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新型コロナウイルス治療薬開発状況-科学的なエビデンスにもとづいた治療薬の評価を- [PDF :1.7MB]

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寄稿論文

新型コロナウイルス治療薬開発状況

-科学的なエビデンスにもとづいた治療薬の評価を-

氏家 誠

日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医感染症学研究室,生命科学総合研究センター 准教授

要旨

 いまだ世界的な流行を続けている新型コロナウイルスだが,これまでに216の国・地域で計605万7853人の 感染者,37万1166人の死者が確認されている(2020年6月2日現在)1)。日本での感染者は現在減少しつつ あるが,再び感染者が増えた場合に備え治療薬開発に大きな期待が寄せられている。ニュースでは,「薬を 服用して劇的によくなりました」など,将来有望と思わせる報道も数多く見られる。しかしながら,薬の効果は十 分な科学的エビデンスをもとに判断する必要があり,慎重な姿勢が必要である。本レビューでは,代表的な候 補薬の作用メカニズムや臨床試験結果についてまとめると共に,科学的エビデンスにもとづいた薬の評価方 法について解説する。 Keyword: コロナウイルス,COVID-19,SARS-CoV-2,根拠に基づく医療,ドラッグリポジショニング

■はじめに

 2019年12月以降,中国湖北省武漢市では原因不明の肺炎患者が発生しており,年明けの1月には肺炎 患者から新種のコロナウイルスが検出された。この新型コロナウイルス感染症※1は,発生当初は中国本土に 限局されていたが,その後日本を含む周辺諸国へと広がり,瞬く間に全世界へ広がった。これまでに216の国・ 地域で計605万7853人の感染者,37万1166人の死者が確認されている1)。感染拡大に伴い世界各国で旅 行制限,外出禁止令,ロックダウン(都市封鎖)が行われ,国内でも,4月上旬から緊急事態宣言が発令され,地 域によっては1月半ほど様々な活動が自粛・制限されてきた(5月26日解除)。これらの取り組みのおかげで,日 本を含む一部国・地域では感染者が減少しつつある。  一方,感染の第2波,第3波が来るとも言われており,再び感染者が増えた場合に備え治療薬開発に大きな 期待が寄せられている。しかしながら,一から治療薬を開発するには莫大な時間とコストが必要なため,既に 他の病気の治療薬として開発または実用化された薬の中から新型コロナウイルスに効果のある薬を探す方 法が用いられている。このような方法はドラッグリポジショニングと呼ばれ,すでにヒトでの安全性や薬物動態の 試験が済んでおり,薬剤の製造方法も確立している事から開発期間の大幅な短縮や開発コストの低減が可 能となる。  現在,ドラッグリポジショニングによって見つかった新型コロナウイルスの候補薬が次々と報告されているが, 早期から注目されている候補薬として表1のようなものが挙げられる。これらの候補薬に関しては「アビガン® 投与で重症者6割が改善,軽症者では9割改善」2) や,「(シクレソニドの)劇的な回復ぶりに驚きました」3) ど,将来有望と思わせる報道が数多く見られる。しかしながら,薬の効果は十分な科学的エビデンスをもとに 判断する必要があり,慎重な姿勢が求められる。本レビューでは,コロナウイルスの簡単な説明と,表1に挙げた

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表1. 新型コロナウイルスの治療候補薬(抗ウイルス薬) 候補薬の作用メカニズムや臨床試験結果についてまとめると共に,科学的エビデンスにもとづいた薬の評価 方法について解説する。

■コロナウイルスとは

 コロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなウイルスと,病原性大腸菌のような細菌は,両方ともヒトや動 物に病気を引き起こす病原体だが,この二つは大きく異なる。細菌はヒトの細胞とよく似ており,タンパク質やエ ネルギーを合成したり遺伝子をコピーする工場をもっている。このため,栄養さえあれば自らの工場を使って自 分自身を増殖できる。一方,ウイルスはこのような工場をいっさいもたず,遺伝子をタンパク質のカプセルに包ん だだけのシンプルな構造をしている。このため,自身では増殖できず,細胞に感染し細胞の工場を乗っ取って 自分自身を増殖する。大きさは動物細胞の100分の1,細菌の10 分の1程度である。  ヒトに感染するコロナウイルスはこれまで7種類知られており,このうち4種類は一般の風邪の10∼15%の原 因となっている。残りの3種類は中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS),そして今 回の新型コロナウイルス感染症のような,重症肺炎を引き起こす原因となる4-6)。コロナウイルスはヒトだけでは なく家畜や野生動物,愛玩動物など多くの動物に感染するが,通常はネコのコロナウイルスならネコ,ヒトならヒト と,それぞれの感染相手が決まっており,ほかの動物に感染することはめったにない。しかし,新型コロナウイル スを含む三つの重症肺炎ウイルスは,動物種の壁を乗り越えて動物からヒトに移ったと考えられている。また, 新型ウイルスはヒトだけでなくネコなどにも感染しやすいことが報告されている54)。遺伝子解析によると今回の 新型ウイルスはコウモリのコロナウイルスによく似ていることから,コウモリからヒト,またはコウモリから野生動物 (例えばセンザンコウ)に感染し,さらにヒトに移ったと考えられている7,8)。しかし,感染源の動物は未だ同定さ れていない。

