小規模校における学校行事と児童の意識 : 児童の興味から見た行事の意義
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(2) Nα49. 1995.3. 小規模校における学校行事と児童の意識 一児真の興味から見た行事の意義一 玉井 康之・久々江★志 (北海道教育大学釧路枚・江別市立江別太小学枚). Schoolevent$andsensesofchildatthesma11school; ro1lofschooleventsfrompointofinterestofchild. YasuyukiTamai,TakashiKugue 重等の意識は,比較的粥査きれていないのが実態で. Ⅰ.はじめに一本積の課員と方法. ある。行事は特に,児童が楽しさや意義を感じるも. 本稿の誤用は,小規模枚において重要な位置を占. のを引き出すことで初めて,意欲や積極性を引き出. めるとされる学校行事に対する児童の意識を,行事. すこともできるのである。逆に客観的に意義がある. ごと学年ごとに明らかにするによって,児童の意識. と位置づけされても,児童自身が楽しさ・意義を感. から見た行事の教育的効果をとらえることを課題と. ぜずに苦痛のみを感ずるとしたら,教育効果は壌め. している。. て弱いものとならぎるを得ない。行事の在り方が見. 一般的に小規模学校は,日常的な生活においては,. 直されようとしている中で,しばしば児童が楽しみ. 小人数のため相互に妥協的で組織的活動を行いにく. にしていた行事が削られたりしている。行事が児童. い。またそういった人間関係の中では,相互の食詰. に有効に働くためにも,児童からみた行事への意識. も乏しくなると言われている。しかし一方,組織的. を把握しておくことは不可欠である。その行事に対. 活動を意識的に組むならば,小人数のために逆にだ. する意識は,高学年と低学年でも善があり,学年に. れもが役員になることができ,全員の意志を議論に. 応じた行事内容をとらえることが重要である。. よって反映しやすくなる。また小人数で目が届きや. このような観点に基づき,本稿では釧路市内の小. すいために,行事においても父母や地域を巻き込ん. 規模枚である桂恋小学校を事例にして,まず学校行. だ大胆な企画を組みやすい。このように小規模枚の. 事を支える上で重要な地域との関係や,行事の指導. 日常生活での特性を,学校数育において意識的に穣. 上重視される縦割り砿(異年齢集団)の役割をとら. 庵面に転換していくことが求められている。. えた上で,次に学校行事全体に対する意識をとらえ,. このような小規模校の特性の中で,積極面を意識. 最後に個々の行事に対する意識を学年ごとにとらえ. 的に伸ばしていくために,一般的に特別活動が重視. たい。. されている。特別活動は,行事・学級活動・クラブ・ 児童会の4つが大きな柱ときれており,このような. ⅠⅠ.行事を支える学校環境と父母・児iの意識. 活動の中で集団性・社会性や主体性を兼おうとする ものである。. 1.釧路市立桂恋小学校の特徴と地域との連携の. 本稿では年間を通じて比較的多くの時間を費やし. 意識. て行われる学校行事を取り上げてその教育的効果を. 棲恋小学校の歴史は古く,明治5年からすでに寺. 抽出したい。この学校行事の教育的意義を抽出する. 小屋ができていた。明治29年には,正式に分教場が. ためにも,児童や父母の側から見た行事に対する認. できており,歴史が長いだけに地域との関係も深い。. 識をとらえていかなければならないが,従来の研究. 桂恋小学枚の規模は,全校児童数36名で,学級数4. では教師や学校から見た位置づけをとらえた研究は. 学級で複式学級をもつへき地枚である。へき地校で. 多いものの,小規模校における学校行事に対する児. はあるが,釧路市内にあり,中心部まで草で15分で ー55−.
