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都市空間シミュレーションシステムの開発と評価

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Academic year: 2021

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川合 康央

Development and Evaluation of the Urban Space Simulation System

Yasuo Kawai

Abstract

The purpose of this study is to develop and evaluate an urban space simulation system that used game engine. The ability to examine an urban landscape from various viewpoints and with a realistic simulated landscape is important for accurate landscape evaluation. The three-dimensional building/facility models were positioned to reflect their locations in the real environment. The proposed system actualizes a walk-through of the environment using a freely moving first-person viewpoint. The height and starting point of the viewpoint are selectable; the system displays the view from the street as well as from the window of the building. To evaluate this system, a three-dimensional model was compared with photographic images. Results from the experiment revealed that the commercial sign and road elements had a higher gaze rate in the photographic images. The commercial sign images were more complex in the photographic images than in the proposed system’s renderings. In the photographic images, high gaze rates were also observed for the vehicle, and pedestrian elements. This finding may suggest that moving elements preferentially draw attention. To conclude, intended as a tool for urban landscape evaluation, the proposed system was able to reproduce the urban landscape with some degree of success.

1.研究の目的

本研究は、ゲームエンジンを用いた都市空間シミュレーションシステムを開発し、景観分析から これを評価するものである。景観計画は、都市空間の調和と地域の特徴を表し、災害計画とともに 都市計画において重要な要素である。2005 年の景観法全面施行に伴い、各地方自治体の総合計画 や都市計画マスタープランにおいて、様々な景観まちづくりが試みられており、地方公共団体は、 良好な都市景観を形成することを目的として、様々な景観条例を定めている。これらの条例は、当 初は歴史的景観など特徴的な地域の街並みを保全するための自発的な試みであったものが、現在で は景観法に依拠する景観計画により、都市景観の整備を計っていくようになったものである。都市 空間において、景観となる環境は、建築物、都市施設などの人工物による空間構成要素群が複雑に 混在して構成されている。都市景観は、これら種々の空間構成要素群をコントロールすることによっ て、良好な環境へと導くことが可能となる。景観とは、人間が主として視覚を中心として認知した 環境情報に対して、感性的な評価を行ったものであるといえる。しかし、この景観に対して、感性 的な評価をもとに美しい都市景観を計画していくことは難しい。景観についての関心が高まる一方 で、市民や事業者にとって景観計画による都市空間の特徴や変化はイメージし難いものとなってい

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る。そこで本研究では、これまでコスト面や自由度の低さから導入が難しかった 3 次元データによ る都市空間シミュレーションシステムについて、開発環境としてゲームエンジンを採用することに よって、操作の自由度の高い実用的なシステムを開発する。

一方、近年の情報通信技術は、頭部搭載型ディスプレイ(Head Mounted Display, HMD)、モーショ ンセンサ、組み込み型シングルボードコンピュータなどの入出力インタフェース機器の高性能化及 び低価格化や、3 次元コンピュータグラフィックス(Three-dimensional Computer Graphics, 3DCG)、 ゲームエンジンなどのシステム開発環境におけるフリー・オープンソースソフトウェア(Free and Open Source Software, FOSS)の普及などにみられるように、ハードウェア、ソフトウェアともに様々 な新しい展開を見せている。しかし、これらの新しい情報技術は、開発時には社会の幅広い分野に 対しての利活用が期待されているにも関わらず、社会における実用的な展開は不十分なものとなっ ている。 本研究は、開発環境としてゲームエンジンを用いることによって、景観計画に資する高品質な大 規模モデリングによる都市空間シミュレーションシステムを開発するものである。この開発に使用 したゲームエンジンとは、3 次元形状モデルに対話性を持たせることが可能なシステム開発キット (Software Development Kit, SDK)である。このゲームエンジンを活用することによって、視点場の 設定や環境条件の変更等が容易に可能な自由度の高いシステムを、専用のシステム開発を個別に行 うことなく、高品質なリアルタイムレンダリング画像を連続継起的に表示するものを作成すること とした。 本研究では、まず、都市レベルでの大規模モデリングを行い、景観法に基づくまちづくりの際に 必要となるシーンである建造物・工作物の新築、改築、大規模修繕などの状態を再現可能なインタ ラクションを施した都市空間シミュレーションシステムを開発し、その評価を行うこととした。

