「オーストリアドイツ語」と言語政策
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(2) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要5巻2号(2005・ こ と に な っ た 。 事 実,共. 和 国 内 に は す で に 少 数 派 で は あ る が 様 々 な 民 族 が 生 活 して い た 。 例 え ば,. 1923年 ケ ル ン テ ン に は34,650名 人,ウ. の ス ロ ヴ ェ ニ ア 人,ブ. ル ゲ ン ラ ン ト に は41,76ユ名 の ク ロ ア チ ア. ィ ー ン に は9,606名 の ハ ン ガ リ ー 人 が 数 え ら れ,1910年. ル ン テ ン に ま だ66,463名. の そ れ よ り も 多 い43,179名. Germain国. の 君 主 制 最 後 の 国 勢 調 査 で は,ケ. の ス ロ ヴ ェ ニ ア 人 が い た と い う事 実 か ら,こ. じ た こ と は 確 か で あ る 。 し か し そ の 後 のNS(ナ. (Muttersprache)が. ユ2). 代 の 国 勢 調 査(1939年)で. の ス ロ ヴ ェ ニ ア 人 が 存 在 し て い る3。 お そ ら くNS時. 厳 し く問 わ れ,偽. 家 条 約 に は,一. チ ス)時. の 間 に法 外 な 同化 圧 力 が 生 は,1923年 代 に は母 語. り の 申 告 に は 罰 則 が 課 さ れ た か ら で あ ろ う 。 ユ920年 のSt.. 連 の 少 数 派 保 護 規 定 が 含 ま れ,裁. 判 所 ・小 学 校 等 で 各 民 族 の 言 語 使 用. が 緩 和 さ れ て い る 。 し か し そ れ は 限 ら れ た 範 囲 内 の み で,一. 般 的 な 生 活 で は ドイ ツ 語 中 心 の 言 語. 政 策 が と られ て い た。 と りわ け ケ ル ンテ ンで は少 数 派 に対 して厳 しい処 置 が と られ て い た。 ケ ル ン テ ン 南 部 の オ ー ス ト リ ア 帰 属 に 関 す る1920年 ア に 投 票 し た が,そ え ば,ス. の 国 民 投 票 で は,有. 権 者 の59.04%が. の 後 の 言 語 政 策 は 少 数 派 を 無 視 し た ドイ ツ 語 中 心 の 同 化 政 策 が と ら れ た 。 例. ロ ヴ ェニ ア人 の 牧 師 と教 師 を ス ロ ヴ ェニ ア語 地 域 か らス ロ ヴ ェ ニ ア語 が 補 助 語 と して の. み 使 用 さ れ る 学 校 へ の 配 置 換 え,二. 言 語 に よ る 村 落 名 表 示 の 排 除,「 純 粋 に ド イ ツ 的 な 」 移 民 者. を ス ロ ヴ ェ ニ ア 地 域 の 農 村 へ 移 住 さ せ る 等 々 。192ユ 年 に 国 民 投 票 に よ っ て,ク リ ー 及 び ロ マ(Roma)の で は,異. オ ー ス トリ. 少 数 派 と 共 に,オ. ツ 的(pro-deutsch)陣 れ な か っ た の は,1937年. ンガ. ー ス トリ ア に所 属 す る こ と に な っ た ブ ル ゲ ン ラ ン ト. な る 言 語 グ ル ー プ 問 で 衝 突 が 起 こ っ た が,ケ. の と は な ら な か っ た 。 そ こ で は1922年. ロ ア チ ア,ハ. ル ンテ ン と は対 照 的 にそ れ ほ ど切 迫 した も. 以 降 も 「言 語 の イ デ オ ロ ギ ー 化 」 が 生 じ,保. 営 に よ る 教 育 が 行 わ れ た に も か か わ らず,言. 守 的 で 好 ドイ. 語 衝 突 が 大 き く取 り上 げ ら. まで義 務 教 育制 度 が教 会 の 手 の 内 で 行 わ れ て い た の が そ の 大 き な理 由 と. い え る で あ ろ う4。 ユ938年 ドイ ツ が オ ー ス ト リ ア を 併 合 し 第2次. オ ー ス ト リ ア 共 和 国 が で き る ま で の 問,オ. リ ア 各 地 に レ ジ ス タ ン ス 活 動 が 盛 ん に な っ た が,ウ を 築 き上 げ,す. ース ト. ィー ンで は チ ェ コ少 数派 が機 能 的 な組 合 制 度. で に 公 立 と私 立 の 学 校 を 設 け て い た 。 ま た チ ェ コ の レ ジ ス タ ン ス グ ル ー プ は 幾 多. の 軍 事 産 業 を 攻 撃 し 麻 痺 さ せ て い た が,最. 終 的 に は 多 数 の チ ェ コ の レ ジ ス タ ン ス 闘 士 がNSに. よ っ て 殺 害 さ れ た 。 チ ェ コ 少 数 派 は 大 ドイ ツ 主 義 のNS-Deutschland(ナ. チ ス ・ ド イ ツ)に. 占領. さ れ た 「オ ー ス ト リ ア ・オ ス トマ ル ク 地 域 」 や 「ア ル プ ス ・ ドナ ウ 地 域 」 で も 激 し い 迫 害 に さ ら さ れ て い た 。 一・ 方 ス ロ ヴ ェ ニ ア の パ ル チ ザ ン は,1942年. 以 降 ケ ル ン テ ンの ス ロ ヴ ェ ニ ア 人 移 住. や 強 制 収 容 所 へ の 収 容 や 殺 害 と い っ た 迫 害 に 対 す る リ ア ク シ ョ ン と し て 活 動 して い た 。 ブ ル ゲ ン ラ ン トで も ク ロ ア チ ア 協 会 と 学 校 で の ク ロ ア チ ア 語 使 用 禁 止 令 が 発 動 さ れ た が,ク. 一24一. ロ アチ ア人 と.