(3) 玉井 康之・久々江★志. ある。地域は太平洋に面した漁村であり,地区の戸. にもつながると言われている。児童の意識から縦割. 数140戸のほとんどが漁家である。. り牡の効果をとらえてみると(表2),全体としては. 桂恋小学校では,地域の自然を生かした,海岸に. 縦割り班は楽しいと感じている児童が多いが,その. おける「浜学習」や「浜っ子クリーン」と称する浜. 中でも低学年は楽しいが高学年は楽しくないと感じ. の清掃活動,さらには老人ホーム訪問等のボランテ. ている児童が相対的に多くなっている。その大きな. ィア活動等少人数の特色を生かした体験活動を特に. 理由は,高学年になるほど行動や集軌こ対して責任. 重視している。. を持たされ自主的に判断しなければならなくなると ともに,より社会性が乏しくまとめにくい下学年へ. 学校行事を支える上で重要な条件の一つに地域と. の指導を行わなければならないからである。. の連携がある。学枚と地域の連携の必要性に関する. しかし他方で学年を越えた援助は,上の学年から. 父母の意識では,必要であると①強く思う3名,② 思う16名,③あまり思わない2名,⑥全然思わない. 援助を受けつつ下の学年に援助を行っており,児童. 0名,となっており,学校と地域の連携の必要性を. において教えたり教えられたりする関係が形成され. 感じている。また小規模性も,学校行事の内容・教. ている(表3)。特に行事においては縦割り集団の効. 育効果を規定する条件となるが,父母の小規模性に. 果を発拝している。また放課後のあそぴでも,縦割. 対する意識では,活躍の場が与えられるという点に. り班を形成する以前は学年ごとの遂びが多かった. 積極面を感じている(表1)。このことは,いったん. が,縦割り班形成以後は異学年を含めて遊ぶ機会が. 行事等を組めば,積極性を引き出す契機にもなるこ. 多くなっており,日常的な下級生への指導や上級生. とを示している。. への模倣学習が行われている。. また父母の学校行事への参加状況は,①9∼10. このような意識的な縦割り集団の形成は,行事を 単に参加して楽しいというだけに終わらせることな. 割−0名,②6∼8割−9名,③3−5割−2名, ⑥3割以下−0名,となっており,参加率は高い。. く,組織的な活動を組み立て社会性を形成していく. このことが学校行事を活発にして児童にとってのや. 上で重要な役割を果たしている。異学年の集団は,. りがいを生み出すとともに,父母との結び付きを強. 小規模の特性を逆に横海面として生かしたものであ. め,共同性を学ぶことにつながっている。. る。以上のような地域との関係や意識的な縦割り集 団は学校行事を効果的なものにする基礎的な条件と もなっており,このことを前提にして,次に各行事. 表1 小規模性に対する父母の意識. ごとに児童の意識をとらえていきたい。 (∋活躍の場が多く与えられる. 17名. ②少人数の子どもで,全校の全月を熟知. 14名. ③学校,家庭,地域ぐるみの教育. 12名. ⑥全校活動への参加が容易. 11名. ⑤能力に応じた指導を受ける機会が多い. 9名. ⑥のびのぴとした人間形成. 8名. ⑦読書への関心や自己表現の意欲の向上. 4名. ⑧新しいことへの反応が顕著. 1名. ⅠⅠⅠ.行事にたいする児童の意識 まず行事全体の中から,児童がどのような行事に 最も興味をもっているかをとらえ,その意味をとら えたい(表4)。最も好きな行事1つを児童に選んで もらうと,34名中校内キャンプの18名が際立って多 い。次に多いのが遠足の5名で,その次に多いのが. 回答者21名. 地域交流会の3名である。これらをみて分かるよう. 注:1994年久々江の調査により作成。. に,屋外での行事・活動に非常に強い興味を示して. 以下表同様. いることが分かる。最も多かったキャンプでは,ふ だんの生活とは異なった生活を経験できるととも. 2.縦割り斑の形成と児iの教育効果. に,夜をともにしながら友達の別の側面を発見し新. 小規模校では,小規模ゆえに縦割り披などを形成. しい人間関係を作ることができるのである。. しやすく,意識的に異年齢集団を形成することが可. 全体動向をとらえた上で,次に各行事に対する意. 能である。異年齢集団は,高学年の負担は大きいが,. 識を1つずつとらえていきたい。. そのことが逆に高学年の責任性やリーダー性の体得. まず最初に最も好きだという児童が多かった校内 −56−.