■コロナウイルスの構造と候補薬のターゲット

 コロナウイルスは1本鎖のRNA遺伝子※2をもちRNAウイルスに属する。コロナウイルスの遺伝子はタンパク 質のカプセルに包まれており,さらにその外側を脂質膜が包んでいる(図1)4)脂質膜上には,スパイク(S)と呼 ばれるウイルスタンパク質が突き刺さっている。候補薬の作用メカニズムの理解には,コロナウイルスの増殖様 式を理解する必要があるが,コロナウイルスはRNAウイルスの中でも,最も複雑な増殖様式を持つ。このため, 表1の候補薬の作用メカニズムを理解するため,以下の3つのポイントに絞って解説する。

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図1. コロナウイルスの電子顕微鏡写真とその模式図

コロナウイルスを電子顕微鏡で観察すると,ウイルス表面に突起が見られるが,この突起が王冠のように見えることからラテン 語で王冠を意味する「コロナ」という名前が付けられた。電子顕微鏡で観察される突起物は,スパイク(S)と呼ばれる脂質膜 上に突き刺さったウイルスタンパク質である(国立感染症研究所提供)

1. RNA依存性RNA合成酵素(RNA dependent RNA polymerase: RdRp)

 ウイルス※3を除くすべての生物は,遺伝子の情報をDNAに保存しており,遺伝情報はDNA(核酸)→RNA (核酸)→タンパク質の順に伝達される。このため,生物のほぼ全ては核酸合成酵素として,DNAからDNAを コピーする酵素かDNAからRNAに写し取る酵素しか持たない。一方,コロナウイルスを含むRNAウイルスは, 唯一,遺伝子の情報をRNAに保存している。このためRNAからRNAをコピーし写し取る酵素が必要で,これ をRNA依存性RNA合成酵素(RdRp)と呼ぶ。RdRpはRNAウイルスだけが持つ特別な酵素なので,抗RNA ウイルス薬の絶好のターゲットとなる。

2. ウイルス由来プロテアーゼ(蛋白分解酵素)

 コロナウイルスが感染すると,まず最初に大きなタンパク質が作られ,この大きなタンパク質は「ウイルスのプロ テアーゼ」で切断されて,小さなタンパク質となる。よくある例えとして,プラモデルを組み立てるときに部品を切り 離すためハサミが必要であるが,プロテアーゼはこのハサミの役割を持つ。ハサミが無いとプラモデルができ ないように,大きなタンパク質のままではウイルスが増殖できず,必ず小さなタンパク質に切り離される必要があ る。このため,ウイルスのプロテアーゼも抗ウイルス薬のターゲットとなる。

3. 宿主由来プロテアーゼ

 コロナウイルスは細胞に侵入するときに,ウイルス表面のSタンパク質を介して,ウイルスの膜と細胞の膜を融 合させて細胞に感染する。このとき,Sタンパク質は「宿主のプロテアーゼ」で切断され活性化しないと膜融合 を起こす事ができず,感染が成立しない。これは,上記のウイルス由来プロテアーゼとは働く場所も構造も 違っており,この「宿主のプロテアーゼ」を抑える薬にも抗ウイルス活性が見られる事がある。

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図2. 臨床研究のエビデンスレベルの分類ピラミッド 科学的エビデンスの強さは,上に行くほど強くなる。臨床研究は,大きく2つに分かれ,研究を意図した介入を加えず,診療や経 過の成り行きをありのまま観察する場合は観察研究となる。一方,研究者が対象者に対して研究目的で介入を加える場合は 介入研究となる。介入研究は,対象者をランダムに割り付けるかによって,ランダム化比較試験(RCT)と非ランダム化比較試 験に分類される。観察研究は,比較対照を設定するかどうかによって,比較対照のない記述的研究と比較対照を設定する 分析的観察研究に分類される。国内の候補薬の観察研究は,上記ピラミッドの「対照群を伴わない」記述的研究に分類さ れる(2020年6月2日現在)。

■科学的エビデンスにもとづいた治療薬の評価とは?