2.研究の背景

都市空間シミュレーションは、これまで主として都市模型1)(図 1)や合成写真2)(図 2)、3DCG、

図 1 都市模型の例( Le Corbusier, Plan Voisin, 1925 ) 図 2: 合成写真の例( Mies van der Rohe, Friedrichstrasse Skyscraper Project, 1921 )

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ヴァーチャルリアリティ(Virtual Reality, VR)等が用いられてきた。都市模型は、建築計画の段階 で景観イメージを共有する際に広く用いられてきた手法であり、様々な角度から検討可能なことか ら、現在でもその手段は有効である3)。しかし、模型作成には多くの時間、コストが必要であり、 また設計変更に対する即時的な反映も容易ではない。また、合成写真やモンタージュも、古くから 用いられてきた手法であり、手書きのパースや模型写真などを、実際の敷地に当てはめたものが用 いられてきた4, 5)。さらに近年では、デジタル画像処理技術を用いた写真加工により、リアルな画

像を得ることが可能となった。設計時にコンピュータ支援設計(Computer-Aided Design and Drafting, CADD)環境を用いることが主流となり、これらのデータをレンダリングしたものを加工して合成 することも多い6)。しかし、静止画像として出力されたものは、印刷して配布するなど取り扱いが 容易である一方、2 次元での表現となり、限られた視点からのものとなる。特に、景観計画を行う際、 意図的に周辺環境への影響を小さく見積もることも可能であり、注意が必要であることからも、様々 な異なる視点から検討できる都市空間シミュレーションシステムの必要性が考えられる。 また、最近の研究では、景観シミュレーションに 3 次元形状データを用いたコンピュータビジュ アライゼーションによるシステムも見られる7)。インタラクティブな 3 次元ウォークスルーとして

は、仮想現実モデリング言語(Virtual Reality Modeling Language, VRML)による景観シミュレーショ ンが挙げられる8)。これらのシステムは Web 上で取り扱うことも可能であり、動作も軽量なこと

から仮想現実の制作に多く用いられてきた。さらに、X3D や XML ベースの 3DMLW(3D Markup Language for Web)など、様々な 3 次元形状を扱うファイルフォーマットがあるが、CADD データ などと直接やり取りする際に、これらは決して効率が高いものではなかった。また、3DCADD や 3DCG 環境でモデルを作成し、それらのソフトウェアから直接出力した 3 次元形状モデルを用いて VR 環境を構築した研究も見られる9, 10)。しかし、これらのシステムは、インタラクションを付与 する際に専用のシステムとして開発されることが多く、開発するプロジェクトごとに個別にシステ ムを用意する必要があり、様々な場所での利用に際しての汎用性に欠けるといえる。 そこで本研究では、ゲームなどのインタラクティブなデジタルコンテンツの開発環境として利用 されているゲームエンジンを用いて、これに 3 次元形状データを持つ CADD データを取り込むこ とによって、汎用性のあるシミュレーションシステムの開発を行うこととした。ゲームエンジンを 用いた都市空間シミュレーションについては、その可能性について言及したものや、単体の建築物 などの限定された環境下での先行研究がある11、12)。だが、実在する都市に対して、街区レベルの 大規模モデルで、景観を検討できるディテールを併せ持った 3 次元形状モデルを用いた都市空間シ ミュレーションシステムは、取り扱うデータが膨大となるため、未だその事例がほとんどない。

3.都市空間シミュレーションシステムの開発

3.1.研究対象地区(湘南台景観形成地区) 本システムの対象地区として、「湘南台景観形成地区(神奈川県藤沢市)」(図 3)を選定した。 湘南台景観形成地区は、藤沢市北部の都市拠点であり、小田急江ノ島線、相鉄いずみ野線、横浜市 営地下鉄ブルーラインの 3 路線が接続するターミナル駅を中心として、駅周辺の商業地域、近隣の 住居地域、近郊の工業・文教地区への交通ターミナルで構成されている。 また、景観計画の観点からは、湘南台景観形成地区と景観形成基準が定められており、2012 年 10 月よりこの基準の運用が開始されている13)。湘南台景観形成地区の位置は、藤沢市湘南台一丁

