イ匕石 87
.
83−
102,
2010
Fossils
The
Palaeonto
logical
Society
〔〜プ加
砌解 説
ワ
ニの
筋 学
一
古
脊
椎 動物 学者
に
必
要
な
解剖
一
II
.
肩
帯
・前 肢
鈴 木 大 輔*
・
林 昭 次 **
’
札幌医 科 大学医学 部 解 剖 学 第二講座・
”
北 海 道大 学 大 学 院理 学 研 究科 自然 史科 学 専 攻Myology
of
crocodiles
II
:Pectoral
girdle
and
forelimb
Daisuke
Suzuki
* andShoji
Hayashi
* *℃epartment of Anaヒomy
,
Sapporo Medical University,
Minarni−
1,
Nishi・
17,
Chuou−
Ku,
Sapporo O6D・
8556,
Japan (daisuke@sapmed.
acjp );
”
Department of Natural History Sciences,
Hokkaido University.
Kita・
10,
Nishi.
8,
Kita.
Ku,
Sappror O60−
0810,
Japan (showji @mail.
sci,
hokudai.
acJp ) 背 景 ワニ の肩 帯・
前 肢 爬 虫 類の進 化におい て,
前 肢はテ ィ ラノサ ウル ス の小 さな 手か ら,
魚 竜や長 頚 竜に見 られる鰭 等,
後 肢 以上 に 様々 な形 態に変 化してい る.
ワニ の 進 化 を見て も,
後 期 三 畳紀 に出現 したワ ニ 形 類 (Crocodylomorpha
)の 2加γεs 腕 s鰯 加s や GraciltSuchusは前肢 に 比べ後肢 が 長 く,
二足 歩 行を行っ て い た と考え ら れ (Crush,
1984;Romer,
1972
),
前肢は補助 的 な歩行の ほ か, 獲 物 を捕 まえ る の に使わ れて た と考え ら れ てい る.
ま たジ ュ ラ紀に出 現し たメ トリオ リンカス科 (Metriorhynchidae )は海 生に適 応 し た形 態を持ち,
前肢・
後肢は鰭の様な 形態を持つ (Gasparini 6‘磁,
2006).
こ れ ら の種 類まで含め る と,
ワ ニ の前 肢は後 肢に比べ 形 態 的な バ リエー
シ ョ ン が大きい と 言 え る.
し か し な が ら,
ワニ の前 肢の 研究は , 後 肢に 比べ る と圧倒的に少ない.
これ は 四肢の機 能がロ コ モー
シ ョ ン と深 く関 係して い るこ と に よる と考え ら れ る.
後 肢は一
部の水 棲 爬 虫 類や蛇など特 殊な形 態の動 物 を除き,
ロ コ モー
シ ョ ン とい う機 能が失わ れ る ことは ほとん ど な い た め,
系統に沿っ た追跡がで き,
進 化の過程で どの よ う な形 態の変遷 を た どっ たか を考 察す る よい 例と な る.
ところ が前 肢は形 態が変わ り す ぎて ロ コ モー
シ ョ ン の み の観 点か ら は捉え ら れ ない とい う点が,
逆 に研 究が ほ と ん ど な さ れ ない原 因の一
つで は ない だろ うか.
四足 動 物 で は前 肢 もロ コ モー
シ ョ ン に果た す役 割は小 さ く ない の だが,
荷 重や筋 力の大き さは後 肢の ほ う が 強い ものが 多 い とい う点か ら も,
後肢に研 究が偏る結果に なっ た と考 え られ る.
も う一
っ の原 因 と して は,
前肢の解 剖 学 的 研 究がほ と ん ど な さ れて い ない た め,
後肢に 比べ 前 肢の機能 形 態 学 が遅れて い る とい うこ と も挙げら れ るの で は ない だろ う か.
ワニ の前 肢の解 剖 学 的記述を調べ る と,
前 腕を きち ん と記 載した論文はMeers (2003)以前は1939年のHaines の論 文ま で さ か のぼらな くて は ならない の である.
少 な く と も現生の ワニ 類に お いて は ロ コ モー
シ ョ ン に おける 前肢の役割は後肢に 比べ て小さい とい うことはない.
這 う時,
ハ イ ウt一
ク時,
ギャ ロ ップ 時で は後 肢 同 様,
明 らか に前 肢の動き は異な り」
,
前肢な しで これ らの運動は 不 可能で あ る.
後 肢の ロコ モー
シ ョ ンに関し て は多 数の 論 文が 出版さ れて い る が,
今 後は前 肢の働き も視 野に入 れ た デー
タ が重 要 視さ れ る.
ま た化石 を使 用し た機能形 態 学で も,
現 生 種 を用い た筋 学の知 識は必 須で ある.
そ こで本 稿で はワニ の肩 帯・
前 肢の筋に関して の解 説 を 試 み た.
研 究 史 筋の同 定は ワニ に限らず,
全て の脊 椎 動 物に お い て,
起 始・
停 止, 神 経 支 配, 走 行 部 位で決め ら れ, それに則っ て名称が決め ら れ る.
筋の主な起 始・
停 止で あ る骨の形 態 学は詳細に行わ れて い る た め (例え ばMook ,1921
),
起 始・
停止に関 する問 題は ほ と ん ど存 在しない.
し か し なが ら化石骨を含め た骨の形 態に関する知 識は膨 大なデー
タ と して蓄積さ れてい る もの の,
形 態的は類 似してい る の に神 経 支 配が異なっ てい る筋,
走 行 部 位が大きく変 化 した筋な ど が あり,
これ らの筋の 同 定は著 者ご とに よっ て意 見が異なる.
ワニ の肩 帯・
上 腕 部の詳 細な 比較 解 剖 学 的 研 究は FUrbringer (1876)に よっ て な さ れ たのが最 初で ある.
そ れ まで,
ヒ トの筋を 適 当 に 当て は め て い た爬 虫類の筋 系の記 載 を,
神 経 支 配か ら筋の相 同 性 を求め ること に よっ て客 観 的なもの とし,
ヒ トの筋と明ら か に異な る形 態の 筋に関し て は起 始と停 止 をつ なげた名 前を提唱 す ること に よっ て,
爬 虫 類の 肩 帯・
上 腕の用 語 体 系を完 成させ た.
この ルー
ル を厳 密に適 用 するこ と によっ て,
む やみ に新 しい 名 称が作ら れた こと,
あ ま り に も 長 す ぎる名称 の筋化石 87号 鈴 木 大輔
・
林 昭 次 がある こ と な どの問 題 点もあっ た が,
Davis (1936)の 提 唱 などに よ り,
それらの名 前 もか なり淘 汰 さ れ た.
FUrbringer (1876)以 降,
ワニ の前 腕の筋学的 研究は Ribbing (1907),
Haines (1939)が挙 げられ る ぐらい で, 他は ほ とん ど行わ れて い ない.
Ribbing (1907)は 当 時に して は詳 細で あるが, 記 載さ れて いる筋の用語は 現在ほ と ん ど使わ れ て い ない とい う点が あ り,Haines
(]939
)は伸 筋 群し か触れ てい ない,
近年,Cong
et al.
(1989)の ヨ ウス コ ウア リ ゲー
ター
Alligator sinensis の詳 細なモ ノグ ラフ が出 版さ れた,
このモノ グ ラフは前 腕・
手の 記載も 丁寧に行わ れて い るが,
図が はっ きりし ない こ と,
筋の記載に疑 問が残る部 分がある こと (例え ば長 母 指 外 転 筋M.
abductor pollicis l。ngus とい う筋は ワニ は お ろか20世 紀以降の主 要なの爬 虫 類の論 文で も使わ れて い ない
,
ワニ で は正中神 経と 尺骨 神 経が 分離し てい ない の に 分離 し て書い て あるな ど)とい う難 点が ある.
従っ て,
2003年よ り前で は,
わずか4
本の論 文で ワニ の 主な前 腕の解 剖 学の研 究は まとめ ら れて し まい , そ の ど れ も が,
ワニ の前 腕 筋を参 照す る に は問題点が あっ た.
