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3次元地下人工き裂の動的応答解析と地下き裂評価に関する研究

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(1)

3次元地下人工き裂の動的応答解析と地下き裂評価

に関する研究

著者

林 一夫

(2)

3次元地下人工き裂の動的応答解析と地下き裂評価に関する研究

(課題番号10650070) 平成1 0年度一平成1 1年度科学研究費(基盤研究(C) (2)) 研究成果報告書 平成12年3月 研究代表者 林 一夫 (東北大学流体科学研究所)

(3)

はしがき 再生可能エネルギー源としては}太陽エネルギー、風力エネルギー、波力エネルギ-、 地熱エネルギーが有力である。 I GA (国際地熱協会)の試算によれば、これら再生可能 エネルギー源から生産される電力総量に対する各々の寄与率は、太陽エネルギーが0. 4 %、 風力エネルギーが18. 8%、波力エネルギーが1. 2%、地熱エネルギーが79. 6% である。地熱エネルギーの寄与は圧倒的に大きい。また、地熱資源量の持つ潜在能力への 期待も大きいものがある。特に、従来は開発不可能と考えられていたフィールドでも、地 下岩体内に貯留層と呼ばれる流体通路を人為的に付与することにより、開発を可能にする 能動的地熱開発への期待は大きい。流体通路となる貯留層は、通常複数の人工破断面から 構成されるが、それらの人工破断面の幾何学的特徴及び物理的性状の把握が、必ずしも万 全ではないという点が、能動的地熱開発実用化へのボトルネックの一つとなっている。 本研究は、地熱抽出のための地下破断面を、流体で満たされ且つ部分的に接触している き裂でモデル化し、岩体とき裂及び流体からなるシステムの振動特性を理論的に明らかに して、さらに、これと地下人工破断面作成時に実測される微小地震波の特性や、人工震源 から放射される弾性波に対する人工破断面の応答特性とを比較解析して、地下人工破断面 を特徴づける諸因子を推定する方法を検討することを目的とするものである。諸因子とし ては、地下人工破断面の大きさ、地下人工破断面の開口幅、地下人工破断面の水の通り易 さ、人工破断面上下面の部分接触の度合いとそれに起因する接触剛性をあげることができ る。地下人工破断面の評価に関しては、従来は,微小地震波の震源分布から貯留層全体の 形状や構造が把握されてきたが、貯留層を構成する破断面群の個々に関しては、その幾何 学的特徴や物理的性状を特定するには至っていなかった。 0001017701丘 -     _

(4)

研究組織 研究代表者 研究分担者 研究分担者 研究経費 平成10年度 平成1 1年度 合計 林 一夫 東北大学流体科学研究所教授 新妻弘明 東北大学工学研究科教授 永野宏治 室蘭工業大学工学部助手 900千円 1, 200千円 2, 100千円

(5)

研究発表 (1)学会誌等

伊藤伸・林 一夫、地下号裂の振動特性におよぼすき裂面接触剛性の影響、日本機

械学会論文集(A)、 64・673、 1998、 91.96.

S・ Ito and X・ Hayashi, Effect of Fluid Viscosity, Permeability of Rock and Crack

lnterfacialStiBhess on Dynamic Response Of a Penny Shaped Geothermal Reservoir

Crack - Further Details-, GeothermalResources Council Tiansaction, 22, 1998, 203・

210.

K Nagano, Crack・Wave Dispersion at a Fluid・Filled Fracture with Low Velocity Layers, Geophysical Journal lntemational, 134, 1998, 903・910.

S・ Ito, K・ Hayashi, H・ Kaieda and K. Tezukn, Fracture Characterization from Microseimic Events at Hijioriand Ogachi Fields in Japan, Geothermal Resources CouncilTranSaction, 23, 1999, 265-270. (2)口頭発表 林 一夫、多田祥明、伊藤伸、 地下き裂の振動特性におよぼすき裂面上の接触位置の影響、日本機械学会東北支部地方講 演会講演論文集、 981-2, 1998, 29-30. 多田祥明、伊藤伸、林 一夫.地下き裂に発生する定在波を用いたき裂評価に関する 研究- き裂先端から流体のもれのがある場合-、第6回地下と土木のAE国内総合コン ファレンス論文集、 1999, 112-116.

(6)

研究成果 内部を流体で満たされた円盤状き裂を3次元地下き裂の代表例として取り上げ、その動 的応答特性を詳細に検討した。その結果、下記のように、恥pe I, ⅠⅠ, ⅠⅠⅠの三つの振動形態 が存在することが明らかになった。すなわち、フーリエ像空間において、基本振動モード の明確など-ク周波数が見えないもの(恥pe I)、フーリエ像空間において基本振動モードが 明確など-ク周波数として現れるもの冊peIII)、および、竹peIと1知eIIIの中間のスペ クトル特性を有するもの(町pe II)の三つである。 The Iはスペクトルが人工刺激のみに支

配されているもので、き裂に加えられた人工刺激がき裂内を伝搬してゆく際に減衰が激し く、その結果、き裂先端で反射して定在波を形成することがないときに発現する。竹peIII は逆に、き裂に加えられた人工刺激がき裂内を伝搬してゆく際の減衰が弱く、従って、き 裂先端で反射して定在波を形成しやすい条件下で発現する。き裂振動を支配するパラメー タの観点から見ると、流体の粘性が小さい、き裂の開口変位が大きい、き裂上下面の部分 接触の度合いが小さい、岩体の透水率が小さいという条件が満たされるとやpe IIIの形態 となる。地下き裂のキャラクタリゼ-ションのためには、 1如eIIIが実現されることが望ま しい。上述の支配パラメータの内、岩体の透水率は人工的に制御することは基本的に不可 能である。また、流体の粘性を小さくすることにも限界がある。従って、残る二つのパラ メータのき裂初期開口変位およびき裂上下面の部分接触の度合いを人工的に制御するとい う方策を採ることが現実的に有効である。このためには、貯留層圧力をできるだけ高く保 持することが推奨される。 き裂面の接触剛性、岩体の透水率および流体の粘性が、き裂の勤的応答特性におよぼす 影響を詳細に検討した。その結果、以下のことが明らかになった。すなわち、岩体の透水 率が小さく流体の粘性が小さい場合においては、接触剛性が存在しない場合には角固有振 動数は、アスペクト比によりほぼ決まる。一方、接触剛性が存在する場合には、角固有振 動数は接触剛性によりほぼ決まる。また、岩体の透水率が小さくない場合では、接触剛性 が存在しないと角固有振動数ならびに減衰の強さの、岩体の透水率による変化はほとんど 見られない。一方、接触剛性が存在すると、岩体の透水率が大きくなるにつれ角固有振動 数は小さくなり、減衰の強さは強くなる。ただし、流体の粘性が大きい場合、これらの岩 体の透水率による変化は小さくなる。 次に、地下熱交換システムを構成する地下き裂の大きさ、き裂開口幅およびき裂面接触

