企業年次報告における気候変動情報開示--SEC解釈通達「気候変動関連開示に関する委員会指針」の評価
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(2) 第57巻. 1は. 2010年2月8日. 第1号. じ. め. に. に,ア メ リカ 合 衆 国 証 券 取 引 委 員 会(theU.S.SecuritiesandExchange. Commission:SEC)か. ら,「気 候 変 動 関 連 開 示 の 委 員 会 指 針(CommissionGuidanceRe-. gardingDisclosureRelatedtoClimateChange)」 (以 下,解. 釈 通 達)が. の 解 釈 通 達(interpretiverelease). 発 効 さ れ た(1)。こ の 解 釈 通 達 で は,気. や 法 的 発 展 に 適 応 す る 公 開 企 業 に 向 け て,既 提 供 さ れ て い る 。 しか し,解. 存 のSEC開. 示 規 則 に 関 し てSECに. 解 釈 通 達 は 発 効 日 の2月8日 2009年12月31日 で は,こ. 示 要 件 に 関 す る 指 針 がSECか. 釈 通 達 は 新 し い 法 的 要 件 を 提 示 す る も の で な く,連. に 基 づ く開 示 義 務 を 企 業 が 履 行 す る 際 に,SECに SEC開. 候 変 動 問 題 に関 連 す る ビ ジネ ス ら. 邦法規制. 提 出 す る財 務 書 類 に 要 請 され る既 存 の. よ る 見 解 が 概 説 さ れ た も の と位 置 づ け ら れ て い る(2>。 に 適 用 と さ れ,現. を 事 業 年 度 末 と す る10-K様. 行 実 務 で 即 時 に 対 応 す る 必 要 性 が あ り,. 式 の 年 次 書 類 や他 の 開示 書 類 の作 成 提 出企 業. の 内 容 を 注 意 深 く検 討 す る 必 要 が あ る(3)。. 本 稿 は,こ. の 解 釈 通 達 を 批 判 的 に 評 価 す る こ と を 目 的 と して い る 。 我 が 国 で は,最. 投 資 家 の 情 報 要 求 に 応 え る べ く,上. 近の. 場 企 業 の 証 券 制 度 の 書 類 作 成 提 出の 際 に気 候 変 動 関 連. 開 示 に 適 用 さ れ る 具 体 的 ル ー ル が 発 展 す る こ と に 関 係 者 の 期 待 が 高 ま り つ つ あ る。 よ っ て,ア. メ リ カ に お け る 制 度 開 示 の 状 況 を 理 解 し,そ. こ で の 課 題 を 認 識 す る こ と は,今. 後の. 我 が 国 に お け る 証 券 市 場 の 投 資 家 保 護 に 資 す る 気 候 変 動 関 連 情 報 の 開 示 の 在 り方 に 関 す る 政 策 的 議 論 の 基 礎 を 提 供 す る 上 で,非 本 稿 で は,最. 初 に,解. 釈 通 達 の 背 景,目. よ び 解 釈 通 達 で 示 さ れ た4つ 要 請 す るSEC開. 常 に重 要 な 示 唆 を 提 供 す る もの と考 え る。 的,既. 存 の 気 候 変 動 関 連 のSEC開. の 気 候 変 動 関 連 開 示 項 目 を 見 て い く。 次 に,気. 示 規 則 に 関 す る 議 論 を 取 り上 げ る 。3つ. 様 式 で の 気 候 変 動 関 連 開 示 に 関 す る4事. (1) SEC (2010b). (2) SEC (2010c), (3) Schwartz, et. P. al.. 6290. (2010).. 例 を 検 討 し,最. 目 に,ア. 示 規 則,お 候変動関連を. メ リ カ 大 企 業 の10-K. 後 に考 察 を 加 え 結 論 を 述 べ る。.
(3) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原). 皿. 1解. 「気候変動関連 開示 に関す る委員会指針」 の解釈通達. 釈通達の背景. (1)気 候 変 動 法 規 制 の 最 近 の 発 展 解 釈 通 達 の 冒頭 部 分 で は,気 候 変 動 問 題 に関 心 の 高 い関 係 者 を 明 示 しな が ら,最 近,こ の 問 題 が 重 大 な 社 会 的 議 論 の 一 つ とな りつ つ あ る こ とが 強 調 され て い る。 具 体 的 に は,科 学 者,政 府 指 導 者,立 法 府 議 会 議 員,規 制 者,保 険 会 社 を 含 む 事 業 者,投 資 家,ア. ナ リス. ト,お よ び一 般 市 民 が 列 挙 され,公 開 企 業 の 気 候 変 動 問 題 の 情 報 に関 心 を 示 す 者 が 想 定 さ れ て い る。 ま た,先 導 的 企 業 で は,気 候 変 動 や 温 室 効 果 ガ ス排 出削 減 に関 連 した 業 績 や 事 業 に対 す る プ ラ ス あ る い は マ イ ナ スの 現 在 ま た は潜 在 的 影 響 の 認 識 を 徐 々 に示 して きて お り,カ ー ボ ン ・フ ッ トプ リ ン トや そ の 削 減 努 力 に 関 す る情 報 の 公 表 や 同業 者 へ の 提 供 を 行 って きて い る現 状 が 評 価 され て い る。 解 釈 通 達 の 公 表 の 主 な3つ の 背 景 と して,国. 内外 の 気 候 変 動 に関 す る法 規 制 が,最 近,. 発 展 して き た こ と,公 開 会 社 の 経 営 に気 候 変 動 問 題 が 潜 在 的 な 影 響 を もた らす こ と に投 資 家 等 の 関 心 が 高 ま りつ つ あ り,関 連 情 報 の 開 示 を求 め る圧 力 が 強 くな りつ つ あ る こ と,そ して,公 開 会 社 の 気 候 変 動 関 連 の 情 報 源 が 発 展 して き た こ とが あ る④。 解 釈 通 達 で は,最 近 の ア メ リカ国 内外 の 気 候 変 動 法 規 制 の 発 展 に関 して,主 な4つ の 状 況 に焦 点 が 当て られ て い る。 まず,国. 内の 重 要 な 気 候 変 動 関 連 法 規 制 が 発 展 して きた こ と. に関 して,温 室 効 果 ガ スの 排 出枠(allowances)や. ク レ ジ ッ ト(credits)の. キ ャ ップ ・ア. ン ド ・ トレー ドシス テ ム に よ り温 室 効 果 ガ ス排 出 削 減 を 図 る,「 ア メ リカ ・ク リー ンエ ネ ルギ ー・ 安 全 保 障法 案 」(5)などの 法 規 制 化 につ いて 説 明 され て い る。 次 に,ア メ リカ環 境 保 護 庁(theEnvironmentalProtectionAgency:EPA)が,温. 室 効 果 ガ ス大 口排 出者 の 排. 出報 告 を義 務 づ け(6),連 邦 法 の 大 気 浄 化 法(7)で温 室 効 果 ガ スを 大 気 汚 染 物 質 と して 直 接 規 制 し削 減 す る と い う,関 連 法 規 制 が 強 化 され つ つ あ る状 況 が 述 べ られ て い る。 そ して,国 際 連 合 気 候 変 動 枠 組 条 約(UNFCCC)で (EU-ETS)の. の 京 都 議 定 書 に関 す る動 向 や 欧 州 排 出量 取 引 制 度. 進 展 に よ る重 大 な影 響 につ いて 言 及 され て い る。 さ らに,全 米 保 険 監 督 官 協. (4)SEC(2010c),pp.6290-6291. (5)AmericanCleanEnergyandSecurityActof2009(い. (Waxman-Markeybill))を. わ ゆ る ワ ッ ク ス マ ン ・マ ー キ ー 法 案. 指 し,解. 釈 通 達 の 脚 注 で 紹 介 さ れ て い る。. (6)MandatoryReportingofGreenhouseGases,DocketNo。EPA-HQ-oAR-2008-0508,74 FR56260,0ctober30,2009,http://edocket.access.gpo.gov/2009/pdf/E9-23315.pdf。. (7)TheCleanAriActinU.S.C.ch.85. りり. ∠. りり. 、.
(4) 第57巻. 第1号. 会(theNationalAssociationoflnsuranceCommissioners:NAIC)に. よ っ て,保. 険. 業 の 気 候 変 動 関 連 開 示 基 準(8)が 公 表 さ れ た こ と に つ い て 紹 介 さ れ て い る 。 SEC開. 示 届 出 書 類 の 作 成 開 示 に あ た り,前 者3つ. の 国 内 外 の 法 規 制 や 合 意 が,最. 重 大 な 影 響 を 及 ぼ す か も し れ な い こ と が 強 調 さ れ て い る。 ま た 最 後 のNAICに 統 一 開 示 基 準 は,気 動 に 関 して,保. 終的 に. よ る業 界. 候 変 動 を原 因 とす る財 務 リス ク と その リス ク低 減 の た め に取 られ た 行. 険 会 社 に 情 報 開 示 を 強 制 す る も の と して 理 解 が 示 さ れ て い る 。. (2)気 候 変 動 問 題 の 公 開 会 社 へ の 潜 在 的 影 響 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 問題 が 公 開会 社 の経 営 に及 ぼ す3つ の潜 在 的 な影 響,す な わ ち, 法 規 制 に関 連 した直 接 的 影 響,事 業 や 市 場 に関 連 した間 接 的 影 響,お. よ び事 業 や 営 業 へ の. 物 理 的影 響 が具 体 的 に示 され て い る(9)。ま ず,法 規 制 に 関 連 した直 接 的影 響 と して,解 釈 通 達 の 背 景 部 分 で 紹 介 した法 規 制 等 の 発 展 に よ り,公 開 会 社 の 事 業 や 財 務 の 意 思 決 定 に重 大 な影 響 を及 ぼ しか ね な い との 注 意 を 喚 起 して い る。 具 体 的 に,温 室 効 果 ガ ス排 出削 減 の た あ の 資 本 的支 出 の可 能 性,お. よ び温 室 効 果 ガ ス排 出 削 減 目標 を 達 成 で き な い場 合 に,. キ ャ ップ ・ア ン ド ・ トレー ドの 法 制 度 の も とで 企 業 が 排 出枠 購 入 費 用 を 負 担 す る可 能 性 が あ り,こ れ らは企 業 の 直 接 の 財 務 影 響 と して 示 され て い る。 2つ 目 に,事 業 や 市 場 に関 連 した間 接 的 影 響 と して,直 接 的 影 響 を 被 る企 業,ま た 一 部 あ る い は全 部 の 製 品 価 格 の 変 化 を 自社 の 取 引 価 格 に転 嫁 させ よ う とす る企 業 が あれ ば,そ の 供 給 す る製 品 や サ ー ビスの 価 格 変 化 が 生 じるか も しれ な い と い う影 響 と,そ の 結 果,顧 客 に まで 影 響 が 及 ぶ か も しれ な い こ とが 説 明 され て い る。 ま た,キ ャ ップ ・ア ン ド ・ トレー ド ・プ ロ グ ラ ム に関 連 した排 出 ク レジ ッ トを 扱 う新 し い取 引 市 場 が 発 展 した場 合,企 業 に と って 有 利 な 新 たな 事 業 機 会 とな る,あ る い は財 務 的 損 害 を被 る可 能 性 が 示 され て い る。 解 釈 通 達 で は,現 在 懸 案 とな って い る排 出 ク レジ ッ ト 市 場 に 関 す る法 律 が,今 後,国. 会 で 成 立 す る との 見 通 しを 示 しな が ら,企 業 が 排 出 ク レ. ジ ッ トを金 融 商 品 と して 市 場 で 売 買 収 益 を得 よ う と して 必 要 以 上 に排 出枠 を 保 有 した り, ま た は事 業 を通 じて ク レジ ッ トを 相 殺 して 収 益 を 得 た りす る可 能 性 が 示 され て い る。 3つ 目 に,事 業 や 営 業 へ の 物 理 的 影 響 と して,人 事,物 理 的 資 産,サ. プ ラ イ チ ェー ン,. お よ び流 通 チ ェ ー ンへ の 影 響 な どが 具 体 的 に説 明 され て い る。 例 え ば,暴 風 程 度 の 増 加,. (8)NAIC(2009a).NAICで 用 を 念 頭 に,気. は,保. 険 会 社 を 対 象 に,規. 制 当 局 や 顧 客 側 の 購i買 意 思 決 定 の 情 報 利. 候 変 動 リ ス ク や そ の 対 応 に 関 す る 質 問 票 で の 調 査 を 実 施 し て い る(NAIC. (2009b))。 (9)SEC(2010c),p.6291. -34(34)一.