 一言に候補薬の抗ウイルス効果と言っても,試験管レベルなのか,動物実験なのか,ヒトを対象とした臨床 研究なのかで大きく違ってくる。また臨床研究と言っても,科学的エビデンスの質が異なり,臨床研究は図2のピ ラミッドの上に行けば行くほどそのエビデンスレベルが高くなる。臨床研究は大きく2種類に分けられ,例えば研 究を意図した介入を行わず,候補薬投与後に症状経過や副作用などをありのまま観察する場合は観察研究 と呼ばれる。一方,治療薬の効果を研究目的で研究者が積極的に介入する場合は介入研究と呼ばれる9) 介入研究のうち,被験者を無作為に分けるかどうかで(ランダム化),ランダム化比較試験(RCT)と非RCTに 分けられる。RCTが最もエビデンスレベルが高く,ランダム化しない非RCTでは,エビデンスレベルが低下する。 さらにこのRCTなどの結果を複数集め総合的に解析した2次研究(システマティックレビューなど)がある。 現在,有識者が声をそろえて発している「候補薬の効果は臨床研究による十分な科学的エビデンスが必要」 と言うのは全て『RCTの結果にもとづく有効性評価が必要』と言っているのに他ならない10)

ランダム化比較試験(Randomized controlled trial:RCT)

 介入研究のうち最もエビデンスレベルが高い。一定の条件を満たした感染者をランダムに複数のグループ に割り付け(ランダム化),一方には候補薬を与え,他方には偽薬(プラセボ対照)又は既存の治療法を与え, 治療効果と副作用を評価する。患者や医者が,「本物の薬を使っているから症状が良くなるはずだ」といった 思い込みによるデータの偏りを避けるために,患者(単盲検),又は両方(二重盲検)に,どちらが本物の薬を投 与されているか分からないように行う事が多い(盲検化)。盲検化しない場合をオープンラベルと呼ぶ。

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観察研究

 様々なレベルの観察研究があるが,今回のケースは治療目的で候補薬を投与し,その後の症状経過・副作 用を観察し,集まったデータを分析する方法である。観察研究は,比較対照を設定するかどうかでさらに2つに 分かれるが(図2),今回のケースは,治療目的で候補薬を投与しているため,比較対照となる「ウイルスに感染 しつつ薬を投与しなかった」群のデータを得ることが難しい。特に,8割程度の人は治療をしなくても自力で治 るため,症状が改善したとしても薬が効いたのか自力で改善したのかがわからず薬の効果を明確に判断す る事ができない。2020年6月2日現在,報告されている国内の臨床研究の多くは,この観察研究であり,エビデ ンスレベルとしては図2のピラミッドの「対照群を伴わない研究」にあたる。このため,解釈には注意を要する。  また,治験とは,「治4療の臨床試験4」の略であり,動物を使った非臨床試験の後に,フェーズIからフェーズⅢへ と段階的に行われ,フェーズⅢでRCTが行われる事が多い。通常は,治験により治療効果が認められたものが 薬として承認されるのだが,今回は,観察研究などにより一定の有効性・安全性が確認されていれば治験結果 を待たずに承認する動きがあり11)日本医師会は「有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を治療薬と して承認すべきでない」と声明を発表している10)。さらに,RCTの臨床試験の結果は,通常,専門家による厳し い査読を経て医学誌などに発表されるが,査読前の内容が報道されミスリードを招く例も散見される12,13)。さら に,査読後の論文が一時撤回されるような事態もあり14)正確な情報を見極めるのが難しくなっている。

■候補薬の作用メカニズムと臨床研究結果

 候補薬はウイルスの増殖を直接抑える抗ウイルス薬と,重症化によっておこる急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)やサイトカインストームを改善する薬に分けられる。表1の候補薬は全て抗ウイルス薬に属する。

1.レムデシビル

(ベクルリー®点滴静注液:米ギリアド・サイエンシズ)  レムデシビル※4はエボラ出血熱の治療薬として開発された。エボラ患者を対象としたRCTの結果,モノク ローナル抗体治療法に比べると治療効果が低いことが分かり,現在はエボラ出血熱への投与は中止されて いる15)

作用メカニズム:RdRp阻害

 レムデシビルはヌクレオチドアナログ(類似体)であり,ヌクレオチドとは,A,C,G,T,Uの略号で示される糖と 塩基とリン酸基でできた物質で,これらがつながってDNAやRNAが作られる。同じA(アデニン)でもRNAと DNAでは少し構造が異なり,レムデシビルは体内に取り込まれるとこのうちRNAで使われるA(アデニン)とよく 似た構造になる16)。我々生物が持つDNAからRNAを作る酵素(DdRp)は,この2つを見分ける事ができるの