肩関節・
上腕に関して は,Ftirbringer
(1876
)が ほ と ん ど唯一
で ある が詳 細に記載されて お り,一
部の筋の名 称 はRomer (1922)に よっ て替え られてい るが,
筋の解 釈 にほ と ん ど混 乱が ない.
以降の ワニ の肩 関 節・
上腕の解 剖 研 究で はCong
θ‘畆 (1989),
Jenkins
(1993)な ど が ある が,
恐 竜 をは じ め とした様々 な古 脊 椎 動 物の筋 復 元 モデル は,
Ftirb血 ger (1876) とRomer (1922) を 参 照して い るこ と が多い (例え ばNichol]s and Russell
,
1985;Norman
,1986
;Dilkes
,2000
;Jasinoski
et aL,2006
),
2003年に出 版さ れ たMeers の論 文は
,
そ れ まで後 肢に 比べ てずっ と遅れて しまっ た感の ある前 肢の解 剖 学 的 研 究を一
気に挽 同し た と思わせ るほ ど詳 細で優れ た論 文で あ る.
こ の論 文で前肢の筋の形 態の解明・
名称の不一
致・
種 内 変 化など の問 題が ほ ぼ解決で きた とい え る.
筋を解 剖す る上で一
番重要な こ とは,
自分が観 察し て い る筋が き ち ん と同 定で きてい るの か とい う点に あ るの で,
初学 者に は詳 細な解 剖 図 譜な しで の解 剖は不 可能で あ る.
Meers の論 文の図は こ の要 求に も十 分こた えるもの であ り,
今 後,
こ の論 文 を もとに ワニ の前 肢にっ いて多くの研 究が 行わ れ るの で はない か と思 わ れる.
筋の名 称につ いて 前 腕の筋 系はMeers (2003
)に よっ て大き く改善さ れ た が,
用 語の問 題 点が完全にな く なっ た わ けでは ない (そ れ まで M.
extensor (carpi )ulnaris とされて き た筋をM.
flexor ulnaris とし て い る こ と,
浅 層の筋をMsupinator にして い る な ど)
.
本 稿での筋の名 称は,
基本 的に神 経 支 配 を 重 視 し,
本 来の機 能と名 称が異なっ て も,
そ の名称を 変 え るこ と を し な かっ た,
背 側に位 置する神 経 (撓 骨 神 経・
腋 窩神経)支 配の筋で あ れば屈 曲 作 用 を持つ筋で も“
伸 筋”
とい う名 称に し.
腹 側に位 置す る神 経 (正中尺骨 神 経)支 配の筋で あ れ ば屈 筋とした,
こ の点が Meers (2003 )と異なる点で ある,
これは,
名 称 を支 配 神 経に 基づ くもの にする こ と に よっ て, 他の動 物の解 剖で も応 用が利くよ うに配 慮し た た めで あ る,
本 稿の用語は基 本的 にMeers
(2003
)に従っ た が,
上記の観点か ら 必要に 応 じ てHaines (1939)やRomer and
Parsons (
1986
)の名 称 を採 用した.
日本 語 訳は森 於 菟ら に よ る
“
分 担 解 剖 学”
(1982),
Rorner and Parsons著,
平光 属司 訳 に よ る
‘
‘
脊 椎 動 物のか ら だ”
(1985
)に従っ た.
な お,
Meers (2003)で は上 腕三頭 筋の各 頭 を別々 の筋 とし て扱っ て い る が, 本 稿で は そ れ ぞ れ‘
‘
〜
頭”
と し た.
神経の名 称につ い て 筋の名 称は支 配 神 経に依 存する こと が多い た め, 神 経 が はっ きりしな け れ ば筋の名 称にっ い て混 乱を きた し て し まう,
支 配 神 経と筋の関係にっ い て は安 定で あ る とい う見解 (た と え ばFUrbringer
,1876
)と,
そうで ない とい う見 解に 分 か れる (た と え ばStraus Jr.
,
1946;Sinohara,
1996).
し か しなが ら,
筋の変 化に比べ れ ば その変 化は 乏 し く,
本 稿で述べ る に あ たっ ては支配神 経に基づ いた 名 称で議論して 問 題ない と考える.
四肢・
体 幹を支 配 す る神 経は脊 髄か ら分 岐 する順 番で決め ら れ,
さ ら に細か い枝は分 岐順 序や支 配 領 域で決め ら れる.
代 表 的 な神 経 の名 称は現 在ほ ぼ一
致 して使わ れ,
文 献 上で の混 乱は見 ら れ ない.
腕 神 経 叢の分 岐・
吻 合パ ター
ンは個 体 差が大 きいが,
これ は神 経周膜で囲ま れ た 外 見 上の もの で あ り,
髄節 (神 経 成 分)で見た場 合,
ほぼ一
定の ようで ある (山 田,
1986).
なお, 筋 枝の名 称は支 配さ れる筋の名 称+枝 と し た.
材料
と方 法 メ ガネカイマ ン (Caiman crocodilttS )3頭,
シ ャ ム ワ ニ (Crocodylus siamensis )2頭, ナ イル ワニ ((rrocodytusniloticus )1頭を使用 し た
.
ワニ の和 名は前 出の も の も含 め 爬虫 類・
両 生類800
種図鑑 (ピー
シー
ズ社 )に従っ た.
C.
crocodilttS’
は 生後お よ そ1
年の幼 体で3
体と も全 長45,
C.
siarrtensis は 2頭とも約100 cm,
a 咒ガJo診記躑 は150crn で あっ た.
C.
siamensis お よ び C.
nigoticus の年 齢は明 ら か でない.
C.
crocodilzas はネンブター
ル で深 麻 酔した後,
IO% ホ ルマ リンで灌 流固定を行い,
固 定 後は 10%中 性ホ ルマ リンにて保 存し た もの, C.
siamensis は死 亡 後 冷 凍 保 存 し た もの を解 剖し た,
c.
niloticus は死亡後 冷 凍 保 存し た もの を解 凍し,
CT 撮 影を行っ た.
解 剖は まず,
文 献 等 か ら全て の筋を リス ト アップし,
そ れ ら実 際の標本上で一
つ一
つ 同 定 して い っ たa 本 稿で は肩 帯をつ な ぐ筋・
上 腕・
前 腕 の筋 を解説 し,
手内在筋は解 説し な かっ た.
手ワニ の筋学
一
古 脊 椎動物 学 者に必 要な解 剖一
II,
肩帯・
前肢 20ユ0年3月図1
.
ワニ の基本肢 位およ び方 向 (メガ ネ カ イマ ン Caiman crocodilus ).
A.
背 面.
そ れ ぞれの片 矢 印は矢 状 面 (sagittal piane),
横 断 面(transverse plane)を 示 す
.
上 腕の矢 印はそれ ぞ れ,
上腕の遠位 (distal)および 近 位 (proximaD を 示 す.
B.
背 面.
内 転 (adduc [ion)と外 転 (abduction )の運 動 方 向 を示す
.
C.
右 側 面.
片 矢 印は冠状面 (eoronal plane),
矢印は背 側 (dorsal)と腹側 (ventral ) を示 す.
点 線で囲ま れ た 部 分 は 肩 甲 烏 口 骨 (scapulocoracoid )で
,
挙上 (e]evati 。n )・
下制 (depression)・
前 突 (protraction)・
後退 (retraction )の4方向の動き を矢 印で示し た
.
D.
右上側 面.
肘で の屈 曲 (flexion)と伸展 (extension )の運動を 示 す.
E.
前 肢の模 式 図.
回 外 (supination )・
回 内 (pronation)
,
背 屈 (dorsifiexion)・
掌 屈 (palmar nexion)の運 動 方向を示 す.
内在 筋は運 動 学に とっ て は重 要な筋で ある が
,
前 腕よ り 細 か く解 剖 が難 しい こ と,
現時点で は古生 物 学 的な要 請 が少ない と思 われるた めで ある.
