所属 総合理工学研究科 物理電子システム創造専攻 博士課程1 年 留学先 スウェーデン
留学期間 2015 年 12 月 4 日~2015 年 12 月 12 日
1.派遣概要
本派遣は、ノーベル財団協力の下、スウェーデン青年科学者連盟が毎年ノーベル賞週間に合わせてストック ホルムで開催する「ストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS; Stockholm International Youth Science Seminar)」に、毎年 2 名の学生を派遣している国際科学技術財団へ応募したことから実現した。 【ストックホルム国際青年科学セミナーとは】 世界各国から選抜された若手研究者 25 名が集い、約 1 週間の日程でノーベル賞授賞式、ノーベル賞受賞者に よる講演などの諸行事に参加し、また、自身の研究発表等を行う。 【応募条件(2015 年度)】 日本国際賞の領域である「物理、化学、工学」領域、または「生命、農学、医学」領域を研究または専攻 していること 18 歳から 24 歳(2015 年 12 月 3 日時点)の日本国籍の学生であること 科学技術への興味と探究心のあること 英語力を駆使して十分なコミュニケーションがとれること (他国からの参加者と科学技術分野における話題について討議するに足る英語力を備えていること) 異文化への関心と社交性のあること セミナーに参加できる健康状態であること 【選考スケジュール(2015 年度)】 募集期間: 5/22~8/28 推薦状・小論文提出: 8/28 書類選考結果通知: 9/11 面接: 9/17 合否発表: 9/29 【滞在期間・場所(2015 年度)】 (期間)2015 年 12 月 4 日(火)~12 月 12 日(金)(9 日間)
(滞在場所)STF af Chapman & Skeppsholmen, Flaggmansvägen 8 111 49 Stockholm 上述のとおりSIYSS に参加した。SIYSS の日程詳細を付録1に示す。 【国際科学技術財団からの補助(2015 年度)】 渡航前打合せ費用(過年度参加者と財団で打合せの為の交通費と旅費) 出発・帰国時の国内交通費と旅費 帰国報告会費用(帰国直後財団で開催する報告会への交通費と旅費) 成田‐ストックホルム間の往復航空運賃 現地でのSIYSS 行事参加費用(食事・宿泊等) 財団規定に基づく日当(出発日~帰国日迄の期間) 参考:国際科学技術財団HP,http://www.japanprize.jp/index.html
2.プログラム内容
ストックホルム国際青年科学セミナーでの主なプログラムについて簡単に紹介する。 【International dinner】 世界各国から集まる学生が自らの国々の文化などを紹介した。日本からは「空手」を紹介した。 【Study visit】 Karolinska Institutet,Ericson,Skansen などに訪れ、今年のノーベル賞受賞関連研究のレクチャーを受 けたり、最先端技術紹介やスウェーデンの歴史紹介を受けたりした。【Nobel foundation visit】
ノーベル財団を訪れ、ノーベル賞の成り立ちを伺ったり、生理・医学賞の記者会見にも参加したりした。
The Japan Prize Foundation The Japan Prize Foundation
The Japan Prize Foundation The Japan Prize Foundation
【Ethics seminar】 人工知能と環境をテーマとした倫理的課題について、4 人 1 組となってグループで議論を重ねノーベル博物 館にて発表を行い、グループの垣根を越えた議論を展開した。 【Nobel lectures】 ノーベル賞受賞者が、それぞれの研究に関して一般向けに行う講演会に参加した。 【SIYSS seminar】 現地ストックホルムの高校生 1000 名程度に対して、自らの研究についてポスターおよびオーラルプレゼン テーションを行った。
The Japan Prize Foundation
The Japan Prize Foundation The Japan Prize Foundation
【Nobel Reception/Prize Award Ceremony/Banquet】 ノーベル賞授賞式関連のイベントに全て参加することができ、受賞者を含め、数多くの人々と親交を深めた。
3.所感