(4) 1995.3. 小規模校における学校行事と児童の意識. Nα49. 喪2 擬制り班でやる学校行事に対する児童の意織 (1年)(2年)(3年)(4年)(5年)(6年) 合 計 5. 5. 0. 0. 0. 0. 10. い. 2. 3. 2. 0. 0. 1. 8. 通. 0. 2. 1. 1. 2. 1. 7. あ ま り 楽 し 〈 な い. 0. 0. 0. 2. 1. 2. 5. 楽 し く な い. 0. 0. 2. 2. 1. 1. 6. と て も 楽 し い 楽. し. 普. (回答36名). 表3 異学年との援助関係 (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 上の学年に援助してもらった. 7. 下の学年に援助をしてあげた. 8. 1. 2. 1. 7. 2. 5. 3. 19 3. 20. (回答30名). 表4 児iの最も好さな学校行事と主な理由 (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 ① 校 内 キ ャ ン プ ② 遠. 足. (卦 地 域 交 流 会 ④ 運 (診 文. 5. 5. 5. 2. 1. 2. 1. 0. 0. 0. 2. 5. 2. 1. 0. 0. 0. 0. 3. 動. 会. 1. 0. 0. 0. 1. 0. 2. 化. 祭. 1. 0. 0. 0. 0. 1. 2. 0. 2. 0. 0. 0. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. ⑥ マ ラ ソ ン 大 会 ⑦ 浜 っ 子クリ ー. ン. ⑧ 氷上フェスティパル 穫. ⑨ 収. 祭. 0. 2. 行事全体の興味を選択する上で児塞の意識した主な理由 選. 行事番号. 18. 0. 択. の. 理. 由. とてもにぎわい、友達と一緒にきもだめし、テント張りや料理を作ったりして 楽しい(2.3,4, 5年生). 夜遅くまで進んでいられるし、逢うところで一日を過ごせるから。また、今年は逢うけれど、城山小 の人と友達になれるから(4年生). みんなと一緒に夜まで起きていられるし、みんなで料理をしたりして、今後、自然な所へ行っても自. ②⑥⑤⑥⑥⑦⑦⑦. 分に自信が持てるようになる。(6年生) みんなと一緒に歩けるし、お弁当やおやつを食べれるから(1年生) 運動会が終わった後、今まで練習してきたことが全部できてすっきりして気持ちがいいから(5年生) 楽奏や劇をするのが好きだから(6年生) 自分の記録に挑戦でき、みんなと一緒に協力できるから(6年生) 足がはやくなったり、体力がつくから(2年生) おじいちゃん、おばあちゃんが好きだし、いろいろなことを教えてもらえるから(1,2年生) すっきりして気持ちいい(1年生) 歩いて色々な所に行き、色々な事を知ることができるから。(6年生) −57−.
(5) 玉井 康之・久々江★志. キャンプでは,やはり「とても好き」である児童は,. このことによって,老人への思いやりや福祉につい. 29名中24名で全学年を通じて多くなっている(表. ての関心を高めていることと大きく連動している。 運動会への興味では,36名中「とても好き」が14. 5)。93年までは市街地の城山小学校と交流キャンプ を行っていた。一般的にキャンプの重要な教育効果. 名,「好き」が12名,「ふつう」が10名とほぼ全月が. は,藻食を共にする中での新しい子どもの友情の形. 運動会を好意的に思っている(表8)。ただその中で. 成や学枚では見られない助け合いがみられる所にあ. も高学年では「とても好き」の比率が低くなってい. る。そのような中でふだん付き合いのなかった子ど. る。運動会が好きな理由としては,まず運動会の練. もとも,急速に親しくなることができる。また親に. 習を行う体育は,もともと親しみやすい教科である. 依存する生活から離れて自律的な生活態度を養うも. ために,運動会を好きになる理由として「体育が好. のである。