なお筋の作 用は走 行か ら推 定し.
実 際に動か して確 認 し たもので ある が,
筋 電 図 等 を 用い て生 体で確 認したも の で は ない,
また方 向・
運 動は以 下に定 義 するとお りと す る.
基本 肢 位。
方 向 (図1
) 爬 虫 類の解 剖に関 する文 献で は基 本 肢 位 (解 剖 学 的 肢 位.
anatomical position)が定 義されてい ないた め, 方 向 用 語が混 乱す るこ と が あ る.
本 稿で は この よ う な混 乱を 避け る た め ヒ トの解 剖 学に準じて基 本 肢 位 と方 向を定 義 し た.
ワニ の基 本肢位 は,
前肢・
後 肢と も に 伸 展 させ,
後方 に 伸 ば した 状 態で,
第 1指/ 趾 を 外側に,
第〉指 / 趾を 内側にした状 態 (回 外 位 )とした,
こ の状 態で,
四肢の腹 側 (ventral )
・
背 側 (dorsal
),
外 側 (lateral)・
内 側 (medjal )を定 義した,
多 くの場 合,
背 側にある筋は伸 筋 群 (背 側 枝 支 配 )で あ り,
腹 側に ある筋は屈 筋 群 (腹 側 枝 支 配 )で ある.
ま た矢 状 面 (sagittal plane)は頭一
尾軸と背一
腹 軸に平 行な面と し,
特に か らだの 中央を 通る面 を正中 (median )と した
.
冠状面 (coronal p]ane ) は頭一
尾軸と内一
外 軸に平行な面と する,
横 断 面 (transverseplane
)はこれ ら二面に対して垂直と な るよ う な面で,
背一
腹軸と 内一
外軸に 平行で あ る,
長骨の部 位を指す 用語 は,
体 幹に近い ほ うを近 位 (prσximaD,
遠い ほ う を遠 位 (dista
】) とした.
前 腕で は基 本 肢 位 をした うえで 1指 側 を橈 側 (radiaD,
V指 側 を尺 側 (ulnar ) とした.
この場 合,
尺側は内 側,
橈 側は 外側に対応 す る.
頭 側 (cranial )・
尾 側 (caudal )は,
爬 虫類の記載で は よ く使 わ れる方 向 用 語で あ り,
体 幹で使 用 する場 合は有 用で ある.
し か し なが ら 四肢にお い て は 1) 上 腕 骨が ね じ れ てい るこ と, 2) 前 腕の肢 位に よっ て は頭側・
尾 側が文字通 りの対応 を し ない こと,
に よっ て頭側と 尾側が混 乱し うる の で,
本稿で は 四肢で の使 用を避 け た,
運 動 方 向 (図1) 関 節 運 動と し て 以 下 に屈 曲・
伸 展 (掌背 屈),
内 外転,
内 外 旋 (回 内 外 含む)を定 義す る.
前 突・
後退,
挙上・
下制は骨の平行 移 動で あ る が,
関節運動を指 す場 合 もあ る.
特 に,
肩 関 節で上 腕を腹背に移 動さ せ る運 動 (ヒ ト の水平 内転・
外転に対応)を表す場 合は,
上腕の挙上・
下 制 と表 現 し た,
化 石87号 鈴 木大 輔
・
林 昭次 V]1VIII
ix X Xlbrs
.
N.
[nterosseusanterier
図2
.
腕 神 経 叢の模 式 図.
筋 に 分 布 する枝 を 重点的に示 す 〔C.
crocoditus:Harris,
1939,
Fig.
18を改変 ).
1)−
k烏[神 経 (N.
supracoracoideus ),
2) 背 側 枝 群 (dorsar branches)
.
3)腹側 枝 群 (ventra 】branches),
4)正中 八 骨 神 経 (N.
median [)uLnaris ),
5) 腋 窩 神 経 (N.
axiaris ),
6) 橈 骨 神 経 (N
.
radialis )の6ブロ ッ ク に分け た.
cerc 。bra dor/vent br.
=
背 側 / 腹 側 短 烏[腕 筋 枝、
cutaneousbr
.
=
皮枝,
ecrl・
bz=
長橈側 手 根 仲 筋 枝
,
ecrb rad /ul br.
=
短 橈 側 手 根 伸 筋 橈側部/尺側 部 枝,
ed[ br.
=
・
ft
指 伸 筋 枝,
eu br.
=
尺骨 伸 筋 枝,
fcu眈一
尺側手根屈筋 枝,
intrinsic manii brs
.
;
手内在筋 枝,
pron teres med /lat br.
=
同 外 筋 内/外側 枝,
tri br cranfcaud /int br,
=
上腕三頭 筋頭 側 /尾 側 / 中 間短 頭 枝、
trnong med 侮 t br.
=
上腕三頭 筋 内/ 外 側 長 頭 枝.
L
屈曲 (flexion)・
伸 展 (extension ) 屈 曲 と伸 展 は 反 対の運動である.
屈曲 とは,
関 節す る 骨 同士の角 度が減 少 し,
伸 展とは増 加す る関 節 運 動と す る.
多 くの場 合, 伸 展は屈 曲し た部 位を解 剖学的 肢 位に 戻す動き で あ る.
通常,
これ らの動 き は矢状面に 沿っ て 起こ る.
ま た手 関節の場 合,
屈筋・
伸 筋の行 う作 用が ど ち ら も定 義に挙 げた屈 曲 作 用 (関節する骨 同士の 角 度が 減 少 )と なる た め,
伸 筋が行う作 用を背 屈 (dorsiflexion),
屈筋が行う作用 を掌屈 (palmar Hexion )と す る,
2.
外 転 (abduction )・
内 転 (adduction ) 外 転と は関 節の回 転に よっ て正中か ら離れ,
内 転は正 中へ 近づ く関 節 運 動とする.
これらの運 動は通 常,
両 方 と も冠 状面 に 沿っ て生 じ る.
手指 (manus )/足 趾 (pes
) に関し て は,
内 転 と外 転の基準 線と して正中は 使 わ ず,
外 転はIH指 / 趾, もしくは手 / 足の中 央 を通る線か ら遠 ざ か る (指 / 趾を広 げる) 運 動と し,
内 転は,
そ れ らを 戻す 運動 と す る.
ま た 手 を 母指 側 に曲 げる運 動を橈 屈(radial 且exion )
,
小指 側に曲 げる運 動を 尺屈 (ulnar fieXion)とする
.
3.
回 旋 (rotation ) 骨が その 長軸を巾心に回転する運 動の うち.
母 指が正 中か ら離れ る よ う に 回旋す る場 合 を 外旋 (extemal rotation ) と し,
近づ く よ う に 回転す る場 合を内 旋 (internal rotation ) とする.
ヒ トの前 腕の回旋 は 尺 骨 の ま わ り を橈 骨が 回転 する とい う特別 な 運動で あるた め,
同外 (supination )・
回内 (pronation)とい う,
ワニ を含め た 爬虫 類に も 回内 筋・
圃 外 筋と名づ け ら れ た 筋 が あ り,
実 際 に使用 さ れている た め (例えば Landsmeer
,
1983;Bonnan and Senter,
2007)
,
本 稿で も前 腕の回 旋を回 外・
膕 内と す る が,
厳 密な回 内・
回 外運動は ワニ を含め た爬 虫 類で は不 可能で ある.
4.
前 突 (protraetion)・
後退 (retraction ) 前突と は身体の一
部が前 方へ 平行移 動する 運動,
後退 は後 方へ 平 行 移 動 する運動 とする.
多くの場 合,
後 退は 前 突し た部 分 を解 剖 学 的 肢 位 に戻す動きである.
本 稿で は ワニ の 前 突・
後退 を そ れ ぞ れ頭 側・
尾側 方 向へ の 平 行 移 動と し た,
従っ て ヒ トで定義さ れ た前突・
後退 と四足 動物の前突・
後退は体軸方 向が 違 うの で,
同じ名 称の筋 で も別な運 動になる ことに注 意 する.
