消費者意識における食の安全・安心に関する一考察
著者
小林 洋介
著者別名
KOBAYASHI Yosuke
雑誌名
東洋大学大学院紀要
巻
55
ページ
71-88
発行年
2019-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00010578/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja― 71 ― 論文要旨 今日、消費者は食品を扱う企業に対し、食品への安全管理への徹底の要請が高まってい る。例えば、HACCPの制度化がある。企業は安全施策を行うだけでなく、安全施策を消費 者に伝え、安心感を与え、信頼を得て、ブランドイメージを高める必要がある。そのため に、消費者意識における安全や安心の伝達方法について研究することは意義がある。本研究 の目的は高橋(2012)や日経BPマーケティング社(2015)のアンケートデータを基に分析 し、考察することで、消費者が企業の安全施策の伝わる経路や方法を整理することで、効果 的な伝達の方法を明確にすることである。 キーワード:食の安全、食の安心、信頼、消費者、安全施策 目次 1.はじめに 2.先行研究について 3.検証方法について 4.食の安全から安心の変化過程の検証について 5.食の安全・安心と消費者の行動に関与に関する分析 6.まとめ
1.はじめに
今日、消費者の安全・安心の関心は高まっている。東京都消費者月間実行委員会(2014) が調査した結果1でも、食の安全に関心があると答えた割合は98.1%にもなっている。そうした中で食を扱う企業に対し厚生労働省は食品衛生法にHACCP2(Hazard Analysis
消費者意識における食の安全・安心に関する一考察
経営学研究科経営学専攻博士後期課程1年
― 72 ―
and Critical Control Point: ハサップ)の制度化を追記するなど、食品の安全に対する状況 が一層、厳しくなっている。企業は安全性を高めるだけでなく、自社が行っている安全施策 を訴え、消費者に安心感を与えることで信頼を勝ち取り、ブランド力強化を図ろうとしてい る。 しかしながら、企業の安全施策に対し消費者が理解しているかについて疑問がもたれる。 また、食のリスクに対し、消費者と食品安全の専門家の認識のずれが内閣府食品安全委員会 事務局(2015)の調査結果で明らかになった。さらに、安全性の担保に必要な科学技術や政 府に対し、福島の原発事故を期にさらに信頼性を欠くことになっている。企業と消費者の間 には、安全、安心の考えや概念に隔たりがあり、企業の安全性を担保する行政に対しての消 費者の信頼は薄れている。 このような中で、企業が消費者に対し、安全を担保し、信頼を得て、消費者に安心感を得 てもらう方法の研究は意義がある。 本研究の目的は食の安全と安心の定義を明確にし、企業から消費者への安全施策の伝達か ら消費者が安心するまでの過程の整理を行い、企業の安全に対する消費者への訴求効果の高 い方法を明確にすることである。
2.先行研究について
企業の食への安全性の伝達方法として、「食の安全・安心」と並列に用いることがある。 消費者も含め、「食の安全・安心」は一般化している。しかし、「食の安全」と「食の安心」 とは、同一の概念ではなく、違いがあるにもかかわらず、明確な概念がなく、ほとんど研究 や議論もなされず、様々な考えや理解がある状況である。 食の安全と安心の定義について、厚生労働省(2005)で「「安全」は理性で、「安心」は感 性で判断するものと言われているが、全社は数値などの理解に基づき、後者は信頼にもとづ くという違いがある。」と述べている。これを受けて、(高橋、前掲書、p.71)は「食の安全」 については科学的な根拠に基づく客観的な概念であり、「食の安心」については個人の心理 的な判断で主観的な概念である。安全と安心は別々の問題であり、「食の安全」を「食の安 心」に変換するには「信頼」が必要であると定義している。また、安全は客観的な問題、安 心は主観的な問題であり、安心は客観的なリスクの主観的な評価であると小山(2018)は述 べている。このことは、(高橋、前掲書、p.71)の主張と一致している。そこで、本研究は 「安心」=「安全」×「信頼」という定義に基づいて検証していく。 安全や安心の研究について心理的に安全や安心について述べ、人間の基本的欲求を5段階 で表現し、最も低級な人間の欲求として生理的欲求し、それを満たすことで安全欲求が出現 すると述べている(Maslow, 1954)。 また、村山ら(2009)は情報セキュリティ分野でトラスト(信用)の感情としての安心に― 73 ― ついてのアンケートによって、研究を行っている。山岸(1998)は、信頼に対する概念とし て「安心」を定義し、「自分は搾取する要因が相手に存在していない(社会的不確実性が存 在しない)と判断から生じる相手の意図に期待する期待」を「安心」であるとし、安心に対 し、信頼が関係していると言える。一方、「安心」という概念は、あまりにも日常的な用語 であることから、かなり曖昧に用いられていると述べており、「安心」という概念の明確な 認識が薄いことを示唆している(吉川ら、2003)。 経営学においての安心の研究は確認されておらず、安心に関係する信頼の研究は心理学の 観点からトラスト(信用)を個人間においてであると定義し、その後、他者に期待すること をトラスト(信用)におけるコンフィデンス(信頼)として紹介している(Deutsch 1960、1973)。また、川崎(2009、2011)は組織間の信頼のメカニズム研究を行っている。 しかし、組織に対する消費者の信頼に関する研究は少なく、さらに企業の安全を消費者の 安心に変換する経路の研究は未だ、確認できないことから、本研究は意義があると考える。
3.検証方法について
検証方法としては(高橋、前掲書、p.71)のアンケート結果を基に企業の安全施策の情報 開示や発信を通して消費者が安心を得るまでの過程を作成し、検証することで、食の安全か ら安心へ変化課程を明確にする。 また、(日経BPマーケティング社、前掲書、p.71)が実施した食の安全・安心ブランド調 査結果は個別企業に対する消費者のアンケートである。その結果を基に食の安全や安心の調 査結果とその他の項目の相関を確認することで、消費者が企業に対し食の安全や安心に至る 要素を探っていく。さらに店舗を持っている外食企業と持っていない製造企業の結果を比較 することで、企業が発信する情報の違いによる食の安全や安心に至る要素に違いを探ってい く。具体的には食の安全や安心と企業の認知度、利用度、利用意思度、推薦意向度、企業イ メージや味が良いなど具体的な印象との関係を整理し、相関係数を導き出し分析し、食の安 全や安心に関与する要素を導き出すことにする。 企業から消費者への安全施策の伝達から消費者が安心するまでの過程を図解化し、食の安 全や安心に関与する要素、伝達方法などを検証していく。4.食の安全から安心の変化過程の検証について