(7)

剛性の評価を行うための新しい手法を考案した。これは、き裂の動的挙動解析から得られ る固有周波数とフィールドで計測された微小地震波のピーク周波数との比較対照に基づく 方法である。この手法を、肘折ならびに雄勝フィールドで計測された微小地震波の解析に 適用した。肘折フィールドでは、三つの微小地震波イベントについて評価が可能であっ た。また、雄勝フィールドでは、二つのイベントについて評価可能であった。肘折ではき 裂半長とき裂開口幅がそれぞれ5-11m、 1-44mmという結果が得られた。一方、雄勝で は、 4-28m、 10-22mmという結束が得られた。

(8)

雄勝および肘折フィールドの地下き裂の大きさの

評価に関する研究′

(9)

第1章 緒言

mR(Hot Dry Rock)やm(Hot Wet Rock)といった高温岩体を利用した能動 的地熱抽出においては,地下岩体中に水圧破砕により作成された人工き裂が, 熱水の循環経路として,熱交換面として,また貯留層空間として,抽熱のため の熱交換システムの主要部を構成している(Duc'hanC,1991;阿部,1988;

Frannke,1988; Abiand Hayashi,1992; Takahashiand Hashida,1992).このような地

下熱交換システムの設計,作成および長時間にわたる保持を行うには,き裂の 成長,き裂の位置,大きさ,方位などのき裂の諸特性を評価し把握する必要が ある.そのためにき裂のモニタリング技術の向上が必要不可欠である.このた めの計測技術としては, AE計測(周波数:数十Hzから数百Hz)が極めて有

効であることが報告されている(Fehler and Bane,1985; House et al,1985; Baria and Green, 1986; Dreesen etal, 1987; Niitsuma etal, 1987).

高温岩体開発におけるき裂開発の手段として,初めてAE法を用いたのは米 国ロスアラモス国立研究所のAlbrightら(1982)である.彼らは米国フェント ンヒルにおける水圧破砕で3成分坑井内弾性波検出器を用いてAEを計測し,

水圧破砕き裂の位置評価に成功した.その後,同様な試みがフェントンヒルを

はじめイギリスのローズマノウス(Rosemanowes) (Bariaand Green,1986; Pine and Batchelor,1984),フランスのラ・メイヨ・デ・モンク-ン(LeMayet de

Montagne) (恥1ebiand Cornet,1987)とソルツ(Beauce etal,1991; Beauce et

al,1995),スウェーデンのファールバッカ(Fjallbacka) (Jupeetal,1984)で積極

的に行われ,国内でも肘折(TeZnlkaand Miyairi,1995) ,雄勝(Kaieda et al,1995;港

江田ら,1994;海江田・佐々木,1998;永野ら,1994)における高温岩体プロジェク トでの適用例が数多く報告されている.

(10)

and Bane,19$5).ひとつはP波とS波の到来時刻を明確に識別できるものであ

り,もうひとつはP波とS波の識別が困難で,しかも長い周期を有するもので

ある(Fehler and Bane,1985):この長周期の波は,火山性長周期地震と類似の メカニズムによるものと考えられている.火山性長周期地震のメカニズムに関 する理論的研究としては, Chouetら(1985)およびChouet (1986)の差分法に よる内部を流体で満たされたき裂の動的解析,ならびにFerrazziniら(1987) 暗.よる流体で満たされたスリット内を伝播する波の分散睦の研究を挙げること ができる.これらは,マグマだまりを想定してき裂開口幅あるいはスリット幅 を0.5mから数mと設定している.一方,地熱抽出システムにおいて熱交換面 となる地下人工き裂の開口幅は高々数mmであり,き裂面全体が非接触の状態 にあるとは考えにくい・また,地下人工き裂内に支持材(proppant)として砂 を圧入する事も試みられている.これは支持材により地下人工き裂面を強制的 に開口させ,低い貯留層圧でも高い透水性を確保し,循環システムのフローイ ンピーダンスを低減することを目的とするものである.この場合,地下き裂上 下面は圧縮荷重下で支持材を介して接触状態にあることになる.以上のように 地熱抽出システムの地下人工き裂に対して,上述の火山性地震の震源であるマ グマだまりを想定したき裂に対する知見を直接適用することは必ずしも妥当と は言い難い.最近ではDvorkinら(1992)が,任意のき裂開口形状を有する二 次元き裂についてき裂内流体の岩体中-の浸透を考慮し,き裂内流体の動的応 答を調べている.しかし, Dvorkinらは岩体を剛体として解析している.また, Ferrazziniら(1990)は上述のChouetのモデルを用いて米国のフェントンヒル のHDRプロジェクトにおいて水圧破砕により形成された貯留層き裂の大きさ の推定を試みている.しかしChouetのモデルではき裂内流体の岩体中-の浸透 について考慮されていない. Hayashiら(1995)は,き裂上下面の接触により 生じる接触剛性を考慮して,内部を流体で満たされた二次元き裂の振動特性に

ついて検討している・また, Naganoら(1996)はHayashi and Sato (1992)の

(11)

理論を用いて東八幡平フィールドの接触剛性について評価している.しかし, これらは流体の粘性と岩体の透水率については考慮されていない.そこで伊 藤・林(1998)は,岩体を弾性体として扱い,内部を流体で満たされた二次元 き裂を考え,地下き裂の振動特性に及ぼす流体の粘性と岩体の透水性,および き裂上下面が接触することにより生じる接触剛性の影響について解析している. 本研究では伊藤・林による二次元き裂モデルの解析結果と,肘折ならびに雄 勝フィールドで計測された微小地震の振動特性とを比較・検討することにより, き裂の評価を試みる.そこで本研究では,二次元き裂モデルを用いてき裂の動 的応答解析を実施し,その結果に基づくき裂評価法を提案する.そのき裂評価 法を用いることにより,接触剛性,き裂半長およびき裂開口幅が推定できる. 次に,肘折フィールドおよび雄勝フィールドに本研究で提案したき裂評価法を 適用し,その結果について検討する.

