(擬似)分 裂 文 の生 成
(擬似)分 裂 文の生成
武
田
和
恵
1、 は じ め に (1)に あ げ た 文 は 英 語 の 分 裂 文(cleftsentence)と 擬 似 分 裂 文(pseudo-cleftsentence)で あ り、 ど ち ら も 繋 辞(copula)のbeの 後 に 来 る 要 素 を 焦 点 化(focahze)す る 構 文 で あ る 。 (1)a.ItisMarythatJohnmetyesterday. b.WhatMaryislookingforisapet. 英 語 の(擬 似)分 裂 文 に 関 す る先 行 研 究 で は 、 非焦 点 要 素 で あ り前 提 部 分 を表 す(2)の 【、]部 分 にお い て 焦 点 要 素 に 対 応 す る空 所 の 分 布 が 移 動 に 関 す る 制 約 に 従 う こ とか ら、(擬 似)分 裂 文 形 成 が 、(2)で 示 した よ う に 、 疑 問文 形 成 や 関 係 節 形 成 と 同様 にwh要 素 も し くは 空 演 算 子(OP)の 移 動 過 程 を含 む と考 え る こ とが 提 案 さ れ て い る(cf.Chomsky1977)。 (2)a.ItisXP[aOPthat...e...] b.[aWhat...e...]isXP 焦 点 要 素 に 関 し て は 以 下 で 見 る よ う に 基 底 生 成 さ れ る分 析 と削 除(も し くは 移 動)の 操 作 が 適 用 され 派 生 す る分 析 が 考 え られ る。 こ こ で(1)に 対 応 す る 日本 語 の 構 文 を捜 し て み る と 、Hoji(1ggo)が 指 摘 し て い る よ う に(3)が 考 え られ る。(3)a.[。 ジ ョ ンが 昨 日 会 っ た の]は メ ア リ ー(に)だ b.[、 メ ア リ ー が 捜 して い る の1は ペ ッ ト(を)だ (3)では 、 繋 辞 の 「だ」の 前 の 焦 点 要 素 が 格 助 詞 や 後 置 詞 を伴 う場 合 と伴 わ な い 場 合 が あ る が 、 本 論 文 で は どち ら も 日本 語 にお け る 焦 点 化 の機 能 を 持 つ(擬 似)分 裂 文 と して 考 察 の 対 象 とす る。 英 語 にお け る(擬 似)分 裂 文 の 生 成 過 程 を踏 ま え た 上 で 、[、]で 示 した 部 分 の 形 成 に大 き く関与 して い る と思 わ れ る 関係 節 形 成 が 日本 語 にお い て は移 動 を含 ま な い 可 能 性 が あ る こ と を考 慮 す る と、 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 形 成 の 過 程 は 、(4)に 示 し た4つ の 型 の う ち 、(4a)(4b)で あ る よ り も、(4c)(4d)の い ず れ か で あ る 可 能 性 を検 討 す る 必 要 が あ る 。 (4)非 焦 点(前 提)焦 点 [≪...-no]-waXP-(CaseParticle/Postposition)-da a.OP移 動 含 む:基 底 生 成 b.OP移 動 含 む:削 除 に よ り派 生 c.OP移 動 含 ま な い:基 底 生 成 d.OP移 動 含 ま な い:削 除 に よ り派 生 以 下 の 議 論 で は 、 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 にお い て 、 焦 点 要 素 が格 助 詞 や 後 置 詞 を伴 わ ず に 繋 辞 の 前 に 生 ず る場 合 は(4c)の 型 に対 応 し、焦 点 要 素 が 格 助 詞 や 後 置 詞 を伴 っ て生 ず る場 合 は(4d)の 型 に 対 応 す る 可 能 性 が 強 い こ と を示 す 。 節 の 構 成 は次 の とお りで あ る。 第2節 で は 英 語 の(擬 似)分 裂 文 が(4a) の型 に 対 応 す る こ と を確 認 す る。 第3節 で は 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 は 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 は 英 語 と 同 様(4a)の 派 生 過 程 を 持 ち、 格 助 詞/後 置 詞 を伴 わ ない 場 合 は(4c)の 派 生 過 程 を持 つ とす るHoji
(擬似)分 裂文 の 生成 (1ggO),Hoji&Ueyama(1998)の 議 論 を検 討 す る。 第4節 で は焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 は(4d)の 派 生 過程 を経 る と考 え る可 能性 を示 唆 す る。 第5節 で は本 論 文 で の議 論 を ま とめ る。 2.英 語 の(擬 似)分 裂 文 の 派 生 過程 英 語 の(擬 似)分 裂 文 に 関 して 、 繋 辞 の 後 に生 じ得 る要 素 の 範 囀 は分 裂 文 と擬 似 分 裂 文 とで 違 い が あ るが 、 どち らの構 文 に お い て も顕 著 な の は 、 (1)で 繋 辞 に よ っ て 切 り離 さ れ て い る 要 素 が も と も と の位 置 に生 じ て い る よ う な平 叙 文(declarativesentence)が 、(5)で 示 した よ う に存 在 す る こ とで あ る。 (1)a.ItisMary[QthatJohnmetyesterday] b.[aWhatMaryislookingfor]isapet (5)a.JohnmetMaryyesterday. b.Maryislookingforapet. こ の よ う な並 行 性 か ら、 先 行 研 究 にお い て は(1)が そ の 生 成 の 過 程 に お い て(5)と 類 似 の構 造 を含 む こ と を 想 定 す る 分 析 が 提 案 され て い る。 そ の う ち 、 擬 似 分 裂 文 に 関 す る 抜 き 出 し分 析 と削 除 分 析 をHalvorsen (1978)か ら引 用 した もの が(6)と(7)で あ る。1 (6)抜 き 出 し 分 析(Akmajian1970,PinkamandHankamer1975)
(7)削 除 分 析(PetersandBack1'971) (6)で は 主 語 位 置 に あ る(1b)の 【、]に 対 応 す る部 分 に含 まれ る 焦 点 と な る要 素 が 変 形 操 作 に よっ て抜 き 出 さ れ 、繋 辞 の後 の空 の 位 置 に移 動 す る。 (7)で は繋 辞 の 後 に主 語 位 置 に あ る構 造 と並 行 的 な構 造 が 置 か れ 、 焦 点 要 素 以 外 の 要 素 が 主 語 位 置 の 対 応 す る 要 素 と の 同 一 性 の 下 に削 除 を受 け る。 これ らの抜 き出 しや 削 除 の 操 作 を 妥 当か つ 必 要 とす る こ と を支 持 す る 証 拠 の 一 つ に 再 帰 代 名 詞 に 関 す る連 結 性(connectivity)あ る い は再 構 築 性(reconstruction)の 現 象 が あ る。 (8)に お い て 非 焦 点 部 分 に含 まれ る 名 詞 と同 一 指 示 の 再 帰 代 名 詞 が 焦 点 の 位 置 に生 じ得 る こ とは 、 再 帰 代 名 詞 の認 可 条 件 の 点 で説 明 を必 要 と す る。
(8) a. What Bill; did was build a house for himselfi/Thimi
b. It was for himselfi/*hirni
that Bill; built a house
(9) Bill; built a house for himself;
/*himi
(擬似)分 裂 文 の生 成 (8)の 例 が 何 の 操 作 の 適 用 も受 け ず に 基 底 生 成 さ れ た もの だ と す る と、 あ る 局 所 的 領 域 内 に 先 行 詞 を必 要 とす る 再 帰 代 名 詞 の 解 釈 が 可 能 で あ る こ とが 説 明 さ れ え な い 。(9)に 類 似 す る基 底 構 造 を(8)が 持 ち 、 そ れ に抜 き 出 し や 同 一 性 の 下 の 削 除 が 適 用 さ れ る と 想 定 す る こ とで は じめ て 、 (8)に お い て 非 焦 点 部 分 に含 まれ る 名 詞 と 同 一 指 示 の 再 帰 代 名 詞 が 焦 点 の 位 置 に生 じ得 る こ とが 、 無 理 な く説 明 で きる の で あ る。 しか し、1970年 代 に提 案 され た(6)や(7)の 分 析 を 現 在 そ の ま ま の 形 で 受 け入 れ る こ と に は 無 理 が あ る 。 まず(6)の 抜 き出 し分 析 に 関 して は 、 これ を一 種 の 移 動 と 考 え た場 合 、 可 能 な移 動 と移 動 先 が 厳 し く制 限 され て い る現 在 の 枠 組 み で は 、 基 底 にお い て主 語 位 置 の 要 素 の 一 部 と して 生 じて い る 要 素 を繋 辞 の 後 ろ に移 動 させ る よ う な、 つ ま り移 動 要 素 の 着 地 位 置 が 元 の 位 置 をc統 御(c-command)す る よ う な 通 常 の 上 方 移 動 (upward>で は な い 、 側 方 へ の 移 動(sidewardmovement)を 想 定 す る こ と は 許 され な い 。(7)の 削 除 分 析 に 関 して も、 一 般 に 削 除 が 適 用 さ れ る環 境 で は、 同 一 の 解 釈 が 可 能 な 、 削 除 が 適 用 され な い 表 現 も許 容 さ れ る 。 つ ま り削 除 の 適 用 は 随 意 的 な わ けで あ る。 と こ ろが 、(10)に 見 られ る よ うに 、擬 似 分 裂 文 で は 、 焦 点 要 素 以外 の 要 素(build)が 繋 辞 の 後 に生 ず る こ とは 許 され な い。
