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レニン・アンジオテンシン系阻害薬とCurcuminによる肥満関連大腸発癌の抑制効果に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

レニン・アンジオテンシン系阻害薬とCurcuminによる肥満

関連大腸発癌の抑制効果に関する研究( 内容の要旨

(Summary) )

Author(s)

久保田, 全哉

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(医学) 甲第875号

Issue Date

2012-03-25

Type

博士論文

Version

none

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/43042

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 久 保 田 全 哉(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 875 号 平成 24 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当 レニン・アンジオテンシン系阻害薬と Curcumin による肥満関連大腸発癌の 抑制効果に関する研究

1) Renin-angiotensin system inhibitors suppress azoxymethane-induced colonic preneoplastic lesions in C57BL/KsJ-db/db obese mice 2) Preventive effects of curcumin on the development of

azoxymethane-induced colonic preneoplastic lesions in male C57BL/KsJ-db/db obese mice (主査)教授 湊 口 信 也 (副査)教授 原 明 教授 吉 田 和 弘 論 文 内 容 の 要 旨 【背景・目的】 大腸癌は癌死亡率の上位を占める悪性疾患であり,本邦においても著しい増加傾向を示している が,近年,食生活を含めた生活習慣の欧米化に伴う肥満が,大腸癌の重要な危険因子であることが 明らかになりつつある。肥満が大腸発癌を促進する機序としては,内臓脂肪の増加に伴う慢性炎症 状態の惹起(TNF-α,IL-6 等の炎症性 cytokine の上昇)や,adiponectin の低下・leptin の上昇 に代表される adipocytokine の不均衡,酸化ストレスの亢進に伴う DNA 損傷などが挙げられる。こ れらの報告は,薬剤や supplement を用いて肥満によって引き起こされた分子異常を改善・制御する ことが,肥満に関連した大腸発癌予防を実践していく上で,一つの有効な strategy となりうる可能 性を示唆するものである。

レニン・アンジオテンシン系(Renin-angiotensin system: RAS)は,主に血圧調節などの循環動 態を制御しているが,最近の研究で,肥満状態では RAS が亢進することで各種代謝異常が引き起こ されること,また RAS の活性化が腫瘍細胞の増殖に促進的に働くことが報告されている。本研究は, 高血圧治療薬として広く一般臨床に使用されている RAS 阻害薬と,ターメリックの黄色色素で,抗 炎症および抗酸化作用を有する Curcumin の,肥満関連マウス大腸発癌モデルにおける腫瘍抑制効果 とその機序について検討し,これらの薬剤や supplement を用いた肥満関連大腸発癌の化学予防の可 能性を明らかにすることを目的とする。 【方法】 肥満関連マウス大腸発癌モデルとして,肥満・糖尿病・高 leptin 血症を発症する C57BL/KsJ-db/db (db/db)マウス 5 週齢(雄)に大腸発癌物質である Azoxymethane(AOM)15mg/kg を週 1 回ずつ計 4 回腹腔内注射投与し,大腸前癌病変を誘発した。また RAS 阻害薬として,アンジオテンシン変換 酵素(ACE)阻害薬である Captopril とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)である Telmisartan を使用した。db/dbマウス(総数 68 匹)を 9 群に分け,第 1 群から第 4 群は AOM 非投与群,第 5 群 から第 9 群は AOM 投与群とした。AOM 投与後より,第 2 群と第 6 群には Captopril(5mg/kg/day), 第 3 群と第 7 群には Telmisartan(5mg/kg/day)を飲水投与し,また第 4 群と第 9 群には 2% Curcumin, 第 8 群には 0.2% Curcumin を混餌投与して,8 週間経過した時点で剖検を行った。第 1 群と第 5 群 は対照群とし,基礎食を全実験期間中投与した。剖検時,大腸前癌病変である aberrant crypt foci (ACF)とβ-catenin accumulated crypts(BCAC)の数を測定した。RAS 阻害薬投与群では,大腸 粘膜における TNF-α,IL-6 mRNA の発現レベルと,内臓脂肪における TNF-α,COX-2,IL-1β,IL-6, PAI-1 mRNA の発現レベルを real time RT-PCR 法で測定した。また,酸化ストレスによる DNA 損傷 マーカーの一つである尿中 8-OHdG について ELISA 法を用いて測定した。Curcumin 投与群では,リ ン酸化型 NF-κB の免疫染色を行い,大腸腺上皮細胞および間質細胞における同蛋白の発現について 比較・検討した。また大腸粘膜における TNF-α,IL-6,COX-2 mRNA の発現レベルを real time RT-PCR 法で測定するとともに,大腸粘膜における COX-2,AMPK,p-AMPK 蛋白発現について Western Blot

(3)

