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デューク シンガポール国立大学における Team-based learning(tbl) について : 多角的な視察報告 153 医学教育 2011, (3):153~157 デューク - シンガポール国立大学における Team-based learning(tbl) について : 多角的な視察報告

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(1)

医学教育 2011,42(3):153~157

報 告

デューク-シンガポール国立大学における

Team-based learning(TBL)について

:多角的な視察報告

高 田   和 生

*1

 鈴 木   利 哉

*2

 秋 田   恵 一

*3

奈 良   信 雄

*4

 田 中 雄 二 郎

*5 要旨: 1) PBL テュートリアルに代わりうる教育方法として注目されている TBL の正確な導入のために,背景理論としくみ,そ してその実際と運営面を学ぶべく,デューク ︲ シンガポール国立大学の視察を,5 日間にわたり多方面から行った. 2) TBL は個人およびチームが学習および議論に積極的に精力的に取り組むよう内的動機づけを促す作用が強いが,それ には TBL 得点の最終成績への反映,取り組む課題の特性,ピア評価などが寄与している. 3) TBL の可能性が十分発揮され,単なる多肢選択式問題による知識習得度確認目的の試験の延長となってしまうのを回 避するためには,備えるべき特性に配慮した綿密な課題策定が重要である. キーワード:チーム基盤型学習法,TBL,PBL テュートリアル

Team-Based Learning at the Duke-NUS Graduate Medical School Singapore Kazuki Takada*1 Toshiya Suzuki*2 Keiichi Akita*3

Nobuo Nara*2 Yujiro Tanaka*4

Abstract

1) We visited the Duke︲NUS Graduate Medical School Singapore to learn the administration and management of, and the theory behind, team︲based learning (TBL), a candidate educational method to replace the problem︲based learning tutorial.

2) TBL motivates students to prepare for and engage in discussion. The grading of performance in TBL, certain characteristics of assignments, and the use of peer evaluation all promote individual and group accountability for learning.

*1 東京医科歯科大学医歯学融合教育支援センター,Center for Interprofessional Education, Tokyo Medical and Dental University

[〒 113︲8519 東京都文京区湯島 1︲5︲45]

*2 新潟大学医学部医学科総合医学教育センター医学教育推進部門,Division of Medical Education, Comprehensive Medical Education Center, Faculty of Medicine, Niigata University

*3 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床解剖学分野,Unit of Clinical Anatomy, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University

*4 東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター,Center for Education Research in Medicine and Dentistry, Tokyo Medical and Dental University

*5 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床医学教育開発学分野,Department of Medical Education Research and Development, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University

(2)

 知識習得偏重で講義中心であった卒前医学教育 は,内的学習動機付けと問題基盤型の学習を主体 とした成人学習理論にもとづく教育へと大きく転 換されつつあり,その根幹をなすのが Problem︲ based learning(PBL)テュートリアルである. しかし,PBL テュートリアルは運営面,特に テューターの配備が教育機関にとって大きな問題 である.我が国は欧米に比べ教育機関における教 員数が少ない一方,医師不足を受け医学部定員が 増員されつつあり,今後テューター配備がますま す難しくなり,結果 PBL テュートリアルが十分 な教育効果を発揮できなくなる可能性が懸念され る.  そのため PBL テュートリアルに代わる教育方 法 が 模 索 さ れ て い る が,Team︲based learning (TBL)が近年特に注目されている.TBL は, 1980 年代にオクラホマ大学にて経営学を教えて いた Larry Michaelsen(現セントラルミズーリ 州立大学経営学教授)が,学習者主体の能動的学 習形態として開発した教育方法である.学習内容 が事前に学生に指定され,教室では学習到達度確 認および学習内容の応用に主眼を置いた個人およ びチームでの演習に時間が割かれる.TBL は学 習者に効果的な内的学習動機づけを行い,十分な 学習準備と積極的な議論への参加を促す作用を有 するものであり,PBL テュートリアルに代わる 教育方法であるとされ,国内外の医学教育機関に 取り入れ初められている1)  我々は TBL の導入を検討するにおいて,背景 理論としくみ,そしてその実際と運営面を学ぶべ く,2007 年の開校時より TBL を中心としたカリ キュラムのもとで教育しているデューク ︲ シンガ ポール国立大学(以下 Duke︲NUS)を 5 日間に わたり多方面から視察してきたので報告する.

