Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
漢訳語の日本語への受容
-漢訳『万国公法』の「責任」の場合-
0n the Acceptance of Chinese-Translated Words: the case of "responsibility" in international law
Author(s) 松井 利彦(MATSUI Toshihiko)
Citation 文林(BUNRIN),No.36:21-45
Issue Date 2002
Resource Type Bulletin Paper / 紀要論文
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漢
訳
語
の
日
本
語
へ
の
受
容
1 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁責 任 ﹂ の 場 合 1松
井
り
禾
彦
漢訳語 の日本語への受容 ︹1 ︺ 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 熟 字 が 日 本 語 に ど の よ う に 受 容 さ れ た か 、 あ る い は 受 容 さ れ な か っ た か を 、 明 治 初 期 の 語 彙 の 中 に 位 置 づ け て 確 認 し 、 近 代 日 本 漢 語 の 成 立 に つ い て 考 え た い 。 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ は 、 ア メ リ カ 人 の = ① 口 越 芝 げ 雷 け 8 (漢 名 、 恵 頓 ) が 書 い た 、、日 ① 目 。 馨 ω o h ぎ 9 昌 卑 菖 o 昌 巴 目 9 ≦ . を 中 国 語 に 翻 訳 し た も の で あ る 。 訳 者 は 、 当 時 、 中 国 に 在 留 し て い た 宣 教 師 ≦ 巳 貯 目 ≧ ① 銘 邑 霞 ℃ 霞 ゜・ o 冨 ζ 胃 証 昌 (漢 名 、 丁 題 良 ) で 、 数 人 の 中 国 人 の 協 力 を 得 て 完 成 さ せ た 。 成 立 は 同 治 三 年 ( 一 八 六 四 年 ) で あ る 。 こ の 中 国 語 訳 を 幕 末 ・ 明 治 初 期 の 日 本 人 は 日 本 語 と し て 読 ん だ 。 加 点 本 が 慶 応 元 年 ( 一 八 六 五 年 ) に 開 成 所 か ら 刊 行 さ れ た の で 、 そ れ に よ っ て 、 漢 訳 書 の 単 字 や 熟 字 を 、 語 順 は 返 り 点 に 従 い 、 日 本 語 に し た の で あ る 。 こ の 過 程 で 、 未 知 の 概 念 を 表 す 漢 語 を 初 め と し て 、 多 く の 新 漢 語 を 学 び 取 っ た 。文林 三十六号 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ 、 お よ び そ の 原 本 で あ る .。日 ① 日 ① 暮 ゜。 o h Hロ 9 彗 国 島 o 昌 巴 冒 o ≦ .. と 、 日 本 人 と の 関 わ り は 概 ね 次 の よ う で あ る 。 一 、 漢 訳 の ﹃ 万 国 公 法 ﹄ を 読 む 。 二 、 英 文
の”Elements of International Law”
を 読 む 。 前 者 の 場 合 、 次 の 書 籍 が あ る 。 ① 加 点 本 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ (開 成 所 、 慶 応 元 年 刊 。 官 版 ) 。 返 り 点 を 付 け 、 固 有 名 詞 に は そ の 左 側 に 片 仮 名 で 振 り 仮 名 を 付 け る 。 数 種 類 の 版 が あ る 。 以 下 で 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ と 言 う と き は 加 点 本 を 指 す こ と が 多 い 。 ② ﹃ 万 国 公 法 訳 義 ﹄ (堤 殻 士 訳 、 慶 応 四 年 夏 刊 ) 。 漢 字 片 仮 名 交 じ り 文 で 漢 訳 本 を 訳 し た も の 。 単 字 ・ 熟 字 の 左 側 に 語 釈 や 訓 を 片 仮 名 で 記 す 。 ま た 固 有 名 詞 に も そ の 左 側 に 片 仮 名 で 読 み 方 を 記 す 。 た だ し 、 漢 訳 書 の 第 二 巻 ま で 。 ③ ﹃ 和 訳 万 国 公 法 ﹄ (重 野 安 繹 訳 述 、 明 治 三 年 刊 ) 。 官 版 に 送 り 仮 名 な ど の 加 点 を 増 や し 、 ま た 音 読 符 を 付 け る 。 段 落 ご と に 原 文 を 掲 げ 、 次 に 訳 文 を 記 す 。 訳 文 の 単 字 ・ 熟 字 の 左 に 語 釈 を 記 す こ と が あ る 。 漢 訳 書 の 第 一 巻 ま で か 。 ④ ﹃ 万 国 公 法 叢 管 ﹄ ( 高 谷 龍 州 注 解 、 明 治 九 年 五 月 免 許 ) 。 官 版 に 送 り 仮 名 な ど の 加 点 を 増 や し た 原 文 を 掲 げ 、 段 落 ご と に 漢 文 で 注 釈 を す る 。 本 文 中 に も 漢 文 で 注 を 入 れ る こ と が あ る 。 次 に 、 英 語 の 原 文 を 読 む 場 合 に つ い て 考 え る と 、 箕 作 麟 祥 や 、 幕 府 の 通 訳 、 森 山 多 吉 郎 の よ う に 英 文 で 勉 強 会 を す る 者 も い た が 、 多 く は 日 本 語 に 翻 訳 し た も の を 読 ん だ と 推 定 さ れ る 。 そ の 翻 訳 本 に 次 の も の が あ る 。 ⑤ ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 始 戦 論 ﹄ ( 大 築 拙 蔵 訳 、 明 治 八 年 四 月 刊 ) 。 、、日 ① 日 Φ暮 ω o h ぎ 8 毎 鉾 δ 5 巴 冒 9 ≦ 、. の 第 二 九 〇 条 か 一22一
漢 訳 語 の 日本語 へ の受 容 ら 第 三 四 一 条 ま で を 漢 字 片 仮 名 交 じ り 文 に 訳 し た も の 。 熟 字 の 右 側 に 原 語 が 片 仮 名 で 記 さ れ る こ と が あ る 。 ⑥ ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 ﹄ (大 築 拙 蔵 訳 、 司 法 省 蔵 版 。 明 治 九 年 附 言 、 明 治 十 三 年 版 権 届 、 明 治 十 五 年 刊 ) 。 、.田 ① 目 Φ 暮 ω o h H暮 霞 昌 p 島 o 目 巴 冒 蝉 乳 、 の 全 条 文 を 翻 訳 し た も の 。 た だ し 、 各 条 文 内 で は 省 略 が 多 い 。 単 字 ・ 熟 字 や 固 有 名 詞 に 原 語 が 片 仮 名 で 記 さ れ る こ と が あ る 。 ⑤ の ﹁ 始 戦 論 ﹂ の 部 分 は 改 訂 さ れ て い る 。 成 立 に つ い て は 、 附 言 と 版 権 届 と 刊 年 の 間 に 隔 た り が あ っ て 確 定 し に く い が 、 附 言 が 書 か れ た と き に 本 文 が 完 成 し て い た と 以 下 で は 扱 う 。 以 上 が ホ イ ー ト ン の ..日 ① ヨ ① 暮 m o h ぎ 8 ヨ 簿 帥0 5 巴 ピ 餌 ≦ 、-に 関 係 す る 書 物 で あ る 。 芝 げ ① 讐 o 昌 は 普 通 ホ イ ー ト ン と ま ヱ 呼 ば れ る が 、 ホ エ ー ト ン と か ウ ィ ー ト ン と 書 か れ る こ と も あ り 、 最 近 で も ウ ィ ー ト ン と 呼 ぶ 人 が い る 。 な お 、 幕 末 明 治 初 期 の 国 際 法 に 関 す る 書 籍 に 、 こ の ほ か 別 系 統 の 次 の も の が あ る 。 ⑭ ⑬ ⑫ ⑪ ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ ﹃ 万 国 公 法 ﹄ ( 西 周 訳 述 、 慶 応 二 年 十 二 月 上 表 、 慶 応 四 年 刊 ) ﹃ 交 通 起 源 ﹄ ( 瓜 生 三 寅 訳 、 慶 応 四 年 刊 ) ﹃ 外 国 交 際 公 法 ﹄ (福 地 源 一 郎 訳 、 明 治 二 年 七 月 刊 ) ﹃ 国 際 法 一 名 万 国 公 法 ﹄ ( 箕 作 麟 祥 訳 、 明 治 七 年 八 月 刊 。 上 編 五 巻 ま で か ) ﹃ 波 氏 万 国 公 法 ﹄ (秋 吉 省 吾 訳 、 明 治 七 年 序 、 明 治 九 年 刊 ) 。 ﹃ 堅 土 氏 万 国 公 法 ﹄ ( 蕃 地 事 務 局 訳 、 明 治 九 年 版 権 免 許 ) 。 ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ (司 法 省 蔵 版 、 明 治 十 年 刊 ) 。 ﹃ 亜 歴 士 氏 万 国 公 法 ﹄ (海 軍 兵 学 校 訳 、 明 治 十 二 年 刊 ) 。