このような意義を持つと言われるキャン. きだから」というのが多いのは当然である(表9)。. プは,児童にとっても新しい発見を伴う有意義なも. また「友達と楽しむことができる」「競争できる」が. のであると言えよう。. 多いのも,競いながら仲間作りにつながっているこ とが分かる。次に多いのは,「家族や地域の人が見に. 遠足も同様の傾向が見られる。キャンプと同様「あ. 来てくれる」というもので,1年生の中では最も多. まり好きではない」と答える児童は,一人もいない. くなっている。運動会に関しては,「上下の学年と親. (表6)。全体では「とても好き」と答える児童が36. 名中3分の2である24名を占めている。学年では相. しくなれる」という児童は1名のみで,兵卒齢の楽. 対的に,低学年ほどより強く楽しみにしているが,. しさは運動会では追求していないことが分かる。 文化祭では,36名中「とても好き」が14名で,「好. 高学年では相対的に楽しみが弱くなっていることが 分かる。これは,高学年ほど物足りなさを感じるか. き」が6名で,「ふつう」が13名である。また「みん. らである。遠足もキャンプと同様屋外での活動であ. なが見に釆て恥ずかしい」という理由や「準備が面. るが,比較的型にはまって教師から企画内容を与え. 倒である」という理由で「あまり好きではない」と. られる遠足と自由度と未経験分野や冒険的な要素を. いう児童も3名いる。好きである理由としては,「歌. 多く残すキャンプとに違いがある。そのことはあら. や劇が好き」だという児童が11名で最も多く,「みん. ゆる行事についても言えることであり,型にはまっ. なで楽しく準備ができる」という児童が次に多く5. た与えられる内容が多くなればなるほど高学年の児. 名である(表10)。演劇の内容は,児童の身近な活動. 童にとっての意欲をそぐことになり,教育的意義を. をそのまま教師が台本として作成したものである。. 低めていくのである。. 歌や劇を披露することは,表現力や主体性の形成に. 地域交流会は地域の教育力を生かす中で地域と人. も関係するものであり,児童も歌が好きであること. 間との関わりについて考えさせ積極的に地域に関わ. からすれば,小規模校における文化祭の教育効果は. ろうとする態度を養うことを目的に,地域の老人を. 重要である。このような準備の過程が児童にとって. 招いて,昔話や遊びを教えたり,児童が老人のかた. 興味深いものであって,「地域の人が見に釆てくれ. もみをしたりして交流を図るものである。低学年を. る」という理由は2名のみで,それほど好きな要因. 中心に16名の児童が「とても好き」であると回答し. にはなっていない。. ている(表7)。低学年では,地域交流会が学枚行事. マラソン大会は,30名中「とても好き」「好き」の. の中で最も好きであるという児童も3名いる。その. 合計が12名で,「あまり好きではない」「きらい」の. 直接的な理由は,老人・祖父母に「いろいろなこと. 合計が11名で,好き嫌いがほぼ半数ずつとなってい. を教えてもらった」というものである。そもそも桂. る。これは走ることが好きであり得意な者と,嫌い. 恋地区は三世代同居が多く,親が昆布漁などで忙し. であり苦手な者に分かれるためである。したがって. いときは,祖父母が児童の世話をしており,祖父母. 個人レースで行う限りは,常にこの好き嫌いが分か. とのつながりは強い。そういったつながりを,学校. れる問題が付随して〈るものである。. 教育の中で一層強めていくものである。. 「浜っ子クリーン」は,1990年度より新たな試み. また,ボランティア活動の一環として,桂恋小学. として児童自らが名付けたもので,清掃範囲を地域. 校に比較的近距触にある長生園(養護老人ホーム). の海岸である岩見浜まで広げて清掃活動を行ってい. を訪問し,器楽演奏や合唱で老人と触れ合っている。. る。その目的は,岩見浜の清掃奉仕活動を通して, ー58−.
