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かごの中の金の卵 : ナノ空間の金粒子が触媒技術に新たな道を拓く

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

かごの中の金の卵:

ナノ空間の金粒子が触媒技術に新たな道を拓く

平成22年7月12日 独立行政法人物質・材料研究機構 概 要 1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝)国際ナノアーキテクトニクス 研究拠点(拠点長:青野正和)のアジャヤン・ビニュ(Ajayan Vinu)独立研究者らは、 安定化剤や還元剤を使うことなく精密に大きさが揃った金などの金属ナノ粒子を合成 する手法を世界ではじめて確立した。 2.金ナノ粒子には、燃料電池、各種触媒、物質分離、さらにはエレクトロニクスから化 粧品にいたるまで多岐にわたる応用が期待されている。その各特性はその粒径によっ て決められるので、簡便な粒径制御の方法の確立は非常に重要である。 3.本研究グループでは、独自開発したナノポーラス窒化炭素(MCN)のナノメートルサイ ズでの大きさが厳密に定められた空間の内部で、金ナノ粒子を成長させ厳密に決まっ た大きさの粒子を作製した。 ナノポーラス内部にあるアミノ基が安定化剤と還元剤(前駆体から金を作る働きを持 つ)の役割を果たし、特別な化学物質を使わずともナノ粒子の合成が自然に起こる。 4.実証として、医薬品であるプロパルギルアミンという物質合成の触媒として機能する ことが確認された。ナノポーラスに固定化された金ナノ粒子は凝集して活性を失うこ となく、また簡単に洗うだけで、何回でも繰り返しリサイクル利用することもできる。 5.これと同じ方法論により、様々な種類の金属ナノ粒子を、安価に大量生産することが 可能となる。本技術は、触媒開発にとどまらず、物質分離、水素貯蔵、ドラッグデリ バリー、燃料電池用の電極材料において多大な貢献をなすものと期待される。 6.本研究成果は、科学誌

Angewandte Chemie International Edition

に近日オン

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研究の背景 金属ナノ粒子は、その特異な物理的化学的特性のゆえに、触媒作用、分離、磁性、オプ トエレクトロニクス、およびマイクロエレクトロニクスの分野で多くの注目を集めている。 しかし、金属ナノ粒子の特性や機能は、粒径、形状、結晶構造、および比表面積などの構 造因子によって大きく変わりうる。したがって、いかに大きさの決まったナノ粒子を簡単 に作るかが、広く模索されている。これまでに、水素還元、自己組織化、界面活性剤を用 いる過程などいくつかの方法が、ナノ粒子の粒径および形状をコントロールするために用 いられてきた。 粒子の大きさをそろえるという観点では、メソポーラス物質などのナノ多孔性材料中で ナノ粒子を育てる方法が魅力的である。なぜならば、ナノ粒子はかごの中で育てられたよ うに決まった大きさへと成長させることが出来るからである。 そのような背景から、ナノポーラス物質中での金属ナノ粒子の作製がいろいろと試みら れているが、多くの問題を抱えていた。通常のナノポーラス物質には金属ナノ粒子を安定 させたり、前駆体から金属へ変換させるための還元能力がない。したがって、外部からそ のような働きをするような化学物質を加えたり、ナノポーラス物質の内部に相当苦労して 特別な官能基を固定する必要があった。 これらの操作は煩雑であるばかりか、場合によってはナノポーラス物質の厳密な大きさ の空間を壊してしまうことすらある。それらの問題点を解決し、簡単に、特別な化学物質 を加えることなく、大きさが厳密に決まった金などの金属ナノ粒子を合成する手法の開発 が望まれている。 研究の進展 1. 我々は、厳密に大きさ(孔径)が制御されたナノ多孔性物質(ナノポーラス物質)の 開発を行っており、炭素と窒素から出来ているナノポーラス物質「メソポーラス窒化炭 素(MCN)」を世界に先駆けて開発した。この物質のナノ空間中に、金の前駆体物質を安 定して固定化できるアミノ基が多数存在していることに着目。MCN 物質中での金ナノ粒 子の合成実験をはじめた。(図 1) その過程で、このアミノ基が金ナノ粒子を安定化したり、前駆体から金への還元反応を 行ったりするという思わぬ結果を得た。最終的に、外部から化学物質を新たに加えるこ となく金のナノ粒子を合成するという今まででは考えられないような方法を見出した。 また、生成した金のナノ粒子は、直径7ナノメーターの大きさでそのサイズは、ほぼ均 一であった。(図 2) ※通常のメソポーラスカーボンを担体に使うと金が孔の外側に出来てしまうので、金の 直径は非常に大きく大きさもまちまち(直径 20-140 nm)になる。 2. 金のナノ粒子が触媒反応を果たすことは首都大学東京の春田教授らによって報告され