文 林 三十六号 こ れ ら 国 際 法 の 書 物 の う ち の 文 献 ⑥ ⑦ に 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ の 熟 字 が ど の よ う に 受 け 入 れ ら れ て い る か 、 さ ら に 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 熟 字 と ﹃ 泰 西 国 法 論 ﹄ ( 津 田 真 道 訳 、 慶 応 四 年 刊 ) の 用 語 と の 関 係 は ど う か を 考 察 し た こ と が あ 羅 。 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 用 語 が ② ③ ④ に 引 き 継 が れ て い る で あ ろ う こ と は 容 易 に 想 像 が つ く 。 そ こ で 、 、.臼 ① ヨ Φ 暮 ゜。 o h Hロ け Φ 彗 p 註 o ロ 巴 目 帥 ミ .. を 直 接 に 訳 し た ⑥ の 大 築 訳 ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 ﹄ と 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ と の 関 係 を 取 り あ げ た の で あ る 。 し か し 、 そ こ で は 多 く の 用 語 を 対 象 に し た の で 一 語 一 語 に つ い て 詳 細 に 論 述 す る こ と が で き な か っ た 。 今 回 は 熟 字 を 限 定 し て 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ を 追 っ て み た い と 思 う 。 な お 、 こ こ で 言 う ﹁ 漢 訳 語 ﹂ と は 、 日 本 人 に と っ て は 正 確 に 言 え ば 日 本 で 言 う 中 国 語 の 単 語 の こ と で は な く 、 そ れ を 表 記 す る た め に 使 用 さ れ た 、 単 字 、 ま た は 熟 字 の こ と で あ る 。 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ ︹ 2 ︺ の 単 字 ・ 熟 字 と 大 築 訳 ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 ﹂ の 用 語 と の 関 係 は 条 文 ご と に 見 れ ば 、 さ ま ざ ま で あ る 。 一24一 1 、 或 問 萬 国 之 公 法 、 皆 是 一 法 乎 、 日 、 非 也 、 蓋 此 公 法 、 或 局 レ於 下 欧 羅 巴 ︿ エ ウ ロ ッ パ ﹀ 崇 二 耶 鱈 一服 レ 化 之 諸 国 ヒ 、 或 行 レ 於 二 欧 羅 巴 奉 レ 教 人 遷 居 之 庭 一 ( 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ 一 巻 一 〇 ウ 。 ︿ ﹀ は 左 側 の 振 り 仮 名 で あ る こ と を 示 す 。 ) 2 、 万 国 公 法 ハ 天 下 渾 テ 同 法 ナ ル ヤ 云 ク 然 ラ ス 公 法 ハ 欧 州 耶 蘇 ヲ 奉 ス ル ノ 文 明 国 或 ハ 欧 州 人 種 ノ 人 民 ニ ノ ミ 行 ハ ル ・ ナ リ ( 大 築 拙 蔵 訳 ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 ﹄ 二 二 ペ ー ジ 。 第 = 条 。 )
漢 訳 語 の 日本 語 へ の 受容 3 、 H の 夢 霞 ① p ` 巳 h o 憎 日 寅 謹 O h 昌 四 江 自 吃 日 冨 ﹃ ① 8 耳 巴 巨 団 一 ω ぎ け 爵 ① 臣 日 Φ 8 ① h o N 巴 = ぎ 昌 p 鉱 8 ω p 昌 α ω 鼠 け ① ω o h 爵 ① ≦ 〇 二 傷 ゜ 臼 冨 b 二 臣 。 冨 託 " 註 芽 ゜。 目 σq 拝 ① 蓉 ε 江 8 の ﹄ p ω 巴 ≦ 錠 ゜。 σ 8 P 餌 巳 ゜。 け 一 = 目ω 忌 日 ぽ 匹 8 昏 Φ 。 才 一 詩 巴 曽 巳 O ゴ ﹁ 陣。。 島 曽 ⇒ U ① o 覧 ① o h 国 焉 o b ① o 居 け o 昏 o ω ① o 馬 国 仁 N o b $ 昌 o ユ σq 5 隔 ( 、、 日 o ヨ Φ ロ 房 o h H 暮 ① 讐 p 江 o 昌 巴 ピ 国 ミ . 一 八 六 六 年 、 を る ピ ○ ス U O Z 刊 、 第 八 版 。 第 一 一 条 ) 漢 訳 書 と 大 築 訳 本 と を 比 べ る と 、 用 字 ・ 用 語 の 異 な る こ と が 多 い 。 漢 訳 書 の ﹁ 服 レ 化 之 諸 国 ﹂ の 句 の 表 現 も 大 築 訳 本 で は ﹁ 文 明 国 ﹂ に 凝 縮 さ れ て い る 。 漢 訳 書 の ﹁ 行 レ於 二 敵 羅 巴 奉 レ教 人 遷 居 之 庭 一﹂ と 、 大 築 訳 本 の ﹁ 欧 州 人 種 ノ 人 民 ニ ノ ミ 行 ハ ル ・ ナ リ ﹂ を 比 べ る と 、 大 築 訳 本 の ほ う が 原 文 に 即 し て い る こ と が 分 か る 。 し か し 、 大 築 訳 は 漢 訳 書 と 文 体 が よ く 似 て い る 。 大 築 訳 が 漢 訳 本 と 無 関 係 に 成 立 し た と は 考 え ら れ な い 。 大 築 拙 蔵 は 文 献 ⑤ の 、 ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 始 戦 論 ﹄ の 凡 例 で 次 の よ う に 述 べ て い る 。 4 、 余 公 法 ヲ 訳 ス ル ニ 臨 ミ 彼 此 其 良 書 ヲ 撰 ハ ン ト 欲 シ テ 之 ヲ 外 人 二 諮 ル ニ 皆 同 氏 ( ホ イ ー ト ン の こ と 。 松 井 注 ) ノ 書 ヲ 以 テ 就 中 可 ナ リ ト ス 然 レ ト モ 支 那 既 二 同 氏 ノ 訳 本 ア リ 故 二 姑 ク 他 書 二 就 テ 之 ヲ 求 ン ト 欲 ス 然 リ 而 シ テ 支 那 訳 本 ノ 如 キ 固 ト 原 文 ノ 三 力 = 一 過 キ ス 且 ツ 文 意 ノ 間 往 々 解 シ 難 キ 所 亦 勘 ナ カ ラ ス 是 ヲ 以 テ 余 今 其 先 訳 二 管 セ ス 原 書 ノ 儘 ヲ 此 二 訳 述 シ 勉 メ テ 了 解 シ 易 キ ヲ 旨 ト ス (合 字 は 通 常 の 表 記 に 改 め た 。 以 下 で も 同 じ 。 )
文林 三十六号 こ の 文 章 か ら は 大 築 拙 蔵 が 漢 訳 書 を 参 照 し 、 そ の 用 語 を 継 承 し て い る こ と の 形 跡 が 認 め ら れ な い 。 し か し 、 大 築 は ⑤ の 翻 訳 時 に 間 違 い な く 漢 訳 書 を 参 照 し て い る 。 そ し て 、 ⑥ で ..日 Φ 日 ① 曇 。。 o h H 巨 霞 ロ ロ 菖 o 昌 巴 い 四 妻 、、 の 全 条 文 を 訳 す と き に も 漢 訳 書 を 利 用 し て い る 。 先 に 示 し た 例 文 で は 用 語 に 共 通 す る も の が 少 な か っ た の で 、 も う 一 例 、 掲 げ て み る 。 5 、 6 、 外 人 死 在 一彊 内 ・、 凡 其 所 レ有 、 無 レ 分 ・ 動 植 ・、 均 須 レ 入 レ 公 、 不 レ 問 一一一其 有 二 無 遺 囑 一、 其 親 人 皆 不 レ 得 レ 継 レ 業 、 後 化 導 漸 開 、 此 等 野 蛮 不 義 之 例 漸 廃 (漢 訳 本 二 巻 二 一 ウ ) 当 時 専 ラ 我 力 彊 内 二 在 ル 外 人 所 有 ノ 動 産 不 動 産 共 二 其 本 人 死 ス ル ト キ ハ 親 族 ノ 継 業 ヲ 許 サ ス 遺 言 書 等 ノ 有 無 ヲ 問 ハ ス 均 シ ク 之 ヲ 没 収 ス ル ノ 法 行 ハ レ タ リ 然 レ ト モ 開 化 漸 ク 進 歩 シ テ 此 ノ 如 キ 野 蕃 不 仁 ノ 習 慣 遂 二 全 滅 シ テ (大 築 訳 本 = 一三 ペ ー ジ 、 第 八 二 条 ) 26 漢 訳 書 の 傍 線 を 付 し た 単 字 や 熟 字 を 大 築 拙 蔵 は そ の ま ま 使 用 し て い る 。 ま た 漢 訳 書 の 波 線 を 付 し た 熟 字 ( 反 読 さ れ る よ う な 文 字 連 続 も 熟 字 と す る ) も 大 築 訳 本 で 利 用 さ れ て い る と 考 え て よ い 。 た だ し 、 漢 訳 書 の ﹁ 動 植 ﹂ に 対 し て は ﹁ 動 産 ﹂ ﹁ 不 動 産 ﹂ に 改 め て い る 。 そ れ は 、 大 築 訳 本 が 翻 訳 さ れ る 数 年 前 に ﹁ 動 産 ﹂ ﹁ 不 動 産 ﹂ と い う 法 律 用 語 が 成 立 し た か ら で あ る 。 箕 作 麟 祥 が ナ ポ レ オ ン 法 典 を 翻 訳 し て ﹁ 仏 蘭 西 法 律 書 ﹄ ( 明 治 三 年 か ら 明 治 七 年 刊 ) を 訳 述 す る と き に ﹁ 動 産 ﹂ と ﹁ 不 動 産 ﹂ を 造 語 し た 。 本 書 は ﹁ 刑 法 ﹂ ﹁ 民 法 ﹂ が 大 学 南 校 か ら 出 版 さ れ 、 ﹁ 訴 訟 法 ﹂ 以 下 は 文 部 省 か