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目及び二丁目地内であり、区域面積は約 21.1ha となっている。この地区では、壁面の位置、建築 物形態意匠の制限、色彩基準、屋外広告物、緑化、夜間景観についての制限が課されている。 壁面位置の制限では、まちの賑わいと潤いのあるおもてなし空間を確保するため、地区内における 建築物の1階部分の外壁又はこれに代わる柱の面から道路境界線までの距離について、1.0 m以上又 は 0.5 m以上確保する必要がある。また、建築物の形態意匠の制限では、おもてなし空間として、壁 面後退部分(道路境界線から壁面後退の位置までの部分)は、賑わいや潤いを演出し景観を豊かにす るために、植栽の設置や舗装部分の仕上げの工夫、品位の良さを感じられるデザインの広告物の配置 が望まれており、一方で、閉鎖的な塀、過大な広告物、物置等の工作物は極力設置しないこととする 事で、おもてなし空間の連続性を確保することとなっている。さらに、屋根、外壁、日よけに対する 色彩基準についても、マンセル表記系による色相、明度、彩度の基準が定められている。形態意匠に ついても、低層部と中高層部は、形態、色彩、素材等によりデザインの分節化に努めるものとされ、 1階部分は開口部を広く取るなど開放的にしつらえるよう努めること、特に、円行東西大通り沿いの 主要なコーナー部については、街角を意識した建築デザインに努めることとされている。 工作物の制限では、円行東西大通りから視認できる位置において、建築物に付随した駐車場や駐 輪場を設置する場合、道路沿いへの植栽等によって景観への配慮に努めるものとなっており、また 緑化の推進では、道路沿いへの植栽やプランターボックス等の配置に努め、さらに壁面緑化・屋上 緑化に努めることとされている。 屋外広告物の制限では、色彩制限として、蛍光塗料、発光塗料、反射塗料等の使用を禁止しており、 広告物のデザインは、商品・サービス等の営利目的部分の表示を最小限とした、品位のあるデザイ ンとし、地域の賑わいや良好な環境の演出に寄与するものとするよう努めること、同一敷地内の屋 図 3 研究対象地区(湘南台景観形成地区) 湘南台景観形成地区 0 20 50 100 200(m) N 湘南台駅 円行東大通り 円行西大通り 小田急江ノ島線 新宿・町田方面 小田急江ノ島線 藤沢・江ノ島方面 湘南台公園 湘南台文化センター 相鉄いずみ野線 横浜・二俣川方面 ブルーライン 横浜・戸塚方面

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外広告物は、極力、形状や意匠を揃えるよう努めること、広告物は形態、文字等のデザインを考慮 し、建物の外観と調和するよう努めること、点滅等の動光照明は極力使用しないこと、とされてい る。さらに夜間景観については、照明の制限が設けられており、ここでは、フラッシュライト等の 瞬間的に強い光を発するものは使用しないこと、道路、敷地から光源が直接見えないように、間接 照明等の使用に努めること、店の明かりを透過するショ-ウィンドウ、グリルシャッター等により、 夜間においても楽しく明るい雰囲気づくりに努めること、といったものがある。 開発者は、景観法第 16 条 1 項に基づき、本地区において、建築物・工作物の新築、増築、改築、 若しくは移転、外観を変更することとなる修繕、模様替え、色彩の変更を行う際には、届け出が必 要となっている。 3.2.開発の流れ 本システムの開発の流れについて解説する(図 4)。研究対象地区の全ての建築物及び付随す る都市施設等の空間構成要素について、写真撮影と簡易測量を行い、これを地理情報システム (Geographic Information System, GIS)データと合わせて位置合わせを行い、3 次元モデリングのベー スとなる平面図及び連続立面図を作図した。これを基に、CADD 及び CG 開発環境を用いて、3 次 元形状モデルの作成を行うこととする。建築物は、主として 3DCADD を用い、構造を考慮したう えで図面に基づき正確に作図することとした。一方で自由曲面等を有する都市施設のモデルは、ポ リゴン数をコントロールするため、FOSS の 3DCG 開発環境を使用するなど、対象となる空間構成 要素の特性に応じた開発環境を用い、ディテールを活かしたうえで可能な限りポリゴン数を抑える よう配慮してモデリングを行った。これら CADD、CG で作成された 3 次元形状データを、3DCG 開発環境である Blender 上に取り込み、撮影した写真から画像処理を行って作成したテクスチャマッ プ、マテリアルマップと統合する。3DCG 開発環境では、すべてのポリゴンを等しく扱うため、都 市規模のモデルの編集は不可能である。そこで、ここでは建物敷地単位ごとにモデルを用意するこ ととした。 その後、敷地ごとに用意した 3 次元形状モデルを、統合開発環境であるゲームエンジンへと読み 込んだ(図 5)。ゲームエンジン上では、3 次元形状モデルはプレファブ化され、取り扱いが容易な ものとなる。建物敷地ごとに 3 次元形状モデルを取り込み、これに GIS データをマッピングした 平面モデルの上に正確に配置していく。さらに、ゲームエンジン上で、C# 及び JavaScript によっ てインタラクションを付与することとした。まず、再現した都市モデル内をユーザが自由に移動可能 3DS 建築物モデリング