(10) *What Bill built was build a house for himself
この よ う な こ と を考 慮 す る と、 繋 辞 の 後 の 焦 点 要 素 は表 層 の 位 置 に基 底 生 成 さ れ る と考 え る こ とが 妥 当 で あ る。 で は、 そ の 場 合 、(8)の よ うな 再 帰 代 名 詞 の 分 布 は ど う説 明 さ れ る の か 。 こ こで は 、Hojiが 指 摘 して い る よ うにBarss(1984)の 連 鎖 束 縛(chainbinding)の 考 え 方 を採 用 す る こ とで 説 明が 可 能 に な る。
(11)a.[[What;Bill;did e;]was[build a house for himself;];]
b.[lt was[for himself;]j[OP;that Bill;built a house e;]]
(擬 似)分 裂 文 は 非 焦 点 部 分 で 表 現 さ れ て い る も の が 繋 辞 の 後 ろ の 焦 点 要 素 と 同 一 で あ る こ と を 指 定(specify)す る 機 能 を 持 っ て い る 。 そ こ で(11) で 示 し た よ う に 、whatやOPと 焦 点 要 素 が 同 一 指 標 を 持 つ と 考 え る こ と
に 何 の 支 障 も な い わ け で あ る 。 こ れ に よ っ てwhat/OPと 空 所eで 構 成 さ れ た 連 鎖(chain)は 焦 点 要 素 も含 む 拡 大 さ れ た 連 鎖((11a)な ら ば([builda houseforhimselfl]j,Whatj,ej)を 形 成 し 、(11b>な ら ば([forhimself;]; , OP亅,e;)を 形 成 す る)と な る 。 再 帰 代 名 詞 の 先 行 詞Bil1は こ の 拡 大 さ れ た 連 鎖 の 一 部 を 局 所 領 域 内 でc統 御(c-command)し て い る た め 、 あ た か も 内 部 に 含 ま れ る 再 帰 代 名 詞 が そ の 位 置(ejの 位 置)でc統 御 さ れ た か の よ う な 解 釈 が 可 能 と な る 。 こ こ ま で は 、(擬 似)分 裂 文 の 焦 点 要 素 が 基 底 生 成 さ れ る と考 え る こ と の 妥 当 性 を 検 討 し て き た が 、 次 に 、 非 焦 点 部 分 の 構 造 を ど う 捉 え る か に つ い て 考 え て み る 。(6)と(7)の 分 析 で は 繋 辞 の 後 の 焦 点 要 素 を ど う 導 く か に 関 して の 相 違 は あ る が 、 主 語 位 置 に 生 ず る 非 焦 点 要 素 は 主 要 部 の 無 い 関 係 節(headlessrelative/freerelative)に 類 似 し た 構 造 と捉 え ら れ て い る 点 は 共 通 で あ る 。Chomsky(1977)は(12)の 例 を 挙 げ て 、 分 裂 文 の 派 生 が 、 長 距 離 依 存 関 係 を 許 す こ と 、 複 合 名 詞 句 制 約 、wh島 制 約 に 従 う こ と を 示 し 、 疑 問 文 形 成 、 関 係 節 形 成 、 話 題 化 と 同 様 にwh要 素 の 移 動 を 含 む 過 程 で あ る と 分 析 し て い る 。2
(12) a. It is this book [that I really like e ]
b. It is this book [that I asked Bill [to get his students to read e ]]
c. *It is this book [that I accept [the argument that John should read e ]
d. *It is this book [that I wonder [who read e ]]
(Chomsky 1977)
(擬似)分 裂 文 の生 成 (12b)で は 、 焦 点 位 置 のthisbookは 二 重 の節 の 内 部 のeで 示 さ れ た 空 所 と結 び 付 け られ て お り、 問 に結 び つ きを 阻止 す る よ う な構 造 が 存 在 し な い た め 、 節 を 越 え た 長 距 離 依 存 関 係 が 可 能 に な っ て い る。(12c)で は、 空所 は 複 合 名 詞 句 の 中 に埋 め 込 まれ た位 置 に あ り、 空 の 演 算 子 がm高 い位 置 に あ る埋 め 込 み 節 の 指 定 辞(CPspec)の 位 置 に ま で 移 動 す る と す る と、 複 合 名 詞句 制 約 を破 る構 造 と な り、 非 文 法 文 とな る 。(12d)で は、 空 所 がwh句 に 埋 め 込 ま れ た 位 置 に あ り、 空 の 演 算 子 の 移 動 を想 定 す る と、wh島 制 約 に 抵 触 す る こ とに な り、非 文 法 文 と な る。 以 上 の こ とか ら、 英 語 に お け る(擬 似)分 裂 文 の 形 成 にお い て は、 非 焦 点 部 分 で はwh要 素/空 演算 子(OP)の 移 動 を含 み 、 焦 点 要 素 は 表 層 の 位 置 に基 底 生 成 され る と 考 え る こ とが 妥 当 で あ る こ とが 分 か る 。3こ れ は(4) の4つ の型 の うち(4a)に 対 応 す る 型 で あ る こ とが確 認 で きる。 3.日 本 語 に お け る(擬 似)分 裂 文 3.1.Hoji(1990)、Hoji&Ueyama(1998)の 分 析 Hoji(lggo)で は 、(13)に 示 し た よ う に 、 繋 辞 の 前 の 焦 点 位 置 に 生 起 す る 要 素 が 、 格 助 詞 や 後 置 詞 を 伴 う 場 合 と そ う で な い 場 合 を 明 確 に 区 別 し、 前 者 は 英 語 と 同 様 に 移 動 過 程 を 含 む が 、 後 者 は 含 ま な い と 分 析 し て い る 。 (13) a. [s, no]-wa NP-CASE da 4 b. [g . . . no]-wa NP da (Hoji 1990) 移 動 過 程 の 有 無 を分 け る根 拠 と して 示 され て い る の は、(13a)の タ イ プ の例 が 、(12)の パ ラ ダ イム と 同様 の 文 法 性 を示 し、 所 謂 移 動 に関 す る 島 制 約 に 従 うの に対 し て 、(13b)の タ イ プ の 例 が そ の 条 件 に 従 わ な い こ と で あ る 。(14),(15)が 問 題 と な る デ ー タで あ る。
(14)a.[、 ジ ョ ン が[s'メ ア リ ー一が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と]思 っ て い る の]は[あ のCIAエ ー ジ ェ ン ト に1だ b.*?[、 ジ ョ ン が 【NP[see会 っ た こ と が あ る1日 本 人 】を 大 勢 知 っ て い る の 】は[ラ ッ セ ル に]だ(前 掲 論 文 よ り) (15)a.[、 ジ ョ ンが[S'メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と1思 っ て い る の1は[あ のCIAエ ー ジ ェ ン ト1だ b.[、 会 社 が[NP[seeメ ア リ ー に み せ た1男]を く び に した の 】 は[そ の 書 類 】だ c.【、 ジ ョ ンが[NP[see会 っ た こ と が あ る 旧 本 人]を 大 勢 知 っ て い る の 】は[ラ ッ セ ル]だ(前 掲 論 文 よ り) (14a)と(15a)は と も に繋 辞 前 の 焦 点 位 置 の 要 素 が 埋 め 込 まれ た 節 の 間接 目的語 に対 応 す る 空 所 と結 び付 け られ て解 釈 さ れ、 長 距 離 依 存 関係 が 成 立 す る こ と を示 して い る。 空 所 が 複 合 名 詞 句 の 中 に さ らに埋 め 込 まれ て い る場 合 は 、 焦 点 位 置 の 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 に は(14b)の よ うに 非 文 法 文 に な り、 伴 わ な い 場 合 に は(15b,c)の よ うに 文 法 文 と な る こ とが わ か る。 (14b)の 非 文 法 性 は そ の 派 生 過 程 が 空 の演 算 子 の 移 動 を 含 む と分析 す る と、 複 合 名 詞 句 制 約 違 反 に よ っ て 排 除 さ れ る と の 説 明 が で き る 。 (15b)の 文 法 性 に 関 し て は 、 焦 点 位 置 の 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を 伴 わ な い (擬似)分 裂 文 は 、 単 に(16)と 並 行 的 な構 造 を持 ち 、Hoji(1ggo)が 指 摘 す る よ う に 、 助 詞 の 「は 」が と って い る要 素 は 「の 」を 主 要 部 とす る 関係 節 と 類 似 の 構 造 を持 つ と考 え れ ば 、(15)が 移 動 に 関 す る 島制 約 に 従 わ な い こ と は、Kuno(1973)等 が 指 摘 した 日本 語 の 関係 節 形 成 が 移 動 に 関 す る 島 制 約 に従 わ ない こ と に還 元 で き る。