「安心」の定義は「安心」=「安全」×「信頼」である(高橋、前掲書、p.71)。その定義 を企業の安全活動や広報活動を考慮して、食の安全から安心の変化過程(図1)を作成し た。その際に「表9 製造および外食企業における消費者の安全に関する情報獲得経路アン ケート結果」や「表1 食品の安全と安心の責任の所在先について」を参考にした。 図1については、企業の安全活動を消費者の安心に至る経路を示しており、食の安心の研― 74 ― 究において、企業の安全活動を消費者の安心に至る経路を示したものを先行論文等で確認で きなかった。 図1を説明すると企業の「食の安全」の活動としては、安全施策(HACCP2や衛生検査体 制、品質管理や品質保証体制など)とその他の活動(商品開発や生産管理、販売促進など製 品の安全性を高める活動以外の活動)とそれを伝達する情報開示活動と食品事故などの安全 性の実績に分かれる。 さらに企業の安全性活動を行政が監視している。消費者は企業の安全性等の活動を企業も しくはマスコミが発信し、消費者が情報を受け取り理解した上で信頼性が生まれ、「食の安 心」に変化する。また、企業の「安全性実績」は、企業が食中毒などの食品事故を起こし、 消費者に伝わると「信頼」が失われ、「食の安心」は失われる。 この食の安全から安心への変化過程を基に、企業の「食の安全」が消費者の「食の安心」 に変化する経路を明確にしていく。 (同上、p.71)のアンケート結果より食品の安全と安心の定義について、4割以上があいま いであり、検証する上で、バイアスになる可能性が示唆できる。 次に、食品の「安全」や「安心」の確保についての責任の所在を検証するために(同上、 p.71)のアンケート項目を図1に基づいて図式化した(図2)。 図2もまた、図1同様に先行研究等で明確な責任の所在の図式化を確認できておらず、図式 化することに意義はある。食品の「安全」の確保についての責任の所在は「企業」「行政」 「国会(政治家)」「研究者等」と考える。理由としては「企業」が安全性を管理し、「政治 家」が「行政」が行う監視体制を法令化、「行政」がそれに基づき監視し、「研究者」が科学 的に証明する。 4 さらに企業の安全性活動を行政が監視している。消費者は企業の安全性等の活動を企業 もしくはマスコミが発信し、消費者が情報を受け取り理解した上で信頼性が生まれ、「食の 安心」に変化する。また、企業の「安全性実績」は、企業が食中毒などの食品事故を起こし、 消費者に伝わると「信頼」が失われ、「食の安心」は失われる。 この食の安全から安心への変化過程を基に、企業の「食の安全」が消費者の「食の安心」 に変化する経路を明確にしていく。 出所:高橋(2012)の概念を基に著者がモデル化 図1 食の安全から安心への変化過程 (同上、p.1)のアンケート結果より食品の安全と安心の定義について、4 割以上があい まいであり、検証する上で、バイアスになる可能性が示唆できる。 次に、食品の「安全」や「安心」の確保についての責任の所在を検証するために(同上、 p.1)のアンケート項目を図 1 に基づいて図式化した(図 2)。 図2 もまた、図 1 同様に先行研究等で明確な責任の所在の図式化を確認できておらず、 図式化することに意義はある。食品の「安全」の確保についての責任の所在は「企業」「行 政」「国会(政治家)」「研究者等」と考える。理由としては「企業」が安全性を管理し、「政 治家」が「行政」が行う監視体制を法令化、「行政」がそれに基づき監視し、「研究者」が科 学的に証明する。 食品の「安心」の確保についての責任の所在は「企業」「消費者」「マスコミ」「市民団体」 である。理由としては「企業」が情報を開示、発信し、その情報を受けて「マスコミ」が情 報発信をする。また、「市民団体」は「企業」や「マスコミ」の情報などを基に情報発信等 の活動を行う。その情報を基に企業や製品の信頼に値するかの判断をするのが「消費者」で ある。
― 75 ― 食品の「安心」の確保についての責任の所在は「企業」「消費者」「マスコミ」「市民団体」 である。理由としては「企業」が情報を開示、発信し、その情報を受けて「マスコミ」が情 報発信をする。また、「市民団体」は「企業」や「マスコミ」の情報などを基に情報発信等 の活動を行う。その情報を基に企業や製品の信頼に値するかの判断をするのが「消費者」で ある。 次に(同上、p.71)の行ったアンケート結果と図2に示した責任先を加え、整理した結果 を表1に示す。具体的には図2で示した食品の「安全」と「安心」の責任があると思われる所 在先に「○」を示し、責任の有無を明確にした。アンケート結果での「安全」の割合と「安 心」の割合を記載し、差異を算出した。そのことで「安全」と「安心」の区別がつかない消 費者のバイアスを取り除くことができると考えた。 その差異が正であれば、アンケート結果も所在先が「安全」に傾いていると判断し、負で あれば「安心」に傾いていると判断した。 食品の「安全」と「安心」の確保についての責任の所在は最も高かったのは「企業」で、 次に「行政」、「消費者」の順であった。その傾向は「安全」と「安心」ともに共通であっ た。 食品の「安全」の確保についての責任の所在から「安心」の確保についての責任の所在の 割合が下がったのは、「企業」「行政」「政治家」「研究者」であった。この結果は図2の責任 5 出所:高橋(2012)の食品の「安全」や「安心」の確保についての責任の所在のアンケー ト項目を基に筆者作成 図2 食品の「安全」「安心」の責任先について 次に(同上、p.1)の行ったアンケート結果と図 2 に示した責任先を加え、整理した結果 を表1 に示す。具体的には図 2 で示した食品の「安全」と「安心」の責任があると思われる 所在先に「○」を示し、責任の有無を明確にした。アンケート結果での「安全」の割合と「安 心」の割合を記載し、差異を算出した。そのことで「安全」と「安心」の区別がつかない消 費者のバイアスを取り除くことができると考えた。 その差異が正であれば、アンケート結果も所在先が「安全」に傾いていると判断し、負で あれば「安心」に傾いていると判断した。 食品の「安全」と「安心」の確保についての責任の所在は最も高かったのは「企業」で、 次に「行政」、「消費者」の順であった。その傾向は「安全」と「安心」ともに共通であった。 食品の「安全」の確保についての責任の所在から「安心」の確保についての責任の所在の 割合が下がったのは、「企業」「行政」「政治家」「研究者」であった。この結果は図2 の責任 の所在と一致した。 割合が上がった責任の所在は「消費者」「マスコミ」「市民団体」であったが、「消費者」 「マスコミ」「市民団体」は図2と一致したものの、「企業」の割合は下がっていた。これは、 消費者から見ると「企業」は安全に対しての責任が重く、情報開示、発信である安心の責任 は安全に比べると低いと考えた。
