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銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反 : 米国法を中心として

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(1)   L銀行聯役璽籠繁し塑法規の甑.                    PHAM VIET DUC  目 次 はじめに. 一 銀行取締役の注意義務と健全性規制との現行法 二 当局の観点 三 学説  (1)反対説.  ②賛成説 四 判例  (1)ムサッチョの事件  (2)ヘスの事件.  (3)ハイザーマンの事件  (4)ディーンの事件  (5)アッシェル事件.  (6)グラッドストーンの事件  (7)シューハマンの事件. 五判例の検討 おわり      一.                                275.

(2) 横i兵巨i継経済法学第17巻第2号(200S年12月). はじめに  銀行1)の業務の運営についての自主的な努力を尊重する(銀行法1条2項). からt銀行は株式会社であり摘法5条)、私企業として経営されている。銀 行経営者である取締役として利潤を上げることは株主等から取締役に対してな される至上命令であll ,その結果,損失が生じてもそれは当該銀行の取締役の. 自己責任である。一般企業が生産の向上に努めるのと同様に銀行が競争を通じ て能率の向上を図るのは当然のことである。この自主性は,銀行の取締役と一 般株式会社の取締役との共通点である。.  但し,銀行は,信用維持,金融の円滑及び預金者等の保護として高度の公共. 性を有している(銀行法1条1項)から,銀行経営は安全性・健全性を求めら れる。Lたがって,銀行の経営は,一般企業の経営と異なっている。すなわち,. El本の経済社会では,経済主体を担う者として各企業は,一般法律の規制に基 づいて.自由に競争を行い競争の成果を自らのものとするが銀行は,一般法規 でなく,さらに安全性・健全性を確保する銀行の法規に基づき経営を行う。換 言すれば,銀行の自主性は,一般企業経営の自主性より狭いである。.  1990年代の日本では,不良債権問題の深核化を映じて銀行の経営が破綻す る例が多数生じた。これと共に,銀行経営者の責任追及が急増していた。こう した状況によll ,銀行取締役の注意義務・責任に注目した研究の傾向がある!)。. このような研究の中に,一般企業より銀行は自主性が狭くなっている状態に鑑 み,安全性・健全性を確保する銀行の法規に違反した場合,銀行取締役の注意 義務に組み入れるか,さらにどのように組み入れるかを取上げている問題であ る㌔.  1990年代日本の銀行経営破綻は,1980年代米国でも同様の現象が生じてい る。アメリカでは,日本より一足早く銀行の破綻が相次ぎ.最初は整理信託公 社が訴訟を起こし,さらにそれを引き継いだ連邦預金保険公社等が旧経営陣に 対し,銀行’貯蓄貸付組合の融資に対する破綻の責任追及の訴えを提起し,多 276.

(3)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反. 数の判決が出ている(その中で,安全性・健金性を確保する銀行の関与法律に 違反した取締役の責任追及の幾つかの訴えを含める。)。そして,日本の銀行取. 締役の注意義務・責任を考察する際に,米国法を参考・比較するのが現存の研 究の中の一つの傾向がある・1}。.  銀行破綻を防ぐために,銀行の健全性・安全性(safety and soundness)規制(略. 称「健全性規制」)を盛んに制定・公布・発行されている。この健全性規制は,. 銀行の業務を規定しているから,上述の銀行取締役の自主性を制限している。 即ち,健全性規制は,銀行・株主の利益を最大化する銀行取締役の注意義務に 多少の影響を及ほすと考えられる。従って,健全性規制と銀行取締役の注意義 務との交錯研究は非常に注目されている。しかし,日米比較の従来研究は,米 国銀行法の大口信用供与規制違反の事例しかに言及しなぐS),その以外の検討 は殆どないものと思う。そのため,米国の金融監督機関c,) (略称「当局」)のす. べての健全性規制7)に違反した銀行取締役の注意義務についてどのように考え るかという問題こそが,本稿での命題であると考えられる。.  以下,次の順序で,米国の1980年代銀行破綻の背景に鑑み,当局の健全性 規制の違反と銀行取締役の注意義務・責任の交錯について考察を進める。まず,. 一では,銀行取締役に閤連して米国の連邦法令・規制,そして二では,銀行取 締役の責任追及に対する当局の観点を紹介する。三では,米国の学説,そして. 四では米国の判例を紹介する。そこで,一,二,三及び四に基づいて,五では米. 国の判例について検討する。最後に,終わりでは,本稿の結果をまとめる。. 一 銀行取締役の注意義務と健全性規制との現行法  国法銀行法は93条a項叫まで故意の違反を責任の対象とすることを明らかにし た上で,国法銀行の取締役が国法銀行法El)に違反した場合,違反行為を実行した. り,それに同意した全ての取締役が,銀行,株主及び第三者がその違反に関係し て被った全ての損害について,有責とされることを規定している。即ち、取締役.                                  277.

(4)  横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). の責任が認められる際に重要な点は,故意による違反であることと,違反の結果’ によって,損害の発生したことである。又,連邦準備金法の503条le)は,国法銀行. 法の93条と同様に,故意で連邦準備金法の規制11)に違反した銀行取締役は損害 賠償責任を課すことを規定する。  さらに,金融機関改革復興執行法のユ821条k項1:)は,「預金取扱銀行の取締役・. 役員は,預金保、険公社の全部,または一部の利益を害する行為に対して提起さ. れ、連邦預金保険公社により,または連邦預金保険公社を代表し,あるいは連 邦預金保険公社の要請,指示による民事訴訟において,適用される州法のもと で定義され,決定される,重過失,その他の同様の行為,または,故意の不法 行為を含む注意義務を重過失以上に棚怠する行為に対して,個人的金銭賠償責 任を負う。本項は,連邦預金保険公社が他の適用される法の下で有する権利を 損なったり,変更するものではない。」と規定している。即ち,同条は,連邦 預金保険加入の経営破たんした金融機関に対する連邦預金保険公社の責任追及 に閤して,銀行の取締役の注意義務を規定している。.  また,当局は,制定法に定められる職権に基づき,預金保険加入銀行のため の不健全な業務(unsafe and unseund practice)を排除する内部統制,内部会. 計監査のシステム,情報流れのシステム,貸付の書類手続,貸付の評価,資産・. 負債及び利息のリス久資産質及び増資,利潤や株式評価,報酬等を抱く健全 な業務の基準をレギュレーションやガイドラインで規定する13)eそれに加えて,. 制定法は,列挙された健全な業務の基準以外にも,必要に応じてその他の健全 な業務の基準を自ら追加し得ると認めているlq)。従って,当局は,現在,安全 性・健全性についての内部統制のガイドラインIE}t資産リスクに応じる自己資 本比率の幾つかのガイドライン1fi),地域上の融資額の限度m,インサイダー融 資の制限のレギュレーション1・)、商業不動産担保融資のガイドラインIv},不動 産鑑定評価のレギュレーション2D),.銀行上の信用状のレギェレーション21),関. 連企業上の取引制限のガイドライン鋤や資産の重要な変化の制阻のレギュレー ションX3)を規定している。 278.