た と え ば肩 甲挙 筋 の作 用は ヒ トで は肩 甲骨の挙上 (下 記 参 照 )だが,
ワニ で は肩 甲骨の前 突で ある.
前 突・
後退 は,
四肢を前に 出 す・
後ろ に 引 く とい う動 作に も 使 わ れる.
四足 歩行動 物 を 例 に 挙 げ れ ば,
歩 行 時 に上 腕 骨 を 前に出 す・
後ろ に引 く動 作 を それ ぞれ上腕 骨 の前 突・
後 退と呼ぶ ことが多い.
こ の場 合,
肩 関 節の 内 外 転と同じ作 用を指すが,
本 稿で は内 外 転の方 を使 用し た,
5.
挙 上 (elevation )・
下制 (depression) 挙上 は 四肢及 び身体の…
部 が 上方へ 平行 移 動す る 運動,
下 制は下 方へ 平 行 移 動 する運 動 と するが,
本 稿 で は ワニ の挙上・
下 制を関 節 運 動に対して も使用し た.
前 突・
後 退 と同様,
ヒ ト で定 義さ れ た挙上・
下 制 と 四 足動 物の挙 上・
下 制は体 軸 方 向が違 うの で,
注意が 必要で あ る.
記載 腕 神 経 叢 (brachial plexus) 爬 虫 類は頚 椎・
胸 椎・
腰 椎の区別 が あ ま り明 確で ないワ ニ の筋学
一
古脊椎 動 物 学者に 必要な解 剖一
II,
肩帯・
前 肢 2010 年 3月 た め,
頚 椎 (C
),
胸 椎 (Th
),
腰椎 (L ),
仙 椎 (S
),
尾 椎 (CQ)の区 別は せ ず,
椎 骨・
脊 髄 神 経に は そ れ ぞ れ 第1頚 椎・
頚 髄か ら通 し番 号がっ けられる.
爬 虫 類 も哺 乳 類 同様,
腕を支配 する神 経は腕 神 経 叢を構 成し,
VII−
XIか ら なる (GiMn ,
1990),
し か し な が ら,
腕 神 経 叢を 構 成 する神 経は 文献よっ て異なる.
Harris (1939 )はCaiman crocodilus で はVII
−
XI,
アメ リ カワニCrocodylus
acutus で はVII−
X,
Crocodylus nitoticus で はVIII−
X とし て お り,
FUrbrlnger(1876)は C.
acutzas をVII−
XI とし て い る.
ま たMeers (2003)はアメ リカ ア リゲー
ター
A 19iga tor mississippiensis をVII−
XI と してい る.
本 研 究 に 用い たC.
crocodilus で はVII−
XI (図2)が腕 神 経 叢を構 成し てお り,
VIIとXIは一
部の み が腕 神 経 叢に加わる.
こ の ようにVII やXI
の一・
部の線維が加わっ た り,
加わ ら な かっ た り とい う違 い は同一一
種で も腕 神経叢の構 成成分 が 異 なっ ている こ と が先 行 研 究か ら わ か っ てい る た め,
種差 とい うよ り も個 体差である と考え られる.
腕 神 経 叢は内 部で分 岐と吻 合を繰 り返 し, 非 常に複 雑 で あ る ため,
本研究に用いr: C.
crocodilus の 腕 神 経 叢を 以 下の6
ブロ ック に 分 け て解 説す る.
1.
上鳥口神経 (N ,
SUpraCOraCOideUS ) 脊 髄 神 経VIIお よ びVIIIの一
部か ら構 成さ れる.
烏口 骨の 上 烏口骨孔 を 通D ,
上 烏凵筋 枝 (supracoraoideus brs.
) と肩 帯 頭 側の 皮 膚 知 覚を支配 する皮 枝 (cutaneous brs.
)を出 す.
2,
腕 神 経 叢の背 側 枝 群 (dersat
branchcs
) VIIIの一
一
一
部とIX−
X,
XIの一・
部は互い に吻 合・
分 岐 を 繰 り返しっ っ,
最 終 的には,
腹 側に伸 びる正中尺 骨 神 経 (N.
rnedianoulnaris ),
頭 背 側に伸び る腋 窩 神 経 (N.
axillaris),
尾 背 側 に 伸 びる橈 骨 神 経 (N.
radialis )の三つ の大 き な 枝 に 分 か れ る,
こ の3
枝 に 分 か れる前 に 以 下 の背側枝が 分 岐 する.
肩 甲下 筋 (M.
subscapularis ) を支 配 する肩 甲 下 筋 枝 (subscapular branch;以下br.
)・
尾 肩甲上 腕 筋 枝(scapulohumeralis caudalis br
.
)・
広 背 筋 枝 (1atissimus
dorsi br
.
)・
大 円 筋 枝 (teres majorbr.
),
3
,
腕 神 経 叢の腹 側 枝群 (ventralbranches
) 腕 神 経 叢の腹 側枝に なる部 分 は上烏口骨 神 経の一
部と 吻 合 し た 後,
胸 筋枝 (pectoralis br.
) 枝・
烏口腕 筋 枝 (coracobrachialis br.
)を出 す.
この後 腹 側 成 分は全て 正 中 尺 骨 神 経 と なる.
4.
正中 尺 骨 神 経 (N.
medianoulnaris ) 腕 神 経 叢か ら腹 側方向に分岐し,
その ま ま前 肢の腹 側 部を 通 る (図2,
3 ).
こ の神 経は上腕 骨に沿っ て下行 し,
上 腕二頭 筋枝 (
biceps
brachii br.
), 上腕 筋 枝 (brachialisbの を 出 し
,
その後 肘窩を 越え,
前 腕 腹 側に入 る,
前 腕 で は長 指 屈 筋の深 層 を通 り,
前 腕 中 央で 円 回内筋 内 /外側 枝 (pronator teres medialis /
lateralis
br.
)尺側手根 屈 筋枝 (fiexor carpi uinarls br
.
) を 出した後,
方 形回内 筋 枝(pronator quadratus
br.
)を含む前 骨 間 神 経 (N interosseous図3
.
上腕の神 経 走 行 ((].
eroc・dilves).
A.
神 経根 付近.
腹 側而.
標 本を 正中 断し,
さ ら に胸部の筋・
頚 長 筋・
胸 骨を取 り除き,
根 部を露 出さ せ た.
腕 神経 叢は第VII−
XI椎 骨 か ら 出る脊 髄 神 経 前枝 に よっ て構 成される.
B.
背 側 を通る腋 窩神 経 (N.
axillaris)お よ び 橈 骨 神 経 (N.
radialis).
C,
腹 側を通る 正 中尺骨 神 経 (N,
medianoutnaris ).
BiBr br=
上 腕二 頭 筋 枝,
Brbr
・
=
上腕 筋 枝,
CorDIV br.
一
背 側 / 腹 側短烏口腕 筋枝,
DeCl/Sc bL=
鎖骨 / 肩 甲三角 筋 枝,
HR bL=
上 腕 橈 骨 筋 枝,
LD br.
一
広背 筋 枝,
Pcct bL=
胸 筋 枝.
SubSc br.
=
肩 甲 下 筋 枝,
SHC br.
=
尾 肩 甲 上腕 筋 枝,
Trbcr/cafi bi’
.
一
上 腕 三 頭 筋頭 側 /尾 側 / 中 間短頭 枝,
Trlmfl br.
=
上 腕 三 頭 筋 内 /外 側 長頭 枝.
化h
’
87号 鈴 木大 輔・
林 昭 次 MA
tQideus Dorsat supedic [alisB
cob岶chlalis brevisventralis lis 図4
.
肩 甲烏口骨の筋 付 着 部 (C.
crocodilus ).
A.
右 内側.
B.
右 外 側.
anterior )を出 す.
正 中尺 骨 神 経 本 幹は手 掌に入 り,
手 内 在 筋お よ び手 掌の知 覚 を支 配す る枝を出す,
5.
