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自発的な海事英語学習を支援する海事英語演習プログラムの考案-高等専門学校第4学年航海科長期実習生に対する取組み-

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-<論文

Paper>

自発的な海事英語学習を支援する海事英語演習プログラムの考案

-高等専門学校第

4 学年航海科長期実習生に対する取組み-

藤来 靖矩

達見 和記

**

新田 邦繁

* * *

Study on the new practice program of maritime

English which encourages active spontaneous study

-The new approach of 4th grader on navigation course of technical college -

FUJIRAI

Yasunori, TATSUMI Kazunori and NITTA Kunishige

Abstract

We create the new training program about maritime English for cadets in the training ship and introduce it. Navigation course cadets in the training ship study the knowledge and the skills to be a qualified navigational officer. Navigational officers are requested the skill not only ship operation skill but also English communication. Therefore, authors consider new effective program about maritime English.

The main aim of this program is to make them motivate to study English, because they have many practice besides maritime English in the training ship. First step is vocabulary and grammar training using flashcard and the publication, Basic Maritime English. Second step is speech training. Cadets practice ship master’s briefing about berthing operation on prepared English manuscript. The last step of this program is a skit training. Cadets write a comedy scenario and play it.

Then, we got many positive replies from them after these training. Authors wish this program spread through another training ship.

1. はじめに これまで筆者らは、3 級課程の実習生が練習船に乗船 した時に英語に関する話を聞くと、「私は英語が苦手です から。」という答えを頻繁に耳にしてきた。実際、後述の ようにアンケート調査等を行ってみると、多くの実習生 が英語に対する苦手意識を持っているとともに、彼らの 英語力も伸び悩んでいる状況であることが分かった。 ところで、母語以外の言語を習得するためには長い時 間と相当の労力を必要とすることは承知のとおりである。 今般、高等専門学校第4 学年航海科の実習生(以下、「実 習生」という。)を乗船させ臨んだ日本丸の遠洋航海時に おいて海事英語演習を計画した。3 時間×4 回の計 12 時間 という演習時間は、母語以外の言語を習得するために要 する時間全体からすると極めて短時間である。この時間 を、「英語は苦手」とする実習生に対し少しでも有益な時 間とするためには何をどの様にすべきか、新たな海事英 語演習の手法を検討した。 一般的に、人の英語力を向上させるためには、個人個 人の学習努力が必須であり、その努力の原動力となるの は、英語を学びたいというモチベーション、又は将来の 仕事等を見据えての英語を学ばなければならないという 義務的動機である。勿論、英語を学びたいというモチベ ーションの高い者は、自ら進んで学習し、それに応じて 英語力も向上していくであろう。一方で義務的動機によ り英語を学んでいる者には、時として「英語に対する苦 手意識」や「英語学習がつまらない」といったネガティ ブな意識や感情(以下、「ネガティブ要因」という。)が学 習努力の前に心理的な壁として立ちはだかる。個人の意 識の中にネガティブ要因が生じると学習意欲は低下する が、その意欲低下がその個人の努力を阻害し、結果とし て英語力向上に結びつかないのは当然である。筆者らは、 2021 年 2 月 1 日 航海訓練部会受理 * 助教 ** 准教授 ***教授

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2 -遠洋航海時の海事英語演習において、このネガティブ要 因を実習生から取り払うことによって、個人個人の学習 努力を促し、海事英語学習に精力的に取り組むようにさ せることができれば、必然的に彼らの海事英語力を向上 させることができると考えた。また、検討に当たっては、 実習生は第4 学年であり、実習終了後は再びそれぞれの 学校に戻って約1 年間の座学があることも重視した。日 本丸で体験した海事英語演習が、学校に戻った後の彼ら の海事英語学習意欲の向上に繋がることを期待したので ある。この考え方を基本に置いて2.2.に示す目標を立て、 新たな海事英語演習手法を考案、計画し実施した。 なお、筆者らが本論で使用している「海事英語」とは、 広く一般的に使用されている英語の内、特定分野の1 つ である船舶の運用場面で使用される英語を指す。 ここに、筆者らが実施した演習手法を紹介するととも に、演習の事前事後に実施した海事英語単語テスト及び アンケート調査から得られた知見を報告する。 2. 実習生の海事英語力に関する現状把握 2.1. 事前の海事英語単語テスト及びアンケート 本海事英語演習の内容を検討するにあたり実習生 の海事英語能力の測定、及び演習効果を確認するた めに実習生の英語に対する意識調査を行った。対象 は、平成30 年度日本丸遠洋航海に乗船した実習生 104 名である。 海事英語能力の測定については、海事英単語テス トを実施した。これは、練習船において海事英語の テキストとして使用している「海の基礎英語(Basic Maritime English)」1)(以下、「BME」という。)の 巻末索引から、船舶間同士または陸上機関とのVHF 通信や、出入港場面などで使用する、使用頻度が高 い100 語を抽出し英訳の試験とした。採点は 1 語 1 点とし、100 点満点で点数化した。実際に使用した 単語テストについては図1 のとおりである。なお、 本単語テストについては海事英語に特化した内容と なっているため、一般的な英語能力を測定するもの ではない。 図1 海事英単語テスト

