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反応性骨材と共存する骨材がASR膨張に及ぼす影響

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(1)

要旨:本研究では ASR のペシマム現象において、反応性骨材と共存する骨材の影響を明らかにすること を目的として実験的・解析的検討を実施した。その結果、同一の反応性骨材を同量使用した場合でも、共 存する骨材種類によりコンクリートの ASR 膨張率ならびにペシマム混合率が変化することが確認された。 また、U.F.O. モデルを用いた試算の結果、共存する骨材の力学特性を考慮した場合、解析精度が向上す ること、人工軽量骨材を混合したコンクリートで ASR 膨張率が著しく低減される理由は力学特性だけで は説明がつかず人工軽量骨材によるアルカリ消費が主な原因と考えられた。

反応性骨材と共存する骨材が ASR 膨張に及ぼす影響

寺本篤史

*1

 大久保孝昭

*1 *1 広島大学 大学院先進理工系科学研究科(〒739-8527 広島県東広島市鏡山 1-4-1) キーワード:アルカリ骨材反応、反応性骨材、ペシマム、人工軽量骨材

1.  はじめに

 コンクリート構造物の性能低下を引き起こす要因の一 つにアルカリ骨材反応(ASR)がある。ASR には様々な 種類のペシマム現象があり、その内の一つに組成ペシマ ム現象(以降 単にペシマム現象と称する)がある。これ は使用する骨材の全量を反応性骨材とした場合よりも、 非反応性骨材がある程度含まれている場合の方が、ASR による膨張率が大きくなるという現象である。また、膨 張率が最大となる反応性骨材の割合のことを一般にペシ マム混合率と呼んでおり、ペシマム混合率は、反応性骨 材の粒径1)や種類2)だけでなくアルカリ総量や材齢3) 影響を受けることが知られている。  著者らは既往の研究4)において、ペシマムを有するコ ンクリートの ASR で生じる内部ひび割れの進展をデジ タル画像相関法(DIC)により可視化し、反応性骨材と共 に混合されている骨材の力学特性が ASR による内部ひ び割れの進展に影響を及ぼすことを明らかにした。  このとき使用した粗骨材は、反応性骨材として急速膨 張性の安山岩(BS 破砕値:12.8 %)を体積比で 30 %混 合し、残り 70 %の共存する骨材として、石英斑岩砕石 (BS 破砕値:13.2 %、記号:CS)もしくは膨張頁岩製 の人工軽量骨材(BS破砕値:37.1 %、記号ALA)である。 その結果、同一の反応性骨材を同量使用した場合でも、 共存する骨材種類が異なると ASR 膨張率に差異が生じ る場合があることが分かった。また、共存する骨材とし て ALA を用いた場合、ASR 膨張率が著しく低減され るという実験結果が得られた。  しかしながら、上記の結果は反応性骨材率が 30 %の 場合のみの検討であったため、共存する骨材が ASR 膨 張率に与える影響に関する考察が不十分であった。  そこで本研究では、反応性骨材の混合率を変化させ、 共存する骨材の種類がペシマム現象に及ぼす影響、並び に ALA が ASR 膨張率を低減する機構に関して実験的・ 解析的検討を実施した。

2.  反応性骨材と共存する骨材が反応性骨材のペ

シマム現象に及ぼす影響に関する実験(実験シ

リーズ 1)

2. 1 使用材料、調合および養生条件  本実験で反応性骨材として使用した骨材は、前述の急 速膨張性の安山岩と同一産地のものである。この産地の 反応性骨材は、養生温度 40 ℃、促進材齢 300 日程度に おけるペシマム混合率が 30 %程度と報告されている5)  また、本研究で使用した反応性骨材と共存する骨材は 前述の CS および ALA である。Fig. 1 に上記 3 種類の 骨材の化学法(JIS A 1145)の結果を示す。  図より反応性骨材は「無害でない」、CS 骨材は「無害」 と判定された。一方、軽量骨材に対する化学法の適用性 については、骨材の粉砕前後で性質が異なる可能性があ ること、軽量骨材の気孔にアルカリ溶液が吸着されるこ とから JIS A 1145 では適用範囲外とされている。本研

Fig. 1 Results of JIS A1145 10 50 100 500 1000 0 200 400 600 )L/ lo m m( c R Sc (mmol/L) Reactive Aggregate ALA CS