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ており、注目を集めている。我々は合成した金ナノ粒子を用いて触媒機能を探索した。 金ナノ粒子は MCN のナノ空間内に固定化されているため凝集して活性を失う恐れは全 くない。例えば、精密合成を要する生理活性物質(あるいは医薬品)であるプロパルギ ルアミンを、ベンズアルデヒド、ピペリジン、およびフェニルアセチレンの結合反応に より一気に合成できることを示した。(図 3) 触媒である金のナノ粒子は反応溶液中に流出することもなく、ナノポーラス MCN 物質 中に固定化されるため、それを簡単に洗浄するだけで何回も繰り返し用いることが出来 る。つまり、高い触媒活性を保ったまま、リサイクル使用が可能な「エコ」な環境負荷 が少ない触媒システムでもある。 波及効果および発展 1. 今後、単一のステップで、いかなる安定剤、径形成剤、または還元剤も無しにナノポー ラスマトリックス材料内において金の極小径ナノ粒子を調製することができると思わ れる。これは、ナノ粒子の製造過程のコストを節減し、主として凝集の防止と粒子の還 元のためにナノ粒子の調製に必要な有毒かつ高価な化学物質の利用を回避することに なる。 2. 今回の作製方法はとてもシンプルで、異なる構造および粒径を持つ MCN 上のその他の各 種金属および金属酸化物ナノ粒子の製造にまで応用できる。それにより物質分離、水素 貯蔵、ドラッグデリバリー、燃料電池用の電極材料、および触媒的有機変換において大 いに利用の可能性を有し得るものである。 3. また、金のナノ粒子を固定化する MCN 物質は安価な素材から単純な操作で簡単にかつ 大量に製造することができる。それにより精密構造のナノ粒子を工業的に大量生産、医 薬品製造の効果的な触媒としての産業応用も期待できる。 問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 FAX:029-859-2017 研究内容に関すること(日本語での問い合わせ先): 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主任研究者 有賀 克彦(ありが かつひこ) TEL:029-860-4597

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FAX:029-860-4832

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【用語解説】 1)ナノ粒子 ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの直径(粒径)を持つ粒子のこと。 このような小さな大きさになると、いろいろな特性が普通の物質とは異なってくる ので、研究開発上大変注目されている。例えば、重さあたりの表面積が極めて大き くなるので触媒反応には大変有利になる。 2)ナノポーラス物質 孔径がナノメートルサイズである多孔性物質である。特に孔径が孔径 2 ~ 50 nm の物質をメソポーラス物質と呼び、今回用いたメソポーラス窒化炭素(MCN)もこの メソポーラス物質に相当する。これらの物質は、非常に精密な孔径の孔が規則的に 多数存在しており、非常に表面積の大きい物質となっている。 3)メソポーラス窒化炭素(MCN) 上記のメソポーラス物質のうち炭素と窒素で出来ているもの。本研究を行った Vinu 博士が、世界に先駆けて発見した新物質。 4)アミノ基 窒素と水素から出来ている官能基で、金属やその前駆体を安定に保持することがで きる。 5)還元 物質に電子を与える反応で、正荷電を持つ金属の前駆体に電子を与えて金属とする ことができる。 6)組織「国際ナノアーキテクトニクス」について 世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI プログラム)に 2007 年に採択さ れた5拠点のひとつであり、ナノテクノロジー技術により物質科学研究を推進する 世界屈指の研究拠点形成を目指すもの。特に、環境・エネルギー問題なども重要な 取り組み課題であり、ナノテクノロジーと物質科学によって持続可能な社会作りの 基盤技術を創製することも目標の一つ。今回の研究成果も、省エネルギープロセス で、リサイクル容易な触媒を作製しており、本プロジェクトに大きく寄与するもの である。

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図 1 ナノポーラス物質 MCN 内で大きさの揃った金のナノ粒子ができる様子(金の卵が育つようである)

図 2 電子顕微鏡で見た金のナノ粒子(黒い部分)で背景に縞のように見えるのが MCN のナノ空間である。

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図3 三つの化合物が一つの分子(プロパルギルアミン)になる合成模式図。触媒である金ナノ粒子は MCN の 中に固定されているので、何回でも再利用できる。

図 2  電子顕微鏡で見た金のナノ粒子(黒い部分)で背景に縞のように見えるのが MCN のナノ空間である。

参照

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