― 76 ― の所在と一致した。 割合が上がった責任の所在は「消費者」「マスコミ」「市民団体」であったが、「消費者」 「マスコミ」「市民団体」は図2と一致したものの、「企業」の割合は下がっていた。これは、 消費者から見ると「企業」は安全に対しての責任が重く、情報開示、発信である安心の責任 は安全に比べると低いと考えた。 次に(同上、p.71)に行った「日常生活における食品の安心について」のアンケートで 「安心できる」と答えた理由と「安心できない」と答えた理由の結果を内容ごとに区分分け し、集計した結果を表2に示す。 区分分けについては、企業の安全施策に関することは「安全施策」にし、安全についての 情報開示に関することは「情報開示」にした。行政に関することは「行政監視」、輸入食品 や輸入原材料に関しては、「輸入品」にした。食品事故や偽装表示などは「安全実績」にし、 安全性とは関係ない企業の施策に関しては「その他要因」にした。企業及び行政などが係わ る理由としては「全体」と区分した。また、「安心できる」は正要素として、「安心できない」 は負要素として位置づけ、同区分での「安心できる」から「安心できない」を引くことで 「差異」を算出し、区分ごとの消費者の評価とした。 表2によって各区分の消費者に与える安心を数値化し、評価を明確にすることができた。 「安全施策」に関しては、安心できる理由が56.2%と半数を上回り、安心できない理由が16.6 %であった。その差異は39.7%と正になった。また、「情報開示」は安心できる理由が22.1% であり、安心できない理由が17.5%と安心できる理由がわずかに上回った。 一般的に企業が実施している安全施策の情報元は企業であるため、「安全施策」や「情報 開示」が安心できない比率を安心できる比率が上回ったことから、情報開示の面では企業は 6 表1 食品の安全と安心の責任の所在先について 出所:高橋(2012)のアンケート結果 p.98-100 を筆者が加工した。 次に(同上、p.1)に行った「日常生活における食品の安心について」のアンケートで「安 心できる」と答えた理由と「安心できない」と答えた理由の結果を内容ごとに区分分けし、 集計した結果を表2 に示す。 区分分けについては、企業の安全施策に関することは「安全施策」にし、安全についての 情報開示に関することは「情報開示」にした。行政に関することは「行政監視」、輸入食品 や輸入原材料に関しては、「輸入品」にした。食品事故や偽装表示などは「安全実績」にし、 安全性とは関係ない企業の施策に関しては「その他要因」にした。企業及び行政などが係わ る理由としては「全体」と区分した。また、「安心できる」は正要素として、「安心できない」 は負要素として位置づけ、同区分での「安心できる」から「安心できない」を引くことで「差 異」を算出し、区分ごとの消費者の評価とした。 表2 によって各区分の消費者に与える安心を数値化し、評価を明確にすることができた。 「安全施策」に関しては、安心できる理由が 56.2%と半数を上回り、安心できない理由が 16.6%であった。その差異は 39.7%と正になった。また、「情報開示」は安心できる理由が 22.1%であり、安心できない理由が 17.5%と安心できる理由がわずかに上回った。 一般的に企業が実施している安全施策の情報元は企業であるため、「安全施策」や「情報 開示」が安心できない比率を安心できる比率が上回ったことから、情報開示の面では企業は 十分に行っていると考察できる。しかし、「情報開示」の安心できない理由の項目の中に「情 報の氾濫」や「食の安全の情報は理解できないものが多い」とわかりやすさを問う理由が含 まれている。このことから、企業は十分情報開示しているものの、消費者に対し理解を促す ことができていないことを示唆している。 また、「安全実績」、「行政監視」、「輸入品」、「全体」に関して、安心できる割合より安心 できない割合が大きい結果になった。この結果よりこれらの項目は不安要素の可能性があ ると考察できる。その中で「安全実績」以外の「行政監視」、「輸入品」、「全体」に関しては、 安全 安⼼ 安全 安⼼ 差異 企業 ○ ○ 34.9% 29.8% 5.1% ⾏政 ○ 25.9% 21.2% 4.6% 政治家 ○ 9.8% 9.7% 0.0% 研究者、医療機関 ○ 9.6% 7.9% 1.7% 消費者 ○ 9.9% 14.5% -4.6% マスコミ ○ 6.9% 10.8% -3.9% 市⺠団体 ○ 2.6% 4.9% -2.3% 図2 検証モデル ⾼橋(2012年)のアンケート結果 項⽬ 責任の所在