(5) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) 海 面 上 昇,永 久 凍 土 層 の 解 凍,極 度 の 温 度 が 設 備 や 操 業 に与 え る影 響 な ど,気 候 の パ ター ンが 変 化 した場 合 の 物 理 的 影 響 が 紹 介 され て い る。 ま た,水 に依 存 した事 業 を行 う企 業 を想 定 した際 の 水 の 入 手 可 能 性 や 品 質,ま た は他 の 天 然 資 源 の 変 化,あ. る い は,設 備 の 損 傷 や 機 械 効 率 の 低 下 に よ って もた ら され る企 業 へ の. 重 大 な 影 響 も取 り上 げ られ て い る。 気 候 変 動 に関 連 した物 理 的 変 化 に よ って,製 品 や サ ー ビスの 提 供 先 で あ る顧 客 が 減 少 した り,水 温 上 昇 に よ って 住 宅 や 商 業 暖 房 燃 料 の 需 要 が 減 少 した りす る場 合 も示 され て い る。 さ らに,気 候 変 動 に関 連 した財 務 リス ク につ いて,企 業 と は別 の 場 所 で 生 じた 物 理 的 リ ス ク を原 因 とす る可 能 性 も示 され て い る。 例 え ば,沿 岸 地 域 に あ る会 社 の 財 産 に対 して 気 候 変 動 に関 連 した物 理 的 変 化 や 危 険 が あ る場 合,取 引 銀 行 は その よ うな 危 険 地 帯 に あ る債 務 者 へ の 信 用 リス クを 要 求 す るか も しれ な い と い う。 ま た,干 ばつ や 洪 水 な どの 悪 影 響 を 被 る農 場 か ら農 業 生 産 品 を購 買 す る企 業 の 場 合,気 候 変 動 に影 響 され るそ の よ うな 供 給 事 業 者 に よ って 業 績 が 変 動 す る可 能 性 も挙 げ られ て い る。. (3)公. 開 会 社 の 気 候 変 動 関 連 開 示 に関 す る最 近 の 動 向. 解 釈 通 達 で は,公. 開 会 社 の 気 候 変 動 関 連 情 報 の 提 供 に 関 す る 最 近 の5つ. 取 り上 げ ら れ て い る。 ま ず,大 投 資 家 情 報 要 求 の 高 ま り,2つ. 手 機 関 投 資 家 等 に よ るSEC開 目 に,エ. ネ ル ギ ー 企 業3社. ヨ ー ク 州 司 法 長 官 と 該 当 企 業 の 間 で の 和 解 事 案,3つ. 提 供,4つ. 目 に,カ. Project:CDP)に. 示 規 則 の請 願 に代 表 され る の 不 適 切 開 示 に 関 す る ニ ュー. 目 に,州. 制 開 示 の 要 請 や 気 候 変 動 レ ジ ス ト リ(theClimateRegistry)に. の代表的動向が. また は環 境 保 護 庁 に よ る強 よ る気 候 変 動 開 示 基 準 の. ー ボ ン ・デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー ・プ ロ ジ ェ ク ト(theCarbonDisclosure. よ る気 候 変 動 情 報 収 集 と 背 景 に あ る投 資 家 の 情 報 要 求 の 高 ま り,最 後 に,. グ ロ ー バ ル ・ リ ポ ー テ ィ ン グ 。イ ニ シ ア チ ブ(theGlobalReportinglnitiative;GRI) に よ る 持 続 可 能 性 報 告 フ レ ー ム ワ ー ク ⑩ の 発 展 が 紹 介 さ れ て い る⑪。 こ の う ち 最 初 の 投 資 家 等 に よ っ てSEC開 は,セ. リ ー ズ(Ceres)⑫. 示 規 則 の 設 定 が 請 願 さ れ て き た経 緯 につ いて. や 環 境 保 護 基 金(EnvironmentalDefenseFund:ED)の. お よ び カ ル パ ー ス ら 機 関 投 資 家 等 のSECへ. 活 動,. の請 願 活 動 に関 す る参 照 文 書 を解 釈 通 達 の 脚. ωGRI,www.globalreporting.org. ωSEC(2010c),pp.6291-6292。 ωCeresは. 気 候 変 動 な ど 持 続 可 能 性 へ の 挑 戦 に 取 り 組 む た め,投. 資 家,環. 境団体およびその他の. 公 共 利 益 団 体 の 主 要 連 合 で,企 業 と と も に 活 動 す る 組 織 で あ る 。 ま た 合 計 で8兆 ドル の 資 産 を も つ80機 関 投 資 家 の ネ ッ ト ワ ー ク で あ る 気 候 変 動 投 資 家 ネ ッ ト ワ ー ク(theInvestorNetworkon ClimateRisk)を. 指 揮 す る 。Ceres,http://www.ceres.org..
(6) 第57巻. 第1号. 注 で 示 しな が ら,解 釈 通 達 の 本 文 で は簡 潔 な 言 及 に留 めて い る。 セ リー ズな ど機 関 投 資 家 等 に よ って,証 券 市 場 の 届 出書 類 で の ス テ ー ク ホル ダ ーへ の 情 報 開 示 を 要 請 す る 「気 候 変 動 開 示 の た あ の 国 際 的 フ レー ム ワ ー ク」 が独 自に 提 案 され て き た⑱。 こ の フ レー ム ワー ク に よれ ば,気 候 変 動 の 戦 略 的 分 析 と排 出管 理,温 室 効 果 ガ ス排 出開 示,物 理 的 リス ク,お よ び規 制 リス クの4開 示 項 目が 列 挙 され,す べ て の 企 業 に よ る開 示 が 求 め られ て い る⑭。 ま た,カ ル パ ー ス(CalPERS)ら. 機 関投 資 家 等 に よ って,効 率 的 市 場 の た め,投 資 家 の. 意 思 決 定 に有 用 な,企 業 の 十 分 で 適 正 な 情 報 開 示 が 要 求 され て きた 。2007年 に は制 度 財 務 報 告 で の気 候 変 動 リス クの 情 報 開 示 に 関 して,既 存 の 規 則 に関 す る指 針 をSECが る よ う請 願 され た ⑮。 そ の後,こ. 通 達す. の請 願 活 動 は拡 大 し,2008年 ⑯ お よ び2009年(1のに気 候 変. 動 法 規 制 の 急 速 な 国 内外 の 発 展 や 関 連 実 態 調 査 分 析 の 結 果 な どを 追 加 し,さ ら に請 願 され た。 こ こで 提 案 され た リス ク開 示 項 目 は,気 候 変 動 に関 連 した物 理 的 リス ク,温 室 効 果 ガ ス排 出の 現 在 お よ び予 想 され る規 制 に関 連 した財 務 リス ク,お よ び気 候 変 動 に関 す る法 的 手 続 きの3つ で あ る⑱。 解 釈 通 達 で は,証 券 制 度 上 の 届 出書 類 の 他 で これ ら様 々な 自主 的 開 示 に関 す る イニ シ ア チ ブが 発 展 し,財 務 以 外 の 法 的 要 請 で も よ り多 くの 企 業 情 報 開 示 が 行 わ れ て い る こ と に言 及 して い る。 しか し,こ れ らはSEC届. 出書 類 とは 別 の もの と して,投 資 家 に重 要 な 情 報. を提 供 で き る もの で あ る と し,既 存 のSEC開. 示 規 制 の も とで も気 候 変 動 関連 の情 報 開 示. が 要 請 され て い る こ とが 強 調 され て い る。. 2解. 釈 通 達 の 目的. 解 釈 通 達 の 目的 は,公 開 会 社 が 気 候 変 動 問 題 に 既 存 の 開 示 規 則 を 適 用 す る場 合 を想 定 し,既 存 の 規 則 に 明 瞭 性 を 提 供 し,一 貫 性 を 促 進 す る こ と に あ る。 連 邦 証 券 法 お よ び SEC規. 則 は,投 資 家 保 護 の た め,公 開 企 業 に よ る所 定 の 開 示 を要 請 して きて お り,解 釈 通. 達 は ビ ジネ ス社 会 や投 資 側 が 関 心 の あ る トピ ッ クに つ いて,SECが. 開 示 規 則 を どの よ う. に解 釈 す るか と い う指 針 を提 供 し,開 示 書 類 の 提 出企 業 を支 援 す る もの と位 置 づ け られ て い る。 今 回 の 解 釈 通 達 で は,4つ (13) (14) (15) (16) (17) (18). の 気 候 変 動 関 連 分 野 と その 他 の 環 境 問 題 に関 して,企 業 が 考. Ceres and Calvert (2007), pp. 1-2. Global Framework for Climate Risk Disclosure; SEC (2007), p. 2. SEC (2008). SEC (2009). SEC (2007), p. G-1.. Ceres and Calvert. (2007), pp. 48 —53..