(2)

験体にステンレス製バンド(基長 100mm)をとりつけ、 コンタクトゲージ法による長さ変化試験を実施した。測 定材齢は促進材齢 0、1、2、5、10、26、52、62 週であり、 試験体数は同一条件につき 3 体である。コンタクトゲー ジによる測定は人為的なばらつきが大きくなる可能性が あるため、毎回 3 人が測定を行い、3 人の測定値を平 均したものを測定値として使用した。 2. 3 超音波伝播速度試験  ASR によるコンクリート内部の劣化進展を確認する ため、超音波伝播速度試験(Ultrasonic Pulse Velocity、 以降 UPV と称する)を実施した。試験体は 70×70× 600mm の角柱試験体を一調合につき 2 体作製し、長手 方向(測定長:600mm)を対象に、超音波測定器(Pundit PL-200)と 54kHz トランスデューサーを使用して所定 の促進劣化日数において UPV の測定を行った。  UPV の初期値は Table 1 右端に示すとおりである。 CS グループでは反応性骨材の量によらずほぼ一定値を 示し、ALA グループでは ALA 量の増加に伴い UPV の初期値が低下する傾向が確認された。これは ALA 骨 材そのものの剛性が小さいことに起因する。本論文では Table1 に示す初期値を基準にした UPV の低下率を用 いた考察を行う。 2. 4 測定結果 (1) 長さ変化  促進材齢 62 週までの長さ変化試験の測定結果を Fig. 2、3 に 示 す。Fig. 2 が 反 応 性 骨 材 と CS を 混 合 したコンクリートの結果であり、Fig. 3 が反応性骨材 と ALA を混合したコンクリートの結果である。また、 Fig. 4 にはペシマム混合率を確認するために横軸に反応 究では大凡の値を把握するために実施したが、その結果、 膨張頁岩製の ALA は既往の研究6)と同様、「無害でない」 領域に分類された。  次に作製したコンクリートの調合を Table 1 に示す。 反応性骨材の混合率は、全粗骨材に対して体積比で 10、 30、50、80 %となるように設定し、共存する骨材は CS と ALA の二種類とした。表中に示す試験体記号の数値 は、反応性骨材の体積割合を示している。  また、ASR の進行を促進するために水酸化ナトリウム 試薬によりアルカリ総量が 5.5kg/m3となるように調整 した。ただし骨材に含まれるアルカリは考慮していない。  以上の条件で試験体を作製し、打設後 28 日間は 20 ℃で封緘養生、その後は 60 ℃湿布養生で ASR の促 進を行った。 2. 2 長さ変化試験  JCI-S-011-2017 を 参 考 に、φ100×200mm の 円 柱 試

Table 1 Mixture Proportions

symbol (%)W/C

Unit volume mass(kg/m3 Chemical Admixture UPV at

28d+1d Water (W) Cement(C) (S)Sand Coarse(G) SP AE Reactive CS or ALA (C×%) (C×%) (km/s) CS10 50.0 160 320 805 103 908 1.9 0.002 4.44 CS30 309 706 1.9 4.50 CS50 514 504 1.9 4.48 CS80 822 202 1.9 4.41 ALA10 103 516 1.8 3.86 ALA30 309 401 1.8 4.02 ALA50 514 287 1.8 4.11 ALA80 822 115 1.8 4.39 0 20 40 60 0 0.1 0.2 0.3 0.4

Accelerated age (week)

) %( oit ar noi sn ap xE CS10 CS30 CS50 CS80 0 20 40 60 0 0.1 0.2 0.3 0.4

Accelerated age (week)

) %( oit ar noi sn ap xE

ALA10 ALA30 ALA50 ALA80

Fig. 2 ASR expansion of CS group Fig. 3 ASR expansion of ALA group

0 20 40 60 80 100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 ) %( oit ar noi sn ap xE CS ALA

Volumetric ratio of reactive aggregate (%)

Fig. 4  Relationship between ASR expansion and volumetric ratio of reactive aggregate

(3)

