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巻頭言

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

知の流通・消費の歴史という視点で(学術)出版を考えると,現在はどのよ うな時代なのか。本誌のような大学の紀要や学会誌は綴じられた雑誌や書籍と して発行され,各地の大学図書館に送られ,所蔵される。しかしながら,現在 多くの研究者が知の成果にふれるのは,図書館にある紙雑誌よりも諸大学のレ ポジトリや有料のデータベースを用いた PDF 形式のデータによると思われる。 知の流通・消費は既にデジタル化されている。 知の産出のインフラストラクチャーに焦点を移すと,綴じた紙の雑誌オリジ ナルとしない,オンラインのみ出版の国際学術誌も現れている。カナダの SSHRC(Social Science and Humanities Research Council)は,学術誌への出版 助成時には即時のオンライン発行を求めており,結果として紙版を廃止してオ ンライン版のみになった学術誌もある。ピアレビュー,ブラインドレビューと 呼ばれる査読システムが知の門番ならば,紙の本や雑誌であろうと,0 と 1 の データであろうと,論文の質は担保され,内容面の心配はない。 流通・消費の変容と知の産出のインフラストラクチャーのデジタル化を対比 すると,2020 年の時点では綴じた本や雑誌の形式を前提して,論文という形 の知が産出されていることは非常に興味深い。紙の(学術)雑誌とタブレット で見る(学術)雑誌は,現在は同じページ立てをとる。ともすればこの状態は, 綴じた雑誌に出版された論文が主であり,それを移し替えているオンライン版 は従属的な扱いであるようにも見える。オンライン出版は,本や雑誌を別メデ ィアに移す「翻訳」であり,オリジナルはどこか別のメディアにあると研究者 のコミュニティは推定しているようである。 「メディアはメッセージである」は,カナダのメディア史家マーシャル・マ クルーハンの有名な主張だが,形式が内容をある程度規定することは否定でき ないだろう。オンライン出版の隆盛は,論文を拡張・補完する新たな知の表現 形式につながるのだろうか? パソコンに向かってデジタルデータでこの文を 書きつつ,新たな知の表現形式を想像すると,期待と少しの不安がある。時代 の変化に対してこのような思いを抱きつつも,形式に載せる内容を産出する 「研究」という行為が,基本的には,手間はかかるけれど楽しい行為であるこ とは変わることがないだろう。時間を見つけて研究を進めて成果を発表してく れた作者の方々,編集業務に関わられた方々,英語コミュニケーション学科の 諸教育・研究活動について報告をまとめてくれた方々に,この場を借りて感謝 の念をお伝えしたい。(小西)

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