3D Computer-Aided Design Software Form-Z Render Zone Plus ver.7.0pro

モデリング統合

3D Computer Graphics Software Blender Ver.2.72

MQO 都市施設モデリング

3D Computer Graphics Software Metasequoia 4

PNG テクスチャ・UI デザイン

Image Processing Software Adobe Photoshop CC, Illustrator CC

インタラクションデザイン

Game Engine Unity pro Ver.5.1

OBJ MTL

EXE

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となるような、一人称視点で衝突判定 のあるウォークスルーの作成を行うこ ととする。視点は、初期値として高さ 1500 mmとしたが、この視点高さにつ いてもインタラクションを設け、変更 可能なものとすることにより、路上か らの景観だけでなく、建物中高層階室 内からの眺望の再現も可能なものとし た(図 6, 7)。この視点高さの変更機能 によって、従来の景観シミュレーショ ンでみられるような、パブリックな路 上景観からの検討だけではなく、各住 戸からの眺望に及ぼす影響を考慮可能 なものとなり、計画建築物を自由な視 点から検討することが可能なものと なった。 さらに、各種空間条件の変更可能な パラメータとして、建築物の高さや セットバック(図 8)、外壁の素材お よび色彩の変更(図 9)が可能なイン タラクションを施すこととした。これ らはリアルタイムで変更可能なもので あり、計画建築物に対する景観計画の 図 5 ゲームエンジンによる 3 次元形状モデルの配置 図 6 提案したシステムによる路上からの眺望    (円行西大通り) 図 7 提案したシステムによる中層建築物上からの眺望    (円行西大通り)

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検討を行う際を想定して開発を行った。また、この操作は、タッチパネル型ディスプレイを用いた 操作についても実装を行ったことで、より直感的な操作が可能となった。

図 8 建築物の高さとセットバックの検討

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3.3.システムのインタフェース 次に、入力インタフェースについて見てみる。視点の移動として、キーボードの WASD または 矢印キーを、視線の回転として、マウスカーソルを用いて、基本的な操作を行うこととした。さら に、USB または Bluetooth で接続されたゲームパッドでも、視点移動を左側アナログパッド、視線 回転を右側アナログパッドに対応させることで、同様の動作ができるものとし、キーボードでの操 作に不慣れなユーザでも直感的な操作が可能となるよう配慮した(図 10)。また、出力インタフェー スとして、一般的なディスプレイでの表示とともに、没入間を高めるため HMD による表示が可能 なものとした。 既存建築物に対し、マウスクリックやゲームパッドのアクションボタンによって、建築物モデル の入れ替えによる建て替えや、外壁テクスチャの変更による大規模修繕のシミュレーションを行う ことができるものとした。さらに、タッチパネル型のディスプレイを用いることによって、配置し た建築物などの空間構成要素をドラッグアンドドロップ可能なインタラクションを設けることに よって、リアルタイムで建物高さ、セットバックの検討が可能となった。 図 10 キーボード、マウス、及びゲームパッドによる操作方法 上昇 / 下降 左トリガー / 左ボタン 空間構成要素選択右ボタン 視点移動操作 左アナログスティック 視線回転操作 右アナログスティック 跳躍 A ボタン メニュー B ボタン 空間構成 要素選択 左ボタン メニュー右ボタン 視線回転 マウスカーソル