な低下は確認できなかった。Fig. 3 の長さ変化試験の結 果と併せると、ALA グループでは反応性骨材率によら ず有害な ASR 劣化はほとんど発生していないと考えら れる。 2. 5 ALA の ASR 膨張抑制機構に関する考察  ALA を使用した橋脚で ASR が疑われる事例が報告 されている8)ことから、すべての ALA で本実験と同様 の結果が得られるとは限らないが、ポーラスな骨材を使 用することで ASR 膨張率が低減された事例は過去にも いくつか報告されている。  Collins ら9)はポーラスな骨材を使用した場合、ASR による膨張率が大きく減じられることを報告しており、 その原因として ASR ゲルの吸水時に生じる膨張圧が、 骨材の空隙に吸収されるためと推察している。また、著 者らの検討4)により、ALA を含有するコンクリートで は ASR の進行時に ALA を横断するひび割れが生じて おり、これは BS 破砕値に代表される ALA そのものの 力学性能の小ささに起因すると推察される。  杉山ら6)は複数種類の ALA を用いた実験において、 ALA を含有するコンクリートはほとんど膨張を示さな いことを報告しており、その膨張率の低減機構として、 骨材の気孔中にアルカリシリカゲルが生成されること、 ALA の反応に対してアルカリ量が不足していること、 および試験体の乾燥の可能性を挙げている。  Li ら10)は 2 種類の ALA 細骨材を反応性細骨材と置 換した実験を実施し、ALA 細骨材の置換率が大きいほ ど ASR 膨張率が低減する結果を示した。その原因とし て、ALA を含有するモルタルではアルカリ濃度の低下 速度が大きくなることを実験的に明らかにしている。  本研究で使用した ALA においても、Fig. 1 の化学法 の結果から、ALA そのものの ASR によりコンクリー ト中のアルカリが消費され、反応性骨材の反応率を抑制 する可能性は十分に考えられる。  以上の考察を整理すると、ALA が ASR 膨張を抑制 する機構については少なくとも以下の 3 つの機構が想 定される。 1) 力学性能の小さい ALA が周辺部より先に破壊する ことによる膨張圧の緩和 2) ALA 内部の粗大空隙に ASR ゲルが蓄積されるこ 性骨材率を取った場合の促進材齢 62 週時点の膨張率を プロットした。  Fig. 2 より反応性骨材と共存する骨材として CS を使 用した場合、促進材齢 2 週から 10 週にかけて急速に膨 張が進展し、その後、いずれの試験体も ASR 膨張率は 停滞した。  Fig. 4 からも確認できるとおり、CS グループで最大 の膨張率を示したのは、反応性骨材を全粗骨材の 30 % 混合した試験体であり、このペシマム混合率は既往の研 究6)と同様であった。使用する反応性骨材の種類やアル カリ総量によっては、材齢の進行に伴いペシマム混合率 が変化する現象が報告されている3)が、本実験条件では 促進材齢 5 週以降変化はほとんど見られなかった。  一方、Fig. 3 に示す ALA グループについては、ど の反応性骨材率においても促進材齢 62 週まで膨張率は 0.05 %以下であり、CS グループと比較して ASR 膨張 率は著しく小さい結果であった。最大膨張率を示した反 応性骨材率は Fig. 4 に示すように 80 %であったが、各 調合間の測定値の差異は小さくペシマム混合率は不明瞭 であった。  以上の結果より CS グループと ALA グループとでは ASR による膨張傾向が明らかに異なっており、同一の 反応性骨材を同量使用した場合でも共存する骨材種類に より、コンクリートの ASR 膨張が影響を受けることが 再確認された。 (2) 超音波伝播速度(UPV)  Fig. 5、6 にそれぞれ CS グループと ALA グループの UPV 低下率の経時変化を示す。ASR 膨張率が比較的大 きかった Fig. 5 の CS グループに着目すると、CS30 と CS50 では促進材齢 5 週まで、CS10 と CS80 では促進 材齢 10 週までに UPV の著しい低下がみられた。  しかしながらその後の材齢ではすべての調合条件で UPV の回復が確認された。この間の ASR 膨張率の経 時変化にはほとんど変化がないことから、UPV が回復 した原因は、初期の ASR によって生じたひび割れが、 その後に生成されたアルカリシリカゲル(以降 ASR ゲル と称する)により充填された可能性や、既に充填されて いた ASR ゲルの剛性が変化した可能性7)が考えられる。