(12)

第2章 地下き裂評価法の検討

2.1 二次元き裂モデルの解析 2.1.1モデルの呈示 地下岩体中のき裂は,地上からの水の圧入とともに通常巨視的には準静的な 安定成長をするが,地下岩体には岩質の不連続部や非」様性が不可避的に存在 することを考えると,その安定成長過程は段階的な不安定成長の積み重ねから 成っていると考えてよい.したがって,地下き裂成長過程に伴い放出される弾 性波の評価は,き裂がそれ自身の大きさに比べ比較的小さな距離だけ短時間で 進展するときの解析によってなされなければならない.実際のき裂は非-様な 速度で進展,停止を繰り返すと考えられるが,この場合のき裂成長の解析は困 難である.これを,内部を流体で満たされた長さ2a,き裂開口幅dの二次元き 裂(図2-I)の微小区間に,き裂面垂直方向の垂直応力が時刻零において衝撃 的に作用するというモデルに置き換えて考える.また,き裂の内部はき裂面に 存在する突起によってき裂上下面が部分的に接触している状態(図2_2)にあ るものとする・き裂線上に原点を有し∬l軸をき裂線上に沿ってとり, ∬3軸をき 裂線に垂直にとった座標系0-X"X2,X,を導入する. xk (k- 1,2,3)方向の変位 成分ukを, 〟2=O u. =ul(xl,X3) u3 =u3(X"X3)

とする・き裂上の変位の不連続量をAuk (-u㍑→.0 -ukL)と表示すると Aul =Au2 =O

Au, = Au,(X.)

nhH一  一LHt niiZl

ハい P P

(13)

れ1,2,3を,ギリシャ小文字の下指標はそれぞれ1,3をとり,また指標に対す る総和規約を用いるものとする.き裂上下面の接触を図2-3のように上下面を 連結するバネによりモデル化する. き裂上のある区間(Xl -'xl ≦Xl+AX.)において, X,方向の垂直応力ーU。がス テップ状に作用したときの,き裂面垂直応力は次式のように表示することがで きる.

U,',(xl,i) = -U。HO(xl;X"X. + AX.)'H(i) ここにtは時刻, H(i)は-ビサイドのステップ関数で,

である.

(6)

(14)

2.1.2 き裂面上の応力の解析 時刻tの関数g(t)のラプラス像関数をib)と表示する.すなわち gO) -エg(i)e-p'dt (8) である. 均質等方無限弾性体を考え,その中に固定した直角座標0-xl,X2,X,をとる・ 時刻1-0に無限体中の点Q(X)にX,・方向単位インパルス集中力が作用したとき, 時刻tに点P(i)に生じるX.・軸方向変位のラプラス変換形UTJ-)(X,i,p) Gま次式で 与えられる.

UTj,(X・f,p, -轟e-pR/C,6・,I -嘉、 I"' 47rLFLR  'J 〝LLR R JJ,.」

ここに, (・),,=∂(・)/aft, R=Jx-ff,またCL,C,はそれぞれP波, S波の位相速 度である.すなわち, cL-(響)三・ C,-(i)喜 (10, また, 6,)・Gまクロネッカのデルタ, 1およびFLはラーメの定数, pEま弾性体の密 度である. さて,上述の単位インパルス荷重を受ける無限弾性体に対する解と前述のき 裂問題の解との間に,ラプラス像空間におけるBetti-Rayleighの相反定理を適用 し,き裂問題におけるX,平面に対しての対称性を考慮すると,き裂を有する弾 性体内部の点ガの変位の表示が次のように求められる.

e-pR/Cr-ie-pR/CLL] (9,

u-a (X, p) - -lA. Au-, (i. , p)(TT`a'(X,i,p)rdA(i) (ll)

ただし, A'はき裂上面を表し,上付の+はX,うWの極限値を表している.こ こに,

TT(j) (X, i, p) = -C.I,A,U-.(,31) (X, i, p)

6

(15)

C,,k, = 16,,・6m +p(6,k6iL + 6,.6ik)       (13)

式(ll)に広義のフックの法則を適用し,さらにX,うWの極限をとることにより 次式を得る.

5i3 (X・ P,L-0 - -軋Au-3 (f・ p,ci3mli Lqk, (X・ i, p,T Lm(i,

(X∈A')  (14) ただし, Pflは積分の有限部分を表す.

ところで,前節で呈示したき裂問題において式(1) ∼ (5)を考慮して式(14)を -の<52 <00について積分を行いまとめると次式を得る.

533 (Xl , P, -芸pfroAu-3 (i" p,lql fK・ (計q2告K2 (E)

・q3 i(K2(E)一去K2(E))- q4擁(E)-fK3 (E))

・ q5割K4 (計fK4 (E))]df,

佃<α)  (15) ここに, r-Jx.lf.( , K-CL/C,であり, K"(・)はn次の変形ベッセル関数で ある.ただし, ql =2K4-4K2+4 q2 =(K2 -2)2 q, =8K4-16K2 +12 q。 =8K4 -28K2 +24 q, =(K2 12)2 (16) である.

(16)

2.1.3 き裂内流体の運動の解析 き裂面の振動の振幅はき裂開口幅に比べて十分小さいものとし,振動により 生じる流体の密度変化は流体あ密度と比べて十分小さいものとする.このとき, き裂内流体の運動方程式および連続の方程式は次式で表せる.