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で間違えて取り込むことはないが,RNAウイルスだけがもつRdRpはこの2つを見分ける事ができない。このた め,間違って取り込まれRNAの合成が阻害されて抗ウイルス活性を示すと考えられている16)。実際,レムデシビ ルはコロナウイルスを含む幅広いRNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示す17,18)。また,これまでも,このよう なRdRpをターゲットにしたヌクレオチドアナログの開発は広く行われてきたのだが,他のRNAウイルスには効果 があるにもかかわらずコロナウイルスには効かないケースが知られていた19-21)。この理由は,コロナウイルスを 含む一部のRNAウイルスは,RdRpが間違えて取り込んでも,間違えて取り込んだヌクレオチドを取り除く他のウ イルス蛋白質(ExoN)が存在するからだと言われている22)。このため,抗コロナウイルス活性を示すヌクレオチ ドアナログの開発は難しく,「RdRpに取り込まれつつExoNによって除去されない」と言う絶妙のバランスが必 要とされていたが,レムデシビルは見事にこのバランスを保った薬と言える。

臨床研究結果

 レムデシビルのRCTの結果(二重盲検,プラセボ対照)は2つ報告されており,1つ目は日本も参加した国際 共同治験で,1053名の中から重症患者を対象に行われた。レムデシビル投与群とプラセボ群の2つに分け, 臨床経過を比較。回復までの期間は,レムデシビル群で11日,プラセボ群で15日。14日までの死亡率はレムデシ ビル群で7.1%,プラセボ群で11.9%だった。この結果からレムデシビルの有効性が示唆されている。一方,中 等症では有意差が認められたが,人工呼吸器が必要なほどの重症例では有意差が認められなかった。また 注意が必要なのは人種別の結果で,白人では有意な効果があったが,黒人では効果が少なく,アジア人で効 果がほぼ認められなかった23)。2つ目は,中国湖北省の病院で237名の中等の患者を対象に行われた。十分 な症例が得られないまま終わっており大規模な試験が必要としながらも,レムデシビル群とプラセボ群とを比べ て,臨床的な改善は見られなかった24)。また,ギリアド社が主導の397人の重症者を対象としたRCTがあるが, オープンラベルでプラセボ群が無いもので,レムデシビル5日間投与群と10日間投与群を比較し,両者で臨床 症状に違いが無い事が示されている25)  米FDAは上記の結果から5月1日に本薬を治療薬として承認した。日本もこれを受けて,通常は申請から承 認まで1年以上かかる手続きを簡略化し5月7日に特例承認した。これによりレムデシビルは,国内初の新型コ ロナウイルス治療薬となった。ただし,レムデシビルは重症患者が対象であり,日本への供給量も当面は限定 的であるため軽症者には使用できない。また,現在のデータからは,アジア人への治療効果についてはエビデ ンスが得られていない事にも注意が必要である。

2.ファビピラビル

(アビガン®錠剤:富士フイルム富山化学)  アビガン®はインフルエンザ治療薬として開発された。メーカー資料によると,プラセボ群の無い,タミフル®投与 群とアビガン®投与群を比較した非劣性試験(開発薬が既存薬より劣っていないかだけに注目した試験)ではタ ミフル®の効果よりも劣っていないことが確認されている26)。ちなみにタミフル®の効果は2014年のシステマティッ クレビューによると「健康な成人でインフルエンザの症状を半日短縮(0.7日)する」ことが分かっている27,53)。ま た,アビガン®を使った動物実験では胎児に奇形を及ぼす危険性が認められたため,新型インフルエンザが流行 し他の薬剤が効かないときに限り,国の要請を受けて製造するという特殊な承認薬となっている。

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作用メカニズム:RdRp阻害

 レムデシビルと同様のヌクレオチドアナログであり,アビガン®は体内に取り込まれるとRNAで使われるA(ア デニン)やG(グアニン)とよく似た構造になる。RdRpに,間違って取り込まれることでRNAの合成が阻害され 抗ウイルス活性を示すと考えられている28)。また,レムデシビルと同様に,幅広いRNAウイルスに対して抗ウイル ス活性を示す29)。新型コロナウイルスに対しては試験管レベルではあまり効かないが,エボラ出血熱ウイルス に対する試験では,試験管レベルではあまり効かないものの動物実験などの生体環境では良好な結果を示 すため,アビガン®も生体での検討が必要として臨床結果の報告が期待されている18)