(擬似)分 裂 文 の生成 (16)NP-waNP-da こ こ で、Hoji(1990)お よ びHoji&Ueyama(1998)の 分析 を ま とめ る と、 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う(擬 似 〉分 裂 文 は移 動 過 程 を含 む の に 対 して 、 そ れ らを伴 わ な い(擬 似)分 裂 文 で は 、 非 焦 点 部 分 が 代 名 詞 的 な 「の 」を主 要 部 とす る 関係 節 と類 似 の構 造 を持 ち、 移 動 過 程 を含 ま ない 。 焦 点 の 位 置 に生 ず る要 素 の 生 成 過程 に 関 して は特 に論 じ られ て い ない が 、 基 底 生 成 され る と思 わ れ る 。 3.2.(擬 似)分 裂 分 の 持 つ 基 本 的 意 味 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を 伴 う場 合 と そ う で な い 場 合 の 派 生 過 程 に つ い て さ ら に 検 討 す る 前 に 、(擬 似)分 裂 文 の 持 つ 基 本 的 な 意 味 特 性 に つ い て 考 え て み る 。 英 語 に お い て 指 摘 さ れ て い る の は 、 あ る(擬 似)分 裂 文 が 真 で あ る か 偽 で あ る か を 決 定 す る よ う な 真 理 条 件 は 、 対 応 す る 平 叙 文 の 真 理 条 件 と 同 じ で あ り 、(擬 似)分 裂 文 と 平 叙 文 と で 異 な る の は 、 規 範 的 含 意(conventionalimplicature)の 、 焦 点 要 素 の 存 在 に 関 す る 含 意 (existentialimplicature)と 網 羅 的 で あ る こ と に 関 す る 含 意 (exhaustivenessimplicature)で あ る 、 と い う こ と で あ る 。(Halvorsen 1978)o ま ず 、 存 在 に 関 す る 含 意 で あ る が 、
(17) Mary kissed John.
(18) It was John that Mary kissed.
(19) Mary kissed somebody.
Halvorsenは 、(18)の 文 は(19)の よ う に 焦 点 要 素 を 不 特 定 の も の に 置 き 換 え た 文 を 含 意 す る と し 、 さ ら に(20b)を 主 張 す る 話 者 は(20a)も 同 様 の
主 張 とみ なす が 、(21)に 関 して は、そ の よ う に み な さな い と述 べ て い る 。 こ れ は(18)に お い て(19)の メ ア リー が キ ス した 誰 か が 存 在 す る とい うの が 前 提 と さ れ て お り、 主 張 さ れ て い る 情 報 で は な い こ と を 意 味 し て い る。
(20) a. I just discovered that Mary kissed John.
b. I just discovered that it was John that Mary kissed.
(21) I just discovered that Mary kissed somebody.
これ に 関 連 して 、(19)の 含 意 は(18)を(20)の よ う に疑 問 化 し よ う と否 定 し よ う と影 響 を受 け な い 。 こ れ は(17)を 疑 問 化 し た り否 定 した 場 合 に (19)を 全 く含 意 しな い こ と と対 照 的 で あ る 。
(22) a. Was it John that Mary kissed?
b. It wasn't John that Mary kissed.
次 に焦 点 位 置 の 要 素 が 非 焦 点 部 分 で 表 さ れ た 条 件 を満 た す も の を全 て 網 羅 し て い る とい う含 意 を み て み る。(18)の 文 は(17)と 異 な り、 問 題 と さ れ る範 囲 の 中 で 条 件 を満 た す の は ジ ョンだ けで あ る とい う(23)の 含 意 を持 つ 。
(23) John was the only person that Mary kissed.
さて こ こ で 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 を検 討 してみ る と、 英 語 と並 行 的 な 事 実 が 確 認 で きる 。 まず 、(25)の(擬 似)分 裂 文 とそ れ に対 応 す る(24)の 平 叙 文 の 真 理 条 件 は 同 じで あ る。 しか し、(25)が 格 助 詞/後 置 詞 の 有 無
に 関 わ らず(26)の よ う に ジ ョ ンが 会 っ た 相 手 が 存 在 す る こ と を 規 範 的 含 一10一
(擬似)分 裂 文 の生 成 意 と して 持 つ の に対 して(24)は そ う で な な い 。 (24>ジ ョ ン が 昨 日 メ ア リ ー に 会 っ た (25)ジ ョ ン が 昨 日会 っ た の は メ ア リ ー(に)だ (26)ジ ョ ン が 昨 日 だ れ か に 会 っ た これ は 、(27b)を 主 張 す る 話 者 が(27a)も 同 様 に 受 け 入 れ る の に対 し て 、 (28)は 受 け 入 れ な い こ とか ら証 拠 付 け られ る 。 ジ ョ ンが 昨 日会 っ た 相 手 が 存 在 す る こ とは(27b)を 発 話 す る よ うな 話 者 に と っ て は 前 提 と さ れ る こ とで あ り、 新 た に 主 張 す べ き情 報 に入 らな い わ け で あ る。 (27)a.私 は た っ た 今 ジ ョ ン が 昨 日 メ ア リ ー に 会 っ た と わ か っ た b.私 は た っ た 今 ジ ョ ン が 昨 日会 っ た の は メ ア リ ー(に)だ と わ か っ た (28)私 は た っ た 今 ジ ョ ン が 昨 日 だ れ か に 会 っ た と わ か っ た さ ら に(25)を 疑 問化 した り、 否 定 して も(26)の 含 意 は 影 響 を受 け な い 。 (29)a.ジ ョ ンが 昨 日 会 っ た の は メ ア リ ー(に)で す か b.ジ ョ ン が 昨 日 会 っ た の は メ ア リ ー(に)で は な い 焦 点 要 素 が 網 羅 的 で あ る こ との 含 意 も同 様 に観 察 され る。(25)は 、 繋 辞 の前 に生 じて い る 要 素 が 条件 を満 た す 要 素 を過 不 足 な く網 羅 して い る こ と、 つ ま り(30)を 含 意 と して持 つ 。 (30)(今 問 題 に して い る 人 の 中 で)メ ア リー は ジ ョ ンが 昨 日会 っ た唯 一 の 相 手 だ5
こ こ ま で 、 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を 伴 う 場 合 とそ うで な い 場 合 ど ち ら に 関 して も、 規 範 的 含 意 が 観 察 され る こ と をみ て きた が 、 意 味 解 釈 に 関 し て 両 者 が 異 な る振 る舞 い を す る こ とは な い か とい う点 に 関 して 説 明 して お く。 英 語 に お い て も 日本 語 にお い て も繋 辞 に は 、 指 定 的 な用 法 と叙 述 的 な 用 法 と が あ り、 名 詞 句 が 繋 辞 の後 も し くは 前 に 来 る場 合 、 そ れ ぞ れ 以 下 の よ う な例 が あ る。 (31)a.ThatboyisJohn.(指 定 的) b.Johnisastudent.(叙 述 的) cf.Johnis.smart.(叙 述 的) (32)a.あ の 少 年 は ジ ョ ン だ(指 定 的) b.ジ ョ ン は 学 生 だ(叙 述 的) cf.ジ ョ ン は 賢 い(叙 述 的) 指 定 的 な用 法 で は 、 繋 辞 に よ って 結 び付 け られ る 名 詞 句 は主 語 が 指 し示 す もの が そ れ とわ か る よ うに 指 定 ・同 定 し、 叙 述 的 な用 法 で は 、 主 語 の 持 つ特 性 を表 す。 (擬似)分 裂 文 で も繋 辞 に この 二 つ の用 法 が あ る 。 興 味 深 い の は、 英 語 で は(33)の よ う に焦 点 要 素 に複 数 の 名 詞 句 が 生 じ る場 合 で も、 指 定 的用 法 と叙 述 的用 法 は 表 面 的 な 相 違 を示 さな い が 、 日本 語 で は そ の 違 い が 明 白 に な る点 で あ る 。
(33) What Lisa is chasing is a venomous reptile and her favorite pet.
