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社会認識の基礎を育てる生活科実践の検討

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社会認識の基礎を育てる生活科実践の検討

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木全清博

Kiyohiro K

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(社会科教育研究室) 「生活科」新設の経緯と社会認識の基礎 を育てる問題 小学校の第1学年と第2学年の新しい教科と して、「生活科Jが1989年版小学校学習指導要 領で新設された。「生活科」誕生の背景のなか で、社会認識の基礎を形成する問題がどのよう に扱われてきたかを考察してみよう(1)。 1983年11月に、中央教育審議会(以下、中 教審と略す)は審議経過を報告した。報告書中 において、「小学校低学年の教科構成について は、国語・算数を中心としながら既存の教科の 改廃を含む再構成を行う必要があるが、どのよ うな教科構成が望ましいかについて(中略)今 後更に検討する必要があるJ として、低学年の 教科の合科や統合に関しては慎重な姿勢をみせ た。 しかし、低学年の教科のあり方に関しては、 1984年7月に「小学校低学年の教育に関する 調査研究協力者会議」を発足させて、合科や統 合を視野に入れた審議を進めようとした。その 協力者会議は、 2年間の検討の結果、 1986年

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月に「協力者会議のまとめJ として、報告書 を発表した。この報告書においては、「児童が 自分たちとのかかわりにおいて人々(社会)や 自然をとらえ、児童の生活に即した様々な活動 や体験を通して社会認識や自然認識の目を育て るとともに、そのような活動や体験を行う中に おいて自己認識の基礎を培い、生活上必要な習 慣や技能を身に付けさせ、自立への基礎を養う ことをねらいとする総合的な新教科として生活 科(仮称)を設けることとした。J として、は じめて仮称ながら新教科「生活科Jの設置を明 らかにしたのである。ここでは、自己認識の基 礎を養成することを強調しつつも、活動や体験 を重視した社会認識と自然認識の基礎の育成を 明確に打ち出していた。 1986年4月に、臨時教育審議会(以下、臨 教審と略す)は、第

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次答申を出して、低学年 の教科構成について、「小学校低学年の教科構 成については、読・書・算の基礎の習得を重視 するとともに、社会 ・理科などを中心として、 教科の総合化を進め、児童の具体的な活動 ・体 験を通じて総合的に指導できるよう検討する必 要がある。J と低学年社会科と理科の「教科の 総合化」という表現で、合科学習の考えをとる とした。同じ年の1986年10月には、教育課程 審議会(以下、教課審と略す)は中間まとめを 発表した。中閉まとめは、先の協力者会議の観 点を引き継いで、新教科「生活科J のねらい をく社会認識と自然認識の目を育てる〉と<自 己認識の基礎を培い、生活上必要な習慣や技能 を身に付けさせる>の

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点を明確に打ち出し た。また、「低学年に新教科生活科(仮称)を 設定し、体験的な学習を通して総合的な指導を 一層推進するのが適当である。………なお、低 学年の社会科及び理科はその中に統合すること とする。J と述べた。 1987年12月には、教課審は最終の答申を出 した。答申は、これまでの低学年教科構想の路 線と断絶した考え方を採用して、教育関係者を 驚かせた。「社会認識と自然認識の目を育てる」 という考え方を捨て去って、新設の「生活科」 は「低学年社会科と理科を廃止」して、「具体 的な活動や体験を通して自分と身近な社会や自 然とのかかわりに関心をもっJだけとした。や

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や長い引用だが、次の部分は重要なので労を厭 わず引用したい。 「低学年については、生活や学習の基礎的な 能力や態度などの育成を重視し、低学年の児童 の心身の発達状況に即した学習指導が出来るよ うにする観点から、新教科として生活科を設定 し、体験的な学習を通して総合的な指導を一層 推進するのが適当である。生活科は、具体的な 活動や体験を通して自分と身近な社会や自然と のかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生 活について考えさせるとともに、その過程にお いて生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、 自立への基礎を養うことをねらいとして構想す るのが適当である。なお、これに伴い、低学年 の社会科及び理科は廃止する。」 新教科の「生活科」は、このような低学年の 教科構成をめぐる錯綜した論議を背景として誕 生したのである。 1989年3月に、 1989年版の 小学校学習指導要領が発表された。誕生の時点 から、低学年社会科および低学年理科との一定 の距離を持たせられていた。しかも、従来から の教科構成論では、教科の本質や性格において 論じられたことがなかった「自己認識の育成」 を前面に出して登場させられたといえる。新教 科「生活科Jへの批判は、概念規定のあいまい な「自己認識の育成」に関する問題と生活習 慣・生活技能の強調を「道徳科」につながる危 倶の問題に論点が集中したのであった。 以上の生活科誕生の経緯をまとめてみると、 次のように整理できる。 ① 生活科成立史において、教科論の観点か ら、当初は<社会科と理科の「合科」指導>が 考えられていた。従来の社会科と理科の教科目 標にかかわって、く社会認識や自然認識の基 礎の育成>を強く打ち出していた。この構想、は、 1986年10月まで確実に存在していた。しかし、 1987年12月の教課審本答申の段階で、「社会 科と理科の合科指導論」構想は捨てさられた。 文部省の政策担当者に何があったのか。どこか から圧力があったのか、ひっくり返すだけの教 育実践のどのような動きがあったのかは、明ら かではない。かわって、<体験的な学習を通し て総合的な指導>論が取って代わった。これ は、く自己認識の基礎を培い、生活上必要な習 慣や技能を身に付けさせる>=生活習慣や技能 を強調する観点を前面にだしたことにより、生 活を第二の道徳科にするのではないかとの批判 を呼ぶこととなった。 ② 1980年代半ば頃の時期において、<合 科学習〉論よりく総合学習〉論へと転換した意 義はどこにあるのかということは、生活科の 「道徳化J傾斜問題とは別に、5]11途検討しなけ ればならない課題である。当時、すでに全国的 に低学年の総合学習の実践が蓄積されていた実 態と、教育課程論上の小学校3年以上での総合 学習の実施可能性が、真剣に議論されたとはい えなかった。乙うした実践史の事実について、 当時の民間教育団体はほとんど注意を払わなか った。私も当時の状況で、社会科・理科の教 科の低学年廃止反対の観点でしか考えていなか った。すでに、信州大附属長野小や伊那小、諏 訪市高島小や、奈良女大付小、筑波大付小、和 光小など、「合科 ・総合学習」実践校が10年間 以上にわたる実践の成果を出していた。 ③ このように見てくれば、低学年のみの 「生活科」があくまで、教科学習として位置づ けられたのはどのような理由であったのか。教 科外学習として、どうして考えられなかったか。 総合学習論の観点からいえば、教科学習からは ずして、もっと自由な教科外学習や領域を含め た、今回の「総合学習Jのような時間としても 良かったのではなかったかと思われる。 日 生活科において社会認識の基礎を育てる視 占 一歴史教育者協議会と日本生活教育連 盟の典型的な生活科教育論一 (1)歴史教育者協議会の生活科教育論一中妻 雅彦の構想 歴史教育者協議会(以下、歴教協と略す)に おいて、生活科における社会認識の基礎の育成 に言及している代表的な実践家は、中妻雅彦で あろう。中妻は、毎年夏の全国大会での小学校 1・2年分科会の世話人を続け、歴教協の生活 科実践の総括 ・整理を行ってきた実践家であ る。彼は、 1980年代半ばから1990年代初期に 小学校の1・2年生の担任を10年間に7回担

