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IRUCAA@TDC : 口腔扁平上皮癌におけるデスモグレイン3と上皮成長因子受容体の潜在的相関とそのセツキシマブ治療効果に対する影響

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,

Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

口腔扁平上皮癌におけるデスモグレイン3と上皮成長因

子受容体の潜在的相関とそのセツキシマブ治療効果に対

する影響

Author(s)

三邉, 正樹; 秋山, 友理恵; 比嘉, 一成; 髙橋, 愼一;

河野, 通良; 野村, 武史

Journal

歯科学報, 119(5): 413-420

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.413

Right

Description

(2)

抄録:デスモグレイン(DSG)3は口腔扁平上皮癌

(OSCC)で高発現しており,上皮成長因子受容体

(EGFR)阻害薬のセツキシマブは OSCC の治療に

臨床応用されている。これまでに,表皮細胞におい

て DSG3と EGFR が相互作用していることが知ら

れており,EGFR 阻害により表皮細胞において細胞

間接着が増強し,分化が誘導されることが報告され

て い る。そ こ で 今 回 私 た ち は,OSCC に お け る

DSG3と EGFR の相互作用とそのセツキシマブの

治療効果に対する影響を調べた。4人の OSCC 患

者の原発巣と転移リンパ節から樹立された細胞株と

3種類の確立された細胞株を実験に使用した。各患

者の転移リンパ節由来の細胞株は,同じ患者の原発

巣由来の細胞株よりも DSG3と EGFR の発現が上

昇していた。セツキシマブ投与により,11種類中7

種類の細胞株で DSG3発現が最大3.

5倍上昇した。

高 カ ル シ ウ ム 条 件 下 で 濃 度 依 存 性 に DSG3と

EGFR の発現が上昇した。注目すべきことに,高カ

ルシウムによる DSG3発現誘導により,セツキシ

マブ低感受性細胞株におけるセツキシマブの効果が

最大23%増加した。以上の結果から,OSCC にお

いて DSG3と EGFR が潜在的に相関し,セツキシ

マブ治療効果に影響を与える可能性が示唆された。

緒 言

デスモグレイン(DSG)3は,カルシウム(Ca)依

存性の接着分子で,自己免疫性水疱症である尋常性

天疱瘡(PV)の標的抗原である

1−3)

。これまでに,口

腔扁平上皮癌(OSCC)において DSG3が異常発現し

ていることが報告されており

4−7)

,上皮成長因子受

容体(EGFR)も過剰発現していることが知られてい

8,9)

最近,PV の病 因 に DSG3と EGFR の 相 互 作 用

が関与していることが注目されている

10−12)

。EGFR

阻害薬は,PV IgG による EGFR のリン酸化を阻害

することで

10)

,DSG3の機能不全を抑制することが

報告されている

11)

。また,マウスモノクローナル病

原性抗 DSG3抗体の AK23は,PV モデルマウスに

おいて EGFR を活性化し表皮の過剰増殖を誘導す

ることが報告されている

13)

。これらの知見は,正常

表皮細胞において DSG3と EGFR が相互作用して

いることを示唆しているが,形質転換した表皮細胞

において,これらの相互作用を調べた研究はほとん

どない。

キーワード:口腔扁平上皮癌,デスモグレイン3,上皮成 長因子受容体,セツキシマブ,カルシウム 1)東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 2)東京歯科大学市川総合病院角膜センター 3)東京歯科大学市川総合病院皮膚科 (2019年6月26日受付,2019年7月24日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.413 連絡先:〒272‐8513 千葉県市川市菅野5−11−13 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 三邉正樹 本論文の要旨は,第96回国際歯科研究学会(2018年7月26 日,ロンドン)において発表した。

本論文は,「Experimental Dermatology 2019 May;28 ⑸:614−617.」に掲載された論文「A potential link be-tween desmoglein 3 and epidermal growth factor recep-tor in oral squamous cell carcinoma and its effect on cetuximab treatment efficacy」を二次出版したものであ る。