腋 窩 神 経 (N.
axil ]aris ) 腕 神 経 叢の う ち,
背 側に 分 岐 する もの は最 終的に腋 窩 神 経と橈 骨 神 経の 2枝に分か れ,
腋 窩 神 経は その うち一
ヒ 腕の頭 外 側 を通る (図2,
3).
肩 甲三 角 筋 枝 (deltoideus scapulae br.
) を 出し,
上 腕三 頭 筋 外 側 長 頭 腱の 下層を 通っ た後,
鎖 骨三角 筋 枝 (deltoideus clavicularisbr.
)・
尾 肩甲上 腕 筋 枝を 出 し,
上 腕外側の皮下に出る.
上腕 橈 骨 筋 枝 (humeroradialis bL)は皮 下か ら上腕 橈 骨 筋に入 り, こ の後 腋 窩 神 経は皮 枝とな り, 前 腕に達する.
腋 窩 神 経の運 動 神 経は哺乳類や トカ ゲ類に おい ては肩 帯の筋のみ に分布す る が,ワニ 類を含む 主竜類 (ArChosauria
) お よ びム カシ トカ ゲ (Sphenodon
)に は 上腕 橈 骨 筋が あ る た め,
上腕 領 域の筋も支配する (Romer,
1944),
6.
橈 骨 神 経 (N.
radialis ) 腕 神経 叢の も うひ とつ の 背側枝は上腕の尾内側を 通 る 橈 骨 神 経で あ る (図2,
3 ).
橈 骨 神 経は上腕三頭筋 (M.
triceps
brachii
)の 内側お よ び外 側 長 頭 (medialis /lateralis
longus brs
.
)に支 配 枝 を 出し た後,
上 腕三頭 筋 頭 側 短 頭の深 層を とお
D ,
上 腕三 頭 筋の 各 短 頭に支 配 枝を出す.
その後 外 側 上 顆 を乗 り越え,
腕橈骨筋 枝 (braehi radialisbr
.
),
長 橈 側 手 根 伸筋 枝 (extensor carpi radialis longusbr.
)を出し た後,
回外筋 (M.
supinator )の深層を 通 り,
後 骨 問神 経 (N
.
interosseus posterior )と なる.
こ の後,回 外 筋 枝 (supinator
br.
)・
総 指 仲 筋 枝 (extensordigitorum
communisbr.
)・
尺骨 伸筋枝 (extensor ulnarisbr.
)を 出し
,
手 背 付近で短橈 側手根 伸 筋 橈 側 部 枝 (extensor carpi radialis pars radialis br.
)と尺 側 部 枝 (extensor carpi radialispars ulnaris
bL
)を出した後は皮 枝とな り,
手 背に入っ て知覚 を 支配する.
骨 系 /.
肩甲骨 (scapu ]a,
1
叉14
) ほぼ平 行四 辺 形 を してお り,
腹側 縁で烏口骨 (coracoid ) と線維 軟 骨 結 合し,
合わせ て肩 甲烏口骨 (scapulocoracoid ) と呼ば れる.
腹 側 縁 尾 側は烏口骨と とも に関節 窩 (glenoid) を構 成し,
上腕 骨 (humerus)と関 節す る,
肩 甲 上 腕 靭 帯 (scapulohumeral ligament)は肩 帯と上腕 骨を固 定 する重 要 な靭帯で あ り,
関節窩頭 側 と 上腕 骨 背 側 部をっ な ぐ (Jenkirls,
1993,
Fig.
2).
肩 甲 骨の背 側 部は肩 甲翼 (scapular b】ade ) と呼ばれ, 骨は薄 く,
表 面は平 滑で ある,
背 側 縁は軟 骨が付 着し,
内 側に菱 形 筋 (M.
rhomboideus )が停 止す る,
その腹 側 には,
頚腹 鋸 筋 (M.
serratus ventralis cervicalis )の停 止,
肩甲下筋 (M.
subscapularis )の起 始,
上腕三頭筋内側 長 頭 (M
.
triceps brachii longus media ]js)の起 始が 並 ぶ.
肩 甲翼 外 側 面は頭 側から肩 『「三 角 筋 (M.
deltoideus
scapu ]aris)
,
大 円筋 (M,
teres major )が起 始し,
尾 側 縁は胸 腹 鋸 筋 (M
.
serratug,
ventralis thoracis)が停 止する.
一
方 頭 側 縁は僧 帽 筋 (M.
trapezius )と肩甲挙 筋 (M.
tevator scaputae )が停止が あ り,
こ れは烏凵骨 との結 合 部まで伸び る.
肩甲骨 頭 側 縁の中 間 部 分は強い 隆 起が あ ワ,
偽 肩 峰 (pseudoacromion )と呼ばれ る.
肩甲骨の腹 側 部は厚 く な り,
内 側 面は, 長 上 鳥口骨 筋 (M.
supracoracoideus longus)の起 始が頭 側にある.
外 側で は,
関 節 窩 背 側に 尾肩甲上 腕 筋 (M.
scapulohumeralis caudalis )が筋性に起 始し,
その頭 側に」1腕三 頭 筋 外 側ワニ の筋 学
一
古 脊 椎 動 物 学 者に必 要な解 剖一
II,
肩 帯・
前肢 2010年3月 U med ’a’tlaterel
RADorsal ・view M.
latissimusdorsi ideuslaris 旧Dhla 阿s
dorsal[s s DELTOPECTORAL
CREST lateral
◎
media ’B
倫
図5.
上腕 骨の筋付 着 部 (Ccrocodigus).
A.
右 背 側.
B.
右 腹 側.
上 腕 三 頭 筋の起 始は頭 ご との区 別は し てい ない.
遠 位と近 位の臼い 部分 は軟 骨 付 着部であ り,
こ の部分 は関節 包に包ま れ る,
こ のた め,
関 節 包周 囲に付 着 する筋は、
付 着痕が骨に残ら ない.
長 頭 (M
、
triceps brachtalis lon帥 s medialis )が腱 性に起 始 す る,
さ ら に その 頭側 に は 背 側 短 烏 口腕 筋 (M.
coracobrachialis brevis dorsalis)
,
鎖骨三角筋(M de】toideuscalvicularis )の起 始が ある
.
こ の2
筋の起始は 大 き く凹 み,
表 面は粗 面 となる,
背 側 短 烏口腕 筋の起 始は肩 甲 骨を 越え
,
烏口骨 まで伸びる.
2
.
烏口骨 (coracoid,
図4)哺 乳 類で は烏 口 突起 (coracoid process)お よ び関 節 窩 を 形 成 する骨で あるが (Vickaryous and Hall
,
2006 ),
爬虫類で は相 対 的に大 き く
,
肩 帯の主要な構 成 要 素で ある.
輪 郭は肩 甲骨 と類 似し た平 行四辺 形だが,
中 央 部が強 く く び れ,
肩 甲骨との結 合 面 付 近に上 烏1
−
[骨 神 経・
動 静 脈 が 通 る上 烏口骨 孔 (supracoracoidal foramen )が開く.
背側 部は厚 く な り,
外 側面に は 肩 甲骨 と と も に関 節窩を 形 成する.
関 節 窩 腹 側 部は肩 関 節包の一
部が厚 く なっ た 烏口上 腕 靱 帯 (coracohumeral ligament)が付 着し,
上 腕 骨の腹 側に伸びる (Jenkins,
1993,
Fig.
2).
腹 側 部は 薄 くな る,
烏冂骨の内 側 面で は,
関 節 窩の腹 側に上 腕三頭 筋 内側 長 頭 (M.
triceps brachii longus medjalis )の起 始が あ り,
長 上烏口骨筋 (M.
supracoracoideus 】ongus )が 肩甲 骨を ま た ぎ,
頭 側 付 近 か ら 起 始 する,
頭 側 縁 と尾 側縁に は,
そ れ ぞ れ肋 烏口骨 筋の深 部と浅 部 (M.
costocoracoideuspars prefundus et superficialis )の起 始がある
。
烏口骨 腹側縁は軟 骨を介して胸 骨 (sternum )と関 節 する
,
外 側 面は頭側か ら肩 甲 舌骨 筋 (Momohyoideus
)の停 止,
間 お よ び短上烏口骨 筋 (Msupracoracoideus intermedius et brevis)の起始がある,
そ のす ぐ腹 側は上 腕二 頭筋 (M.
biceps brachii)の起 始が あ り, 腱 を 介した強い 付 着がみ られ る.