(3) 「オ ー ス トリア ドイ ツ語 」 と言語 政 策 ハ ン ガ リ ー 人 はNSの. 迫 害 か ら は 逃 れ ら れ た 。 し か し 大 多 数 の ロ マ(Sintiを. 強 制 収 容 所 へ 連 行 さ れ,ブ. ル ゲ ン ラ ン トの ロ マ の 内,NS時. 含 む)はNSに. よ り. 代 を 乗 り越 え ら れ た の は 約10%程. 度. だ と言 わ れ て い る ㌔. 1945年 以 降 の 第2次. オ ー ス ト リ ア 共 和 国 の 言 語 政 策 に つ い て は,歴. 代,即. ち ナ チ ス 支 配 を 解 放 し た4強. 圏)が. 開 か れ る1988年. 中 で も特 に1989年. に よ っ て オ ー ス ト リ ア が 影 響 さ れ て い た 時 代,②. ま で の 時 代,③1989年. 以 降 は,中. 史 的 に,①1955年. まで の 時 東 側(東. 欧. 以 降 現 代 まで の 時 代 に三 区 分 で き る。 三 時 代 区 分 の. ・東 欧 圏 で の 新 し い 地 政 学 上 の 状 況 と グ ロ ー バ ル 化 が 言 語 政 策 に 大. きな 変化 を もた ら した 。 国 民 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン手段 と して の 国 家 語 ドイ ツ語 と新 旧 少 数 派 の 言 語 と の 関 係 と い う 第2次. オ ー ス ト リ ア 共 和 国 以 前 か ら の 問 題 も 残 る が,注. 目す べ きテ ー マ と し. て は 「オ ー ス ト リ ア ドイ ツ語 」 と い う ドイ ツ 語 独 自 の ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン の 扱 い で あ る 。1945年 ら ユ955年 ま で の 時 代 は,ド. イ ツ と の 不 名 誉 な 共 通 の 歴 史 を 忘 れ る こ と,又. 初 の 犠 牲 者 と し て 己 を ア ピ ー ル す る こ と(犠 人 が 関 与 し た こ と(犯. 人 テ ー ゼ)を. 牲 者 テ ー ゼ),そ. 下 で 。Unterrichtssprache"「. これは世 間一般 では. は ナ チ ス ・ドイ ツの 最. して ナ チ ス の 犯 罪 に オ ー ス ト リ ア. 排 除 す る こ と に 極 め て 過 敏 で 関 心 を 強 く抱 い て い た 時 代 で あ. る 。 こ の よ う に ドイ ツ と の 距 離 を 保 と う とす る 動 き は,学 育 者FelixHurdesの. か. 校 で の 授 業 科 目 で あ る ドイ ツ 語 を,教. 授 業 語 」 と名 称 変 更 した事 実 に象 徴 され よ う。. 「罵 り表 現 」 と し て 。Hurdestanisch"と. も 表 現 さ れ た が6,あ. る意 味 で オ ー. ス トリ ア 人 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 示 す 表 現 と し て こ の 時 期 に 初 め て 現 れ た こ と は 注 目 さ れ る 。 ま た ユ951年 に は オ ー ス ト リ ア 辞 典(OsterrelchischesWorterbuch=OWB)の れ,オ. ー ス トリ ア で 一 般 的 な 語 彙 が 掲 載 さ れ,学. し90年 代 に 入 る ま で. 「オ ー ス トリ ア ドイ ツ 語 」 の 問 題 は 周 辺 的 で あ っ た 。 無 論50∼60年. の 問 題 が 公 に され 関心 を抱 か れ る よ う. 加 盟 す る 時 期 で あ る 。 こ の 時 オ ー ス トリ ア は 初 め て 「オ ー. ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 に 関 す る 特 異 な 言 語 政 策 上 の 処 置 を 行 っ た 。 即 ち,オ 条 項(第10条)の. 付 帯 事 項 に,食. ー ス ト リ ア のEU加. 料 品 用 語 の 領 域 か ら23の オ ー ス トリ ア 表 現 を,法. 邦 共 和 国 の そ れ と 同 価 値 の も の と して 定 着 さ せ た の で あ る 。 そ の 結 果,EUの こ れ ら の 表 現 が 新 た に 付 加 さ れ た 。 こ の 問 題 は,当 に つ い て の 国 民 投 票 を控 え て,政. 代 に はす. の 新 聞 ・雑 誌 で 「オ ー ス ト リ ア. ド イ ツ 語 」 に つ い て の 記 事 が 見 ら れ た の で は あ る が7,こ ー ス トリ ア がEUに. が 出版 さ. 校 や 役 所 等 で参 考 図書 と して採 択 さ れ た。 しか. で にArbeiter-Zeitung,Tagebuch,DieOsterreichischeNation等. に な っ た の は,オ. 第1版. 時1994年6月. 盟. 的 に ドイ ツ 連. 法 典 ドイ ツ語 版 に. ユ2日 の オ ー ス ト リ ア のEU加. 盟. 治 的 ・社 会 的 に 最 重 要 事 項 と さ れ て い た 。 日 常 の 食 品 名 の 変 更. を 危 惧 し て い た オ ー ス ト リ ア 人 は,オ. ー ス トリア特 有 の 表現 が 認 め られ ErdapfelbleibtErdapfel. 一25一.