(7) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) 慮 す る よ う要 請 され て い る。 ただ し,解 釈 通 達 は,気 候 変 動 や 地 球 温 暖 化 の 変 化 や 結 果 に 関 連 して,何. ら解 釈 を 提 供 す る もの で は な い とい う⑲。 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 関連 の 事. 業 ま た は法 的 発 展 に よ る影 響 に 関 して 企 業 に 開 示 を 要 請 す る既 存 の 開 示 規 則 と して,「 企 業 の リス ク要 因 」,「事 業 の説 明」,「法 的 手 続 き」,お よ び 「経 営 者 の 討 議 と分 析 」 が列 挙 され,そ の 検 討 に関 す る指 針 が 提 供 され て い る。. 3環. 境 問 題 に関 す るSEC開. 示規則の歴史的背景. 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 問 題 に関 連 す る既 存 の 開 示 規 則 の 解 釈 に先 立 ち,環 境 問 題 の 開 示 に関 す る歴 史 的 背 景 を 簡 潔 に概 観 して い る⑳。SECは,1970年. 代 初 期 に重 要 な 環 境 問 題. の 開 示 に取 り組 み 始 め,環 境 法 令 遵 守 を原 因 とす る企 業 財 務 影 響 に関 す るSEC届. 出書類. で の 開 示 を検 討 す べ き とす る解 釈 通 達 を 公 表 した。 その 後,訴 訟 や,地 球 環 境 保 護 な どを 要 請 す る連 邦 法 あ る い は州 法 等 の 遵 守 コ ス ト以 外 の コ ス ト情 報 を 強 制 開 示 させ る特 別 の 規 則 の 必 要 性 を検 討 し続 け,環 境 問 題 の 開 示 を 特 別 に取 り扱 う規 則 が で き,1982年. に現 在 の. 最 終 様 式 ⑳ に至 った 。 ま た,1968年. にSEC届. 出書 類 に お け る,「 財 政 状 態 や 経 営 成 績 の 経 営 者 に よ る討 議 と分. 析 」 に関 す る開 示 要 件 を発 展 させ,1970年. 代 お よ び1980年 代 に,連 邦 証 券 法 の も とで 「重. 要 性 の原 則 」 と十 分 に関 連 付 け られ た。 「重 要 性 の 原 則 」 は,合 理 的 な 投 資 家 が投 票 また は投 資意 思 決 定 に そ の情 報 が 重 要 と思 う十 分 な 見 込 み が あ る な らば 重 要 とす る もの で あ る。 さ らに,2004年. の 政 府 説 明 責 任 局(GovernmentAccountabilityOffice;GAO)の. ビュ ー⑳ に つ い て,SECで る。 このGAOの. は環 境 開 示 に関 連 した十 分 な 開 示 プ ロ グ ラ ムを レビ ュー して い. レ ビ ュー は画 期 的 で あ り,SECに. 対 して 届 出書 類 に お け る情 報 の 追 跡 性. と透 明 性 の 改 善 を要 請 す る と と も に,EPAとSECが た。 解 釈 通 達 で は,SECが 現 在,多. 協 働 す る必 要 性 につ いて も勧 告 され. 気 候 変 動 問題 開 示 を企 業 に ど の よ う に促 進 で き る か に関 して,. くの 機 関 か ら思 慮 深 い提 案 を受 け る機 会 が 示 され て い る。 す な わ ち十 分 な 環 境 情. 報 開 示 を促 進 す る た めのSECの. (19) (20) (21) (22). レ. 役 割 の見 直 しに言 及 して い る もの と言 え る。. Schapiro (2010). SEC (2010c), pp. 6292 —6293. SEC (1982), Release No. 33-6383 , March GAO (2004).. 3, 1982, 47 FR 11380.. 37 ( 37. 1.
(8) 第57巻 4気. 候 変 動 関 連 を 要 請 す るSEC開. (1)開. 示の枠組み. 第1号. 示規則. 気 候 変 動 問 題 の 開 示 に 関 連 し た 主 なSECの SecuritiesActof1933)⑫. 開 示 の 枠 組 み に は,連. 邦 法 の 証 券 法(the. 鋤お よ び証 券 取 引 所 法(theSecuritiesExchangeActof1934)⑳. に も と つ く定 期 的 強 制 開 示 に 関 す るSEC規. 則 が あ る 。 証 券 取 引 所 法 に よ り要 請 さ れ る 公. 開 会 社 の 開 示 様 式 に は,年. 次 報 告 書 用 の10-K様. 10-Q様. あ り㈱,こ. 式(Formlo-Q)が. S-K(RegulationS-K)⑳. 式(Form10-K)や,四. 半期報告書 用の. れ ら の 様 式 の 報 告 に 関 連 し てSECが. や 規 則S-X(RegulationS-X)⑳. 適 用 す る規 則. に よ り提 供 され る詳 細 な 開 示. 指 針 が 参 照 さ れ る ㈱。 こ れ ら年 次 報 告 書 や 四 半 期 報 告 書 に お い て,企. 的手続. よ び 企 業 の リ ス ク に 関 す る 情 報 開 示 が 発 行 者 に 要 請 さ れ て い る 。 そ して,こ. れ らの. き,お. 業 の 財 政 状 態 お よ び 経 営 成 績,法. 開 示 内 容 は,規. 則S-Kの101項,103項,303項,お. 務 諸 表 で 表 示 さ れ る 。 ま た,SEC規 お よ び 証 券 取 引 所 法 ⑳ の も と,さ. よ び503(c)項,お. よ び企 業 の 監 査 済 み 財. 則 に よ っ て 明 示 的 に 要 請 さ れ る 情 報 に 加 え,証. 券法⑳. ら に 重 要 な 情 報 を 開 示 す る こ と が 要 請 さ れ て い る⑱1)。. (2)事 業 の 説 明(規 則S-K:101項) 規 則S-Kの101項. は 「事 業 の 説 明 」 に関 す る項 目で,基 本 的 に過 去5年 間 の 事 業 全 般 の. 発 展 に関 す る情 報 の 報 告 を 企 業 に要 請 して い る。 例 え ば組 織 体 制,主 要 な 製 品 お よ びサ ー ビス,主 要 顧 客,競 争 状 況 な どを 含 む,様. 々な トピ ックの 事 業 の 叙 述 的 説 明 を 企 業 に要 請. して い る紛。 情 報 が個 別 の 事 業 セ グ メ ン トに重 要 な 場 合,そ の セ グ メ ン トを特 定 しな けれ ㈱. 証 券 法(theSecuritiesActof1933,15U.S.C。77aetseq(2009))Q. ⑳. 証 券 取 引 所 法(theSecuritiesExchangeActof1934,15US.C.Sec.78aetseq(2009))。. ㈲10-K様. 式(Form10-K:17C.F。R.Section249.310(2007))お. 17C.F.R.Section249.308a(2007))は,証. よ び10-Q様 券 取 引 所 法 に 準 拠. 式(Form10-Q:. し て 使 用 さ れ る(10-K:Section. 130r15(d)ofthesecuritiesExchangeActof1934(15u。s。c.78mor780(d)),10-Q:section 130r15(d)oftheSecuritiesExchangeActof1934(15U.S.C.78mor780(d)),Rule13a13 (17C.RR.240.13a-13)orRule15d13(17C。F.R。240。15d-13))。 (26)規. 則S-K(RegulationS-K:17CF.R.Section229.10-.915(2008))。. に 関 し て 規 定 ⑳. 規 則S-X(RegulationS-X:17C.F.R.Section210(2008))。 て 規 定. ⑳. 規 則S-Kは. 規 則S-Xは. 非 財 務 情 報 に 関. し. して い る 。. 解 釈 通 達 で は,海 規 則S-Kに. 外 民 間 発 行 体 に 関 す る20-F様. 式 な ど に 関. し て も,国. 内 発 行 体 に 適 応 さ れ る. 準 じ た 開 示 の 取 扱 い が 可 能 で あ る 旨 を 示 し て い る(SEC(2010c),p.6295.)。. (29)17C。F.R.Section230.408(2008). (30)17C.F.R.Section240.12b-20(2008). ⑳. 財 務 情 報. して い る 。. 規 則S-Xに. お け る 「重 要(Material)」. の 定 義 に 関. し て は17C.RR.Section210。1-02(o)(2008),. ま た 重 要 性 の 判 断 の 適 用 に つ い て はBasic,Inc.v.Levinson,485U.S.224,231(1988);"there isasubstantiallikelihoodthatareasonableshareholderwouldconsideritimportant"を 参 照 。 ⑳101項(Item101-DescriptionofBusiness:RegulationS-K,17C.F.R.Section229.101/.
(9) 企 業 年 次 報 告 にお け る気 候 変 動 情 報 開 示(川 原) ば な ら な い 。 解 釈 通 達 で は,101項(c)(1)(xii)の. 条 文 を 付 記 し,連. 邦 法 や 州 自治 体 の環 境 法. を 企 業 が 遵 守 す る た め の コ ス トの 開 示 が 明 らか に 要 請 さ れ て い る㈱。. (3)法 的 手 続 き(規 則S-K:103項) 規 則S-Kの103項. は 「法 的 手 続 き」 に関 す る項 目で,会 社 や そ の 子 会 社 が 当 事 者 で あ る. 重 要 な 係 争 中の 法 的 手 続 きを 簡 潔 に記 述 す る こ とを 要 請 して い る。 訴 訟 対 象 資 産 に関 す る 係 争 中の 法 的 手 続 きの 記 述 も求 め られ る。 こ こで は事 業 に付 随 した 通 常 の 日常 的 な もの で は な く,重 要 な法 的 手 続 きの 開 示 が 求 め られ て い るGの 。 も し,連 邦 政 府 や州 自治 体 か らの 環 境 訴 訟 な どの 場 合,事 業 に付 随 した 日常 的 な 訴 訟 とみ な す こ とを 禁 止 し,そ の 開 示 が 要 求 され て い る。 解 釈 通 達 で は,103項 103項 命 令5に. に基 づ く開 示 の判 断 の 考 え 方 と して,環 境 訴 訟 に 関 す る1973年 の. よ る,特 定 の状 況 の も とで の環 境 訴 訟 の取 り扱 い が示 さ れ て い る。 例 え ば,. 事 業 や 財 政 状 態 に その 法 的 手 続 きが 重 要 で あ る場 合,法 的 手 続 きが 最 初 に損 害 請 求 に関 連 す るか,潜 在 的 な 金 銭 的 制 裁 な ど に関 わ るか で,そ の 金 額 が 会 社 お よ び子 会 社 の 流 動 資 産 の10%を. 超 え る場 合,ま. た,政 府 組 織 が 法 的 手 続 きの 相 手 方 で あ る場 合 お よ び,特 定 の 場. 合 を除 き潜 在 的 な 金 銭 制 裁 を含 む 法 的 手 続 きの 場 合 な どが 説 明 され て い る。. (4)リ. ス ク 要 因(規. 則S-K:503(c)項). 規 則S-Kの503(c)項. は 「リ ス ク 要 因 」 に 関 す る 項 目 で,株. 主 を 危 険 に さ らす 最 も重 大 な. 要 因 を 企 業 が 開 示 す る こ と を 要 請 して い る ㈲。 「リ ス ク要 因 」 の 記 載 箇 所 は,株 時 に 提 出 さ れ る 企 業 の 目 論 見 書(prospectus)に で も表 示 さ れ る 。10-Q様. も含 ま れ,ま. た10-K様. 式初回発行. 式の年次報告書. 式 の 四 半 期 報 告 書 で は,直 近 の 年 次 報 告 で 報 告 さ れ た 「リ ス ク 要. 因 」 の 何 らか の 重 大 な 変 化 を 含 め る よ う 要 請 さ れ て い る 。 解 釈 通 達 で は,リ. ス ク 要 因 の 開 示 を か な り限 定 して お り,他. 潔 で あ る 。 す な わ ち,該 を 記 述 す る こ と,お し,ど. に 比 較 して,そ. の 説 明 も簡. 当企 業 へ の 投 資 が 投 機 的 あ る い は危 険 と され る場 合 の リス ク要 因. よ び特 定 の リス クが 企 業 に ど う影 響 す るか を 明 瞭 に述 べ る よ う要 請. の 会 社 に も 当 て は ま る よ う な リ ス ク を 表 示 す べ き で は な い と して い る 。. \ (2008)) (33) SEC (2010c), p. 6293. (34) 103* (Item 103 - Legal Proceedings: Regulation S-K, 17 C.F.R. Section 229.103(2008))0 (35) 5031n (Item 503 - Risk Factors: Regulation S-K, 17 C.F.R. Section 229.503(c)(2008))0 0.