 一方、Fig. 6 に示す ALA グループでは UPV の大き Fig. 5 The reduction ratio of UPV in CS group

0 20 40 60 -10 -5 0 5 10 15 20

Accelerated age (week)

) %( VP Uf o oit ar noi tc ud e R CS10 CS30 CS50 CS80

Fig. 6 The reduction ratio of UPV in ALA group

0 20 40 60 -10 -5 0 5 10 15 20

Accelerated age (week)

) %( VP Uf o oit ar noi tc ud e R ALA10 ALA30 ALA50 ALA80

(4)

ここで、 :反応性骨材量(g) βi:全骨材に占める半径 の骨材の比率 1:反応率から生成物量に換算する係数 (SiO2の分子量の逆数=0.0166) :半径 の骨材の反応率  式[2]から得られる全反応生成物量から、膨張に寄与 しない反応生成物量( )を差し引き、膨張に寄与する 反応生成物量とマクロな膨張量との比例定数を とす ると、膨張率(ε)は式[3]で表される。 ε= ( − ) [3]   に関して魚本らは、反応生成物を吸収する領域が 反応性骨材の表面積に比例すると仮定し、比例定数とし て (mol・cm/g)を導入している。  また、反応が進むことで系内のアルカリ濃度は減少し ていくことから、ある時点でのアルカリ濃度 (mol/L) は式[4]で表される。 = − β− [4] ここで、 :間隙水中の初期アルカリ濃度 (mol/L) :骨材の反応量から消費アルカリ単 位濃度に換算する係数(mol/g・L) :骨材によって初期に消費される アルカリ濃度(mol/L)  Kawabata らは と の導出について、アルカ リ濃度と継続時間を変化させた化学法により実験的に取 得している。本検討では直接測定を行っていないが、同 一産地の反応性骨材を使用している上野らの実験値3) 参考に設定した。 3. 2 CS グループに関する算定結果および考察  3. 1 節のモデルを使用して CS グループのアルカリ濃 度および ASR 膨張量の経時変化を算定した。本解析に おける時間ステップは 24 時間とし、CS 骨材は反応に 寄与せず、 および もゼロと仮定した。算定に使 用した諸係数を Table 2 に示す。  Fig. 7 は CS グループの各調合におけるアルカリ濃度 の算定値の経時変化である。図より促進材齢初期に で設定される反応性骨材へのアルカリ吸着と、ASR に

Σ

とによる周辺部の膨張圧の緩和 3) ALA そのもののアルカリ骨材反応に伴う系内のア ルカリ消費による反応性骨材の反応率の低下  ここで 2)に関しては、ALA 外部で生成された ASR ゲルがひび割れに沿って ALA 内部に移動した場合と、 ALA 内で ASR ゲルが生成された場合の二通りが考え られる。次章では以上に述べた想定される仮説を検証す るために、魚本ら11)が提唱した U.F.O. モデルによる数 値解析的検討を実施する。

3.  U.F.O. モデルによる考察

 本章では 2 章の実験結果に対する考察を深めるた めに、魚本らによって提唱された反応速度論に基づく ASR 膨張のシミュレーションモデル(U.F.O. モデル)を 用いる。  このモデルは、反応性骨材の表面から一次元的に ASR が進行するとの仮定から間隙水中のアルカリ濃度 や反応生成物量の経時変化を算定するもので、粒径ペシ マムや組成ペシマムの膨張挙動をある程度定量的に説明 することができる。本研究ではこのモデルに修正を加え た Kawabata ら12)、上野ら3)の手法を参考にした。 3. 1 反応モデル概要  球形の骨材表面から内部に反応層が一次元的に進行す る系を想定し、骨材の反応層中のアルカリ濃度勾配が直 線で近似でき、反応速度がアルカリ濃度に比例すると仮 定すると、反応層の成長速度は式[1]で表される。 / =( − )・ / [1] ここで、 :反応層の厚さ(cm) :時間(hr) :ペースト部の間隙水のアルカリ濃度 (mol/L) :ASR が進行するアルカリ濃度の限 界値(mol/L) :反応速度定数(cm2/hr)  Kawabata らは、Diamond の研究を参考に の値 に 0.25mol/L を採用しており、本研究でも同じ値を使 用した。  次に反応層の体積と反応性骨材の体積の比で定義され る反応性骨材の反応率を用いると、反応生成物量( ) は式[2]で表現される。 =