(Halvorsen 1978)
(33)の 擬 似 分 裂文 は 二 通 りの解 釈 が 可 能 で 、指 定 的 な解 釈 で は リサ が 追 一12一
(擬似)分 裂 文 の生 成 い か け た も の は2匹 の 動 物 で あ る が 、 叙 述 的 な解 釈 で は リサ が 追 い か け た も の は 有 毒 な爬 虫 類 とい う特 性 とお 気 に入 りの ペ ッ トで あ る とい う特 性 を併 せ 持 つ とい う意 味 に な る 。 対 応 す る 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 を考 え る と、 指 定 的 用 法 で は(34a)の よ う に 焦 点 位 置 の 二 つ の 名 詞 句 を組 み 合 わせ る た め に 助 詞 の 「と」が 用 い ら れ ね ば な らな い の に対 し、 叙 述 的 用 法 で は(34b)の よ う に繋 辞 「だ 」の 連 用 形 で あ る 「で」を用 い て二 つ の 名 詞 句 をつ な げ な け れ ば な らな い 。 (34)a.[リ サ が 追 い か け て い る の 】は ト カ ゲ と お 気 に 入 りの ペ ッ ト(を)だ b.[リ サ が 追 い か け て い る の]は ト カ ゲ で お 気 に 入 りの ペ ッ ト(*を)だ さ らに こ こ で 注 意 す る 必 要 が あ る の は 、 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 は 指 定 的 な解 釈 の み が 可 能 で 、 叙 述 的 な解 釈 は で きな い と い う点 で あ る 。 これ は名 詞 句 が 指 示 対 象 を表 す 用 法 と特 性 を表 す 用 法 の 二 重 機 能 を 同 時 に 満 たす こ とが で き な い こ と を示 して い る 。 格 助 詞/後 置 詞 は そ れ が 付 加 され た 要 素 が 項 で あ る こ と を要 求 す る の に 対 して 、 「で 」は付 加 さ れ た 要 素 が 叙 述 的 で あ る こ と を要 求 す る 。(34b)は そ の 二 つ の 要 求 が 同 時 に満 た しえ な い た め に 非 文 法 文 とな る の で あ る。 以 上 、 こ の 節 で は(擬 似)分 裂 文 の 持 つ 基 本 的 な 意 味 につ い て そ の 特 性 を観 察 した わ け だ が 、 日本 語 に お い て も、 存 在 や 網 羅 性 に 関 す る規 範 的 含 意 が み られ る こ と、 指 定 的 な解 釈 と叙 述 的 な解 釈 の 二 通 りが 存 在 す る こ とな どを確 認 した 。 3.3.連 結性 を示 す 現 象 (擬似)分 裂 文 の 生 成 過 程 に 移 動 が 含 まれ る こ とを 示 唆 す る と され る例 を さ らに 検 討 して い く。 移 動 現 象 の存 在 を示 す た め に し ば しば 用 い ら れ る 連 結 性(connectivity)も 、(13a)の 格 助 詞/後 置 詞付 きの 焦 点 要 素 を含 む場
合 で は(36)の よ う に 観 察 さ れ る が 、(13b)の 場 合 で は 、 後 ほ ど(37)で 見 る よ う に 観 察 さ れ な い 。
(13) a. [s, .... no]-wa NP-CASE
da 4
b. [s' ... no]-wa NP da
(Hoji 1990)
(35)[ト ヨ タ さ え]iが[そ こ 、を 敵 視 し て い る 会 社]を 訴 え た (36)a.[、[ト ヨ タ さ え]iがe訴 え た の]は[そ こ 、を 敵 視 し て い る 会 社 を1だb.[、e[そ こiを 敵 視 し て い る 会 社]を 訴 え た の}は[【 ト ヨ タ さ え 亅i が]だ(Hoji&Ueyama1998) こ こで 基 本 と な る の は 、(35)の よ う な(擬 似)分 裂 文 に対 応 す る通 常 の例 に お け る束 縛 代 名 詞 の 解 釈 で あ る 。(35)に お い て 「そ こ」が 束 縛 代 名 詞 と し て解 釈 され る場 合 、 「トヨ タ以 外 の 会 社A、B、Cが あ る と き、Aは Aを 敵 視 して い る会 社 を訴 え、BはBを 敵 視 して い る会 社 を 訴 え、CはC を敵 視 して い る会 社 を訴 え 、(そ うす る こ とが 最 も予 期 さ れ が た い)ト ヨ タ さ え も トヨ タ を敵 視 し て い る会 社 を訴 え た 」とい う意 味 に な る 。 こ れ は 「トヨ タ 以外 の 会 社A、B、Cが あ る と き、A、B、Cと も に トヨ タ を敵 視 して い る会 社 を訴 え、 トヨ タ さ え も トヨ タ を敵 視 して い る 会社 を訴 え た」とい う代 名 詞 が 同 一 指 示 の解 釈 を う け る読 み と は異 な る もの で あ る。 Reinhart(1983)等 に よ っ て観 察 され て い る よ うに 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 を可 能 に す る に は、 表 層 構 造 に お い て 当該 代 名 詞 が そ の 先 行 詞(数 量 詞 や 焦 点 を 担 う要 素)に よ っ てc統 御 さ れ る とい う条 件 を満 た さ な け れ ば な ら な い。 も し、(36)の 例 が 基 底 生 成 さ れ、 何 の 移 動 過 程 も含 ま な い もの と 仮 定 す る と、 先 行 詞 の 「トヨ タ さえ 」は束 縛 代 名 詞 「そ こ」をc統 御 で きず 、 意 図 し た解 釈 は得 られ な い こ と を予 測 す る。 一 方 、 も し、 「e」で 示 され
(擬似)分 裂 文 の生 成 た 空 所 の 位 置 か ら何 らか の 空 の 演 算 子 が 節 の 充 分 高 い 位 置 まで 移 動 し、 焦 点位 置 に生 ず る要 素 との 適 正 な連 鎖 関係 を形 成 す る と仮 定 す る と、 束 縛 代 名 詞 の解 釈 が 可 能 で あ る こ とが 、 第2節 の(8)で 観 察 した 英 語 の 再 帰 代 名 詞 の解 釈 が(擬 似)分 裂 文 に お い て 可 能 で あ っ た の と並 行 的 に説 明 で きる 。 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 わ ない(36)の よ う な 例 に お い て 、 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 が 得 ず ら い の も、 こ の場 合 派 生 に移 動 過 程 が 含 まれ な い と 分 析 す る と、 束 縛 代 名 詞 と して の認 可 条件 を満 た す構 造 が 形 成 され な い た め、 非 文 法 文 に な る とい う説 明 が可 能 に な る。