― 77 ― 十分に行っていると考察できる。しかし、「情報開示」の安心できない理由の項目の中に「情 報の氾濫」や「食の安全の情報は理解できないものが多い」とわかりやすさを問う理由が含 まれている。このことから、企業は十分情報開示しているものの、消費者に対し理解を促す ことができていないことを示唆している。 また、「安全実績」、「行政監視」、「輸入品」、「全体」に関して、安心できる割合より安心 できない割合が大きい結果になった。この結果よりこれらの項目は不安要素の可能性がある と考察できる。その中で「安全実績」以外の「行政監視」、「輸入品」、「全体」に関しては、 企業単独では管理ができない分野であるため、本研究ではこれらの要素は企業の管理外とし て考えることにした。 以上から、図1の食の安全から安心への変化過程に関して、(同上、p.71)のアンケート結 果と相違がないと判断した。また、企業側としてできる消費者の食の安心につなげるポイン トは企業の安全施策についてわかりやすく情報開示することと考える。そのことで消費者が 企業の安全施策について理解をし、企業に対し信頼をする。最終的に消費者の食の安心につ ながると考える。また、企業への信頼や製品への安心は企業における安全施策以外の要因も 関与している可能性があると考えた。 そこで、(日経BPマーケティング社、前掲書、p.71)のデータを基に、企業ごとのアンケ 7 企業単独では管理ができない分野であるため、本研究ではこれらの要素は企業の管理外と して考えることにした。 表2 日常において食品の安心ができる理由およびできない理由の区分別集計結果 出所:高橋(2012)のアンケート結果 p.91-92 を筆者が区分し集計した結果。 以上から、図1 の食の安全から安心への変化過程に関して、(同上、p.1)のアンケート結 果と相違がないと判断した。また、企業側としてできる消費者の食の安心につなげるポイン トは企業の安全施策についてわかりやすく情報開示することと考える。そのことで消費者 が企業の安全施策について理解をし、企業に対し信頼をする。最終的に消費者の食の安心に つながると考える。また、企業への信頼や製品への安心は企業における安全施策以外の要因 も関与している可能性があると考えた。 そこで、(日経BP マーケティング社、前掲書、p.1)のデータを基に、企業ごとのアンケ ート結果を基に食の安全や安心とのそれ以外の要因の相関係数を算出することで、食の安 全や安心の要因を探っていく。 また、本研究では店舗を持っていない製造企業と店舗を持っている外食企業を比較し、消 費者への情報の伝わり方の特徴を考察する。 理由としては店舗を持っていない企業は消費者への情報として、製品と企業からの開示 情報が主であると考える。具体的には消費者は企業が提供する製品を別企業の小売店を介 して購入する。また、店舗を持っている外食企業は、製品と企業からの開示情報の他に販売
区分
安⼼できる
安⼼できない
差異
安全施策
56.3%
16.6%
39.7%
情報開⽰
23.1%
17.5%
5.7%
安全実績
6.0%
16.1%
-10.1%
⾏政監視
6.9%
10.3%
-3.5%
その他要因
0.0%
9.8%
-9.8%
輸⼊品
3.4%
20.5%
-17.1%
全体
2.7%
7.1%
-4.4%
その他
1.6%
2.0%
-0.4%
合計
100.0%
100.0%
0.0%
― 78 ― ート結果を基に食の安全や安心とのそれ以外の要因の相関係数を算出することで、食の安全 や安心の要因を探っていく。 また、本研究では店舗を持っていない製造企業と店舗を持っている外食企業を比較し、消 費者への情報の伝わり方の特徴を考察する。 理由としては店舗を持っていない企業は消費者への情報として、製品と企業からの開示情 報が主であると考える。具体的には消費者は企業が提供する製品を別企業の小売店を介して 購入する。また、店舗を持っている外食企業は、製品と企業からの開示情報の他に販売店舗 や販売員と直接、接することが想定され、製造企業と外食企業とでの消費者が得られる情報 の差が消費者アンケートの結果などに反映されると想定したからである。
5.食の安全・安心と消費者の行動に関与に関する分析
(同上、p.71)のデータを基に、分析を行った。(同上、p.71)は2015年10月7日(水)から 10月22日(木)まで実施したインターネット調査の結果をまとめたものである。調査対象ブ ランドは国内主要な「食」関連の160企業ブランドで、内容は製造、外食、中食、宅配、プ ライベートブランド(PB)、コンビニエンスストア(CVS)である。有効回答数は11,401名 (全国の16歳以上の男女)で、回答補正として有効回答を人口推計の性・年代別に合わせて 補正している。また調査内容は「認知度」「利用度」「イメージ」「利用意向度」「推薦意向 度」「安心度」「安全度」の7指標について、アンケート結果からブランド別に偏差値を算出 している。その7指標の偏差値の合計を「食の安全・安心ブランドスコア」にまとめている。 本研究では、製造企業95社と外食企業44社での(同上、p.71)の7指標の相関を用い、安 全や安心とその他の指標の相関を見ることで、企業の信頼における安全の施策以外の要因を 探っていく。この7つの指標の関係を考察すると「総合ブランドスコア」は他の6つの指標の 総合評価なので、相関はあると考える。「認知度スコア」については、消費者が企業やその 製品を認知しているかを示すと考える。次に「利用度スコア」については、消費者行動を考 えると認知し利用すると考える。しかし、利用した場合、「利用意向」のように、選択して 利用したか、それとも必要な状況で該当する製品がたまたまあった場合が考えられる。「推 薦意向度スコア」は、認知して、利用した上で、他社に推薦すると考えると、少なくとも 「認知」と「利用」を行った後で行う行為と考える。最後に、「安全度」は科学的根拠による もので、「安心度」は心理的にものと考えるが、消費者によっては「安全」と「安心」の区 別がないものもおり、場合によっては、同じものと認識している可能性があると考える。 まず、本研究で取り上げる製造企業95社と外食企業44社の7指数から安全性スコアと他の 指数のデータを使用し、それぞれの相関係数を算出した(表3)。 本研究で製造企業と外食企業を比較する。理由としては消費者が獲得できる情報の質が違 うと考えたからである。具体的には製造企業は消費者に対し、製造現場を見せず、販売に関― 79 ― しても他企業に依存している。しかし、外食企業は消費者の近くで製品を製造し、自社で販 売している。消費者にとっては外食企業の方が製造企業に比べ多くの情報を得る可能性があ る。さらにその情報は、企業が意図しない情報(店内の清潔度や従業員のサービスレベルな ど)が含まれる。そのことで、食の安全・安心の伝達方法が変わる可能性があると考えたか らである。 これは東京都(2013)が実施した外食時に店を選ぶ基準のアンケート結果3より店内の清 潔感と接客態度について店を選ぶ基準の上位に選ばれ、店内の清潔感や接客態度についても 消費者の企業への信頼や製品の安心にも関与している可能性があると考える。 また、本研究で用いられる相関係数の基準は小塩(2011)に基づいた。具体的には±1に 近づくほど相関があり、0に近づくほど相関がない。また、「1から0.7まで」と「-0.7から- 1まで」は強い相関を示し、「0.7から0.4まで」と「-0.4から-0.7まで」は比較的強い相関を 示す。