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鉄系超伝導に新物質、毒性の低い元素で発見

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

鉄系超伝導に新物質、毒性の低い元素で発見

平成20年11月5日 独立行政法人 物質・材料研究機構 独立行政法人 科学技術振興機構 概要 1.独立行政法人 物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄、以下 NIMS)と独立行政法人 科 学技術振興機構(理事長:北澤 宏一、以下 JST)は、最近、高温超伝導体の新しい鉱脈 と期待されている鉄系超伝導に、毒性の低い元素のみで構成された新超伝導物質を発見し た。この成果は、NIMS 超伝導材料センター(センター長:熊倉 浩明)ナノフロンティア 材料グループの高野義彦グループリーダーらの研究によって得られた。 2.2008 年初頭、東京工業大学の細野教授のグループによって、鉄系超伝導体が発見された。 この発見を契機に、類似化合物に超伝導体が次々と見出され、この鉄系超伝導は、新しい 高温超伝導体の鉱脈と期待されている。 従来の高温超伝導において超伝導の起源となる結晶構造は、銅と酸素が作る二次元構造 である。この鉄系超伝導では、鉄とヒ素が作る二次元構造が超伝導の起源と考えられてい る。そのため、これまで発見された鉄系超伝導体のほとんどが、鉄ヒ素、鉄リン、鉄セレ ンなどの二次元構造を持っている。しかし、ヒ素やリン、セレンは、毒性の高い元素であ るため、鉄系超伝導体を応用していくためには、毒性の低い元素で構成された新超伝導体 を見出すことが望まれていた。 3.当研究グループでは、鉄系超伝導体と類似構造を持つが、超伝導を示さない鉄テルル化 合物に着目し、そこへ硫黄を少量ドープすることで超伝導を発現させる事に成功した。こ の鉄テルル系超伝導体 FeTe1-xSxは、ヒ素やリン、セレン等の毒性の高い元素を含まないた め、応用に適しているものと考えられ、今後、超伝導線材の開発などに取り組んでいく予 定である。 4.本発見は、ゼロ抵抗状態で電流を流すことができる超伝導線材や超伝導デバイスへの応 用が考えられる。毒性の低い元素で構成されているため、研究開発が容易になり、今後、 より多くの研究者が研究開発に参画することなどが見込まれ、更なる新超伝導体開発への 足がかりとなる事が期待される。 5.本研究成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 研究領域「新規材料による高温超伝導基盤 技術」(研究総括:福山 秀敏・東京理科大学 理学部 教授)の研究課題「鉄セレン系超

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研究の背景 2008 年初頭、東京工業大学の細野教授のグループによって、新たに鉄系超伝導体 LaFeAsO 系が発見された。その発見を契機にして、類似化合物に超伝導体が次々と見出され、超伝導 転移温度 Tc1)もこれまでに 56K2)まで上昇した。それ故、この鉄系超伝導体は、新しい高温 超伝導体の鉱脈と期待され、現在、JST 戦略的創造研究推進事業 研究領域「新規材料によ る高温超伝導基盤技術」を中心に、積極的に研究開発が進められている。 これまでの銅酸化物高温超伝導体では、銅と酸素が作る CuO2二次元面が超伝導発現に不 可欠な結晶構造と考えられている。鉄系超伝導体の場合は、鉄とヒ素が作る二次元構造が、 超伝導の起源と考えられており、これまで見出された鉄系超伝導体の多くは、鉄ヒ素構造、 もしくはそれに類似した、鉄リン、鉄セレン二次元構造などを持っている。なかでも、ヒ 素やリン、セレンは毒性が高いため、その扱いが難しく、研究開発や応用を難しくしてお り、毒性の低い元素のみを用いた新超伝導体の開発が求められていた。 成果の内容 当研究グループでは、これまでに、鉄系超伝導体の中で最もシンプルな結晶構造を持つ鉄 セレン化合物の超伝導転移温度 Tc が、1.5 万気圧の圧力を加えることによって、Tc=13.5K から 27K へ劇的に上昇することを見出し、鉄セレン化合物がさらに高い超伝導転移を示すポ テンシャルを備えていることを示した。 一方、鉄テルル FeTe は、結晶構造が鉄セレンに非常に良く類似しているにも関わらず、 超伝導を示さない。当研究グループは、このことに疑問を感じるとともに、鉄テルルは毒性 の低い元素から構成されているため、新超伝導開発には最適な材料であると考えた。鉄セレ ンでは、圧力を加え結晶格子を縮めることにより超伝導転移温度が急上昇した。ならば、鉄 テルルも何らかの方法で結晶格子を縮めたならば超伝導が出現しないだろうか。そこで、テ ルルの一部をイオン半径の小さな硫黄に置き換え、結晶格子を縮めたところ、テルルの約 20%を硫黄に置き換えた、FeTe0.8S0.2が超伝導転移温度約 Tc=10K の超伝導を示すことを発見 した。 波及効果と今後の展開 本超伝導体は、毒性の低い元素のみで構成されているため、研究開発が容易であり、応用 可能性も高い。例えば、電流を電気抵抗ゼロで輸送することができる超伝導線材の開発も可

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問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3 独立行政法人 科学技術振興機構 広報・ポータル部広報課 TEL:03-5214-8404 FAX:03-5214-8432 E-mail:[email protected] 研究内容に関すること: 独立行政法人 物質・材料研究機構 超伝導材料センター ナノフロンティア材料グループ 高野 義彦(たかの よしひこ) TEL: 029-859-2842 E-mail: [email protected] JST の事業に関すること: 独立行政法人 科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 古川 雅士(ふるかわ まさし) 〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル TEL:03-3512-3528 FAX:03-3222-2068 E-mail:[email protected]

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【用語解説】

1)超伝導転移温度 Tc 超伝導体を超伝導転移温度 Tc 以下に冷却すると、ゼロ抵抗状態が出現する。ゼロ 抵抗状態では、まったくロスなく電流を流し続けることが可能で、将来の環境エネ ルギー材料として注目されている。その他、将来の超伝導コンピューターに応用可 能なジョセフソン効果やマイスナー効果なども、超伝導にのみ現れる特別な現象で ある。 2)K(ケルビン) 絶対零度(-273.15℃)をゼロ度と定義した温度の単位。絶対零度より低い温度は 存在しない。参考として、液体ヘリウム温度は約 4.2K、液体窒素温度は約 77K、室 温は約 300K である。 図1 鉄テルル化合物 FeTe Sの結晶構造の略図。

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0 1 2 3 4 5 0 20 40 60 80 100 R e s ist ivit y ( m Ω c m) Temperature (K) FeTe 0.9S0.1 FeTe 0.8S0.2 FeTe 超伝導転移 図2 電気抵抗の温度依存性。低温で抵抗がゼロになっている。 -0.025 -0.02 -0.015 -0.01 -0.005 0 0.005 0 5 10 15 20 M agn et iza ti on ( e m u /g) Temperature (K) FeTe 0.9S0.1 H = 10 Oe ZFC FC FeTe 0.8S0.2 図3 磁化率の温度依存性。超伝導のマイスナー効果により負の磁化率が現れている。

参照

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