漢訳 語 の 日本語 へ の受 容 ら 出 版 さ れ て 当 時 の 司 法 省 関 係 者 を 始 め と す る 役 人 に よ く 読 ま れ て い た の で 、 大 築 は ﹁ 動 産 ﹂ ﹁ 不 動 産 ﹂ を 承 知 し て お り 、 ﹁ 動 物 ﹂ ﹁ 植 物 ﹂ よ り 分 か り や す い こ の 二 語 を 使 っ た の で あ る 。 ま た 、 漢 訳 書 の ﹁ 遺 囑 ﹂ を 避 け て ﹁ 遺 言 書 ﹂ と い う 独 自 の 新 語 も 使 っ て い る 。 こ の よ う に 、 大 築 拙 蔵 は 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 単 字 ・ 熟 字 を 利 用 し つ つ 、 一 方 で 当 代 的 な 適 切 な 訳 語 を ﹃ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ で 使 っ て い る 。 ︹ 3 ︺ そ れ で は 、 漢 訳 書 の ﹁ 責 任 ﹂ が 大 築 訳 ﹃ 恵 頓 氏 万 国 公 法 ﹄ に ど の よ う に 取 り 入 れ ら れ て い る か 。 ま ず 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ に お け る ﹁責 任 ﹂ を 示 す と 、 以 下 の よ う で あ る 。 7 、 契 擦 、 按 二 其 所 レ寓 之 地 方 律 法 一 、 若 穏 妥 、 大 抵 虞 威 亦 必 穏 妥 、 蓋 依 二 諸 國 之 通 例 一 、 契 披 、 式 様 、 解 説 、 責 任 、 攣 異 等 情 、 如 卜 於 二 他 國 井 其 人 民 之 権 利 一、 無 吾 所 二 妨 害 一 、 ( 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ 二 巻 二 七 オ ) 8 、 自 許 者 有 レ ニ 、 或 係 二 明 許 一 、 或 係 二 黙 許 一 、 若 黙 許 者 、 既 無 二 明 言 一 、 恐 有 二 誤 解 之 弊 一、 然 若 能 真 知 灼 見 、 実 係 二 黙 許 之 事 、 則 其 責 任 無 二 或 軽 一 也 、 ( 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ 二 巻 三 〇 オ ) こ れ ら の 箇 所 は 大 築 訳 本 で は 次 の よ う に な っ て い る 。
文林 三十六号 9 、 10 、 某 地 ノ 法 律 二 従 テ 取 結 ヒ タ ル 約 定 ハ 大 抵 他 ノ 各 処 二 至 ル ト 錐 モ 正 実 ノ モ ノ ト ス 蓋 シ 約 定 ノ 式 様 解 説 義 務 等 二 於 テ 他 国 人 ノ 権 利 ヲ 妨 害 ス ル ニ 非 サ レ ハ 此 国 ノ 法 律 ヲ 行 フ コ ト ヲ 得 ( = 二 ニ ペ ー ジ 。 第 九 〇 条 ) 我 ヨ リ 自 許 ス ル モ ノ ニ ア リ 或 ハ 明 許 或 ハ 黙 許 ト ス 黙 許 ハ 既 二 明 言 無 キ ヲ 以 テ 字 義 甚 タ 曖 昧 タ リ 然 レ ト モ 亦 実 二 黙 許 ノ 義 ヲ 明 解 ス ル ト キ ハ 其 義 務 無 キ ニ 非 ス ( 一 三 八 ペ ー ジ 。 第 九 六 条 ) 大 築 拙 蔵 は 例 文 9 . 10 で 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ を 踏 襲 し て い な い 。 例 文 7 の ﹁ 責 任 ﹂ に つ い て 、 ﹃ 万 国 公 法 訳 義 ﹄ で は ﹁ 責 任 く ウ ケ ヤ ヒ V ﹂ ( 二 巻 八 ウ ) と 書 き 、 ﹁ 責 任 ﹂ と い う 熟 字 を 継 承 は す る も の の 、 左 側 の 振 り 仮 名 で そ の 意 味 を 平 易 に 示 す 。 ま た ﹃ 万 国 公 法 釜 管 ﹄ で は こ の ﹁ 責 任 ﹂ を ﹁ 担 任 ﹂ と 言 い 換 え て い る 。 大 築 も 、 原 文 の 、、ま ﹃ 日 .. ..言 8 愚 話 富 註 o ロ .. は 漢 訳 書 の 訳 語 の ま ま ﹁ 式 様 ﹂ ﹁ 解 説 ﹂ と 継 承 し な が ら ﹁ 責 任 ﹂ を 使 わ な い 。 そ れ は 、 こ の 箇 所 の ﹁ 責 任 ﹂ が ﹁ 法 律 上 、 人 ま た は 組 織 が し な け れ ば な ら な い こ と ﹂ の 意 味 を 表 す か ら で あ る 。 ま た 原 語 が げ げ 一お p 菖 o 冒 , で あ る か ら で も あ る 。 そ の た め に 大 築 は ﹁ 義 務 ﹂ と 訳 し た 。 例 文 8 の ﹁ 責 任 ﹂ に つ い て は 、 ﹃ 万 国 公 法 訳 義 ﹂ で は ﹁ 此 黙 許 ハ 手 軽 キ コ ト ナ ラ ズ ﹂ ( 二 巻 一 五 ウ ) 、 ﹃ 万 国 公 法 蓋 管 ﹄ で は ﹁ 其 所 二 責 任 重 而 無 レ 軽 也 ﹂ ( 中 編 二 巻 二 四 オ ) と あ り 、 そ の ま ま ﹁ 責 任 ﹂ を 使 用 し て い て 、 こ れ ら の 注 釈 書 類 で ﹁ 責 任 ﹂ が ど う 理 解 さ れ て い た か を 窺 う こ と が で き な い 。 と こ ろ が 、 大 築 は 10 に 見 ら れ る よ う に ﹁ 義 務 ﹂ を 使 っ て い る 。 そ れ は 、 漢 訳 書 の こ の 箇 所 の ﹁ 責 任 ﹂ の 意 味 が 、 ﹁ 黙 許 は 明 文 化 さ れ て い な い の で 不 明 確 で あ る が 、 も し 黙 許 す る 事 柄 が 理 解 さ れ た な ら ば ﹂ 、 ﹁ 法 律 上 、 人 、 ま た は 組 織 が し な け れ ば な ら な い 事 柄 ﹂ が 少 な か ら ず 出 て く る と い う こ と で あ る か ら で あ る 。 ま た 原 語 が . o σ 目 σq g o 鱒 , で あ 一28一
漢訳 語 の 目本語 へ の受 容 る か ら で も あ る 。 大 築 は 漢 訳 書 の 訳 語 に よ ら ず 、 原 文 の 意 味 に 基 づ い て 、 そ し て 原 語 を 訳 し て い る 。 そ れ で は 、 丁 題 良 は な ぜ ﹁ 責 任 ﹂ と 訳 し た の か 。 当 時 、 中 国 で こ れ ら 、、o げ 団 σq 国 江 8 .、 、.。 げ }断 p 8 蔓 .. が ど の よ う な 意 味 を 表 す と 理 解 さ れ 、 ま た 、 ど の よ う な 単 語 に 翻 訳 さ れ て い た か 。 こ れ を 確 認 す る こ と は 難 し い 。 仮 に ロ ブ シ ャ イ ト の ﹃ 英 華 字 典 ﹄ ( 一 九 八 六 年 か ら 一 八 六 九 年 刊 ) を 見 て み る と 、 次 の よ う で あ る (中 国 語 の 発 音 は 省 略 ) 。 o げ 嵩 σq 魯 δ 戸 α 旨 ざ 耕 ゆ ゜ 耕 脹 雷 ゜ 藁 慰 聲 臨 隈 呂 ゜ 澤 ゆ ゜ o 窪 σq 魯 o q 噂 嗣 黙 畢 曇 薄 $ 醜 こ こ に は ﹁ 責 任 ﹂ は 見 ら れ な い 。 用 例 文 に も ﹁ 責 任 ﹂ は 使 わ れ て い な い 。 で は 、 、.曾 貯 .. は ど う か 。 身 多 掛 串 ゜ 藁 串 引 岳 。 含 身 8 印 器 9 巴 惹 爵 8 Φ .の α Φ 冨 巨 旨 ① 鼻 冴 串 酔 劇 ゜ 四 中 畑 宙 旧 日 網 含 ξ ゜ 踏 頭 針 ゆ ゜ 蹄 昂 無 由 引 こ こ に は ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ て い る 。 こ の よ う な 理 解 が 当 時 、 宣 教 師 の 間 に あ っ た の で .、o げ 一碍 餌 江 0 5 .. や ,o げ 目 αq 讐 o 蔓 .. に 丁 題 良 は ﹁ 責 任 ﹂ を 当 て た の で は な い か 。 し か し 、 大 築 は こ の 文 意 で は ﹁ 責 任 ﹂ の 使 用 を 拒 否 し 、 ﹁ 義 務 ﹂ を 使 っ た 。 ﹁ 責 任 ﹂ は 中 国 で 古 く か ら 使 用 さ れ た 中 国 漢 語 で あ る 。 意 味 は ﹁ そ の 人 が 引 き 受 け 、 当 然 の こ と と し て し な け れ ば な ら な い こ と 。 ま た 任 務 や 職 務 な ど ﹂ の 意 で あ る 。 吉 田 松 陰 は ﹃ 資 治 通 鑑 ﹄ か ら 次 の 文 を 抄 録 し 、 ﹁ 宋 元 明 鑑 紀 奉 使 抄 ﹂ に 書 き 留 め て い る 。