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3 -英語に対する意識調査についてはアンケート形式 で実施した。アンケート内容については巻末資料1 のとおりである。海事英単語テスト及び英語に対す る意識調査アンケートはどちらも記名式で行った。 なお、アンケートについては海事英語に限定せず一 般的な英語に対する意識調査として実施した。これ は、海事英語演習を計画するにあたり、海事英語の みならず一般的な英語学習に対する実習生の意識調 査を実施しなければ、より効果が大きい海事英語演 習を立案できないと考えたからである。 2.1.1. 事前テストの結果 事前テストの結果は、最高点51 点、最低点 0 点、 平均点10.0 点となり、63.5%の実習生が 10 点以下で あった。詳細な点数分布は以下のとおりである。 図2 事前テスト結果 ほとんどの実習生が20 点以下の結果となった。ま た、平均点以下の実習生が63.5%いることから、点 数に偏りがあることもわかる。全体のグラフから見 てもわかるとおり、海事英語に関する語彙力はさほ ど高くないことが分かる。 2.1.2. 事前アンケートの結果 事前アンケートにおける選択式の質問についての 結果は巻末資料2 のとおりである。 また、記述式の質問に対する回答の概要は以下の とおりである。 ①英語を学ぶことが嫌いまたはどちらかというと嫌 いな理由 ・上達している実感が得られない ・覚えることが多く、終わりが見えない ・一度つまずいてしまいやる気が起きない ・語彙力がない ②英語を学ぶことが嫌いまたはどちらかというと嫌 いになったきっかけ ・文法が複雑になった ・英語テストの点数が上がらなくなった ・役に立たないと思い始めた ③英語が苦手またはどちらかというと苦手な理由 ・文法がわからない ・語彙力がない ・英語そのものに苦手意識がある ・勉強しても成績が向上しない ④これまで英語能力に関する検定試験等(英語検定 やTOEIC 等)を受けたことがあるか ある…82 人(英検、TOEIC) ない…22 人 ⑤今後、英語能力に関する検定試験等に挑戦してい くつもりはあるか? ある…79 人(英検、TOEIC、TOEFL) ない…25 人 事前テスト及びアンケート結果における注目点を 以下に列挙する。 〇英語を学ぶことが「どちらかと言えば嫌い」又は「嫌 い」と回答した実習生は全体の18.3%で、その 89.5% が事前テストにおいて平均点以下の実習生であった。 〇英語が「どちらかといえば苦手」又は「苦手」と答え た実習生は全体の47.1%であった。一方で、英語学習 の必要性について「感じている」又は「どちらかと言 えば感じている」と回答した実習生は87.5%であっ た。 〇直近の一年間における1 日あたりの平均英語学習時間 について76.0%の実習生が 1 時間未満であった。一方 で、英語学習の必要性について、87.5%の実習生が必 要であると回答した。 〇事前アンケートにおいて英語学習の必要性を感じてい ない実習生は、その全員がテストについて5 点以下で あった。 2.2. 基本コンセプト・目標の設定 事前に実施した英語に対する意識調査アンケート では、英語に対して苦手意識を持っている実習生が 全体の47.1%いることが分かった。理由について は、「語彙力がないから」「文法がわからないか

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4 -ら」と大部分の実習生が答えており、語彙力不足に ついては、海事英単語テストの結果からも明らかで ある。また、「いつ頃から英語が嫌いになったか」 という設問に対し、中学校の3 年間において嫌いに なったと回答している者が全体の82.6%いることか ら、英語を学習し始めた早い段階から英語に躓き始 めた者がいることが推察される。これは、英語の初 歩の部分が理解されていない実習生がいる可能性を 示唆し、演習手法を検討する上でこの点も考慮にお いた。一方で、全体の90.4%の実習生が、「英語が できるようになると楽しくなると思う」と回答し、 また、全体の87.5%の実習生は英語学習の必要性を 感じていることから、彼らには、潜在的な学習意欲 があることも判明した。以上の結果から、多くの実 習生は、英語を勉強する必要性は感じてはいるもの の、それが彼らの学習行動に繋がっていない状況に あることが分かった。 以上のことを踏まえ、彼らのネガティブ要因を取 り払うことによって潜在的な学習意欲を刺激し、学 習努力を促すため以下の目標を掲げることとした。 この目標を達成するために、従来の講義型の海事英 語演習にとらわれず新しいプログラムによる演習の 手法を検討した。 大目標:実習生の英語に対する苦手意識を打破す る。結果として演習後に、 ①楽しかった、②英語は意外と簡単、③少 しだけ成長できた、④続けて英語を勉強し てみたい と感じさせる。 小目標:①可能な範囲で海事英語の専門用語を身に つけさせる。 ②可能な範囲で海事英語の簡単な言い回し を身につけさせる。 3. 英語学習法の選定 3.1. 外国語学習法の調査 本演習を計画するにあたり、外国語を習得するた めの方法論や学習法に関する著述、英語教育に関す る学術論文を調査した。調査は、英語学習法に特化 した内容の著述や論文はもとより、英語学習法とい う小さな枠に留めるのではなく、母語以外の言語を 習得するために何をどのようにするのか、その方法 論を論じている言語学者や、学習によってマルチリ ンガル(多言語話者)となった人の著述も含め、幅広 く調査を行った。その結果、注目した著書とその内 容を以下に抜粋する。これらの調査結果を基に、演 習方法を検討することにした。 a.「外国語上達法」1) 著者背景:言語学者、自らも7 語以上の言語を話す マルチリンガル ① まずは何のために、その言語を習得するのかと いう目的、どの到達レベルまで学ぶのかという 目標を明確に持つ。 ② 次は語彙。新しい言語を習得するためには、ま ず は 使 用 頻 度 の 高 い も の か ら 何 を お い て も 1000 語習得する。1000 語習得できれば 3000 語 習得を目指す。語彙が3000 語に達すれば、辞書 を引きながらも、その言語で書かれた文書を読 むことができる。 ③ その次に文法。語彙を習得して文法を学ぶ、こ の順序が大切。語彙を知っていても、それをど のように組み合わせて文を作るのか、その規則 を知らなければ文は作れない。但し、外国語の 学習に必要な文法は手段としての実用的な文法 であって、専門家でもない限り、外国語の習得 を目指す多くの人が必要とするのは、文法の基 礎的知識である。 b.「外国語学習の科学 ―第二言語習得論とは何 か―」2) 著者背景:言語学者 ① 外国語学習には動機づけが必要。 ② 外国語を習得するには、大量のインプット(読む こと、聞くこと)と、適量のアウトプット(話すこ と、書くこと)が必要。 ③ インプットが十分でないうちに大量のアウトプ ットをしてしまうと、幼児言葉のような未成熟 な言葉が定着してしまう可能性がある。そして、 一度定着すると修復が難しい。 ④ 大量のインプットを経たうえで適量のアウトプ ットを行うと、アウトプットの前に頭の中では リハーサルが行われるが、このことが記憶の思 い出し効果を生み出し、記憶を定着させる。 ⑤ 頭の中でのリハーサルは瞬時に行われるため、 これを繰り返すことにより意識的に学習された 内容が自動化(注意を払わなくても無意識的に できるようになる状態)される。