Duke-NUS における TBL:Team LEAD

 Physician︲scientist の養成を目的として,シン ガポール国立大学(NUS)が米国デューク大学 と提携して医科大学として新設し 2007 年に開校 したのが Duke︲NUS である.教育カリキュラム は米国デューク大学と同じく,1 年次に基礎医学 を学び,2 年次と 4 年次に臨床実習を行い,3 年 次には 1 年間研究室配属にて研究活動を行う.米 国デューク大学では 1 年次の基礎医学教育は講義 主体であるが,Duke︲NUS では TBL を取り入れ ている.具体的には,1 年次履修内容は 5 つのモ ジュールに分けられ,それぞれにおいて知識習得 を米国デューク大学より提供される基礎医学の講 義ビデオの自己学習と少数の補足的授業や実習に て行い,知識定着強化およびその応用演習を教室 にて少数教員の参加のもと週 2 日間の TBL によ り行っている.Duke︲NUS が講義や PBL ではな く TBL を導入した理由は,①「膨大な知識を処 理しながらチームで問題解決にあたる」という将 来の医師と同じ環境を創出すること,②教員側で 学生の学習内容のある程度のコントロールを行う こと,③教育を効率化すること,であった.  1 年次の初めに 7 人ずつのチームが構成され, 1 年間維持される.週 2 日行われる TBL では, 学生はまず午前中に知識習得確認および午後に行 われる応用演習の準備を目的とした多肢選択式問 題に取り組み(Readiness Assurance Test: RAT), 午後に知識応用学習を目的とした演習問題に取り 組む(Application).Duke︲NUS では,この RAT および Application よりなる TBL セッションを, チームを基盤として学び (Learn),議論に参加し (Engage),知識を応用し (Apply),個人として およびチームとして成長する(Develop)という 理 念 か ら, そ れ ぞ れ の 頭 文 字 を と っ て Team LEAD と呼んでいる.

 Duke︲NUS における Team LEAD の具体的な 時間割を表 1 に示した.まず RAT において,あ らかじめ指定されていた学習範囲から 25 問程度 が出題され,資料閲覧不可の状況(close︲book) に て ま ず 個 人 で 30 分 で 解 答 す る(Individual RAT: IRAT). 解 答 は 聴 衆 者 応 答 シ ス テ ム

3) To obtain the maximum overall benefit from TBL and to exploit group dynamics for effective learning, well︲designed assignments are the key.

(3)

(Audience Response System: ARS)を通して行 う.次の 30 分は同じく資料閲覧不可のままチー ムとして同じ問題に取り組み,解答もチームとし て 行 う(Group RAT: GRAT). こ の 際, ス ク ラッチカード(Immediate Feedback Assessment Technique: IFAT)が用いられ,段階的加点方式 が取られる,つまり各問題に対して 1 回目で正解 に達すれば 100%の加点,2 回目なら 50%,3 回 目なら 25%,4 回目以降なら加点なしとなる.ま た 25 問中 2 問までチームの判断で資料閲覧のも と(open︲book)での解答を申請でき,その場合 は ARS での解答となり,段階的加点方式ではな くなる.スクラッチカード解答のものはその場で 正解がわかり,open︲book 解答のものは GRAT 終了後に正解が提示される.次の 20 分間に各 チームは理解できない問題や正解に納得のいかな い問題について中央正面のホワイトボードに書い て説明・解説を要望する「Appeal」という過程 がある.それぞれの要望に対して,該当する問題 に正解したチームのうちの一つが説明・解説責任 を与えられて準備する.その後の総括議論(30 分程度)の場では該当分野の教員の参加のもと, 司会を学生が当番で担当し,それぞれの要望ごと に担当チームの 1 人を指名し説明・解説させ,そ の後それを要望したチームや他のチームも参加さ せながら議論を進め,最後に必要があれば教員の コメントを得ていた.  昼休みをはさんで午後は知識応用学習を目的と した演習問題にチームで取り組む Application と なる.ここでは 12 問程度の問題をチームで 90 分 間で解く.Open︲book であり,講義ビデオや資 料,教科書,インターネットなどの閲覧が許可さ れ,解答は ARS を用いる.90 分終了時点で学生 はまだ正解を知らず,その後の総括議論(60 分)では,教員が司会をし,問題毎に全チームの 解答肢がわかるよう解答肢カードなどを使って提 示させ,チームメンバーに解答に至った考察経緯 を説明させ,チーム間で解答肢に違いがある場合 にはディベートさせたりする.更に,最近取り入 れられた「double or nothing」と呼ばれる手法, つまり,チームの解答にばらつきがある場合に, 5 分間のチーム間議論によりクラス全体として 1 つの解答肢にまとめることが要求され,正解の場 合はその問題に対して 200%の加点となり,誤答 であった場合,または 5 分間で 1 つの解答肢に達 しない場合は加点なしという手法も , ときに使わ れていた.これら総括議論の段取り・方法につい ては,学生が回答している間に別室に集まった教 員が,ARS を通して送られてくる各問題の解答 状況を見ながら検討していた.集まる教員はモ ジュールを構成する各分野から教員 1 人ずつ,問 題(ほとんどが臨床症例を用いたもの)を作成し た臨床系教員,そして Application で司会をする 教員であり,その全員が総括議論にも参加してい た.またその際に,次年度にむけて,問題文や解 答肢の妥当性についての議論も行われた.総括議 論が終わると最後の 30 分間は問題を作成した臨 床系教員に委ねられており,基礎医学の臨床応用 の話をする場合もあれば,臨床の実際を話す場合 もあり,また自身の専門分野の魅力を話し勧誘活 動に使う場合もある.  学生は各モジュール毎に成績がつけられること になり,IRAT,そして他の学期末試験などがある 場合にはそれも含めた個人での解答が各モジュー