(10) 第57巻. 第1号. (5)MD&A(規. 則S-K:303項). 規 則S-Kの303項. は,「 経 営 者 に よ る財 政 状 態 と経 営 成 績 に 関す る討 議 と分 析 」(い わ ゆ. るMD&A)に. 関 す る項 目で,報 告 様 式 の対 象 期 間 に お け る財 政 状 態 や経 営 成 績 につ い て,. 経 営 者 自 らの 説 明 を 開 示 す る こ とが 意 図 され て い る詔。303項 は,企 業 の 流 動 性 や 資 本 の 源 泉 に関 連 した傾 向 お よ び支 払 義 務 の よ うな,発 行 者 が 開 示 しな けれ ばな らな い こ と につ い て の,十 分詳 細 な 内 容 を含 ん で い る。 しか し,303項 で 特 別 に情 報 内容 が 箇 条 書 き され て い な い場 合 に はな お さ ら,財 政 状 態,お. よ び財 政 状 態 や 経 営 成 績 の 変 化 を 理 解 す るの に必 要. と思 わ れ る全 て の 情 報 を,発 行 者 は提 供 しな けれ ばな らな い。 よ って,特. に,も. し リス ク. が 財 務 に重 大 な 影 響 を及 ぼ す な ら ば,経 営 者 は気 候 変 動 リス ク を303項 に従 って説 明 す る 可 能 性 が あ る。 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 問題 に関 連 したMD&Aの. 取 り扱 い につ い て,企 業 の 重 要 性 の. 判 断 の も と,財 政 状 態 や 財 政 状 態 の 変 化 お よ び経 営 成 績 の 理 解 に必 要 と思 わ れ る重 要 な 情 報 の 開 示 を求 めて い る。. 5気. 候変動関連の開示項 目. (1)法 規 制 の 影 響 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 問題 が 開示 要件 とな る可 能性 の あ る4項 目 と して,「法 規 制 の 影 響 」,「国 際 的協 定」,「規 制 ま た は事 業 の 潮 流 の 間接 的 影 響 」,お よ び 「気 候 変 動 の物 理 的 影 響 」 を列 挙 し開 示 例 が 示 され,特 定 の 企 業 の 現 実 や 状 況 に よ って,気 候 変 動 の 影 響 に関 す る開 示 が 要 請 され る可 能 性 が 示 され て い る⑳。 まず,「 法 規 制 の影 響 」 の項 目で は,企 業 が潜 在 的 開 示 義 務 を 評 価 す る際 に,気 候 変 動 に関 す る既 存 の 所 定 の 法 規 制 の 影 響 の 重 要 性 を 考 慮 す べ き と され て い る。 また,所 定 の 状 況 に お いて,気 候 変 動 問 題 に関 連 した懸 案 の 法 規 制 の 潜 在 的 影 響 につ いて も評 価 す べ き と され て い る㈱。 この 項 目 は,規 則S-K101項,103項,503(c)項. お よ び303項 に準 ず る もの と明 示 され て い. る。101項 の 「事 業 の 説 明」 の規 則 は,直 近 事 業 年 度 の 環 境 管 理 設 備 の 残 高 に対 す る重 要 な 資 本 的 支 出見 積 額 と,重 要 と認 め る場 合 に は翌 年 度 以 降 の 額 の 開 示 を 要 請 す る と い う。. (36) 3031R (Item 303 - Management's Results of Operations: Regulation (37) SEC (2010c), pp. 6295-6297. (38) Ibid., pp. 6295-6296.. Discussion and Analysis of Financial S-K, 17 C.F.R. Section 229.303 (2008))o. Condition. and.
(11) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) 503(c)項の 「リス ク要 因」 に 関 して,企 業 特 有 の状 況 に依 存 す るが,既 存 の あ るい は未 定 の 気 候 変 動 法 規 制 に関 す る リス ク要 因 の 開 示 を 要 請 す る規 則 と して 明 示 され て い る。 ま た,一 般 的 な リス ク要 因 で はな く,企 業 に特 有 の リス ク を検 討 す べ き と強 調 され て い る。 この 例 と して,エ ネ ル ギ ー分 野 の 企 業 で あれ ば,特 に温 室 効 果 ガ ス法 規 制 の 影 響 を 受 けや す いか も しれ ず,運 輸 分 野 の 企 業 と異 な る リス ク に直 面 す る こ とが 挙 げ られ て い る。 303項 の 「MD&A」. に関 して,法 制 化 した気 候 変 動 法 規 制 に よ り財 政 状 態 や 経 営 成 績 に. 重 要 な 影 響 が もた らされ る可 能 性 を,企 業 が 評 価 す る こ とを 要 請 す る規 則 と して 解 説 され て い る。 法 規 制 が 懸 案 で あ り不 確 実 性 が あ る場 合,「MD&A」 ど うか,2段. の 開 示 要 件 に当 て は ま るか. 階 を 経 て 検 討 す る こ とが 明 示 され て い る。 す な わ ち,初 め に,経 営 者 は法 規. 制 の 法 制 化 の 可 能 性 を 合 理 的 に検 討 しな けれ ばな らず,法 制 化 しそ う にな い と判 断 され な い限 りに お いて,法 制 化 の 仮 説 を 進 めな けれ ばな らな い。 次 に,仮 に法 制 化 の 場 合,財 政 状 態 ま た は経 営 成 績 へ 法 規 制 が 重 要 な 影 響 を及 ぼす か ど うか を判 断 しな けれ ばな らな い。 重 要 な影 響 が 合 理 的 に あ り得 な い と判 断 され な い 限 り,「MD&A」. で の 開 示 が要 求 され. る。 加 え て,懸 案 の 法 規 制 の 潜 在 的 影 響 につ いて,も. し重 要 な らば,時 期 や 効 果 の 評 価 が 困. 難 との 開 示 を検 討 しな けれ ばな らな い と い う。 法 案 化 され て い る法 律 の 開 示 を 評 価 す る際 に,マ イ ナ スの 影 響 だ け に限 るべ きで な く, 法 律 の 変 化 や その 対 応 に お いて 企 業 実 務 が 変 化 し,企 業 に新 たな 機 会 が 提 供 され るか も し れ な いの で,機 会 につ いて も評 価 しな けれ ばな らな い と い う。 具 体 例 と して,排 市 場 で の 取 引 に 関 連 した リス ク と機 会,特 ば,1)キ. 出量 取 引. に 利 益 獲 得 の 可 能 性 が 挙 げ られ て い る。 例 え. ャ ップ ・ア ン ド ・ トレー ドシ ス テ ム に基 づ く排 出枠 また は ク レジ ッ トの 購 入 コ. ス トま た は販 売 利 益,2)規. 制 限 度 を 遵 守 す る た めの 排 出削 減 の た めの 設 備 や 機 械 の 改 良. に必 要 な コ ス ト,あ る い は キ ャ ップ ・ア ン ド ・ トレー ド制 度 の 財 務 成 果 を 緩 和 す るた めの コ ス ト,お よ び3)法. 規 制 か ら直 接 的 に,ま た販 売 され た製 品 コ ス トの 変 化 か ら間 接 的 に. 生 じる,企 業 の 製 品 サ ー ビス に対 す る需 要 の 増 減 に よ る損 益 変 化 が 挙 げ られ て い る。 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 規 制 が 急 速 に発 展 す る分 野 で あ る こ とが 強 調 され,企 業 は新 た な 発 展 を考 慮 し,潜 在 的 な 開 示 義 務 につ いて 定 期 的 に評 価 す る こ とが 必 要 で あ る との 注 意 を喚 起 して い る。. (2)国 際 的 協 定 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 に関 連 した国 際 的 な 協 定 や 条 約 が 及 ぼ す 事 業 へ の 影 響 が 重 要 な 一41(41)一.
