腫瘍壊死巣を認め,腫 瘍細胞の核の濃縮,細胞質膨化,腫瘍血管内の赤血球うっ清,さらに炎症細胞浸潤,赤血球の血管外漏出を認め た。 EDLの腫瘍壊死深遠度はADLに比べ有意に強力であり,ADLではHpDlOmg/kg・照射総エネルギー圭60J で深遠度は1・6mmであったが,EDLでは同条件で6.7nm,HpD2ng/kg・照射総エネルギー量15Jで3.4mmであっ た。 腫瘍壊死深遠度はHpD濃度,照射総エネルギー圭に相関した。周波数の遠いによる有意差は認められなかっ た。同じ照射総エネルギー圭では,1パルスエネルギーの小さい方が深遠度が大きい傾向にあり,レーザー照射 時乱熱作用,パルス衝撃作用などが光の組織透過性に関与していると考えられた。高HpD濃鼠高照射総エ ネルギー圭では腫瘍周囲の一部正常脳組織の障害を認め,PDTの際の虚血性変化の影響が示唆された。 ②ENU誘発脳腫瘍ラットにおいて,PDTによる腫瘍周囲の正常脳組織に対する障害はC6移植脳腫瘍ラット に比べ軽度で,より腫瘍を選択的に障害した。腫瘍血管構築の相違,=pDの腫瘍内取り込み濃度および腫瘍・正 常脳組織境界部の取り込み濃度の相違,浮腫の強さの相違などが関係していると考えられた○経時的MRI画像 では・PDT施行前に均一に造影された腫瘍部位は,PDT施行後には一時期広範囲に造影効果の増強を呈し,そ の後次第に造影効果の減弱を認めたoPDT施行後早期には腫瘍周辺の脳浮腫か増強し,また局所の脳血管の透 過性が冗進したためと考えられた。 EDLによるPDTは,より効果的,より選択的に腫瘍組織を障害し,悪性脳腫瘍に対する局所補助療法として 使用できる可能性が示唆された。