誓・諾一芸箸-o

土壁.坐.坐=。

bat ayI ax:3

(17) (18) ここにu.flまき裂内におけるxl軸方向の流速, u,/Gまち軸方向の流速, pfは流体 の餐度, qは流体の粘性, bは流体の体積弾性率である.き裂面におけるX,軸 方向の流速u,fGもき裂面の振動によるものと,き裂から岩体に流体が出入りす るために生じるものとがあり,次式で表せる. u3/」喜一。 - u3SL寸言等   (.9, ここで, u,Sは岩体中におけるX,軸方向の流速を表す.岩体中において流体の流 れはX,軸方向のみの一次元流れであるのもとすると,岩体中において成り立つ 流体の透水の式(Darcy則),ならびに連続の式は以下のように表せる. 〟;= k。 Eps q ax:3 i(mop/ )・孟bfu3S)- o (2 0) (21) ここに, m.,k。はそれぞれ岩体の空隙率および透水率であり, Psは岩体中にお ける流体圧を表す.また,き裂先端における境界条件として岩体の変位速度と 流体の平均速度が等しいという条件を与える. 去]:a//22 ulfLl→0_。血3璃芯・o 8 (22)

(17)

ラプラス像空間におけるき裂内の流体圧Pが満足すべき微分方程式の誘導を 行う.式(17),(18)をそれぞれラプラス変換すると次式が得られる.

壁一旦里uT -上里

ar32 q qarl

里戸.壁小生=。

b art ar, (23) (24) _.式(24)において,両辺をき裂中央からき裂壁面まで積分し,き裂中央においてX, 軸方向の流速材が零であることを考慮すると,次式が得られる. 旦Epl.a/晋血3 ・軋,一言 2b d=0 式(19)をラプラス変換を行い式(25)に代入すると次式が得られる. 苦言pl:/2苦dr3 ・u軋,.i.0 -一号Au-3 (25) (26) ここで,式(26)中の項こついて求める.式(20),(21)をラプラス変換し,岩体中に おける流体圧が満足すべき微分方程式を求めると次式のように表せる. 晋一驚p7 -0   (27, 式(27)を解くにあたり,き裂面における境界条件として,き裂面上でき裂内流 体圧Pと岩体中の流体圧Psとが等しく,き裂から離れた無限遠方において岩体

中の流体圧が零であるものと葱禦) (28,

この境界条件を与えて得られた岩体中における流体圧と,ラプラス変換した式 (20)を用いると,き裂面におけるX,軸方向の流速u,Sは次式で表せる. u軋,→言.0 - 出廷p-申 (29)

(18)

次に,式(23)に対して,き裂壁面においてxl軸方向の流速u.fが零であるという 境界条件を与える・これよりxl軸方向の流速u.fGま次式で表せる.

u-lf -妄言(畿-1)

ただし, n-2 =凸里 q 以上で得られた式(29),(30)を式(26)に代入すると次式が得られる.

轟ad(;) -綜・(f言・

qb 一an 一』 里2 ニ lA. ヽ     .ノ (30) (31) (32) 式(32)を解くために必要なき裂先端における境界条件として,式(22)をラプラス 変換し,式(30)を代入すると次式が得られる. 若:_:; -qn-2 p 孟tad(写) - 1 u-I l宗=0. 式(33)を用いることにより式(32)を解析的に解くことができる. 10 (33)

(19)

2.1.4 き裂面接触剛性 第2.1.1節において,き裂上下面が接触することにより生じる剛性をバネ剛 性に置き換えてモデル化すaJことを述べた.本節では無次元化されたバネ剛性 Jについて考察を行う.き裂面が図2-4(a)のように接しており,そこに垂直応 力が作用しているというモデルを考える・き裂は突起の接触によりl,だけもと もと開口しており,この状態でき裂上下面が垂直に変位するものとする.この とき,き裂面積をA。,き裂の真実接触面積をA',そごに実際に作用している 垂直応力をq'とすると aA. = q'A'      (34) と表せる・今,図2-4(b)に示す幅l2,高さl,の長方形微小要素の変形について 考える. X,軸方向の垂直ひずみをCとすると, q'=EC       (35) である・ここでEGま弾性体の縦弾性係数である・また, C=Al,/I,と表せるので 式(34),(35)より q=AlE生 A. l3 -方,単位面積当たりのバネ剛性kを用いると, q=kAl3 (36) (37) と表せる・従って,無次元化されたバネ剛性∂を坐と定義すると∂は式(36),(37) 〟 より次式のように表せる. ∂ ≡ 41互9_ AoILl3 ここで, E/Ftはポアソン比Vを用いて次式のように表せる.

f-2(I.V)

〝 ll (38) (3 9)

(20)

また初期開口量),は,一定の内圧を受ける二次元き裂の変形を考慮して,き裂 面上位置∬1の関数として次式のように表す. '(, -d 1-(rl/a)2 式(39),(40)より式(38)は次式のように表せる. 6(xl)- 2(1 ・y)告

d仰=扇

a 6. 昌こで∂。はき裂中央における6の値であり次式のように表せる. 60 - 2(1・V)苦言 また,式(42)を次式のように表す.

60 -=6:

このときeiGま,次式のように表せる. 6; -2(.・V)告 (40) (41) (42) (43 ) (44) 式(44)から6:はa/dによらずA'/A。のみによって決まる量であり,き裂面の接触 状態だけを表すことがわかる・よって,以下∂;をき裂面接触剛性と呼ぶことに する. 12

(21)

2.1.5 数値計算方法

き裂面における境界条件は次式のように表せる.

U,,LJd -kay,-P・U,', , qxtI<a)

ここで次の無次元量を導入する.

X-i, S-貫,穐S)-生生地

α'  C∴r、 ''ーノ   α2 (45) (46) 式(45)を無次元化した式に,式(15)と第2.1.3節に示すように得られる流体圧を 無次元化し代入することにより場の方程式が得られる.この場の方程式は声に 関する特異積分方程式であり,厳密解を得るのは困難であるので数値的に解を 求めなければならない.そこで,声をき裂先端における挙動を考慮して次式の ように近似する. Qlx,S) - Ji7皇Ak(sh(X) k=I (47) ここで, Akは未知係数である.上式を場の方程式に代入するとA.に関する連 立一次方程式が求まる・この連立一次方程式の係数行列の行列式をdb)と表す. ラプラス像空間において得られたき裂面における変位ギャップ声を逆ラプラス 変換すると形式的に次式のように表せる. Q(X, T) -皇Ji7iRe.bk (ajlap h (X)  (48) )'=l k=t ここでa,は行列式A(S)-0の根, B.は根aJ・で決まる定数,丁は無次元時間 (T=CTt/a)である・この式から行列式の根a,・の虚部は無次元固有角振動数 を表し・美都はその振動の減衰の強さを表すことがわかる・以後,行列式の根αノ の虚部をβノと表す・すなわち, a- I-S-若Imp 13 (49)