(5)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の遊反.  また,上述のレギュレーションやガイドラインに違反した場合,当局は,銀 行やそれらの取締役に行政制裁を適用し得る。どんな行政制裁がされるか,ま た,一つあるいは複数の行政制裁を受けるかは,当局の裁量権である。このよ うな行政制裁は,早期是正措置U),終了・停止命令US)、解任職務停止,業務参 画禁止命令2G)及び民事上の罰金聞等が有る。. 二 当局の観点  1992年,連邦預金保険公社と貯蓄金融機関監督局は,取締役・役員の信認 義務についてステイトメントを発表し,銀行の健全な業務に対する当局の捉え 方は,健全性規制や注意義務をそれぞれ取込むような扱いをしている。ステイ トメントは,取締役の注意義務は,金融機関の業務の遂行にあたり,誠実な企. 業人として行為することを要求する。このことは,取締役が完全な経営を選択 し,監視し,評価することを求める。経営戦略と政策を確立すること,経営の 推進を監視し,評価すること,法 レギュレーション,及び,安全性・健全性 を満たす政策と手続の遵守を監視し,確立することT十分な情報に基づき,意 義のある討議の基礎に立った経営決定の責任があるとしている26}o即ち,健全. 性規制の遵守が取締役の注意義務の一部であるのは当局の観点である。さらに この観点を実現するためには,当局は,以下の四で述べるようにT法律上当然 の過失法理の適用を通じて銀行取締役の責任を追及している。. 三 学説 健全性規制が銀行取締役の注意義務の内容として含まれるか否かについて は,米国の学説が分かれている。. 279.

(6) 横i兵i司捲経済法学第17巻第2号(2008年12月).  (1)反対説  反対学者は,次のような根拠に依拠している。第一,裁判所のコモン・ロー と議会の制定法との原理は異なることである。即ち,コモン・ローの注意義務 の過失原理は.エクイティ原則に基づいて裁判所によって解釈・変更・適用さ れる。これに対して,健全性規制の一部たる法令は,議会によって制定される から,裁判所がその法令を解釈・変更・適用する権能を持ってない:”J)。第二,. 健全性・安全性の銀行法規は,注意義務とは性質が異なる。即ち,前者は取締. 役の違反行為の潜在性を防ぐ目的で公布・発行されるがT後者は,事後的に実 ’際の損害をかけた取締役の違反行為に対処することであ3°) 。第三,立法的な立. 場から見ると,健全性・安全性の銀行法規を注意義務に取入れる明確な証拠が ない:冊。第四,法律上当然の過失の法理は,州法のコモン・ローに構成されて. いるが,当局に訴訟されている違反法規は連邦法規であるから,連邦法が州法 に相反する恐れがある32)。第五,法律上当然の過失を適用する条件については,. 健全性規制が,同法規違反によってかけられた当局である原告の損害から保護 することを証明しにくい:SCS)。第六,安全性規制の違反の判例から発展されてい. る法律上当然の過失が,高度に規制された金融機関の特徴をさらに考慮するど 取締役に対して著しく不合理的な責任を課すると考える31]e.  (2}賛成説                      ’  健全性・安全性の銀行法規を注意義務に取入れることに賛成する学者は,次. の理由に依拠しているdi第一,1980年代の金融破綻以降,健全性・安全性を 法典化した法規の規範の起源は,発展されてきたコモン・ローの注意義務の規 範である。このような明確的な事実は,議会及び連邦金融監督機関が同じ規範 を法典化するのを妨げなかったことを示唆した1ハ㌔第二,この注意義務を法典. 化することは,従来のコモン・ローの注意義務より優れている明白な利点があ る。つまり,コモン・ロー上の金融機関取締役の注意義務について従来の歴史 的な不統一の性質を是正し得る。さらに,当局がr株主および預金者に代わっ、 2SO.

(7) 銀行取締役の注悲義務と銀行法規の遠反. て取締役に責任を追及する権限を強化する:IG)。第三,連邦当局の法規は,裁判. 所が従来把握したかった銀行の専門的な知識に関連して注意の基準を明確にす る。さらに,多数の裁判所は,州のコモン・ローの注意義務の判断基準に依ナ処. していると表面上は言っているが実際には連邦当局が発行している規制を根 拠に注意義務の違反と判断している。それは,当局が提供している専門的な知. 識に対しての裁判の遵守の主流を表している判. 四 判例  (1)ムサッチョの事件:「s).  【事実概要】                       1  ムサッチョ(被告)は,コロンバス貯蓄貸付組合(略称「コロンバス」)の. 発起人及び支配株主であり,1985年末までコロンバスの社長として勤務して. いた。コロンバスの皐情を検査した連邦住宅貸付銀行理事会は,1984年6月 ]2日,監督アグリメント(sllpervisory agreement)をコロンバスと締結した。. 監督契約によると.連邦貯蓄貸付保険会社は,コロンバスの業務をどのように 行うかを調整する権限を持ち,コロンバスの恒常的運営に介入している。同理. 事会は,1989年3月8日,コロンバスの債務超過の事情を宣言.連邦貯蓄貸 付保険会社を財産管財人に指名した。.  連邦貯蓄貸付保険公社たる原告は,被告に対して、重過失,信認義務違反等 を理由として.カリフオルニア地裁で損害賠償請求の訴訟を提起した。とりわ. け,原告はT被告が1984年6月12日監督1契約に違反したi理由として.被告が 法律上当然の過失に該当,被告の損害賠償責任を追及した。被告は,これに対. し,1984年6月12日監督契約の違反がコロンバスの財産管i理人として連邦貯 蓄貸付保険会社に私的訴訟権利を与えていないと主張し.法律上当然の過失に ついての原告請求を否認することを求めた。、. 2S1.

(8)  横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月).  【カリフォルニア地裁の判旨】.  原告の全ての請求を認めた。その中で,監督法規・規制違反についての被告 の責任を課すことを次の通りで認容した39)。.  「被告は,関連法規・規制が意図に保護する特定の人々に属していないから,. 法律上当然の過失の法理は本件において適用しないと主張した。.  連邦証拠規則§302は.法律上当然の過失に関する推定適用が州法によって 決められていると定めた。本件訴訟はカリフォルニァ州で提起したから,カリ. フォルニア州の証拠法§669(a)を検討する必要がある。カリフォルニア州の 証拠法§669(a)は,次のように定めている。『(a)次の要素を充たすと,相当. の注意を払わない人の欠如を推定される。①その人は公的主体(public)が公 布している法規(statUte),条例(ordinance)又は規制(regulation)に違反した。. ②上記の違反は,人身あるいは財産についての損書の近因になっている。③法. 規条例又は規制は,被った損害を防ぐために企画されているe④人身あるい は財産についての権利侵害を受けた人は,法規,条例あるいは規制が保護する 特定の人々に属する。』.  本件の被告は,上記のカリフ才ルニア州の証拠法§669(a)が定めている要. 素の④のみを争っていたeこの争点を一般的に考慮した際に,第9巡回裁判所 は,『特定の人々の利益よりはむしろ州の利益あるいは一般社会の利益を保護 ’すると意図される法規の違反は法律上当然の過失になるわけではない4・)』と述. べている。従って,本件の争点は,被告が違反した法規・規制が銀行の利益を 保誰すると意図されるか,一般社会の利益を保護するかという問題を縮小した。  連邦法によって黙示の私的訴訟原因(implied private cause ef action)が生ま れるか否かを確定するために,コート判決‘::)に言及したカポジ判決は・tz),『米. 国連邦議会は,確かに,挙げられた規制を公布したことによって貯蓄貸付組合 を保誰することを意図している。しかしt同時に,社会全般の利益を保護する と議会が意図したことと理解も出来る。即ち,本件規制の立法経緯は,上記の 二つの解釈を支持すると解釈し得る。』と言い渡した。本件の争点についてそ 282.