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任にして、低学年社会科と生活科の実践を積み 重ねていた。中妻は、歴教協を代表する低学年 生活科の実践者であると考えて良い(2)。 彼は、誕生したばかりの生活科に取り組んだ 実践記録をまとめて、『いきいきわくわく生活 科~ (あゆみ出版

1992

年)として刊行し、そ の中で社会認識を育てる生活科実践について論 究している(3)。そこでは、「子ども達の生活を 学習に結びつける活動」として、

1

自由作文、 おはなししよう(せいかつのたより)、 2 散 歩しよう、 3 作って食べる、作って遊ぶ、作 って使う(手仕事)ーーものづくりを中心にし た活動で、労働体験学習や飼育栽培活動もこれ に入る、 4 学習カード、絵本、紙芝居作り (本作り)、 5 身体表現、劇遊び、描画(表現 活動)、 6 通信活動の6つをあげている。中 妻によれば、「教科の枠に入らないあえて言え ば、国語や特活などとされてきた活動を、低学 年の学習

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生活科」学習)として組織化して いくことによって、私たちは、新しい学習の展 開を学び、教科と教科書の枠からふみだすこと ができます。Jと述べている。そして、こうし た「生活科」学習こそが、教育活動を支える土 台作りとなり、子どもの学習にとっては、最も 大切で必要な学習になると断言している。 中妻は、生活科の学習内容・領域を区分けし て、単元テーマ別に社会認識の基礎を育てる学 習と、自然認識の基礎を育てる学習とに分けて いる。 [社会認識の基礎を育てる学習〕 1 労働認識を育てる…「学校たんけんJ、「家 族の紹介J、「地域たんけん」

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時間認識を育てる…「私が生まれてから」、

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1年間の変化」 3 空間認識を育てる…「絵地図作り」、「町の たんけん1 4 人権意識の基礎を育てる 5 お話・絵本などによる昔や世界の学習 6 平和学習 [自然認識の基礎を育てる学習] 1 自然にふれる、自然に豊かにかかわる… 「学校たんけん」、「雨降りの日J、「町のた んけんへいこうJ、「公園J、「季節さがし」、 「虫さがし」、「種あつめ」、「花さがしJ 2 もの」の世界をさぐる学習をする…「空 気さがし」、「水(あまい水、しょっぱい水)J、 「金属(電気、磁石川、「豆電球J 3 手や頭や道具を使って、ものを作り出す学 習をする……・・・「ものづくり」、 「動くおも ちゃ作り」、「折り紙J 4 自然の中で身近な動植物の観察 5 飼育・栽培活動 6 生命現象の事実を認識する 中妻があげているように、歴教協では生活科 の学習内容・領域について、かつての低学年社 会科と理科の学習内容と同じものとし?てとらえ ている。低学年社会科において追求されていた、 「労働認識J

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時間認識J

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空間認識J

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人権意識」 「平和学習」などが、そのまま生活科の学習内 容とされているのである。自然認識の基礎を育 てる学習でも、同様に低学年理科の内容を考え ている。 歴教協の

1990

年代初期の実践では、単元テ ーマに合科学習的な扱い方を前面にだすことも あまりなされてなかったし、テーマを総合的な 学習展開に進める実践を行っていない点が、生 活科の取り組みの特色であった。

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)日本生活教育連盟の生活科教育論一和光 小学校の「生活勉強」 日本生活教育連盟(以下、日生連と略す)の 典型的な考えを実践しているのは、和光小学校 であろう。和光小学校は、生活科導入以前から、 低学年の1.

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年生の学習を「生活勉強J とし て位置づけて合科・総合学習として扱う構想を もっていた。和光小学校の実践記録は、『和光 小学校の生活べんきょう 上・下~ (民衆社

1989

年)に詳しい

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。和光小学校の生活勉強 の構想、は、

1977

年に梅根悟が委員長となって まとめた日本教職員組合の「教育課程改革試案J の総合学習論に原流をもつものである。 『和光小学校の生活べんきょう』は、上巻に おいてカリキュラム構造を取りあげており、 「生活勉強のメカニズム J

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につ いて説明している。ここでは以下のような考え 方が示されている。生活勉強とは何かについて、 「生活勉強とは、教科にセパレートする以前の 生活そのものや子どもをとりまく自然や社会

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を、直接経験を主体にして学習する『学習領域』 である。これは、中・高学年の『総合学習』に 対応する『学習領域』である。」と述べている。 生活勉強の

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つのねらいをあげている。 ①社会認識・自然認識の幅 広い基礎をつくる ②人やものや生産の仕組み などの豊かな関係を理解 させる 「生活勉強の内容J に関して は、生活勉強を構成する中身 教科外 教 科 生活勉強 (総合学習) を次のように考えている。 「既成の教科概念でいえば、社会科・理科・手 仕事(図工) ・保健体育そして創作・表現活動 などをいれた広領域のものです。」和光小では、 既成のいくつかの教科の複合的な側面と、教科 外の活動も含めて考えているようであり、「教 科外でおこなわれていた『文化活動』などもこ こにはいります。 J

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全体をとおして子どもの生 活(家庭・地域・学校・遊び)そのものを学習 の対象にしています。J と述べている。 和光小学校は、主題領域(スコープ)を3つ に分け、「学級活動J、「文化活動」、「自然・社 会」に区分して活動させている。 3つの活動の それぞれについて、以下のように説明を加えて いる。 主題領域(スコープ) 学級活動(第1類型)=学級・学校のはた らき、学級・学校 のできごと 文化活動(第2類型)=文化活動 自然・社会(第3類型) =自然認識・社会 認識にかかわる こと 学級活動では、学級 ・学校のはたらき、学 級・学校のできごとに取り組まれる。文化活動 には、①日常の遊び-手仕事・創作・表現活動、 ②スポーツ・身体諸表現や健康問題、③誕生日 の行事(存在感の自覚・父母と自分との愛のき づな、生命、健康、そのころの社会背景)、④ 集会、行事があげられている。自然・社会は、 社会認識分野と自然認識分野とに分けて、学習 内容・領域の説明を行っている。 く社会認識分野> (1年生)学校の中での先生やほかの人々の 仕事、学校の位置とまわりとの関 係、家族の役割、母の仕事 (2年生)いろいろな職業、農作物の栽培、 いろいろな仕事(商店・工場・郵 便・交通などに働く人の姿・喜 び-苦労 く自然認識分野> (1年生)植物を育てる、身近な動物、空気 や日光、土

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年生)生物の環境(虫、魚、カエルなど)、 水に溶けるもの、空気や風、豆電 球と電気 和光小学校では、「生活勉強Jの時間配分と して週6時間(年間204時間)を考えている。 「学級活動」 ・「文化活動」でも136時間で、 「自然・社会」が68時間を設定している。 同校では、低学年のみの生活勉強から発展さ せ、中学年・高学年では「総合学習j実践に取 り組んでいる。「総合学習の構造J を次のよう に描いている。