Σ

β 1 [2]

Table 2 Coefficients used for simulation

cm2/hr mol/g・l mol/g mol・cm/g %/mol mol/l mol/l

reactive 3.25E-11 3.99E-11 6.62E-5 1.80E-5 0.5

0.25 2.13

(5)

よるアルカリ消費によって、いずれの調合でもアルカリ 濃度は急速に減少することが確認できる。減少速度は反 応性骨材率が大きいほど大きく、最も反応性骨材率が大 きい CS80 では促進材齢 3 週程度で =0.5 を下回った。  U.F.O. モデルを使用した研究では、膨張に寄与する 反応生成物量から試験体の膨張率に変換する際に式[3] が使用され、値はフィッティングパラメータの役割を果 たしている。値をフィッティング以外の方法で同定する ことはほぼ不可能であるが、ASR による内部ひび割れ の進展に関する著者らの実験4)では、ASR により生じ る微細ひび割れは、主に骨材の周囲に沿って進展すると いう結果が得られていることを考慮すると、値はコンク リートに含まれる骨材の剛性や粒径および形状の影響を 受けると考えられる。  よって本研究では、異なる種類の骨材特性を考慮でき る式[3]を採用した。 ε=( + )( − ) [3] ここで、 :反応性骨材もしくは共存する骨材に 関する膨張に寄与する反応生成物量 と膨張率との比例定数(%/mol) :反応性骨材もしくは共存する骨材の 体積割合   と はいずれも不明であるため、上野らの研究3) を参考に、 を 0.5 と固定して、 の値を 0 から 1 まで変化させた。促進材齢 62 週における算定結果を Fig. 8 に示す。  図より =1 のときに算定値と実験値が最もよい対 応を示すことが分かった。 が より大きい値を取 るという結果は、CS 骨材を迂回するひび割れが ASR 膨張率を増大させている可能性を示唆している。  なお、反応性骨材と CS の値を区別しない式[3]を使 用した場合、算定値上のペシマム混合率は 30 %で変わ らないが、反応性骨材率が小さい領域で膨張率を過小に 評価する結果が得られる。   =1 としたときの膨張率の算定値と実験値の経時 変化を Fig. 9 に示す。図より算定値は CS10 や CS30 で促進材齢初期には膨張率を小さく、長期的には大きく 見積もる傾向がみられる。算定値と実験値で差異が生じ ることに関しては、U.F.O. モデルでは反応性骨材の反 応によりアルカリが消費されることによって ASR 膨張 が停滞するのに対し、実験ではアルカリ消費のほかにも 4 章で後述するように、ASR ゲルのひび割れ部への移 動や試験体外への流出なども長期的な ASR 膨張を抑制 する原因となりうるためと考えられる。 3. 3 ALA グループに関する算定結果および考察  次に ALA グループを対象とした考察を行う。ALA 粗骨材の混合によって ASR 膨張率が低下する機構とし て、2.5 節に 1)∼3)の 3 つの想定機構を挙げた。これ らは 1)の ALA の力学的性能が与える影響と、2)、3) の ALA そのものの ASR 反応の影響とに大別できるた め、ALA の反応を考慮した場合と、考慮しない場合で 解析を行った。 (1) ALA の ASR 反応を考慮しない場合  ALA が ASR 膨張に対して力学的影響のみを与える と考えた場合、その影響は 値で表現されると考えら れる。

Fig. 8  Comparison between calculated and experimental values of expansion at 62 weeks

Fig. 7  Calculation results of changes in alkali concentration over time in CS group

0 20 40 60 0 0.5 1 1.5 2 2.5

Accelerated age (week)

Ccp )L/ lo m( CS10 CS30 CS50 CS80 0 20 40 60 80 100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 ) %( oit ar noi sn ap xE CS CS-sim Ecs=1 CS-sim Ecs=0.5 CS-sim Ecs=0.1 CS-sim Ecs=0

Volumetric ratio of reactive aggregate (%)

Fig. 9  Comparison between calculated and experimental values of expansion over time

0

20

40

60

0

0.1

0.2

0.3

0.4

Accelerated age (week)

)

%(

oit

ar

noi

sn

ap

xE

CS10 CS30 CS50 CS80 CS10 CS30 CS50 CS80

(6)