「0.4から0.2まで」「-0.2から-0.4まで」は弱い相関、「0.2から-0.2まで」はほとんど 相関がないとした。 そこで、消費者がどのような企業の要因で安全や安心を感じるのかを、安全度スコアと安 心度スコアと他のスコアそれぞれと相関係数を計算し、相関関係を考察することで検証し た。 安全性スコアと他のスコアとのそれぞれの相関係数は0.58以上を示した。この結果から製 造企業及び外食企業において、安全性スコアと他のスコアすべてで相関があることがわかっ た。特に安全度スコアと安心度スコアにおいて製造及び外食企業共にほぼ1であり、非常に 強い相関関係があると言える。これは、企業の安全施策が消費者にとって、情報開示したも ののみが認知されており、安全施策が認識され、企業の信頼につながり、安心に移行したと 考えた。しかし、消費者の中に「安全」と「安心」の区別をしてないものがいる可能性があ り、そのことも相関係数を1に近づけた要因と考えた。このことは(高橋、前掲書、p.71) のアンケート結果より食品の安全と安心の定義について、4割以上があいまいであった結果 からも示唆できる。以上から安全と安心は消費者の認識は同じと見なし、アンケート結果で の相違がないと判断した。 次に製造企業における「安全スコア」と他の指標の相関係数を確認すると、「総合ブラン ドスコア」は「安全スコア」も含む6指標においての総合スコアのため、相関係数が高いと 考える。また、「安心スコア」と「安全スコア」の相関性が高いのは先に述べた通りである。 その二つの指標を除いた中で相関性が高いのは、利用意思度スコアで0.91であり、低いもの でイメージスコアの0.85になった。また、外食における他の指数の相関係数を確認すると総 合ブランドスコアと安心度スコアが高い相関係数を示している。その次に利用度意思度スコ アが0.9で、推薦思考スコアが0.82と高い。しかし、認知度スコアが0.58で、利用度スコアが 0.61、イメージスコアが0.69と製造に比べると相関係数が低くなっている。
― 80 ― 次に安心度スコアと他の指数とのそれぞれの相関係数を計算し、分析を行った(表6)。安 全性スコアと同様に外食企業の認知度スコアとの相関係数が0.58であり、最低値であること から、安心性スコアと他の指数すべてと相関関係があることがわかった。 製造における安心スコアと他の指標の相関係数を確認すると、利用意思度スコアが総合ブ ランドスコアと安心度スコアを除くと高く、低いものでイメージスコアの0.85になった。ま た、外食における他の指数の相関係数を確認すると総合ブランドスコアと安全度スコアが高 い相関係数を示した。その次に利用度意思度スコアが0.92で、推薦思考スコアが0.82と高い。 しかし、認知度スコアが0.57で、利用度スコアが0.62、イメージスコアが0.74と製造に比べ ると相関係数が低くなり、ほぼ、安全度スコアと同じ傾向になった。 よって、製造および外食企業ともに、消費者の安全度スコアと安心度スコアはほぼ一致し た。また、製造企業は安全度スコアおよび安心度スコアと他の指標との高い相関係数を示し たものの、外食企業に関しては、認知度スコアや利用度スコア、イメージスコアとの相関は 製造企業に比べると低かった。これは製造に関しては、販売店舗は他の企業で消費者に直 接、判断してもらえるのは製品のみで、製品の製造現場や企業の社員等の関係者と消費者が 直接、接点を持つことは非常にまれになり、消費者にとって、製品のみが安全や安心を見る 上での材料になると考える。 一方、外食は直営店や加盟店などがあっても、製造企業に比べると外食企業は販売先であ る店舗を管理している。消費者に対し、安全性情報を発信することができる。また、販売す る店舗の店内で、製品を調理しているため、消費者は製造現場を触れることができ、製造企 業に比べると安全性を判断しやすい。さらに店舗スタッフと直接、接客を受けるため、製造 企業よりは直接的に企業を判断しやすいと考える。10 表3 製造及び外食の安全度および安心度スコアとその他の指標との相関係数 出所:日経BP マーケティング社(2015)のデータを基に筆者が分析した結果。 次に安心度スコアと他の指数とのそれぞれの相関係数を計算し、分析を行った(表 6)。 安全性スコアと同様に外食企業の認知度スコアとの相関係数が0.58 であり、最低値である ことから、安心性スコアと他の指数すべてと相関関係があることがわかった。 製造における安心スコアと他の指標の相関係数を確認すると、利用意思度スコアが総合 ブランドスコアと安心度スコアを除くと高く、低いものでイメージスコアの0.85 になった。 また、外食における他の指数の相関係数を確認すると総合ブランドスコアと安全度スコア が高い相関係数を示した。その次に利用度意思度スコアが0.92 で、推薦思考スコアが 0.82 と高い。しかし、認知度スコアが0.57 で、利用度スコアが 0.62、イメージスコアが 0.74 と 製造に比べると相関係数が低くなり、ほぼ、安全度スコアと同じ傾向になった。 よって、製造および外食企業ともに、消費者の安全度スコアと安心度スコアはほぼ一致し た。また、製造企業は安全度スコアおよび安心度スコアと他の指標との高い相関係数を示し たものの、外食企業に関しては、認知度スコアや利用度スコア、イメージスコアとの相関は 製造企業に比べると低かった。これは製造に関しては、販売店舗は他の企業で消費者に直接、 判断してもらえるのは製品のみで、製品の製造現場や企業の社員等の関係者と消費者が直 接、接点を持つことは非常にまれになり、消費者にとって、製品のみが安全や安心を見る上 での材料になると考える。 一方、外食は直営店や加盟店などがあっても、製造企業に比べると外食企業は販売先であ る店舗を管理している。消費者に対し、安全性情報を発信することができる。また、販売す る店舗の店内で、製品を調理しているため、消費者は製造現場を触れることができ、製造企 業に比べると安全性を判断しやすい。さらに店舗スタッフと直接、接客を受けるため、製造 企業よりは直接的に企業を判断しやすいと考える。 製造企業は、消費者に対し、判断材料が少ない為、結果、知名度や認知度で消費者は安全
安全
安⼼
安全
安⼼
総合ブランドスコア
0.97
0.97
0.95
0.97
認知度スコア
0.87
0.89
0.58
0.57
利⽤度スコア
0.86
0.87
0.61