6 (37)a.?*【,[ト ヨ タ さ え11がe訴 え た の]は[そ こ,を 敵 視 し て い る 会 社1だ b.*[、e[そ こ 、を 敵 視 し て い る 会 社1を 訴 え た の1は[[ト ヨ タ さ えli]だ 「そ こ 」が 束 縛 代 名 詞 と して 解 釈 され る よ うな 連 結 性 は 、 焦 点 要 素 が格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 とそ うで な い 場 合 とで 、 移 動 の 関 与 の 有 無 を 裏 付 け る もの で あ った が 、 英 語 で しば しば 連 結 性 を 示 す と され る要 素 に 関 して 、 対 応 す る 日本 語 の 要 素 は(擬 似)分 裂 文 に お い て必 ず しも連 結 性 を 示 さな い 。 以 下 で は 、 そ れ らの 要 素 に関 して事 実 を確 認 して い く。 まず 、 英 語 の 再 帰 代 名 詞 を 含 む(8)の 例 と並 行 的 な 例 を考 え て み る 。 (38>a.ビ ル1が 自 分iの 親 を 批 判 し た b.*自 分iの 親 が ビ ル 、を 批 判 し た (39)a.[ビ ル 、が 批 判 し た の]は 自 分 、の 親(を)だ b.[自 分 、の 親 を 批 判 し た の 】は ビ ル 、(が)だ
(38)の 対 比 で示 され て い る よ う に照 応 詞(anaphor)の 厂自分 」は 主 語 指 向 性 を 持 ち 、 そ れ をc統 御 す る 主 語 だ け が 先 行 詞 と な り う る 。 も し、 (39a)で 焦 点 要 素 が 基 底 生 成 され る な ら ば、 そ の 位 置 に生 じ て い る照 応 詞 は そ の 先 行 詞 に よ っ てc統 御 さ れ えず 、 解 釈 不 能 とな る は ず で あ る。 に もか か わ らず 、(39a)で は照 応 詞 の 連 結性 が 格 助 詞/後 置 詞 の 有 無 に 関 わ らず 成 立 して い る よ う に み え る。 も し、 格 助 詞/後 置 詞 を伴 わ な い(擬 似)分 裂 文 が 移 動 を含 ま ず 、 そ れ で もな お 連 結 性 ら し き現 象 を 示 す の で あ れ ば 、 そ の解 釈 が 可 能 に な る の は移 動 過 程 を含 む ゆ えで は な い こ と に な る 。 む し ろ通 常 先 行 詞 に よ るc統 御 を 「自分 」が 表 層 で そ の 条 件 を 満 た して い な い に もか か わ らず 解 釈 可 能 に な る とい う事 実 が 示 唆 す る の は、 繋 辞 を含 む構 文 に特 有 の何 らか の メ カニ ズ ム が働 い て い る とい う可 能 性 で あ る。 同 様 の特 異性 が 不 定 名 詞 句 の解 釈 に も見 られ る 。 まず 、 不 定 名 詞 句 の 生 じる環 境 と解 釈 か ら観 察 す る と、(40b)に お い て 不 定 名 詞 句 のunicorn が 特 定 の 指 示 対 象 を外 界 に持 つ の に対 して(40a)のunicornは 特 定 の 指 示 対 象 持 つ 必 要 は な い 。 この よ うな不 特 定 の解 釈 が 不 定 名 詞 句 に 関 して 可 能 に な る の は、 そ れ が 内 包 的 動 詞(intensionalverb)の 領 域 内 に あ る 場 合 で あ る と さ れ て い る。(40c)で は、unicornが 内 包 的 動 詞wantの 領 域 外 で あ る主 語 の位 置 に生 じて い る た め に、 不 特 定 の 解 釈 は で きな い 。
(40) a. Mary wants a unicorn.
b. Mary is holding a unicorn.
c. A unicorn wants a cookie.
(41) It is a unicorn that Mary wants.
(Halvorsen 1978)
(41)で は 表 層 でunicornが 内包 動 詞 の領 域 外 に あ る に もか か わ らず 、 あ た か も も と もとの 領 域 内 に あ るか の よ うな不 特 定 の 解 釈 が 可 能 で あ る 。
(擬似)分 裂文 の 生 成 この 不 定 名 詞 句 の 解 釈 に 関 す る連 結 性 に 関 して も、 日本 語 は 並 行 的 な 振 る舞 い をす る 。 まず 、(42b)で 「ユ ニ コ ー ン」は 特 定 の 指 示 対 象 を持 つ の に対 して 、(42a>で は 内 包 動 詞 の 領 域 内 にあ る た め 、 不 特 定 の 解 釈 が 可 能 で あ る。 そ の 領 域 外 に あ る 場 合 に は(42c)の よ う に特 定 的 な 解 釈 が 要 求 さ れ る。(42a)に 対 応 す る(擬 似)分 裂 文(43)で は 「ユ ニ コー ン」は 表 層 で は 内 包 動 詞 の 領 域 外 に あ る に もか か わ らず 、 不 特 定 の解 釈 が 可 能 で あ り、 連 結 性 を示 して い る 。 (42)a.メ ア リ ー が ユ ニ コ ー ン を 欲 し が っ て い る b.メ ア リ ー が ユ ニ コ ー ン を抱 い て い る c。 ユ ニ コ ー ンが ク ッ キ ー を 欲 し が っ て い る (43)メ ア リ ー が 欲 しが っ て い る の は ユ ニ コ ー ン(を)だ こ こで 注 意 しな け れ ば な ら ない の は、(43)で は焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 わ な い場 合 で も不 特 定 の 解 釈 が 可 能 だ とい う点 で あ る 。 も し、 格 助 詞/後 置 詞 を伴 わ な い(擬 似)分 裂 文 の 派 生 が 移 動 を含 ま な い もの だ と す る な ら、(43)で 観 察 され る連 結 性 は 移 動 過 程 ゆ え に保 障 され る もの で は な く、 再 び繋 辞 を伴 う構 文 に特 有 の 何 らか の メ カニ ズ ム に 求 め られ る べ き と言 え そ うで あ る。 次 に観 察 す る現 象 は 上 の 二 つ と異 な り、 連結 性 が あ る こ とが 期 待 され る に も か か わ らず 、 そ れ が 存 在 し な い 例 で あ る。 まず は 否 定 極 性 項 目 (NPI:NegativePolarityItem)の 認 可 に 関 す る英 語 の例 をみ て み よ う。
(44) a. John hasn't left yet/*already.
b. [What John hasn't done] is leave yet/*already.