臨床試験結果

 アビガン®に関してはエビデンスレベルの高いRCTの最終結果(たとえば査読済み論文)は未だ報告され ていない。中国からの報告では,アビガン®投与群35名と抗HIV薬カレトラ®(後述)投与群45名を比較した結 果,ウイルス消失時間が短縮され,胸部CT画像所見の改善も早かった14)。しかし,この比較はオープンラベル でランダム化もされていない非RCTである(また,両群ともインターフェロンαが同時投与されている)。中国から のもう一つの報告は,査読前論文であるがRCT(オープンラベル・プラセボ対照なし)でアビガン®投与群116人 とアルビドール(中国のインフルエンザ薬)投与群120人とを比較した結果で,両者に臨床的な改善に差は認 められなかった13)。国内からは観察研究の中間報告として,軽症者の約9割,重症者の6割の症状が改善した という報告があるが,比較対照のない観察研究であるため,アビガン®の治療効果を明確に判断する事はでき ない30)  アビガン®は,中国からの報道や国内の数多くの報道から「アビガン®を飲めば治るのに,なぜ承認されない のか」と,一般のかたが思うほど期待された候補薬である。一方で,国内で計画されたRCTの中間報告31)をも とに「治療薬アビガン®有効性示せず」32)などの報道もされているが,現状では十分な科学的エビデンスが 得られておらず,アビガン®の新型コロナウイルスに対する評価は時期尚早である。現在も,各国で治験が行わ れており,それらの結果を慎重に見極める必要がある。

3.ロピナビル/リトナビル配合剤

(カレトラ®錠剤:米アッヴィ)

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 カレトラ®はHIV治療薬として開発され,国内外で承認・実用化されている。HIVの初回治療や代替治療の 主要薬の一つ。

作用メカニズム:ウイルス由来プロテアーゼ阻害剤

 コロナウイルスもHIVも細胞に感染すると,最初に大きなタンパク質が作られ,ウイルス由来のプロテアーゼで切 断され,小さなタンパク質となる。ロピナビルは,HIVのプロテアーゼの働きを阻害することで,抗HIV活性を示す。も う一つのリトナビルは,薬剤の代謝・分解にかかわる体内酵素を阻害し主成分のロピナビルの血中濃度を高め る。以前からこのカレトラ®はSARSやMERSの症状を改善すると言う症例報告や観察研究があり33,34)これに加 え,コンピューターシミュレーションにより,ロピナビルが新型コロナウイルスのプロテアーゼにドッキングする事が報 告されていた35)。一方で,HIVのプロテアーゼとコロナウイルスのプロテアーゼは,その構造が違い過ぎる事や33) 試験管レベルの実験では,高濃度のロピナビルもリトナビルもSARS-CoVの増殖を抑えない事36)またプロテアー ゼ活性を阻害するという直接的な証拠も提示されていない事から,そのメカニズムには議論の余地があった。

臨床試験結果

 カレトラ®のRCT(オープンラベル,標準治療コントロール)が,中国で199名の重症患者を対象に行われた。カ レトラ®投与群99名と標準治療群(カレトラ®を未服用)100名を比較したところ,臨床的改善が得られるまでの 時間に差はなかった37)。この事から,カレトラ®の新型コロナウイルスに対する効果は認められなかった。一方, 香港で軽度から中程度の患者127名を対象に行われたRCT(オープンラベル,プラセボ対照無し)では,カレト ラ®+リバビリン(抗ウイルス薬)群,カレトラ®+インターフェロンβ群,カレトラ®のみ投与群を比較したところ,鼻咽 頭ぬぐい液内のウイルスがカレトラ®のみ投与群では7日で消失したのに対し,カレトラ®+他薬剤では5日で消失 しており,カレトラ®との他剤併用療法は症状緩和と早期ウイルス排出に有効である事が示唆されている38)  カレトラ®は症例報告や観察研究の結果から,長らく重症コロナウイルスの治療薬として期待されてきた候 補薬で,MERSに対するRCTも計画されている39)。また新型コロナウイルスが流行した当初は中国・日本で使 用されてきた40)。症例報告や観察研究の重要性に関しては疑う余地はないが,RCTではカレトラ®単独では 効果が無い事が示唆されており,科学的エビデンスの高い臨床研究が必須である事が分かる。

4.シクレソニド

(オルベスコ®吸入剤:帝人ファーマ)  シクレソニドは喘息治療薬として国内外で承認・実用化されている。シクレソニドの新型コロナウイルスに対 する抗ウイルス効果は,国立感染症研究所主導で,群馬大学,日本獣医生命科学大学(著者)との共同研究 で明らかになった。