(9) 銀行取締’役の注意義務と銀行法規の違反. の相反感情(ambivalent remark)を提出したことは別としてtいずれの原告・. 被告は,カリフォルニア州法の法律上当然の過失に関する推定を判断するため に,本件の争点を議論したいずれの役立つ先例を提出しなかった。  そこで,同カポジ判決刷は,住宅所有者貸付法の立法経緯を検討するために,. 同法に関する議会の上院の報告から次のように引用した。『議会が連邦貯蓄貸 付保険会社に是正措置権限を与えたのは…法規及び規制の違反行為を防止する ためである。なぜなれば,こうした違反は、米国の経済発展・成長に関する有 害な結果に至るまでの米国の金融機閲に悪影響を及ぼし得るからである。』引 用した議会の報告は,次の二つの解釈を示唆している。第一解釈は,同法がコ ロンバスほどの金融機関の利益を守る。第二解釈は、同法が一般の福祉(general. welfare)のための法律であるから,住宅所有者貸付法の違反にカリフォルニア 州法の定めている法律上当然の過失の推定を適用できない。.  上記の相反感情に鑑み,法律上当然の過失の推定適用を認めるか否かについ ては裁判所の裁量に属するようだe本裁判所は,法律上当然の過失の推定適用 を認容することを決めた。カリフォルニア州法の下では,法律上当然の過失の 推定は命令的でなく任意的である。従って,被告が自由にそれを反駁する立場 を,かつ事実認定者も自由にそれを否定する立場をみとめる。本件事|青に鑑み,. 慎重の注意を期待される行為の標準として連邦の法規とレギュレーショジを採 用することを認めるのは適正であろう。したがって,法律上当然の過失の推定 に基づき原告の訴訟を却下すべしという被告の申立てを認められない。」.  (2)ヘスの事件44).  【事実概要1.  ユタ州のソルトレークシティーに本店のあるアメリカン貯蓄貸付組合(略称 「アメリカン」)は.ユタ州法の貯蓄貸付組合であったが,1987年以降国法貯. 蓄貸付組合に改めた。連邦住宅貸付銀行は,1989年2月17日,アメリカンの 債務超過を宣言し,連邦貯蓄貸付保険会社を財産管財人に指名した。連邦住宅                                  283.

(10) 横i兵1垂II漂;自…済i去学第17巻第2号(2008「Jf−12戊≡1). 貸付銀行の後任者である貯蓄金融機閏監督局は,1990年6月以降,整理信託 公社(原告)をアメリカンの破産管理人に指名した。.  原告は,つぶれたアメリカンの前取締役(被告)に対して,州法及び連邦法 に基づいて過失,信認義務の違反,法律上当然の過失を理由として,8千万米 ドルを超える損害賠償を求めた。とりわけ,原告は,被告が行政警告に一卜分に. 対応する措置を取らなかったと主張した。又,本訴訟の特徴としては,訴えら. れた被告のレギュレーションの違反行為は,アメリカンが州法組合の資格を 持っていた当時に行ったことである。.  【ユタ弛裁の判旨】.  原告の請求の一部を認容したが,法律上当然の過失を含め,請求の一部を棄 却した。棄却の理由は次のようなものである寸㌔.  「原告の法律上当然の過失の請求は,連邦コモン・ローの下で起訴した。具. 体的には,原告は,住宅所有者貸付法の12USC§ユ461の下に公布された12 CFR§563.170及び連邦住宅銀行のメモランダムR41bに被告が違反したことと 主張した。.  被告は,これに対し,12USC§1821(k〕が連邦コモン・ロー上の取締役の 責任追及を排除し,さらに,同条が連邦コモン・ロー上の取締役の責任追及を 排除していない場合にも,連邦コモン・」ローが被告に対して過失上の経営責任 の起訴権を原告に与えていないから,原告の請求は適正ではないと抗弁した。.  上述したように,本裁判所は,12USC§1821(k)が連邦コモン・ローに 優先していないと判断したから,法の問題は,連邦コモン・ローが住宅所有者 貸付法の規定違反に基づく法律上当然の過失の請求あるいは普通過失の請求を 原告に与えるか否かである。本裁判所は,その他の裁判所〔カポジ判決1:li),オ ラノ判決胡やアレクサンダー判iJe ・tB))と一致して,住宅所有者貸付法のそれ. 自体が,破綻貯蓄組合の取締役に対して,明示あるいは黙示の私的訴権(implied private right of action)を与えないという結論を達した。しかし,黙示の私的  284.

(11) 銀行取締’役の注意義務と銀行法規の迫反. 訴権が無いからといって,法律上の当然過失に関する連邦コモン・ロー訴訟に おいて注意基準を規制している当該住宅所有者貸付法律の使用を排除するもの ではない。プラチコ判決“9)及びディクスン判決se}によると,基礎上の訴訟原 因(a separate underlying cause of action)が個別的な法規又はコモン・ローに. 依拠する際には,住宅所有者貸付法)の規制から由来する私的の訴権を利用す ることと,同法の規制を注意の標準として使用することと明確に異なっている。.  次の二つの条件を満たすなら,住宅所有者貸付法の規定は,法律上当然の過 失の請求における注意基準として使用することができる。第一の条件としては,. 連邦コモン・ローのもとで経営の過失のための基礎上の訴訟原因が存在すべき である。第二条件としては,第一の条件を満たされたなら,注意基準を確立す る住宅所有者貸付法の規定が法律上当然の過失の伝統的な法理の要素を満たす べきである。.   A.連邦法組合の取締役に対して,過失があるとして連邦コモン・ロー上 の請求適用の検討・∵議会は,住宅所有者貸付法の規定において,実体法を発 展する権限を裁判所に与えることをうかがわせるような証拠は全くない。従っ て,連邦コモン・ロー一が本件で適用されるか否かは,独自の連邦利益(uniquely federal interests)が存在するかどうかという問題である。本裁判所は,本件を 判断する中で,ウォリス半1]決51)や上記のカポジ判決に基づいて,連邦の方針・. 利益と州法の利用の間に重大な相反が必ず存在する事前条件を満たすべきとい う原則を心に留める。〔例えば カポジ判決は,『いくらかの識別可能の連邦政 策あるいは利益に対して重大な危険(significant threat)を欠く場合,統一の 連邦利益はそれ自体がない52}』と述べている。〕.  また,フィデリティー判例nd’)は,連邦貯蓄貸付組合の統一規制への議会の. 重要な関心が明白に存在していると述べている。取締役の責任を支配する多 様な数々の州法を連邦組合の取締役に適用されることを容認することは,相 矛盾する注意基準を生むことになり.結果的に議会の統一制定(congressional mandate of uniformity)を求める意思と反することになる。従って.本裁判所は,.                                  285.