(4) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部紀 要5巻2号(2005・12) "「Erdapfel(ジ. ャ ガ イ モ)はErdapfelの. ま ま」 , Allesbleibt,wieesisst!"「. い っ さ い が 今 の ま ま」. と い う ス ロ ー ガ ン に 安 心 し た の で あ る 。 も ち ろ ん こ の 「外 交 上 の 偉 業(皮. 肉 的 に)」 後 に,. 「オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 促 進 の た め の 価 値 あ る 言 語 政 策 上 の 処 置 が つ づ い て 行 わ れ た わ け で は な い 。 こ の 条 項 第 ユ0条は オ ー ス ト リ ア 人 に と っ てEU加. 盟 の た め に 不 可 欠 な 政 治 的 判 断 で あ り,. オ ー ス トリア政 府 に よる ア イ デ ンテ ィテ ィー 政 策 の 短 期 的 処 置 で あ る と解 釈 で き よ う。. 皿. EUは. 言 語 政 策 上 の 問 題 に 関 して は,平 等 主 義 と多 言 語 主 義 を 基 本 と して い る。EUの. (公 用 語)は 全 加 盟 国 の 国語(Staatssprache)で. あ り,EUの. 官庁語. 国 際 機 関 で は通 訳 ・翻 訳 業 務 費 用. につ い て も文 字 通 り寛 大 な政 策 を と り,全 加 盟 国 の 国語 を平 等 に扱 うこ とが 求 め られ て い る。 言 語 多 様 化 政 策 がEUで. は政 治 的 に も重 要 な基 幹 政 策 と見 な され て い る こ とは,1978年11月. ユ6日の. ヨー ロ ッパ 議 会 表 明 か らも明 らか で あ る8。 「ヨ ー ロ ッパ 全 市 民 の た め に,文 化 領 域 で共 通 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン手 段 を創 る こ と は単 調 化 を招 く。 な ぜ な ら共 同 体 の 全 て の 国 の 言 語 と文 化 は,と. りわ け消 滅 に脅 か され て い る種 族 的 言 語. 的 少 数 派 も含 め て,無 条 件 に保 護 され ね ば な らな い か らで あ る。」9 「ヨ ー ロ ッパ 共 同体 の 多 言 語 性 」 とい うテ ー マ は,1995年EUの て きた が,そ. 協 議 会 に お い て 多k吟. 味 され. こに は 多 様性 と多 言 語性 に よっ て特 徴 づ け られ る ヨー ロ ッパ の ア イデ ンテ ィテ ィー. が指 摘 され て い る 。 このEU各 語 のnationaleVarianteの. 国 の言 語 ・文 化 ア イ デ ンテ ィテ ィー を保 護 す る 政 策,つ. ま り各 言. 問 題 に対 す る寛 大 な対 応 が 「複 ・中 心 言 語 」 の ヴ ァ リエ ー シ ョンに も. 大 き な影 響 を与 え て い る。 オ ー ス トリ ア はユ995年1月 に ヨ ー ロ ッパ 連 合(EU)に. 正 式 に 加 盟 が 認 め られ た が,そ. の前 年. ユ993∼94年 の加 盟 準 備 過 程 で 問題 とな っ た のが 「オ ー ス トリア ドイ ツ語 」 の扱 い で あ っ た 。特 に 厚 生 省 と農 業 経 済 省 は オ ー ス トリア の特 殊 性 に 関す る 問題 を調 査 し,各 種 委 員 会 の 意 見 を ま とめ て 「典 型 的 な オ ー ス トリア表 現 」 の様 々 な表 を作 成 した。 そ の後 の 度重 な る折 衝 で,オ ー ス トリ ァ とEU問. 議定書. の議 定書 第10条 項 の 内 容 が厚 生 省 の提 案 を基 に以 下 の よ う に確 立 され た 。. 第10条:EU内. で の ドイ ツ語 の 特 別 な オ ー ス トリア表 現 の使 用 につ い て. 次 の 諸 点 が 有 効 と な る: 1.オ. ー ス トリ アの 法秩 序 に含 まれ,こ の 議 定 書 の 付 帯 事 項 に リス トア ッ プ され て い る ドイ ツ. 一26一.
(5) 「オース トリア ドイツ語」 と言語政策 語 の 特 別 な オ ー ス トリア表 現 は,ド イ ツ の そ れ に対 応 す る表 現 と同 じ地 位 を もち,か つ 同等 の 法 的 効 果 を有 す る。 2.新. た な法 行 為 を ドイ ッ語 で と らえ る場 合 に,付 帯 事 項 に挙 げ られ て い る特 別 な オ ー ス トリ. ア表 現 は,ド イ ツで 用 い られ て い るそ れ に対 応 す る適 切 な表 現 に付 加 され る。'°. 付 帯 条 項 に リス トア ップ され た 「オー ス トリア 的 な ドイ ッ語 表 現 」 は 当初 よ りか な り削 減 され 最 終 的 に以 下 の23語 とな っ た11。 [付帯 事 項] (オ ー ス ト リ ア). (EU官. 報). Beiried. Roastbeef(ロ. ー ス ト ビ ー フ). Eierschwammerl. Pfifferlinge(杏. Erdapfel. Kartoffeln(ジ. Fachiertes. Hackfleisch(挽. Fisolen. pruneBohnen(サ. Grammeln. Grieben(妙. Hiiferl. Hufte(腰. Karfiol. Blumenkohl(カ. Kohlsprossen. Rosenkohl(メ. Kren. Meerrettich(ワ. Lungenbraten. Filet(ヒ. Marillen. Aprikosen(ア. ン ズ). Melanzani. Aubergine(ナ. ス). Nu13. Kugel(〈. 牛. ・豚 の 〉 厚 く 切 っ た も も 肉). 0bers. Sahne(乳. 脂. ・ ク リ ー ム). Paradeiser. Tomaten(ト. Powidl. P且aumenmus(ス. Ribisel. Johannisbeeren(ス. Rostbraten. Hochrippe(〈. Schlogel. Keule(も. も 肉). Topfen. Quark(凝. 乳. 茸. ・ ア ン ズ タ ケ). ャ ガ イ モ) 肉) ヤ イ ン ゲ ン) め て 脂 を 抜 い た ベ ー コ ン) 肉) リ フ ラ ワ ー) キ ャ ベ ッ) サ ビ ダ イ コ ン). レ 肉). マ ト) モ モ 〈 プ ラ ム 〉 の ム ー ス) グ リ く の 実 〉) 牛 の 〉 肩 ロ ー ス). ・ カ ー ド). 一27一.