(Halvorsen 1978)
は 表 層 に お い て 否 定 辞notにc統 御 さ れ る位 置 に生 じて い な い に もか か わ らず 、 文 法 文 と な っ て い る。 あ た か も対 応 す る(44a)の も との 位 置 で 認 可 を受 け て い る か にみ え 、 連 結 性 を示 して い る。 これ に 対 応 す る例 を 日本 語 の 否 定 極 性 項 目 を 用 い て検 討 して み る と、 (45)の 「一しか ∼ な い 」の 場 合 も(46)の 「一 つ も ∼ な い 」の場 合 も否 定 極 性 項 目は(擬 似)分 裂 文 の 焦 点 位 置 で は 認 可 され え な い 。 (45)a.ビ ル は メ ア リ ー し か*批 判 し た/批 判 し な か っ た b.*[ビ ル が 批 判 し た/批 判 し な か っ た の]は メ ア リ ー し か だ (46)a.ビ ル は り ん ご を 一 つ も*食 べ た/食 べ な か っ た b.*【 ビ ル が 食 べ た/食 べ な か っ た の]は り ん ご を 一 つ も だ (47)a.ジ ョ ン は[ビ ル が メ ア リ ー し か 批 判 し な か っ た]と 思 っ て い る b.メ ア リー しか ジ ョ ン は[ビ ル がe批 判 し な か っ た]と 思 っ て い る (48)a.ジ ョ ン は 【ビ ル が りん ご を 一 つ も 食 べ な か っ た]と 思 っ て い る b.り ん ご を 一 つ も ジ ョ ン は 【ビ ル がe食 べ な か っ た]と 思 っ て い る も し、 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う(擬 似)分 裂 文 が 移 動 過 程 を 含 む もの で 、 そ の 派 生 過 程 が 否 定 極 性 項 目を 焦 点 化 す る 場 合 に も利 用 可 能 だ とす る な らば 、 当然 、 否 定 極 性 項 目が か き混 ぜ 操 作(scrambling)に よ っ て 文 頭 に 移 動 を受 け て い る(47b)(48b)の 例 と 同様 、(45b)や(46b)の 否 定 極 性 項 目 も非 焦 点 部 分 に含 まれ て い る否 定 辞 に よ っ て 認 可 さ れ うる こ とが 予 測 され る。 に もか か わ らず 、(45b)(46b)が 非 文 法 文 と な る こ とは (擬似)分 裂 文 の 派 生 に 移 動 過 程 が 含 まれ る とい う分 析 に疑 問 を投 げ か け る もの で あ る。 以 上 の 議 論 を ま と め る と、 移 動 過 程 が 含 ま れ る こ との 帰 結 と して連 結 性 を示 す こ とが 予 測 され る要 素 の うち 、 予 測 どお りの 振 る舞 い を示 した の は 「そ こ」に代 表 さ れ る 束 縛 代 名 詞 の解 釈 の み で あ り、 照 応 詞 の 「自分」
(擬似)分 裂文 の生 成 お よび 不 定 名 詞 句 の 不 特 定 の 解 釈 に 関 して は、 予 測 され る範 囲 外 の環 境 で も文 法 的 な例 が み ら れ 、 否 定 極 性 項 目の 認 可 に 関 して は、 予 測 さ れ る 連 結性 が 認 め られず 、 非 文 法 性 を示 す こ とが 観 察 さ れ る こ と を明 らか に した 。 これ らの事 実 か ら、 日本 語 に お い て は束 縛 代 名 詞 の認 可 の み が 移 動 に よ る連 結 性 の有 無 を試 す 基 準 とな る とい う判 断 を 導 くこ と も可 能 で は あ る 。 が 、 も う一 つ の 可 能 性 と して 、 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う場 合 とそ うで な い場 合 とで 派 生 の過 程 が異 な り、 そ の 違 いが 束 縛 代 名 詞 の解 釈 に 関 す る 事 実 を 説 明 し得 る の で あ れ ば 、前 者 が 移 動 過 程 を含 み 、 後 者 は 含 まな い とい う区 別 を す る必 要 は な い、 とい う可 能 性 が あ る 。 次 節 で は 、 この 可 能性 を議 論 す る。 3.4.連 結 性 と削 除 分 析 との 整 合 性 こ こ で 思 い 起 こす べ き な の は、 第2節 で 検 討 した 、 英 語 の(擬 似)分 裂 文 に 見 られ る連 結 性(connectivity)は 、 他 の 要 因 を考 慮 しな けれ ば 、 移 動 分析 を想 定 して も、 削 除 分析 を想 定 して も、 説 明す る こ とが 可 能 だ と い う こ と で あ る。 非 焦 点 部 分 の 節 内 で 空 の 演 算 子 の移 動 が あ り、 空 所 と演 算 子 さ らに焦 点 位 置 の 要 素 が 同 一 指 標 を 持 つ こ とで 、 連 鎖 束縛 が 可 能 に な り、 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 が 得 られ る、 と考 え る 代 わ り に、 焦 点 の 位 置 に は焦 点 要 素 だ けが 基 底 生 成 され る の で は な く、(擬 似)分 裂 文 に対 応 す る 通 常 の 構 造 が 繋 辞 の 前 の 位 置 に 生 成 され 、 焦 点 要 素 の み が 音 形 を持 っ て 具 現 し、 そ れ 以 外 の 要 素 は表 層 で は削 除 さ れ る 。 しか し、 削 除 さ れ た 要 素 は音 形 を持 た ない だ け で 、 構 造 上 、 削 除 を受 け る前 の 情 報 を そ の ま ま 保 持 して お り、 束 縛 代 名 詞 の 認 可 条 件 を満 た し得 る(ミ ニ マ リス トプ ロ グ ラ ム の 用 語 を 用 い る な らば 、 削 除 が 適 応 さ れ る の は ス ベ ル ア ウ ト後 、 PFへ 送 られ た情 報 お よ び 構 造 に対 して で あ り、LFへ 送 られ る構 造 に は 何 も影 響 しな い 、 とい う こ とに な る)。
(35)[ト ヨ タ さ え]、が[そ こiを 敵 視 し て い る 会 社 】を 訴 え た
(36)a.【 、[ト ヨ タ さ え]、がe訴 え た の 】は 【そ こiを 敵 視 し て い る 会 社 を]だ b.【,e[そ こ 、を 敵 視 し て い る 会 社 】を 訴 え た の 】は[[ト ヨ タ さ え 】i が]だ この よ うに 考 え る と、 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 が 可 能 なの は、 特 に連 鎖 束 縛 が 成 立 して い る とい う理 由 に よ る の で は な く、(35)に お い て 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 が 可 能 な の と全 く同 じ よ うに 、(36a)の 束 縛 代 名 詞 も認 可 さ れ る こ と に な る。 つ ま り、 束 縛 代 名 詞 の 解 釈 が(36a)の よ うに 可 能 で あ る と い う事 実 自体 は、 そ の 派 生 に英 語 と 同様 の(4a)の よ う な移 動 過 程 が 含 まれ る こ との 決 定 的 証 拠 に は な らな い の で あ る。 (4)非 焦 点(前 提)焦 点 [a...-no]-waXP-(CaseParticle/Postposition)-da a.OP移 動 含 む:基 底 生 成 b.OP移 動 含 む:削 除 に よ り派 生b c.OP移 動 含 ま な い:基 底 生 成 d.OP移 動 含 ま な い:削 除 に よ り派 生 そ れ で は 、 第3節 の(14)で み た 複 合 名 詞 句 内 か ら移 動 が 生 じて い る よ う に 見 え る例 で 文 法 性 が 極 端 に 悪 くな る事 実 は、 日本 語 にお い て 、 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う(擬 似)分 裂 文 の 生 成 の 際 に移 動 過 程 が 含 ま れ る と分 析 す る 以 外 の 見 方 は で き な い の だ ろ うか?次 節 で は、 こ こで も や は り削 除 分析 を採 用 した上 で の 説 明 を考 え る可 能 性 が あ る こ と を示 唆 す る 。