文林 三十六号 11 、 伯 顔 の 日 く 、 ﹁ 怒 る な か れ 、 君 、 宋 の 大 臣 た り 、 責 任 軽 き に 非 ず 。 今 日 の 事 正 し く 当 に 我 れ と 之 れ を 土 ハ に す べ し ﹂ と 。 (﹃ 松 蔭 全 集 ﹄ 一 二 巻 六 五 ペ ー ジ 。 普 及 版 に よ る 。 原 文 は 漢 文 ) ﹃ 漢 語 大 詞 典 ﹄ (漢 語 大 詞 典 出 版 社 刊 ) 、 ﹃ 大 漢 和 辞 典 ﹂ (諸 橋 轍 次 編 ) に も 古 い 用 例 が 出 て い る 。 ﹃ 漢 語 大 詞 典 ﹄ の 説 明 の 概 略 を 示 す と 、 ﹁ ① 人 に あ る 職 務 を さ せ る 。 ② す べ き こ と 、 職 務 や し な け れ ば な ら な い こ と 。 ③ す べ き こ と 、 あ る い は 勤 め が う ま く で き ず 、 悪 い 結 果 を 引 き 受 け な け れ ば な ら な い こ と 。 ﹂ で あ る 。 出 典 は ① ② に 唐 ・ 元 ・ 清 の 文 ぼ ら 献 が 出 て い る 。 た だ し ③ の 出 典 は 現 代 の も の で あ る 。 日 本 で も 古 い 用 例 が あ り 、 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ は 、 初 版 で 明 治 期 以 後 の 用 例 の み で あ っ た の を 、 第 二 版 で は 中 世 の 用 例 を 二 例 、 増 補 し て い る 。 た だ し 、 二 例 中 、 古 い 方 の ﹃ 癩 室 漫 稿 ﹄ の 例 文 は ﹃ 時 代 別 国 語 大 辞 典 室 町 時 代 編 ﹄ と 同 じ で あ る か ら 多 く の 使 用 例 を 見 つ け る こ と は 難 し い の で あ ろ う 。 と こ ろ で 、 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ は ﹁ 責 任 ﹂ の 意 味 と し て 、 ﹁ ① 責 め を 負 っ て な さ な け れ ば な ら な い 任 務 。 引 き 受 け て し な け れ ば な ら な い 義 務 ﹂ と 記 し て い る 。 こ の ﹁ 責 め を 負 っ て ﹂ は 訓 読 に 近 く 、 意 味 が 理 解 し に く い 。 こ の 辞 書 は ﹁ 責 任 ﹂ の 意 味 を ﹁ 任 務 ﹂ ﹁ 義 務 ﹂ と す る が 、 私 は ﹁ そ の 人 が 引 き 受 け て 当 然 の こ と と し て し な け れ ば な ら な い こ と ﹂ が 基 本 義 で あ り 、 そ の 人 の 置 か れ て い る 立 場 ・ 環 境 に よ っ て ﹁ 仕 事 ・ 任 務 ・ 役 目 ・ 役 職 な ど ﹂ の 意 味 に な る の だ と 考 え て い る 。 こ の こ と を 確 認 す る た め に 用 例 を 以 下 に 掲 げ る 。 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ の ① の 意 味 の 用 例 (﹃ 漢 語 大 詞 典 ﹄ の ① ② に 当 た る 。 ) は 、 ﹃ 獺 室 漫 稿 ﹄ ﹃ 信 長 記 ﹂ と ﹃ 花 柳 春 話 ﹄ 一30一
( 明 治 十 一 年 ・ 卜 二 年 刊 ) 、 ﹃ 民 法 ﹄ ( 明 治 二 十 九 年 ) の 四 例 で あ り 、 明 治 初 年 の 用 例 が な い 。 そ こ で 、 明 治 期 の 用 例 を ﹃ 花 柳 春 話 ﹂ 前 後 の も の を 含 め て 補 充 す る 。 明 治 期 に な る と 、 ﹁ そ の 人 が 引 き 受 け て 当 然 し な け れ ば な ら な い こ と ・ 事 柄 、 ま た 役 目 や 職 務 な ど ﹂ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ の 用 例 は 多 い 。 矢 印 の 先 は そ の 例 文 の ﹁ 責 任 ﹂ の 意 味 で あ る 。 漢 訳 語 の 日本 語 へ の受 容 12 、 13 、 14 、 15 、 16 、 実 美 短 オ 微 力 明 二 重 任 ヲ 辱 メ 未 夕 不 績 ヲ 賛 成 シ 震 襟 ヲ 慰 シ 蒼 生 ヲ 安 ス ル コ ト 能 ハ ス 恐 愕 措 ト コ ロ ヲ 不 知 次 第 二 候 工 共 聖 春 優 渥 御 責 任 ヲ 蒙 リ 且 今 度 勅 旨 モ 有 之 二 付 テ ハ 弥 以 在 職 諸 公 及 ヒ 列 侯 ト 共 二 心 ヲ 同 シ カ ヲ 獄 セ 以 テ 今 日 之 計 ヲ 為 二 非 ス ン ハ ( ﹃ 太 政 官 日 誌 ﹄ 明 治 二 年 四 月 、 第 四 五 号 ) ← 役 目 王 家 ノ 為 二 微 力 ヲ 効 ス ハ 固 ヨ リ 臣 子 ノ 常 分 藩 屏 ノ 責 任 苛 モ 賞 ヲ 微 メ 恩 ヲ 明 ニ ス 可 ラ ザ ル ヲ 以 テ ス 況 ヤ 臣 ガ 藩 ロ ハ 宗 藩 ノ 教 令 二 椅 侍 シ 兵 ヲ 出 シ カ ヲ 尽 シ 柳 分 責 ヲ 塞 ク 而 已 ニ シ テ 何 ノ 功 力 之 レ 有 ラ ン ( ﹃ 太 政 官 日 誌 ﹄ 明 治 二 年 七 月 、 一 一 七 号 ) ← 務 め ・ 仕 事 今 般 宗 藩 二 下 賜 候 御 賞 典 官 位 井 御 高 等 総 テ 再 応 御 返 納 申 上 候 ハ 全 ク 先 世 薩 摩 守 ノ 遺 志 ヲ 紹 述 仕 柳 藩 屏 ノ 責 任 ヲ 尽 候 迄 ニ テ ( ﹃ 太 政 官 日 誌 ﹄ 明 治 二 年 第 = 七 号 ) ← 務 め ・ 仕 事 ア ク フ 上 帝 ノ 我 二 界 ル 才 能 ヲ 以 テ 、 我 二 命 ズ ル 事 業 ヲ 担 負 く ニ ナ ヒ オ ヒ V シ 、 責 任 く ヤ ク メ V 二 報 答 ス ベ キ コ ト ナ リ ( ﹃ 西 国 立 身 編 ﹄ 第 = 編 一 九 話 。 明 治 三 年 十 月 刊 ) ← 役 目 刑 法 民 法 ノ 如 キ ハ 独 司 法 卿 ノ 責 任 税 法 ノ 類 ハ 大 蔵 卿 ノ 専 任 ス ル 所 ニ シ テ 根 本 律 法 ノ 如 キ ハ 特 一二 等 宰 相 ノ 担 当 ス ル 所 ナ ル ガ 如 シ 若 シ 夫 レ 失 措 ア ル 時 ハ 該 大 臣 躬 自 ラ 其 責 二 任 シ 或 ハ 其 職 ヲ 退 キ 或 ハ 其 ノ 罪 二 当 ル 是 彼 我 政 体 ノ 異
文林 三十六号 ナ ル 処 ナ リ (﹃ 明 六 雑 誌 ﹄ 第 九 号 九 オ 、 津 田 真 道 筆 ) ← 役 目 17 、 愛 爾 蘭 大 学 校 教 育 法 ノ 議 案 二 付 キ 其 論 ノ 行 ハ レ サ ル カ 為 メ 遂 二 其 職 ヲ 辞 セ シ 故 二 女 王 ハ 守 旧 党 ノ 魁 ヂ ス レ リ ヲ 迎 へ 以 テ 内 閣 大 臣 ヲ 選 択 セ シ メ ヂ ス レ リ モ 亦 議 院 ノ 信 頼 ス 可 キ 内 閣 大 臣 ヲ 推 薦 ス ル ニ 勉 メ シ ト 雛 モ 議 員 ノ 過 半 ハ 当 時 猶 自 由 党 タ レ ハ 到 底 其 意 ノ 行 ハ レ 難 キ ヲ 知 リ 遂 二 自 カ ラ 其 責 任 ヲ 辞 シ ( 箕 作 麟 祥 訳 ﹃ 万 国 新 史 ﹄ 下 編 四 巻 五 六 オ ・ 五 六 ウ 、 明 治 四 年 官 許 ・ 明 治 九 年 刻 成 ) ← 役 職 18 、 英 国 領 事 ノ 権 限 及 ヒ 職 務 ヲ 記 ス ル ニ ハ レ バ ン ト 地 方 二 於 ケ ル 権 力 ノ 大 イ ニ 他 ト 異 ナ リ テ 且 ツ 広 大 ノ 者 ナ ル コ ト ヲ 附 記 セ サ ル 可 カ ラ ス ︹中 略 ︺ 此 内 閣 ノ 令 ハ 裁 判 ノ 事 二 於 ケ ル 領 事 ノ 責 任 ヲ 軽 ク ス ル 為 メ ニ 作 レ ル ト 日 ヘ リ (蕃 地 事 務 局 訳 ﹃ 堅 土 氏 万 国 公 法 ﹄ 三 二 四 ペ ー ジ ・ 三 二 六 ペ ー ジ 。 明 治 九 年 版 権 免 許 ) ← 職 務 19 、 凡 ソ 条 約 ハ 之 二 加 ハ ル 者 一 旦 契 ヲ 立 ツ ル ニ 於 テ ハ 充 分 正 直 二 其 義 務 ヲ 尽 ス ヘ キ ナ リ ︹中 略 ︺ 其 全 権 代 理 者 ノ 一 旦 本 国 二 代 テ 他 国 ト 締 約 シ タ ル 義 務 は 永 ク 全 国 二 存 シ テ 後 来 国 体 二 変 革 ヲ 生 ス ル コ ト ア リ ト モ 苛 モ 其 存 立 ス ル 間 ハ 必 ス 履 行 ス 可 キ モ ノ ト ス ︹中 略 ︺ 凡 ソ 国 際 条 約 ハ 所 謂 法 ノ 代 理 者 即 チ 責 任 者 タ ル 国 或 ハ 国 主 ヲ シ テ 決 シ テ 人 道 倫 理 ノ 大 典 三 戻 レ ル 非 分 ノ 義 務 ア ル ニ 至 ラ シ ム ル ヲ 得 ス 故 二 之 ヲ 実 践 ス ル ニ 当 テ ハ 我 レ 専 ラ 正 直 容 忍 ヲ 旨 ト シ 故 ラ ニ 彼 レ ニ 適 宜 ノ 期 ヲ 与 ヘ テ 其 義 ヲ 尽 サ シ メ ( ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ 二 六 一 ペ ー ジ ・ 二 六 ニ ペ ー ジ 。 司 法 省 蔵 版 。 明 治 十 年 刊 ) ← 職 務 を 遂 行 す る こ と 20 、 公 使 ノ 職 分 今 自 国 二 於 テ 公 認 セ ラ ル ・ ノ 期 ハ 其 命 ヲ 受 ケ タ ル 日 二 始 マ リ テ 復 夕 任 二 赴 ク ノ 後 ヲ 侯 タ サ ル ナ リ 乃 チ 同 時 二 本 国 政 府 ヨ リ 其 訓 規 一 通 ヲ 受 ケ 以 テ 自 国 二 対 ス ル 責 任 ノ 度 ヲ 定 ム 而 シ テ 外 国 二 詣 テ 任 ス ル 所 ノ 責 ハ 別 二 章 一32一