(6) N(149. 小規模校における学校行事と児童の意識. 1995.3. 表5 校内キャンプに対する児iの意識 (1年) (2年)(3年) (4年)(5年)(6年) 合 計 (∋ と て も 好 き ② 好 (卦 ふ. 5. 5. 3. 3. 24. 1. 0. 0. 1. 2. 4. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. き つ. つ. ⑥ あま り 好き でない ⑤ き. 8. ら. い. 表6 速足に対する児iの意識 (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 (D と て も 好 き ② 好 ③ ふ. つ. 7. 7. 2. 4. 2. 2. 24. き. 0. 2. 3. 1. 2. 3. 11. つ. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. ⑥ あま り好き でない (9 き. ら. い. 表7 地域交流会に対する児童の意識. (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 6. 7. 1. 1. 0. 1. 16. き. 0. 2. 1. 1. 3. 2. 9. フ. 1. 0. 3. 3. 1. 1. 9. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 1. 1. ① と て も 好 き. ② 好. ③ ふ. つ. ⑥ あま り好き でない ⑤ き. ら. い. 表8運動会に対する児iの意識 (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計. (D と て も 好 き ② 好 ③ ふ. つ. 5. 5. 3. 0. 1. 0. 14. き. 1. 3. 2. 1. 2. 3. 12. つ. 1. 1. 0. 4. 1. 3. 10. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. ⑥ あま り好きでない ⑤ き. ら. い. 表9 運動会が好きな理由. (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 体 育 が 好 き だ か ら. 1. 5. 0. 0. 1. 1. 8. 友達と一緒に楽しむことができる. 0. 3. 2. 1. 1. 1. 8. 競 争 で き る か ら. 1. 3. 1. 0. 1. 1. 7. 家族や地域の人が見にきてくれる. 3. 0. 2. 0. 0. 0. 5. 上下の学年の人と仲良〈なれる. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 1. ー59−.
(7) 玉井 康之・久々江貴志. 漁村において地域に多くの恵みを与えてくれる自然. らい」3名と「あまり好きでない」1名がいる。こ. に感謝するとともに,地域を愛そうとする態度や公. れはマラソン大会と同様冬季スポーツの苦手な者が. 共心を育てる事である。また,これも縦割り姓活動. きらいになる傾向があるためである。ただしマラソ. を中心に行っている。それは,異学年で活動するこ. ンほど明確に分かれないのは,スケートやソリにし. とにより,協力することの大切さ,思いやりの心を. てもゲーム的な要素が大きく入り込むことによるた. 育てることを目指している。. めである。. 最後に「収穫祭」を見てみよう。36名中「とても. 通常,清掃作業はあまり好まれない。しかし,児. 好き」12名,「好き」15名で,興味を持つものが多い. 童の意識では,「とても好き」を選んだ児童が10名と. (表12)。好きな者の学年の内訳としては,全学年を. 一番多く,「好き」が6名で,半数近くの児童が好き であると回答している(表11)。「浜っ子クリーン隊」. 通じてどの学年にも見られる。「収穫祭」が好きな理. と児童自らが名付けたことで,一層やる気を引き出. 由では,「自分たちで育てたジャガイモを料理でき. している。今年から学校内の掃除も自主的にやるよ. る」が13名で最も多く,次に「自分たちで育てたジ. うに転換している。「浜っ子クリーン」の良い影響が. ャガイモを家族に見せれる」が6名で次に多い(表. でて,全児童が協力して清掃活動を行うようになっ. 13)。この二つの理由は,いずれも「自分たちで育て. ている。. た」という点に重点があり,そのことを自分で確認. 「氷上フェスティバル」は,29名中「とても好き」. できたり,家族に認めてもらうことができるという. 12名と「好き」5名を合わせると,17名おり,運動. 点が重要なのである。このことは「収穫祭」が勤労. 会と同様の児童の楽しみを含んでいる。一方で「き. 生産学習の教育的効果を持つことを示すものであ. 表10 文化祭が好きな理由. (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 歌 や 劇 が 好 き だ か ら. 2. 5. 1. 0. 0. 3. 11. みんなで楽しく準備ができるから. 2. 2. 0. 1. 0. 0. 5. 上下の学年の人と仲良くなれるから. 2. 0. 1. 0. 0. 0. 3. 2. 1. 家族や地域のひとが見にきて〈れる そ. 他. の. 0. 1. 0. 0. 1. 0. 0. 0. 0. 1. 0. 0. 表11「浜っ子クリーン」に対する児童の意識. (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 ① と て も 好 き. ② 好 ③ ふ. つ. 3. 0. 0. 1. 0. き. 1. 3. 1. 0. 0. 1. 6. フ. 0. 0. 1. 2. 2. 2. 7. 0. 2. 1. 1. 1. 1. 6. 0. 1. 2. 2. 0. 2. 7. ④ あま り好きでない ⑤ き. ら. 10. 6. い. 表12 収穫祭に対する児童の意識. (1年) (2年) (3年) (4年) (5年) (6年) 合 計 ① と て も 好 き. ② 好 ③ ふ. き つ. つ. ④ あま り 好き でない ⑤ き. ら. い. 4. 6. 1. 2. 2. 2. 1. 0. 0. 0. 1. 2. 0. 0. 0. −60−. 0. 0. 12. 1. 4. 4. 15. 1. 0. 1. 3. 2. 0. 0. 5. 0. 0. 1. 1. 1.