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1総合学習の目標jでは、① 獲得した知識を「生きるちから」へ転化する。 ②子どもたちを学習主体に育て創造性を育て る、としている。 r2総合学習の性格」では、 3点があげられる。「①学習対象、テーマが総 合的である。しかも、現代社会を生きていく上 で切実な課題性をもっ総合的な性格をもっテー マにとりくむ。②学習スタイルは、問題解決的 で体験的で、しかも探求する学習である。③課 題に集中的、分析的、総合的に迫る。J最後に、 r3発達別の課題と特徴」を加えている。 和光小学校は低学年、中学年、高学年の発達 課題を明らかにして、学習内容・領域について 次のように特徴づけをしている。 く低学年〉……「生活勉強Jの説明と同じ。 く中学年〉……「自然や社会に強く興味・関心 を示し、抽象能力も高くなって くる。物事の因果関係に目が向 いてくるので、問題の中にひそ む課題を解明する学習にとりく む。だから、学習の中で、結果 が明らかで、今日的課題性も含

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み、感じられる対象を選ぶ。形 態としては、個別教科の学習の 成果を総合する比較的ショート の集団学習にとりくむ。また、 実験・実習を多く取り入れ、五 感をフルに使った学習にする。 そして、学び方がわかってくる ものに取り組む。J。 く高学年〉……「抽象能力は更に高まり、因果 関係を捕らえるカが育つ。人 間・自然・社会を対象として、 身辺の生活から今日的課題性の あるテーマを選び、また、教科 書との環流もはかる。そして、 思春期の入り口に立つ子どもた ちは、自立に向かつて葛藤して いる。そのひとりひとりの生き 方にせまる学習を重視する。」 総合学習の時間配分は、週2時間(年間34 時間)であり、「総合学習のテーマ例J には、 3年一「かいこJ

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からだ」、 4年一「多摩川」 「環状8号線」、 5年一「食べ物からのぞく」 「思春期の心とからだ」、 6年一「沖縄J

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私の 憲法手帳」などがあげられている。 111

1998

年版小学校学習指導要領「生活科」 の改訂内容 ー「身近な」社会認識を育てる学習の 扱 い

-1998

(平成

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年度版小学校学習指導要領 で、生活科は教科目標として、「具体的な活動 や体験を通して、自分と身近な人々、社会及び 自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自 分の生活について考えさせるとともに、その過 程において生活上必要な習慣や技能を身に付け させ、自立への基礎を養う」とされた(5)。生 活科は、

1989

(平成元)年度版小学校学習指 導要領で、初めて設定された教科目標は、すで に見たように多くの論議を呼んだ。前回の学習 指導要領と今回との違いは、わずかに前段の部 分で「身近な人々Jがつけ加えられただけであ った。すなわち、前回が「……自分と身近な社 会や自然とのかかわりに関心をもち、」とあっ たのが、今回は「……自分と身近な人々、社会 及び自然とのかかわりに関心をもち、」となっ たのである。 「各学年の目標及び内容Jについては、目標 に関しては前回とほぼ同じであり、ここも「自 分と身近な人々」とのかかわりがつけ加えられ てるのみである。内容に関しては、前回は第 l 学年と第2学年に分けて示されていたが、今回 は大幅に変えられて、

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学年まとめて示してい る。これは

1998

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日の教育課程審議会 答申において、生活科の改善方針に基づくもの であり、「各学校において、地域の環境や児童 の自体に応じて倉IJ意工夫を生かした教育活動 や、重点的・弾力的な指導が一層活発に展開で きるよう内容の改善を図る」を受け入れたもの である。前回の第1学年と第2学年にはそれぞ れ 6つの内容が示され、合計

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の内容があげ られていたが、今回は2学年で 8つの内容に精 選された。 この中で、「身近な社会J にかかわる内容は、 「学校と生活J

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家庭と生活J

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地域と生活J

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公 共物や公共施設の利用」である。また、自分自 身や自分の生活に関する内容である「自分の成 長Jがある。残りの「季節の変化と生活J

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自 然やものを使った遊びJ

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動植物の飼育・栽培J が、「身近な自然Jの内容である。 さて、今回の改訂点である3点にふれておく。 第1点は、今回の生活科の目標で重視する 「身近な人々J とは、具体的にどのような人々 をさすかである。教課審答申では、具体的な活 動や体験の中で「児童が身近な幼児、高齢者、 障害のある児童生徒など多様な人々」と指摘し て、これらの人々と触れ合うことができるよう にするべきであるとしている。 第2点は、精選された第2学年の「公共物や 公共施設の利用」の扱い方である。従来あった 「公園、乗り物や駅」といった具体的な公共施 設名を削除し、「扱う対象や場を広く選択」で きるようにしたと説明している。 第3点は、内容の取扱いでも述べているが、 人々、社会、自然の一体的で総合的な学習の推 進である。これは「地域の人々、社会及び自然 を生かすとともに、それらを一体的に扱うよう に学習活動を工夫するJとなっている。 改訂された学習指導要領で第1学年及び第2

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学年の「内容Jでは、く学校とのかかわり〉に 関して、

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(1)学校の施設の様子及び先生など 学校生活を支えている人々や友達のことが分か り、楽しく安心して遊びゃ生活ができるように するとともに、通学路の様子などに関心をもち、 安全な登下校ができるようにする」となってい る。また、<家庭とのかかわり〉に関しては、

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(2)家庭生活を支えている家族のことや自分 でできることなどについて考え、自分の役割を 積極的に果たすとともに、規則正しく健康に気 を付けて生活することができるようにするJ と している。 さらに、<地域の人々とのかかわり>に関し ては、

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3 )自分たちの生活は地域の人々や 様々な場所とかかわっていることが分かり、そ れらに親しみをもち、人々と適切に接すること や安全に生活するととができるようにする」と している。さいごに、く地域社会とのかかわ り〉に関しては、

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(4)公共物や公共施設はみ んなのものである乙とやそれらを支えている 人々がいることなどが分かり、それらを大切に し、安全に気を付けて正しく利用するととがで きるようにする」として、具体的な施設設備を あげずに、「公共性」一般の抽象的な言い方に かわっている。 IV 社会認識の基礎を育てる生活科実践の分析 生活科は1989年の学習指導要領で新設され て、 1992年の本格実施以来、 10年間の実践を 蓄積してきでいる。数多くの実践者の生活科へ の取り組みの中で、社会認識の基礎を育てる生 活科実践は、民間教育運動のなかでもすぐれた 実践を生み出してきでいる。以下では、学ぶべ き生活科実践の中でも、とくに歴教協や日生連 の実践者の実践をとりあげて検討していく。取 りあげる単元テーマは、前章のE新学習指導要 領で区分した「身近なJ社会認識を育てる学習 領域に従い、<学校とのかかわり〉、く家庭と の か か わ り > 、 < 地 域 の 人 々 と の か か わ り>、く地域社会とのかかわり>とする。 1 学校とのかかわり (1)学校とのかかわりの扱い方 改訂された学習指導要領で第l学年及び第2 学年の「内容Jでは、学校とのかかわりに関し ては、