法を用いて比較・検討した。血清中の adiponectin,leptin 値は ELISA 法にて測定した。 【結果】

ACF,BCAC の発生は AOM 投与群においてのみ確認された。Captopril,Telmisartan,Curcumin 投 与群における ACF および BCAC の発生数は,非投与群と比較して有意に減少していた。対照群と比較 した大腸前癌病変の発生抑制率は,それぞれ Captopril 投与群:ACF 43%,BCAC 76%,Telmisartan 投与群:ACF 39%,BCAC 71%,0.2% Curcumin 投与群:ACF 27%,BCAC 56%,2% Curcumin 投与群:ACF 43%,BCAC 76%であった。RAS 阻害剤および Curcumin の投与による体重の変化は認められなかった。 Captopril,Telmisartan は,大腸粘膜における TNF-α mRNA,内臓脂肪における TNF-α,COX-2, IL-1β,IL-6,PAI-1 mRNA の発現を有意に抑制するとともに,尿中 8-OHdG を有意に減少させた。 Curcumin は,大腸粘膜における TNF-α,IL-6,COX-2 mRNA の発現を有意に抑制し,大腸粘膜にお ける COX-2 蛋白の発現を抑制するとともに,リン酸化型(活性化型)AMPK 蛋白の発現を濃度依存性 に増加させた。また Curcumin の投与によって,血清 adiponectin 値の増加および leptin 値の低下 とともに内臓脂肪量の低下が観察された。大腸粘膜におけるリン酸化型 NF-κB 免疫染色では, Curcumin 投与により大腸腺上皮細胞,間質細胞ともに NF-κB の発現低下を認めた。 【考察】 肥満・生活習慣病が大きな社会問題である現在,これらの病態を背景とした大腸癌の更なる増加 が危惧されている。肥満が大腸発癌を促進する機序として,蓄積・肥大化した脂肪細胞から産生さ れた TNF-αや IL-6 による全身の慢性炎症状態が,特に重要な役割を果たしていると考えられてい るが,本研究において,RAS 阻害薬(Captopril,Telmisartan)および Curcumin は,TNF-αを始め とする炎症 mediator を標的とし慢性炎症状態を改善することで,肥満関連大腸発癌を抑制すること が明らかになった。特に Curcumin については,本研究において大腸粘膜における NF-κB の発現を 有意に低下させたことが,その抗炎症作用をもたらした機序として考えられた。さらに,RAS 阻害 剤による酸化ストレスの軽減・除去と,Curcumin による adipocytokine の不均衡の是正作用も,大 腸前癌病変の抑制に関与している可能性が示唆された。また adiponectin は,細胞・生体のエネル ギーバランスを制御する AMPK を活性化するが,最近の研究で AMPK は直接腫瘍細胞の増殖を抑制す る tumor suppressor としての働きを持つことが報告されていることより,本研究において Curcumin が adiponectin や AMPK の活性を制御したことは,同剤の肥満関連発癌抑制効果を説明する上で大変 興味深いものと考えられた。

【結論】

我々は今回の研究で,RAS 阻害薬および Curcumin が,特に慢性炎症状態や adipocytokine の不均 衡を改善することで,マウスの肥満関連大腸発癌を抑制することを明らかにしたが,これらの研究 成果は,肥満に関連した分子異常を標的とすることが,新たな大腸発癌予防薬(法)の開発に繋が る可能性を世界に先駆けて明らかにしたものである。栄養・運動療法や,薬剤・supplement の投与 等による積極的介入に基づく化学発癌予防は,肥満関連大腸発癌予防の切り札として大いに期待さ れているが,今回の研究結果は,すでに一般臨床で使用されている RAS 阻害薬や,supplement とし て広く用いられている Curcumin が,肥満者の大腸発癌予防において有用である可能性を強く示唆す るものであり,増加傾向にある肥満に関連した大腸癌に対する化学予防を含めた包括的な対策を構 築する上で,非常に意義深い研究結果であると考えられた。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 久保田全哉はdb/dbマウスを用い azoxymethane 大腸発癌に対する化学予防の可能性につい て,レニン-アンジオテンシン阻害薬,クルクミンという二つの異なった方向から検討し,何れも 有効であることを証明した。近年,肥満関連発癌の代表として大腸がんが注目され,予防介入の 確立が急務であり,この視点から今回の研究成果は消化器病学,臨床腫瘍学の発展に少なからず寄 与するものと考える。 [主論文公表誌]

1) Masaya Kubota, Masahito Shimizu, Hiroyasu Sakai, Yoichi Yasuda, Tomohiko Ohno, Takahiro Kochi, Hisashi Tsurumi, Takuji Tanaka, and Hisataka Moriwaki:Renin-angiotensin system inhibitors suppress azoxymethane-induced colonic preneoplastic lesions in

C57BL/KsJ-db/db obese mice. Biochemical and Biophysical Research Communications 410, 108-113 (2011)

2) Masaya Kubota, Masahito Shimizu, Hiroyasu Sakai, Yoichi Yasuda, Daishi Terakura, Atsushi Baba, Tomohiko Ohno, Hisashi Tsurumi, Takuji Tanaka, and Hisataka Moriwaki:Preventive effects of curcumin on the development of azoxymethane-induced colonic preneoplastic lesions in male C57BL/KsJ-db/db obese mice. Nutrition and Cancer,1-8 (2011)

参照

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