漢 訳 語 の 口 本語 へ の 受 容 21 、 22 、 23 、 24 、 25 、 26 、 程 ノ 在 ル ア リ ( ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ 五 四 一 ペ ー ジ ・ 五 四 二 ペ ー ジ ) ← 役 目 ヤ ノ カ 才 子 ノ 一 世 二 一 詩 ヲ 作 ル ハ 猶 ホ 痘 く ホ ウ ソ フ V ヲ 病 ム カ 如 シ 詩 ト 痘 ト ハ 才 子 ノ 遁 ル ヘ カ ラ サ ル ; 貝 任 タ リ ( 丹 羽 純 一 郎 訳 ﹃ 花 柳 春 話 ﹄ 二 編 一 一 ペ ー ジ 。 明 治 十 一 年 刊 ) ← 当 然 の こ と と し て す べ き こ と 仮 令 ヒ 白 痴 者 卜 錐 ト モ 天 之 レ ヲ 生 ジ テ 人 間 界 二 降 シ タ ル 者 ニ シ テ 元 ヨ リ 人 類 ノ 一 春 族 ナ レ バ 吾 人 之 レ ヲ 扶 助 養 育 ス ル ニ 付 キ テ ハ 亦 逃 ル 可 ラ ザ ル ノ 責 任 ア リ ト ス ( 井 上 勤 訳 ﹃ 絶 世 奇 談 魯 敏 孫 漂 流 記 ﹄ 三 九 四 ペ ー ジ 、 明 治 十 六 年 版 権 免 許 ) ← 当 然 す べ き こ と ・ 務 め も の あ か り の き ら き ら と も し ひ こ こ ろ 既 に 事 物 の 道 理 を 知 れ る も の ハ 何 ぞ 之 に 明 光 煙 々 す る 自 由 の 灯 火 を 掲 げ て 以 て 其 の 妄 り に 神 経 を 悩 す も の を 救 つ と め ぜ め ふ の 深 切 な く ん バ あ る べ か ら ず ︹中 略 ︺ 是 れ 先 達 之 士 即 ち 目 あ き な る も の の 義 務 な れ ば な り 責 任 な れ ば な り (中 野 了 随 著 ﹃ 見 光 主 義 自 由 灯 ﹄ 四 ペ ー ジ 。 明 治 十 六 年 刊 ) ← 当 然 す べ き こ と ち た り つ き ひ 我 れ 最 早 政 府 に 対 し 徳 義 上 の 責 任 な け れ ば 、 そ の 命 に 遵 ひ て 何 時 ま で も 斯 る と こ ろ に 逗 留 し て 、 可 惜 烏 惜 を 過 さ ん は 愚 か の 至 り ( 宮 崎 夢 柳 著 ﹃ 鬼 鰍 々 ﹄ 第 一 〇 回 、 明 治 十 八 年 刊 ) ← 当 然 す べ き こ と 鋭 き 男 児 の 舌 鋒 も て 弁 護 せ ん よ り 優 し き 女 子 の 紅 唇 も て 穏 か に 弁 ず れ ハ 自 然 に 酷 薄 な る 法 官 の 心 を も 動 か し 易 く 為 め に 重 罪 の 嫌 疑 者 も 無 罪 放 免 の 宣 告 を 受 る も の 多 く 後 来 は 状 師 と 云 へ ば 婦 人 の 責 任 の 如 く な り 行 く べ し ( 服 部 誠 一 著 ﹁ 春 告 鳥 ﹄ 第 一 六 餉 二 九 七 ペ ー ジ 、 明 治 二 〇 年 刊 ) ← 仕 事 、 職 務 か あ さ ま と と っ き ま あ な た お 母 様 に 力 を 附 け て 家 政 を 執 つ て 、 幾 分 で も お 父 様 の 苦 労 を 軽 く す る の が 、 み ん な 貴 女 の 義 務 責 任 ぢ や あ り ま せ ん か ( 田 口 掬 汀 著 ﹃ 女 夫 波 ﹄ 第 二 七 、 明 治 三 十 七 年 刊 ) ← 当 然 す べ き こ と
文林 三十六号 27 、 夫 人 は 単 に 弟 の 依 頼 を 受 け て 姉 と 云 ふ 義 務 と 責 任 を 帯 び て 、 春 子 の 両 親 に 春 子 が 将 来 外 国 人 と 結 婚 す る 事 を 許 さ れ る 意 志 が あ る か 否 か を 質 問 し た ば か り で あ る 。 (永 井 荷 風 著 ﹃ 新 帰 朝 者 日 記 ﹂ 一 月 二 十 五 日 、 明 治 四 十 二 年 刊 ) ← 当 然 す べ き こ と こ れ ら が 中 国 で 古 く か ら 使 用 さ れ て き た 意 味 、 ﹁ そ の 人 が 引 き 受 け て 当 然 の こ と と し て し な け れ ば な ら な い こ と ﹂ ﹁ 役 目 ﹂ ﹁ 役 職 ﹂ を 表 す ﹁ 責 任 ﹂ で あ る 。 例 文 23 ・ 26 ・ 27 で ﹁ 義 務 ﹂ と 共 用 さ れ て い る こ と か ら 判 明 す る よ う に 、 こ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ は ﹁ 義 務 ﹂ に 近 い 意 味 を 表 す こ と が あ る 。 例 文 は 、 意 味 に よ る 分 類 を せ ず 、 年 次 順 に 並 べ た 。 こ れ ら ﹁ 責 任 ﹂ の 使 用 は 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ と 直 接 に 関 係 し な い 。 す な わ ち ﹃ 万 国 公 法 ﹂ の ﹁ 責 任 ﹂ を 継 承 し た も の で は な い 。 こ れ ら は 中 国 漢 語 の 伝 統 的 な 意 味 を 継 承 し た も の で あ る 。 一34一 ︹ 4 ︺ 以 上 の よ う に 中 国 漢 語 の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ は 明 治 期 に 多 く 見 る こ と が で き る 。 と こ ろ が 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ で は 次 の よ う な 別 の 意 味 で ﹁ 責 任 ﹂ が 使 用 さ れ て い る 。 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ に ﹁ ② 事 を 担 任 し て そ の 結 果 の 責 め を 負 う こ と 。 特 に 悪 い 結 果 を ま ね い た と き 、 そ の 損 失 な ど の 責 め を 負 う こ と ﹂ と し て 掲 げ ら れ て い る 意 味 で あ る ( ﹃ 漢 語 大 詞 典 ﹂ の ③ に 当 た る ) 。
漢訳語 の日本語への受容 28 、 就 他 国 被 レ 害 、 一 巻 二 五 オ ) 井 他 国 之 民 受 レ 屈 論 レ 之 、 錐 下 曾 易 一君 主 ・、 変 中 国 法 上 、 其 責 任 、 理 無 二 労 貸 一也 、 ( 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ 大 築 拙 蔵 は こ の 部 分 を 次 の よ う に 訳 す 。 29 、 他 国 ノ 政 府 或 ハ 入 民 二 対 ス ル 損 害 二 付 テ ハ コ ト 能 ハ サ ル ナ リ (三 二 条 、 四 九 ペ ー ジ ) 一 国 他 国 二 対 シ 君 主 ヲ 易 へ 国 政 ヲ 改 ム ル ノ 内 変 二 因 テ 其 責 任 ヲ 免 ル ・ 大 築 が 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ を ﹃ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ で ﹁ 義 務 ﹂ と 訳 し て い る こ と は 既 に 見 た 。 と こ ろ が 、 こ セ こ で は 漢 訳 書 と 同 じ く ﹁ 責 任 ﹂ を 用 い て い る 。 な ぜ か 。 こ の ﹁ 責 任 ﹂ に つ い て 、 ﹃ 訳 義 ﹄ で は ﹁ 責 メ ﹂ ( 一 巻 下 二 八 オ ) と 訳 し 、 ﹃ 和 訳 ﹄ で は ﹁ ソ ノ 責 二 受 ケ 任 ス ベ キ コ ト ﹂ ( 二 巻 二 一 オ ) 、 ﹃ 釜 管 ﹄ で は ﹁ 其 責 無 下 貸 二 借 他 人 一之 理 上 。 必 使 三 其 国 担 当 之 也 ﹂ (上 編 二 巻 一 七 ウ ) と 説 明 し て い る よ う に 、 ﹁ 損 害 ・ 損 失 を 与 え た こ と に 対 し て そ の 行 為 者 、 ま た は 行 為 者 側 が 果 た さ ね ば な ら ぬ 埋 め 合 わ せ 、 償 い 、 ま た 何 ら か の 制 裁 の 類 を 受 け る こ と ﹂ の 意 味 で 使 わ れ て い る か ら で あ る 。 な お 、 こ の ﹁ 責 任 ﹂ の 原 語 が .、話 ゜。 b o 房 一已 ① 、. で あ る こ と も 関 係 し て い る 。 こ の よ う な 理 由 に よ っ て 大 築 は こ こ で ﹁ 責 任 ﹂ を 使 っ て い る と 考 え ら れ る 。 こ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ は 、 ﹃ 漢 語 大 詞 典 ﹄ で は 現 代 作 家 、 陳 登 科 の ﹃ 風 雷 ﹄ を 出 し 、 ﹃ 漢 和 大 辞 典 ﹄ で は 出 典 を 挙 げ て
文 林 一'十六 号 い な い 。 ﹃ 日 本 国 語 大 辞 典 ﹄ で は ﹃ 改 正 増 補 和 英 語 林 集 成 ﹄ ( 一 八 八 六 年 ・ 明 治 十 九 年 ) 、 ﹃ 日 本 人 ﹄ ( 一 八 八 八 年 ・ 明 治 二 十 一 年 ) 、 ﹃ 真 空 地 帯 ﹄ な ど 明 治 中 期 以 後 の 文 献 を 挙 げ て い る 。 と こ ろ が 、 明 治 初 期 に 多 く 使 わ れ て い る 。 30 、 31 、 32 、 33 、 34 、 和 約 中 某 ノ 地 某 ノ 処 ヲ 戦 外 二 置 ク コ ト ヲ 決 ス ル ト キ ハ 速 カ ニ 之 ヲ 其 地 ノ 人 民 二 布 告 ス ル ヲ 以 テ 一 国 ノ 義 務 ト ス 而 シ テ 若 シ 其 地 ノ 臣 民 知 ラ ス シ テ 犯 ス 者 ア ル ト キ ハ 本 国 其 責 二 任 シ 臣 民 ヲ シ テ 損 失 無 ラ シ ム ル ナ リ 如 此 キ 時 犯 者 ハ 其 害 ヲ 被 ム ル 者 二 対 シ テ 責 任 ヲ 免 カ ル ・ コ ト 能 ハ ス 而 シ テ 其 時 若 シ 水 師 提 督 其 場 二 在 ラ ス 亦 其 事 二 與 力 ラ サ ル ト キ ハ 其 責 任 ヲ 受 ル ハ 唯 犯 者 ニ ノ ミ 係 リ テ 提 督 二 及 ハ サ ル ナ リ ( 大 築 訳 ﹃ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ 六 六 〇 ペ ー ジ 。 