第26章 電磁誘導(2)
交流回路
交流電圧波形
発電機によって発生する起電力は、 時間とともに変動する電圧で、これ を交流電圧(Alternating Voltage)と いう。交流電圧波形における瞬間電 圧 V(t) は、最大値(振幅) V0 と角 速度 を用いて、 となる。ここで、 は位相角(初期位 相)、すなわち t = 0 でどの角度に相 当するかを示す。 2つの正弦波 V1、V2 を考える。 これら2つの正弦波を合成すると、 となり、同形式になる。ただし、この ときの振幅 VT と位相角 T は、 となる。 0 ( ) sin( ) V t V
t V t V0 V0 T = 2 / 波形の合成 1 01 1 2 02 2 sin( ) sin( ) V V t V V t
1 2 01sin( 1) 02sin( 2) sin( ) T T V V V V t V t V t
2 2 01 02 2 01 02cos( 1 2) T V V V V V
1 01 1 02 2 01 1 02 2 sin sin tan cos cos T V V V V
1
2
f
T
交流の実効値
交流は周期的に値を変えるので、 直流の電圧(電流)計を用いると、針 が定まらずに振れ続ける(瞬時値)。 そこで、その大きさ、または強さを決 められた量として表現するために実 効値(Effective Value)を用いる。実 効値は、瞬時値を2乗して1周期に ついて平均し、その平方根から得ら れる。 電圧の瞬時値を、V = V0sintとす ると、実効値 Ve は、 よって、 交流電流の実効値 Ie も同様に、 となる。 一般に、交流用の電圧計や電流 計は実効値で表現するように作られ ている。つまり、家庭用電源の電圧 100[V]とは実効値なので、実際には +141[V]から141[V]、最大電圧差 (peek-to-peek値)では、282[V]にも なる。 2 2 2 0 0 2 2 0 0 0 1 1 2 2 2 sin dt ( cos )dt T e T V V t T V V t T
02
eV
V
V t V0 V0 0sinV V
t
2 V 02
e I I
交流回路での抵抗
導体中の電子の振る舞いは、電界 が変化する場合でも変わらない。す なわち、交流回路でも直流回路と同 様に、V = RI のオームの法則は成 り立つ。 図のようなVR回路において、 交流回路の抵抗で消費される電 力は、P = VI より、 となり、平均の電力は、 となる。これを電力の実効値という。 交流回路の電力 のとき、オームの法則 より、電流は、 となる。 0sin V V
t 0 0 sin sin V V I t I t R R
R V V I 2 2 2 0 01
2
2
sin
( cos
)
V V P t t R
R
t 2 0 V R 2 02
e V P R 交流回路とコンデンサー
直流電流はコンデンサーに電荷が たまる(過渡状態)と、その後は流れ なくなる。 交流電流は電子が振動運動して いるので、電荷がたまり始めるとす ぐに逆向きの電圧に変わる。そのた め、電流が流れ続けるのと同じ状態 となる。 C V コンデンサーに蓄え られる電荷はQ = CV なので、 0sin
Q CV
t V I 電荷の時間的な変化が電流なので、 となり、電流の位相は電圧より / 2 だけ進む。 0 0 2 d cos d sin( / ) Q I CV t t CV t
コンデンサーのリアクタンス
交流回路でのコンデンサーの電圧 と電流の関係は、 となり、これらの最大値の関係より、 が得られる。この比例定数 XC (抵 抗に相当する)をコンデンサーのリ アクタンスという。この式より、 が 大きい、すなわち周波数 f が高いほ ど抵抗は小さくなることがわかる。 ※位相が / 2 ずれているときの電 圧と電流の比をリアクタンスという。 リアクタンスより、コンデンサーは 高周波の信号に対しては抵抗が小 さく、低周波の信号に対しては抵抗 が大きくはたらく。そのため、図のよ うに入れることで信号に入る高周波 のノイズを除去することができる。こ のようなコンデンサーをノイズカット コンデンサーという。 0 1 0 V I C
XC 1 C
0 02
sin
sin(
/ )
V V
t
I CV
t
ノイズカットコンデンサー 電 気 製 品 C交流回路とコイル
コイルは導体でできているため、 直流電流に対しては、過渡状態を過 ぎた後はほとんど抵抗がない。 交流電流に対しては、自己誘導起 電力が常に電流の変化を妨げる方 向に発生するため、電流が流れにく くなる。 誘導起電力が電源の 電圧と釣り合っているの で、 V L よって、 となり、電流の位相は電圧より / 2 だけ遅れる。 0 0 d sin dI L V t t
0 cos 0 sin( / )2 V V I t t L
L
V Iコイルのリアクタンス
交流回路でのコイルの電圧と電流 の関係は、 となり、これらの最大値の関係より、 が得られる。この比例定数 XL をコ イルのリアクタンスという。この式よ り、 が大きい、すなわち周波数 f が高いほど抵抗は大きくなることが わかる。 1つのスピーカーでは可聴範囲の 20[Hz]から20[kHz]の音を再生する のは難しい。そこで、低音の得意な 大きなスピーカー(ウーハー)と高音 の得意なスピーカー(ツィーター)を 組み合わせたものが2ウェイスピー カーである。 スピーカーネットワーク 0 02
sin
sin(
/ )
V V
t
V
I
t
L
0 0V
LI
XL
L C C L L 中低音用 ウーハー 高音用 ツィーター回路と交流波形
レジスタンス回路 電流は電圧と同位相となる。 インピーダンス ZR は抵抗 R だけとなる。 ※インピーダンス:電流と電 圧の比 L V C V R V V, I t V, I V, I 0sin V V
t 0sin V V
t 0sin V V
t 0sin I I
t 0sin( / )2 I I
t 0sin( / )2 I I
t キャパシタンス回路 電流が電圧より / 2 だけ 進む。インピーダンス ZC は リアクタンス XC = 1 / C とな り、周波数が高くなるほど小 さくなる。 インダクタンス回路 電流が電圧より / 2 だけ 遅れる。インピーダンス ZL はリアクタンス XL = L とな り、周波数が高くなるほど大 きくなる。 t tLCR回路とインピーダンス
図のような回路を考える。Cの両端 の電圧を VC とすると、キルヒホフの 法則から、 となり、この式を微分すると、 ところが、 なので、これらの VC を消去すると、 となる。電流Iは電圧Vと同じ周波数 を持つので、 と定義すると、 となる。この関係はどんなtに対して も成り立つことから、 となり、これらの関係から I0、 を求 めると、 R C L t V V 0sin
d d C I V V L RI t 2 2 d d d d d dC d d V V L I R I t t t t d( ) d d d d C d C CV V Q I C t t t 2 0 2 d d d cos d d d I I I V L R V t C t t t
0sin( ) I I
t 0 0 0 0 1 1 0sin cos cos sin
cos sin sin cos
I R L t C V I R L t I C 0 0 1 0 1 sin ( / )cos cos ( / )sin / R L C R L C V I
これらの関係を図に表したものを ベクトル図という。電流の位相は、コ ンデンサでは電圧より/2進み、コイ ルでは電圧より/2遅れる。電流を 基準にして、それぞれの相対的な関 係を図にすると、 となり、これらより、インピーダンスの 関係を導くこともできる。