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作用メカニズム

 シクレソニドはステロイド系抗炎症薬である。SARSのシステマティックレビューによるとステロイド系抗炎症 薬にはSARS治療薬として有益性が認められず,小規模なRCTではむしろウイルス排除に遅れを生じさせる 事が示唆されている41)。このため,重症コロナウイルスの治療にステロイド系抗炎症薬の使用は推奨されてこ なかった。しかしながら,約90のステロイド化合物の抗コロナウイルス活性を調べたところ,シクレソニドを含むご く一部の化合物に強い抗ウイルス活性が見つかった42)。MERSを用いた解析により,シクレソニドはコロナウイ ルスのNSP15タンパク質に作用することが示唆されている42)。作用メカニズムに関してはまだ不明な点も多い が,宿主細胞にはウイルスが増える前に感染細胞を壊してウイルスの増殖を抑える反応(アポトーシス)があり, NSP15はこれを抑制する事が知られている43)。つまり,NSP15はアポトーシスを抑え,ウイルスが増えられる細 胞を増やす働きがあるため,シクレソニドはこれを抑える事で抗ウイルス活性を示しているのかもしれない。また は,NSP15はウイルスの複製工場を構成する一員と考えられているので44)シクレソニドがNSP15に結合する 事でウイルス複製工場全体のバランスが壊れる可能性もあり,更なる解析が必要である。

臨床試験結果

 シクレソニドの抗ウイルス効果は,試験管レベルでのみ確認されている42)。アビガン®の観察研究の中間報 告によると,アビガン®投与2,158名のうち服用情報の確認できた2,081名中865名(約4割)は,同時にシクレソ ニドも投与されている30)。6月中には,シクレソニドの観察研究のまとまったデータが出ると言われており,RCTも 計画中である45)。また,シクレソニドは吸入薬であるため局所でのみ作用し,服用型ステロイド系抗炎症剤と比 べ副作用が低く,安全性が高い。

ナファモスタット

(フサン®注射剤:日医工)  ナファモスタットは急性膵炎の治療薬として国内で開発され,実用化されている。ナファモスタットの新型コロナ ウイルスに対する抗ウイルス効果は,東大のグループによって発表され候補薬の一つとして注目されている46)。カ モスタット(フオイパン®:小野薬品工業)も類似薬である。

作用メカニズム:宿主プロテアーゼ阻害薬

 ナファモスタットは宿主のプロテーゼを阻害する。コロナウイルスのS蛋白質は宿主のプロテアーゼによって

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切断され活性化する事で感染力をもつ。SARSやMERSなどのコロナウイルスは,この宿主プロテアーゼの局 在場所に依存して,2つの細胞侵入経路を使い分ける事ができる48,49)。細胞外にプロテアーゼが無いと,一度 エンドサイトーシスで取り込まれエンドソーム内のプロテアーゼ(カテプシン)47)で活性化され細胞に侵入する。 一方,細胞外にプロテアーゼ(TMPRSS2など)が存在すると,細胞表面で活性化され侵入可能となる52)。この ため,試験管レベルの評価では,カテプシンに対する阻害剤(E64d)と,TMRPSS2に対する阻害剤(ナファモス タットやカモスタット)の両方を併用しないと強力な抗ウイルス活性を示さないが,カモスタット単独でもある程度 の効果は確認されていた18,50)。ナファモスタットはこのカモスタットよりも効果が高いと報告されており,新型コロ ナウイルスの標的細胞とよく似た気道上皮細胞由来のCalu-3細胞を使用した評価では低濃度で感染を阻 害する事から,ナファモスタット単独での効果が期待された46)

臨床研究

 ナファモスタットの抗ウイルス効果は,試験管レベルでのみ確認されている46)。現在は,観察研究に加えRCT も計画されており51)結果が注目される。ナファモスタットは血液の塊でできる血栓を溶かす効果もあり,新型コ ロナウイルスは肺の中で血栓ができて,これによって重症化するとも言われている。このため,ナファモスタットは ウイルスの増殖を防ぐとともに,血栓を予防する可能性もある。