第 五 四 七 条 ) 彼 レ 既 二 害 ヲ 蒙 ラ ス シ テ 我 亦 其 権 利 ヲ 減 削 セ サ ル ニ 注 意 ス 可 シ 其 他 時 期 ヲ 定 メ サ ル 約 二 就 キ 之 ヲ 履 行 ス ル 人 二 其 稽 滞 ヨ リ 生 ス ル 害 ノ 責 任 ア ル ニ 於 テ ハ 或 ハ 事 二 先 チ テ 対 手 ノ 督 促 ア ル ヲ 要 ス ヘ シ ( ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ 二 六 二 ペ ー ジ ・ 二 六 一二 ペ ー ジ ) 約 束 手 形 等 ノ 仕 払 ナ キ 時 此 関 係 人 ハ 総 テ 責 任 ア ル 旨 ヲ 公 証 人 ヨ リ 宣 告 ス ル コ ト ( 英 国 レ ヲ ン ・ レ ビ 著 、 曲 豆 島 住 作 訳 ﹃ 万 国 商 法 ﹄ = 一 ペ ー ジ 。 内 務 省 勧 商 局 蔵 版 。 明 治 十 年 六 月 刊 ) 公 然 ト 公 告 セ ス シ テ 尚 其 姓 名 ヲ 行 名 二 存 ス ル 所 ノ 組 合 人 ハ ︹中 略 ︺ 其 商 行 ノ 負 債 二 付 キ 尚 ホ 全 ク 責 任 ア リ ト ス 、 然 レ ト モ 其 行 名 ノ 変 換 ヲ 既 二 登 録 シ 又 報 告 ヲ 送 致 シ タ ル 上 ハ 債 主 必 其 報 告 ヲ 受 ケ タ ル 者 卜 看 徹 ヘ シ (﹃ 万 国 商 法 ﹄ = 七 ペ ー ジ ) 幼 属 ハ 自 ラ 代 言 人 ヲ 命 シ 又 ハ 自 ラ 責 任 ヲ 負 フ ヘ キ 事 件 ヲ 陳 述 シ 又 ハ 自 分 ノ 権 利 ヲ 害 ス ヘ キ 所 業 ヲ 為 ス 能 ハ ズ 一36一
漢 訳 語 の 日本 語 へ の受 容 35 、 36 、 37 、 (﹃ 万 国 商 法 ﹄ 六 四 ペ ー ジ ) フ ア イ リ ー ス フ ヲ ツ グ 事 其 従 者 ノ 犯 罪 二 関 シ 是 レ カ 連 累 タ ラ サ ル 条 弁 明 ス ル ニ 足 ル 証 拠 コ レ ナ ク 殊 二 主 人 タ ル 者 ハ 己 レ ノ 催 役 ス ル 従 者 ノ 挙 動 二 関 シ テ 渾 テ 責 任 ヲ 免 レ サ ル ニ 依 リ 従 ヲ 以 テ 禁 獄 八 日 罰 金 百 五 十 膀 (七 百 五 十 圓 ) 申 付 ル ト 読 ミ 揚 ケ ( ﹃ 新 説 八 十 日 間 世 界 一 周 ﹄ 前 編 一 五 一 ペ ー ジ 、 明 治 f 一 年 刊 行 ) 萄 も 親 友 に 対 し て 偽 を 行 ふ た る の 姿 に 相 成 る の 一 点 に 至 て は 心 苦 し く 存 候 間 、 何 卒 御 両 所 様 よ り 其 理 由 を 明 に し て 、 ︹中 略 ︺ 弁 解 の 出 来 候 様 御 取 計 被 下 度 、 左 候 得 ば 諭 吉 壼 人 丈 け は 責 任 を 免 か れ 、 恰 も 其 責 任 を 江 湖 の 輿 論 に 譲 渡 す の 姿 に 相 成 、 誠 に 有 難 存 候 。 (﹃ 福 沢 諭 吉 全 集 一 七 巻 ﹄ 四 八 二 ・ 四 八 三 ペ ー ジ 。 明 治 十 四 年 十 月 書 ) つ ち ( 宮 ) ﹁ 君 が 往 け ノ \ と 言 は な け り や ア 。 僕 ア 王 子 な ん ぞ へ 往 く 気 ハ な か ツ た 。 昼 の 中 を ウ ヱ イ ス ト ︹む だ に く ら ﹂ た よ み ひ ま と す ︺ し た も ん だ か ら 。 と う と う 下 読 の 間 暇 が な く な ッ ち ま つ て 。 兎 て も 自 分 じ や ア や ら り や ア し な い ハ ﹂ 、 ( 桐 ) ﹁ さ う か 。 そ れ で ハ お れ に 責 任 が あ る 訳 じ や な ア ( ﹃ 当 世 書 生 気 質 ﹄ 第 一 〇 回 、 明 治 文 学 全 集 本 = 三 ペ ー ジ 、 明 治 十 八 年 刊 ) 例 文 30 に は ﹁ 義 務 ﹂ と ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ て い る 。 ﹁ 義 務 ﹂ は ﹁ 道 徳 上 ・法 律 上 な ど か ら し な け れ ば な ら な い こ と ﹂ の 意 味 、 一 方 、 ﹁ 責 任 ﹂ は ﹁ 自 己 の 行 為 の 結 果 と し て 生 じ た 損 害 に 対 し て す る 償 い ﹂ を 表 す 。 ﹁ 義 務 ﹂ の 原 語 は ..音 ξ -" で あ り 、 そ の 前 後 は ..詳 尻 け げ ① α 昇 団 亀 爵 ① の 鼠 けΦ 8 σq 才 o 巨 ゜・ ω 仁 豆 ① o訂 江 ヨ ① ぐ 昌 o 菖 8 0 h 荘 ① 貯 9 .. で あ る 。 一 方 、 ﹁ 責 任 ﹂ の 原 語 は ..話 。。 b 8 巴 匡 ① .. ..話 ω b o 昌 匹 三 暮 図 、. で あ る 。 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 該 当 部 分 に ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ て
文林 三十六号 い な い か ら 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の 直 接 的 な 影 響 に よ る 使 用 で は な い 。 こ れ ら の 原 語 が ﹁ 償 い ﹂ を 意 味 す る か ら ﹁ 責 任 ﹂ と 訳 し て い る の で あ る 。 大 築 は 次 の よ う な ﹁ 責 任 ﹂ を 使 う こ と が あ る 。 例 文 30 の 直 前 に ﹁ 和 約 後 奪 フ 所 ノ 捕 貨 海 上 二 属 ス ル ト キ ハ 捕 者 事 ヲ 知 ラ サ ル ニ 託 シ テ 賠 償 ノ 責 任 ヲ 免 カ ル ・ コ ト 能 ハ ス ﹂ と あ る 。 こ の ﹁ 責 任 ﹂ の 前 後 の 原 文 は .、犀 厨 誓 Φ 含 ξ o h 葺 ① ω 鼠 け Φ 8 彗 餌 犀 Φ お の 葺 ` 二 8 で あ る 。 .、② 暮 践 が 使 わ れ て い る か ら ﹁ 賠 償 を 行 う 義 務 ﹂ で あ る け れ ど も 、 ﹁ 賠 償 の 義 務 ﹂ が す な わ ち ﹁ 責 任 ﹂ で あ る の で 、 ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ て い る 。 も っ と も 、 ﹁ 賠 償 の 責 任 ﹂ で は ﹁ 賠 償 ﹂ が 重 複 す る け れ ど も 、 転 義 の ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ 始 め た 頃 に は ﹁ 行 為 者 が 他 に 与 え た 損 害 ・ 混 乱 に 対 す る 償 い ﹂ が 明 示 さ れ て い た の で あ る 。 そ れ が 文 脈 に 依 拠 し て 省 略 さ れ る よ う に な っ た の が 新 漢 語 の ﹁ 責 任 ﹂ で あ る と 解 釈 さ れ る 。 こ の 頃 に は 新 し い 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ が こ の よ う に 漢 訳 書 か ら 離 れ て 一 人 歩 き す る よ う に な っ て い た 。 そ れ ゆ え 同 じ 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ を 31 以 下 の よ う に 見 る こ と が で き る の で あ る 。 た だ し 、 明 治 十 年 頃 で は こ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ が ま だ 確 立 し て い た わ け で は な い 。 ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ で は 中 国 で 古 く か ら 使 用 さ れ て い る 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ の 使 用 が 多 く 、 転 義 の ﹁ 責 任 ﹂ の 使 用 は 少 な い 。 ﹃ 堅 土 氏 万 国 公 法 ﹄ の 場 合 も 同 じ で あ る 。 ま た 、 ﹁ 責 任 ﹂ と い う 単 語 に 固 定 し て い た も の で も な い 。 38 、 此 期 二 違 ヒ 敵 二 害 ヲ 生 セ シ ム ル ト キ ハ 該 政 府 之 レ ニ 償 フ ノ 責 ヲ 負 フ 可 シ ( ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ 三 七 三 ぺ ー ジ ) 39 、 捕 者 総 テ 其 貨 物 ヲ 損 害 ス ル 等 ノ 責 ヲ 本 船 主 又 ハ 其 貨 物 ヲ 運 輸 ス ル 人 二 負 ハ サ ル ヲ 得 ス ( ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ 四 四 五 ペ ー ジ ) 40 、 捕 獲 者 ハ 常 二 相 当 且 ツ 安 全 二 其 捕 獲 物 ヲ 保 守 ス ル ノ 責 二 任 シ 若 シ 其 捕 獲 物 二 適 宜 ノ 注 意 ヲ 為 サ ぐ リ シ ニ 因 リ テ 喪 一38一