(12) 第57巻. 第1号. 場 合,開 示 が検 討 され るべ き と明 示 して い る紛。 こ こで 国 際 的 協 定 は,解 釈 通 達 の 背 景 部 分 で 示 した,京 都 議 定 書 や 欧 州 排 出量 取 引 制 度,そ の 他 気 候 変 動 の 改 善 に関 連 した 活 動 を 指 す 。 これ らに関 連 して 開 示 義 務 が 潜 在 的 に あ るか ど うか は,前 述 の ア メ リカ国 内の 気 候 変 動 規 制 と 同様 の 取 り扱 い と され て い る。 さ らに,こ の よ うな 協 定 に影 響 され が ちな 事 業 者 に お いて は,い か な る潜 在 的協 定 の進 展 も監 視 す べ きで,ま た,503(c)項 の 「MD&A」. で. の 開 示 お よ び 「重 要 性 の 原 則 」 に基 づ く開 示 義 務 を 満 たす 可 能 性 の あ る影 響 を 検 討 す べ き と強 調 され て い る。. (3)規 制 ま た は事 業 の 潮 流 の 間 接 的 影 響 解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 を 要 因 とす る実 際 あ る い は潜 在 の,規 制 また は事 業 の 潮 流 に よ る間 接 的 影 響 の 開 示 に あ た り,101項 の 「事 業 の 説 明 」,303項 の 「MD&A」,あ. る い は503. (c)項の 「リス ク要 因 」 の 開 示 要 件 を踏 まえ て,検 討 す べ き事 項 が 説 明 され て い る㈹。 まず,気 候 変 動 に関 す る法 的,技 術 的,政 治 的 お よ び科 学 的 発 展 が,企 業 に新 た な 機 会 と リス ク を生 み だ す か も しれ ず,こ れ らの 発 展 が 新 たな 製 品 また はサ ー ビ スの 需 要 増 加, あ る い は既 存 の 製 品 ま た はサ ー ビスの 需 要 減 少 につ な が るか も しれ な い と い う。 そ して, これ らの 発 展 に よ る事 業 機 会 の 創 出や 間 接 的 影 響,ま と して,1)重. た は リス ク につ いて,5つ. 大 な 温 室 効 果 ガ ス排 出を 生 む 製 品 需 要 の 減 少,2)競. 量 とな る製 品 の 需 要 増 加,3)革. 新 的 新 製 品 の 開 発 の 競 争 増 大,4)代. か らの エ ネ ル ギ ー生 成 や 伝 送 要 求 の 増 大,お. よ び5)訓. の具体例. 争 製 品 よ り低 い排 出 替エネルギー資源. 練 サ ー ビ スや 設 備 保 守 サ ー ビ スの. よ うな エ ネ ル ギ ー 資 源 に基 づ く炭 素 関 連 サ ー ビスへ の 需 要 増 大 が 挙 げ られ て い る。 そ して,こ の よ うな 事 業 の 潮 流 や リス ク は,503(c)項 の 「リス ク要 因」 や303項 の 「MD &A」. で の 開 示 が 要 請 され る と い う。 さ らに,前 述 の様 々 な発 展 が企 業 の事 業 に重 大 な 影. 響 を及 ぼ す 場 合,101項. の 「事 業 の 説 明 」 で の 開示 が 要 請 さ れ る こ とが 段 階 的 に示 され て. い る。 例 え ば,潜 在 的 機 会 の 優 位 を 得 る た め,重 要 な 設 備 機 械 の 取 得 を 通 じて 事 業 の 位 置 づ け を変 え る計 画 が あ る場 合,101(a)1項. 目で,こ の営 業 計 画 の変 更 の 開示 が求 め られ る。. す なわ ち,こ れ らの 機 会 や 義 務 の 重 要 性 を 評 価 す る際 に,企 業 自 らの 特 有 の 事 実 や 状 況 を 検 討 す べ き こ とが 強 調 され て い る。 さ らに気 候 変 動 か らの 間 接 的 リス クの 別 の 例 と して,企 業 の 評 判 に対 す る影 響 を リス ク 要 因 と して 考 慮 す る必 要 性 が 明 示 され て い る。 企 業 の 事 業 特 質 や 世 論 に対 す る感 受 性 に依. (39) SEC (2010c), p. (40) Ibid. , p. 6296.. 6296..
(13) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) 存 す るが,温 室 効 果 ガ ス排 出 に関 す る入 手 可 能 な 企 業 公 表 デー タ に対 して いか な る社 会 の 人 々の 認 識 に よ って,評 判 失 墜 が も た らされ 事 業 や 財 政 状 態 へ の 潜 在 的 悪 影 響 とな るの か を検 討 す る必 要 が あ る と い う。. (4)気 候 変 動 の 物 理 的 影 響 解 釈 通 達 で は,企 業 は,開 示 の た め,気 候 変 動 が も た らす 気 象 の 激 しさの,実 際 の お よ び潜 在 的影 響 に つ い て 評 価 しな け れ ば な らな い こ とが 示 さ れ て い るω。 解 釈 通 達 で は,気 象 の 激 しさの5つ の 潜 在 的 影 響 が 示 され,そ れ に よ る重 大 な リス クや 影 響 の 開 示 検 討 を, 気 象 の 激 しさや 気 候 関 連 の 事 象 に脆 弱 な 事 業 を 行 う企 業 に特 に要 請 して い る。 具 体 的 に, 1)沿. 岸 地 域 で 集 中的 に事 業 を 行 う企 業 に お け る,資 産 の 損 傷 や 製 造 事 業 また は製 造 品 の. 輸 送 を含 む 事 業 中断,2)ハ. リケ ー ンや 洪 水 の よ うな 激 しい気 象 か ら,主 な 顧 客 や 供 給 者. の 営 業 の 中断 に よ る間 接 的 な 財 務 や 営 業 へ の 影 響,3)保 求 や 債 務 の 増 加,4)干 能 力 の 減 少,お. 険 お よ び再 保 険 企 業 の 保 険 金 請. ばつ や 他 の 気 象 関 連 の 変 化 に よ って 影 響 され る地 域 で の 農 業 生 産. よ び5)激. しい気 象 を前 提 とす る地 域 で の 設 備 保 有 また は営 業 を す る企 業. に お け る,保 険 プ レ ミア ムや 保 険 控 除 面 積 金 額 の 増 加,ま. た は保 険 担 保 範 囲 の 入 手 可 能 性. の 減 少 が 示 され て い る。. 皿. 気候変動 関連 を要請す るSEC開. 示規 則に関する議論. (1)開 示 の 枠 組 み 解 釈 通 達 で は これ ま で も既 存 のSEC開. 示 規 則 の も とで も気 候 変 動 関連 開示 が 要請 され. て い た こ と を強 調 して い るが,開 示 の枠 組 み,事 業 の 説 明,法 的手 続 き,リ ス ク要 因,MD &A,偶. 発 債 務 の 注 記,お よ び重 要 性 の判 断 に 関 して,こ れ ま で既 存 のSEC開. 示 規 則 に対. す る批 判 も含 め た重 要 な 議 論 が され て き た。 まず,気 候 変 動 関 連 の 開 示 の 枠 組 み に関 して み る と,10-K様. 式 の届 出企 業 に対 して,規 則S-Kに. 関 して さ らな る指 針 が これ まで も提. 供 され て き たが,そ の 指 示 が 曖 昧 な た め,企 業 報 告 が 曖 昧 とな り一 貫 性 が な い こ とが 問 題 視 され て い る。 と りわ け,企 業 が 任意 に重 要 性 の 判 断 を 適 用 す るた め に,規 則S-K101項, 103項 お よ び303項 に準 拠 した環 境 関 連 報 告 や 開 示 は首 尾 一 貫 性 を 欠 くと強 く批 判 され て い る⑫。 な お,今 回 の解 釈 通 達 で は,こ の 企 業 報 告 の 曖 昧 さの 問 題 を 排 除 す る よ うな一 貫 し. (41) Ibid., (42) Dimitt. pp. . 6296-6297. (2010), p. 464..
(14) 第57巻. 第1号. た 包 括 的 開 示 フ レー ム ワ ー ク に 関 す る 言 及 は ほ と ん ど 見 られ な い 。. (2)事 業 の 説 明(規 則S-K:101項) 「事 業 の説 明」の記 載 箇 所 で の気 候 変 動 開示 に 関す る重 要 な批 判 や指 摘 が あ る。 まず,気 候 変 動 リス クの 影 響 の あ る企 業 が その 事 業 リス ク を開 示 す る た め に,「事 業 の説 明」の 記 載 箇 所 を使 用 す る可 能 性 が あ るが,一 一 方,企 業 の 製 品 や サ ー ビスな ど,事 業 に関 す る広 範 囲 な 議 論 とな る傾 向が 強 い と批 判 され て い る。 そ して,気 候 変 動 リス ク に関 して は,年 次 報 告 に お け る他 の 記 載 箇 所 や 項 目で 開 示 され る傾 向 が 強 い との 批 判 も あ る。 た だ し,経 営 者 が 企 業 の 「事 業 の 説 明 」 の 記 載 箇 所 で の 説 明 が 重 要 で あ る と判 断 す れ ば,気 候 変 動 リス ク に関 連 した現 在 進 捗 中の 新 製 品 や 技 術 に関 す る説 明 を,「事 業 の説 明」の 記 載 箇 所 に含 め る 可 能 性 も あ る と考 え られ て い る⑬。 その 他,企 業 は気 候 変 動 関 連 法 規 制 の も と,温 室 効 果 ガ ス排 出量 デ ー タを 保 有 して い る はず で あ り,過 去,現 在,将 来 の温 室 効 果 ガ ス排 出量 情 報 を,101項. に 従 って 報 告 可 能 で. あ る点 が 指 摘 され て い る。 さ らに,企 業 が 拘 束 され るす べ て の 国 地 域 で の 現 在 お よ び懸 案 の 環 境 法 規 制 につ いて, 網 羅 的 に その 内容 を開 示 す べ き と い う意 見 も あ る鱒。 最 後 に,101項. の重 要 性 の判 断 に 関す る批 判 が あ る。 「重 要 な 環 境 支 出」 の 定 義 や 指 針 が. な い た め,重 要 性 の 判 断 で 用 い られ る テ ス ト内容 は企 業 に よ り様 々で あ る こ とが 問 題 と さ れ て い る。 例 え ば,損 害 賠 償 請 求 額 や,特 定 の 金 額,将 来5年 間 の 負 債 見 込 み 額 な ど,重 要 性 の 判 断 で 使 わ れ る基 準 が 企 業 に よ って 様 々で あ る との 調 査 分 析 の 指 摘 も あ り,重 要 性 の 判 断 に お け る企 業 の 恣 意 性 を排 除 す べ き と強 く批 判 され て い る㈲。 な お,今 回 の解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 リス クの 記 載 箇 所 の 指 定,温 室 効 果 ガ ス排 出量 デ ー タの 開 示,環 境 法 規 制 の 具 体 的 名 称 の 開 示,ま. た重 要 性 の 判 断 基 準 な ど,気 候 変 動 問 題 に特 有 の 事 項 に関 す る. 明 瞭 な指 示 は ほ とん ど見 られ な い。. (3)法 的 手 続 き(規 則S-K:103項) 103項 に よ る 「法 的 手 続 き」 の 開 示 に関 して,開 示 の 必 要 性 を判 断 す る際 に企 業 に よ っ て 使 用 され る 閾 値 の 取 り扱 い に つ い て 批 判 が あ る。 気 候 変 動 関 連 の 訴 訟 に 関 与 す る企 業 が,連 結 資 産 の10%と. い う閾 値 に達 した場 合 にの み,訴 訟 の 開 示 が 要 請 され る とす れ ば,. (43) McFarland (2009), p. (44 Dimitt (2010), p. 467. (4~ Ibid., p. 464.. 287..