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(1)学校の施設の様子及び先生など学 校生活を支えている人々や友達のことが分か り、楽しく安心して遊びゃ生活ができるように するとともに、通学路の様子などに関心をもち、 安全な登下校ができるようにする」となってい る。 小学校に入学したばかりの第1学年の子ども にとって、生活科で最初に学習する単元は、学 校にかかわる学習である。この学習は、「学校 たんけん」の実践として取り組まれている場合 が多い。「学校たんけん」の実践の展開では、 子どもを学校生活に慣れさせることをねらいと して、入学後の不安を取り除き、楽しい学びの 場所としての学校に自然にとけこめるようにし たいものである。子どもたちを学校のなかの 「人J

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ものJ

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施設j に出会わせていくなかで、 学校が生活の場であり、学習の場であることを つかませていく活動を組織することが、大切で ある。 (2 )中妻雅彦の「学校たんけん」実践一社会 を見る目を育てる 中妻雅彦(東京・世田谷区桜丘小学校)実践 は、入学して3・4日たって学校めぐりをして いる。上級生の教室、特別教室や職員室などを 見てまわる。学校の中を歩いてゆっくりと見て まわり、 3~4 時間かけている。教室に帰った 後で、「学校の絵をかきたいんだけれど、みん な、覚えているかな。」と問いかけて、見てき たことを書かせている(6)。 中妻は、 1時間で書かせているが、自分の教 室の隣に、校長室がきたり、いきなり図工室や 音楽室がきたりで「おかしな絵になります」と 報告する。そこで、で、きあがった絵を黒板に貼 って、「学校の絵ができあがったけれど、これ でいいかな」とたずねている。子どもたちは、 理科室の実験器具だな・図書・歴代校長の写 真・楽器など、<自分の見てきた教室にあった もの>を克明にかき、それで満足している。話 し合いの中で、ある子どもが「せんせい、べん きょうしていないよ。」と絵の中に勉強してい る人が描かれていないことに気づく。 1年生の

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子どもたちは、この時期には、教室や廊下にあ ったもの、自分の目から見た珍しいもの、知ら ないものに関心を寄せている。 中妻は、ここで子どもの目をきたえようとす る。「漫然と見ていた、学校めぐりに、何を見 てくるかの視点が、決まってきましたJ と言 い、く物を通して学校を見る>のでなく、<人 を通して学校を見る〉という学習に取り組ませ ていく。ここからが、「学校たんけん」の始ま りである。「がっこうたんけんたい」と名前を つけて、「たんけんたいいんしょうJ を持たせ、

1

時間で自分の好きなところを見学しにいく。 グループで学校のいろいろな教室や場所に出か ける。「勉強しているところ」を見つけるとい う使命感があるので、各教室や場所でまじめに 質問もしてくる子どもが出てくる。 もう一度、子どもが見学してきた教室などを 絵に描かせてみる(1時間)。今度は、教室に 「人Jが登場してくる。「もの」から「人」へ、 「子どもたちの見る目が広がっていきました」。 中妻実践では、このように子どもたちの「学校 たんけん」の学習を「人」へ注目させることに より、担任一学校養護主事ー養護教諭一校長と いう、く仕事を通しての人のつながり>をつか むようにしている。 中妻の「学校たんけん」実践のまとめは、学 校の地図作りである。「学校にお客さんやお父 さん、お母さんがきた時に、教室がすぐにわか るような地図を作ろう。」と話して、石けん箱 で学校の地図作りを始めた。作りながら、校庭 に行って確かめたり、何度も足を運んで見に行 ったりした。この時期の子どもたちは全体像を つかむことは難しいが、確かめながらゆっくり と時間をかけて作り上げた。 中妻実践は、子どもの社会を見る目を育てて いく基礎作りの段階で大事なことを指摘してい る。そのひとつは、「学校たんけんJの学習で 珍しいものや変わったものなどのくもの>か ら、学校が小さな社会機能の単位として動いて いることを、

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動いているく人〉へ注目させるこ とにより、見る目を確かなものにしていること である。またもうひとつは、子どもたちに何度 も、文字や絵で表現させることを行っているこ と、実際の場所に行き、確かめながら表現を確 かなものにしている点である。ものごとをリア ルにとらえ、調べたり、発表したりする活動を 重視している。 2 家庭とのかかわり (1)家庭とのかかわりの扱い方 家庭とのかかわりの内容に関して、改訂され た学習指導要領は、

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家庭生活を支えてい る家族のことや自分でできることなどについて 考え、自分の役割を積極的に果たすとともに、 規則正しく健康に気を付けて生活することがで きるようにするJ としており、家庭生活におけ る家族と自分の位置づけを学ぶこととしてい る。社会生活の機能集団としての「家庭Jの役 割というより、家庭生活の中での支え合う家族 や自分の果たすべき役割、守るべき生活習慣上 の留意などが、強調されている。 かつての低学年の社会科では、家庭生活や家 族を扱った実践では、「仕事J に注目させて家 事労働と職業労働の違いをとらえさせ、家庭の 仕事である家事労働の大切さをつかませようと することが多かった。生活科が実施されるよう になってからも、低学年社会科と同様の発想で 取り組まれる実践も多く見られる一方で、子ど もの独自な「家族」のとらえ方に注目したり、 家族生活での自分の役割や、自立に向けての心 構えを扱う実践が見られるようになった。 (2 )平野正美の「わたしの家族」実践 一子どもの家族・家庭生活の実態を踏ま えた、家の「しごと」学習一 平野正美(東京・和光小学校)実践は、

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時 間目に自分の家族には、いったい誰と誰がいて、 どんな構成になっているかを考えさせている (7)。導入ではポラロイドカメラを使って、 6 つの班の子どもたちをそれぞれ写して、「家族 (擬似的)Jの記念写真にしていった。 6人の子 どもが「家族」としてl枚の写真の中におさま った。 そのあとで、本当の自分の家族構成を語り合 うようになると、授業はたいへん活発化してい った。ある子どもが、「うちにはセントバーナ ードがいるよ」と発言した。ここで、平野は

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「飼い犬や闘い猫を家族に一員としてとらえる 見方は、この時期の子どもには当然あるのだし、 そういう見方をいじくっていったいそこから何 が生まれてくるか、といういうことから考えて も、そっとしておいてもいいようなことかもし れません」といいながらも、「私は『家族』を きちんととらえさせたいとおもって、すかさず、 とのあゆむ君の発言をとらえて、『よく、犬も 猫も家族の一人として、たいせつにかわいがっ ている家があるでしょう。犬も猫も、本当に家 族なのかなあ?~と、切り出していきましたJ と述べている。 平野は子どもの家族観が間違いであり、それ を訂正させ、修正させねばならないと考えた。 教師のここでの介入は、適切であったかどうか。 子どもにとっての家族観は将来にわたって、永 遠に修正されないものだろうか。平野実践では、 「私の質問が終わるか終わらないかのうちに、 うみちゃんが、いつもの大きな声で叫ぶように して言いました。『犬は犬の家族!~J 0