(8) No.49. 小規模校における学校行事と児童の意識. 1995.3. 表13 「収穫祭」が好さな理由. (1年)(2年)(3年)(4年)(5年)(6年) 合 計 自分たちで育てたじゃがいもを、料 1. 6. 1. 2. 4. 4. 13. 1. 3. 2. 0. 0. 0. 6. 上下の学年の人と仲良くなれるから. 3. 0. 0. 0. 0. 0. 3. 農園作業が友達と一緒にできたから. 1. 2. 0. 0. 0. 0. 3. 理できる. 自分たちで育てたじゃがいもを家族 にみせれる. る。この勤労生産学習も小規模であるために,自分. 要領においても目指している意欲・主体性及びその. が直接育てたイモと食べるイモが目に見えて結び付. 基盤となる体験の重視と,行事の減少とがまさに矛. き,勤労の成果の実感も大きくなるのである。. 盾する方向であることを認識していないことによる. 以上各行事ごとに児童の意識を学年ごとにとらえ. ものである。行事を含めた特別活動の重要性が理解. てきた。どの行事も楽しいと感じる暑が多いが,行. きれていなかったり,またどの行事が子どもにとっ. 事はその特性ごとに児童の好みの違いもでてくるこ. て重要であるかを深く見棲められなかったことを示. とが明らかとなった。一般的に言えることは,低学. すものでもある。学校教育の目的が教科外を含めて. 年ほど,あらゆる行事に興味を示しており,どんな. 人格の形成にあるとしたら,行事を教育課程の重要. 行事であっても新鮮さを伴うのである。このことは,. な要因として位置づけ,その上で,どのように児童. 低学年ほど体験学習を好むという一般的傾向と一致. に意識されているかを各学枚において正確に把握す. するものである。またキャンプや速足など学校外も. ることが重要である。 こういった行事ごとの意識の把握によって一層行. しくは屋外に出る行事及び宿泊を伴う行事もー般的 に好まれている。特にキャンプは宿泊を伴い,また. 事ごとの意義を高めたり,行事全体を再編成したり. 児童の企画自由度や冒険度も高いためにより興味を. できるのである。そのためには,与える行事ではな. 高めるものとなっている。また運動会のように競い. く,常に児童自らが相互に作り出す行事を重視しな. 合うことができる行事も好まれるが,しかし他方マ. ければならない。すなわち行事の再編成を含めて児. ラソン大会のように,特定の能力の差が明確に現れ. 童自身の自主的な話し合いと決定が棲めて重要とな. るものは好き嫌いもはっきり出るのである。それぞ. る。児童自身の自主的な判断において,やる意味が. れの行事ごとに冒険性,勤労性,体力の競争,奉仕. あると判断された行事においては,その準備や運営. 性,企画性など一般的に一括して述べられる行事も,. においても児童が大きな役割を果たし,行事の教育. 先に見たように各行事ごとにその意義は異なり,学. 力を一層高めていくことができるのである。. 年によってその興味も微妙に異なってくるのであ. 本稿では,児童の意識をほんの一面からとらえた ものに過ぎないが,児童の興味・意識がほとんど把. る。. 握されないまま行事の再編成が進もうとしている現 段階においては,児童の意識の把握は,行事・特別. ⅠⅤ.おわりに. 活動の在り方の貴重な方向性を示すものである。. 以上各行事を中心に,各学年の児童の興味の意識 ※注 本稿は,久々江が調査,分析したものを基に,. をとらえることに限定して行事全体の特性と各行事. 玉井が執筆したものである。. の教育的意義をとらえてきた。近年学校五日制の進 展に伴って,行事を減らすような指示が強まってい るが,単純に行事を減らして土曜日の帳尻を合わす だけでは済まきれない。現実に多くの学校で儀式的 行事は残されていながら,児童の楽しみにしていた 行事が真っ先に削られたりしている。それは新指導 −61−.
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