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5 -c.「脳が認める外国語勉強法」3) 著者背景:オペラ歌手、歌手活動のため、母語の英 語の他、7 つの言語を習得したマルチリン ガル ① 最初に正しい発音を学ぶ。 ② 翻訳しない。 ③ ドイツ人心理学者のヘルマン・エビングハウス の「忘却曲線及び学習曲線の理論」に基づく分 散学習法と、映像や音声を張り付けたフラッシ ュカードによる手法を組み合わせた学習法を提 唱。 ④ ③の学習法により大量に語彙の発音、意味、及 び文法事項に関連した例文を暗記する。 d.「古代への情熱」4) 著者背景:実業家、トロイア遺跡発見者、事業及び 発掘調査のため、母語のドイツ語の他、 古代ギリシャ語を含む 15 以上の言語を 習得したマルチリンガル ① 非常に多く音読する。 ② 決して翻訳しない。 ③ 毎日 1 時間は言語取得のための学習にあてる。 ④ 常に興味ある対象について作文を書く。 ⑤ その言語を母語とする教師の指導によって作文 を添削する。 ⑥ 添削された作文を暗記して、次に教師が来た時 に暗唱する。 e.「英語は右脳で学べ!」5) 著者背景:認知科学者、計算機科学者 ① 人間の言語能力を司るのは脳の左半球にある 「言語野」であるが、人間が母語を使用する時 は、右半球の対象部分も活性化する。 ② 母語以外の外国語を学んでいる者で、語彙と文 法しか学んでいない者がその外国語を使用して も、脳の左半球のみしか活性化しない。 ③ 語学学習の優れた方法の一つである「トータル イマルジョンの手法」を活用。 ④ トータルイマルジョンの手法は、学習しようと している言語以外の言語を全て排除する、正に その言語に浸りきる学習法。英語を学ぶ場合、 英語を母語とする話者と同じように右半球の脳 も活性化させるためには、英語を母語とする 人々の言語情報や文化情報に沢山触れる必要が ある。 ⑤ 脳の右半球も活性化させるようにするための具 体的方法は以下のとおり。 ・頭に何気なく浮かんでくる言葉(セルフトー ク)に英語を使用し、英語のロジックで考える。 ・アメリカの連続TV ドラマ DVD を毎日最低 2 時間見る。 ・アメリカ史に残るような名スピーチを暗記し、 その本人になりきってスピーチする。 ・仲間と一緒にアメリカの連続TV ドラマの 1 シーンなどを利用して、その役になりきってス キット(寸劇)を行う。 3.2. 調査結果の整理 3.1.で調査結果を示した。著述された時代(研究された 時代)や著者のキャリア、立場に違いがあるため内容に 違いはあるが、それぞれの著述間である程度共通する事 項を見ていくと、概ね以下のとおりである。 ① 強い学習動機とその目的及び目標到達レベルを設定 する。 ② 正しい発音を学ぶ。 ③ 集中して語彙力を高める。(使用頻度の高い語から 1000 語) ④ 語彙力が向上した後、必要最小限の基礎文法を習得 する。 ⑤ 動機付け、発音、語彙、文法の順序が重要 ⑥ 音読、暗記、及び暗唱は学習効果が高い。 ⑦ 大量のインプットと、適量のアウトプットが必要。 3.3. 海事英語演習プログラムの構築 3.2.に示す①から⑦の事項を基本にしつつ、2.2.の目標 を達成するために、練習船の運航現場に即した海事英語 演習の具体的なプログラム内容を検討した。3.2.①に示し ている強い学習動機とその目的及び目標到達レベルを設 定させるため、3.2.①から⑦で整理した「母国語以外の言 語を習得する方法」を解説するとともに、後述する、「フ ラッシュカード・トレーニング」、「なりきりキャプテン ズ・ブリーフィング」及び「スキット・トレーニング」を 導入した意図及び目的を説明する「演習趣旨説明」の時 間を海事英語演習の冒頭に組み入れることとした。 3.2②に示している正しい発音を学ばせるため、及び③ に示している語彙力を高めるため、フラッシュカードの 手法を活用した「フラッシュカード・トレーニング」を、 演習プログラムの最初に組み入れることとした。発音に ついては、電子辞書の読み上げ機能を利用し、正しい発 音を確認させることとした。また、語彙力に関しては、 演習時間を考慮して目標とする習得単語数を100 語とし た。