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犬は 本当に家族の一員なのか?J をめく守って、子ど もたち長い討論が続いた。 2時間目は、「母の日のひみつのカード J を 使って始まった。お母さんにあげた「ひみつの カード」を、お母さんがどんなことに使ってく れたかを聞くと、約半数から手が上がり、つぎ つぎと発言が相次いだ。平野は黒板に答えを書 いていく。 お母さんがやっている仕事(家事労働)のう ちで、どんな手伝いをしたかを発表させている。 めだまやきづくり ・くつあらい ・おそうじ ・さ らだづくり ・かいもの・おふろそうじ ・せんた くほし・せんたく ・さらあらいなど。その中で、 仲間集めをして、「そうじJ

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せんたくJ

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りょ うりJ にまとめていく。そして、「家族構成や お父さんの、お母さんの職業によって、これら の家事労働の分担の仕方もちがっていて、まと めていく上でのむずかしさを感じた。J という。 最近の子どもたちの家庭生活は、簡単にまと めきれない、複雑で多様なところがある。家族 構成も多様であり、父母の職業も、労働時間も、 労働形態も多様になっており、就寝や起床の時 間、そして家族で過ごす一体感を持てる団らん の時間も多様である。そのなかで子どもの「仕 事の分担Jも、「果たす役割Jも、多様化せざ るをえないのである。平野が気づいたように、 一律的な単純な家事労働の扱いでは、子どもの 現実の生活感とずれてしまうのである。 次に、平野は、「お母さんの音集めJ を子ど もに呼びかける。最初は学級の掃除道具を用意 して、ほうき ・ちりとり・ばけつ ・はたけを取 り出し、実際にやってみて、音を言葉にかえさ せていく。子どもの感性豊かな言葉が生まれる。 はたきは、「パタパタjでなく、「バサパサJだ ったり、「ダツダツJだ、ったりする。このように 子どもたちが自分でとらえた音を家で集めてき て、学級全体で確認していく授業として展開し た。平野は、子どもの音のつかまえ方が「おと な(私)のそれとははっきりちがっていたので した。まったく“常識的"でないし、とっても よくその“音"にむきあっているのです。」と している。 最後に平野は、画用紙に「お母さんの仕事の 音が聞こえてくるような、お母さんの絵を描い てみようね。」といって、この授業を締めくく っている。平野はここでも、子どもの意外な反 応に驚き、感動している。つまり授業でやった 音調べから、お母さんの家事労働に焦点が当て られて描かれるものと予想していた。多くの子 どもは家事労働の場面を描いてきたが、「ナー スキャップをつけたお母さん」と「じよき(手 術)の音J を描いた子どもがいた。平野は、母 親の仕事に誇りを持ち、母が夜勤の時の家庭生 活での協力ぶりを語る子どもに、生活のたくま しさを感じている。

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3

)倉持祐二の「おうちのひとのしごと」実 践 ー「食事づくりJの体験学習と食材から 「人」のつながりを学ばせる一 倉持祐二(奈良教育大学附属小学校)は、全 15時間扱いの実践で、おうちの人の仕事に取 り組ませた。実践の重点は次の2点である。 1 つは「おうちのひとのしごとJの実体験で「カ レーを作るお母さんJ を取りあげて、材料を買 うところから、調理・後かたづけまでの仕事を 体験させること、 2つは自分の目で調べる活動 から父母への聞き取りをする活動へと発展させ

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ていくこと、である。指導計画は、次の通りで ある (8)

第 1次 ぼくのかぞく・わたしのかぞく (2時 問) 第2次 「しごと」って何だ(1時間) . IおこるJIテレビをみるJはお 母さんの仕事? 第

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次 毎 日 の く ら し と 家 族 の 仕 事

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8

時間) ・・・カレーをつくるお母さん、 -せ んたく、 ・おうちのひとの仕事 第 4次 つとめるお父さん・お母さん (2時間) … つ と め る お 父 さ ん 、 お 母 さ ん にインタビュー、 -お金をかせぐ のはしんどいか? 第5次 まとめ (2時間)……お父さん・お母 さんへの手紙 倉持は、「おうちのひとのしごとJ実践とし て、カレーづくりや洗濯の仕事の過程などを細 かく丁寧に学習させ、仕事をとらえる視点を身 に付けさせ、その後で家族の仕事の全体を学習 させる構成にした。「カレーをつくるお母さん」 の授業は、 3時間の構成である。

1

時間目は、カレーづくりの仕事を各自の体 験を踏まえて、子どもの「ぼくがつくったカレ ー・私がつくったカレー」の作文をもとに、カ レーづくりの過程や仕事をわからせることに力 点を置いた学習である。カレーづくりは、

1

材料を買う、 2 料理をつくる、 3 もりつけ る、 4 かたづける、の4つの仕事に大きく分 けて、とらえさせている。 1は、たまねぎ・に んじん・じゃがいも・肉を使うことを確かめ て、材料を買うときにお母さんが気を付けてい たことを発表させている。

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では、次の① ⑤ の料理の手順を図示して、この手順の中でお母 さんや自分がした仕事をさらに細かく発表させ る。「①皮をむく→②切る→③いためる→④に る→⑤味をつけるJo 3では、もりつけの時の 様子を、 4ではお皿やスプーンを洗った時の様 子を発表させていく。子どもたちは、友達の発 表を聞いて各家庭の家々でのカレーづくりや、 食べ方の違いに気づいていく。

2

時間目は、「カレーづくりをするお母さん」 をテーマにした授業である。カレーの5つの手 順を表した絵を、順番をバラバラにして示すこ とから始め、子どもに正しい順に並べさせた。 倉持は、「カレーづくりのなかで、自分でうま くできたなあと思う仕事は何ですか ?J と発問 している。 16人の子どもは、じゃがいもを切 る仕事がうまくできたと答えている。反対に、 「難しかった仕事は何ですか?J と問うと、じ ゃがいもの皮をむく仕事と答えた者が

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人い た。 ここで実際にうまくできたかどうかを、包丁 で4つに切らせてみる。じゃがいもを4等分さ せる仕事をさせた後で、「今度は、すみちゃん のお母さんにやってもらいます。まさひで君と すみちゃんに、みんなの代表で出てきてやって もらいます。」と言って、お母さんの切ったじ ゃがいもと2人の子どもの切ったものを比べさ せて、他の子どもに意見を言わせる。お母さん の切り方は「トントンJ、2人のは「ドンドンJ と切っていたとか、

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人のは大きさがバラバラ だが、お母さんのは同じ大きさとか、いろいろ な意見が出ている。 3時間目は、「おいしさの秘密jの授業であ る。倉持は、「家族のために工夫しているお母 さんの姿を見つめさせたい。J とd思って取り組 んだと語っている。「お母さんのつくったカレ ーのおいしさのひみつは何だろう ?J と発問す る。子どもたちは、「味をつけるのがむずかし い」ことに気づく。次に、「みんなが、カレー をつくる時に気をつけてところはどこでした か ?J と問いかけている。にるところとか、い ためるところとか、皮をむくところとかが出る。 そこで、この後

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人のお母さんに登場してもら う。お母さんたちは、「新しい材料を買うJ I安 く作るJI肉を細かく切るJI野菜がきらいなの で、野菜を食べやすいように細かく切って入れ るJ I甘いカレーをつくるJ IサラダをつけるJ など、各家庭で工夫している点を話してもらっ た。 倉持の