0.63
利⽤意思度スコア
0.91
0.92
0.90
0.93
推薦意向スコア
0.90
0.89
0.82
0.83
安全度スコア
0.98
0.98
0.99
0.99
イメージスコア
0.85
0.85
0.69
0.74
平均
0.91
0.91
0.79
0.81
製造
外⾷
評価項⽬(スコア)
― 81 ― 製造企業は、消費者に対し、判断材料が少ない為、結果、知名度や認知度で消費者は安全 や安心を判断していると考える。一方、外食は直接、製造現場は企業関係者に触れることが できるため、知名度や認知度だけでなく、企業そのものを認識、判断できると考える。 その結果、「安全度スコア」や「安心度スコア」と他の指数との相関係数において、外食 企業は製造企業に比べて、ばらつきが大きかったと考える。これは(東京都、前掲書、p.79) の外食時に店を選ぶ基準のアンケート結果3、店内の清潔感と接客態度について店を選ぶ基 準の上位に選ばれていることから店内の清潔感や接客態度についても食の安心に関与してい る可能性があると考える。 さらに、消費者が安全や安心を認識する要因を抽出するために、(日経BPマーケティング 社、前掲書、p.71)の質問項目と安全度スコアとの相関係数を算出した。質問項目について は「安全施策」「企業イメージ」「情報開示」「生産管理」「製品」「CSR活動」「その他」に区 分し、算出した相関係数の平均値を示した(表4、5) 製造及び外食企業の安全度スコアと質問項目との相関係数の算出結果を表4に示した。製 造企業における安全度スコアと質問項目による相関係数の算出結果を区分ごとに確認すると 「安全施策」は平均0.49と相関性を示したが、「有機/無農薬/減農薬に取り組んでいる」と 「体に良い/不健康でない」で0.21、0.28と弱い相関性を示す結果になった。 「企業イメージ」については、0.72と高い相関性を示した。「情報開示」や「生産技術」、 「CSR活動」は平均で0.42、0.67、0.44とそれぞれ相関性を示した。特に「生産技術」につい ては平均で0.7に近い数値を示しており、高い相関性を持っていると考える。 製品に関しては、「味が良い」が0.65で相関性持っているのに対し、「価格が安い」につい ては相関性がなかった。その他の「トラブル時の対応が優れている」は0.42と相関性はあっ た。 以上の結果より、消費者の見方として、安全に関連した「安全施策」や「情報開示」につ いてよりも安全に直接関係しない「企業のイメージ」や「生産技術」の方が高い相関性を示 した。 この結果、製造企業は「安全施策」や「情報開示」といった安全性を高める活動よりも、 「顧客を大切にしている」や「親しみがある」などの企業姿勢や「歴史がある/伝統がある」、 「有名/大手である」など規模の大きさや伝統などの企業イメージや製品などの実績に基づい た「製造技術」における信頼性を高める方が安全や安心に関与することがわかった。 外食企業における安全度スコアと質問項目による相関係数は区分で確認すると「安全施 策」、「情報開示」は平均0.48、0.44であり、「企業イメージ」については0.46と相関性を示し たものの製造企業に比較すると低い相関係数を示した。 また、「生産技術」については平均で0.29と弱い相関性であった。高い相関性を示したの は製品の中の「味が良い」0.72であった。これは、製造企業と同じ傾向で消費者は「味が良
― 82 ― い」と安全性が高いと感じるなど、人物評価の際に発生するハロー効果4と似た現象が起こ ったと考える。 弱い相関性や相関性がないものは「CSR活動」が0.22となり、「製品」の「価格が安い」 や「その他」の「トラブル時の対応に優れている」が-0.21、0.17を示していた。 このことから、外食企業は製造企業に比べると安全度スコアとその他の質問項目との相関 性が低く、相関性がないものも多かった。これは、先に述べたように外食企業は自社が管理 している店舗にて製品を販売しているため、製造現場やスタッフと直接、接する機会があり、 企業が発信した情報以外の情報を消費者自ら取得し、各企業の印象を決めていると考える。 その印象の一つに企業の安全性や安心が追加されると考える。 製造及び外食企業の安心度スコアと質問項目との相関係数を表5に示した。製造企業及び 外食企業ともに安全性スコアの傾向とほぼ同じであった。ただし、外食企業の「生産技術」 の相関が安全度スコアは平均で0.29と弱い相関を示した。しかし、安心度スコアでは平均が 0.42と相関を示しているが、差異が0.05と少ないことから、傾向としてはほぼ同じと考える。 これは、先に述べたように安全度スコアと安心度スコアが製造企業で0.99、外食企業で0.98 表4 製造及び外食の安全度スコアと質問項目との相関係数 出所:日経BP マーケティング社(2015)のデータを基に筆者が分析した結果。 相関係数 平均 相関係数 平均 有機/無農薬/減農薬に取り組んでいる 0.31 0.46 危険性の無い原材料を用いている 0.66 0.53 体に良い/不健康でない 0.28 0.45 衛生管理が徹底している 0.70 0.47 顧客を大切にしている 0.74 0.50 親しみがある 0.68 0.58 歴史がある/伝統がある 0.72 0.30 有名/大手である 0.75 0.46 原材料の産地を明示している 0.42 0.47 情報開示に熱心である 0.42 0.41 製造技術に優れている 0.67 0.30 製造工程の管理が徹底している 0.68 0.35 品質管理が徹底している 0.68 0.62 品質検査を行っている 0.64 0.27 味が良い 0.64 0.72 価格が安い -0.12 -0.31 社会貢献活動を行っている 0.44 0.19 環境に配慮している 0.44 0.28 その他 トラブル時の対応が優れている 0.42 0.42 0.17 0.17 0.23 CSR活動 0.49 0.72 0.42 0.44 安全施策 企業イメージ 情報開示 製品 0.26 0.20 外食 製造 目 項 問 質 分 区 0.67 0.39 生産技術 0.48 0.46 0.44