W

S

A

D

ESC

Alt

Space

Shift

前進 W キー 左移動 / 後退 / 右移動 A/S/D キー 上昇 / 下降 Shift/ Alt キー 終了 Esc キー 跳躍 Space キー

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4.都市空間シミュレーションシステムの評価

4.1.システムの評価実験

対象地区のシステムレンダリング画像を写真画像と比較することによって、本システムの評価 を行うこととした。比較対象となる画像は、Google Maps の Street View 画像とした。対象地区とし て円行西大通りを選定し、この通りを東に向かうシークエンス景観を評価の対象とした。Google Maps において、同地区の Street View から 10 m間隔で 23 地点(シーン)の撮影ポイントが確認さ れた。それぞれの Street View 撮影ポイントと同一の視点場を設定し、3 次元形状モデルを 23 地点 においてゲームエンジン上でレンダリングを行ったものを用いる(図 11,12)。本実験で用いる画像 の解像度は、幅 1280pixel ×高さ 720pixel であり、一枚当たり計 921600 画素のものを用いることと した。これらの画像群を縦横 10 分割し、画像一枚当たり幅 128pixel ×高さ 72pixel で 100 分割した ものを準備した。分割された画像ごとに HTML ファイルを対応させ、計 4600 枚の Web ページを 作成し、これを用いた Web 評価システムを用意した。クリックによってどの画像が押下されたの かを、ページごとのアクセス解析によってログを取得することとする。被験者には、モニタに表示 される画像上で気になる個所を何か所でもクリックするよう指示を与えた。 湘南台駅 円行西大通り 湘南台景観形成地区 0 10 20 50 100m N 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 図 11 システム評価の対象地区(円行西大通り) 図 12 システム評価に使用したシステムレンダリング画像と写真画像

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- 10 - 図 13 空間構成要素への注視率(上:システムレンダリング画像、下:写真画像) 4.2.実験結果と考察 結果、視点場ごとの平均注視頻度は、写真画像がレンダリング画像を上回った(図 13,14)。景観 評価のために、実験で用いた表示画像を、「空」「建築物・工作物」「商業サイン」「交通サイン」「道路」 「植栽」「車両」「人物」の空間構成要素 8 種に分類した。但し、今回のシステムでは、植栽、車両、 人物は再現されていない。 それぞれの空間構成要素に対する注視率を測定し、比較することとした(図 13,14)。ここでは、 各画像に対してクリックされた注視数の総計を被験者数で除し、画像あたりのクリック率を注視率 としたものを用いることとする。分割された同一の画像内に複数の空間構成要素種が混在するもの については、各空間構成要素が占める画面占有率に応じて割り振ったものを用いた。 結果、「空」「建築物・工作物」については、類似した傾向が見られた。一方で、「商業サイン」は、 写真画像に比してシステム画像では低い注視率を示した。今回再現したシステムでは、個別の商 業サインに対して、写真ベースのテクスチャマッピングは行っていなかったため、システム上で再 現された商業サインは写真画像に比して情報量の低いものとなったことから、注視率も低いものと なったのではないかと考えられる。都市景観の中で小さくても注視を必要とする商業サインは、写 真ベースのテクスチャ素材を準備するなど、より詳細な表現が必要であることが分かった。 また、「交通サイン」については、シークエンス後半において類似する注視傾向を持っているが、 点においてゲームエンジン上でレンダリングを行ったものを用いる(図11,12).本実験で用いる画 像の解像度は,幅1280pixel×高さ 720pixel であり,一枚当たり計 921600 画素のものを用いるこ ととした.これらの画像群を縦横10 分割し,画像一枚当たり幅 128pixel×高さ 72pixel で 100 分 割したものを準備した.分割された画像ごとにHTML ファイルを対応させ,計 4600 枚の Web ペ ージを作成し,これを用いたWeb 評価システムを用意した.クリックによってどの画像が押下され 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 注視率 視点場 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 注視率 視点場 ● 空 ○ 建築物・工作物 ▲ 商業サイン △ 交通サイン ■ 道路 □ 植栽 ◆ 車両 ◇ 人物 図 13 空間構成要素への注視率(上:システムレンダリング画像,下:写真画像)

