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ミャンマーの軍事医学界からみえてくる医療事情

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日本渡航医学会誌 Vo.17/No.1.2013

ミャンマーの軍事医学界からみえてくる医療事情

勝 田 吉 彰

関西福祉大学 筆者は海外在留邦人のメンタルヘルスを研究テーマと しなかでも今後急速な日系企業の進出増とともに現地 邦人社会の急激な変化が想定されるミャンマーには毎年 定期的に訪問し定点観測をおこなっている1) そのなか で,現地医療関係者からの情報収集を試みるうちに, ミ ャ ン マ ー の 軍 医 大 学 (DefenseServices Medical Academy)2)の精神科教授および医局員とつながる機会 がたまたまあり,訪問のたびに医学書の寄贈など含めた 親交を深めている.2014年2月の訪問時にたまたま, 軍医全体が集まる学会の開催時期と重なったため,招待 状をいただき参加する機会に恵まれたこの学会での発 表演題を中心に,この国の軍医医学界でどのようなテー マに関心をもたれているのか考察するとともに,軍医学 関係者の現状を紹介した 上ミャンマ一軍の医療施設 ミャンマー軍の匿療施設は 総合病院・専門病院・軍 医大学・病院船・地方拠点から形成されている.総合病 院は新首都のネピトーに1,000床,最大都市ヤンゴンに 1,000床(第一軍病院)と 500床(第二軍病院)があ る.ヤンゴンの第一軍病院には 精神科病床100床も含 まれる.これとは別に 小児科・産婦人科専門病院300 床がヤンゴンにある. 軍 医 大 学 は , DSMA (Defense Services Medical Academy)がヤンゴン北郊ミンガラドンの軍事区域内 にある さらにミャンマ一軍は, 日本の自衛隊も所有していな い病院船を所有している (HospitalShip UMS Shwe PU Zun). これは旧型の小型軍艦を改造したもので,病院 船として川を辿り内陸部まで入り込み医療を展開してい る(町1yanmarArmy Medical Corpsフェースブック) 連 絡 先 : 勝 目 吉 彰 干678-0255兵庫県赤穂市新田380-3 関西福祉大学 TEL : 090-6848-8128FAX: 0791-46-2526 E-mail: [email protected] 47 これらの主要拠点以外に,全貌は不明ながら,地方拠 点が存在する模様で たとえば精神科の講師のひとり は,ピンウーリン (Pyin

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L win)で射撃チームのメン タルサポートをおこなった経験を語ってくれた. 2. Myanmar Military Medical Conference 2011年まで軍事政権が治めていたこの国では,さま ざまな分野で軍に優秀な人材が集中してきた医療分野 でも,日本の防衛医大に相当する DSMAは威容を誇 り,その入学生は

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週間にわたり学科・体力・心理・ リーダシップにいたるまで徹底的にセレクションを受け た最も優秀な人材を集めており3) 岡田の医学をリード している(国全体でも医師養成機関はDSMAを含めて 4校しかない).この人材が全国から集まり毎年開催さ れ る の がMyanmarMilitary Medical Conferenceであ り,今年で第21回目を数える 前述の小児・産婦人科専門病院の講堂にておこなわ れ,参加者はおよそ300名であった(図1).箪の厳し いヒエラルビーを反映し フロアの椅子は階級により

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種類(チーク材の応接椅子二今通常の応接椅子コプラス チック椅子),昼食会場も 2種類用意され階級により峻 別,フロアからの質疑も上位階級者のみが発言している という環境で進行した抄録集にも各演者や座長の階級

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uniorコCaptainコMajorCaptainコLt.Colの順に昇 級してゆく)が明示されている シンポジウムの演題を図

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に 科学講演の演題を図 3,一般演題を図4に示す.シンポジウムは災害看護・ 泌尿器科・産婦人科・内分泌・感染症・医療倫理・放射 線・循環器・メンタルヘルス・移植・悪性腫蕩の各分野 からほぼ均等に企画されている.科学講演は耳鼻科・眼 科・医学教育・臨床検査・公衆衛生・歯科・整形外科・ 腎臓内科・消化器・内分泌・感染症・薬理学・生理学・ 生化学からテーマが取り上げられていた一般演題を図 3に示す.薬理学・生理学・生化学の基礎医学系が多い のが目立った.反面 軍医学でまず連想されそうな整形 外科や感染症の演題数は筆者が予想したほどには多数を 占めているわけではなかった.