二次出版

口腔扁平上皮癌におけるデスモグレイン3と上皮成長因子受容体の

潜在的相関とそのセツキシマブ治療効果に対する影響

三邉正樹

1)

秋山友理恵

1)

比嘉一成

2)

髙橋愼一

3)

河野通良

3)

野村武史

1) 413 ― 49 ―

(3)

抗 EGFR 抗体であるセツキシマブ(C-mab)は,

OSCC の治療薬として臨床応用されている

14−16)

。こ

れまでに,EGFR 阻害薬はデスモゾーム結合を強化

することで細胞間接着を安定化し,表皮細胞の分化

を誘導することが報告されている

11,12,17)

。一方,高

Ca も DSG3発現を上昇させ,デスモゾーム結合を

強化し分化を誘導することが知られている

18−20)

。こ

れらの DSG3と EGFR の相互作用を示唆する研究

結果から,OSCC において高 Ca 条件下で C-mab を

投与することで,治療効果が相乗的に増強する可能

性を考えた。

そこで本研究は,4人の OSCC 患者の原発巣と

転移性リンパ節から樹立された8種類の細胞株

21)

おける DSG3と EGFR の発現の関連性を最初に確

認した。次に,OSCC において高 Ca が DSG3発現

に影響し,C-mab の効果を増強するかを調べた。

材料および方法

1.細胞株と細胞培養

8種類の OSCC 細胞株(TOSCa)は,昭和大学病

院で4人の OSCC 患者の原発巣および転移リンパ

節から樹立された

21)

。なお,各細胞株は,同じ患者

の原発巣と転移リンパ節に由来している。我々は,

本研究において原発巣および転移リンパ節から樹立

された細胞株をそれぞれ P および LY と表記した

(表1)。3つの確立されたヒト OSCC 細胞株(HSC

3,HSC4,SAS)は日本癌研究資源バンク(JCRB)

か ら 購 入 し た。細 胞 株 は,10%ウ シ 胎 児 血 清

(FBS,Thermo Fisher Scientific)と1%ペニシリ

ン/ストレプトマイシン

(10,

000units/mlペニシリン,

10,

000μg/mlストレプトマイシン)

(Thermo Fisher

Scientific)を 含 む Dulbecco s Modified Eagle s

Medium/Nutrient Mixture F-12Ham with L-glutamine

(DMEM/F12,Sigma-Aldrich)で CO

濃 度 は5%

(v/v)の37℃加湿環境下で培養し維持した。

2.RNA 抽出とリアルタイム qPCR

RNeasy Micro Kit(Qiagen)を用いて OSCC 細胞

株 か ら RNA を 抽 出 し た。1

st

strand cDNA は,

gDNA Eraser(Takara)を用いて PrimerScript RT

Reagent Kit の製造元のプロトコールに従って合成

した。リアルタイム qPCR は,SYBR Premix Ex

Taq(Perfect Real Time,Takara)を製造元のプロ

トコールに従って使用し,ABI 7000 thermocycler

(Thermo Fisher Scientific)で行った。

プライマーは以下を使用した:

DSG3 forward primer:

5′-CCTGTGCAGCAGCCTGGTAA-3′.

DSG3 reverse primer:

5′

-CTCATGCATAAGCAGAGGCACAA-3′

EGFR forward primer:

5′-CATCCAGGGCCCAACTGTGAG-3′.

EGFR reverse primer:

5′-CAGTGGAAGCCTTGAAGCAGAA-3′

GAPDH forward primer:

5′-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3′.

GAPDH reverse primer:

5′-TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3′.