■おわりに

 現在,我々は新型コロナウイルスに対して徒手空拳で立ち向かっており,一刻も早く何らかの武器を手にい れたい。そのような中,世界中の研究機関,製薬企業,政府機関が協力して治療薬開発やワクチン開発を行っ ており,そのスピードには目を見張るものがある。また,様々な混乱や医療崩壊が懸念される中,実際に新型コロ ナ感染症の治療にあたり,候補薬のデータを取得されておられる全ての医療関係者の方々には頭が下がる 思いである。さらに自粛や制限の中,大きな不安を感じておられる国民に対して,少しでもその不安を取り除く ために,様々な候補薬やその効果を紹介する報道機関や,見込みの有りそうな候補薬を通常よりも早く承認し ようとする政府の動きも一定の理解はできる。何よりも,コロナウイルス研究に携わってきた著者も,候補薬の治 療効果が一刻も早く科学的に証明され,一人でも多くの感染者や重症者が救われることを切に願っている。  しかしながら,「有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を治療薬として承認すべきではない」という 日本医師会の提言10)には強く同意する。そもそも,現在の新型コロナウイルス候補薬(一部治療薬)は,あくま で既存薬の転用(ドラッグリポジショニング)であり,細菌に対する抗生物質のような特効薬となる可能性は低 く,効果は限定的であると考えられる。このため,今後RCTなどで「有効性あり」と科学的に証明されたとして も,その有効性がどの程度なのかも含め冷静に評価する必要がある。例えば,インフルエンザに対する特効薬 と考えられていたタミフル®は「健康な成人で半日程度症状を緩和する」事が報告されており27)この研究を 発表した英国医師会雑誌のプレスリリースでは「薬剤の承認と使用は,もはや偏った,または不完全な情報に 基づいて行われるべきではない。我々の国民の健康と経済へのリスクが高すぎる。」と述べている53)  これらの事から,少し過熱報道気味でもあり,国民の過度の期待を背負った様々な治療薬に対しては少し 冷静な対応が必要である。現在,唯一の新型コロナウイルス治療薬であるレムデシビルは,次の優れた治療 薬が開発されるまでの有力な武器であるが,アジア人に対する効果は今の所認められておらず,また人工呼 吸器が必要なほど重症な方への治療効果は認められていない。このような有事であるからこそ,どのような症 状の方に,どのタイミングで,どのくらい投与すると効果的なのか慎重に見極める必要がある。  新型コロナに対する最も強い武器はワクチンと考えられるが,残念ながらワクチンの実用化までには通常早 くて1年から1年半かかる55)。それまでに,できるだけ強い武器を手に入れたいところだが,幸いにも候補薬の

(11)

文 献

※1 新型コロナウイルスによる感染症を「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と呼び,その原因ウイルスを「重症急性 呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)」と呼ぶが,ここでは新型コロナウイルスとした。 ※2 「遺伝子」とはゲノム全体のなかでタンパク質をコードしている部分を指す。ヒトなら,ヒトゲノムの約2∼3%だけが遺伝子 である。このため,本来は「ゲノム」とするのが正しいがここでは全て遺伝子とした。 ※3 「自分自身で増えることができないものは生物でない」と考えられているため,教科書的にはウイルスは生物ではない。 ※4 候補薬の名称は,一般名と商品名があるが,報道でよく見かける名称を使用した。

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5) The Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team, China CDC Weekly 2020, 2, 113.

6) Q. Li, et al., N. Engl. J. Med. 2020, 382, 1199. 7) P. Zhou, et al., Nature 2020, 579, 270. 8) K. Xiao, et al., Nature 2020, 583, 286.

9) 小山田 隼佑, 週刊医学界新聞 第3324号, 2019年6月3日掲載 https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03324_05 10) 日本医師会COVID-19有識者会議声明, 2020年5月18日掲載 https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/wp-content/uploads/2020/05/新型コロナウィルス感 染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言.pdf 11) 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症に対する医薬品等の承認審査上の取扱いについて, 2020年5 月12日掲載 https://www.pmda.go.jp/files/000235010.pdf 12) 毎日新聞オンライン, 2020年3月24日 検索やその臨床研究・臨床試験は現在も世界各国で行われている。今後,より優れた治療薬が見つかる事 に期待したい。  ベクルリー®はギリアド・サイエンシズ社の,アビガン®は富士フイルム富山化学株式会社の,タミフル®はF.

Hoffmann-La Roche AGの,カレトラ®はAbbVie Inc.の,オルベスコ®はCovis Pharma B.V.の,フサン®は鳥居

薬品株式会社の,フオイパン®は小野薬品工業株式会社の登録商標です。

謝辞

 本投稿に当たっては国立国際医療研究センター忽那賢志先生がYahoo Japanニュースに書かれた,新型 コロナウイルス関連の一連の情報(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/?p=2#artList)を参考 にさせて頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。

(12)

https://mainichi.jp/articles/20200324/k00/00m/030/064000c 13) C. Chen, et al., MedRxiv 2020

doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.17.20037432 (査読前論文) 14) Q. Cai, et al., Engineering 2020, online ahead of print.

doi: 10.1016/j.eng.2020.03.007.