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日本渡航医学会誌 Vo.17/No,1.2013 耳 鼻 科 限科 医 学 教 育 臨床検査 公 衆 衛 生 歯科 整形外科 腎m館内科 消化器 内 分 泌 感 染 症 薬 理 学 生 化 学 生 理 図1 参加者はすべて制服着用 4 図3 科学講演の分野 災 害 者 諮 泌 尿 器:[ol 産婦人科 内 分 泌 感 染 症 医療倫浬 1&射 線 循 環 器 メンタルヘルス 移1班 悪 性11霊感 医学教育 公衆衛生 !臨床検査学 t社科 耳鼻科 眼科守 主主形外科 i i雪臓 消化器 内分泌 1 感染症 薬 理 学 1 生 化 学 生 理 学 図2 シンポジウムのテーマ 図4 …般演題の分野 表 渡 航 医 学 関 連 の 演 題 1. Clinical study on efficacy出ldsafety of ArtesLmate-Mefloquine in uncomplicated falciparum malaria in adults in Bamaw. 北部カチン州,中国国境地帯のバモーにおける熱帯熱マラリアに対するアーテスネートーメフロキン合剤の効果評価.有効 率100%で副作用みられずとの報告

2.Knowledge, attitude and practice on preventive measure for malaria among military personnel in malaria risk areas. ミャンマ一軍人のマラリア予防意識調査.

3. Health seeking behaviors among the river nomads along the Ayeyareaddy River, Upper Myanmar Region.

ミャンマー北部,川沿いの船上生活者の受療行動調査.過半数の59.3%がマラリア陽性であった医療施設受診は,通常, 重症化したときのみであり,軽症では自家製薬か売薬の服用にとどまり受診しないことが多い.50.3%が船上で出産してい た啓発教育が必要. 渡航医学関連の演題は3題 あ り , 表 に 示 す . 渡 航 医 学 分野でミャンマーと聞けば“薬剤耐性マラリア"を連想 す る 方 も 多 い と 思 わ れ る が , 実 際 に 関 心 は 高 い 模 様 で Artesunate-Mefloquine合 剤 の 有 効 性 を 再 評 価 す る 報 告 があった(有効とする結論). ま た , 河 川 を 移 動 す る 船 上生活者の受療行動調査から,過半数がマラリア陽性な がら,その多くが重症化するまで医療にアクセスしない ことが報告されている これら演題の種類から考えられるのは,われわれ日本 人の感覚から考える軍医のイメージよりも広範囲に万遍 48 なく研究が行われているということである. この国に医 学 部 が ヤ ン ゴ ン 1 ヤンゴン2 マ ン ダ レ ー と DSMA の4校 し か な く ( す な わ ち 医 師 養 成 の 1/4を占め), 1 週間かけて厳選された最優秀な人材を集めた結果,この 国の医学全体を牽引する役回りも期待されているといえ よう.ここからは,単に「兵士のための医者jにとどま らず,基礎医学まで含めた研究を幅広くおこなっている ことも納得がゆく 会場には展示コーナーが設けられ,製薬会社や医療機 器会社がブースを出展し売り込みに余念がない光景は,

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ミャンマーの軍事医学界から見えてくる医療事情 先進国の学会と一見なんら変わらないが, これらの会社 の食い込み方は印象に残るものであった.昼食や間食が バケツから無造作に盛られる“軍隊メシ"であるのに対 し夕食懇親会は, ミャンマー庶民には手の届かない超 一流ホテルのガーデン貸し切りでプロの楽団も入れて豪 勢に行われ,その費用が業者から出ていることを知人医 師が教えてくれた.この宴の途中で福引があり,同じ テーブル8人中,筆者を含めた3人,すなわち半数弱が 当たりくじを引き当て,同様の手提げ袋をもらった.ホ テルに戻り中身を開けると,驚くことにタブレット端末 ( ! )や

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メモリーなど,医師の月給分を上回る品物 がある会社の名を記したキーホルダーとともに出てき た日本のような景品表示法や公正取引委員会などおそ らくは整備されていないであろう環境下,やりたい放題 なことが行われているのが垣間みえた. 3.在留邦人を含めた外国人臣療への可能性 前述の,軍の医療施設は軍関係者および家族専用で, 自衛隊中央病院のような一般診療は行われていない. し かし,軍の上級医師たちは,アルバイトの形で富裕層や 49 外国人向け医療機関で診療をおこなっている.たとえば 精神科の教授は,

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にて週3回各半日の診療をおこない 毎回 lO~20 人の 診察をおこなっている.その受診者には英国人・米国 人・中国人のアルコール依存症や気分障害患者が含まれ ている.また,学会中に名刺交換した元教授の肩書は, やはり富裕層・外国人向け医療機関として歴史の長い

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病院のものであった. したがって,近い将 来,在留邦人数が増えてゆくなかで,現地の邦人の医療 が優秀なる軍の人材(もちろん,その診察時には軍服を 脱ぎ一見して分からないわけであるが)によって担われ る場面も増えてゆくと思われる.この国の軍医学界の一 層の発展を願うものである 文 献 1 )勝目吉彰. ミャンマ一連邦共和国における在留邦人メン タル事情.臨床精神医学2013; 42 : 389-392. 2 )勝田吉彰.ミャンマ一連邦共和国の精神科医療事情. こ ころと文化2014; 13 : 54-60

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