(6) 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要5巻2号(2005・12). Vogerlsalat. Feldsalat(野. Weichseln. Sauerkirschen(ス. ぢ し ゃ ・サ ラ ダ 菜) ミ ノ ミ ザ ク ラ く の 実 〉). こ の 第10条 項 に 対 す る 批 判 で し ば し ば 取 り上 げ ら れ た 点 は,当 トリ ア 的 な 表 現 」 で あ る Palatschinke"「. パ ラ チ ン ケ(薄. 初 の リス トにみ られ た. 「オ ー ス. く焼 い た パ ン ケ ー キ で ジ ャ ム な ど を く. る ん だ ク レ ー プ 風 の 菓 子)」,。Beuschel"「 臓 物 料 理 」,。Mozartkugel"「 モ ー ツ ァ ル ト ・プ ラ リ ー ヌ 」,。Burenwurst"「. ブ ー レ ン ソ ー セ ー ジ(茄. ぜ 削 除 さ れ て し ま っ た の か,と な い が,農. で た 後 十 分 に 焼 い た 粗 挽 き ソ ー セ ー ジ)」. 言 うこ とで あ る。 実 際 そ の 点 に つ い て は 公 的 な 説 明 は な され て い. 林 省 と 厚 生 省 の 役 人 が 電 子 デ ー タ 処 理 に よ っ て,EUと. を 比 較 し,両. な どが な. オ ー ス トリ アの 法 律 テ キ ス ト. テ キ ス トで 異 な る 表 現 を こ の 第 ユ0条項 リ ス トに 確 立 させ た と 言 わ れ て い る12。. な ぜ こ の よ う な 問 題 が,特 る13。そ れ に よ る と,EUで. に 食 品 表 示 の 領 域 で 注 視 さ れ る の か を,M.Klingerが の 食 品 法 の 歴 史 的 な 発 展 の 中 で,1969年. か ら1979年. 指摘 してい ま で 「商 業 に ブ. レ ー キ を か け る 各 国 の 法 規 制 」 を 共 同 の 融 和 行 動 に よ っ て 取 り崩 す こ と を 目標 と し て い た が,成 功 し な か っ た 。 しか し共 同 法 の 中 で 最 低 限 守 ら れ る べ き原 則 は,購. 入 者 に わ か りや す い 言 語 で 食. 品 表 示 と 原 産 地 表 示 を す る こ と で あ っ た 。オ ー ス ト リ ア の 生 産 者 は 例 え ば 。Marillenmarmelade" 「ア ン ズ ジ ャ ム 」 と い う名 称 に ク レ ー ム を つ け ら れ る こ と も な く 国 内 市 場 で 販 売 で き る の で あ る 。 こ の 第10条 項 は 国 際 条 約 で 独 自 の オ ー ス トリ ア ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン を 初 め て 認 識 す る も の で あ り, ま た23語 に 限 定 さ れ た リ ス トが 付 帯 事 項 に 掲 載 さ れ て い る が 故 に,将. 来. 「オ ー ス ト リ ア ド イ ツ. 語 」 と 「ド イ ツ 連 邦 共 和 国 の ド イ ツ 語 」 で 異 な っ た 表 現 に な る 新 しい 概 念 を 導 入 す る 場 合 に 問 題 の 生 じ る 可 能 性 が あ る と危 惧 さ れ る 面 も あ る 。 つ ま り逆 説 的 に 言 え ば,「 オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 を23の. 「オ ー ス ト リ ア 語 法 」 に 固 定 す る こ と に よ っ て,ド. 性 が 確 立 さ れ な い こ と に な る 。 そ れ に よ っ てEUの オ ー ス ト リ ア 加 盟 以 前 か らEUの エ ー シ ョ ン の 聞 に は,語. ドイ ツ語 は,23の. オ ー ス ト リ ア 表 現 以 外 は,. 構 成 員 で あ っ た ドイ ツ 連 邦 共 和 国 の ド イ ツ 語 と な る 。 両 ヴ ァ リ. 彙 領 域 の み な ら ず 全 て の 言 語 領 域 で,本. 実 が 考 慮 さ れ て い な い こ と に な る 。 音 声 ・音 韻 的,形 異 は 非 本 質 的 な も の と見 な す べ き な の か,あ じ法 的 立 場 に な い と見 な す べ き な の か,い W.Pollakは1994年4月28日. イ ツ語 の 両 ヴ ァ リエ ー シ ョンの 同 価 値. 態 的,シ. 質 的 な差 異 が 存 在 す る とい う事 ン タ ク ス 的,プ. ラ グマ 的 領域 の 差. る い は ドイ ツ連 邦 共 和 国 で 用 い ら れ て い る 表 現 と 同. ず れ か の解 釈 が必 要 に な る。. の 日 刊 紙DerStandardで,こ. の 第10条 項 を 「危 険 な ミ ニ 妥 協 案 」. で あ り 「降 伏 条 約 」 と し て 批 判 し て い る14。今 後 食 品 分 野 に 限 ら ず 全 て の 分 野 で. 「オ ー ス ト リ ア. 語 法 」 認 識 に 関 す る 問 題 が 発 生 す る 可 能 性 が 大 き い か ら で あ る 。故 に,W.PollakはTeutonismen. 一28一.