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6 -次に、3.2④に示している基礎文法の習得に関しては、 「フラッシュカード・トレーニング」の後に、初歩文法 を確認する時間を設けた。「フラッシュカード・トレーニ ング」の後に初歩文法の確認を行うことにより、3.2⑤に 示す発音、語彙、文法の順番に学習することが出来るよ うに配慮した。 初歩文法の確認をした後に、3.2⑥に示している音読訓 練として、「なりきりキャプテンズ・ブリーフィング」と いう手法を考案し導入することとした。これは、その本 人になりきってスピーチする手法を応用した。 ここで、「フラッシュカード・トレーニング」及び「な りきりキャプテンズ・ブリーフィング」は、インプット 中心の演習である。そのため、3.2⑦に示す適量のアウト プットを演習プログラムに組み入れるべく、寸劇(スキ ット)を演じる手法「スキット・トレーニング」を演習プ ログラムの最後に導入することとした。なお、定型的な フレーズを確認させることで、「スキット・トレーニング」 を円滑に実施できるようにするため、「スキット・トレー ニング」実施前には、BME の英文を指でなぞって目で確 認しながら音声を聞かせる時間を設けた。 上記のとおり検討した結果、海事英語演習として表 1 のとおりプログラムを編成し、実施することに決定した。 表1 海事英語演習のプログラム 回 演習内容 具体的な内容 時間 1回目 フラッシュカード トレーニング 演習趣旨説明 1.5h 配布したリストの Technical Term を音読し覚える。(実習単位:1人) 二人一組で出題者と回答者に分かれ、フラッシュカードにより対面で学習する。一回終わ れば出題者と回答者が入れ替わって再び学習。それを繰り返す。(実習単位:2人) 1.5h 2 回目 なりきりキャプテンズ ブリーフィング 初歩文法解説 1.5h 1個班を4つのグループに分ける。用意された複数のシチュエーションの中から一人ひと りの担当をくじで割り当て、割り当てられたブリーフィング内容を音読し覚える。 (実習単位:1 人) グループ内で一人ひとりキャプテンになりきってブリーフィングを行う。 (実習単位:4~5 人) 1.5h 3 回目 スキットトレーニング① (英語による寸劇) BME テキストの例文を指でなぞりながら音声を聴き、BME テキストの内容を把握する。 0.5h 用意された複数のシチュエーションの中から各グループの担当をくじで割り当て、グルー プ毎に寸劇のシナリオを作成する。寸劇は喜劇とし、所要時間は 7 分から 10 分とする。 (実習単位:4~5 人) 作成したシナリオによりグループ内で寸劇を練習する。(実習単位:4~5 人) 2.5h 4 回目 スキットトレーニング② 発表前最終準備 班員の前でグループ毎に寸劇を披露する。 (実習単位:34~36 人) 2.0h 事後テスト 事後アンケート 1.0h