相対的遺伝子発現量は GAPDH により標準化し

た。すべての解析は3回行った。

3.WST-1細胞増殖アッセイ

細胞増殖能は,Premix WST-1細胞増殖アッセ

イシステム(Takara)を用いて解析した

22)

。OSCC 細

胞を96ウェルプレートに播種し,24時間培養した

後,試薬(Ca,C-mab,siRNAs)をいくつかの濃度

でウェルに添加し,さらに48時間培養した。WST-1試薬(10μl)を各ウェルに添加し2時間培養後,

細胞生存率をテトラゾリウム塩の分解に基づく比色

法により測定した。マイクロプレートリーダー(Bio

-Rad Laboratories)を用いて450nm の吸光度を測定

表1 4人の OSCC 患者の原発巣と転移リンパ節から樹立された細胞株のプロフィール 細胞株名 年齢 性別 原発部位 原発巣 転移リンパ節 TOSCa-7 80 男 歯肉 7P 7LY TOSCa-17 69 女 歯肉 17P 17LY TOSCa-58 65 男 舌 58P 58LY TOSCa-60 82 女 歯肉 60P 60LY 三邉,他:口腔扁平上皮癌の DSG3と EGFR の潜在的相関 414 ― 50 ―

(4)

した。すべての解析は3回行った。

4.C-mab と Ca の投与

C-mab は Bristol-Myers Squibb ( Princeton ) か

ら購入し,5μg/ml の濃度で使用した。塩化 Ca は

和光純薬から購入し,1,8,16mM の最終濃度

で培地に添加した。C-mab と Ca は48時間培養した

後,リアルタイム qPCR 解析および WST-1細胞増

殖アッセイを行い,DSG3および EGFR の発現と

細胞生存率を評価した。

5.免疫染色

10%FBS と8mMCa を 含 有 す る DMEM/F12で

培養した OSCC 細胞株を4ウェルチャンバースラ

イド(Nalgen Nunc International)に播いた。細胞を

4℃で10分 間4%パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド を 含 む

PBS で固定した。細胞透過処理のため,0.

1%Tri-ton X-100を含有する PBS で10分間培養した。細胞

を1%BSA お よ び3%正 常 ロ バ 血 清 を 含 有 す る

PBS にて,室温で60分間ブロッキングし,続けて

ブロッキング溶液中の1次抗体(mouse monoclonal

anti-desmoglein3(5G11,Abcam),rabbit

mono-clonal anti-EGFR(EP38Y,Abcam))と共に室温で

90分 間 培 養 し た。PBS で2回 洗 浄 後,細 胞 を ブ

ロッキング溶液で1:100または1:200に希釈した

2次抗体(Cy3-donkey anti-mouse IgG(AP192C,

Chemicon),FITC-donkey anti-rabbit

IgG(711-095-152,Jackson immuno Research Lab Inc))と共に

室温で30分間培養した。核染色は46-ジアミジノ-2-フェニル(DAPI,Sigma-Aldrich)を使用した。

6.統計解析

2組 の デ ー タ の 比 較 は Student t 検 定 ま た は

Mann-Whitney U 検定,多重比較は Kruskal-Wallis

検定にて統計解析を行った。データは平均値±標準

偏差で表記した。すべての検定は両側検定で行い,

p<0.

05を統計学的有意差ありとした。すべての統

計 解 析 は,R 用 の グ ラ フ ィ カ ル ユ ー ザ ー イ ン タ

フェースである EZR(The R Foundation for

Statis-tical Computing,バージョン2.

13.

0)を用いて行っ

た。このプログラムは,生物統計学で頻繁に使用さ

れる統計関数を追加するように設計された R

Com-mander(バージョン1.