(12)  横浜圏際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 国法の貯蓄貸付組合に対して,取締役責任のための統一アプローチへの独自の 連邦利益(uniquely federal interests)が存在すること,そして,その場合には. 連邦コモン・ローの適用が適正であることを確定する。.  B.連邦保険預金加盟・州法組合の取締役に対して,過失があるとして連邦 コモン・ロー上の請求適用の検討:アメリカンは,本訴訟の目的に従って,連 邦預金保険加盟・州法貯蓄貸付組合として取り扱われている。何故なれば,本 訴訟で追求していた有効な行為(operative acts)は,アメリカンが以前に持っ. ていた州法の貯蓄貸付組合の資格に遡っているからである。従って,この場合 には連邦コモン・ローの適用が適正であるかどうかについて,国法組合と連邦. 預金保険加入・州法組合の区別は極めて重要なである。…国法組合について は連邦コモン・ローの適用が適正だが,連邦預金保険に加入しているかどうか に拘わらず,州法組合については連邦コモン・ローの適用が適正ではない。連 邦預金保険加入・州法免許組合は連邦規制に従わなければならない。しかし, 連邦規制は,連邦免許組合に対して包括的であるが,連邦預金保険加入・州法 免許組合に対してそうではない。.  さらに,統一性を確立するという議会の目的を州法連邦免許組合に適用する 厳しさは,同じ目的を連邦免許組合に適用する程厳しくはない。州法組合は, 州法の組織(creatures)であり,ひいては,州法組合の取締役責任に関する法. 律を支配・制定する州法の利益は連邦法の利益と比べて,より大きいとはいか ないまでも,少なくとも同じである。この事実はt取締役の責任について連邦 の利益の独自性(uniqueness)を徐々に弱らせる。そうすれば,推定されてい る独自の連邦の利益に基づく連邦上のコモン・ローが連邦預金保険加入・州法 組合に当てはまることにならない。〔例えば,上記のカポジ判決は,連邦預金 保険加入・州法免許組合に関連する訴訟において連邦上のコモン・ローを適用 する請求を拒否した。〕.  上記の理由により,本裁判所は,連邦上のコモン・ローの下で取締役の過失 たる訴訟原因を連邦預金保険加入・州法免許組合に適用することを拒否してい 28fi.

(13)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反. る。原因訴訟の欠如により法律上当然の過失の原告の請求が致命的に否定さ れるから,住宅所有者貸付法の規制が本件にて法律上当然の過失の伝統的な要 素を満たすか否かについて判断を必要としない。」.  (3)ハイザーマンの事件副  【事実概要】.  デンバーのカピトル・フェデラル貯蓄貸付組合(略称「カピトル」)は,連. 邦預金保険加入信用組織である。1990年5月4日以前,カピトルは,連邦住 宅貸付銀行理事会,その後継者である貯蓄金融機関監督局によって監督されて. いた。1990年5月4日,貯蓄金融機関監督局は,カピトルについて債務超過 を宣言,整理信託公社を財産管理入に指名した。1990年6月15日貯蓄金融機i 関監督局は,カピトルの取引問題を清算・終了させるために,整理信託公社た る原告をカピタル組合のための破産管理人に指定した。.  原告は,カピトルの破綻に結び付き不動産・商業の融資決定及び管理に関連 して,カピトルの取締役・役員たる被告が過失,’ d過失や法律上当然の過失等. があるとし,被告に対して,善管注意義務の違反に基づき,損害賠償を請求した。 特に,原告は,被告が一連の連邦銀行の規制(12CFR§545.32,§563.17−1,§. 563.41やメモランダムR41b)に違反したから,被告が法律上当然の過失に該 当すると主張した。.  これに対して,被告は,銀行取締役の善管注意義務の基準が過失でなく,重 過失であるから,被告の過失があるといって被告の善管注意義務の違反及び法 律上当然の過失がないと主張した。.  1コロラド地裁の判旨】.  原告の請求をいずれも認容した。そして,連邦銀行規制の違反に基づいて被 告の責任を課すのは次のように判断した:5}。.  「最初に,被告は,銀行取締役に要求される法律上当然の過失の注意基準が,.                                  287.

(14) 横浜国際経済法学第17巻第2一号(200S年12月). 一般注意義務の注意基準とともに,過失でなく重過失であると主張し,原告の 法律上当然の過失の訴えを棄却することを求めた。しかし,本裁判所は,以下 の通りで,被告の重過失の主張について意昧がないと考える。.  ラルゴ判決醐によると,法律上当然の過失に関与する訴訟において注意基 準は,法規,規制または条例で確定され,かつそれらの確定される注意標準の 違反は完全に過失を確証すると認められた。又は,ダンラップ判決「・7)による. と、『法律上当然の過失の訴訟を認定される以前に,訴訟人は,条例の違反が 当事者あるいは財産の損害リスクを不合理的に高めるまたは引き起こすことを. 証明すべきである。』さらに,不法行為のリステイトメント〔第2出版・1965 年〕の§286は,『裁判所は1通常人(reasonable man)に期待される注意標準 として制定法(legislative enactment)あるいは行政法上の規制(administrative. regulation)等の要求する基準を採用するかもしれない。』と述べ,かつ,同書 の§285(期待される注意標準という名称)に閲するコメント(i)は,『立法者. は,特定の人々の利益を保護するために特定の行為を禁止することによって,. それらの特定行為に関与する損害リスクが不合理的と考えられると解釈してい る』と述べているe『不合理的』という語句を利用したダンラップの判決53)及. びリステイトメントに依存したのは,法律上当然の過失について過失標準を確 定する裁判所の主流認定を示唆した。いずれにしても法律上当然の過失につい て重過失標準を利用していないと考える。.  リヨン判決副によると,法律上当然の過失に閏する原告の訴訟を提起させ るために,原告が,次の四つの要素を立証しなければならない。①取締役・役 員たる被告が法規,規制又は条例に違反した。②それらの違反が,被った損害 の近因になった。③原告は,当該法律が意図的に保謹する特定の人々に属する。 ④当該法律は,原告が被った侵害種類を防ぐように制定されている。裁判所は,. 本件において原告が上記の四つの要素を十分に立証したと認容した。.  被告は,これに対し,本件で適用された監督規制が個人の行為能力から生じ る国民の権利でなく社会全般権利(public at large)を保護とする目的とする公 288.