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7 -4. 海事英語演習の実施 海事英語演習は、1 個班単位(17 名~18 名)を基本とし たが、実習訓練の日課編成上の事情により、2 又は 3 個班 合同で実施する場合もあった。練習船で実施する海事英 語演習として、今回新たに導入した「フラッシュカード・ トレーニング」、「なりきりキャプテンズ・ブリーフィン グ」、及び「スキット・トレーニング」の実施方法の詳細 について、以下に述べる。なお、海事英語演習の開始に あたり、演習の冒頭に3.2.で述べた、母語以外の外国語 を習得するためのポイントを実習生に解説する時間 を設け、何故このような演習内容を計画したのか、そ の趣旨を理解させたうえで演習に臨んだ。 4.1. フラッシュカード・トレーニング 実施準備として、事前テストで出題した100 の語句を、 一語句ずつ A4 版用紙の片面に英語で、もう一方の面に 日本語で大きく印刷し、一組100 枚、9 セットのフラッシ ュカードと1 枚に 100 語句を記したリストを実習生の人 数分用意した。 最初の約60 分は、実習生全員に 100 語句を記したリス トを配布し、正しい発音を確認しながら語句の意味を覚 える時間にあて、その後にフラッシュカード・トレーニ ングを実施した。同トレーニングは、2 人一組のペアを作 り、出題者が見せたカードを回答者が瞬時に答える方法 で行った。このトレーニング方法は、脳内の自動化を促 すためにスピードが大切であり、見た瞬間に回答できる ようになることを目標に、何度も繰り返し実施させた。 出題は「英語を見せ、日本語で答える」及び「日本語を見 せ、英語で答える」の2 パターンで実施させ、出題者と 回答者が入れ替わる際には、必ずカードをシャッフルさ せた。この方法のメリットは、一回のトレーニングにお いて、回答者は勿論のこと出題者にとっても、立場を替 えて回答者と同様の学習機会となっていることである。 語彙を一人で暗記する学習は、時として苦痛を伴うが、 二人で取り組むことによってその苦痛を緩和し、効率的 に学習できる効果もある。なお、フラッシュカードは第 一教室に備え置き、実習生の自由時間に、彼らが使用で きるようにした。 図3 フラッシュカード・トレーニングの風景 4.2. なりきりキャプテンズ・ブリーフィング 演習方法を検討するにあたり、その本人になりきって 英語でスピーチする手法を、いかに海事英語演習に取り 入れるかについて熟慮した。その結果、船長が出・入港 等の前に航海士に対して実施するキャプテンズ・ブリー フィングを、実習生に英語でさせることを考案した。 キャプテンズ・ブリーフィングの内容は、増減速の時 期、パイロットの乗下船、タグボート及びスラスターの 使用、投抜錨方法等の船舶運航に関わる事項は勿論のこ と、予想される気象状況や潮汐を含む海象状況、さらに は、港内外の他船の動静等、多岐にわたり、航海科実習 生に対する海事英語演習の教材として最適と考えた。ま た、演習のために用意した教材は、過去に船長が実際に 使用したキャプテンズ・ブリーフィング資料(日本語)を英 訳して提供した。多数あるブリーフィング資料の中から、 一般的な入港パターンの他、特に高い技術要素を必要と される以下のシチュエーションを選択した。 ①神戸港入港 ②門司港出港(パイロット乗船、雨天で視界不良の状況 で関門航路入航) ③清水港沖仮泊(急浅、深海投錨、海からの強風下スラ スターを使用して船首を風に立ててから投錨) ④小豆島草壁仮泊地抜錨 (台風避航のため抜錨、至近に小型船多数仮泊、抜錨 後に強風下スラスターを使用して回頭し出航) ⑤明石海峡航路東側アプローチ(航路入出航船の他、漁 船多数操業) これらのシチュエーションを教材として選択したのは、 実習生の臨場感、或いは緊張感を高めることによって演 習の効果を上げるとともに、演習をとおし5 つのシチュ エーションを知ることによって、彼らが深海投錨法等の シーマンシップ(船舶運用法)の理解も深められると考え たからである。 1 個班を 4 グループに分け、グループ単位でブリーフ ィングを実施させた。ブリーフィングを聞く航海士役の 実習生には、ブリーフィング事項を羅列した簡易版を、

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8 -ブリーフィングを行う船長役には、簡易版に加え、ブリ ーフィングするコメントを文章化した詳細版(巻末資料 3)を配布した。ブリーフィングの練習をさせるに先立ち、 三等航海士が見本を示すとともに、配布した詳細版の文 章の意味と単語の発音を確認させ、完全に記述内容を理 解させた。本番では、できる限り簡易版だけを見て船長 になりきってブリーフィングできるようになることを目 標に、練習は詳細版を大きな声で何度も音読させるとと もに暗誦させた。約1.5 時間、音読の練習をさせた後、グ ループ毎にブリーフィングを実施させた。なお、演習終 了後、希望する者には、全てのシチュエーションの詳細 版を配布した。 図4 なりきりキャプテンズ・ブリーフィングの風景 -音読練習の様子- 図5 なりきりキャプテンズ・ブリーフィングの風景 -本番の場面- 4.3. スキット・トレーニング 1 個班を 4 グループに分け、グループ単位で 1 つのシ ナリオを演じさせた。スキット・トレーニングを実施す るにあたり、当初は教官が作成したシナリオを各グルー プに演じさせることも考えたが、以下の点を考慮して実 習生自身に英語によるシナリオを作成させることとし た。 ① 実習生のモチベーションを引き上げること ② 自分達で作ったシナリオの方が、演じる時に感情 移入しやすいこと ③ シナリオを作成する過程において、BME を活用 して海事英語の用語やフレーズを調査するため、 海事英語の用語やフレーズに触れる機会が増える こと ④ シナリオを作成することそのものが、適量のアウ トプットとなること シナリオ作成にあたっては、特定の個人をひやかす若 しくは攻撃するような内容、下品な内容でなければ、船 や海に関するどのような題材でも良いこととしたが、ス キットは、必ず喜劇とするように指示した。これは、 「自分たちの英語のやり取りによって見ている人が笑 う」というこの体験が、自分の英語が伝わったと感じる 喜びとなり、その喜びが楽しいという感情に、そして英 語をもっと学びたいという感情に変わることを期待した からである。 上述のとおり、題材は自由としたものの、シナリオ作 成に時間を要す可能性があったため、題材の提供を希望 するグループには以下のシーンを例示し、可能な限り同 じ班の中で同じシーンが重ならないように選択させた。