(擬似)分 裂 文 の 生成 4.削 除 に よ って 焦 点 要素 を導 く 第3節 で 観 察 した 、 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 の 生 成 が 移 動 過 程 に対 す る制 約 で あ る複 合 名 詞 句 制 約 に従 う よ う に み え る とい う(14b)の 事 実 は 、 英 語 の デ ー タ との 並 行 性 か ら、 移 動 分 析 を示 唆 す る 強 い 証 拠 で あ る か に見 え る。 しか し、(49)一(51)の よ う な例 を考 慮 に 入 れ る と、 デ ー タ の 捉 え 方 を再 検 討 す る こ とが 妥 当 に思 わ れ て くる。 (49)a.【 、 ジ ョ ンが[S'メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と]思 っ て い る の]は[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに]だ. b.?[、 ジ ョ ン が 【gメア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と 偲 っ て い る の]は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに]と]だ. c.【、 ジ ョ ンが 【3メア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と]思 っ て い る の 】は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン ト に 見 せ た]と1だ. d.【、 ジ ョ ン が 【sメア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と 偲 っ て い る の]は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに と]思 っ て い る の だ. e.[、 ジ ョ ン が 【S'メア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た と]思 っ て い る の]は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに 見 せ た と 偲 っ て い る の 】だ. 一 般 に削 除 が 適 用 さ れ る 環 境 で は、 同 一 の解 釈 が 可 能 な、 削 除 が 適 用 さ れ な い 表 現 も 許 容 さ れ る 。 つ ま り削 除 の 適 用 は 随 意 的 な わ け で あ る 。 (49a)で 繋 辞 の前 に音 形 を伴 っ て 生 起 して い る の は[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに]で 、 こ れ は 非 焦 点 部 分 の[、]内 で空 所 に な っ て い る部 分 に対 応 す る情 報 で あ る 。(49a)で は た また ま[、1内 の 空 所 と繋 辞 の 前 に生 じて い る焦 点 要 素 が 範 疇 的 に も一 致 して い る が 、(49b-e)で は 、 こ の 一 致 が 必 然 的 な も の で は な い こ と が わ か る 。(49b)で は 焦 点 要 素 に加 え埋 め 込 み 節 を 導 入 す る 「と」(補文 標 識 と らえ る か後 置 詞 と捉 え るか は議 論 に影 響 し な い た め 、 こ こ で は 問 題 に し な い)が 繋 辞 の前 に生 じて い る 。 こ こ で
は 、 埋 め 込 み 節 と そ の 上 の 節 の動 詞 要 素 の 音 形 が 表 層 に 具 現 して い ない の で あ る。(49c)と(49d)で は 二 つ の 動 詞 要 素 の う ち 一 方 が 音 形 を 伴 っ て 具 現 して い る 。(49e)で は焦 点 要 素 と動 詞 要素 が 両 方 具 現 して い る。 (49b)一(49e)の 例 か ら言 え る こ とは 、 焦 点 要 素 を含 む よ り大 き な構 成 素 が 繋 辞 の 前 の 位 置 に生 起 しう る とい う こ と、 そ の 構 成 素 の う ち の 一 部 が 音 声 的 に具 現 し な い例 が 許 され る こ と、(49b)に 見 られ る よ う に音 声 的 に具 現 し ない 部 分(つ ま り削 除 を う け た 部 分)が 必 ず し も一 つ の 構 成 素 を為 す とは 限 らな い こ と、 で あ る 。 さ ら に 複 合 名 詞 句 制 約 に 抵 触 し て い る と 考 え ら れ て き た (14b)(ニ(50a))の 例 を基 に、(49)と 同 様 の 例 を 考 え て み る と、(50b). (50d)の よ うに な る 。 (50)a.*?【 、ジ ョ ンが[NP[see会 っ た こ と が あ る 】日 本 人]を 大 勢 知 っ て い る の]は[ラ ッ セ ル に]だ b.*?[、 ジ ョ ン が[NP[see会 っ た こ と が あ る1日 本 人 】を 大 勢 知 っ て い る の 】は[ラ ッ セ ル に 会 っ た の 】だ c.[、 ジ ョ ン が[NP[see会 っ た こ と が あ る]日 本 人]を 大 勢 知 っ て い る の]は[[ラ ッ セ ル に 会 っ た こ と が あ る]日 本 人 を 】だ d,[、 ジ ョ ン が[NP【see会 っ た こ と が あ る 旧 本 人1を 大 勢 知 っ て い る の]は[【[ラ ッ セ ル に 会 っ た こ とが あ る 旧 本 人 】を 大 勢 知 っ て い る の1だ (50b)で は 、 繋 辞 の前 に焦 点 要 素 を 含 む 関係 節 が 主 要 部 な しで 生 じて お り、 非 文 法 文 で あ る。(50c)の よ う に 主 要 部 の 名 詞 要 素 ま で 音 形 を伴 っ て 具 現 す る と文 法 文 とな る。(50d)の よ うに さ らに 上 部 の構 造 ま で 音 形 を 伴 っ て具 現 す る こ と もで き る。 こ の よ うな 例 を観 察 す る と、 む し ろ検 討 す べ き な の は 、 完 全 な 文 か ら焦 点 要 素 め が け て どん な 要 素 を削 除 して
(擬似)分 裂 文 の生 成 い け るか 、 とい う問 い の よ うに 思 わ れ る。 さ らに こ の見 方 を推 し進 め る証 拠 と して 、 一 見wh島 制 約 に抵 触 して い るか に 見 え る例 が あ る 。(51a)で は 、 繋 辞 の 前 に 生 起 して い る 焦 点 要 素 に対 応 す る空 所 【e】が[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに1に対 応 して い る 解 釈 は 得 られ な い 。 こ れ と対 照 的 な の が(51b)で 、 焦 点 要 素 に さ ら に疑 問 節 を 導 入 す る[か]が 付 属 し た 形 が 繋 辞 の 前 に 現 れ て お り、 文 法 的 で あ る 。 (49b)と 同 様 、 二 つ の 動 詞 要 素 と も音 形 を 伴 っ て表 層 に具 現 して い な い 点 が 特 徴 的 で あ る 。(49c)一(49e)で は、(49b)で 欠 け て い る二 つ の 動 詞 要 素 の 一 方 も し くは 両 方 が 音 形 を伴 っ て 具 現 してお り、 い ず れ も文 法 的 で あ る 。 (51)a.*[,ジ ョ ン が[S'メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た か 】調 べ て い る の]は 【あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに]だ b.[,ジ ョ ンが[S'メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た か 】調 べ て い る の 】は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン ト に 】か 】だ c.[、 ジ ョ ン が[S,メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た か]調 べ て い る の]は 【あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに 見 せ た か]だ d.[、 ジ ョ ンが[sメ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た か 嗣 べ て い る の]は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン ト に か]調 べ て い る の]だ e.[、 ジ ョ ン が[s,メ ア リ ー が 昨 日eそ の 書 類 を 見 せ た か 】調 べ て い る の 】は[[あ のCIAエ ー ジ ェ ン トに 見 せ た か1調 べ て い る の 】だ も ち ろ ん 、[、]内 の 空 所 に 対 応 す る要 素 以 外 の要 素 が 繋 辞 の 前 の焦 点 の 位 置 に 生 じて い る よ うな 例 は(擬 似)分 裂 文 と は独 立 の全 く異 な る構 文 と考 え る 可 能 性 が な い わ け で は な い 。 しか し、 そ の よ うな独 立 の構 文 を 派 生 す る た め に は削 除 の 操 作 が 必 要 で あ り、 そ の 操 作 が 利 用 可 能 で あ る な ら ば、 当 然 、 そ の操 作 を適 用 して 、 従 来 か ら(擬 似)分 裂 文 と して扱 わ
れ て きた 例 を 派 生 す る こ と可 能 性 が 残 さ れ る こ と に な る 。 本 論 文 で は 、 焦 点 位 置 の 要 素 に 削 除 を適 用 して 従 来 の(擬 似)分 裂 文 を 派 生 す る場 合 と、 焦 点位 置 に生 ず る要 素 を基 底 生 成 し、 非 焦 点 部 分 に 演 算 子 の 移 動 を適 用 して 派 生 す る場 合 とで 、 どち らか 一 つ 選 択 す る こ と を 可 能 に す る よ う な決 定 的 な 議 論 は 、 残 念 なが ら提 示 で きな い 。 しか し、 (擬似)分 裂 文 の生 成 に 移 動 が 関与 し な い こ と を示 唆 す る 状 況 証 拠 は い く つ か あ る 。 Murasugi(1991)で は(52b)や(53b)の よ うに 主 要 部 に 名 詞 修 飾 節 内 の 付 加 詞 に 対 応 す る 「理 由」 「方 法 」 な どが 生 じた 場 合 、 長 距 離 依 存 関係 が 許 さ れ な い 事 実 を、 これ らの名 詞 修 飾 節 内 で 想 定 さ れ る付 加 詞 の 移動 後 に残 さ れ る空 所 を 適 正 に先 行 詞統 率 す る こ と を可 能 に す る機 能 範 躊 が 存 在 しな い た め と考 え る こ とで 説 明 した。 (52)a.[メ ア リ ー が 去 年 会 社 を 辞 め た]理 由 を私 は 知 ら な い b.*[ジ ョ ンが[メ ア リ ー が 去 年 会 社 を 辞 め た と 】思 っ て い る]理 由 を 私 は 知 ら な い (53)a.[メ ア リ ー が 去 年 北 海 道 に 行 っ た1方 法 を 私 は 知 ら な い b.?*[ジ ョ ンが 【メ ア リ ー が 去 年 北 海 道 に 行 っ た と]思 っ て い る 】方 法 を 私 は 知 ら な い (擬似)分 裂 文 で対 応 す る例 を考 え る と、 全 く並 行 的 に これ ら の付 加 詞 が 焦 点位 置 に生 じる よ うな 長 距 離 依 存 関係 は許 容 で きな い 。 (54)a.[メ ア リーが 去 年 会 社 を辞 め た の 】は健 康 を害 した か らだ b.*[ジ ョ ンが[メ ア リー が 去 年 会 社 を辞 め た と偲 って い る の】は健 康 を 害 した か らだ (55)a.[メ ア リーが 去 年 北 海 道 に行 っ た の 】は 電 車 を乗 り継 い で だ