(15)                     銀行取締役の控意義務と銀行法規の違反. 布されているから,法律上当然の過失の訴えを却下すべきことと主張した。し かし,本件において原告が依存した12CFR§545.32,§563.17−1.§563.4ユやメ. モランダムR41bの規制は,社会全般権利の保護のみを目的として公布された のではないから,関連している被告の主張は意味がない。詳細に言えると,上 記のダンラップ判決6°}によると,個人の行為能力としての国民権利でなく社. 会全般権利のみを保護とする目的を立法した場合には,法律上当然の過失の訴. えを認められないことを確認した。しかし,アイシャム判決曲によると,連 邦預金保険公社の規制は『預金者,預金保証資金及び社会全般権利」を保障す るように』公布されたと認容された。したがって,本件の争った規制は,社会 全般利益を保護することのみを目的として公布されたものではない。.  最後に,ヘス判決働によると,法律上当然の過失は,連邦コモン・ローの 下に裁判権内にある訴訟であること,さらに,『住宅所有者貸付法の12USC§ 1416の違反に基づき法律上当然の過失を認めた畑ことを認容された。さらに, ヘス判決だけでなく,ムサッチョ判決fit)によるも,個人住宅貸付法の違反に. 基づいて連邦貯蓄貸付保険公社の法律上当然の過失の請求を認められた。ヘス 判決やムサッチョ判決に照らして,本裁判所は,本件の原告の法律上当然の過 失の訴訟は,コロラド州法の下に排斥され場合にも,連邦コモン・ローの下で 認容されたと考える。」.  (4)ディーンの事件劇  【事実概要】.  サウスウエスト貯蓄貸付組合(略称「サウスウエスト」)は,連邦預金保険 加入・アリゾナ州法の貯蓄貸付組合である。連邦貯蓄貸付保険公社,その後継 者たる整理信託公社(原告)は,サウスウエストの財産管理人として任令され た。原告は,サウスウエストの前取締役(被告)に対して,過失,重過失,法 律上当然の過失、信認義務違反及び忠実義務違反を理由として,アリゾナ地裁. で約2億千万以上アメリカドルの損害賠償の訴訟を提起した。とりわけ,原告                                  289.

(16) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). は,被告が住宅所有者貸付法の規定に違反したとして,法律上当然の過失に該 当すると主張した。被告は,これに対し,同法の違反としても原告に私的訴権 が与えられていないと抗弁し、法律上当然の過失について原告の訴えを却下す ることを求めた。.  【アリゾナ地裁の判旨】.  過失,重過失,信認義務違反及び忠実義務違反について原告の請求を認容し たが、法律上当然の過失についての原告の請求を以下の通りで否認した6G}。.  「原告は,被告が多数の規制違反を容認し,引き起こしあるいは,黙認した と主張した。具体的には,原告は,12CFR§545.32(d)、§545.36(b)(2),§ 561.29, §563.41 (b), §563.41 (c〕 (ii), §536.17−1 (c) (1) (i) ・(iii) ・(iv),. §536.ユ7−1(c)(1)(vi),’. ?T63.ユ7(b)の幾つかの規制に違反したと陳述した。.  上記の規制は,住宅貸付銀行i理事会によって住宅所有者貸付法の12USC§ 1461の下で公布され,一般的に,連邦保:険加入貯蓄貸付組合の貸付業務とそ の他の業務に関する条件及び制限を定めている。例えば,12 CFR§545.32(d)は,. 担保としての財産の市場価格の100%を超える不動産の融資を禁止したeまた, 同§563.17(b)はt取締役・役員の報酬が彼らの義務及び責任の分担に相応し く合理的に決められるべきと定めている。.  原告は,被告に対して,上記の規制違反を法律上当然の過失として追及でき ると主張した。その理由は1①規制の違反は,法令・規制が防止する損害に関 連し,かつ,②原告は,法令・規制が保護する特定の人・々に属する。.  コブ判決聞によると,アリゾナ州において,法規違反が義務違反を確証す る要件としては,原告が違反と侵害との間の近因を立証すべきである。また,. ブラニガン判決SS)によると,アリゾナ州法では,安全性に閲する規制違反が 過失のための証拠のみならず,それ自体を法律上当然の過失になると一般的に 認められることであると解釈されている。.  被告は,本件に争った住宅所有者貸付法の規定がその規定の違反について損 290.

(17)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反. 害の救済を定めていないと主張した。即ち,同法及びそれらの施行規定で損害 の救済を定めない議会の意図は,同理事会が公布した規定違反に基づいて法律 上当然の過失の請求の断言を排除した。.  これに対し,原告は,本件で争った住宅所有者貸付法の規制がそれらの規制 違反によって原告に私的訴訟原因(private cause of action)を与えるか否かを. 争っていなかった。何故なれば,こうした主張は、先例の判断に反することに なってしまうからである。例えば,カポジの判決は,i立法は,本件に関連し ている幅広い規制の保護(broad−based regulatory protection)が連邦保険加入・ 州法信用機関(federally insured, state−chartered thrift institUtion)の前取締役. に対する損害賠償を求める訴訟原因を与えるとは意図していない。こうした信. 用機関という背景においては,このような規制は、遡及性を有しないで(not retrospective),それの代わりに潜在性(forward−looking)を有しており.さら. にこのような規制は信用機関破綻後に賠償(recompense)を規定することで はなく,それの代わりに信用機関破綻を事前に防ぐ(forestalDことと認容さ. れている。またTこのような法規あるいは規制の語句からは,誰に対しても損 害を賠償するための民事的訴訟原因を設定することを推論できない叫』と判 示していた。又は,ヘス判決7°},オラノ判決71),キッドウエル判決n)及びア. レクサンダー判Vk mも,カポジ判決と同様に判断していた。.  その代わりに,原告は,本訴訟が過失違反上の請求であり,かつ.違反規制 が単なる注意基準を設定すると主張した。つまり,原告は、住宅所有者貸付法 で私的訴訟原因を確立することを目指していない。被告は,これに対し,法規 違反によって生じる黙示の私的訴訟原因と同法規違反に基づく法律上当然の過 失の請求との区別は殆ど無いと抗弁した。.  原告は,住宅所有者貸付法の違反に基因して,法律上当然の過失として被告 に責任を問うことを弁論したために,次の3つの判例に言及した。第一のウィ ルキンスン(未公開)判決74}の裁判所は,法律上当然の過失の否認請求を棄. 却したe同裁判所は.『住宅所有者貸付法及びそれらの規定の違反について過                                  291.

(18) 枇浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 失的又は故意に逸脱した取締役に責任を問うのは,、規制の仕組み及び議会の意. 図と一致している。すなわち,それは貯蓄貸付組合が適正に経営されt健全性 を持つことを求めている。』と述べている。しかし,ウィルキンスンの判決は, 本件のための分析性に欠けている。.  原告が言及した第二の未公開判決は,イーソン判決掛である。イーソン事’ 件においては,住宅所有者貸付法の違反に基づく訴訟を却下することを被告が 請求した。しかし、イーソン判決の裁判所は,被告の請求を認めなかった。そ の理由としては,原告の訴訟は『過失の請求であり,かつ,住宅所有者貸付法 の違反は銀行の取締役・役員が負う責任のための証拠と認められることである 7「,)。』イーソン裁判所は,整理信託公社(RTC)の請求が法律上当然の過失の 請求(negHgence per se claim)ではなく,過失の請求(negligence claim)で あることを支持し,かつ,法規違反の証拠(evidence of statUte violation)によっ. て過失上の訴訟(action for negligence)は成立すると言い渡した。.  原告が言及した第三の判決は,ムサッチョの判決mである。ムサッチョ事 件では,連邦貯蓄保険会社たる原告は,コロンバス貯蓄貸付の組合である支配 株主・発起人の被告が幾つかの連邦預金保険の法規・規制の違反に基づく法律 上当然の過失の責任が有ると追及した。ムサッチョの判決の被告は,これに対 し,違反した法規・規制が破綻管財人として原告を保護すると意図されるか否 かを争ったが,裁判所は,言及できる判例が存在しないことを議論した後に,. カリフォルニア州法の法律上当然の過失の推定を適用するか否かについては裁 判所が自由に認否することと判示した。同裁判所は,法律上当然の過失の推定. 適用を認容する決定を選択した。カリフォルニア州法においてはt法律上当然 の過失の推定は命令的ではなく,任意的である。従って,被告が自由にそれに 反駁する立場を,かつ事案認定者も自由にそれを否定する立場を認める。この ような状況では,ムサッチョ判決の裁判所は,F慎重の注意を期待される行為. の基準(benchmark)として連邦の法規及びそれらの規制を採用することを認 めるのは適正であろう。叫と言い渡した。 292.