1. Many fishing boats are approaching 2. Suspicious boats are approaching 3. A pilot captain come on board 4. VTIS communication

5. A certain country launched missiles and those are approaching her

6. Restricted visibility 7. Handing over the watch

8. Report to the captain about present condition 9. Station for leaving the anchorage or leaving the berth or ...

10. Heavy traffic condition

シナリオ作成にかかる前には、教官がスキットの見本 を示し、スキットのイメージを実習生に与えた上で作業 を開始させた。シナリオ作成、セリフ暗誦、及びリハー サルに約3 時間与えた後、班員の前でグループ毎にスキ ットを披露させた。

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9 -図6 スキット・トレーニングの風景 -シナリオ作成中の様子- 図7 スキット・トレーニングの風景 -本番の場面- 4.4. 海事英語演習の様子 4.4.1. フラッシュカード・トレーニングの様子 最初は、直ぐに正解が思い出せない語句が多くあった ためか、この演習手法の意図するところに反し、ゆっく りと行うペアが多かったが、正解が思い出せない時には 長考せず、直ぐに正解を確認してスピード重視で何度も 繰り返すことを促した。慣れてくるとスピードが速くな り、笑顔を見せながらお互いにスピ―ドを競い合うよう に取り組むペアも多く見受けられた。また、当初の期待 どおり、第一教室に据え置いたカードを使用し、自分達 の自由時間に取り組む姿が見られた。 4.4.2. なりきりキャプテンズ・ブリーフィングの様子 実習生によって取り組む姿勢に多少ばらつきがあった が、多くの実習生は積極的に暴露甲板に上がり、海に向 かって大きな声で音読を繰り返した。 本番では、音読練習の時間が若干短かったためか、多 くの実習生は、詳細版を読む形で行っていたが、中には 期待どおり、簡易版のみで船長になりきってブリーフィ ングを行う実習生も見られた。積極的に音読練習に取り 組んでいた様子から、もう少し音読練習の時間を与えら れれば、もっと多くの実習生が簡易版のみを見てブリー フィングを行うことができたものと推察される。 4.4.3. スキット・トレーニングの様子 シナリオ作成の初期段階では長く沈黙する場面もあっ たが、スキットのイメージが湧いてくると、どのグルー プも楽しそうに、そして賑やかにシナリオ作成にあたっ ていた。シナリオを日本語で考え、それを英文に置き換 える過程において、BME でフレーズを確認する場面を多 数見ることができた。実習生は、自由時間にセリフを覚 え、グループで集まってスキットの練習に励んだ。本番 では、どのグループにおいても、観客の実習生から時折 笑い声が上がって盛り上がりを見せ、演技を終えた実習 生からは達成感を得た様子が感じられた。また、演技中 の実習生、演技を見ている実習生の様子から、この海事 英語演習の目標の一つ、「演習終了後に楽しかったと感じ させる」ことは、概ね達成されたものと推察される。こ のことは、後述する事後アンケート結果にも現れている。 なお、実習生は一緒にスキット・トレーニングを行った 班以外のスキットを見ることはできないので、全てのス キットを録画し、後日、全てのスキットを見せる機会を 設けた。 5. 事後テスト・事後アンケート 本演習における学習効果を確認するために、全てのプ ログラムが終了した後に、再度、海事英単語テスト及び アンケートを実施した。海事英単語テストについては、 実習生の成績向上度の確認及び実習生自身が成長を感じ ることができるよう、事前に実施したテストと同じ内容 とした。アンケート内容については巻末資料4 のとおり である。 5.1. 事後テストの結果 事後テストの結果は、最高点99 点、最低点 5 点、 平均点55.9 点となった。詳細な点数分布は以下のと おりである。 図8 事後テストの結果 また、事前テストと事後テストを比較した伸び点数 は、最高84 点(10 点→94 点)、最低 3 点(2 点→5