(22)

2.2 地下き裂の評価

2.2.1地下き裂評価の概念

本研究では,実験フィー/レドにおいて計測された波に対してスペクトル解析 した結果から読みとれるピークの周波数が複数存在している場合,それらが地 下き裂が持つ固有周波数であるものと解釈し,その固有周波数に着目して地下 き裂の評価を行う.本研究で用いた二次元き裂モデルにおいて,表2-1に示す ようにノ次振動モードの無次元固有角振動数βノを求める`と次式で表すような性 質がある. AQJ・≦AQj.. (j>2) Q3/Q2 >C, ただし,

AQ, = QJ.I -a,      (52)

また式(51)のCrは岩体の種類によって変化する値であり,本研究ではCr =1.9と した.仮に,実フィールドで計測された波に式(50),(51)が成り立つような固有周 波数が存在した場合,本研究で提案した二次元き裂モデルで示すメカニズムで き裂が振動している可能性が高い.逆に,そのような固有周波数が存在しない 場合には,本研究で対象とされていないメカニズムでき裂が振動しているもの と考えられる. 実フィールドで計測された波に式(50)が成り立つようなピーク周波数が存在 したものとする.計測された波から得られた複数のピーク周波数のうち,最低 のピーク周波数が何次の振動モードか推定する必要がある.実フィールドで計 測された波の式(50)が成り立っような固有周波数をfq・ ( jは振動モードの次数 を表す)とし,最低の固有周波数の振動モードをJ次振動モードとする.また 式(52)と同様にAfqを定義する・ Afqが振動モードの次数が増えてもほぼ一定の 場合には最低の固有周波数の振動モードは次式で得られる. 14

(23)

J-lk]・1

(53) ここに, 【X)はGaussの記号で,引数Xを超えない最大の整数を表す.ここで得 られた振動モードの次数Jを用いて,次式から2次振動モードの固有周波数fe2 を推定する. f.2 =fd -(J-2)・Afd      (54) こうして得られたf,2と同様にして推定される3次振動モードの固有周波数fe, との比が式(51)を満たすものであるとき,本研究で用いた二次元き裂モデルか ら得られる2次と3次振動モードの無次元固有角振動数と同様の関係となって いることがいえる.それ以外の場合には,本研究で用いた二次元き裂モデルの 適用は不可能であると考えられる・また, Afq.が振動モードの次数が増えるに つれて大きくなる場合には,外挿の作業を式(51)を満たすまで行い,振動モー ドを推定する・こうして得られたfq.と計算により得られる9,.を用いると,き 裂半長句が次式のように推定できる・ aq・ -妄箸    (55, 実験フィールドにおいて得られた固有周波数の振動モードが推定できれば, 本研究で用いた二次元き裂モデルにおいて得られる無次元固有角振動数と比較 検討することにより,き裂の評価を行うことができる.二次元き裂モデルでは, 実験フィールドにおけるP波とS波の位相速度,き裂付近の岩体の密度,空隙 率と透水率,さらに,き裂内流体の密度と粘性係数が既知であるものとすると, 適当なき裂開口幅4とき裂半長acを与えることにより無次元固有角振動数が 計算によって得られる.本研究では,実験フィールドで得られたデータと二次 元き裂モデルを用いて解析した結果とを比較するために,次式で示すような評 価関数E,を導入する. 15

(24)

E, -Wf ・賠-i)2 ・wc・f(1-%)2

(56) ここに, 〃は計測された波に含まれる最大の固有周波数の次数を表す.また, W/,Wcは重みを表す・上式の第1項は計算で得られる無次元固有角振動数の比 と計測された波に含まれる固有周波数の比の比較の部分であり,第2項は計算 に用いたき裂半長と推定されたき裂半長の比較の部分である.この評価関数E, を最小にするようなき裂開口幅とき裂半長が得られれば,実験フィールドに存 在する地下き裂のき裂開口幅とき裂半長を評価することができる.そこで,揺 触剛性6;を適当に仮定し,評価関数E,を最小にするようなき裂開口幅とき裂半 長を決定する・この作業を,接触剛性∂;を変化させて行うことにより,各接触 剛性即こおける評価関数E,の最小値が得られる・その中で評価関数E,の値が 最も小さい場合の接触剛性榊ミ,実フィールドにおける地下き裂の接触剛性6; の値であり,その接触剛性∂;を用いた場合に得られたき裂開口幅とき裂半長は 実フィールドにおけるそれぞれの値であると評価することができる. このとき,重み係数W/,wcについては次のように与える.式(56)は第二項の 値が大きくなる傾向があるため,評価関数E,は第二項が支配的となる.従って, 第-項と第二項の値を考慮することによって重みを与える.その一例として, 肘折のイベントMAOO27 (詳細は後述)ではWf -500・0, Wc=1・0とした・ 16

(25)

2.2.2 地下き裂評価の手順 き裂の評価の対象となる未知量は接触剛性,き裂開口幅,き裂半長の3つで ある.評価の手順を以下の/ように大きく3つに分ける. (1)実験で得られた時間波形に対する信号処理 (2)二次元き裂モデルを用いた数値解析 (3)得られた値が最適なものであるかどうかの判断 まず手順(1)では,実験フィールドで得られた波の信号処理と振動モードの決定 を行う.具体的には,実験フィールドで計測されたデータに対して周波数解析 を行い,地下き裂の有する固有周波数を選び出す.また前節で述べた方法を用 いて,実験で得られた固有周波数が何次の振動モードであるか判断する.さら に, 2次と3次の振動モードでの周波数を推定し,二次元き裂モデルが適用で きるかどうか確認する.次に手順(2)では,計算に必要な物性値を与え,二次元 き裂モデルを用いて解析することで無次元固有角振動数を求める.その際き裂 開口幅とき裂半長の値が必要であるので,初期値として任意の値を設定し計算 に用いる・手順(3)では手順(2)で計算に用いたき裂開口幅とき裂半長の値が適当 なものであったかどうかを,式(56)を用いて判断する.これらが適当な値では ないと判断される場合には,き裂開口幅とき裂半長の値を新たに設定して再計 算を行う・手順(2)と手順(3)の作業を繰り返すことにより, E,を最小にするよ うなき裂開口幅とき裂半長の値が得られる.図2-5に,以上に示した作業のフ ローチャートを示す. 17