(19)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反.  しかし,ムサッチョ判決は特別である。何故なれば,アリゾナ州法において は推定が任意的でな.〈 ,命令的からである。従って,アー二判iJe Ty)によると,. カリフオルニァ州法においては,規制の違反を推定できるにも拘らず,被告は,. 法律を遵守することを目指して,その状況に相当の注意を払う人として行動し たための証拠を提出する権利を有する。この意味で,ムサッチョ判決及びイー ソン判決において提起された法律上当然の過失の請求は,法的,そして実務的 の両者から見るとも普通過失の請求になっている。.  他方,一般的な連邦規制の違反.とりわけ住宅所有者貸付法の違反に基づく. 法律上当然の過失の訴えを否認した判例がある。…そして,近1時に言い渡し たヘス判決S°)の裁判所はt連邦預金保険加盟・州法貯蓄貸付組合について連 邦コモン・ローの法律上当然の過失の請求について判断した。ヘス判決の事情 が本件の事情をよく合う当事者は多いである。.  ヘス判決は、その他の判決と同様に,住宅所有者貸付法において黙示の私的 訴権が存在しないと言い渡した。しかし,ヘス判決は,黙示の私的訴権が無い からといって,法律上の当然過失に閲する連邦コモン・ロー訴訟において注意 基準を規制している当該住宅所有者貸付法律の使用を排除するものではないと 言い渡した。即ち,ヘス判決はプラチコ判決SL}及びディクスン判決劇に言及 して,『基礎上の訴権原因が個別的な法規あるいはコモン・ローに依拠する際 には,住宅所有者貸付法の規制から由来する私的訴権を利用することと,同法. の規定を注意基準として使用することとは明確に異なっている。剖と述べて いる。.  ヘス判決は,次の二つの条件を満たすなら,法律上当然の過失において住宅 所有者貸付法の規定を注意基準として認められると決定した。第一の条件とし ては,連邦コモン・ローのもとで経営上の過失のための個別的基本的訴訟原因 が存在すべきであるSO。第二条件としては,注意の標準を確証する住宅所有者. 貸付法の規制が法律上当然の過失の伝統的な法理の要素を満たすべきである B5)0.                                  293.

(20) 横浜国際経済法学第17巻li 2号(2008年12月).  ヘス判決の裁判所は、第一の条件について,連邦法貯蓄貸付組合に連邦コモ ン・U一を適用することが適正であると認めた。何故なれば,独自的連邦利益 は取締役の責任に対して統一的アプローチを要求するからである。しかし.同 裁判所は,連邦預金保険加入・州法貯蓄貸付組合に連邦コモン・ローを適用す ることが不適正であると判示したe結局,ペス判決の裁判所は,住宅所有者貸 付法の規制が法律上当然の過失の伝統的法理の要素を満たすか否かと判断しな かったus)。.  住宅所有者貸付法において定めている黙示の私的訴訟原因と同法を注意基準 として認める法律上当然の過失に差異がある根拠をヘス判決によって言及され たプラチコ判決e「)及びディクスン判決紬の両者は,職業安全衛生管理局のレ. ギュレーション違反に基づく法律上当然の過失の適用を示した。そこで,基本 的訴訟原因は,上記のプラチコ判決よって過失,かつ,上記のディクスン判決 によって厳格責任(strict liability)や過失上の意図(negligent design)と判示. された。その場合には,上記のプラチコ判決は,『職業安全衛生管理局の規制 が注意基準の内容を決めることは雇用者の責任を拡大するわけではない。法律 上当然の過失の法理は,合理的(reasonable)で非法律違反(non・tortious)の. 行為を,不合理的(unreasonable)で法律違反(tortious)の行為であると変 えてしまう力を持つものではない。むしろ.法律上当然の過失の法理は単に,. 法的規制が有れば,同規制違反の当該行為が不合理であるという反論出来ない. 証拠として働くことを認容するものである。判と述べた。…  前述のように,原告は,住宅所有者貸付法の規制が原告に黙示の私的訴訟原 因を与えるか否かを争っていなかった。結局,原告は,州法の法律上当然の過 失を主張することを通じて,アリゾナ州のコモン・ローにおいて認識されてい ない義務を被告に課すことを請求しようと企てている。しかし,本件の訴訟が 州法貯蓄貸付組合に閲連し,かつ,取締役・役員の責任が州法によって決めら れるという本件の特別事情に鑑み,原告の請求がもたらす結果は,著しく不適 正である。 294.

(21)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反.  本裁判所は,アリゾナ州法のもとで住宅所有者貸付法の規制違反が州法貯蓄 貸付組合の取締役に対する法律上当然の過失に確立しないと結論せざるを得な い。この結論の前提として,住宅所有者貸付法の規制が法律上当然の過失の伝 統的要素を満たすか否かについて検討するもはや必要としない。」.  (5)アッシェル事件{」O}.  【事実概要】.  コロラド州のスチームボート・スプリングスに本拠に置くアルプス・フェデ ラル貯蓄貸付組合(略称「アルプス」)は,連邦保険加盟貯蓄貸付組合である。. 連邦住宅貸付銀行理事会は,1989年3月8日,アルプスの債務超過を宣言しT 整理信託公社(原告)を破産管財人に指名した。原告は,アルプスの幾つかの 融資において前取締役アッシェル及びシュダインベルク(被告ら)に対して,. 過失,重過失,連邦法規・規制違反、信任義務違反を理由として,コロラド地 裁で損害賠償請求の訴訟を提起した。具体的には,連邦法規・規制違反につい て,原告は,被告らが幾つかの規制に違反したと主張した。被告らは原告の全 ての請求を否認した。.  【コロラド地裁の判旨】.  アルプスの三つの融資について原告の請求を認容した。その中で,被告が法 規・規制に違反した判定は以下の通りである91)e.  「被告らは,被告らが故意でどれも法規・規制に違反したわけではないから,. 法律上当然の過失の責任を負わないと主張した。さらに、違反が有ったとして も,その違反の責任は,アルプスの役員に有り,被告にはないと主張した。又,. 被告はコロラド州法のCRS§7L5・101(2)を引用して,アルプス職員が法令及 び適正手続きを遵守していると信頼し,そしてそれは法的に正しいと主張した。  ラルゴ判決[」L)によると,法律上当然の過失に閤与する訴訟において注意標. 準は,法規レギュレーションまたは条例で確定されている,かつそれらの確                                  295.