(7) 「オー ス トリア ドイ ツ語 」 と言 語 政 策 (ド イ ツ の 語 法)とAustriazismen(オ. ー ス ト リ ア の 語 法)の. 同価 値 を守 る た め に次 の 一 般 条 項. を 設 け る べ き だ っ た と提 案 し て い る 。 「EUの. 法 文 書 に,ド. イ ツ連 邦 共 和 国 と オ ー ス トリア で 異 な る標 準 ヴ ァ リエ ー シ ョ ンが 存 在 す. る 表 現 が 取 り入 れ られ た 場 合,両 ん 新 しいEU法 W.Pollakは. 者 はEUの. 官 報 で 表 示 しな けれ ば な らない 。 こ の決 定 は もち ろ. に も 適 用 さ れ る 。」15 第10条 項 の こ の よ う な 不 満 足 な 決 定 に 至 っ た そ の 根 拠 と し て,EUへ. の オ ー ス トリ. ア 加 盟 に よ っ て 多 言 語 主 義 が 重 視 さ れ 言 語 併 合 の 危 険 性 が 薄 ら い だ こ と に よ る 「nationale Identitatの. 欠 如 」 を 挙 げ て い る が16eこ の 点 は オ ー ス ト リ ア の 各 地 域 に よ っ て 受 け 止 め 方 が 異 な. る で あ ろ う'7。ま た メ デ ィ ア 各 社 が こ の オ ー ス ト リ ア 語 法 の 問 題 を 非 本 質 的 な も の と 判 断 し,付 帯 事 項 に 含 ま れ る23語 の 語 彙 を 実 際 に は 希 で 特 異 な も の の よ う に 思 わ せ,表 道 し た こ と も,問. 面 的 に興 味 本 位 に報. 題 の 重 要 性 を 見 過 ご す 要 因 に な っ た か も しれ な い 。 例 え ば,次. の よ う な大 見 出. しが 新 聞 や 雑 誌 な ど に見 られ る。 .TopfeniiberlebtdieEU"「Topfen(凝 「TopfenはTopfenの. 乳)EUに. き の び る 」,。TopfenbleibtTopfen:`. ま ま」,。Marillesiegt"「Marille(杏)勝. vorderQuarktasche"「Quarktasche(凝 gegenEisbein"「Eisbein(ア Quarkhier"「. 生. 乳 入 り パ イ)に. イ ス バ イ ン)に. こ ち ら はQuark(凝. 利 」,。DieAngstdes6sterreichers. 乳)拒. オ ー ス ト リ ア 人 不 安 」,。EU:Stelze. 対 し てStelze(ア. イ ス バ イ ン)もEU採. 否 」18. ま た 多 くの オ ー ス ト リ ア 人 は 彼 ら 独 自 の ドイ ツ 語 をDialekt(方 か で あ る 。 そ の こ と が,オ に 限 定 し,国. 択 」,。Kein. ー ス ト リ ア がEU加. 盟 の 折 衝 で,先. 民 的 辞 書 で あ るOsterrelchischesWorterbuch(OWB)を. 言)と. み な して い る こ と も確. に 示 し た23語 の 食 料 品 用 語 リ ス ト 全 面 に 出 さ ず,そ. れ をEU. で 定着 させ る努 力 を怠 っ た 要 因 の 一 つ と言 え る で あ ろ う。. 皿. 現 代 の オ ー ス トリア に とっ て今 後 必 要 な言 語 政 策上 の 問題 点 とは い か な る もの で あ ろ うか 。 具 体 的 に は,次. のR。Muhrの. 調 査 が 参 考 に な ろ う 。Muhrは2003年. に 「オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 に. つ い て の ア ン ケ ー ト を 言 語 研 究 の 専 門 家 達 に 行 っ て い る19。そ の 結 果,オ の. ー ス トリア 人 に とっ て. 「オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 が ど の よ う な 位 置 に あ る の か が 明 確 に な っ て き た 。 そ れ ら は 以 下 の. 6点 に ま と め ら れ る で あ ろ う 。 1)ま. ず 初 め に オ ー ス ト リ ア 民 衆 の 意 識 存 在 で は 「オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」(6dt:. 一29一.