(擬似)分 裂 文 の生 成 b.*【ジ ョ ン が[メ ア リ ー が 去 年 北 海 道 に 行 っ た と]思 っ て い る の]は 電 車 を 乗 り継 い で だ も し名 詞修 飾 節 に 関 して長 距 離 依 存 関係 が許 され な い こ とが 、先 行 詞 統 率 を可 能 にす る機 能範 畴 の欠 落 ひ い て は移動 過 程 の 欠 落 に よっ て 説 明 され る の な らば、(擬 似)分 裂 文 に お け る並 行 的 な例 も同様 に 空 の演 算 子 の欠 落 お よび移 動過 程 の 欠 落 に よっ て説 明す る こ とが 妥 当 で あ る と思 わ れ る。 ま た 、 日本 語 で は英 語 と異 な り、(擬 似)分 裂 文 の 焦 点位 置 に生 ず る要 素 が 複 数 あ る(56)の よ うな 例 が 存 在 す る 。 (56)【 、 ジ ョ ンがeeあ げ た の]は[メ ア リ ー に][り ん ご を 三 つ]だ もち ろ ん空 の演 算 子 が 多 重 に チ ェ ッ ク さ れ る過 程 を想 定 した り、 あ る い はKoizumi(1995)やKuwabara(1996)の よ う に空 の 演 算 子OPは 名 詞 句 に 対 応 して い る の で は な く、 動 詞 が 繰 り上 げ操 作 を受 け た 後 の動 詞句 に 対 応 す る要 素 だ と考 え る こ とで 、 焦 点 が 一 つ 、 素 性 の チ ェ ッ ク も一 度 で 行 わ れ る よ うな 分析 を考 え る こ と も可 能 で あ る。 が 、 焦 点 部 分 に生 ず る 要 素 の 数 と組 み合 わ せ に か な りの 自由 度 が あ る こ と は、 日本 語 に お い て 並 行 的 な節 の要 素 の 削 除 が 随 意 的 に行 い 得 る こ と と関 連 付 け て説 明 す る ほ うが 妥 当 に思 わ れ る 。 さ ら に、 否 定 極 性 項 目 の 認 可 に関 して 連 結 性 が 見 ら れ な い の も、 (45)b.*[ビ ル が 批 判 し た/批 判 し な か っ た の]は メ ア リ ー し か だ c.[ビ ル が 批 判 し な か っ た の]は メ ア リ ー し か 批 判 し な か っ た の だ (46)b.*[ビ ル が 食 べ た/食 べ な か っ た の]は り ん ご を 一 つ も だ c.[ビ ル が 食 べ な か っ た の]は り ん ご を 一 つ も 食 べ な か っ た の だ
(45c)や(46c)の よ う に 焦 点 部 分 に否 定 辞 を含 む 動 詞 要 素 を補 う と文 法 的 に な る こ と か ら、移 動 に 関連 した 連 結 性 が 見 られ ない と と らえ る よ り も、 削 除 に 関 す る何 ら か の 制 約 に 抵 触 して い る と 考 え る ほ うが 妥 当 で あ ろ う。 4.ま とめ 前 節 まで で 議 論 した こ とを ま とめ る と、 日本 語 の(擬 似)分 裂 文 で は 焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を伴 うか 否 か で 非 焦 点 部 分 に 移 動 過 程 が 関 与 す る か ど うか の 違 い は な く、 む しろ 焦 点 要 素 が 基 底 生 成 さ え る か削 除 に よっ て 導 か れ る か の 違 い を持 つ 可 能 性 を 示 した 。 格 助 詞/後 置 詞 を 伴 う場 合 に は(4d)の 派 生 過 程 を 持 ち 、 伴 わ な い場 合 は(4c)の 派 生 過 程 を持 つ と分 析 す る こ とで 、 い ま ま で見 落 と され て きた デ ー タを 包 括 的 に と らえ る 可 能 性 が 生 ず る こ とを示 唆 した 。 (4)非 焦 点(前 提)焦 点 [、...-no1-waXP-(CaseParticle/Postposition)-da a.OP移 動 含 む:基 底 生 成 b.OP移 動 含 む:削 除 に よ り派 生 c.OP移 動 含 ま な い:基 底 生 成 d.OP移 動 含 ま な い:削 除 に よ り派 生 統 語 的 な移 動 過 程 が 関 与 す る こ とが 強 く意 識 され て い た 、 日本 語 の 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う(擬 似)分 裂 文 を 削 除 に よ っ て 派 生 す る ほ うが 妥 当 で あ る こ と に な れ ば、 焦 点 化 と い う機 能 を もつ 構 文 を派 生 す る た め に 言 語 に よ っ て利 用 す る手 段 が 異 な る こ とに な る。 もち ろ ん 、 本 論 文 で 明示 で き なか っ た 削 除 の メ カ ニ ズ ム を解 明 す る と と もに 、 ど ん な要 因 が 移 動 も し くは削 除 を誘 発 ・認 可 す るの か 、 そ れ ぞ れ の言 語 の 持 つ 他 の特 性 と関 連
(擬似)分 裂文 の 生成 付 け て 説 明 す る必 要 が あ る こ とは 言 う まで も な い。現 在 考 え られ る の は 、 日本 語 に空 の 演 算 子 を認 可 す る よ う な特 性 を持 つ 機 能 範 躊 が な い こ と に よ り、 日本 語 で は移 動 は 焦 点 化 を含 む様 々 な 機 能 を 果 た す た め の操 作 と して利 用 す る こ とは で きず 、 そ の 代 替 操 作 と して、 削 除 操 作 を可 能 な 限 り利 用 して い る とい う こ とが で き るか も しれ ない 。 こ の よ う な説 明 が 無 理 な く幅 広 い デ ー タ を 説 明 す る こ とが で きれ ば 、言 語 の多 様 性 に 関 して 、 Fukui(1986,1988,1995)で 提 案 され た 、 機 能 範 躊 の み が パ ラ メ ー タ化 さ れ う る とす る仮 説 に新 た な 証拠 を付 け加 え る こ と に な る で あ ろ う。 注) 1(6)お よ び(7>で は 以 下 の 議 論 に大 き く影 響 す る こ とが な い との 判 断 か ら、SやAUXの 範 躊 お よび 三 叉 枝 分 か れ の 構 造 を修 正 せ ず そ の ま ま 表 記 し た が 、 本 論 文 で 基 本 的 に採 用 して い る の は(i)で 示 したChomsky (1995)で 想 定 され て い る 二 叉枝 分 か れ の句 構 造 で あ る。 2複 合 名 詞 句 制 約 、wh島 制 約 は 以 下 の と お りで あ る 。 (i)複 合 名 詞 句 制 約 NoelementcontainedinanSdominatedbyanNPwithalexicalhead
noun may be moved out of that NP by a transformation. (Ross 1967)
(i)wh島 制 約
An NP that is part of an indirect question cannot be questioned or relativized. 複 合 名 詞 句 制 約 で は語 彙 主 部 を持 っ た 名 詞 句 に 支 配 され たSの 内 部 か ら 要 素 を移 動 さ せ る こ とが で き な い こ と、wh島 制 約 で は 間接 疑 問 文 内 の 名 詞 句 を疑 問化 あ る い は 関係 詞 化(つ ま り移 動)で き ない こ と を記 述 して い る 。 3擬 似 分 裂 文 で は[、]全 体 が 外 界 に指 示 対 象 を 持 つ よ うな 名 詞 的 要 素 に転 換 され る過 程 が含 ま れ る可 能性 が あ るが 、 こ こで は論 じな い 。 4焦 点 要 素 が 格 助 詞/後 置 詞 を 伴 う例 に 関 し て は 、 特 に格 助 詞 が 生 起 す る 場 合 の 文 法性 の 判 断 に 関 して 個 人 差 が 大 き く見 られ る。 著 者 の 判 断 はHojiの 判 断 と同 様 で あ り、 格 助 詞/後 置 詞 を伴 う例 を 基 本 的 に文 法 的 で あ る と して議 論 を 進 め る。 5Halvorsenが 指 摘 す る よ う に 網 羅 的 で あ る こ と の 含 意 に 関 して は よ り精 緻 な 記 述 が 必 要 で あ るが 、 こ こ で は 論 じな い。 6「 そ こ 」が ト ヨ タ を 指 す 同 一 指 示(coreference)の 読 み は 許 容 さ れ る 。
(擬似)分 裂文 の 生成
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