表 1  Duke︲NUS における Team LEAD の具体的な 時間割 時 間 活 動 30 分 IRAT 30 分 GRAT 20 分 Appeal※/休憩 30 分 総括議論 昼休み 90 分 Application 60 分 総括議論 30 分 講義†

IRAT: Individual readiness assurance test GRAT: Group readiness assurance test

各チームは理解できない問題や正解に納得のいかない問 題について中央正面のホワイトボードに書いて説明・解 説を要望する. † 最後の 30 分間は問題を作成した臨床系教員に委ねられ ており,基礎医学の臨床応用の話をする場合もあれば, 臨床の実際を話す場合もあり,また自身の専門分野の魅 力を話し勧誘活動に使う場合もある.

(4)

ル最終成績の 50%,GRAT および Application で のチームでの解答が 50%を構成し,後者には チーム議論におけるメンバーの貢献度に関するピ ア評価点(総合成績の 10%)も含まれる.  我々は 2 回の TBL を視察したが,学生は非常 に よ く 準 備 学 習 を し て き て お り,GRAT や Application においてもほとんどすべてのチーム メンバーが議論に参加し,また総括議論において も,初めこそ議論の発展のために司会者からの指 名を必要としたものの,徐々に自発的発言が出て くるようになり,最後には活発な議論となってい た.我々は何人かの学生にインタビューする機会 を 得 た が, 自 己 学 習 中 心 の 知 識 習 得 と Team LEAD によるその応用演習という学習方法につ いてはほとんどの学生が好意的であった(表 2). 教育方法としての TBL  今回の視察で我々は,TBL の,学習者に効果 的な学習動機づけを行い,十分な学習準備と積極 的な議論への参加を促す作用を,窺い知ることが で き た.Parmelee と Michaelsen に よ る と2) TBL が他の教育方法に比してそれらの点で秀で ている理由は,個人およびチームが学習および議 論に積極的に精力的に取り組むよう内的動機づけ を促す作用が強いからである.  まず個人の内的動機づけには,①個人で受ける IRAT の 成 績 が 総 合 成 績 の 50% を な し, ② GRAT の成績も個人の総合成績の 50%をなすた めチーム議論において正解を求めて積極的に各個 人 が 発 言 し 助 け 合 う 環 境 が 作 ら れ, ③ ま た GRAT および Appeal 後の総括議論や Application 後の総括議論において,司会者がチームの代表者 を指名するのではなく個人を指名し,④チームメ ンバーによる議論への貢献度に関するピア評価が 総合成績の 10%をなす,などが寄与している. またチームについては,チームが取り組む課題 に関する,表 3 に記した 4 つの特性が寄与してい る2).課題がこれら特性を持つことにより,単な る形だけのグループ議論ではなく,チーム内およ びチーム間での極めて質の高く奥の深い学習とと もに,コミュニケーション技能や社交性を養う効 果的な教育機会となる.一方,課題がこれら特性 を備えない場合,多肢選択式問題による知識習得 度確認目的の試験の延長に終始することとなる. そ れ を 回 避 す る た め Parmelee と Michaelsen は,逆向き設計 “backwards design” を推奨して いる.すなわち,TBL カリキュラム作成におい て,まず学習者の到達目標を設定し,次にその目 標への到達度を確認しうる Application の課題を 作成し,最後に学習者が Application の課題に取 り組むに際して習得しておくべき知識を同定し 表 2 インタビューした学生より挙げられた意見 ・教科書を使った自己学習のみでは学問として理解しにくい分野もあり,また学ばなければならな い知識が多すぎてその整理や重要度の把握が難しい.デューク大学講義ビデオの存在は,それら の観点から有用である. ・チームは 1 年間共通だが,貢献度の低いメンバーに対して建設的な介入ができるようになるには まずチームとしての慣れや団結が必要であり,そのためには数ヶ月かかるので,1 年間という長 さは妥当である ・RAT および Application で用いられる問題用紙はすべて回収される.また試験中の問題コピーに ついては,コピーを行わないことについて入学後間もなく行われる白衣授与式において行動規律 として同意しており,また規律遵守について講義室の四方にカメラが設置され監視されている. 更に週 2 日と回数も多くまた問題数も多いためコピーすることは物理的にも難しい. ・チームとしての解答が個人の総合成績の 50%を構成することから,優秀だが講義ではあまり発 言をしない学生も,GRAT や Application において,積極的に議論に参加する. ・通常は授業を受け,試験があり,その後は正解提示もなくほとんどの知識が忘れ去られ,次の科 目の学習となる.TBL の場合試験(RAT)のあとに学習した知識を応用する機会があるためと ても理解が深まる.しかし結局 1 日のうちに Application も終わるため同日夜からは次の TBL のための学習に入ることになる.希望としてはもう少し Application で知識を応用演習する機会 が多ければより理解が深まるのではないかと考える.