尾側には背 側か ら腹 側に か けて腹 側 短 烏口腕 筋(
M .
coracobrachialisbrevis
ventralis )が起 始す る.
3.
上腕 骨 (humerus,
図5
) 棒 状の骨で ある が,
近 位か らV5
の辺 りに,
三 角胸筋 稜 (deltopectoral cres [)が大き く発 達し て い る.
肩 関節 を な す部分 (上腕 骨 頭,
humeral head )は長 方 形で,
中 央部が隆 起 する。
肘 関 節を なす部分も同様に ほぼ長方 形 で,
尺 骨 (ulna ) と橈 骨 (radius )に関節 する部 分が それぞれ 隆 起し
,
尺 骨 顆 (ulnar condyle ) と橈 骨 顆 (radia] condyle )と な る,
肩 関節 面に対し,
肘 関 節 面は内 側に30− 40
度 ほ ど ね じ れてい る,
上腕 骨 頭全体は 石 灰 化線 維 軟 骨で覆わ れてい る が.
骨 頭全て が肩 関 節を形 成する わ け で はな く, 実 際に肩 甲 烏口骨 と関 節す るの は中 央の隆 起 のみで ある.
上腕骨背 側で は,
骨 頭の外側に肩甲 三角筋と背 側短烏 口骨筋の停止が ある.
三角胸 筋稜付近で は外 側か ら鎖骨 三角筋の停止,
上 腕橈骨 筋 (M.
humeroradialis)の起 始,
広背 筋と大円筋の停止の順 番に並び,一
・
・
ts
内側に尾 肩甲 上腕 筋が停止する.
広背 筋 と大 円 筋は強い共通腱を形 成 し て停 止 し,
付 着 部は 小 さい結 節に な る た め,
骨 か らで も付 着 痕が 明らか であ る,
骨 幹は腹 側の一
部を除く ほぼ 全 周が上 腕三頭 筋 短 頭 群 (Mm.
tricepsbrachii
brevis
)の化 石 87号 鈴 木 大 輔
・
林 昭次 M.
triceps brachii medialllaterel
AA
DORS
メIL
VIEvv
laterallmedial
M.
brachialisM
.
brachioradialis &biceps brachiiRADIUS
BVEN
ULNA r carpi ulnaris M.
triceps brachii 図6,
前腕 (尺骨及び橈 骨 )の筋 付着 部 (C.
crocedilus ).
A.
右 背側.
B.
右 腹側,
は前 腕 伸 筋 群が起始 す る.
これ ら は外 側か ら腕 橈 骨 筋(M
.
brachioradia
【is),
長 橈 側 手 根 伸 筋 (M.
extensor carpiradia ]is longUs)
,
回 外 筋 (M.
supinator ),
総 指 伸 筋 (M.
extensor digitorum c・mmunis )
,
尺骨 伸 筋 (M.
extensor ulnaris )の順に 並ぶ が,
その境 界は骨か らで は特 定で き ない,
上 腕 骨 腹 側で は,
骨 頭の 内側に肩 甲 下 筋が停 止し,
そ の遠 位に は 尾肩甲上 腕 筋の停 止が ある.
三角 胸 筋稜の基 部に は 大 き な窩が あ り,
腹側 短烏口腕筋 が 筋 性に停止 す る.
先 端に は上烏口骨 筋 群が停止 し,
そ の遠位 部 分を胸 筋 (M.
pectoralis)の停 止が囲む,
こ の2筋は短 く強い 腱を介し て付 着し, 付 着 痕は石灰 化 線 維 軟 骨で覆わ れ る.
三角胸 筋 稜か ら骨 幹 中央に か けては上 腕 筋 (M.
brachialils) が起 始する.
上腕骨 遠 位 端の 内側上顆 (enteplcondylc ) に は前 腕 屈 筋 群が起 始 する.
これ ら は内側か ら 尺 側 手根 屈 筋 (M.
flexor carpi ulnaris ).
長 指 屈 筋 (M.
flexor
digitorum longus)
,
円 回内筋 (M.
pronator teres)の順に並ぶ
.
仲 筋 群 同 様,
個 別の付 着 部は特 定で きない.
4,
尺骨 (ulna,
図6) 前 腕は 尺骨と橈 骨か らな る.
こ の 2骨は互い に関 節す る もの の,
間に厚い結 合 細 織 を介 する ため,
骨か らで は 関 節 面 を 明ら か にする こ とはで き ない.
尺 骨は近 位で骨 端 幅が大 き く,
遠 位で 小 さい.
遠 位 端 は,
線 維 軟骨を は さ み,
直接 手 根 骨 とは関 節 し ない.
尺骨 背 側は伸 筋 群が付 着 する,
骨 頭 内側に上 腕三頭 筋 の停 止があるが,
哺 乳 類の ような 肘 頭 (olecranon )は で きず,
三 頭 筋 停 止 腱 内に線 維 軟 骨が形 成さ れ る.
骨 幹に は ほぼ 全 長に わ た り,
尺 側 伸 筋 (M .
extensor ulnaris),
短 橈 側手根 伸 筋尺骨 部 (M
.
extensor carpi radialisbrevis
pars ulnaris )が 起 始 する
,
尺骨 腹 側は屈 筋 群が 付着する,
骨 頭か ら近位 骨 幹はわ ずか に凹 み,
こ こ か ら方 形 回 内筋 (Mpronator quadratus) が起 始す る.
こ の筋は非 常に大きく,
尺 骨の近 位 をほ と ん ど を占め る,
ま た上 腕三 頭 筋 停 止と方 形回内 筋 起 始の 間に は上 腕 骨 遠 位 端の尺側 部 分か ら続 く尺 側 手 根 屈 筋 (M.
flexor carpi ulnaris )の起 始がある.
遠 位 骨 幹は長 指屈 筋 尺骨部 (M
.
flexordigitorum
longus pars ulnarls )の 起 始 が 大 部 分 を 占 め る.
5
.
橈 骨 (radius,
図6)橈 骨は 近位 と遠位で骨 端 幅が ほ とん ど かわ らず, 遠 位
端で手 根 骨 と手 関節 を構 成す る
.
橈骨背 側は 骨幹外側か ら内 側へ,
腕 橈 骨筋,
回 外筋,
方形回内 筋の各 停 止が並ワニ の 筋学
一
古脊椎 動 物 学 者に必 要な解 剖一
正1.
肩 帯・
前 肢 2010 年3月 diale MC111 MCII MC lA
DORSAL
VIE
レv
Fadia distal distal carpals carpalsB
VENTRAL
VtEVV
図7,
手 根 骨,
3D.
CT を も と に図を作 製.
隣り合う骨 同士の隙間は結合組 織が埋め る.
筋の付 着 部は糺 合 組 織につ く もの が多い た め,
省 略(ナ イル ワニ Crocθdylus niloticus )
.
A.
右 背側.
B.
右掌側.
斜 線で お おっ た遠位 手 根 骨は軟 骨で あ り,
骨 化しない,
MC I.
V=
中 手骨1−
V.
ぶ
.
回外筋の遠位には短橈側手根伸筋 橈 骨 部 (M.
extensor carpi radialisbrevis
)の起 始が あ る.
橈 骨 腹 側は
,
近 位 骨 端に 上腕 筋と 上腕二 頭 筋の停止 が ある.
こ の 2筋は共 通 腱 を作 り,
骨に は っ きりした付 着 痕 を残 す.
その す ぐ遠 位に は上 腕 橈 骨 筋の停 止があ り,
付 着 部 は 強 力 な 腱 に よっ て粗 面 と な る,
骨幹は円 回 内筋 (M.
pronator
teres)の起始に よっ て 占 め ら れる,
6.