(26)

表2-1無次元固有角振動数の計算例 (aJ4- 1 03 ,d= 1 0mm) Mode __メ 田」モ 凵ン;=0.01 Dj F「 a,JQj_. ツ AQJ. 「鬻 ツ褫 2 貶8V - 辻 0.320 辻 - ■3 ヲ 0.16S 紊 0.640 # 2.000 4 經 0.211 縱32 0.980 C 1.53 5 縱CR 0:245 紊 1.338 S 1.365 6 0.274 c 1,713 sR 1.281 7 0.300 釘 2.104 1.228 8 緜C" 0.322 CB 2.511 紊 b 1.193 9 白纉コ 0.343 2.931 紊# 1.167 Qj:無次元固有角振動数 AQj = a,A -Qjll 18

(27)

Xユ d 劔劔+丁 ∬2 -α :トヤ;/ Dツ や誉笹 ノー ズ1 ;..≡::.沖.:=-_:.

Tcrac{pfluld/ 劔劔

図2-1内部を流体で満たされた二次元き裂と座標系 19

(28)

図2-2 部分接触しているき裂面

(29)

図2-3 き裂面の接触による剛性のモデル化

(30)

lJ 二二

X2

(a)き裂面接触モデル

ii

Tq*

(b)微小要素の変形 図2-4 き裂面接触モデル 22

(31)

図2-5 評価弔境のフローチャート

(32)

第3華 美フィールド-の適用

3.1肘折フィールド-の適用 3.1.1肘折高温岩体プロジェクト 肘折地区における高温岩体プロジェクトは,通産省工業技術院サンシャイン 計画推進本部により1984年から開始され, 1995年からは新エネルギー産業技 術開発機構(NEDO)の事業として推進されている(手塚, 1997).同地区には 石油資源開発株式会社によって掘削された地熱調査井SKG-1井, SKG-2井が使 用可能な状態で存在していたこと,そして坑井の掘削記録によれば深度1450m 以深に低透水性の花樹閃緑岩が分布していること,また深度1800m付近は 253℃の高温であることによって,同地区が高温岩体発電システムの要素技術開 発に適したフィールドであると判断された.同プロジェクトは,大きく2つの 段階に分けることができる.ひとつは深度1800m付近を対象とした浅部貯留層 の開発,もうひとつは深度2200m付近を対象とした深部貯留層の開発である. 浅部貯留層の開発では,まず既存坑井SKG-2井を注水井とした水圧破砕 (1986に実施)によって深度1800m付近に人工貯留層を造成した.その後, HDR-1井の栃削(19$7に実施),貯留層拡大注水加圧試験と短期注水循環試験 (1988に実施), HDR-2井の据削(1989に実施), HDR-3井の掘削(1990に実 施)等を通じ,徐々に浅部貯留層抽熱循環システムを開発していった. 1991年 に実施された90日間の循環試験では, 150 - 180℃の熱水・蒸気を安定して生 産することに成功し,安定生産時の回収率は約S0%に達した.こうした抽熱循 環システムの開発を通して,人工貯留層の造成,導通促進,坑井内検層,貯留 層内流動評価,そしてAE計測などの要素技術の開発が進められた.図3_1は 坑井配置の概要を示したものである.ただし, ST-1 -ST-10はAE計測のための 地表観測点である. 24

(33)

浅部貯留層開発によって培われた要素技術と蓄積されたデータをもとに, 1992年から深度2200m付近を対象とした,より規模の大きい深部貯留層の開 発が始められた.同プロジ呈クトでは,長期間にわたる熱抽出挙動を把握する ことを目的とした長期循環抽熱実験が計画されており,深部貯留層には,この 実験に必要十分な規模と熱抽出能力が求められている.注入井と生産井との導 通点間距離は,浅部貯留層の2 - 3倍にあたる100m以上とされている. 1992 年にはHDR・1井の深度2150 - 2200mを対象とした20'00ton規模の水圧破砕を 実施して人工貯留層を造成し,これに向けて1993年と1994年に,それぞれ HDR-3井(2303m), HDR-2a井(2303m)を増掘した. 1995年に実施された HDR-1井, HDR-2a井, mR-3井の3坑井による予備循環試験では, 180℃以 上の熱水・蒸気の生産に成功し,回収率は浅部貯留層の循環試験に比べ下回る ものの,温度・圧力が大きいため熱出力としては上回る結果となった.また, 同試験中には浅部貯留層からも熱水・蒸気の生産が確認され,深部貯留層と浅 部貯留層の干渉問題が新たな課題として浮上した.今後,肘折高温岩体プロジ ェクトでは,予備循環試験の結果をもとに地上施設の整備を行った後, 1 -2年 間の長期循環試験を行い,長期間にわたる熱抽出挙動を評価し,高温岩体発電 実用化に向けた新たな段階に移行していく計画になっている. なお本研究で用いたデータは,水圧破砕による深部貯留層造成(1992に実施) の際に計測されたもので,計測位置はSKG-1井の深度795mである(手塚, 1997). 25

(34)

3.1.2 き裂の評価 肘折フィールドにおいて計測された信号に対して,前章で示した手法を用い てき裂の評価を行う.本研究で用いたデータは水圧破砕による深部貯留層造成 (1992に実施)の際に計測されたものである.このとき検出された波に対して, FFT (高速フーリエ変換)により処理を行い(図3-2,3-4,3-6,3-8),これより得 られた固有周波数に対し,振動モードの推定を行った(図3-3, 3-5, 3-7, 3-9). 軍た2次と3次の振動モードでの周波数を推定し,二次元き裂モデルが適用で きるかどうか確認し,二次元き裂モデルが適用できると判断したイベントにつ いてき裂の評価を行った.なお,二次元き裂モデルが適用できると判断したイ ベントはNEDOから提供を受けた(手塚, 1998) 18のイベントのうち3つで

あり,それらを, MAOO27, MAOO68, MAO305と呼ぶことにする.また,式(50)

は満たしたものの式(51)を満たさなかったイベントをMAO67Sと呼ぶことにす る.数値計算を行うために用いた値については, P波およびS波の位相速度を それぞれ5600m/S, 3280m/S,流体に対する岩体の密度比を2.5,岩体の透水率 を1.0×10ー19m2とした.また,岩体の空隙率を1%,流体の体積弾性率に対する 岩体のせん断弾性係数の比を12.1とし,き裂内部の流体の粘性をId'とした(辛 煤, 1997). 各イベントにおける評価関数E,の計算結果を図3-10∼3-12に示す.これによ って得られた接触剛性,き裂半長,き裂開口幅の値をそれぞれイベントごとに 表3-1に示す.