(5)

RAT の課題を作成するというものである2) 日本の医学教育への TBL 導入について  PBL テュートリアルが,効果的教育機会とな るためには学生の内的学習動機づけが必要であ る.しかし日本の学生の場合,授業料をほとんど の場合親が負担し,また卒業後の進路決定におい て在学中の成績があまり影響しないことなどもあ り,内的学習動機づけが難しい場合が少なくな い.また,PBL テュートリアルで効果的議論を 行うために必須である批判的姿勢が,医学部入学 時までに備わっていない学生がほとんどである.  前述したように TBL は,個人およびチームの 学習および議論に対する内的動機づけを促す作用 があり,その点では,日本の医学教育において PBL テュートリアルの有効性を制限している要 素の一つを解決しうる潜在力がある.しかしなが らその潜在力が十分発揮されるためには,備える べき特性に配慮した綿密な課題策定が重要であ る.一方もう一つの要素である批判的姿勢は,医 学専門教育に入る前までにそのような姿勢が評 価・推奨される機会がほとんどないことにも由来 するが,医師として将来診療していくにおいて兼 ね備えておかなければならない資質であるため, 学習者の健全な批判的姿勢を常に教育者が尊重 し,評価・推奨し,そしてやはり内的動機づけに より養わせる必要があるだろう. 文 献

1) Thompson BM, Schneider VF, Haidet P, Levine RE, MgMahon KK, Perkowski LC, Richards BF. Team︲based learning at ten medical schools: two years later. Med Educ 2007; 41: 250︲7 2) Parmelee DX, Michaelsen LK. Twelve tips for

doing effective Team︲Based Learning (TBL). Med Teach 2010; 32: 118︲22 表 3  チームが学習および議論に積極的に精力的に取り組むよう内的動機づけを促すための,課題の備えるべ き 4 つの特性 特性 詳細 学生にとって重要な課題であること (Significant problem) 課題は学習者が将来実際に遭遇するであろう現実味のあるものであり,また教科 書や授業ノート,インターネット上の資料を閲覧すればすぐに解答できるもので はなく,チームメンバーの協力と議論を必要とするものであること. すべてのチームが同じ課題に取り組 むこと(Same problem) 取り組む課題が同じであり,同レベルの労力を注ぎ込むものであること.これに より,活発なチーム間議論を行うための素地が形成される. 高次思考過程および複数の意思決定 を要する多肢選択式問題形式をとる こと(Specific choice) 解答に達するために高次思考過程および複数の意思決定を要する多肢選択式問題 は,問題の定義/明確化,批判的な資料の検証,そして批判的な思考やグループ 内ディベートを促し,効果的な学習機会を創出する. 全チームの解答を同時に提示させる こと(Simultaneous report) 解答が提示されることで他チームから判断根拠に関し照会および批判されうるこ と,また誤った解答をした場合でもそれが他チームに判明してしまうことなどか ら,課題に対しチームがより精力的に取り組むようになり,チームが団結する.

参照

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URL http://hdl.handle.net/2297/15431.. 医博甲第1324号 平成10年6月30日

学位授与番号 学位授与年月日 氏名 学位論文題目. 医博甲第1367号

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