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10 -点)、平均55.9 点となり、点数が悪化した実習生は いなかった。詳細な点数分布は以下のとおりであ る。この演習により、海事英語に関する語彙力も一 定程度向上したことが確認できた。 図9 伸び点数 5.2. 事後アンケートの結果 事後アンケートにおける結果は巻末資料 5 のとお りである。 ポイントは、75.0%の実習生が、英語が身近なものに 感じられるようになったと回答し、78.8%の実習生が、 英語はやればできるようになることを感じることができ たと回答した。また、82.7%の実習生は、英語能力が向 上したと回答し、同じく79.8%の実習生が今後も続けて 英語の勉強を頑張りたいと思えたと回答し、さらに 92.3%の実習生が英語学習は必要と回答した。 演習に対する取り組みでは、89.4%の実習生が積極的 に取り組んだとしている。また、82.3%の実習生が、演 習は楽しかったとし、64.4%の実習生が、演習を受講す る前よりも英語が好きになったと回答した。 6. 解析 6.1. 事前テストと事後テストの比較 事前テストと事後テストを比較すると最大84 点成績 が向上した実習生がおり、点数が悪化した実習生はいな かった。また、43.3%の実習生が 51 点以上、22.1%の実 習生が71 点以上の点数の伸びを示したことから、実習 生の語彙力が大きく向上していることが分かった。 一方で、事前テストで0~10 点であった実習生の 75.8%は事後テストで平均点以下であった。 6.2. 事前アンケートと事後アンケートの比較 前述の事後アンケート結果から、実習生の英語学習に 対する意識に大きく変化が生じたことが分かった。 さらに、事前アンケートと事後アンケートを比較する と、以下の2 点が分かった。 〇事前アンケートで英語が苦手だと感じていた実習生の 67.0%が苦手意識を改善することができた。一方で苦 手意識を改善することができなかった実習生は7.1% であった。 〇事前アンケートにおいて、英語が「どちらかと言えば 苦手」又は「苦手」と答えた実習生の91.8%が事後ア ンケートにおいて、英語能力が向上したと回答した。 また、英語能力が向上しなかったと回答した実習生の うち、50.0%の実習生がフラッシュカード・トレーニ ング及びなりきりキャプテンズ・ブリーフィングにつ いて「どちらかと言えば楽しくなかった」又は「楽し くなかった」と回答し、スキット・トレーニングにつ いて「どちらかと言えば楽しくなかった」又は「楽し くなかった」と回答した実習生はいなかった。 7. 考察 「5.事後テスト・事後アンケート」及び「6.解析」で 述べたとおりの結果から、2.2.で大目標とした「演習後 に①楽しかった、②英語は意外と簡単、③少しだけ成長 できた、④続けて勉強したいと感じさせる。」は、概ね 達成できたと思料する。また小目標「①可能な範囲で海 事英語の専門用語を身につけさせる、②可能な範囲で海 事英語の簡単な言い回しを身につけさせる。」も概ね目 標を達成したと考えるが、実習生が習得した専門用語や 言い回しは限定的であり、今後、彼らの努力により補わ れていくものと考える。 このような結果が得られた背景として、今回の海事英 語演習は、主としてグループ単位で行う演習であったた め、演習内において実習生同士が互いに切磋琢磨して楽 しく学習できたからだと考える。これは、事後アンケー トにおいて86.5%の実習生が「スキット・トレーニング が楽しかった」と回答したことからも裏付けられる。 興味深かったことは、事前アンケートにおいて、英語 学習の必要性を87.5%の実習生が感じているが、実際の 英語学習の勉強時間は直近1 年間において 1 日平均 1 時 間未満の実習生が76.0%を占めており、勉強時間に比例 する事前テストの結果となったことである。これらは、 潜在的な学習意欲はあるが、効果的な学習方法を知らな

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11 -いため、成績が伸びない、成績が伸びないから、英語学 習に取り組まなくなるという負のスパイラルに陥ってい る実習生が多いことの裏付けではないかと思料する。ま た、英語を勉強しなければならないという義務的動機が あっても、英語に対する苦手意識を持ち、なかなか日常 生活において英語を習慣的に勉強できる実習生はそう多 くないことも表している。このような実習生が多くいる なかで、多くの実習生の英語への苦手意識を払拭させ、 英語学習を楽しいものであると意識付けさせることがで きた今回の海事英語演習は有意義であったと考える。 また、3 つのプログラムの中で最も楽しかったと回答 のあったものは、スキット・トレーニングであった。こ れは最初から最後まで、グループ作業で賑やかに楽しく できる演習であったからであると同時に、スキットは全 てコメディーとし、シナリオ作成から演技に至るまでの 全てを実習生にさせたことにより、演習後、彼らに大き な達成感を与えることができたからだと考える。一方 で、なりきりキャプテンズ・ブリーフィングは、楽しか ったという回答が最も低いプログラムとなった。これ は、演習の時間的な制約により、十分な音読練習時間を 与えることができなかったため、実習生に確かな達成感 を感じさせられなかったことが原因であると考える。前 述のとおり、多くの実習生は、精力的に音読練習に取り 組んでいた。これは推測ではあるが、もう少し音読練習 に時間を与えることができれば、もっと良い結果になっ たと考える。6.1.にて述べたように、事前アンケートに おいて英語が苦手であると回答した実習生のうち、事後 アンケートにて英語能力が向上しなかったと回答した実 習生について、なりきりキャプテンズ・ブリーフィング は半数の者が楽しくなかったと回答したが、スキット・ トレーニングについて楽しくなかったと回答した者はい なかった。このことからも、音読練習に時間を与え達成 感を感じさせることは英語能力の向上に寄与すると思料 する。 大量のインプットに適量のアウトプットの考え方、及 び最後に実施したスキット・トレーニングによって実習 生に「楽しかった」等の英語に対する肯定的なイメージ を与えることができたことから、今回の海事英語演習の プログラム構成は、適切なものであったと思料する。 8. 今後の取り組み(提案) 今回得た知見を基に、5 か月実習における実施方法の さらなる工夫、及び実習時期や4 級課程の実習生に合わ せた活用方法について提案する。 8.1. 5 カ月実習における更なる工夫 今回の海事英語演習は、5 か月あった乗船実習期間の 中で遠洋航海復航中の短期間において集中的に実施し た。その結果、なりきりキャプテンズ・ブリーフィング は、やや消化不良気味に終わったという反省がある。英 語学習の基本は、自学である。3 つの演習項目それぞれ に対し、実習生に自学する時間を十分に与えられれば、 筆者らが考案した演習手法は、さらに効果を発揮すると 考える。以下に、筆者らが提案する5 か月スパンで考え た海事英語演習の展開イメージを示す。 図10 5 か月実習における海事英語演習展開イメージ 8.2. 実習時期及び 4 級課程の実習生に合わせた活用 方法 8.2.1. 実習時期 短期実習や3 か月内地航海での実習は、定められた カリキュラムに従ったタイトな実習訓練日課を遂行 していく中で、今回考案した海事英語演習を新たに日 課の中に組み入れていくのは難しいであろう。しかし、 遠洋航海を含む3 か月実習であれば、3 つの手法のう ち 1 つ又は 2 つ組み入れることは可能であると考え る。特にプロとして社会に出る目前の実習生に対して は、実践的な「なりきりキャプテンズ・ブリーフィン グ」が効果的であると考える。以下に、3 か月実習(遠 洋航海を含む)における、筆者らが提案する海事英語 演習の展開イメージを示す。 図11 遠洋航海を含む 3 か月実習における海事英語演 習展開イメージ 当然、遠洋航海出航時期によって調整を要するが、 実習生が乗船してから下船するまでのスパンの中で