1991

年度のカレーづくり実践は、カ レーを作って、食べる活動に焦点化した「もの」 にこだわった実践であり、子どものカレーづく り体験から家族の仕事の具体的な中身に迫ろう とするものであった。実践展開は、「もの」に こだわる構成となっており、体験活動もわかり やすい。子どもの好きなカレーライスの中に、

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各家庭による違いや家族による工夫の違いがあ ることも、あわせて発見させていくという試み であった。 《倉持の2000年度「カレーづくりJ実践》 ところで、 2000年度に再び、倉持は「カレ ーづくりJ実践を展開している。 2000年度実 践は、カレーの中の材料の「ものJ (じゃがい も・にんじん・たまねぎ・肉)にこだわって、 カレーづくりを体験させた実践である点では同 じである。 2000年度実践が、「給食のカレーを つくろう」と子どもに呼びかけていく構想をと ったので、給食室のおばさんからはじめて、カ レーにかかわる「人Jに次々と出会わせていく 展開となっている。材料を運んでくるお庖の人、 材料のじゃがいも・たまねぎ・にんじんなどを つくる生産農家の人に、出会わせていくという ように、「人」とのつながりを子どもに追求さ せていき、奈良市内の「食材の新鮮さJにこだ わる食品庖のおじさんにインタビューさせた り、北海道の「農薬をできるだけ少なくするJ じゃがいも生産の農家のおじさんに、手紙での やりとりをさせたりしている。 倉持実践は、カレーづくりという子どもにと って大好きな食べ物を学習テーマに取り上げる 中で、食材・調理に関わる「ものJと「人」に 出会わせ、追求させていった実践であった。倉 持が周到に準備した、「もの」と「人」を通じ て、子どもたちは「見える世界」から「見えな い世界」に入り込んでいき、現実の生きた社会 の中で、自分の食生活があることに気づいてい った。 2000年度の倉持実践は、 10年前の同一 テーマを深めたものであり、子どもが生きてい る社会の中で、人とのつながりにおける自分を 見つめさせたものである。倉持の生活科実践の 確かなあゆみであるといえよう。 3 地域の人々とのかかわり (1)地域の人々とのかかわりの扱い方 改訂学習指導要領では、地域の人々に関わる 内容は、次のようになっている。

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)

自分た ちの生活は地域の人々や様々な場所とかかわっ ていることが分かり、それらに親しみをもち、 人々と適切に接するととや安全に生活するとと ができるようにするJ。前回の1989年版の学習 指導要領では、第2学年の内容に

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(1)自分 たちの生活は近所の人や屈の人など多くの人々 とかかわっていることが分かり、日常生活に必 要な買い物や使いをしたり、手紙や電話などで 必要なことを伝えたりするとともに、人々と適 切に対応することができるようにする」となっ ていた。今回の改訂は、これに対応する「地域 の人々J に関わる内容から、近所・庖・手紙や 電話などの具体的な用語がいっさい省かれてい ることがわかる。具体的な指示用語がないだけ に、どのようなテーマでの単元展開も、今回の 学習指導要領のもとで可能となったといえよ

生活科が発足してからも、地域の人々に関わ る単元の展開は、低学年社会科において実践さ れてきた内容と同様の実践が多かった。地域の 人々に関わる内容として考えると、 1977年版 学習指導要領の社会科第

2

学年の目標は、

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(1) 職業として仕事に携わっている人々はそれぞれ 工夫していることや、それらの仕事は自分たち の世界にとって必要なものであることに気づか せる。 (2)職業としての仕事を具体的に観察 させ、効果的に表現させるけとなっていた。 農家で働く人々・工場で働く人々・乗り物で働 く人々・郵便局や郵便の集配で働く人々など、 身近な生活の場で働く人々のテーマが扱われて いた。 低学年社会科の実践として、「稲栽培から米 づくりJ、「麦栽培からパンづくり」、「大豆栽培 から豆腐づくり」、「町探検でお庖やさんさが し」、「子ども郵便局をつくるJ

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町探検から町 の地図づくり・町の模型づくりJ

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手作り和紙 の手紙のたびJなど、子どもの体験活動を中心 にした学習で、自分と社会のつながりを考えさ せていく教材が開発されていた。それらの実践 の多くは、生活科にも引き継がれていった。子 どもの生活からますます希薄になる労働体験や 地域社会への一体感が失われつつある現状で は、こうした中でくものづくり〉という直接経 験や体験を重視する学習や地域に生きる魅力的 なく人との出会い>の実践は、今後いっそう重 要な役割を果たすであろう。その場合は、自然 認識の基礎を育てることとのかかわりを深め

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て、総合化した扱いで単元を展開していった方 がよいように思われる。 (2 )中妻雅彦の「おにくやさんのたんけんに いこう」実践 一地域の庖の見学 ・聞き取り学習から 紙芝居 ・絵本づくりの表現活動へ 中妻は、地域のお庖やさんを取り上げて、 「子ども達が日常の買い物や地域で生活してい るなかで、知りたがっていること」を中心に学 習しようと考えた (9)。子どもの興味や関心の 広がりに答える学習にしようとして、「お庄の 人の寝る時間はいつか、どこから品を買ってく るか、どうやって売るか」などの疑問から、 「もっと知りたいこと・わかりたいことJ を考 えさせる構成にした。学区の中の鈴木さんとい うお肉やさんを教材にした。クラスの子どもの 家でもある。最初の「地域たんけんJから戻っ て、お庖のことで聞きたいことを確かめる。ど この庖なら知りたいことを教えてくれるかを話 し合い、鈴木精肉店に見学にいくことを決めた。 見学した後の授業で、中妻は次のような発問を している。 「見学して、見たことや聞いたことをプリン トに書いて下さい。鈴木やさんで売っていた 物を発表して下さい。」 子どもの答え、「ぶ たにくJ

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ぎゅうにくJ

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とりにくJ

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コロッ ケ、からあげJ

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カレーやシチューのもと」 「やきそば、ラーメンJ 「鈴木やさんにあった道具や機械を発表して 下さい。」一「スライサーJ

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フライヤーJ 「ほうちょうが16本あった。J

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ほうちょうの やすりがあった。J

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冷蔵庫が、ものすごく大 きかった。J

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小さい冷蔵庫もあった。J

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レジ とかはかりとかがあった。J

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足でふむと水が 出る水道があった。J

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すごく大きい冷蔵庫の 中に、ぶたにくがぶらさがっていた。ちょっ とびっくりした。きもちわるいなと思いまし た。J

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牛肉は、箱にはいっていたけど、豚肉 は、 1匹のままあった。 J 「おじさんやおばさんのようすを発表して下 さいJ一「しろい白衣を着ていました。 J

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白 いゴムのまえかけでした。J

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あたまにスカー フをしていました。J

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ながぐつもしろでし た。J 「鈴木やさんのにおいはどうでしたか」一 「肉のにおいがしました。J