漢 訳 語 の 日本 語 へ の 受 容 失 ス ル ト キ ハ 捕 獲 者 ハ 其 損 害 ヲ 悉 ク 償 フ ノ 責 二 任 ス ナ リ ( ﹃ 堅 土 氏 万 国 公 法 ﹄ 八 三 七 ペ ー ジ ) 41 、 若 責 二 任 ス ベ キ 理 ア レ ハ 其 責 ハ 犯 罪 ノ 当 人 二 在 ル ナ リ 是 レ 犯 人 ヨ リ 見 ル 時 ハ 其 責 二 任 ス ベ キ モ ノ ハ 上 等 仕 官 ニ ア ル ベ シ ト 思 ヘ ト モ 害 ヲ 受 ケ シ 者 ヨ リ ハ ロ バ其 犯 人 ノ ミ ヲ 相 手 ト 見 認 ム ベ シ ト 薙 二 良 説 ア リ 仮 令 休 戦 ノ 約 ヲ 知 ラ ス シ テ 為 セ シ 事 ト 雛 ト モ ロ ハ 其 事 実 ヲ 不 知 ト 云 フ ノ ミ ニ テ ハ 分 捕 品 裁 判 所 ニ テ 其 者 ヲ シ テ 責 ナ シ ト セ ス ( ﹃ 堅 土 氏 万 国 公 法 ﹄ 八 六 二 ペ ー ジ ) 例 文 41 は 例 文 30 と 類 似 の 内 容 で あ る が 、 ﹁ 責 任 ﹂ が 見 え な い 。 ﹁ 責 二 任 ス ﹂ と ﹁ 責 ﹂ で あ る 。 こ の 種 の 文 中 で の 使 用 で は 、 大 築 の 使 用 が 早 い 。 ︹5 ︺ 次 に 箕 作 麟 祥 の 場 合 を 見 て み る 。 箕 作 麟 祥 は ﹃ 仏 蘭 西 法 律 書 ﹄ の ﹁民 法 ﹂ を 訳 す と き 、 初 版 ( 明 治 四 年 刊 ) で は ﹁ 自 分 の 行 為 の 結 果 と し て の 埋 め 合 わ せ 、 償 い 、 ま た は 制 裁 の 類 を 受 け る こ と ﹂ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ を 使 わ な い 。 こ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ を 使 用 す る の は 増 訂 版 ( 明 治 十 六 年 十 二 月 緒 言 ) に な っ て か ら で あ る 。 42 、 授 業 師 及 ヒ 工 作 者 ハ 其 受 業 者 及 ヒ 工 作 ヲ 学 フ 者 己 . ノ 管 照 ヲ 受 ク ル 時 間 二 人 二 加 ヘ タ ル 損 害 ヲ 償 フ 可 シ 父 及 ヒ 母 又 ハ 授 業 師 及 ヒ 工 作 者 ハ 其 子 又 ハ 弟 子 ノ 人 二 損 害 ヲ 加 ヘ シ 所 行 ヲ 防 制 ス ル コ ト 能 ハ サ ル ノ 証 ヲ 立 ル ニ 非 レ ハ 上 二 記 ス ル 所 ノ 如 ク 其 償 ヲ 為 ス 可 キ ノ 責 ヲ 免 ル ・ ヲ 得 ス ( 初 版 本 第 ] 三 八 四 条 )
文林 三十六号 43 、 教 師 及 ヒ 工 作 者 ハ 其 生 徒 及 ヒ 工 作 受 業 者 力 己 レ ノ 監 視 ヲ 受 ク ル 時 間 二 生 セ シ メ タ ル 損 害 ノ 責 二 任 ス 可 キ モ ノ ト ス 父 母 教 師 及 ヒ 工 作 者 ハ 其 責 任 ヲ 生 セ シ メ タ ル 所 為 ヲ 防 止 ス ル コ ト 能 バ サ リ シ 旨 ヲ 証 ス ル ニ 非 サ レ ハ 右 二 記 シ タ ル 責 任 ア ル モ ノ ト ス ( 増 訂 版 第 = 二 八 四 条 ) 例 文 42 で は ﹁ ( 損 害 ヲ ) 償 フ 可 シ ﹂ ﹁ ( 其 償 ヲ 為 ス 可 キ ノ ) 責 ﹂ と 訳 さ れ て い る の を 、 例 文 43 で は そ の 該 当 個 所 が ﹁ ( 損 害 ノ ) 責 二 任 ス ﹂ ﹁ (其 ) 責 任 ﹂ ﹁ (右 二 記 シ タ ル ) 責 任 ﹂ に 改 め ら れ て い る 。 ﹃ 仏 蘭 西 法 律 書 ﹄ は 、 明 治 八 年 四 月 に 校 正 本 が 刊 行 さ れ て い る が 、 こ れ は 初 版 本 と こ の 条 文 に 関 し て は 全 同 で あ る 。 明 治 八 年 頃 で は 新 し い 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ が ま だ 一 般 的 で な か っ た の で あ ろ う 。 原 文 は 一、語 呂 o ロ の 帥 巨 。 ". . 話 ω b 8 ω ㊤ げ 葭 ま .. で あ る 。 次 に 第 一 九 九 二 条 を 見 る 。 44 、 名 代 人 ハ 己 . ノ 為 ス 所 ノ 詐 欺 ノ 責 二 任 ス 可 キ ノ ミ ニ 非 ス 己 . ノ 過 失 ノ 責 ニ モ 亦 任 ス 可 シ 。 謝 金 ヲ 受 ケ サ ル 名 代 人 己 レ ノ 過 失 二 任 ス ル ノ 責 ハ 謝 金 ヲ 受 ク ル 名 代 人 ヨ リ 更 二 軽 シ ト ス (初 版 本 第 一 九 九 二 条 ) 45 、 代 理 者 ハ 其 管 理 二 於 テ 行 フ 所 ノ 詐 欺 ノ ミ ナ ラ ス 其 過 失 二 付 テ モ 亦 其 責 二 任 ス ル モ ノ ト ス 。 然 レ ト モ 過 失 二 関 ス ル 責 任 ハ 給 料 ヲ 収 受 ス ル 者 ヨ リ モ 代 理 ノ 無 償 ナ ル 者 ニ ハ 更 二 軽 緩 二 適 用 ス 可 シ (増 訂 版 第 一 九 九 二 条 ) 1十
漢 訳 語 の 日本 語 へ の受 容 こ こ で も 初 版 本 ・ 校 正 本 と も に ﹁ 責 任 ﹂ が 使 用 さ れ な い 。 箕 作 麟 祥 は ﹁ 埋 め 合 わ せ 、 償 い 、 ま た 制 裁 を 受 け る こ と ﹂ を 意 味 す る ﹁ 責 任 ﹂ を 知 っ て い た に 違 い な い 。 ホ イ ー ト ン の 、、日 Φ 日 ① 巨 ω o h ぎ 8 彗 四 江 0 5 巴 ピ 四 自 .. を 会 読 す る と き 、 出 席 者 の 上 口 出 賢 輔 が 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ を 携 え て き て お り 、 漢 訳 書 の 内 容 と 箕 作 麟 祥 の 訳 文 が よ く 合 っ て い る こ と が 話 題 に な っ て い た の で あ る か ら 。 そ れ に 、 明 治 二 十 年 九 月 の 明 治 法 律 学 校 で の 講 演 に お い て 箕 作 麟 祥 は ﹁ 支 那 訳 の 万 国 公 法 に ﹁ ラ イ ト ﹂ ﹁ オ ブ リ ゲ ー シ ョ ン ﹂ と 云 ふ 字 を 権 利 義 務 と 訳 し て あ り ま し た か ら 、 そ れ を 抜 き ま し た の で ﹂ と 話 し て い る か ら 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ を 読 ん で い た こ と は 確 か で あ る 。 た だ し 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ に ﹁ 義 務 ﹂ が 使 わ れ て い る と い う の は 彼 の 記 憶 違 い で あ る 。 箕 作 麟 祥 は 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ を 読 ん で い た け れ ど も 、 ﹃ 仏 蘭 西 法 律 書 ﹄ の 初 版 本 ・ 校 正 本 で は ﹁ 責 任 ﹂ を 使 わ な い 。 ﹁ 責 二 任 ス ﹂ ﹁ 任 ス ル ノ 責 ﹂ の 段 階 に 止 ま っ て い る 。 ﹁ 責 任 ﹂ が 使 用 さ れ る の は 明 治 十 六 年 の 増 訂 本 か ら で あ る 。 も っ と も 、 増 訂 本 に も ﹁ 責 二 任 ス ﹂ は 残 る 。 こ の こ と は 大 築 訳 ﹃ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ で も 、 例 文 30 に 見 ら れ る ご と く 、 同 じ で あ る 。 津 田 真 道 も ﹁ 責 二 任 ス ﹂ を ﹃ 明 六 雑 誌 ﹄ で 使 用 し て い る (例 文 16 ) 。 フ ラ ン ス 法 の 研 究 の な か で 新 し い 意 味 の ﹁責 任 ﹂ が 使 わ れ る よ う に な る の は 、 確 実 な の は 、 明 治 十 三 年 以 後 で あ る 。 ﹃ 法 律 語 彙 初 稿 ﹄ ( 明 治 十 三 年 例 言 ) に 次 の ご と く あ る 。 即 Φ ω b o ロ 路 げ 目 融 レ ス ポ ン サ ビ リ テ 責 任 即 Φ 昌 o ロ 雷 げ 筥 ま 9 < ぎ レ ス ポ ン サ ビ リ テ 、 シ ウ ィ ル 民 事 乃 責 任 ︹本 義 ︺ ︹省 略 ︺ ︹釈 義 ︺ 或 ル 場 合 二 於 テ 他 人 ノ 犯 シ タ ル 重 軽 罪 或 ハ 准 犯 罪 二 付 キ 之 二 答 フ ル 所 ノ 義 務 ヲ イ フ 此 民 事 ノ 責 任