(8) 近畿 大 学 語学 教 育 部 紀 要5巻2号(2005・12) 6sterreichischesDeutsch)の. 定 着 は わ ず か で あ り,「 オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 と い う 明 確 な 言 語. 意 識 が 不 足 して い る 点 が 指 摘 さ れ る 。 2)一. 般 的 に オ ー ス トリ ア の 大 衆 は,発. 音 形 式 が 標 準 発 音 に 近 い と い う 点 か ら,テ. て い る 言 語 や 映 画 な ど の シ ン ク ロ 言 語 を,広 い る 。 そ れ に 対 し て,オ. レビ で話 さ れ. い 意 味 で の 標 準 語(Standardsprache)と. 見 な して. ー ス ト リ ア 内 の ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン は む し ろ 口 語 的 で 地 域 的 な 特 徴(方. 言)で. あ る と見 な して い る。. 3)信. 頼 で き る 辞 書 類 の 不 足 も そ の 要 因 の 一 つ で あ る 。OsterrelchischesWorterbuch(OWB). の 現 代 版 は 掲 載 語 彙 数 が 増 加 し て い る が,依 に 学 校 や 役 所 で 利 用 さ れ て い る が,一. 然 と してDvdenに. は遠 く及 ぼ な い 。 この 辞 典 は主. 般 的 に 使 用 され る辞 書 にな っ て い な い の が 現 状 で あ る。. 4)Ddt(DeutschlandischesDeutsch:ド. イ ツ 連 邦 共 和 国 の ド イ ツ 語)と. 大 き い 。 ド イ ツ で 作 成 出 版 さ れ て い る ヒ ヤ リ ン グ 用CD・ メ デ ィ ア に よ る ド イ ツ の 歌 手 やDJを. の 言 語 接 触 に よ る影 響 が. カ セ ッ トテ ー プ と 子 供 向 け 書 物,放. 送. 通 して の 影 響 。 ま た ア メ リ カ 映 画 の シ ン ク ロ 化 に よ る 言 語. 的 影 響 も大 き い 。 5)総. 合 大 学,教. 育 大 学 で の 教 師 養 成 学 習 計 画 に,「 オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 が 定 着 し て い な い 。. 6)オ. ー ス ト リ ア の 言 語 コ ー パ ス の 欠 如,「 オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 の コ ー パ ス 化 が ま だ 十 分 に. 進 め られ て い な い。. 1),2)に. 関 し て は,各. 種 世 論 調 査 な ど の 調 査 結 果 と も一 致 す る 。 例 え ば,オ. は,「 オ ー ス ト リ ア 入 は 一 つ のNationを (1993年. の 調 査 で す で に92%を. Osterreichisch"と. ー ス トリア 人 に. 形 成 して い る」 とい う意 識 が 徐 々 に 増 加 しつ つ あ る. 超 え て い る)一. 方 で,「 オ ー ス ト リ ア 人 は 自 分 の 母 語 を. 考 え て い る 」 と判 断 し て い る 者 の 数 は 少 な い(1991年. の 調 査 で は11.9%に. と. ど ま っ て い る)2° 。 3)に. 関 し て,OsterrelchischesWorterbuch(OWB)の. て い な い が,一 Dcrden等. 立場 と現 状 に つ い て は評 価 が 定 ま っ. 般 的 に こ の 辞 書 の 存 在 に つ い て は 肯 定 的 で あ る 。 そ の 質 と 規 模 に 対 す る 評 価 が,. と比 較 さ れ 批 判 を 受 け て い た が,最. 語 と な っ て い る 。Rechtschreibdvdenは. 近 二 版 の 辞 書 登 録 数 は 大 幅 に 増 加 し,現. 約13万. 語 で あ る が,そ. こ に は 多 くの 固 有 名 詞 が 含 まれ. て い る こ と を 顧 慮 す れ ば,OsterreichischesWorterbuch(OWB)はDvdenと 遜 色 が な く な り つ つ あ る 。OWBの. 出 版 元 で あ るBundesverlag(6BV)が. 役 所 や 学 校 と い う公 的 な 場 所 だ け で な く,今. 在 約8万. 比 較 して 量 的 に は 民 営 化 さ れ た こ と も,. 後 一般 社 会 の職 場 や家 庭 へ の利 用 拡 大 が期 待 され る. で あ ろ う2'。. 一30一.
(9) 「オ ー ス トリア ドイ ツ語 」 と言 語 政 策 4)に. 関 して は,特. の 受 信 や,ド. に 放 送 メ デ ィ ア に よ るDdtか. ら の 影 響 が 大 き い 。 ドイ ツ と の 国 境 近 隣 地 域 で. イ ツ か ら の 衛 星 放 送 に 関 して は 無 防 備 で あ る の が 現 実 で あ る 。 しか し オ ー ス ト リ ァ. 内 の 放 送 局 か ら 発 す る 場 合 は,ド. イ ツ 放 送 メ デ ィ ア に よ る フ ィ ル ム を 直 接 放 送 す る 前 に,「 オ ー. ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 に シ ン ク ロ さ せ る か,ア. メ リ カ 映 画 な ど 他 言 語 の フ ィ ル ム で は,音. 声 はオ リ. ジ ナ ル の 言 語 で,「 オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 に よ る 字 幕 付 き で 上 映 す る こ と が 必 要 に な ろ う 。 オ ー ス ト リ ア に は,ラ. ジ オ ・テ レ ビ 放 送 に 関 す る い わ ゆ る 「ク オ ー タ ー 制 」 は ま だ 設 け ら れ て い. な い が,フ. ラ ン ス(音. 楽 ・テ レ ビ 報 道 の40%は. が 必 要)や. ス ウ ェ ー デ ン(25%が. フ ラ ン ス で,20%はEU内. で 制 作 され て い る こ と. ス ウ ェ ー デ ン 国 内 で 制 作 さ れ て い る こ と が 必 要)に. 於 けるよう. な 法 規 制 が 必 要 と な る か も しれ な い 。 ま た 子 供 向 け に 販 売 さ れ て い る童 話 な ど の ヒ ヤ リ ン グ CD・. テ ー プ 類 も 「オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 に よ る 録 音 制 作 が 必 要 で あ る 。 子 供 達 の 言 語 知 識 と. 言 語 使 用 にDdtが. 大 きな影 響 を与 え て い る か らで あ る。. 5)に. 関 し て は,早. 急 に 改 善 策 を 設 け る 必 要 が あ る 。 今 日 オ ー ス ト リ ア の 学 校(小. 校)で. 教 鞭 を と っ て い る 教 師 の 多 く は,い. ・中 ・高 等 学. わ ゆ る 「複 ・中 心 言 語 把 握 」 で は な く 「単 ・中 心 言 語. 