― 83 ― とほぼ1に近く、非常に高い相関があるのが原因であると考える。 次に製造および外食企業における消費者の安全に関する情報獲得経路アンケート結果を表 6にまとめた。この結果は、(日経BPマーケティング社、前掲書、p.71)のデータを基に「報 道」「広告」「口コミ」「経験」に区分し、集計した結果である。 まず、製造企業の場合、最も多くの消費者が企業の安全情報を聞いたのは、テレビ・ラジ オの広告で20.8%であった。次に実際の商品購入や飲食経験で19.2%であり、その次は商品 のパッケージなどで12.2%であった。 一方、外食企業では最も多かったのは実際の商品購入や飲食経験が19.7%であり、次にテ レビ・ラジオの広告が15.2%であった。その次がテレビ・ラジオの報道で12.5%であった。 次に区分での製造企業と外食企業の比較をすると報道では製造企業は20.6%、外食企業で は22.5%と2%ほど外食企業の割合が高かった。広告に関しては製造企業が52.4%、外食企業 が47.1%と5%ほど製造企業の割合が高かった。口コミに関しては製造企業が7.8%で外食企 業が10.7%と2%ほど外食企業の割合が高く、経験は製造企業が19.2%で外食企業が19.7%と 表5 製造及び外食の安心度スコアと質問項目との相関係数 出所:日経BP マーケティング社(2015)のデータを基に筆者が分析した結果。 相関係数 平均 相関係数 平均 有機/無農薬/減農薬に取り組んでいる 0.30 0.49 危険性の無い原材料を用いている 0.65 0.56 7 4 . 0 6 2 . 0 い な で 康 健 不 / い 良 に 体 0 5 . 0 9 6 . 0 る い て し 底 徹 が 理 管 生 衛 2 5 . 0 6 7 . 0 る い て し に 切 大 を 客 顧 0 6 . 0 1 7 . 0 る あ が み し 親 5 3 . 0 0 7 . 0 る あ が 統 伝 / る あ が 史 歴 8 4 . 0 7 7 . 0 る あ で 手 大 / 名 有 原材料の産地を明示している 0.42 0.50 5 4 . 0 2 4 . 0 る あ で 心 熱 に 示 開 報 情 5 3 . 0 5 6 . 0 る い て れ 優 に 術 技 造 製 製造工程の管理が徹底している 0.65 0.41 6 6 . 0 8 6 . 0 る い て し 底 徹 が 理 管 質 品 1 3 . 0 3 6 . 0 る い て っ 行 を 査 検 質 品 8 7 . 0 5 6 . 0 い 良 が 味 4 3 . 0 -2 1 . 0 -い 安 が 格 価 社会貢献活動を行っている 0.44 0.23 2 3 . 0 3 4 . 0 る い て し 慮 配 に 境 環 その他 トラブル時の対応が優れている 0.41 0.41 0.21 0.21 CSR活動 0.48 0.50 0.73 0.49 0.42 0.47 0.43 0.28 安全施策 企業イメージ 情報開示 製品 0.27 0.22 製造 外食 目 項 問 質 分 区 生産技術 0.65 0.43
― 84 ― ほぼ変わらない傾向であった。数値からは、製造企業と外食企業の明確な差は確認できなか った。 これは、製造企業と外食企業の企業発信の情報については、差異はなく、むしろ、消費者 が直接的に接する情報が製造企業と外食企業の相関係数の差異の原因と考える。そこから推 察すると、製造企業は知名度や認知度が高いほど、安全性が高く、安心して利用できると消 費者が認識していると考える。これは(東京都、前掲書、p.79)が実施した「食品購入時に 食品の安全性を判断する事項」のアンケート結果において「信頼できる生産者やメーカー」 という項目が2番目に選ばれていることからも示唆できる。 また、製造企業は販売店舗に対し、外食企業ほど、影響を及ぼすことができないため、安 全性に関する情報発信が店舗では行っていない。それは、店頭ポスター等の広告が製造企業 では5.9%に対し、外食企業は10.5%であったことからも示唆できる。 一方、外食企業は、消費者が直接、外食企業が管理している飲食店を利用でき、消費者は 直接、五感を基に安全性を判断し、安心に変化していると考える。 14 19.7%とほぼ変わらない傾向であった。数値からは、製造企業と外食企業の明確な差は確認 できなかった。 これは、製造企業と外食企業の企業発信の情報については、差異はなく、むしろ、消費者 が直接的に接する情報が製造企業と外食企業の相関係数の差異の原因と考える。そこから 推察すると、製造企業は知名度や認知度が高いほど、安全性が高く、安心して利用できると 消費者が認識していると考える。これは(東京都、前掲書、p.9)が実施した「食品購入時 に食品の安全性を判断する事項」のアンケート結果において「信頼できる生産者やメーカー」 という項目が2 番目に選ばれていることからも示唆できる。 また、製造企業は販売店舗に対し、外食企業ほど、影響を及ぼすことができないため、安 全性に関する情報発信が店舗では行っていない。それは、店頭ポスター等の広告が製造企業 では5.9%に対し、外食企業は 10.5%であったことからも示唆できる。 一方、外食企業は、消費者が直接、外食企業が管理している飲食店を利用でき、消費者は 直接、五感を基に安全性を判断し、安心に変化していると考える。 表6 製造および外食企業における消費者の安全に関する情報獲得経路アンケート結果 出所:日経BP マーケティング社(2015)のデータを基に筆者が分析した結果 区分 媒体 テレビ・ラジオ 11.3% 12.5% 新聞 4.7% 4.7% 雑誌 2.3% 2.4% ニュースサイト 2.3% 2.8% テレビ・ラジオ 20.8% 15.2% 新聞 3.6% 4.1% 雑誌 2.4% 2.5% 店頭のポスターなど 5.9% 10.5% 商品のパッケージなど 12.2% 6.7% 企業や店舗が発⾏する冊⼦ 1.4% 2.0% ホームページやインターネット広告 5.3% 4.9% ソーシャルメディア 0.9% 1.2% ⾷に関する⼝コミサイトや評価サイト 2.2% 2.5% ソーシャルメディア上の個⼈のアカウント 0.7% 1.0% 友⼈・知⼈・同僚・家族の評判・クチコミ 4.8% 7.3% 経験 実際の商品購⼊や飲⾷の経験 19.2% 19.2% 19.7% 19.7% 製造 外⾷ 52.4% 47.1% 7.8% 10.7% 報道 広告 ⼝コミ 20.6% 22.5%
― 85 ―
6.まとめ