(15) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) 現 状,重 大 な 金 銭 的 処 罰 ま た は民 事 責 任 を伴 う環 境 規 制 違 反 で 問 題 を 起 こ して い る よ うな 場 合 を 除 き,ほ. とん ど開 示 され な い可 能 性 が 指摘 され て い る鱒。 よ って,潜 在 的 に訴 訟 損. 害 を被 る場 合 に限 らず,す べ て の 係 争 中の 訴 訟 も開 示 報 告 す べ き と い う強 い意 見 も見 られ る幽。 な お,今 回 の解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 関 連 の法 的 手 続 き に関 す る特 有 の取 り扱 い に 関 して,明 瞭 な 指 示 は ほ とん ど見 られ な い。. (4)リ. ス ク要 因(規 則S-K:503(c)項). SECは. 正 確 で 論 理 的 に構 成 され た 明 瞭 な 表 示 を要 求 して お り,気 候 変 動 リス クに 関 す. る詳 細 な 内容 は,年 次 報 告 の 「リス ク要 因 」 の 記 載 箇 所 で の 記 述 に特 に適 して い る もの と の 評 価 が あ る。 また,現 在,503(c)項 の 「リス ク要 因」 の 記 載 箇 所 に お け る気 候 変 動 リス ク の 開示 は,幾 分 広 範 囲 な 意 味 合 い で使 わ れ て い るの で は と の指 摘 が あ る㈹。 な お,今 回 の 解 釈 通 達 の リス ク要 因 に関 す る規 則 の 説 明 で,気 候 変 動 問 題 に特 有 の 事 項 に関 す る明 瞭 な指 示 は ほ とん ど見 られ な い。. (5)MD&A(規 MD&Aの. 則S-K:303項) 記 載 箇 所 で の 開示 が重 要 性 の判 断 に か な り依 拠 す る 問題 が 指 摘 さ れ て お り,. この よ うな 企 業 の 重 要 性 の 判 断 の 恣 意 性 を 排 除 し,記 述 の 曖 昧 さを 排 除 す るた め に,事 象 の 発 生 可 能 性 に関 わ らず 事 象 を 開 示 し,必 要 に応 じて その 事 象 の 発 生 可 能 性 の 説 明 を 付 す べ き とす る意 見 もあ る㈲。 また,経 営 者 が気 候 変 動 の 財 務 影 響 を 未 だ評 価 して い な い な ら ば,気 候 変 動 リス クに 関 して,MD&Aで な お,解 釈 通 達 で は,MD&Aで. 何 も開示 さ れ な い可 能 性 が 問題 視 さ れ て い る6① 。. の 開示 目的 を示 し,様 々な 記 述 に関 す る説 明 が な され て. い る もの の,気 候 変 動 問 題 に特 有 の 事 項 に関 す る明 瞭 な 指 示 は ほ とん ど見 られ な い。. (6)財 務 諸 表 で 注 記 され る偶 発 債 務 10-K様. 式 の 各 年 次 報 告 書 に は,比 較 可 能 な前 年 情 報 と合 わ せ て 最 近 終 了 の直 前 事 業 年. の 監 査 済 財 務 諸 表 を 含 め な けれ ば な らな い が61),偶 発 債 務 の 項 目 は財 務 諸 表 の 注記 に含 ま (46) (4') (48) (49) (50). McFarland (2009), Dimitt (2010), pp. McFarland (2009), Dimitt (2010), pp. McFarland (2009),. p. 288. 467-468. p. 289. 467-468. pp. 288-289.. ⑳10-K様 式 お よ び10-Q様 Kを 参 照 す る 。 な お10-Q様. 式 に 関 す る 作 成 方 法 や 内 容 お よ び 財 務 諸 表 の 様 式 は,RegulationS式 で は 財 務 諸 表 は 監 査 さ れ な い(Form10-K:RegulationS-K,17. C.RR.Sec.210.1-01(2007),Form10-Q:RegulationS-K,17C.ER.sec.210.10-01(a)(2007))。.
(16) 第57巻. 第1号. れ て 開示 さ れ る⑰。 偶 発 債 務 の 注 記 は,損 失 可 能 性 が あ るが 不 確 実 性 を含 ん で お り,現 在 の 条 件 や 状 況 が,一 つ 以 上 の 将 来 事 象 の 発 生 ま た は未 発 生 の も と に あ る企 業 に適 用 され る。 例 え ば,係 争 中か 難 局 に あ る訴 訟 事 案,現 実 ま た は発 生 の 可 能 性 の 高 い損 害 賠 償 請 求 や 評 価,再 保 険 企 業 や 財 産 災 害 保 険 企 業 に よ る大 災 害 損 失 リス クな どで あ る。 損 害 賠 償 請 求 が 主 張 され た場 合,損 失 可 能 性 が あ り合 理 的 に見 積 可 能 か,仮. に損 失 が 少 な くと も生 ず. る合 理 的 可 能 性 が あ る場 合,開 示 が 要 請 され る。 損 害 賠 償 請 求 が 主 張 され な い場 合,損 失 可 能 性 が あ り財 務 的 に マ イ ナ スの 結 果 にな る合 理 的 可 能 性 が あ る場 合 にの み 開 示 が 要 請 さ れ る。 原 告 が,特. に政 府 の 法 規 制 の 違 反 に関 連 して い る場 合,気 候 変 動 リス クお よ びそ の. 他 の環 境 問 題 に 関 連 した 損 害 賠 償 請 求 が 主 張 さ れ る こ と は あ りえ る が,そ の 場 合 に は 偶 発 債 務 は 潜 在 的 に財 務 的 に マ イ ナ ス の 結 果 とな り,所 定 の ア メ リカ 財 務 会 計 基 準 審 議 会 (theFinancialAccountingStandardsBoard:FASB)規. 則 を満 た す な ら開 示 しな けれ. ばな らな いQ 監 査 済 財 務 諸 表 で 注 記 され る偶 発 債 務 の 開 示 に関 す る閾 値 は様 々で あ り,訴 訟 に関 連 し た103項 の 開示 とほ とん ど同 じ原 因 に適 用 され る。 気 候 変 動 に 関連 した多 くの偶 発 債 務 は, 現 時 点 で の 気 候 変 動 に関 す る科 学 的 に主 張 され な い分 類 の もの か も しれ な いの で,損 失 の 可 能 性 や その 結 果 が 合 理 的 に マ イ ナ ス にな る可 能 性 が あ り,財 務 諸 表 で 開 示 す べ き閾 値 を 越 え た場 合 で しか 開 示 され な い との批 判 が あ る㈹。 な お,解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 問 題 に 関 連 した偶 発 債 務 の 注 記 に関 す る明 瞭 な 指 示 は ほ とん ど見 られ な い。. (7)重 要 性 の 判 断 SEC規 て,ア. 則 の枠 組 み に は 「重 要 性 の 基 準 」 に 関 す る もの が あ る。 「重 要 性 の 基 準 」 に関 し. メ リカ最 高 裁 判 所 は,合 理 的 な 投 資 家 が 投 資 意 思 決 定 の 際 に重 要 と考 え る と想 定 さ. れ る情 報 と明 確 に述 べ て い る。 将 来 の 事 象 に関 して,生. じる事 象 の 確 か ら しさ は,事 象 の. 重 要 性 の 観 点 で 評 価 され な けれ ばな らな い。 公 開 会 社 は,気 候 変 動 が 事 業 に どの よ う に影 響 して い るか,ま. た は影 響 の 可 能 性 に関 す る情 報 を開 示 す るか ど うか を 決 定 す る際 に,こ. の 重 要 性 の 基 準 を 検 討 しな けれ ばな らな い と され る。 気 候 変 動 関 連 開 示 に関 す る重 要 性 の 判 断 基 準 の 適 用 に関 して,同 業 種 企 業 間 で,重 要 性 の 概 念 定 義 が 異 な っ た ま まで あ る た め,開 示 の 一 貫 性 や 統 一 性 が 欠 如 して い る点 が 問 題 と. (52) FASB (1975), Statement of Financial Contingencies. (53) McFarland (2009), pp. 289-291.. Accounting. Standards. No.. 5: Accounting. for.
(17) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) され て い る。 投 資 家 の 意 思 決 定 に有 用 な 情 報 とな る に は,完 全 で 統 一 の 情 報 が 求 め られ る とす る観 点 に立 て ば,こ れ に対 応 したSEC指. 針 も必 要 との意 見 が あ る勧。. 気 候 変 動 関 連 開 示 に重 要 性 の 判 断 を適 用 す る際 に,経 済 的 影 響 の 基 準 だ けで 評 価 され る もの か,あ. る い は企 業 の 説 明 責 任 も考 慮 され る もの か と い う議 論 が あ る。 最 近,投 資 家 の. 中 に は企 業 説 明責 任 の 観 点 を 重 要 視 す る もの もあ り⑮,ま た 投 資 家 が 投 資 意 思 決 定 や 経 営 者 の 信 任 投 票 の 判 断 の た め,企 業 倫 理 や 地 球 環 境 責 任 に関 す る完 全 で 正 確 な 情 報 が 提 供 さ れ る必 要 性 も指 摘 され て い る㊤ ⑤。 重 要 性 の 判 断 は,経 営 者 の恣 意 性 が含 ま れ る可 能 性 が あ る こ とか ら,SEC規 な 情 報 開 示 を要 請 す る こ とで,10-K様. 則等で完全. 式 で の企 業 報 告 に統 一 性 と一 貫 性,お よ び透 明 性 が. 確 保 され る と い う意 見 も あ る㈲。 今 回 の 解 釈 通 達 で は101項,103項,503(c)項,お の 各 記 載 箇 所 に 関連 して重 要 性 の判 断 の適 用 の説 明 が あ る。303項 のMD&Aの. よ び303項 開示の説. 明 で は,重 要 な 情 報 に焦 点 を 当て,か つ 投 資 家 の 理 解 を促 進 しな い あ ま り重 要 で な い情 報 を除 去 す る こ と,重 要 な 情 報 を ぼや か す 重 複 した あ る い は あ ま り十 分 な 情 報 で な い もの ま で す べ て を開 示 しな い よ う要 請 して い る。 一 方,重 要 性 の 判 断 で 開 示 を 限 定 す るが,経 営 者 が 判 断 の対 象 とす る情 報 を 限 定 す る もの で は な い こ と に言 及 して い る鮒。 な お,解 釈 通 達 で は,気 候 変 動 開 示 の 一 貫 性 や 統 一 性 を確 保 す る よ うな 重 要 性 の 判 断 に関 す る概 念 定 義 に関 す る明 瞭 な 言 及 は ほ とん ど見 られ な い。. IV事. 1調. 査概要. (1)目. 的. 本 事 例 研 究 の 目的 は,2010年2月8日 た,4つ. (g. の ア メ リカ大 企 業 の10-K様. Dimmit. 例. 研. 究. に解 釈 通 達 が 公 表 され た前 後 にSECに. 提 出 され. 式 の 開 示 書 類 で の気 候 変 動 関連 情 報 開 示 を 対 象 に,. (2010), p. 468.. ㈲McFarland(2009),pp.291-292.SECで は 経 済 的 観 点 に よ っ て 重 要 性 を 判 断 し て き て お り, い わ ゆ る 「社 会 開 示 」 の 立 場 と 距 離 を 置 い て き た こ と に 批 判 も あ る 。1970年 初 期 に,自 然 資 源 擁 護 協 議 会(theNaturalResourcesDefenseCouncil:NRDC)が. 環 境 及 び市 民 権 利 事 項 の 強 制. 開 示 を 提 案 し た 際,SECは 投 資 家 に と っ て 重 要 性 が な い と 判 断 し た 。 し か し,社 会 的 責 任 投 資 フ ォ ー ラ ム(theSocialInvestmentForum)の 調 査 に よ れ ば,社 会 的 責 任 投 資 が ア メ リカ 投 資 市 場 の 約11%(SocialInvestmentForum(2008),p.ii.)を. 占 め,今. 日,投. 資 家 に と っ て地 球. 温 暖 化 や 他 の 環 境 問 題 は 単 な る社 会 的 問 題 と はみ な され て い な い との 指 摘 もあ る。. (56) McFarland (2009), p. 292. Dimitt (2010), p. 466. (58) SEC (2010c), pp. 6294-6295..