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12 -調整できると考える。 また、短期実習の場合、フラッシュカード・トレー ニングの手法を実習生に紹介する時間として1.5 時間 程確保し、その後に自学させる方法が考えられるが、 実習効果を上げるためには、実習へ取り組む実習生に 対し、動機付けをしっかり行う必要がある。 8.2.2. 4 級課程の実習生に合わせた活用 4 級課程の実習生がプロの船舶職員として乗船し た時を想定すると、英語が使用される場面は、船舶 間のVHF 通信、又はタグボート乗組員として本船と のトランシーバ通信にほぼ限定される。この状況を 考えると、単語ではなく、高頻出率の短いフレーズ とその意味を記したフラッシュカードを作成し、フ レーズそのものを覚えさせる(大量のインプット) 方が実用に則した効率的な海事英語演習にすること ができると思料する。これに、これまで実施してき たVHF 演習(適量のアウトプット)を組み合わせる ことにより、さらに効果を上げることができるであ ろう。以下に、4 級課程の実習生に対する筆者らが 提案する海事英語演習の展開イメージを示す。 図12 4 級課程の実習生に対する海事英語演習展開イメ ージ 9. おわりに 今のグローバル化の進む社会において、英語の習得 は必然となりつつある。特に、外国人との混乗が当た り前となった外航船の船舶職員を目指す実習生にと って、英語は切っても切れない関係にある。最近では、 海運会社の募集要項においても TOEIC をはじめとし た英語能力試験の結果を求めることも多々あり、実習 生の英語能力の向上は大きな課題である。冒頭でも述 べたように、英語習得は学習者本人の意識によるとこ ろが大きい。学校や練習船で英語学習を行っても、そ の時間数は多くても数十時間しか確保できず、本気で 英語を習得しようと考えれば、日常的にコツコツと勉 強する他はない。また、一時的に英語学習を行って短 期的に英語能力を向上させても、人間の記憶特性から、 継続的な英語学習でなければ、時間の経過とともに英 語能力は再び衰えていく。継続的な英語学習を通して 英語習得を目指すためには、まずは英語はやればでき るという感覚を持たせることによって、継続的な学習 意欲に繋げる意識付けを行っていく必要がある。今回 は高専第4 学年を対象に実施したが、他の実習生にお いても有効な手法を確立するために、引き続き研究を 実施していきたい。また、事前及び事後テスト・アン ケートの結果から、英語学習の必要性を感じていない 実習生は、演習実施後も今回の海事英語演習の成績向 上がほとんど見られないことが明らかになった。今後 は英語学習の動機付けの手法についても研究してい きたい。 最後に、本研究に関して、協力いただいた教官及び 実習生の方々に対して深甚なる感謝の意を表します。 参 考 文 献

1)海技教育財団、海の基礎英会話(Basic Maritime English) 2)千野栄一、外国語上達法、岩波新書、1986年1月20日 3)白井恭弘、外国語学習の科学 ―第二言語習得論とは 何か―、アスキー、2005年9月1日 4)ガブリエル・ワイナー、脳が認める外国語勉強法、 ダイヤモンド社、2018年1月25日 5)ハインリッヒ・シュリーマン、古代への情熱、岩波 書店、1976年2月16日 6)苫米地英人、英語は右脳で学べ、岩波新書、2008 年 9 月9 日 7)Nobu Yamada、絵で見てパッと言う英会話トレーニン グ 基礎編、学習研究社、2011年8月3日 8)杉本昌弘、吉留文男:実践的コミュニケーション能力 向上を目指す海事英語教育の取組み~英語による乗 船実習と E-ラーニングによる Blended Learning~、独 立行政法人国立高等専門学校機構大島商船高等専門 学校 紀要第40 号 p.9~19、2007 年 12 月

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-巻末資料2 事前アンケートの結果

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16 -(簡易版)

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18 -(詳細版)

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参照

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