15) S. Mulangu, et al., N. Engl. J. Med. 2019, 381, 2293. 16) T. K. Warren, et al., Nature 2016, 531, 381.

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25) J. D. Goldman, et al., N. Engl. J. Med. 2020, online ahead of print. doi: 10.1056/NEJMoa2015301. 26) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構, 2020年6月取得

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28) Y. Furuta, B. B. Gowen, K. Takahashi, K. Shiraki, D. F. Smee, D. L. Barnard, Antivir. Res. 2013, 100, 446. 29) 古田要介, 日本臨床微生物学会雑誌 2019, 29, 58. 30) 日本感染症学会 ファビピラビル観察研究中間報告, 2020年5月18日掲載 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_favip_0526.pdf 31) 臨床研究実施計画・研究概要公開システム, 2020年5月27日掲載 https://jrct.niph.go.jp/detail/6920/jRCT/1 32) 共同通信オンライン, 2020年5月20日 https://this.kiji.is/635491679520457825 33) A. Savarino, J. Clin. Virol. 2005, 34, 170.

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35) Y. C. Chang, et al., Preprints 2020, 2020020242. doi: 10.20944/preprints202002.0242.v2 (査読前論文) 36) N. Yamamoto, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004, 318, 719.

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43) X. Deng, M. Hackbart, R. C. Mettelman, A. O Brien, A. M. Mielech, G. Yi, C. C. Kao, S. C. Baker, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2017, 114, E4251.

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(13)

氏家 誠 

日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医感染症学研究室,生命科学総合研究センター  准教授 医学博士 〔経歴〕 2001年4月-2005年3月 名古屋市立大学 大学院 医科学研究科 博士課程 修了 2005年2月-2010年3月 国立感染症研究所 ウイルス3部 (2005年2月:研究員,2007年4月:主任研 究官) 2010年4月-現在 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 (2010年4月:助教,2013年 4月:講師,2017年4月:准教授) 現在に至る

執筆者紹介

45) 臨床研究実施計画・研究概要公開システム, 2020年6月10日掲載 https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190269 46) 東京大学医科学研究所プレスリリース, 2020年3月18日掲載 https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00060.html

47) G. Simmons, D. N. Gosalia, A. J. Rennekamp, J. D. Reeves, S. L. Diamond, P. Bates, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2005, 102, 11876.

48) S. Matsuyama, M. Ujike, S. Morikawa, M. Tashiro, F. Taguchi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2005, 102, 12543. 49) M. Ujike, H. Nishikawa, A. Otaka, N. Yamamoto, N. Yamamoto, M. Matsuoka, E. Kodama, N. Fujii, F.

Taguchi, J. Virol. 2008, 82, 588.

50) M. Kawase, K. Shirato, L. van der Hoek, F. Taguchi, S. Matsuyama, J. Virol. 2012, 86, 6537. 51) 臨床研究実施計画・研究概要公開システム, 2020年6月22日掲載

https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031200026

52) S. Matsuyama, N. Nagata, K. Shirato, M. Kawase, M. Takeda, F. Taguchi, J. Virol. 2010, 84, 12658. 53) BMJ誌 プレスリリース, 2014年4月10日掲載

https://npojip.org/sokuho/no168-3.pdf 54) J. Shi et al., Science 2020, 368, 1016.

55) F. Amanat, F. Krammer, Immunity 2020, 52, 583.

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表 1. 新型コロナウイルスの治療候補薬(抗ウイルス薬) 候補薬の作用メカニズムや臨床試験結果についてまとめると共に, 科学的エビデンスにもとづいた薬の評価方法について解説する。 ■コロナウイルスとは  コロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなウイルスと, 病原性大腸菌のような細菌は, 両方ともヒトや動 物に病気を引き起こす病原体だが, この二つは大きく異なる。細菌はヒトの細胞とよく似ており, タンパク質やエ ネルギーを合成したり遺伝子をコピーする工場をもっている。このため, 栄養さえあれば自らの工場
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図 2. 臨床研究のエビデンスレベルの分類ピラミッド 科学的エビデンスの強さは, 上に行くほど強くなる。臨床研究は, 大きく 2つに分かれ, 研究を意図した介入を加えず, 診療や経 過の成り行きをありのまま観察する場合は観察研究となる。一方, 研究者が対象者に対して研究目的で介入を加える場合は 介入研究となる。介入研究は, 対象者をランダムに割り付けるかによって, ランダム化比較試験(RCT)と非ランダム化比較試 験に分類される。観察研究は, 比較対照を設定するかどうかによって, 比較対照のない記述的研究と

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