手 根 骨 (carpa [boneg
.
,
図7) 手 根 骨の基 本 配 列モデル は近 位 列が橈 側か ら橈 側 手 根 骨 (radiale ),
間手 根骨 (intemedium ),
尺側 手 根 骨(ulnare )
,
豆状骨 (pisiform
),
中間列が中央 骨 (centrale ),
遠位 列 が母 指 側か ら 遠位手根骨 1−
5とい う順に 並ぶ(Romer
,
1956),
ワニ の手 根 骨は近位が撓 側か ら橈 側 手 根 骨 (radiale + intermedium ), 尺 側 手 根 骨 (ulnare ),豆状 骨と な ら び
,
こ の う ち前二 骨は発 達 し, 遠 位お よ び 近位端が広が り中間部が細く な る.
遠 位手根骨は退 化し,
橈 側お よ び 尺側 手 根 骨の遠 位に そ れ ぞ れ一
.
.
・
っ ずっ ある.
遠 位 尺 側 手根骨は楕円体で,
遠 位 手 根 骨4と5が癒 合し た もの である,
遠 位 擁 側 手 根 骨は薄い円盤 状の線 維 軟 骨 で,
ほ とん ど骨 化 しない,
中 央 骨由来で あ る,
この手根 骨は長い軟 骨 板によっ て第5中手 骨 と結合す る が,
この 軟 骨 板は 遠位手根 骨2
と3
が 癒合 し た もの で ある と さ れ る (Mifller
andAlberch,1990
).
手 根 骨に は前 腕の伸 筋/ 屈 筋 群が停止 し
,
手 内 在 筋の起 始が多 数 ある が,
これ ら の筋は同 時に靭 帯や手 根 骨をっ な ぐ結 合 組 織か らも起 始 する.
図7に示 すよ うに手 根 骨 「司士の 間に は隙 間が多 く,
そ こ に厚い 軟 骨・
半 月や靭 帯が入 り込 む た め,
手掌 部 分に おい て は筋の起 始 / 停止 を骨に求め る こ とはあ ま り意 味が ない.
筋 系1
.
背側体幹筋 群 (dorsal group, trunk muscula 亡ure ;図
8,
表1 ) これ らの筋のほ と ん ど は起始・
停止 が広い 部分に ま た がる こと より,
作 動 筋と して よりも肩 帯を体 幹にっ なげ る動的 固定の 要 素が強い とい える.
a.
僧帽筋 (M.
trapezius)一
番 浅 層にある薄い筋で,
肩 帯の頭 背 側 を覆 う.
尾 側 の一
部は広 背 筋にっ なが る.
正 中の骨 板 (scute ) と胸 背 腱 膜 (thoracodorsal fascia)か ら起 始し,
偽 肩 峰の背 側 部で肩甲骨 頭側縁に停 止する.
第7 脊髄 神 経 支 配.
著者 の 観察で も副神経 の 父 配 は な い よ うで あ る,
A.
misstssippiensis とC.
acutus で は僧 帽 筋の停止が こ の他に 肩 甲三角 筋と大 円 筋の起 始の間に もある と報 告さ れ て い る (Meers,
2003).
前 方 (頭 側 ) 線 維は肩甲骨の前 突を 行い,
後方 (尾側 )線 維は肩甲骨の挙上を行う.
b ,
広背筋 (M,
latissi
皿 usdorsi
) 僧 帽 筋の尾 側に広が り,
肩 帯の 尾 背 側を広 く覆う筋.
僧 帽 筋と と も に一
番浅層に あ る.
胸背腱 膜か ら第6胸肋 骨に かけて起始する.
頭 側 縁 と尾 側 縁が収 束し て腱 と な り,
上腕三 頭 筋の 内側 長 頭と外 側 長 頭の間 を 通っ て上 腕 骨の背 側に停止する.
広 背 筋の深 層の大 円筋は,
広 背 筋 と共 通 腱 を 形 成 する,
こ の停 止は結 節 (tubercle )をっ く り,
骨 標 本か ら も よ く観 察で きる.
腕 神 経 叢の背側成 分か ら分 岐 する,
肩 関 節 を 内転,
上腕を挙上 させ る作 用 を持っ.
c.
肩 甲 挙 筋 (M,
levator
scapulae ) 僧 帽 筋に覆わ れ,
肩 甲骨の頭 側に位 置す る筋.
厚さ, 幅 と もに大きく,
強 力な筋で ある.
第4−
6頚 肋 骨か ら起 始し,
肩 甲骨 頭 側 縁に停 止 する.
クロ コ ダイル 属 (Crocociylzas)化石
一
87号 鈴 木 大輔・
林 昭次 図8.
肩 帯と体 幹を結ぶ筋 (C.
crocodiitttg ).
A.
右側面 浅層.
上皮お よ び結 合 組 織 を除 去 し た 状 態.
B.
右側 面 第2層,
頚 収 縮 筋・
僧 帽筋・
広背 筋を 除 去 し た状態.
C.
右上側 面.
肩 甲骨 を外 側に引 き,
肩甲骨と体 幹をつ な ぐ筋を 示 す.
肩甲翼背側に は菱形筋,
腹側には 頚 腹 鋸 筋 が走 る,
D,
右 背 面,
肩 甲骨を 外 側 に 引 き,
菱 形 筋 を 大 き く広 げる,
菱 形 筋は 四つ の筋腹に分かれ 広い付着 域を もつ が,
非 常に薄い筋であ る、
CCot1,
頚収 縮 筋;D¢CレSc,
鎖 骨/肩甲三角筋 ;LD,
広 背 筋 ;LSc,
肩甲挙筋 ;Pcct,
胸 筋 ;Rh,
菱形 筋 ;SVCff,
頚 /胸 腹 鋸 筋 ; TM,
大H
筋 ;’
1通,
僧 帽 筋;Trll,
上腕三頭 筋 外側 長 頭.
で は停止が烏口 骨頭 側 縁まで広 が る (Meers,
2003),
本 研究に用い たC.
siamenb’
isも(7aiman crocodilus に比べ広く付 着 し て い た
.
第7脊 髄 神 経 支 配.
肩 甲 骨の前 突を行 う.
また肩 甲骨 を 固 定す れ ば,
頚 部 を側 屈させ る.
d
.
胸 腹 鋸 筋 (M.
serratus ventralis thoracis)第1
−
3胸 肋 骨か ら起 始し.
肩甲 骨 尾側 縁に停 止する,
作用 は 肩 甲骨の後退
・
下 制.
e
.
頚腹鋸 筋 (M.
serratus ventraljs cervicalis)中 斜 角 筋の深 層
,
第6−
8頚 椎の頚 肋 骨か ら起 始し,
肩 甲 骨 背 側 縁に停止 する.
作 用は肩 甲骨の前 突・
下 制.
f.
菱 形 筋 (M.
rhomboideus ) 頭 横 突 棘 筋 (M.
trarisversospinalis capitis )と後 棘 頭 筋 (M.
spinocapitis posticus)の間の筋 膜か ら 起始 し,
肩 甲 骨の 背 側 縁に停止 す る.
作 用は肩 甲 骨の挙上.
2
.
腹 側 体 幹 筋 群 (Ventral Group,
Trunk musculature ;図9
,
表1)下 記の筋に加え
,
舌 骨 下 筋 群 (Mm.
Infrahyo三dei
)お よび頚 筋 群 (Mm
.
collD が肩 帯に付 着す る.
これ ら は肩 甲舌 骨 筋 (M.
omohyoideus ),
胸 骨 舌 骨 筋 (M.
sternohypc )ideus),
お よ び胸 骨下 顎筋 頚 長 筋 (M
.
longus collj)で あ る.
こ れ らの筋は,
肩 帯に付 着す る もの の,
前 肢の運 動には ほ と ん ど 関 与 し ないた め,
本 稿で は省略 す る.
a.