(22) 枇浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 定されている注意標準の違反は.完全に過失を確立すると認められた。  さらに,ハイザーマンの判決91)によると,12CFR§545.32,§563.17−1,§. 563.41やメモランダムR41bを含む連邦住宅貸付銀行理事会の規制の違反に基 づく法律上当然の過失についての請求は認められた。なぜならば、このよ、うな.                               f 規澗は,預金者,預金保険資金及び社会の利益を保護するよう公布されている からである。それに加えて,ヘスの判決Yl}は,連邦コモン・ローの下で法律 上当然の過失の請求が認められていると述べた。.  又は,リヨン判決97)によると,法律上当然の過失に関する原告の訴訟を提 起させるために,原告が,次の四つ要素を立証しなければならない。①取締役・. 役員たる原告が法規,規制又は条例に違反した。②それらの違反が被った損 書の近因になった。③原告は,当該法律が意図的に保護する特定の人々に属す る。④当該法律は,原告が被った侵害種類を防ぐように制定されている。裁判 所は,本件において原告が上記の四つの要素を十分に立証したと認容した。  被告らは,資産区分規制(12CFR§561.16c),自己資産規制(同§563.13), 大口規制(同§563.9−3)及び鑑定評価規制(同§561.17−1とメモランダムR41b). に従わなかった。例えば,ハイ・カントリー・インの融資整理を終了した. 1987年2月25日まで新しい鑑定評価書が得られなかった。それが12CFR§ 561.17」1やメモランダムR41bに違反した。ハイ・カントリー・インの財産に. 関する唯一鑑定評価書は,被融資者のために1985年6月作成され,そして 1985年8月補充された。鑑定評価書作成・補充後にハイ・カントリー一・イン の財産が著しく減価されたことを被告アッシェルが証言緑収書において認めた にも拘らず,アルプスは,その財産について新しい鑑定評価書を得よとなかっ た。.  さらに,原告は,同理事会がアルプスの取締役らに鑑定評価書を得るための. 重要性及び必要性を警告した証拠を提出した。すなわち,被告らが参加した. 1986年3月31日アルプスの取締役会においては,取締役らが同理事会の1985 年9月30日付検査報告書を検討・議論した。この検査報告書は,アルプスの 296.

(23)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の泣反. 貸付方針及び手続の不足を警告していたe.  具体的には,アルプスは,資産評価,貸付や投資を決定する際に,12 C.F.R.§563、17−1(c)(1)(iii)の連邦預金保護の法規や同理事会のメモランダ. ムR41bが定めている要件を満たさない鑑定評価書を利用していた。従来数年 で不動産市場が減価していることを鑑み,要件を満たさない鑑定評価書は非現 実価値をアルプスの判断に与え、ひいてはtアルプスに重大な不利益をもたら すことになろう。.  取締役会の議事録は,取締役らが検査報告書において記載している鑑定評価. 問題を検討・議論したことを証明した。そして,被告が参加した1986年7月 取締役会は,同理事会の1986年6月17日付不備指摘の文書を検討した。同理 事会は,この文譜:において,取締役が1真重に1985年9月30日付検査…報告書に 述べているコメントを検討することを要求した。特に,同理事会は,以下の通り,. とりわけ鑑定評価書の問題に取締役の注目を向けた。『鑑定評価書について欠 如が存在している。すなわち,要求される鑑定評価書は未だ得られなかった.. あるいは記録されていなかった。鑑定評価書は,担保の価値を評価して,ひい ては,銀行が負う空極の融資リスクを評価するための融資決定に最重要である。 執行取締役は,12C.ER.§563.17−1(c)(1)(iii)の連邦預金保護の法規及び同. 理事会のメモランダムR41bに定めている要件を慎重に検討し,かつ,全ての 融資の実際事情に鑑みその要件に慎重に従うべきであるe』.  ここでは,なぜ鑑定評価書を得られなかったかという重要な事実争点が生じ ている。被告アッシェルは,彼らの証言緑取書において,関連融資の整理完了 以前に新しい鑑定評価書の獲得を期待したことを証言した。被告アッシェルは,. 関連規制が鑑定評価書を要求するなら,アルプスの職員がそれを得ると信じて. いたe被告アッシェルの証言は,1986年11月10日会議で鑑定評価書につい て職員が報告した内容に一致した。この会議の記録は,職員が,余り変わらな い担保価値を予期していた鑑定者と相談したが,新しい鑑定評価書を得るまで. 2か3週間を掛ってしまうと記載している。被告シュタインベルクは,新しい                                  297.

(24)  横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 鑑定評価書の議論に対しては,記憶が無いと述べた。しかし,同理事会が公布. した1987年1月一23日付確約書では,メモランダムR4ユcで要求される鑑定評 価書の獲得が,融資の整理を終了するための前提条件であると指定された。こ れに対し、職員は,費用を節約するために建設工事を終了するまで鑑定評価書 を得る必要はないと信じていた。.  原告は,少なくとも,同理事会の法規及びそれらのメモランダムR41bの違 反の立証責任を十分に提供した。…その理由として,このような違反がなけれ ば,アルプスが被った損害は生じていないと推定できる。最後に,ハイザーマ. ン判決矧に述べたように,原告は,本件の規制によって保護されることと意 図されている特定の人々に属し,かつ,本件の規制は,原告が被った損害の一 種を防ぐように企画されている。したがって,…法律上当然の過失の訴訟を否 認するという被告の請求は棄却された。」.  (6)グラッドストーンの事件Y7}  【事実概要】.  ホームフェデラル貯蓄銀行(略称「ホーム」)は,1947年マサチューセッツ. 州法貯蓄貸付組合として設立した。1965年12月5日以降ホームは,連邦銀行 の資格を取得し,同時に連邦金融監督たる連邦住宅銀行理事会によって監督さ れた。1986年6月以降ホームは,商業のための不動産抵当貸付の計画(program of making commercial real estate loans)を行った。同理事会の1986年9月. 30日付報告によると,商業のための不動産抵当貸付を融資した金額合計は,. 750万米国ドルであり,ホームの総資産の26%の割合を占めていた。同報告 において同理事会は,ホームの商業のための貸付業務(commercial Iending practices)に対する幾つかの不備を示し,その不備の中に,貸付について事前 の鑑定評価書(pre−loan appraisal report)の不足が含まれた。同理事会は一1こ. の報告書において同理事会が強調表示した評価結論の書簡及び本報告書をホー ムに渡した。同理事会は,その書簡で,「ホームが連邦住宅銀行理事会の公布 298.