食の安全と安心の定義が不明確な消費者は約4割であった(高橋、前掲書、p.71)。さらに 表3より安全度と安心度のその他の指数との相関係数がほぼ一致したことによって、消費者 は安全と安心の区別が不明確である可能性が高いと考える。 表1より「企業」「行政」「政治家」「研究者、医療機関」に関しては、食の安全を担い、 「企業」「消費者」「マスコミ」「市民団体」は情報発信や受信を行うことによって、食の安心 を担っている。そのことから、食の安全は実際の安全に対する活動に関係し、食の安心は情 報による信頼に関係すると考える。 また、(同上、p.71)のアンケート結果より情報開示は不安要素の上位にあげられ、食の 安心への影響が示唆される。さらに、情報開示の内容としては「情報の氾濫」や「食の安全 の情報は理解できないものが多い」とわかりやすさを問う理由になっている。そのことから 消費者に食の安心を感じさせるためには、情報のわかりやすさが必要であると考える。 この結果は、表6より製造企業および外食企業ともにテレビ・ラジオ広告の割合は高かっ たことやテレビ・ラジオの報道も加えると製造および外食企業ともに最も割合が高くなった ことからも示唆できる。しかし、テレビ・ラジオの広告はコストがかかり、企業規模により 差が出てくると考える。 安全性の実績に関しては、食品事故などの負の要素が信頼性を失うことに寄与すると考え る。これは、表6より製造企業および外食企業の情報獲得の割合が報道で約20%もあること でも裏付けをしている。 しかし、信頼性を獲得するための要素としてはそれだけでなく、(日経BPマーケティング 社、前掲書、p.71)を基にした結果(表4、表5)、際立って高いものも「製品の味」や「品 質管理が徹底している」であったことや表6の結果で「実際の商品購入や飲食経験」が製造 企業及び外食企業で約20%であったことから、製造企業は商品の品質そのものが消費者の信 頼を得ると考え、外食企業は商品の品質に加え、店内の清潔感やスタッフの接客の質も消費 者の信頼を得る要素として考える。 また、その他の要素として、「企業イメージ」が消費者の信頼を得ると考えるが、製造企 業に比べると外食企業はそれほど高い値を示さなかった(表4、表5)。これは外食企業が製 造企業と違って、外食企業は店舗で製品を製造、販売していることがあげられる。理由とし ては、外食企業は店内の管理状況やスタッフの接客も消費者に信頼性を判断され、安心への 変化に関与している可能性があると考える。これは(東京都、前掲書、p.79)の外食時に店 を選ぶ基準のアンケート結果3において店内の清潔感と接客態度について店を選ぶ基準の上 位に選ばれていることや表6の結果で「実際の商品購入や飲食経験」において外食企業は約 20%であったことからも示唆できる。 このように、消費者に対し、食の安全を安心に変えるためには、安全施策の他に、消費者― 86 ― にわかりやすく安全性を伝えることや製品の品質向上が必要である。また、製造企業に関し ては企業イメージが消費者の信頼性を生み、安心に変換されると考える。外食企業に関して は自社の販売店舗の品質(店内の清潔度や接客等)を上げることが必要と考える。 本研究では、食の安全・安心の伝達方法の方向性は示すことができたと考える。しかし、 より精度の高い研究をするためにも、アンケートを実施する際、明確な食の安全と安心の定 義を消費者に伝えた後にアンケートを実施することが大切であると考える。
注記
1 東京都消費者月間実行委員会(2014)の調査結果、[食の安全に対し関心がありますか?]の 問いに対し、「大変関心がある」63.2%、「少し関心がある」34.9%、合計98.1%であった。 2 農林水産省によるとHACCPとは原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、微生物によ る汚染、金属の混入などの危害要因を分析(HA)した上で、危害の防止につながる特に重要 な工程(CCP)を継続的に監視・記録する工程管理システムである。 3 東京都(2013)の「食品の安全性について」の外食時に店を選ぶ基準についての調査におい て、「おいしさ」77.2%、「料金設定」64.8%、「店内の清潔感」57.2%、「接客態度」26.5%、 「自宅や職場からの距離」19.5%、「食材の産地やカロリーなどの情報」15.4%、「飲食店の知 名度」12.6%、「メニュー数」4.5%、「その他」5.8%であった。 4 石崎(2005)によるとハロー効果は、様々な定義があるが、一番普及している定義は「被評 価者を評価する際に被評価者の全体的な印象に従って、各評価項目の評価をしてしまうため、 各評価項目の評価をしてしまうため、各評価項目の評価が似通ってしまう傾向」である。参考文献
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― 88 ―
Abstract
Today, consumers are increasingly requesting companies that handle food to thoroughly control food safety. For example, there is institutionalization of HACCP. Companies need to not only implement safety measures, but also to communicate safety measures to consumers, give a sense of security, gain trust, and enhance the brand image. Therefore, it is meaningful to study how to convey safety and security in consumer consciousness. The purpose of this research is to analyze and consider based on the questionnaire data of Takahashi (2012) and Nikkei BP marketing company (2015), and by consulting the route and method through which the company's safety measures are conveyed, the effect It is to clarify the way to communicate to consumers.
Keywords:food safety, food security, trust , consumer, Safety policy