把 握 」 の 下 で 教 育 さ れ,「 オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 や 言 語 理 論 の 新 し い 発 展 に つ い て 十 分 な 知 識 を 持 っ て い な い 。 特 に 国 民 学 校(小. 学 校)入. 学 生 を 担 当 し て い る 教 師 に は,早. ア ド イ ツ 語 」 に つ い て の 知 識 を 伝 え る セ ミナ ー を 開 く必 要 が あ ろ う 。Ddtが. 急 に 「オ ー ス ト リ 標 準 的 な 表 現 で,. 「オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 を 地 方 的 な 方 言 と み な す 傾 向 が ま す ま す 若 い 世 代 に 浸 透 す る 可 能 性 が 高 い か らで あ る 。 6)に. 関 し て 補 足 す る と,1989年. 以 降 の 東 側 解 放 と 共 に,外. 出 」 が 突 然 重 要 事 項 と な っ た 。 即 ち,ヨ. 国文化 政策 の中で. 「ド イ ツ 語 の 輸. ー ロ ッパ に お け る 新 し い 地 政 学 上 の 変 化 に よ っ て 中 ・東. 欧 へ の オ ー ス ト リ ア 文 化 ・言 語 政 策 活 動 が 強 化 さ れ る こ と に な っ た の で あ る 。 外 国 語 と し て の ド イ ッ 語 を 強 化 し確 立 さ せ る た め に,具 て の ド イ ツ 語 」講 座 の 設 置,② ト リ ア 協 会 」の 設 置,と. 体 的 に は ① ウ ィー ン大 学 と グ ラ ー ツ 大 学 で の. 「外 国 語 と し. 外 国 で の 「オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」講 座 普 及 を 目 標 と す る 「オ ー ス. い う 二 つ の 処 置 が と ら れ,さ. EuropaischesFremdsprachenzentrum"(ヨ. ら に1994年. に は ヨ ー ロ ッパ 議 会 の. ー ロ ッパ 外 国 語 セ ン タ ー)が. グ ラ ー ツ に 設 立 さ れ,. 「外 国 語 と し て の ド イ ツ 語 」 の た め の オ ー ス ト リ ア 独 自 の 言 語 検 定 制 度 も 構 築 さ れ た 。 そ し て こ の よ う な 言 語 政 策 の 基 礎 的 な 作 業 と し て,「 オ ー ス ト リ ア ドイ ツ 語 」 の 迅 速 な コ ー パ ス 化 が 不 可 欠 に な っ て き て い る 。 こ の 数 年 の ド イ ツ 語 正 書 法 改 革 の 動 き も,「 オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 」 の コ ー パ ス 化 を 促 進 させ る 大 き な 要 因 の 一 つ と な っ て い る こ と は 確 か で あ る22。. 一31一.
(10) 近 畿 大 学語 学 教 育 部 紀 要5巻2号(2005・12). 「オ ー ス ト リア ドイ ツ語 」 の 名 称 と定 義,ま. たそ の特徴等 につ いて はすで に言 及 してい るの. で23,本 稿 で は1章 で オー ス トリア の 言 語 政 策 史 を概 略 し,n章. で はEU加. 盟 で 問題 と な っ た い. わ ゆ る議 定 書 第10条 項 をめ ぐる オ ー ス トリ ァ政 府 の言 語 政 策 を概 説 し,皿 章 で は オ ー ス トリア の 今 後 の 言 語 政 策 に と って 必 要 な問 題 点 を若 干 指 摘 した。 オ ラ ンダ,ス ウ ェ ー デ ン,ド イ ツ な どに 比 べ る と,オ ー ス トリ ァの 言 語 政 策 は一 貫 性 が な い と言 われ て い るが,地 勢 的 に は 中欧 に位 置 し, 特 に東 南 地 域 で 多 様 な異 民 族 ・異 文 化 と国 境 を接 し,オ ース トリア ・ハ ン ガ リー君 主 制 以 来 伝 統 的 に多 民 族 との 共 生 が 国 家 成 立 に は不 可 欠 な オー ス トリ ア に と って,言 語 政 策 上 柔 軟 な方 針 を取 ら ざ る を得 ない よ うで あ る。 オー ス トリ ア に は国 境 を接 す る隣 国 の 異 民 族 とそ の言 語 使 用 を め ぐ る 問 題 が あ る 一 方 で,「 ドイ ツ連 邦 共 和 国 の ドイ ツ 語(Ddt)」. と 「オ ー ス トリ ア ドイ ツ語(6. dt)」 を め ぐる 問題 が あ る。 前 者 は 国境 を 接 す る異 民 族 ・異 文 化 問 に生 ず る 従 来 か ら存 在 す る課 題 で あ るが,後 者 は今 ま で 同 一 言 語 内 の ヴ ァ リエ ー シ ョ ン と して 扱 わ れ て きた が,EU加 機 に新 た に提 起 され た 課 題 で もあ る。 現在 の オー ス トリア は,皿1章 で 指 摘 したMuhrの ト結 果 に も見 られ る よ うに,そ の 言 語 政 策 上 の力 点 を 後 者 に お きつ つ あ る。EU拡 EU加. 盟 を契 ア ン ケー. 大 に比 例 して. 盟 各 国 の ア イ デ ンテ ィテ ィ ー に対 す る 意 識 が 高 ま りつ つ あ る が,オ ー ス トリア で はEU議. 定 書 第10条 項 と 「オー ス トリア ドイ ツ語 」 をめ ぐる 問題 が,そ の 象 徴 と い え る で あ ろ う。EU議 定 書 第10条 項 と 「オ ー ス トリア ドイ ツ語 」 に つ い て の 詳 論 は,資 料 の 整備 を待 って 稿 を改 め て 論 じる必 要 が あ ろ う。. 注 ユ. STOURZH,Gerald(1990)=VomReichzurRepublik.StudienzumOsterreichbewuJ3tseinim20. Jahrhundert.Wien.Vgl.Abs2.. 2. POLLAK,Wolfgang(1994a):QsterreichandEuropa.SprachkulturelleandnationalsIdentitat. Wien.S.21.. 3. SUPPAN,Arnold(1983):DieosterreichischenVolksgruppen.TendenzenihrergesellschaftlichenEntwicklungim20.Jahrhundert.Wien.5.18.. 4. MORITSCH,Andreas/BAUMGARTNER,Gerhard(1993):DernationaleDifferenzierungsprozel3 inSiidkarntenandimsiidlichenBurgenland1$50‐1940.In:HOLZER,Wolfgang/MAZER,Rainer (Hrsg.)(ユ993):Trendwende?SpracheandEthnizitatimBurgenland.Wien.S.109.. 5. BAUIVIGARTNER,Gerhard(1995):6xCOsterreich.GeschichteandaktuelleSituationder Volksgruppen.Klagenfurt/Celovec.S.149ff.. 一32一.