(25)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反. したメモランダムR41cの条件に従う鑑定評価書を作成すること,かつ,十分 な鑑定評価書が収得される前に貸付金を絶対支出しないことを確保する措置」 をホームに具体的に要求した。.  ホームの取締役たるグラッドストーン(被告)は,同理事会の上記の要求に. 応じて1987年3月26日付書簡で返事した。具体的に,被告は,同理事会の要 求を応じることを約束した。この約束にも拘らず,ホームの商業のための担保 付貸付が悪化した。そして,財産管理人であるホームの整理信託公社(原告)は,. ホームの回収されていなかった19件の融資に関連して,被告らがメモランダ ムR41cの条件に定めていた商業のための不動産付貸付手続及び記録保管条件 に従わなかったとして,マサチューセッツ州法あるいは連邦法に基づき善管注 意義務,忠実義務及び法律上当然の過失に違反したと主張し,被告らに損害賠 償を請求した。.  【マサチューセッツ地裁の判旨】.  連邦住宅銀行理事会の公布した規制違反について被告責任を認容したのは以 下の通りである9S)。.  「原告は,被告らが連邦住宅銀行理事会の公布した規制に違反し,ひいては.. 法律上当然の過失があると主張した。ヘス判決y))によると,法律上当然の過 失は,一般の信任義務違反と異なり,取締役・役員に期待する注意基準が法規, 規制または条例によって定められている。又は,プラティ判決1・・)によると,『法. 律上当然の過失の法理は,合理的(reasonable)で非法律違反(non−tol’tious). の行為を,不合理的(unreasonable)で法律違反(tortious)の行為であると 変えてしまう力を持つものではない。むしろ,法律上当然の過失の法理は単に,. 法的規制が有れば,同規制違反の当該行為が不合理であるという反論出来ない 証拠として働くことを認容するものである。』と述べた。.  原告は,被告がメモランダムR41cの条件に従わなかったことは確実に法的 規制の違反であると主張した。これに対し,被告は,メモランダムR41cが同                                  299.

(26)  横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 理事会によって公布された正式の規制に該当しないから,R41cの条件が,会 社に対する注意基準を確立する法規あるいは条例の要求と看倣してならないと 主張した。しかし,・’一一,メモランダムR41cは,12 CFR S 563.17の公式の 解釈(official inteipretation)であり,住宅所有者貸付法の12 USC§1461の下. で同理事会に公布された。12CFR§563.17は,同理事会の監視を容易にする ために,各々不動産抵当貸付金に付属する鑑定評価書を含む一定の報告書を保. 管することを要求する。そして,メモランダムR41cは,どのような鑑定評価 書の種類を各不動産抵当貸付金に保管すべきかを厳密に説明している。.  ヘス判決1ωや上記のプラティ判決によると,連邦法の下で法律上当然の過 失に関する原告の訴訟を提起させるために,原告が,次の三つ要素を立証しな ければならない。①原告は,規制が意図的に保謹する特定の人々に属する。② 規制は,ホームが被った損害の一種から守ることを意図されている。③メモラ ンダムR41cの違反は,ホームの損害の近接原因になる。.  原告は,ホームの財産保全管理人としてtメモランダムR41cが保護しよう とする特定の人々に属し,かつ,被告のメモランダムR4コcの違反はホームの 損害の近接原因になったと主張した。『特定の人々に属する』という要素を立 1証するために,原告は,『本件の規制は,銀行取締役が慎重に行動することを 確保することによって銀行の利益になるように意図されている。』と弁論して いる。.  被告は,これに対し,同理事会の規制及びそれらの公式の解釈(official interpretation)は,ホームの個人的預金者の利益を保護することではなく,一 般社会の権利(the rights of the general public)を保護する(secure)ことで. あると主張した。加えて,被告は,『貯蓄貸付組合を規定しているメモランダ ムR41cが潜在性(forward−looking)を有しているが、遡及性を有しないから,. メモランダムR41cが法律上当然の過失の注意基準を確立することができな い。』と主張した。即ち,被告は,メモランダムR41cが『事後性(after−the−fact). を有する取締役の損害賠償責任のために注意基準を単に作成・意図されるわけ 300.

(27)                     銀行取締役の注意義務と銀行法規の違反. ではない。』と弁論した。しかし,裁判所は,以下の理由で,被告の主張を認 めない。.  ハイザーマン判決囎によると,連邦預金保険公社の規制が預金者,保険金 の資金及び公衆の利益を保障するように公布されていた。したがって,本件に おいて争う規制は,社会全般利益を保護することのみを目的として公布したも のではない。更に,チャップマン判決1e:1)によるも.原告は,ホームの財産保. 全管理人として,ホームが有する全ての権利を保持している。具体的には,過 失又は重過失を有する不適切な管理の結末から生じた損失を賠償しようとして 本件の訴訟を起こす権利は,保持する権利を含める。さらに,ホームの財産管 理人たる原告は、杜撰な経営または過度なリスクを有する融資業務から預金及. び貸付を守る公布規制と意図された受益者であるから,原告はメモランダム R41cが意図的に保護する人々に属する。.  本裁判所は,上記の根拠に鑑み,ユ2CFR§563.17の公式の解釈であるメモ. ランダムR41cが,各不動産担保付貸付に対して一定書類を作成・保持するこ とを確保することによって,過失を有する経営から連邦預金保険加入の銀行を. 守ると意図されていることと公布された。さらに,本裁判所は,原告がホー ムの財産保全の管理人として,メモランダムR41cの意図された受益者である と認定している。従って,法律上当然の過失について原告の請求を認める。.  (7)シューハマンの事件]°:).  【事実概要】.  ニニL一メキシコ州のファースト・アメリカン貸付貯蓄組合(略称「ファース. ト」)は連邦貯蓄貸付保険公社に加入し,1986年6月州法銀行から連邦法銀行 に変更した。ファーストの金融事1青は悪化したため,整理信託公社は、ファー ストの財産保全管理人に指定された。.  1993年,整理信託公社,そして整理信託公社を引き継いている連邦預金保i 撞公社(原告)は,アメリカンの社長たるシュー一ハマン(被告)がファー一スト.                                  301.

(28)  横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). の幾つかの融資・取引に関して過失・重過失があるとし,被告に対して,信認 義務の違反に基づき,州法の下に損害賠償を求めた。とりわけ,原告は以下の 三つの融資・貸付に関連して被告の責任を追及した。①1985年4月にカスター■. ロード・インベストメントに対して180万ドルの融資(略称「カスター融資 」)。②1985年6月にオムニ・リアル・エステート・インベストメントに対し て165万ドルの融資(略称「オムニ融資」)。③1985−1987の問インタベスト・. グループから約200万ドルの値段が付けられている手形貸付(略称「手形貸付 」)。原告は,カスター融資,オムニ融資及び手形貸付が銀行の法令・規制に違 反したと主張した。.  原審では,原告が上記3つの融資・貸付について法規・規制違反及び相反取 引の諭処を提出した。そして,原審は,カスター融資及びオムニ融資について,. 原告の証拠に基づき,被告の過失を認めたが,その過失がファーストの損害の 近因にならないから,被告の責任を否定した。さらに,原審は,手形貸付につ いて原告の法規・規制違反の全ての主張を認めなかったから,被告の責任も否 定した。原告は抗告を申し立てた。.  【控訴審の判旨】.  原告請求の一部を認容,法規・規制違反に基づく原告の損害賠償請求を含む 一部を差し戻した。具体的判断は,以下の通りである1°5)。.  「ニューメキシコ州の最高裁は,アキベーク判決欄で,法律上当然の過失を 確定する四つの基準を述べている。①注意基準を定義,又は一定行為を提示す る法規が明示的または黙示的に存在すべき。②被告は同法規に違反するべき。 ③原告はfF同法規が保護する特定の人々に属すべき。④原告が被った損害は, 議会が同法規で防止する損害の一種である。さらに,ニューメキシコ州の最高 裁は,バルデス判決1°7)で,『法規違反が法律上当然の過失に該当する適用が立. 法者の明確な意図に反するぱあい,その法規違反が法律上当然の過失に該当す ることを認められない」[,かつ,『適正に採用・公布されている規則の違反は, 302.

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