6-3)の修正版である。

本研究は東京歯科大学市川総合病院倫理委員会の

承認を得たうえで行った(受付番号:I 17-904C)。

結 果

1.OSCC 細胞株における DSG3と EGFR 発現の

関連性の解析

最初に,4人の OSCC 患者の原発巣および転移

図1 OSCC 細胞株における DSG3と EGFR の発現の関 連性の解析 (A)4人の OSCC 患者の原発巣および転移リンパ節から 樹 立 さ れ た8種 類 の OSCC 細 胞 株 に お け る DSG3発 現 (左)。DSG 発現について原発巣と転移性リンパ節に分け て比較した箱ひげ図(右)。 (B)原発巣および転移リンパ節から樹立された8種類の OSCC 細胞株における EGFR 発現(左)。EGFR 発現につ いて原発巣と転移性リンパ節に分けて比較した箱ひげ図 (右)。 (C)8種類の OSCC 患者由来の細胞株と3種類の確立さ れ た 細 胞 株 に お け る C-mab(5μg/ml)投 与48時 間 後 の DSG3発現。結果は3回の独立した実験の平均値±標準偏 差で示す。★p<0.05,★★p<0.01。 歯科学報 Vol.119,No.5(2019) 415 ― 51 ―

(5)

性リンパ節 由 来 の 細 胞 株 に お け る DSG3お よ び

EGFR mRNA の発現を比較した。転移リンパ節由

来の細胞は,同じ患者の原発巣由来の細胞と比較し

て有意に高い DSG3発現を示した(図1A)。EGFR

発現も原発巣よりも転移リンパ節の方が高かった

(図1B)。特に,原発巣由来の細胞の1つ(7P)は

DSG3も EGFR も 全 く 発 現 し て い な か っ た(図1

A,B)。各細胞株における DSG3と EGFR 発現と

の間の直接的な相関関係を統計解析したところ,有

意な相関関係は認めなかった(data not shown)。

次 に,OSCC 細 胞 株 の DSG3発 現 に 対 す る

C-mab による EGFR 阻害の効果を評価した。C-C-mab

投与は,8種類の細胞株のうち4種類(7LY,17P,

58LY,60P)お よ び す べ て の 確 立 さ れ た 細 胞 株

(HSC3,HSC4,SAS)に お い て DSG3発 現 を 上

昇させた(図1C)。高 Ca は正常角化細胞における

DSG3発 現 を 増 加 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る の

20)

,我 々 は 高 Ca 条 件 下 で DSG3発 現 が 上 昇 し

EGFR 発現に影響を及ぼすかを調べた。正常角化細

胞は低 Ca 培地(<0.

3mM)で維持され,高 Ca 培地

(>1.

0mM)で分化するが,SCC 細胞株(本研究で用

いた OSCC 細胞株を含む)は1mM Ca を含む培地

で増殖する

17)

。したがって,我々は8mM および16

mM の Ca 条件の影響を解析した。興味深いこと

に,OSCC 細胞における DSG3および EGFR 発現

は共に Ca 濃度依存性に増加した(図2A,B)。ま

図2 OSCC 細胞株の高 Ca 条件の C-mab 効果に対する影響 異なる Ca 条件下(1,8,16mM)で48時間培養した後の細胞株7LY における(A)DSG3と(B)EGFR の発現。 (C)Ca8mM の条件下における細胞株 HSC3の DSG3(赤)と EGFR(緑)の免疫染色。核染色は DAPI(青)を

使用した。スケールバーは10μm を示す。

(D)Ca1mM の条件下で C-mab(5μg/ml)を投与し48時間培養した後の8種類の OSCC 患者由来細胞株と3 種類の確立された細胞株の細胞増殖能。異なる Ca 条件下(1,8mM)で48時間培養した後の2種類の C-mab 低 感 受 性 細 胞 株(7LY,HSC3)と2種 類 の C-mab 高 感 受 性 細 胞 株(17LY,SAS)に お け る(E)DSG3と(F) EGFR の発現。

三邉,他:口腔扁平上皮癌の DSG3と EGFR の潜在的相関 416

(6)