 ALA の ASR 反 応 に よ る ア ル カ リ 消 費 を 無 視 し て、式[3]の のみを変化させた場合の解析結果は Fig. 8 の CS-sim と同一の結果になる。  Fig. 8 の結果を見ると、膨張性の反応生成物による膨 張圧を ALA の体積割合分ゼロ( =0)と考えた場合 であっても、ASR 膨張率の算定値は 0.01∼0.15 %とな り、Fig. 4 で示した実験値より過大な値が算定される。 よって、ALA がコンクリートの ASR 膨張に対して与 える影響は、力学的特性のみでは評価できないと考えら れる。 (2) ALA の ASR 反応を考慮した場合   杉 山 ら6)、Li ら10)の 研 究 で 言 わ れ て い る よ う に、 ALA 骨材はコンクリート系内において無視できないほ どアルカリを消費すると考えられる。ALA 骨材による アルカリ消費を考慮する場合、反応生成物量 を求 める式[2]、およびアルカリ濃度 を求める式[4]は、 以下のように修正する必要がある。 = β 1 + β 1 [2] = − β − β −( +C ) [4]  ここで、添え字の は反応性骨材、 は ALA 骨材 を意味している。  Li らの研究では反応性細骨材を ALA 細骨材で置換 したときに、細孔溶液中のアルカリの減少速度が増加 する結果が得られている。本研究では ALA 骨材の化学 法の結果は継続時間が一点のみであるため、 を固 定して を、 / の比から推定した解析( = 1.12 )を実施した。  その結果、Fig. 10 に示すように、アルカリ濃度はす べての調合で促進開始後急速に低下し、促進材齢 62 週 まで膨張率はゼロとなった。  本節で実施した算定には多くの仮定が含まれているこ とや、実際には ALA グループでもわずかながら ASR

Σ

Σ

Σ

Σ

膨張率が計測されていることを考慮すると、この試算に は今後確認すべき事項が多数含まれているが、ALA の ASR 反応を考慮することでより実験に近い挙動が得ら れたと考えている。

4.  外部からアルカリを供給した場合の ASR 膨張

挙動に関する実験(実験シリーズ 2)

4. 1 実験概要  3. 3 節(2)の算定条件で ALA グループの試験体が 0.05 %程度の膨張率に至るには約 2 倍のアルカリを供 給する必要があることになる。そこで、3. 4 節の算定結 果の妥当性を確認するため、促進材齢 62 週まで終了し た試験体を用いて、水酸化ナトリウム試薬によりアルカ リ濃度を 1.0mol/L としたアルカリ溶液を浸漬したウエ スを試験体に巻き付ける養生(アルカリラッピング)を施 し、60 ℃環境で促進養生を行った。その後は所定の材 齢で質量と長さ変化を測定し、測定後は新しいアルカリ 溶液(1.0mol/L)を再びウエスに含侵させ、極力同じ濃 度のアルカリが供給されるよう実験を行った。 4. 2 測定結果 (1) 質量変化  外部からのアルカリ供給により新たに ASR ゲルが生 成された場合、試験体の質量は増加するため、試験体の 質量変化は試験体の ASR の進展を示す一つの情報とな り得る。Fig. 11、12 に実験シリーズ 2 の期間における 質量変化率の経時変化を示す。  Fig. 11 に示す CS グループは、初期段階では反応性 骨材の量に応じて質量が増加傾向を示しているものの、 促進日数の経過に伴い、いずれの試験体も減少にシフト した。質量測定時にウエスが湿潤状態であることを確認 しているため、この CS グループでみられる質量減少の 主な原因は、試験体の乾燥ではなく、シリーズ 1 の実 験時に生じた多数のひび割れから試験体外部に ASR ゲ ルが流出したことによるものと考えられる。  次に Fig. 12 の ALA グループに着目すると、いずれ の試験体も促進約 5 週までは増加傾向をとり、その後の 材齢では反応性骨材率によって異なる挙動を示した。こ の間の全体の傾向としては、反応性骨材率が大きいもの ほど質量増加率が先に停滞する傾向がみられた。ALA の混合率が大きいものほど質量増加率が大きかった原因 としては、元々の試験体密度の差により、同量の ASR ゲルが生成された場合に見かけ上質量増加率が大きくな ることに加えて、ALA の空隙に ASR ゲルが生成もし くは吸着した量が大きかった可能性が考えられる。 (2) 長さ変化  Fig. 13、14 にシリーズ 2 における膨張率の経時変化 を示す。Fig. 13 に示す CS グループでは外部からのア ルカリ供給による、さらなる膨張が確認された。中でも ペシマム混合率とされている反応性骨材率 30 %の試験 体は、外部からのアルカリ供給により 0.15 %の膨張率 を示した。