(18) 第57巻. 第1号. そ の 内 容 の 変 化 を 検 討 す る こ と で あ る ⑲。. (2)事. 例対象企業の選定. 事 例 の 対 象 と し た ア メ リ カ 企 業4社 め られ る 公 開 会 社 を 選 ぶ た め,ア 市 場(NYSE)に. は,連. 邦 法 上,投. メ リ カ 合 衆 国 に 本 籍 を 置 く大 企 業 で,ニ. 上 場 す る 企 業 と した 。 ま た,事. 関 連 の 深 い4業. 資家への情報開示義務の履行が求. 種 か ら そ れ ぞ れ1社. 業 の 性 質 上,温. 室 効 果 ガ ス排 出 と比 較 的. を 選 定 し た6①。 そ の 結 果,石. 油 ガスエネルギー業か ら. シ ェ ブ ロ ン社(ChevronCorporation),公. 共 事 業 か らPG&E社(PG&ECorporation),. 鉱 業 か らサ ザ ン ・カ ッパ ー 社(SouthernCopperCorporation),お モ ザ イ ク 社(MosaicCompany)を こ れ ら4社. ば ㈹,前2社 く,一. よ び化 学 製 造 業 か ら. 選 定 した。. の 既 存 の 気 候 変 動1青報 の 開 示 に 対 して,投. が あ る 。 前 述 のCDPに. 資 市 場 関 係 者 に よ る興 味 深 い評 価. よ り実 施 さ れ た 気 候 変 動 情 報 開 示 に 関 す る2008年 調 査 結 果 に よ れ. の シ ェ ブ ロ ン 社6⇒ とPG&E社. 方,後2社. ㈹ は,同 業 他 社 と 比 較 して 情 報 開 示 ス コ ア が 高. の サ ザ ン ・カ ッパ ー 社 お よ び モ ザ イ ク 社 は2008年. お よ び2009年. お い て 回 答 を 提 出 して い な い 大 企 業 と して 紹 介 さ れ て い る 。 こ の 他,ア ア メ リ カ 国 内 外 の 世 界1,400社 ン グ 調 査 で,シ. 次 に,4社 世 界 第5位,石. を 対 象 に2010年. に,世. の調査 に. メ リ カCNN社. 界 で 最 も 称 賛 さ れ る 企 業346社. ェ ブ ロ ン社 は 石 油 精 製 企 業 部 門 第3位. socialresponsibility)の. ュー ヨー ク証 券. と さ れ,企. が ランキ. 業 社 会 責 任(corporate. 項 目 で 特 に 高 い 評 価 を 得 て い る㈹。. の 概 要 に つ い て 見 て い き た い 。 ま ず,シ 油 業 界 世 界 第4位,ア. る ㈲。 デ ラ ウ エ ア 州 を 本 籍 地 と し,石. ェ ブ ロ ン社 ㈹ は,2009年. メ リ カ 国 内 第3位 油,化. 学,鉱. 業,電. 総 売 上 高 で,. の石油 ガスエ ネルギー企業 で あ 力,エ. ネ ル ギ ー サ ー ビス を 国 際. 69本 調 査 で は,限 定 的 に4社 を 事 例 と して 取 り上 げ て 寸 評 を 提 供 す る もの で あ り,ア メ リカ 公 開 会 社 全 般 にわ た る解 釈 通 達 の 影 響 を 推 定 す る こ とを 目的 とす る もの で は な い 。 6① 日本 経 済 団 体 連 合 会 に よれ ば,我 が 国 の 産 業 ・エ ネ ル ギ ー 転 換 部 門 の 排 出 量 の 約9割 を 占め る 7業 種 に,電 気 事 業 連 合 会,石 油 連 盟,日 本 鉄 鋼 連 盟,日 本 化 学 工 業 協 会,日 本 製 紙 連 合 会,セ メ ン ト協 会,お よ び 電 機 ・電 子4団 体 が 挙 げ られ て い る(㈱ 日本 経 済 団体 連 合 会(2008年)「 環 境 自主 行 動 計 画 〈温 暖 化 対 策 編>2008年 11月18日,P。4)Q (6DCDP(2009).. 度 フ ォ ロー ア ッ プ結 果 概 要 版 〈2007年度 実 績 〉」2008年. ㈹. シ ェ ブ ロ ン社 は,CDPの2009年 報 告 の 調 査 対 象 と され た 世 界 の 石 油 ・ガ ス を 含 む エ ネ ル ギ ー 企 業92社 の う ち,デ ィ ス ク ロ ジ ャー ・ス コア88点 で トッ プ に ラ ン ク され て い る(CDP(2009),p.77)。 ㈹PG&E社 は,CDPの2009年 報 告 の 調 査 対 象 と され た 世 界 の 公 共 事 業67社 の う ち,デ ィス ク ロ ジ ャー ・ス コア88点 で トッ プ に ラ ン ク付 け され て い る(CDP(2009),p.163)。. (64) CNN, World's Most Admired Companies, http://money.cnn.com/magazines/fortune/mostadmired/2010/snapshots/385.html. (65) Chevron Corporation, http://www.chevron.com/. (66) "Fortune Global 500" (http://money.cnn.com/magazines/fortune/globa1500/2009/ful1 list/.)..
(19) 企 業 年 次 報 告 にお け る気 候 変 動 情 報 開 示(川 原) 的 に 事 業 展 開 して い る 。 原 油 や 天 然 ガ ス の 採 掘 開 発 や 天 然 ガ ス の 販 売,原 ス の 石 油 製 品 転 換,原 生 用 石 油 製 品,産. 油 販 売,石. 業 用 プ ラ ス テ ィ ッ ク,石. 行 う 。 従 業 員 数 約6万4千 度 の 連 結 べ 一 ス で,総 104.83億. ドル,投. PG&E社. 油 製 品 生 産,原. ㈹ は,北. 油 ・天 然 ガ ス ・石 油 製 品 の 輸 送,ま. た民. ア メ リ カ で 従 事 して い る 。2009年12月. ドル,総. 下 資 本 利 益 率10.6%お. 然 ガ. 油 潤 滑 油 添 加 剤 を製 造 販 売 す る化 学 製 品 事 業 を. 人 の う ち49%が 資 産1,646.21億. 油 精 製,天. 売 上 高1,716.36億. ドル,親. よ び 株 主 資 本 利 益 率11.7%で. 期事業年. 会社 帰属純利 益. あ った。. 中 央 カ リ フ ォ ル ニ ア で 公 共 事 業 を 営 む1905年. 設 立 の パ ブ リ ッ ク ・ガ. ス ・ア ン ド ・エ レ ク ト リ ッ ク ・カ ンパ ニ ー(PacificGasandElectricCompany)の 株 会 社 と して,1995年. に カ ル フ ォ ル ニ ア で 設 立 さ れ た 企 業 で あ る 。 パ ブ リ ッ ク ・ガ ス ・ア. ン ド ・エ レ ク ト リ ッ ク ・カ ン パ ニ ー は,電 配 電 を 営 み,2009年12月31日 総 資 産 額 約427億. 持. ドル,総. 力 お よ び 天 然 ガ ス の 供 給,発. 末 現 在,約510万 売 上 高 約134億. の 電 力 顧 客 と約430万. 電,買. 電,お. よび. の ガ ス 顧 客 に 供 給 し,. ドル で あ る 。 電 力 と 天 然 ガ ス の 販 売 供 給 が 主 な 収. 入 で あ る 。 カ リ フ ォ ル ニ ア 公 共 事 業 委 員 会(theCaliforniaPublicUtilitiesCommission:CPUC)と. 連 邦 政 府 エ ネ ル ギ ー 規 制 委 員 会(theFederalEnergyRegulatory. Commission:FERC)の. 規 制 の も と に あ る。 ま た 原 子 力 規 制 委 員 会(theNuclearRegu-. latoryCommission:NRC)の. 原 子 力 発 電 設 備 に 関 す る許 認 可,建. に 関 す る 監 督 の も と に あ る。2009年12月 ル,総. 売 上 高133.99億. ドル,普. 設,操. 期 事 業 年 度 の 連 結 べ 一 ス で,総. 通 株 主 純 利 益12.20億. ドル,お. 業,お. よ び解 体. 資 産429.45億. ド. よ び 株 主 資 本 利 益 率11.35%で. あ っ た。 サ ザ ン ・カ ッパ ー 社 ㈹ は,デ 銅 鉱 業 を 営 み,1996年 る 。 銅,モ. リ ブ デ ン,亜. ラ ウ エ ア 州 を 本 籍 地 と して1952年. 鉛,お. 事 業 年 度 の 連 結 べ 一 ス で,総. よ び 銀 を 生 産 して い る 。 ペ ル ー や メ キ シ コ に 採 鉱,精 キ シ コ,お. 資 産60.62億. ドル で あ っ た 。 ま た,株. 下 資 本 利 益 率20.14%で. よ り. にニ ュ ー ヨ ー ク と リマで 上 場 した世 界 最 大 級 の 総 合 銅 生 産 企 業 で あ. お よ び 精 製 施 設 が あ る 。 ペ ル ー,メ. 利 益9.29億. に 設 立 さ れ,1960年. ドル,総. 錬,. よ び チ リで 探 査 活 動 を 行 う 。2009年12月 売 上 高37.34億. 主 資 本 利 益 率25.60%,総. ドル,お. 期. よ び親 会 社 帰 属 純. 資 産 利 益 率23.05%,お. よ び投. あ っ た ㈲。. http://www.pgecorp.com/. (67) PG & E Corporation, (68) Southern Copper Corporation, http://www.southernperu.com/. ㈹. ●. ツハ ー. 一. 社 で 見 ら れ る よ う な 財 務 指 標(例. 小 日 え ば,株. 」,ン. ェ ブ ロ ン 社 やPG&E. 主 資 本 利 益 率(ReturnonEquity:ROE),総. 資産利. 益 率(ReturnonAssets:ROA),お よ び 投 下 資 本 利 益 率(ReturnonInvestedCapital:ROIC) な ど)に よ る 記 述 が あ ま り 見 ら れ な い た め,こ れ ら 財 務 指 標 は イ ン タ ー ネ ッ トで デ イ リ ー ・ フ ァ イ ナ ン ス の ウ ェ ブ サ イ ト情 報 を 参 照 し た. (Daily Finance, http://www.dailyfinance.com/financials/southern-copper-corporation/ scco/nys/key-ratios) o.