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前半部分についてはシステム画像において注視が見られない。これは、周辺環境を含んだ空間構成 要素に対して、モデルの再現が十分でないことが分かった。システム上でユーザは全天周視点で行 動可能であるため、対象とする範囲の外側である周辺環境についても視界に入ってくることとなる。 遠景モデルとして、プリレンダリング画像や写真を画像処理したものなどをマッピングしたローポ リゴンモデルなどを用意するべきであると考えられる。「道路」については写真画像の注視が高い。 背景となる要素であるが、画面占有率も高い空間構成要素でもある。こちらも商業サインと同じく テクスチャなどによって、より情報量の高い表現が必要である。 今回のシステムでは表現していない「植栽」「車両」「人物」についても、写真画像では注視が見 られた。「植栽」は複雑なエッジを持つ視覚情報量の多い要素であり、建物とともに都市景観のイメー ジにとって重要なものである。また、「車両」「人物」は、テンポラリーな動的な要素である。本来 であれば、景観評価に際してノイズとなる要素であり、本システムではこれらの要素を除去可能で あった。一方、今回の実験で用いた写真画像は静止画像であるため、その動きは再現されていない が、これらの動きそうな要素は、現実の環境では身体への影響が少なくない要素でもあるため、注 視が優先的に行われる空間構成要素であると考えられる。これらの要素についても、動きを含めて 再現する必要があると考えられる。 図14 空間構成要素への注視率 4.2. 実験結果と考察 結果,視点場ごとの平均注視頻度は,写真画像がレンダリング画像を上回った(図13,14).景観 評価のために,実験で用いた表示画像を,「空」「建築物・工作物」「商業サイン」「交通サイン」「道 路」「植栽」「車両」「人物」の空間構成要素8 種に分類した.但し,今回のシステムでは,植栽,車 両,人物は再現されていない. それぞれの空間構成要素に対する注視率を測定し,比較することとした(図13,14).ここでは, 各画像に対してクリックされた注視数の総計を被験者数で除し,画像あたりのクリック率を注視率 としたものを用いることとする.分割された同一の画像内に複数の空間構成要素種が混在するもの については,各空間構成要素が占める画面占有率に応じて割り振ったものを用いた. 結果,「空」「建築物・工作物」については,類似した傾向が見られた.一方で,「商業サイン」は, 写真画像に比してシステム画像では低い注視率を示した.今回再現したシステムでは,個別の商業 サインに対して,写真ベースのテクスチャマッピングは行っていなかったため,システム上で再現 された商業サインは写真画像に比して情報量の低いものとなったことから,注視率も低いものとな 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 写真画像 システムレンダリング画像 ● 空 ○ 建築物・工作物 ▲ 商業サイン △ 交通サイン ■ 道路 図 14 空間構成要素への注視率

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5.結果と考察

本研究は、ゲームエンジンを用いて都市景観シミュレーションシステムを開発し、システムの評 価を行ったものである。本システムは、操作性も簡易であり、景観計画時に用いるツールとしてあ る程度有効であると思われる。開発環境にゲームエンジンを用いることで、個別の専用システムを 開発することなく、安価で高品質なシミュレーションシステムを開発することが可能であることが 明らかとなった。都市モデルと計画建築物の 3 次元形状モデルを用意すれば、今回作成したインタ ラクションは他の地域でも同様に使用可能なものとして開発を行った。また、これまでの景観計画 において評価の中心であった公的空間である街路からの都市景観だけではなく、近隣建築物の住戸 からの眺望等、私的空間からの環境条件の変化についても考察が可能である。 評価の結果、写真画像において高い注視が見られた空間構成要素として、車両及び人物が挙げら れた。これらの要素は、テンポラリーなものであるにも関わらず、高い頻度で注視が発生するとと もに、本来評価すべき対象を隠してしまう等、景観評価においてはノイズとなる要素である。本シ ステムによって、撮影条件を考慮せずとも、これらテンポラリーな要素が景観評価に与える影響を 除去することが可能である。但し、実際の景観は、停車車両や歩行者等を含めて構成されているも のでもあり、注意が必要であるため、今後、動的な空間構成要素の再現を行っていくこととする。 本稿で開発したゲームエンジンを用いた都市空間シミュレーションシステムは、比較的安価で簡 易に開発可能であり、地方行政団体をはじめ、様々な事業主体で手軽に使用できる。今後、景観計 画とともに防災計画や公共事業計画等、様々な都市情報を組み合わせて行くことにより、汎用性の 高い都市空間シミュレーションシステムが開発可能であると考えられる。

謝辞

本研究は JSPS 科研費 No.25350026 の助成を受けたものです。

参考文献

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図 1 都市模型の例( Le Corbusier, Plan Voisin, 1925 ) 図 2: 合成写真の例( Mies van  der Rohe, Friedrichstrasse  Skyscraper Project, 1921 )
図 4 システム開発の流れとデータ形式
図 9 建築物の外壁素材、色彩の検討

参照

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