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すごくくさかっ た。J

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油みたいだった。」 子どもが鈴木精肉庖のおじさん、おばさんか ら聞きとりしたことは、子どもが興味・関心を 持っていた内容であった。「鈴木やさんのおじ さんとおばさんのお話について聞きます。仕事 をしていて、うれしいことは何ですか。J

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仕事 をしていて大変なことやつらいことは何です か。J

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仕事をしていて、気をつけていることや 工夫していることを教えて下さい。」などの質 問は、子どもの知りたいことより、大人にとっ て知りたい内容に近いのではないか。 その他、「豚肉は組合からくるけど、牛肉は 会社からくる。J

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豚肉は組合で、持ってきてくれ る。千葉県からくる肉が多い。J

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夜は10時く らいまで仕事があるといっていました。J

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肉を 切るのが難しいといっていた。J

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お肉を料理す るものをたくさん売っていた。」見学後も、何 回も聞きに行く子どもが出てきた。 最後に、中妻は本実践のまとめとして、鈴木 やさんの紙芝居と絵本づくりを行っている。中 妻は、自分たちの好きなグループを作らせて、 ふだんから見学や体験のまとめの学習として紙 芝居や絵本を作らせている。ここでは、紙芝居 と絵本づくりを完成させた後で、各グループの 発表会を行い、質問の時間をとり応答させてい る。紙芝居や絵本で表現し、発表していくこと は、「見学・体験を認識に高めていくために大 切なことです。」と中妻は言う。鈴木やさんの 紙芝居では、豚の生産から、流通 ・販売 ・消費 までを紙芝居にしたのがあり、何回も繰り返し て観察してきた成果が窺われたと、記録してい る。 中妻実践では、地域の人々に関わる単元のテ ーマとして取り上げていく「人」は、地域の住 民であり、かつ学級の子どもの親族であること が多い。子どもにとっての身近さということも あり、何回も足を運んで聞き取りに行きやすい、 インタビューに行きやすいなどの条件が考慮さ れている。「野菜を育てている山田さん」実践 は、都市農業の中で、畑地で野菜を作り、畑の 横に「無人スタンドJ を作り、作物販売をして いるおじいさんを取り上げた実践である。通学

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路になっているところにあり、子どもの家庭が よく利用する、廉価な野菜スタンドの設置者に 話を聞きに行かせている。よく目にしている当 たり前のスタンドを調べていくと、さまざまな 世の中のつながりが見えてくる。 (3 )佐々木勝男の「大豆からとうふをつくろ う」実践 一大豆の栽培から豆腐づくりへ、栽培活 動と調理・加工の総合学習一 佐々木勝男(神奈川・川崎市浅田小学校)の 「大豆から豆腐をつくろうJ実践は、 5月の中 頃に大豆をまいて、収穫した後の10月下旬に 豆腐作りを行った、息の長い実践である(1

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)

。 花壇に行く前に、大豆について話し合っている。 教室の床に世界地図を広げて、「この大豆はど こで生まれたのかな?さあ、クイズだよ。当て てごらん。」と問いかける。中国の北方で、 2000年くらい前に日本に伝わったことを知ら せる。 次に、校舎から出て園庭に行く。腐葉土を一 面にまいて、畝を作る。 30センチぐらいの幅 の畝作りをしてから、大豆をまく。 1班から順 番にひと握りの大豆を持たせて指で穴をあけさ せ、 1つ1つ丁寧にまかせる。約1週間で、大 豆は小さな目を出す。観察カードを持たせて、 大豆の生長の観察記録を取らせる。乙のスケッ チは、秋まで続けられl冊のスケッチブ、ツクが 出来上がる。時々、草抜きをして、 7月ごろに 間引きをする。 9月中ごろ、大豆の葉も茶色に枯れる。天気 の良い日を選んで、収穫をする。

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1粒の大豆 が何粒になったかな、数えてみよう。」と言っ て、 1人の子どもに1本の大豆を持たせて、数 えさせる。 1本あたり100粒前後になる。バケ ツに入れた大豆の収穫量を計算する。子どもか ら「算数で習った時のデシリットルとリットル ますを使ったらいい」と言う声が出て、実際に 持ち出して図ってみた。 「豆腐づくりJ をする前に、地域の豆腐屋さ んの見学にいっている。自分の家の付近に豆腐 屋さんがあるかどうかを尋ねてみる。メグミち ゃんの家の付近にあるとのことで、早速3日後 には見学を申し込んで、実施した。幸繁食品と いう庖まで彼女の案内で行き、豆腐屋さんの見 学を行った。子どもたちは幸繁食品の社長さん にインタビューをする。豆腐の原料の大豆はア メリカから買っていること、働いている人は8 人、朝4時から午後4時まで仕事していること、 水を使う仕事なので冬が大変なこと、一日の豆 腐生産量は約4000個、大きな会社の社員食堂 に納めていること、大師地区には昔50軒あっ た豆腐屋が、今は15軒くらいに減少したこと、 なと、がわかってくる。豆腐の工場に入れてもら い、豆腐作りの現場をみせてもらう。豆腐がで きる工程にそって説明してもらいながら、見学 をした。見学を通して、豆腐作りへの関心と意 欲を高めた。 豆腐作りは、 10月下旬になってやっと実施 できた。作り方は、豆腐屋さんに教えてもらっ ていた。子どもたちは見学によって大豆からと うふに変化するイメージはつかめていた。豆腐 作りの当日は、 10人ほどのお母さんに協力し てもらう。出来るだけ手助けをしないようお願 いして、子どもたちにはグループごとに作業分 担を決めさせ、豆腐作りを行わせた。豆腐作り の工程で注意する点は、大豆をミキサーにかけ る時にいれすぎないこと、呉(ご)があまり固 い時、水を加えてかき混ぜてから湯鍋に入れる こと、にがりを入れる時、鍋の表面に満遍なく 入れるとと、かき混ぜると固まりかけた豆腐が くずれてしまうこと、などの諸点である。子ど もたちに細かい注意を与えていることが、佐々 木の実践記録から読みとれる。佐々木は、豆腐 作りのポイントは、何といっても水と火の加減 である、と書いており、事前に母親たちと試食 会を行ってから実践している。 実践記録の最後に、佐々木は「大豆は生活科 の教材としては、たいへんすぐれている」と書 いている。豆腐の他にも加工の範囲が大変広い こと、大豆の豆まき大会ができること、豆研究 から世界と歴史の学習に広げられることなど、 「大豆は総合学習としてもたいへん価値ある教 材Jであるとも言っている。佐々木は、このよ うな「連鎖性のある教材」を開発していくこと で、生活科の学習が豊かになると提言している が、その通りであろう。

(13)

4 地場社会とのかかわり (1)地域社会とのかかわりの扱い方 1998年版の改訂学習指導要領で、地域社会と のかかわりに関わる内容は、

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(

4

)

公共物や公 共施設はみんなのものであることやそれらを支 えている人々がいることなどが分かり、それら を大切にし、安全に気を付けて正しく利用する ことができるようにするJ と表現されている。 公 共 物 や 公 共 施 設 に 関 す る 内 容 に 関 し て 、 1989年版学習指導要領では「乗り物や駅など の公共物の働きJ (第