(11) 「オー ス トリ ア ドイ ツ語 」 と言 語 政 策 ρ0. POLLAK.W.(1994a):a.a.0.S.23.. 7. Ibid.,S.22. 0◎. し か しEU加. 盟 国 が 徐 々 に 拡 大 し そ の 公 用 語 も 増 加 す る に つ れ て,国. る 作 業 語(Arbeitssprache)は,英 リ ア 語,ポ. 語,フ. ラ ン ス 語,ド. 際 機 関で の実 際 に運 用 され. イ ツ 語 が 中 心 と な り,ス. ペ イ ン 語,イ. タ. ー ラ ン ド 語 が 一 部 の 機 関 で 作 業 語 と し て 認 め ら れ つ つ あ る 。Vgl.AMMON,Ulrich. (2002):DeutschunterDruckvonEnglischinWissenschaftandPolitik,S.149ff.In:HOBERG, Rudolf(Hrsg.)(2002):Deutsch‐Englisch‐Europaisch,ImpulsefureineneueSprachpolitik, ThemaDeutsch,Band3,Mannheim,Leipzig,Wien,Zurich.. 9 10. CHRIST,Herbert(1980):FremdsprachenunterrichtandSprachenpolitik.Stuttgart.S.74. DECHILLIA,Rudolf(1995):ErdapfelsalatbleibtErdapfelsalat,OsterreichischesDeutschand EU-Beitritt.S.130.In:MUHR,Rudolf,SCHRODT,Richard,WIESINGER,Peter(Hrsg.)(1995) OsterreichischesDeutsch,Linguistische,SozialpsychologischeandsprachpolitischeAspekte einernationalenVariantedesDeutschen.Wien.. 11. Ibid.,S.130.. 12. Ibid.,S.124.. 13. KLINGER,Markus(1993)UberMarillenmarmelade,Erdapfel,SahneandFrikadellern.In Economy‐Fachmagazin3.S.53ff.. 14. POLLAK,Wolfgang(1994b):IdentitatdurchGrammelschmalz.In:DerStandardv.28.4.94.. 15. POLLAK,W.(1994a):a.a.0.,S.156.. 16. Ibid.,5.156f.. 17. 例 え ば,ケ. ル ン テ ン 州 首 相JorgHaider等. 打 ち 出 し,オ. は ドイ ツ系 以 外 の 言 語 少 数 派 に対 す る 同 化 政 策 を全 面 に. ー ス ト リ ア 人 の ナ シ ョ ナ ル ・ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー 強 化 策 を と っ て い る 。. 18. DECHILLIA,R.(1995):a.a.O.,S.128.. 19. MUHR,Rudolf(2003):ErdapfelsalatbleibtErdapfelsalat?DasOsterreichischeDeutsch‐seine sprachenpolitischeSituation.S.196-225.In:BUSCH,B./DECHILLIA,R.(Hrsg.)(2003).. 20. WIESINGER,Peter(2000):NationandSpracheinOsterreich.S.59ff.In:GARDT,Andreas (Hrsg.):NationandSprache.DieDiskussionihresVerhaltnissesinGeschichteandGegenwart. Berlin/NewYork.. 21. 6WBに. 22. 1990年. つ い て は,拙. 論. 「オ ー ス ト リ ア の 正 書 法 辞 典 一 特 にOsterreichischesW6rterbuchに. て」近 畿大 学語 学教 育部 紀要. (BertelsmannとDuden)に. つ い て」 近 畿 大 学 教 養 部 紀 要. を 参 照 。 尚 ,こ. &Co.KG,Wienで 拙 論. 第1号2001年12月,99∼111頁. を参照 。. 代 後 半 か ら 始 ま っ た ド イ ツ 語 正 書 法 改 革 に つ い て は,拙. ∼45頁. 23. 第1巻. 第30巻. 論. 「ド イ ツ 語 新 正 書 法 辞 典. 第1・2号,1998年12月,35. こ で い う 最 新 版 と は,OWB,39.Auflage2001,0bvethptVerlagsgmbH. ある。. 「『オ ー ス ト リ ア ド イ ツ 語 』 を め ぐ っ て 」 近 畿 大 学 語 学 教 育 部 紀 要. 月,1∼10頁. 。. 一33一. つ い. 第2巻. 第1号2002年11.
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