Fig. 10  Calculation results of changes in alkali concentration over time in ALA group

20

40

60

0

0.5

1

1.5

2

2.5

Accelerated age (week)

C

cp

)L/

lo

m(

(7)

用して、反応性骨材率ならびに共存する骨材の種類をパ ラメータとした実験を実施し、その膨張挙動を U.F.O. モ デルにより説明することを試みた。その結果、以下の知 見が得られた。 (1) 反応性骨材と共存する骨材として石英斑岩砕石と、 膨張頁岩製の人工軽量骨材を使用した場合、同一の 反応性骨材を同量使用した場合でも、共存する骨材 種類により、コンクリートの ASR 膨張率ならびに ペシマム混合率が変化することが確認された。 (2) U.F.O. モデルを用いた試算の結果、共存する骨材 の力学性能を考慮した値を用いることで、解析精度 が向上した。 (3) U.F.O. モデルを用いた試算の結果、人工軽量骨材 を混合したコンクリートで ASR 膨張率が著しく低 減される理由としては、人工軽量骨材の力学的性能 だけでは説明がつかず、人工軽量骨材によるアルカ リ消費が主な原因と考えられた。

謝辞:

 本研究は第 32 回セメント協会奨励金および日本コン クリート工学会 2018 年度研究助成の補助を受け実施し ました。また化学法の実施にあたり(一財)建材試験セン ター西日本試験所の杉原大祐氏に、実験の実施にあたり 村上亮太氏、渡部雅貴氏にご尽力をいただきました。こ こに記して謝意を表します。  U.F.O. モデルでは、アルカリが十分に供給された場合、 反応性骨材率が大きいものほど膨張の余力を残している ことになるため、CS50 や CS80 より CS30 の膨張率が 増加したことを説明することができない。  本実験の結果が生じた仮説の一つとしては、ASR に よって生じるコンクリートの劣化形態が ASR の段階に より変化することが考えられる。つまり、劣化初期段階 では新たなひび割れの生成が主たる膨張要因であるのに 対し、劣化後期ではひび割れ一本あたりの幅の拡大の 影響が大きくなる可能性がある。この現象は Sanchez ら13)によって報告されているが、この知見を参考にする と、本研究でみられた CS グループのシリーズ 2 期間 における膨張は、シリーズ 1 で生じたひび割れ幅の拡 大の影響が大きかったものと推察される。  一方、ALA グループはアルカリ供給を行った後も現 在に至るまで、ASR 膨張が生じていない。そのため、 現時点では ALA による ASR 膨張の低減機構を明らか にすることができなかった。今後も引き続き外部からの アルカリ供給を継続するとともに、ALA の や を同定すること、細孔溶液中のアルカリ濃度の取得する ことにより、解析精度の向上を図る予定である。

5.  結論

 本研究では反応性骨材と共存する骨材が ASR 膨張に 及ぼす影響を確認するため、同一種類の反応性骨材を使 0 10 20 30 40 -1 0 1 2

Accelerated age in Series 2 (week)

) %( oit ar eg na hc ssa M CS10 CS30 CS50 CS80

Fig. 11 Mass change of CS group in Series 2

0 10 20 30 40 -1

0 1 2

Accelerated age in Series 2 (week)

) %( oit ar eg na hc ssa

M ALA10ALA50 ALA30ALA80

Fig. 12 Mass change of ALA group in Series 2

0 10 20 30 40 0

0.1 0.2

Accelerated age in Series 2 (week)

) %( 2s eir eS ni oit ar noi sn ap xE ALA10 ALA30 ALA50 ALA80

Fig. 14 ASR expansion of ALA group in Series 2 Fig. 13 ASR expansion of CS group in Series 2

0 10 20 30 40 0

0.1 0.2

Accelerated age in Series 2(week)