た 高 Ca 条 件 下 に お け る OSCC 細 胞 の DSG3と

EGFR の局在を免疫染色にて確認したところ,とも

に細胞表面に発現していることを観察した(図2

C)。

2.OSCC 細胞に対する C-mab の効果における高

Ca 濃度の影響

これまでに EGFR 阻害が細胞間接着を増強し分

化を誘導すること

11,12,17)

,高 Ca 条件が表皮細胞の

DSG3発現を上昇し分化を誘導することが報告され

ている

19,23)

。そこで我々は,これらの知見と C-mab

による治療および高 Ca 条件が共に OSCC の DSG

3発現を上昇させるという我々の研究結果と合わせ

て,OSCC において高 Ca 条件下で C-mab を投与す

ることで分化誘導がさらに強化され治療効果が増強

するという仮説を立てた。

この仮説を検証するために,我々は C-mab の効

果に対する高 Ca 濃度の影響を調べた。まず C-mab

の効果を WST-1細胞増殖アッセイによって評価し

たところ,11種類中2種類の細胞株(17LY,SAS)

のみ C-mab により細胞増殖能の低下を認め高感受

性であったが,その他の細胞株は細胞増殖能の低下

を認めず低感受性であった(図2D)。そこで2種類

の C-mab 低感受性細胞株(7LY,HSC3)と2種類

図2 OSCC 細胞株の高 Ca 条件の C-mab 効果に対する影響(つづき) (G)異なる Ca 条件下(1,8mM)で C-mab(5μg/ml)を投与し48時間培養した後の2種類の C-mab 低感受性細 胞株と2種類の C-mab 高感受性細胞株の細胞増殖能。 (H)異なる Ca 条件下(1,8mM)で C-mab(5μg/ml)を投与し48時間培養した後の2種類の C-mab 低感受性細 胞株と2種類の C-mab 高感受性細胞株の光学顕微鏡による観察所見。細胞はクリスタルバイオレットにて染 色した。スケールバーは1mm を示す。

(I)2種類の C-mab 低感受性細胞株と2種類の C-mab 高感受性細胞株の Ca8mM の条件下における C-mab 効果の上昇率。結果は平均値±標準偏差で示す。結果は3回の独立した実験の平均値±標準偏差で示す。 WST-1細胞増殖アッセイの結果は,Ca1mM の条件下の C-mab 未投与群の細胞増殖能により標準化した。 ★p<0.05,★★p<0.01。

歯科学報 Vol.119,No.5(2019) 417

(7)

の C-mab 高感受性細胞株(17LY,SAS)を以下の実

験に用いた。高 Ca(8mM)条件下で48時間培養し

た後,DSG3と EGFR の発現は,C-mab 低感受性

細胞株で増加したが,C-mab 高感受性細胞株では

増加しなか っ た(図2E,F)。そ し て,高 Ca 濃 度

は C-mab 低感受性細胞株においてのみ C-mab の効

果を増強し,その生存率は最大43%減少した(図2

G)。さらに C-mab 効果の増加率や顕微鏡の観察所

見も同様の結果を示した(図2H,I)。

考 察

本 研 究 の 結 果 は,OSCC に お け る DSG3と

EGFR の発現の潜在的な関連を示している。過去の

研究は,EGFR が表皮細胞における DSG の他のア

イソフォーム(DSG1および DSG2)の調節に関与

していることを報告している

24,25)

。EGFR は扁平上

皮癌における DSG2のエンドサイトーシスを調節

し,細胞膜からの枯渇を促進する

26)

。EGFR 阻害は

膜性 DSG2発現および細胞接着を増加させる

27,28)

これらの研究は,EGFR 阻害がデスモゾーム結合お

よび細胞間接着を安定化するのに対して,EGFR 活

性化はデスモゾームの分解を促進し,細胞間接着を

減少させることを示唆している。

我々の研究では,C-mab 投与と高 Ca 条件の両方

が,OSCC 細胞株における DSG3発現を上昇させ

た。これまでに,EGFR 阻害は細胞間接着および細

胞周期停止の増強に関与することが報告されてい

17,27,29)