評価可能であった3つのイベント(MAOO27, MAOO68, MAO305)の振動の メカニズムは,本研究で示した二次元き裂モデルの振動のメカニズムと同じで あると考えられる.また,式(50),(51)の内ひとつの条件式(50)を満たしたイベン ト(MAO678)の振動のメカニズムは,本研究で示した二次元き裂モデルの振 動のメカニズムに類似していると考えられる.その他のイベントについては, 本研究で示した二次元き裂モデルの振動のメカニズムとは異なっているものと 26

(35)

考えられる.

(36)

3.2 雄勝フィールド-の適用 3.2.1雄勝高温岩体プロジェクト 雄勝地区における高温岩体プロジェクトは,電力中央研究所により1989年に 開始されたものである(海江田ら,1994;海江田・佐々木, 1998).同地区には 深度約300m以深に花樹閃緑岩が分布しており,また深度1000m付近は228℃ の高温であるため,同地区が高温岩体発電システムの要素技術開発に適したフ ィールドであると判断された.同プロジェクトでは主と`して,深度700m付近, 1000m付近における水圧破砕および循環試験を行っている. 雄勝フィールドにおいては,まず深度1000m付近を対象とした水圧破砕 (1991に実施)によって人工貯留層を造成し,さらに,多段水圧破砕法により 深度700m付近を対象とした水圧破砕を行った(1992に実施).その後22日間 の循環試験(1993に実施)が行われたが,回収率は約3%であった.そのため 坑井間の水の導通改善のため生産井の水圧破砕を行った(1994に実施).その 後の151日間の循環試験(1994に実施)では回収率が約10%となり,前回の循 環試験時より改善された.そして,注入井と生産井の水圧破砕(1995に実施) を経て, 1995年に行われた30日間の循環試験では,安定生産時の回収率は約 24%となり,瞬間的には30%に達した. 本研究では, 1997年の透水試験後および注水試験の際に計測されたデータを 用いた(海江田, 1997).なお,計測は坑井AE-1-AE-ll (AE_トAE_8の深度 は約50m, AE-9の深度は950m, AE-10,AE-11の深度は約30m)で行われた. 本研究で解析対象としたデータはAE-1およびAE-5で観測されたものである. 参考のために,これらの観測井の配置を図3_13に示す. 28

(37)

3.2.2 き裂の評価 雄勝フィールドにおいて計測された信号に対して,前章で示した手法を用い てき裂の評価を行う.本研究で用いたデータは透水試験後および注水試験(1997 に実施)の際に計測されたものである.このとき検出された波に対して, FFT (高速フーリエ変換)により処理を行い(図3-14,3-16),これより得られた固 有周波数に対し,振動モードの推定を行った(図3-15,3-17).また2次と3次 の振動モードでの周波数を推定し,二次元き裂モデルが適用できるかどうか確 認し,二次元き裂モデルが適用できると判断したイベントについてき裂の評価 を行った.なお,二次元き裂モデルが適用できると判断したイベントを, DO99EO2, DIO2EIOと呼ぶことにする.数値計算を行うために用いた値につい ては, P波およびS波の位相速度をそれぞれ4440m/S, 2270m/S,流体に対する 岩体の密度比を2.673,岩体の透水率を8.0×10 16m2とした.また,岩体の空隙 率を1.75%,流体の体積弾性率に対する岩体のせん断弾性係数の比を6.198と し,き裂内部の流体の粘性をlcpとした(海江田ら,1994;海江田・佐々木,1998). 各イベントにおける評価関数E,の計算結果を図3-18, 3-19に示す.これによ って得られた接触剛性,き裂半長,き裂開口幅の値をそれぞれイベントごとに 表3-2に示す. 29

(38)

表3-1肘折フィールドにおける評価結果

(括弧内の値はき裂面の真実接触面積比率を表す)

イベント ゥ xリI ウb穩 き裂半長a(m) ケ H、ィマケYヨGG'&メ

MAOO27 BR 5.1-5.9 緜Bモ 縱B h4AOO68 7.5-ll.2 b紕モCB絣 h4AO305. R R 7.6-8.1 澱繧モr 表3-2 雄勝フィールドにおける評価結果 (括弧内の値はき裂面の真実接触面積比率を表す) イベント ゥ xリI カ き裂半長α(m) ケ H、ィマケYヨGFヨメ DO99EO2 R 坦 26.0-27.8 湯絣ヨニツ紕 D102E10 R 3.9-4.3 r縒モ# 纈 30

(39)

I:25,000 月寸 折 ●       l●●       ■●l●

図3-1肘折地区における坑井と地表観測点の位置図

(40)

MAOO27 0     50    100   150 Frequency (Hz) 図3-2 イベントMAOO27におけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応 するピークとして選択した) MAOO27 0  0  0  0  0 CO′042 (zH)LDtDTtbaJh

□ Peak frequemies observed + Estimated LTrcquerLCies 2 4    6    8   10 Mode number 図3-3 イベントMAOO27における振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fe2 =1.96である. 32

(41)

MAOO6S 0  00  ′0  4  2  0 -tqDads 0     50    100   1 50    200 Frequency(Hz) 図3・4 イベントMAOO68におけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応す るピークとして選択した) MAOO68 甲 0    0    0 _0  5 (NH)^Duanb巴』 E} 十

D Peak &equencies observed

+ Estimated Beqtl即応ies 2    4    6    8   10 Mode number 図3-5 イベントMAOO68における振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fez =2.24である・ 33

(42)

25 20

暑11:

P■ ∽ 5 0 h4AO3 05 0     50    1 00   1 50    200 Frequency(H2:) 図3・6 イベントMAO305におけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応す るピークとして選択した) MAO305 三三 0 0 0 0 0 0 0 00 ′b 4 2 1 (zH)S9!DuanbaJ』 缶 +