文林 三十六号 即 チ ﹁ レ ス ポ ン サ ビ リ テ 、 シ ウ ィ ル ﹂ ハ 損 害 ノ 所 行 ヲ 防 止 ス ヘ キ 人 之 ヲ 負 担 シ テ 其 償 金 ヲ 払 ハ サ ル ヘ カ ラ ス ﹃ 法 律 語 彙 初 稿 ﹄ は 当 時 の 大 木 喬 任 司 法 大 臣 が 文 部 大 臣 で あ っ た と き に 委 員 会 を 作 り 編 集 さ せ た 一 種 の 辞 書 で あ る 。 ﹁ 方 今 翻 訳 最 世 務 ノ 急 タ リ 而 シ テ 翻 訳 諸 語 大 約 元 意 ヲ 失 ヒ 看 者 荘 洋 津 二 迷 ヒ 事 実 ヲ 誤 認 ス ル モ ノ 蓋 シ 勘 カ ラ ス ﹂ (例 言 ) と い う の で 委 員 会 が 発 足 し た 。 そ の 二 年 前 の 明 治 十 一 年 に フ ラ ン ス か ら ボ ア ソ ナ ー ド が 招 聰 さ れ て い る 。 当 時 は フ ラ ン ス 法 を 以 っ て 日 本 の 法 令 を 整 備 し よ う と し て い た か ら こ の 辞 書 は そ の 後 の 法 令 用 語 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。 問 題 は そ れ 以 前 の こ と で あ る 。 個 人 の 才 能 に 依 拠 し て 翻 訳 が な さ れ て い た こ ろ に 成 立 し た 大 築 訳 ﹁ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ に 見 ら れ る 、 新 し い 意 味 の 用 例 29 の ﹁ 責 任 ﹂ 、 そ し て 例 文 30 の ﹁ 責 任 ﹂ は 早 い 時 期 の 使 用 で あ る と 言 う こ と に な る 。 こ れ は 、 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹂ の 影 響 に よ る 使 用 で あ る 。 し か し 、 例 文 30 の 漢 訳 書 の 該 当 個 所 に ﹁ 責 任 ﹂ が な く 、 ま た 大 築 が ﹃ 恵 頓 万 国 公 法 ﹄ を 訳 し 終 え た 翌 年 の 明 治 十 年 に な る と ﹃ 海 氏 万 国 公 法 ﹄ や ﹃ 万 国 商 法 ﹄ が 刊 行 さ れ る か ら 、 司 法 省 関 係 者 な ど の 間 で こ の 新 し い 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ る よ う に な っ て い た と 推 定 さ れ る 。 ﹁ 償 い 。 失 敗 に 対 す る 補 償 。 制 裁 の 類 を 受 け る こ と ﹂ の 意 味 の 新 漢 語 ﹁ 責 任 ﹂ が 先 ず 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ に よ っ て 多 く の 人 に 理 解 さ れ て 日 本 語 の 中 に 取 り 入 れ ら れ 、 大 築 拙 蔵 が ..臼 ① 日 ① 巨 ロ o h ぎ 8 毎 p 島 o 昌 巴 い p ≦ .. を 翻 訳 し た 頃 に は 、 こ の 意 味 の ﹁ 責 任 ﹂ が 国 際 法 や 国 内 法 の 作 成 に 係 わ る 人 た ち の 間 で 常 用 語 に な ろ う と し て い た の で は な い か 。 そ れ を 汲 み 上 げ て ﹃ 法 律 語 彙 初 稿 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ の 項 は 成 立 し た と 考 え ら れ る 。 欧 米 語 か ら 直 接 、 学 ば な け れ ば な ら な か っ た 事 柄 ・ 知 識 ・ 制 度 な ど を 漢 訳 書 、 す な わ ち 漢 文 か ら 学 び 、 そ の 漢 訳 書 の 学 習 に 伴 っ て 習 得 し た 新 漢 語 を 活 用 し て 英 文 一42
や 仏 文 を 理 解 す る 、 そ の よ う な こ と が あ っ た の で あ る 。 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ は 法 律 に 関 す る 書 物 で あ っ た た め に 、 ﹁ 自 ら の 行 為 に よ っ て 他 人 に 生 じ さ せ た 損 害 、 ま た は 事 態 の 混 乱 ﹂ と 、 そ れ に 対 し て 行 為 者 が し な け れ ば な ら な い 事 柄 と の 関 係 が 明 確 に 記 さ れ ね ば な ら な か っ た 。 こ の こ と は 他 の 種 類 の 法 律 文 で も 同 じ で あ る 。 こ れ ら の 文 章 の 中 で そ の よ う な 関 係 を 表 す 単 語 と し て ﹁ 責 任 ﹂ が 用 い ら れ た 。 と こ ろ が 、 当 時 、 古 く か ら 中 国 漢 語 と し て 存 在 す る ﹁ 責 任 ﹂ が 使 用 さ れ て い た た め に 、 す ぐ に は こ の ﹁ 責 任 ﹂ は 取 り 入 れ ら れ な か っ た 。 ︹ 6 ︺ 転 義 の ﹁ 責 任 ﹂ が 習 得 さ れ る も う 一 つ の 道 が あ っ た 。 そ れ は 辞 書 を 通 じ て で あ る 。 刊 ) に 、、冨 呂 o 口 ゜・ 凶げ ま ぐ 遷 、、話 魯 o 巴 匡 ① u は 次 の よ う に 出 て い る 。 ﹃ 附 音 挿 図 英 和 字 彙 ﹄ ( 明 治 六 年 漢 訳 語 の 日本 語 へ の受 容 弓 o °昏 b o 房 ま 監 蔓 憎 窃 灼 o 富 ぴ δ ヒ キ ウ ケ セ キ ニ ン カ リ リ ア ヒ オ ウ タ フ 担 承 、 責 任 、 関 係 、 応 答 ウ ク ン ク ナ カ ヘ ハ 責 ヲ 受 ベ キ 、 担 承 ベ キ 、 償 フ ベ キ 、 係 ル ベ キ ..話 魯 o 房 ま 一一 蔓 . の 訳 語 に ﹁ 責 任 ﹂ が あ る か ら 、 こ の 辞 書 を 引 け ば 、 ﹁ 責 任 ﹂ と い う 漢 語 を 簡 単 に 求 め る こ と が で き る 。 し か し 、 ..話 呂 8 巴 げ 監 身 .. は 、 た と え ば 、 ﹁ 子 ど も の 教 育 は 親 の 話 魯 8 巴 げ 筐 ξ で あ る ﹂ と い う ふ う に も 使 わ
文林 三十六号 れ る か ら 、 今 、 問 題 に し て い る ﹁ 責 任 ﹂ の 成 立 に こ の 辞 書 が 直 接 、 係 わ っ て い る と は 必 ず し も 言 え な い 。 そ れ に 、 用 せ め わ れ あ 例 文 の .. 弓 げ ① き ω b o 房 睡げ ま 蔓 話 ゜。 け 。・ 8 日 。 、. の 訳 に ﹁ 責 我 二 在 り ﹂ と あ っ て 、 ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ て い な い 。 こ れ ら の こ と か ら 明 治 六 年 頃 に は ﹁ 償 い ﹂ の 意 の ﹁ 責 任 ﹂ は ま だ 一 般 的 で な か っ た こ と が 窺 え る 。 と こ ろ で 、 .、日 ゴ ① 話 ゜・ b o 房 量 暮 団 話 ω 什 ω 8 ヨ ① .. の 出 典 は ど こ に 求 め ら れ る か と 言 え ば 、 ロ ブ シ ャ イ ト の ﹃ 英 華 字 典 ﹄ で あ ろ う 。 こ の 辞 書 に 次 の ご と く あ る 。 話 聲 o 房 8 ま ξ 話 ω b o 昌 巴 巨 ㊦ 袖 醍 ゜ 面 開 ゜ 蹄 ` 蹄 爵 ゜ 中 . 面 由 ゜ 坤 甜 芸 げ ① 話 ω b 8 巴 げ 帥身 き の 話 o 昌 目 ρ 謎 聾 爾 葺 蹄 爵 餅 聾 ゜ 蹄 謎 砧 闘 ゜ 団 魯 一Φ 8 p o8 = 暮 ﹄ 知 囲 ゜ 謎 酩 ゜ 細 醍 ゜ 鶏 剛 ゜ 鶏 蹄 爵 ゜ 醐 剃 ゜ 蹄 爵 宙 齢 ` 職 由 甲粛 浄 ゜ 謎 聾 巾 囲 ' 44 面 醐 H 陣 日 話 碧 8 巴 巨 ρ 蹄 画 剥 . 齢 ﹁ こ の ロ ブ シ ャ イ ト の 訳 語 と 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ の ﹁ 責 任 ﹂ の 使 用 か ら 考 え て 、 当 時 、 中 国 に 在 留 の 宣 教 師 た ち の 間 で は 、.冨 ゜・ b o ロ 巴 ぴ ま 身 .. の 訳 語 と し て ﹁ 責 任 ﹂ が 使 用 さ れ て い た の で あ ろ う 。 そ の ﹁ 引 き 受 け て 当 然 の こ と と し て し な け れ ば な ら な い こ と ﹂ が 、 法 律 文 の な か で あ る た め に 、 ﹁ 他 人 に 与 え た 損 害 や 、 生 じ さ せ た 混 乱 に 対 し て ﹂ と い う 限 定 で 、 あ る い は 環 境 、 文 脈 の な か で 使 用 さ れ る こ と が 多 く 、 そ れ ゆ え に ﹁ 償 い ﹂ の 意 味 に 傾 斜 し て い っ た 。 そ の ﹁ 責 任 ﹂ が 使 わ れ た 漢 訳 ﹃ 万 国 公 法 ﹄ が 当 時 で は 唯 一 の 国 際 法 の 書 物 で あ り 、 か つ 法 律 書 と し て 日 本 に 届 い た 。 極 め て 少
な い 情 組 鰍 の 中 で 漢 訳 ﹃ 万 国 公 曲 ﹂ は 珍 重 さ れ 、 幕 末 ・ 明 治 初 期 め 日 本 人 に 熟 読 さ れ た 。 そ し て ﹁ 責 柾 ﹂ は 国 際 法 や 、 フ ラ ン ス法 を 始 め と す る 欧 栄 法 の 摂 取 に お い て 活 用 さ れ 、 そ の な か で ﹁ 貴 任 ﹂ の 意 味 転 化 が 不 動 の も の と な っ た と 考 え ら れ る 。 7主三 ヒ1三7上 チ'r:『 」匡,」1 654窪 ε1 大 嶺 文 彦 晋 ﹁ 笠 作 麟 拝 揖 伝 ﹂ ( 明 捨 開 十 年 淵 ) . ﹁二 裡 ー ジ 。 日 准 近 代 思 想 大 系 ﹁ 傭 駅 の 思 想 ﹂ 三 八 一 ペ ー ジ 。 一 九 九 一 牢 九 月 、 岩 腔 宙 店 刊 。 ﹁ 瀧 訳 ﹃ 万 国 公 怯 ﹂ の 熟 字 と 近 代 日 本 蔑 語 (﹁ 国 語 と 国 文 学 ﹂ 昭 珈 六 十 隼 五 月 畢 )。 東 京 大 学 附 展 図 欝 館 蔵 。 箕 作 麟 祥 (貞一 郎 )旧蔵 本 。 北 京 日 本 学 研 究 七 ン タ ー 峰 士 課 程 学 生 、 郡 艶 紅 志 ん の 教 示 に よ 番 o ﹃ 篤 作 麟 祥 書 伝﹄一 O 一 べ ー ジ 。 瀧訳 語 の1一体 語 へ 伽 量