(20) 第57巻 モ ザ イ ク 社 ㈲ は,世. 第1号. 界40力 国 で 農 業 産 業 に 濃 縮 リ ン 酸 肥 料 や 炭 酸 カ リ ウ ム 作 物 栄 養 剤 や. 動 物 飼 料 を提 供 す る世 界 最 大 級 の 生 産 販 売 会 社 で あ る。 ア メ リカ国 内で リン酸 や 炭 酸 カ リ ウ ム を 採 掘 す る 他,ブ. ラ ジ ル に も 設 備 投 資 して い る 。2004年. 合 併 に よ り デ ラ ウ エ ア 州 を 本 籍 地 と して 設 立 さ れ,ミ 上 場 し て い る 。2009年5月 102.98億. ドル,お. 資 産 利 益 率5.14%,お. (3)調. 資 産126.76億. ドル で あ っ た 。 ま た,株. よ び 投 下 資 本 利 益 率26.45%で. ュー ヨー ク. ドル,総. 売上 高. 主 資 本 利 益 率54.32%,総. あ っ た ⑳。. 査対象の開示書類. 調 査 対 象 は,4社. がSECに. 提 出 し た2008年. お よ び2009年. 様 式 の 開 示 書 類 と し た 。 各 社 の 事 業 年 度 末 は,シ カ ッパ ー 社 の3社 年2月8日 は,解. ネ ソ タ に 本 社 を 置 き,ニ. 期 事 業 年 度 の 連 結 べ 一 ス で,総. よ び 当 期 純 利 益23.50億. に ア イエ ム シー と カー ギ ル の. は12月 末,モ. 以 降,SECに. ザ イ ク 社 は5月. 業 年 度 に 関 す る10-K. ェ ブ ロ ン社,PG&E社,お. 末 で あ る 。 よ っ て,解. 開 示 書 類 を 提 出 し て い る の は 前3社. 釈 通 達 公 表 以 前 の2009年7月. の2事. に 提 出 さ れ た2009年5月. よ び サ ザ ン・ 釈 通 達 公 表 日 の2010. で あ り,モ ザ イ ク 社 に つ い て 期事業年度の開示書類を対象. と した。 開 示 書 類 の 入 手 は,SECが. 管 理 お よ び運 営 す る法 定 開示 書 類 の電 子 媒 体 を利 用 した 開. 示 シ ス テ ム で あ る エ ドガ ー シ ス テ ム(ElectronicDataGathering,AnalysisandRetrievalSystem)を. 利 用 し,4社. の10-K様. 式 の 開 示 書 類 を イ ン タ ー ネ ッ トの ウ ェ ブ 上 で 閲. 覧 した。. (4)調. 査方法. 調 査 方 法 は,調. 査 対 象 の 開 示 書 類 に お け る 開 示 内 容 を,以. 視 に よ り比 較 検 討 を 行 っ た 。 ま ず,気. 下 の3つ. の 手 順 で,筆. 者が 目. 候 変 動 関 連 情 報 の 記 述 の 際 に使 用 が 見 込 まれ る代 表. 的 用 語 の 記 載 数 の 変 化 を 調 べ る た め,2年. 分 の 対 象 開 示 書 類 を 全 文 用 語 検 索 し,筆. 者が 目. 視 に よ り記 載 さ れ た 用 語 を 数 え た 。 代 表 的 用 語 と し て 選 ん だ の は,「 気 候 変 動(climate change)」,「. キ ャ ッ プ ・ア ン ド・ト レー ド(capandtrade,caps)」,「. housegas,GHG)」,「. 排 出(emission)」(文. (70) The Mosaic Company, ⑳. 脈 上,温. 温 室 効 果 ガ ス(green-. 室 効 果 ガ ス との 関連 が 認 め られ る. http://www.mosaicco.com/.. モ ザ イ ク 社 も前 述 の サ ザ ン ・カ ッパ ー 社 と 同 様 で 財 務 指 標 に よ る記 述 が あ ま り見 られ な い た め,同 じ くデ イ リー ・フ ァイ ナ ンス の ウ ェ ブサ イ ト情 報 を 参 照 した.
(21) 企業年次報告 にお ける気候変動情報開示(川 原) もの に限 る),「 二 酸 化 炭 素(CO2,carbondioxide)」,お. よび 「排 出枠(allowances),ク. レジ ッ ト(credits)」(いず れ も温 室 効 果 ガ ス排 出量 取 引 との 関連 が認 め られ る文 脈 に 限 る) の6項. 目 と した。 な お,開 示 書 類 の 分 量 が 多 けれ ば用 語 の 記 載 数 も多 くな る こ と も予 想 さ. れ る た め,企 業 お よ び対 象 年 度 ご と に開 示 書 類 の 全 体 頁 数 を,書 類 閲 覧 時 に把 握 した 。 2つ 目 に,前 述 の4つ の用 語 の検 索 に よ り,10-K様 載 項 目で 気 候 変 動 関 連 情 報 が 記 述 され て い るか,ま. 式 上,ど の 記 載 箇 所 で どの よ うな 記 た2年 分 を 比 較 して 記 載 箇 所 の 増 減 や. 見 出 し,ま た記 載 分 量 の 変 化 は見 られ な いか,筆 者 が 対 象 開 示 書 類 を 通 読 して 判 断 した 。 記 載 項 目数 は,見 出 しの あ るパ ラ グ ラ フの ま と ま りを1つ. と数 え た 。. 3つ 目 に,前 述 の4つ の 用 語 の 記 載 箇 所 を も と に,そ の 他 記 述 内容 や 方 法 に関 して 特 徴 的 な 点 はな いか,そ の 内容 等 に関 して2年 分 を 比 較 して 変 化 は見 られ な いか,筆 者 が 対 象 開 示 書 類 を通 読 して 判 断 した。. 2調. 査結果. (1)総. 括. 4事 例 の 開 示 書 類 の2年 分 を 比 較 した と こ ろ,気 候 変 動 関 連 用 語 の 使 用 頻 度,記 載 項 目 や 内容 の 増 加 な どの 気 候 変 動 情 報 の 開 示 程 度 に お いて,事 例 ご と に程 度 の 差 は あ るが いず れ も拡 大 した様 子 が 見 られ た。 ただ し,個 々の事 例 を相 互 に比較 す る と,記 載 項 目や分 量, 記 載 の 具 体 性 の 程 度 に著 しい ば らつ きが 見 られ た。 ま た,解 釈 通 達 公 表 の タ イ ミン グ と開 示 内容 の 拡 大 の タ イ ミン グ につ いて は,公 表 前 で も開 示 内容 が 増 加 して い る1事 例 も見 ら れ た もの の,そ の 他3事 例 に お いて は公 表 後 提 出の 開 示 書 類 の 方 が,そ の 前 年 度 の 開 示 書 類 に比 較 して 開 示 程 度 の 拡 大 が 見 られ た。. (2)気 候 変 動 関 連 用 語 の 記 載 数 の 変 化 検 索 対 象 と した6用 語 に つ い て,各 事 例 に お け る2年 分 の 開 示 書 類 で の 記 載 数 の変 化 は,次 の 通 りで あ っ た(図 表1参 照)。. 対 象 開 示 書 類 の 総 頁 数 は,サ と も2年. ザ ン ・カ ッパ ー 社 を 除 き,他3社. 分 の 開 示 書 類 で の 検 索 対 象6用. 社. 語 合 計 べ 一 スで 記 載 数 の 増 加 が 見 られ た 。 企 業 ご. と の 用 語 の 頻 出 度 や 記 載 数 に は 差 が 見 ら れ た 。4社 社 の 記 載 数 が い ず れ の 用 語 に つ い て も 多 く,ま か っ た(PG&E社83.4%,参. で 減 少 して い る が,各. に 比 較 し,PG&E. た開 示 書 類 頁 に対 す る用 語 記 載 数 割 合 も高. 考:モ ザ イ ク 社48.2%)。 -51(51)一. の 中 で は,他3社. ま た,モ. ザ イ ク 社 は2008年. よ り2009.
(22) 第57巻 図 表1気 検索対象用語 企業/事業年度. 2008. シ ェブ ロ ン. PG&E サ ザ ン ・カ ッパ ー. モザイク 十ニゴロ 注:「 排 出(emission)」. 候変動関連用語の記載数比較 キ ャ ップ ・. 温室効果 ガ ス. 気候変動. 2009. 2008. 排. 出. 二 酸 化 炭 素. ア ンド・ トレー ド. 2009. 2008. 2009. 2008. 2009. 2008. 2009. 排. 出 枠 ・. 2008. 2009. (参 考) 開示書 類頁数. 計. クレ ジッ ト. 2008. 2009. 2008. 2009. 1. 4. 6. 13. 10. 14. 0. 2. 1. 1. 1. 1. 19. 35. 277. 166. 12. 35. 31. 72. 28. 115. 3. 13. 3. 17. 4. 19. 81. 271. 498. 325. 0. 4. 0. 1. 0. 3. 0. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 9. 189. 202. 2. 13. 1. 39. 2. 36. 0. 5. 1. 0. 1. 1. 7. 94. 227. 195. 15. 56. 38. 125. 40. 168. 3. 21. 5. 18. 6. 21. 107. 409. 1,191. 888. と. 「排 出 枠(allowances)」. 年 に 著 し く記 載 数 が 増 加 し た(7か 年 に は6つ. 第1号. は重 複 して い な い。. ら94へ,約13倍)。. さ ら に,サ ザ ン ・カ ッパ ー 社 は,2008. の 検 索 対 象 用 語 が ほ と ん ど 見 当 た ら な か っ た が,2009年. に は4用. 語が新 出 し. た。 6用 語 の う ち,記 で. 載 数 が 比 較 的 多 い 用 語 は 「排 出 」 と 「温 室 効 果 ガ ス 」 の2つ. で,次. い. 「気 候 変 動 」 で あ っ た 。 「排 出 」 の 用 語 は,「 温 室 効 果 ガ ス 」,「二 酸 化 炭 素 」,「排 出 量 ・. ク レ ジ ッ ト」 と 文 脈 上 組 み 合 わ せ た 記 述 が 多 く観 察 さ れ た 。 ま た,「 キ ャ ッ プ ・ア ン ド ・ ト レ ー ド」,「二 酸 化 炭 素 」,「排 出 量 ・ク レ ジ ッ ト」 の 用 語 に つ い て は,PG&E社 3社 で は あ ま り 記 載 が 見 られ な か っ た 。PG&E社 か も2008年. の他の. で は こ れ らの 記 載 も か な り 見 ら れ,し. よ り2009年 で 記 載 数 の 増 加 が 見 られ た 。. (3)記 載 箇 所 の 変 化 2008年 お よ び2009年 の 対 象 書 類 に お け る,前 述 の6用 語 の いず れ か が 使 用 に よ り気 候 変 動 関 連 の 情 報 が 記 述 され た記 載 箇 所 を,2年 分 で比 較 した結 果 は次 の通 りで あ っ た(図 表2 参 照)。. 図表2気 記載箇所 企 業/事業年度. 事業の説明 2008. シェブロン PG&E. 候変動関連用語の記載箇所 と項 目数の比較. 2009. 法的手続 き 2008. 1 4. 2009. リス ク要 因. MD&A. 2008. 2009. 1. 1. 8. サ ザ ン ・カ ッパ ー. 1. モザイ ク. 2. 一52(52)一. 2008. 2009. 7. 10. 1. 2.
図
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