。Lorch らは,EGFR 阻害剤がマトリッ ク

スメタロプロテアーゼ依存性にデスモゾームカドヘ

リンの分解を抑制し,その結果,扁平上皮癌(SCC)

において DSG2が増加することを示した

27)

。Peus

らは,EGFR 阻害薬による EGFR の不活性化が,

表皮細胞において分化マーカー,ケラチン1および

ケラチン10の発現を誘導することを報告した

17)

Huang らは,C-mab 投与により SCC 細胞の細胞周

期が G0/G1期にとどまることを明らかにした

29)

一方,高 Ca 条件は,細胞外液の Ca 濃度の上昇が

細胞内への Ca の流入を引き起こし,分化の徴候と

されるトランスグルタミナーゼ活性が上昇して,表

皮細胞において DSG3発現および分化を誘導する

ことが知られている

18,19,30)

。これらの過去の報告と

我々の研究結果から,C-mab の治療効果は分化誘

導および細胞間接着の強化が一部で影響しており,

高 Ca による DSG3発現の誘導が C-mab の治療効

果を増強すると考えられた。我々の研究から得た知

見のうち,特に C-mab 低感受性細胞株において,

高 Ca 条件が DSG3発現を増加し C-mab の効果を

増強したこともこの仮説を支持している。

一方,高 Ca 濃度は EGFR 発現も増加させ た の

で,腫瘍進行の可能性が懸念される。最近,細胞表

面上での直接的な DSG2と EGFR の相互作用が腸

上皮細胞の接着状態と増殖状態の間の切り替えを調

節することが報告された

31)

。この研究は,DSG2と

EGFR からなる新規シグナル伝達複合体を介した

EGFR 活性の調節における DSG2の新たな役割を

同定した。DSG2が欠損した細胞では,EGFR は細

胞増殖を誘導するリガンドによって活性化された

が,DSG2を再発現させると DSG2欠損細胞にお

ける細胞増殖は抑制された。この直接的な DSG2

と EGFR の相互作用は DSG2の特異的抗体によっ

て阻害された。過去に同じ DSG2の特異的抗体が

細胞接着を阻害し,腸上皮細胞の増殖を増加させる

ことが示されており

32)

,同様に,抗 DSG3抗体が

EGFR 活性化と表皮の過剰増殖を誘導することが報

告されている

13)

。したがって,DSG3も細胞境界で

EGFR と直接相互作用して,核への EGFR の移行

および細胞増殖のシグナル伝達を阻害する可能性が

ある。この概念と一致して,我々は高 Ca 条件下の

OSCC 細胞株の細胞表面における DSG3と EGFR

の共局在を観察した(図2C)。以上より,我々は高

Ca 依存性の DSG3発現誘導が EGFR シグナル伝達

を阻害し,高 Ca 濃度による EGFR 発現増加の影響

を上回ると考えた。

結 論

本 研 究 結 果 か ら,OSCC に お け る DSG3と

EGFR 相互作用とその C-mab 治療効果への影響に

関する新たな知見が得られた。口腔癌治療において

高 Ca 条件下での C-mab 投与が C-mab 耐性を克服

するための新規治療法となる可能性が示唆された。

また、悪性腫瘍に伴う高 Ca 血症において OSCC の

局所 Ca 濃度が上昇すれば C-mab の効果が得られ

る可能性が考えられた。

三邉,他:口腔扁平上皮癌の DSG3と EGFR の潜在的相関 418 ― 54 ―

(8)

謝 辞

本研究をサポートしていただいた東京歯科大学市川総合病 院角膜センター研究部門のスタッフの皆様にお礼を申し上げ ます。また,このような研究の機会と助言をいただいた東京 歯科大学口腔病態外科学講座の片倉 朗教授に深謝いたしま す。 本論文に関して,開示すべき利益相反状態はない。 文 献

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