2

学年)、「近所の公園な どの公共施設J (第1学年)とあったが、今回 は具体的な指示がなくなった。 地域社会とのかかわりに関する実践として は、これまで「町たんけん」に関する実践と、 「パス・鉄道J

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公園J

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図書館J

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郵便局Jなど 具体的な施設やテーマを取り上げた実践の2類 型があった。地域社会のかかわりの内容は、前 節の地域の人とのかかわりの活動内容とも、重 なり合うことが多い。 (2 )春名浩子の「楽しかった町探検!J実践 一町探検から身近な地域の地図づくり の学習(空間認識の形成)一 春名浩子(埼玉・草加市花栗小学校)は、 2 年

2

学期に自分たちの「町探検Jの学習をして、 地域を概観する授業を行っている(11)0 1時間 目に、春名は「家の近くで自分の知っているこ とで、みんなに知らせたいことをお話して下さ い。」と子どもに呼びかけた。子どもたちは、 公園の場所が「家の近くにあります。J とか、 「幼稚園の近くの水たまりは、 8の字の形にな る。」とか、「家の近くの田んぼのそばの木にき のこがはえている。」とか、思い思いの発言を する。発表の後で、教師は「家の近くっていっ たけど、その家の場所がわからないね。どうや って家の場所を教えてあげたらいいでしょう か?J と子どもに課題を投げかけた。 次の2時間目は、地図を作製する。 3時間目 は、地図を使いながら、発表の続きを行う。き のこの話をした子は、「この前話した後に見に 行ったら、きのこがなくて、渋柿がありました。」 と発言して、前の発表の訂正をした。足を運ん で、自分の見たものを確認する作業の大切さを、 春名は子どもに教えている。 4時間目は、町探 検の準備を行う。春名が、「行ってみたい所は どこですか?J と誘うと、すぐに3カ所があが る。すすき・ 8の字の水たまり・トンボの場所。 これに加えて、公園のどんぐり、「綿のある所J が出た。次の5---7時間が、 1回目の町探検で ある。 2クラス合同で出かけるが、「綿のある 所J とは、精子の修繕や机・棚などを製造する 家具工場であった。綿は椅子に使われており、

1

人の子どもが時々ここに寄っておじさんと交 流していたことがわかった。 8時間目は大きい 地図を見ながら、 2回目の町探検でさらに詳し く調べたい所を学級で考えた。庖・工場・公 園・幼稚園などの写真の貼つである地図を見な がら、「少人数のグループで探検しますJ と予 告して、行ってみたい所や調べたいことをカー ドに書かせた。 9---11時間目はグループで相談させ、 12-- -13時間目で2回目の町探検に出かけた。自分 の町を地図に描かせ、町探検というフィール ド・ワークで確認して、自分の町の空間認識を 形成している。春名は、 9時間から13時間ま での子どもの活動を重視している。「これから 先の学習の土台となる力J

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社会科での学習の 土台となる力」につながる学習であるからだと 言う。特に、地域のそれぞれの「場J (ところ) にいる「人」についての調べ学習を詳しくする ようアドバイスしている。最後に、 14---17時 間目で発表会の準備を行い、 18---19時間目で 発表会を行った。家具屋のアートフ

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ニチャー についての劇があったり、調べてきた綿につい ての発表が多くあった。 1人の子どもの「綿J へのこだわりを、学級全員が町探検をする中で 共有していき、多くの子どもが綿にかかわるさ まざまな調べ学習を行った。春名は、「個の課 題が全体の課題になるための手だてJ を今後考 えたいとしている。 まとめ

2002

4

月から「総合学習の時間Jが、小学 校、中学校で実施されるようになる。さいごに、 総合学習実践が展開されてくる時代において、

(14)

生活科はどのような姿になっていくのかを考え てみる。 ①教科としての生活科の存在価値が失われる のではないかと思われる。総合学習を長期間、 実践してきている伊那小学校、奈良女大附属小 学校などの低学年実践から見ると、生活科はほ とんど存在価値はない。つまり、「総合学習J として、子どもの自主的な探求能力を伸ばそう とすればするほど、単元テーマも子どもの自由 で任意なものになる。生活科のように単元テー マを決めることが、子どもの興味や関心を重視 し、体験的活動を主とした学習にそぐわなくな る。 ②子どもの追究する社会認識に関わる単元テ ーマを、狭く限定しないほうが良いと思う。社 会認識に関わる学習単元は、今後は「地域」の 社会事象や自然事象に関するテーマとして発展 的に学ばせることや、それらの複合的なテーマ を、子どもが問題解決的な学習によって追究し ていくことにした方がよい。 ③従来の言われてきたような社会認識の内容 を分けていくような考え方、すなわち生産と労 働の認識、時間認識、空間認識、人権認識など のような区分はあまり、意味を持たなくなって くるのではないか。子どものその時々での判断 により、社会認識に関わることに傾斜する学習 になれば、社会認識の基礎の学習といえるだろ うし、自然認識に関係する単元の取り扱いに重 点がかかれば、自然認識の基礎学習といえる。 はじめから狭い枠組みの限定をつけないで、子 どもの学び、の方向にそった単元展開を進めるこ とにより、柔軟に対応する方がよいのではない かと考える。 《注》 (1)滋賀大学教育学部生活科運営委員会編 (編集代表木全) ~生活科講義資料集』 (1995年3月)、同『改訂生活科講義資料 集J (1999年3月)。生活科誕生の背景に 関して、同資料集所収の清水毅四郎『合 科 ・ 総 合 学 習 と 生 活 科J(繁明書房 1989年7月) I章論文が詳しい。

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2

)歴教協の戦後低学年社会科実践史を全体 的包括的に検討したのものに、中野照雄 の研究成果がある。中野『歴史教育者協 議会の低学年社会科実践J (兵庫教育大学 修士論文 1992年)。中野は歴教協の小 学校1・2年生分科会担当者として、低 学年社会科実践の成果を生活科実践に引 き継ごうとした。 ( 3 )中妻雅彦『いきいきわくわく生活科~ (あ ゆみ出版 1992年) (4)丸木政臣・行田稔彦編著『和光小学校の 生 活 べ ん き ょ う 上 ・ 下J(民衆社 1990年第2刷 初 版1989年) (5 )文部省『小学校学習指導要領J(1998年 10月 ) 、 同 『 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 生活編J(1999年5月) (6 )中妻『前掲書』 (7 )平野正美「わたしの家族J (丸木・行田編 著 『 前 掲 書 下J) (8 )倉持祐二「モノを通して自然・社会・人 聞を学ぶ生活科づくりJ (教育科学研究 会・三石初雄・白井嘉一編『生活科を創 りかえる』国土社 1992年)

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おうちのひとのしごと」実践ー1991年 度「カレー」づくり、 2000年度「カレーJ づくりに関しては、河崎かよ子の分析が ある。(河崎「生活科『食べ物』実践の検 討J~社会科教育の創造』第 8 号 滋賀大 学教育学部社会科教育研究室 2001年3 月)

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)中妻『前掲書』 (10)佐々木勝男

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学び」の共同をつくる社 会科の授業J (あゆみ出版 1998年) (11)春名浩子「楽しかった町探検!J (~歴史 地理教育』第613号 2000年9月)

参照

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