世界各国から 25 名の若手研究者が集うストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS)に参加した。非常 に短期間ではあったが、多様なバックグラウンドを持つ学生と過ごせた9 日間はとても刺激的であり、多くの ことを学ぶことが出来た。SIYSS 参加にあたり、我々を派遣してくださった国際科学技術財団の皆様や SIYSS を運営したUnga Forskare の学生に心から感謝を申し上げたい。感謝の意を込めて、以下に、参加動機および 濃密な9 日間で学んだこと、そして本セミナーの経験を活かした今後の展望について述べる。 【参加動機】 ある英語科の教員との出会いをきっかけに、自らの世界が広がった経験から、自らの経験を全て還元して幅 広い選択肢を学生に提供できる教員になることを目指していた。大きな衝撃を受け、目指す職種が変わったの は、東工大学部 4 年次にアジア最貧国の 1 つ、バングラデシュの水道公社にて 3 ヶ月間のインターンを実施し たときである。日本の代表として派遣されたのだから、何か良くして帰ろうと意気込んでいたのだが、次第に 何もできないことに気が付き始めた。様々な問題の根は深く、私に何か 1 つでも強みが必要だと感じた。すな わち、ただ単に選択肢を示すだけではなく、自らの考えを基に未来を描き、それを広く世界に浸透させ還元し ていく力が必要だと感じた。この気付きが、「科学技術」と「教育」を軸に仕事をしようと志すきっかけとなっ た。そのような私がSIYSS に応募した理由は、科学技術に関する多くの刺激を受けることはもちろん、教育に 携わることを念頭において、他国の優秀な学生と濃密な時間を過ごすことにより考え方の幅を広げ、また、コ ーディネータとして参加するスウェーデンの学生の組織運営方法やモチベーションを学ぶためであった。 【若手研究者との交流から】 参加当時23 歳の私は、25 名の参加者の中で最年長であった。参加者の大半が 18,19 歳であるにも関わらず、 国際的な教養に非常に長け、自らの意見をしっかりと持ち発信できる力には驚嘆し、彼らがどのように自らの 意見を積み上げてきたのかを考えさせられた。それを感じ取ったのは SIYSS イベントの 1 つである Ethics Seminar だ。非常に難しい問題であり、また時間の制約もあったため多少意見が荒削りではあったが、一人ひ とりが自らのバックグラウンドや知識から、緻密に意見を構築しようとする姿勢にとても驚かされた。それら は、常日頃から様々な出来事に対してアンテナを張りながら自分の中で咀嚼している結果であるように感じた。 世界の潮流に関心を持とうとしていたのにも関わらず、私の興味関心の範囲はまだ非常に狭く、より広範な視 野を持つ必要があることを実感した。【ノーベル賞関連イベントから】 SIYSS では非常に光栄なことにノーベルレセプション、授賞式、晩餐会などノーベル賞関連の多くの行事に 参加することが出来た。その中でもノーベル賞受賞者の講演がとても刺激的であった。どのような経緯を辿っ て、どのような研究をしてノーベル賞受賞に至ったのか、時にユーモアを交えながら分かりやすくお話されて いた。ここでは、個人的に非常に印象的であった、文学賞を受賞したSvetlana Alexievich 氏の講演について 取り上げたい。個人の感情を描くことにこだわった彼女は、様々な場所を歩き渡り、少しずつ取材を重ねるこ とで多様な声を集めたそのエピソードを語ってくれた。このことは、途方もないステップを重ねた果てにこそ、 素晴らしい価値を生み出せるという気付きを与えてくれた。全ての受賞者に共通し、そして研究者として我々 も当たり前としなければならない素養かも知れないが、小さなステップを確実に積み重ねていくことの重要性 を再認識させられた講演だった。前述したとおり視野が狭いため、このような機会がなければ文学賞に関して 見向きもしなかったかもしれない。当たり前のことではあるが非常に重要なことを気付くことができたのは、 本当に幸運だったと感じる。 日本大使館主催のレセプションに参加した際には、ノーベル生理・医学賞を受賞された大村智先生とお話す る機会があった。前述のような経験から、新興国での教育に興味があった私は、アフリカなど多くの国々のた めに研究なさっている大村先生に、海外の人々の重きを置いたプロジェクトを実行するために最も重要なこと は何か尋ねた。彼は「自分1人じゃだめ。周りの人との縁やつながりが大事」と仰っていた。人とのつながり こそが成果を育む土台であり、人とのつながりに生かされていることを強調されていて非常に印象に残った。 この大村先生とのお話から、1人で実行できることはあまりにも小さく、大きな目標に対してどのようなポジ ションから関わっていくべきなのか明確にする必要があることを感じた。そして、この気付きはどのポジショ ンから(研究やガバナンスなど)大きな目標である新興国での教育に携わっていけばよいのか考え始めるきっ かけとなり、自らのキャリアを考えていく上で大きな指標となった。 【最後に】 ノーベル賞受賞者や世界各国から集まった若手研究者との会話から多くの刺激を得て、また多くのことを学 ぶことが出来た。さらに、ノーベル賞関連の行事に参加させていただいたときには非常に感動し、特に授賞式 にて大村先生・梶田先生が国王から表彰されるときは鳥肌が立ち同じ日本人として誇りに思うばかりだった。 このような素晴らしい機会を頂けたことに感謝し、また学んだことを活かしながら目標に向けて一歩一歩積み 上げて行きたい。 世界各国から25 名の学生と、9 日間ホストしてくれた現地大学生とともに