) %( 2s eir eS ni oit ar noi sn ap xE CS10 CS30 CS50 CS80

(8)

学、Vol. 57、No. 6、pp. 454-460(2019)

8) 松田芳範ほか:軽量骨材コンクリートを用いた実構 造物の調査報告、コンクリート構造物の補修、補 強、アップグレード論文報告集、Vol. 4、pp. 183-188(2004)

9) Collins et. al.:Alkali-silica reaction:Suppression of expansion using porous aggregate, Cement and Concrete Research, Vol. 17, pp. 89-96(1987) 10) C. Li et. al.:A mechanistic study on mitigation

of alkali-silica reaction by fine lightweight aggre-gates, Cement and Concrete Research, Vol. 104, pp. 13-24(2018)

11) 魚本健人ほか:アルカリ・シリカ反応によるモル タルバーの膨張挙動を予測するモデルの構築、コ ンクリート工学論文集、Vol. 3、No. 1、pp. 109-119 (1992)

12) Kawabata, Y. et. al.:The mechanism of limited in-hibition by fly ash on expansion due to alkali-silica reaction at the pessimum proportion, Cement and Concrete Research, Vol. 92, pp. 1-15(2017) 13) Sanchez, L. et al.:Overall assessment of

alkali-aggregate reaction (AAR) in concretes presenting different strengths and incorporating a wide range of reactive aggregate types and natures, Cement and Concrete Research, Vol. 93, pp. 17-31(2017)

参考文献:

1) Multon, S. et. al.:Effects of aggregate size and alkali content on ASR expansion, Cement and Con-crete Research, Vol. 40, pp. 508-516(2010) 2) Zhang, X. et. al.:The alkali-silica reaction in OPC/

silica glass mortar with particular reference to pessimum effects, Advances in Cement Research, Vol. 3, No. 9, pp. 9-13(1990) 3) 上野貴行ほか:アルカリ反応性を有する急速膨張性 骨材のペシマム混合率の経時的変化に関する研究、 性能規定に基づく ASR 制御型設計・維持管理シ ナリオに関するシンポジウム論文集、pp. 231-238 (2017)

4) Teramoto, A. et. al.:Visualization of internal crack growth due to alkali-silica reaction using digital image correlation, Construction and Building Mate-rials, Vol. 190, pp. 851-860(2018) 5) 佐川康貴ほか:ペシマム現象を示す骨材を用いた コンクリートの加速度試験および暴露試験におけ る膨張挙動、コンクリート工学論文集、Vol. 25、 pp. 135-145(2014) 6) 杉山彰徳ほか:人工軽量骨材のアルカリシリカ反応 性と ASR 判定試験法の提案、土木学会論文集 E、 Vol. 63、No. 1、pp. 79-91(2007) 7) 高橋佑弥:ASR 生成物の力学特性測定と構造解析 モデルでの取扱いに関する研究動向コンクリート工

Atsushi TERAMOTO

*1

and Takaaki OHKUBO

*1

ABSTRACT:

In this study, we conducted an experimental and analytical study to clarify the

effect of aggregates coexisting with reactive aggregates on the Pessimum of ASR. As a result,

it was confirmed that the ASR expansion and the Pessimum mixing rate depended on the type

of coexisting aggregate even when the same reactive aggregate is used in the same amount. In

addition, as a result of model simulation, when considering the mechanical performance of coexisting

aggregates, the analysis accuracy is improved, and the reduction of ASR expansion due to ALA

mixing is considered to be caused by not only mechanical performance of ALA but also alkali

consumption by the ALA.

KEY WORDS:

Alkali-silica reaction, Reactive aggregate, Pessimum effect, Artificial lightweight

aggregate

EFFECT OF AGGREGATE COEXISTING WITH REACTIVE

AGGREGATE ON ASR EXPANSION

*1 HIROSHIMA UNIVERSITY, The Graduate School of Advanced Science and Engineering(1-4-1, Kagamiyama, Higashi-Hiroshima-Shi, Hiroshima 739-8527, Japna)

Fig. 1 Results of JIS A1145
Fig. 2 ASR expansion of CS group Fig. 3 ASR expansion of ALA group
Fig. 6 The reduction ratio of UPV in ALA group
Table 2 Coefficients used for simulation
+4

参照

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