胸 筋 (M,
pectoralis
) 腹 側の浅 層に あ る 非常に 大 き な 筋で,
胸骨 乳突 筋 (M.
sternomastoideus )の停 止腱に よっ て,
そ れ よ り深 層 に ある頭 側 頭と浅層に ある尾 側 頭 に 分 け ら れ る.
頭 側 頭は 胸 骨の胸 骨 柄か ら起 始 し,
尾 側 頭 は胸骨体か ら第8肋 骨 の胸 骨 部か ら起 始する.
胸筋の停止 は起 始に 比べ る と小ワニ の筋学
一
古脊椎 動物学 者に 必要な解剖一
II.
肩帯・
前 肢 2010年 3月 表1.
体 幹 筋 群.
Table l
.
Trunk usculature.
名称 主 な 起 始 主 な 停 止 主 な作用 支 配 神 経
』
骨 板と胸 背腱膜 肩 甲 骨 頭 側縁 第肩 甲 骨維 ),
挙 上 (後 方 線 維 )の動 的 固 定・
前突(前 方 線 7脊髄神 経 広 背 筋 M.
Iatissimus dorsi 肩 甲挙 筋 胸 背 腱 膜〜
第6胸 肋 骨 上腕 骨 背 側 肩 関 節の内 転、
上腕の挙上 腋 窩 神 経 M.
levatg[§⊆旦pulae−.
胸 腹 鋸 筋 M.
seFratusventralis thoracis 第 4−
6頚 肋 骨 肩 甲 骨 頭 側縁 肩甲 骨 の 動 的 固 定・
前 突 頚 部の側 屈 第7脊 髄 神 経 第 1−
3胸 肋 骨 肩 甲 骨 尾 側 縁 肩 甲 骨の動 的 固 定・
後 退・
下制 頚 腹 鋸 筋 第6−
8頚 肋 骨 M.
Serratusventralis cervicaiis 肩 甲 骨 背 側 縁 肩 甲 骨の動 的 固 定・
前 突・
下制 菱形筋 M.
rhomboideus 頭 横 突 棘 筋と後 棘 頭 筋 肩 甲 骨 背 側 (軟 骨 の筋膜 部 分) 肩 甲 骨の動 的 固 定・
挙上 麓 蠏 Me{!囲 ’Group 胸 筋 M.
ectoralis 頭 側 頭は胸 骨 柄,
尾 側 頭 は 胸 骨体〜
第 8肋 骨 三 角 胸筋 稜 肩関 節 の 内転.
上 腕 の 下 制 腕 神 経叢胸 筋 枝 肋烏口筋 M.
CQStcoracoideus ラ戔音B pars superficialis 深部 pars profundus 第1,
2胸 肋 骨 腹肋 烏口骨尾 側 縁 鳥口骨頭 側縁 烏口骨の後 退 第 9−
11脊 髄 神 経 さ く, 収 朿して上 腕 骨の 三角 胸 筋 稜に停 止 する.
肩 関 節 を内 転,
上 腕を下 制させ る強い 筋である た め,
ハ イ ウrt・一
クや ギャロ ップ時に体幹を支える主 な筋で ある と考え ら れて い る.
腕 神経叢の腹側 に ある胸 筋 枝が支配 する,
b
。
肋 烏冂筋 (M.
costcoracoideus=
M pectoralis minor ) 胸 筋の深 層にあ り,
烏口骨 とそ の尾 側にある肋 骨 をつ な ぐ筋.
浅 層と深 層に分けられ る,
烏口骨を後 退させ る 働 き がある と考え ら れ る.
第IX−
XI脊 髄 神 経 支 配.
この う ち第正X脊 髄 神 経は腕 神 経 叢の腹 側 枝で あ る.
支配神経 が筋の深層か ら入る こ と及び腹側 横筋のす ぐ外側にある こ と か ら,
村上(1988)は内 肋 間 筋の変 異 と し てい る が,
腕 神 経 叢か ら支 配 枝が伸びる こ と, 明ら か に肋 間 筋と異 な っ た筋 束を作る こと か ら胸 筋 系の筋 と考えられ,
小胸 筋 と相同 だ と考え ら れ る.
浅 部 (pars superficialis ):大 部 分が第
1
胸 肋 骨か ら起 始 し,
残りの部分 が第2
胸 肋 骨か ら 起始 する.
停止は鳥 口骨の尾側縁か ら胸一
鳥口骨 関 節 付 近で ある,
深 部 (pars profundus):浅 部よb
も深 層に位 置し,
小 さい.
自 由肋 骨か ら起 始し, 烏口骨 頭 側縁に停止 する.
3
.
背 側 肩 帯 筋 群 (Dorsal group, Pectora]girdie rnusculature ;図
9,
表2 )a
,
三角筋群 (Mm .
de
]toideus )肩関 節の強力な外 転 筋
.
肩 甲三角 筋 (M.
de】toideus scapularis)と鎖 骨三 角 筋 (M.
deltoideus c [avicularis )の2筋に 分 け ら れる
.
ワニ に は鎖 骨が ない ので.
鎖骨三 角 筋で はつ じっ まが合わ ない が,
ト カ ゲ類で の鎖骨三角 筋 と 付 着 部 位・
形 態 が 類 似 し てい る た め,
慣 例 的に使わ れ て い る.
肩甲三 角筋 (M
.
delteideus scapularis ):CDng et al.
(1989 )で は肩 甲背 筋 (M.
dorsalis scapulae )と されてい る.
羽状 筋で あ り,
生理 的 断 面は大 きい.
肩甲骨の肩甲 翼か ら起始し,
頭 側で僧 帽筋と肩甲挙筋 尾側で大円筋 と接する.
停止は腱と なっ て上腕 骨 骨 頭 付近の背 外 側 縁 に停止 す る,
そ の遠位に は鎖 骨三 角 筋の停止が ある.
肩 関 節の外 転, 挙上に働 く と考え られる (Meers,
2003).
腋 窩 神 経に よっ て支 配さ れ る.
こ の枝は鎖骨 三角 筋 枝 と 共 通 枝を作る.Meers
(2003
)で は さ ら に広背筋枝と も 共通枝をつ く る と さ れて い るが,
本 研 究で は確 認で き な かっ た.
鎖 骨三 角 筋 (M,
deltoideus clavicularis ):僧 帽 筋に一
.
・
部 覆わ れ る.
起始は肩 甲 骨の偽肩 峰で あ り,
尾 側で背 側 烏rl
腕 筋 と接する.
停止 は 三角 胸 筋 稜の背 側で,
遠 位で 上腕 筋と上腕 撓 骨 筋に接 する.
こ の筋は肩 関 節の動 的 固 定の作 用 を持つ ほ かに,
上 腕 骨 を 外 転させ る作 用 を持ち,
ハ イウォー
ク時に使 われ る と考え ら れて い る (Meers,
2003),
腋 窩 神 経支 配.
肩 甲 三角筋 と共通枝をっ くる ほ か,
尾 肩 甲 上 腕 筋 との共 通枝か ら も支 配 枝を受け る.
b .
大 円筋 (M.
teres major ) 広背 筋の深 層にあ り, 肩 甲骨の肩 甲翼か ら起 始す る,
頭 側で肩 甲三 角 筋の起 始,
尾側で胸腹鋸筋 (M.
serratus ventralis thoracis)の起始と接する,
停止付 近で は腱 と なっ て,
広背 筋の停止腱の深 層を下 行し,
上 腕 骨の背 側 近 位 に 広背筋 と共に停止する.
大 円筋は C.
acutttS で はあ ま り発 達 しない (Meers,
2003).
広背 筋と共に肩 関 節を 内転させ,.
ヒ腕 を 挙上さ せ る.
橈 骨 神 経 と腋 窩神経の分 岐部付近 か ら起こ る枝に よっ て支 配さ れ る.
こ の枝は 広 背 筋の一
部も支 配 する.
大 円筋 とい う名称はワニ の他に 哺乳 類で も使 わ れる が,
ワニ には,
小 円筋 (tereg.
minor )化石 87号 鈴木 大輔