□ Peak frequencies observed + Estimated frequencies 2 4     6     8    10 Mode number 図3-7 イベントMAO305における振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fez =2.04である. 34

(43)

MAO678 0    50 100 Frequency(Hz) 150   200 図3-8 イベントMAO678におけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応す るピークとして選択した) MAO678 (zH)btJanb巴d

a Peak frequencies observed

+ Estimatedfrequencies 4     6     8    10 Mode number 図3-9 イベントMAO678における振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fez -1.72である. 35

(44)

4  5  6  7  8  9 10 d x lOA(m) E r ■■2.380 -- 2.720 朝野2.040 -- 2.380 1.700 -- 2.040 出幹1.360 -- 1.700

#1.020 -- 1.360

凝際0.6800 -- 1.020

-0.3400 -- 0.6800

■}0 -- 0.3400 h4AOO27 図3-10 イベントMAOO27における評価関数E,の分布 (接触剛性6;≡ 0・001, Wf=500・0, Wc-Ilo) 36

(45)

00 7 6 5 4 3 2 1 Ptxf?P 鮎よこ.l S. ゥUテゥ)」」リ耳爾粭ツ簫耡粐粐ハ 粐粤ィ ぴ粐粤「メ闔ゥ)「 uナ:B 闘+ i) ∼:摂 I 唸ネク*謄、」ウ「モ、討モ」」「 ;:ヨ -- ll■ 2 4dxlO・26(m) 8 10 E r

-3.351 -- 3.830

42.873 - 3.351

2.394 -- 2.873 ♯1.915 -- 2.394 魚群1.436 -- 1.915

&0.9575 -- i.436

■■0.4788 -- 0.9575

-0 -- 0.4788

MAOO6 8 図3・11イベントMAOO68における評価関数E,の分布 (接触剛性6;-0・0, Wf司・0, Wc=1・0) 37

(46)

4 3 2 1 0 9 8 7 ′0 1  1  1  1  1 PtxFyV 4 6 8 10 12 14 16 18 20 d x 10-3(m) E r {■1.050 -- 1.200

ho.9000 -- 1.050

0.7500 -- 0.9000 月計0.6000 -- 0.7500

#0.4500 -- 0.6000

腿0.3000 -- 0.4500 {■0.1500 -- 0.3000 ■『0 -- 0.1500 h4AO3 05 図3-12 イベントMAO305における評価関数E,の分布 (接触剛性6;=0・005, W/=3210, Wc=1・0) 38

(47)

Il H:u I ;.1㌧・:..・諒、環

図3_13 雄勝地区における坑井の位置図

(48)

DO99EO2 0. 0004

a

(I 邑o・0002 め 0.0000 (NH)S9!DttOnb巴h 0     50    100   150    200 Frcquency(Hz) 図3-14 イベントDO99E02におけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応す るピークとして選択した) DO99EO2 0

ロ Peak frequencies observed

+ Estimatedfrequencies 2     4     6     8    10 Mode number 図3-15 イベントDO99E02における振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fe2 =2.15である・ 40

(49)

1 0・2 1 0・3

a IOJ

10・5 I 0・6 D102EIO 0     50    100   150    200 Frequen町(Ⅰ血) 図3・16 イベントDIO2EIOにおけるスペクトル (丸印をつけたものを本研究に対応す るピークとして選択した) DIO2EIO 0   0   0 0   0   0 321 (NH)LDtIOTtbaJ』 0 田 ロ Peak触quencies observed + Estimated frequencies 2    4    6    $    10 Mode number 図3-17 イベントDIO2EIOにおける振動モードと周波数との関係. 式(51)の左辺に対応する周波数比は, fe,/fez =2.15である・ 41

(50)

0.5  1.0 d x 10-2(m) 1.5   2.0 E r I 2.450 -- 2.800 書革2.loo -- 2.450 1.750 -- 2.100

&1.400 -- I.750

hl.050 -I I.400

聯0.7000 -- 1.050 ■0.3500 -- 0.7000

-0 -- 0.3500

DO99EO2 図3-18 イベントDO99E02における評価関数E,の分布 (接触剛性6; - 0・005, W/=250・0, Wc-1・0) 42

(51)

i5 .0 ,5 0 5 0 I 、、 ・.※. 剪 撃..-===÷一 那;深淵 llll一l 劔 S 5 10 15 20 25 30 35 40 d x 10-3(m) E r ■}2.538 -- 2.900 撫2.175 -- 2.538 1.813 -- 2.175 甘1.450 -- 1.813 牡1.087 -- 1.450 毒据瞥0.7250 -- 1.087

-0.3625 -- 0.7250

1{■0 -- 0.3625 DIO2EIO 図3-19 イベントD102EIOにおける評価関数E,の分布 (接触剛性6; - 0・005, Wf=25.0, Wc=1.0) 43

(52)

第4章 結言

本研究は地下熱交換システムを構成する地下き裂の評価を行うために,二次 元き裂モデルを用いた解析結果と,肘折ならびに雄勝フィールドで計測された 微小地震の振動特性との比較・検討を行ったものである. 得られた知見を要約すると以下の通りである. (1)地下き裂の評価を行うため,き裂を含む岩体を弾性体として考え,地下き 裂上下面が接触していることにより生じる剛性,き裂を含む岩体の持つ透水性 および流体の粘性を考慮した二次元き裂モデルを用いた地下き裂評価法を提案 した. (2)本研究で提案した地下き裂評価法を肘折フィールドに適用した.その結果, 3つのイベントについて評価が可能であった.結果の一例として,接触剛性が 0.001,き裂半長とき裂開口幅がそれぞれ5.1 -5.9m, 0.64-0.74mmという結果 が得られた. (3)本研究で提案した地下き裂評価法を雄勝フィールドに適用した.その結果, 2つのイベントについて評価が可能であった.結果の一例として,接触剛性が 0.005,き裂半長とき裂開口幅がそれぞれ26.0-27.8m, 9.5 - ll.4mmという結 果が得られた. (4)本研究では二次元き裂モデルを用いて解析を行ったが,実フィールドにお けるデータの多くは二次元き裂モデルが適用できないものであった.その主た る理由として,振動のメカニズムの違いが考えられる. 44

(53)

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