校長が児童生徒に話す行為も教育活動の一部である。本 稿では、校長講話を中心に、児童生徒に対して行った話の 記録をまとめ、教育活動の一部として特に国語教育の観点 から若干の考察を行う。 記録の対象としたのは、二〇一一年四月から二〇一四年 三月までの三年間、岡山大学教育学部附属中学校における 講 話 の 類 と 、 二 〇 一 六 年 四 月 か ら 二 〇 一 九 年 三 月 ま で の 三 年 間 、岡 山 大 学 教 育 学 部 附 属 小 学 校 に お け る 講 話 の 類 で あ る 。 一.附属中学校における講話 まず、附属中学校における講話の類は、次のとおりであ る。原則、月に一回木曜日に講話の機会が設けられていた。 二〇一一年度 1.出会いを大切に(五月) 2.生徒総会での挨拶(六月) 3.読む力― 「大きなかぶ」 (六月) 4.かなの話―よく知っているはずですが…― (九月) 5.新井白石の米びつの話(十月) 6 . 国 が 違 え ば 、 学 ぶ べ き こ と も 違 う ? 中 国 の 教 育 課 程と教科書(十一月) 7.本の紹介― 『ニッポンには対話がない』 (十二月) 8.校長と私(一月) 9. 「情けは人のためならず」 ・「一期一会」 (二月) 二〇一二年度 1.この詩をどう読むか(五月) 2.大人になるための学校(六月生徒総会) 3. 「自律」を考える(七月夏休み前) 4.三つのボランティアとやくみつるの『解りそうで解 らない間違えやすい漢字問題』より(九月) 5.一生をかけて創り残すもの(一〇月前期修了式) 6. オリンピック女子バレーボールチームの話 (十二月) 7.中学生男子の特徴をあなたならどう表現しますか? (見方の詩教育) (一月) 8.わかってもらうと言うこと(二月)
附属小・中学校における校長講話の記録
田
中
智
生
観察する目、自分の内面を見る目、将来を見る目、これま での過去を見る目、そして、それらを俯瞰する目の五つで ある。五つの目を持って、人と関わってこそ自分が存在す る。関わる人は、必ずしも心地よい関係の人ばかりではな い。だからこそ、自分が変わる可能性も開け、それを成長 と呼ぶことができるのではないだろうか。 ここには、自身の研究との関わりには言及していないが、 「多角的に、重層的に捉える」という観点も、その意味で 国語教育研究の成果の一部である。より個別的には、二〇 一一年度の「読む力― 『大きなかぶ』 」、 「かなの話―よく知 っているはずですが…―」 、「国が違えば、学ぶべきことも 違 う ? 中 国 の 教 育 課 程 と 教 科 書 」、 「 本 の 紹 介 ―『 ニ ッ ポ ン に は 対 話 が な い 』」 、「 『 情 け は 人 の た め な ら ず 』・ 『 一 期 一 会』 」、二〇一二年度の「この詩をどう読むか」 、「中学生男 子 の 特 徴 を あ な た な ら ど う 表 現 し ま す か ?( 見 方 の 詩 教 育) 」、 二〇一三年度の 「ちいさい おおきい」 、「 『正しい』 文字書いていますか?」 、「共に生きる社会の一員」などが、 国語教育の内容である。 最初の年にした「読む力― 『大きなかぶ』 」は、次のよう な内容だった。 今日は「校長講話」という形の2回目ですので、私の専 門の「国語教育」の話をしたいと思います。 二〇一三年度 1.挨拶(五月) 2. 「ちいさい おおきい」 (六月) 3.自分を大切に―学生時代のモット― (七月) 4. 「正しい」文字書いていますか? (九月) 5. 「今日から新しい週が始まります」 (一〇月) 6.共に生きる社会の一員(一二月) 7.ゲーテの 「 銀杏の葉 」 (一月) 8. 「日本国憲法」 (二月) 講話集としてまとめたときには、次のように書いている。 校長になることが決まって、生徒に何を伝えたいのか、 伝えるものを持ち合わせているのかを自分に問うた。校長 講話が、大学の教員としての専門の内容を伝える場として 位置づけられていることも考えて、次の二つを柱にしよう とした。 〇物事を、多角的に、重層的に捉えることができるよう にすること。 〇大人になるための学校として、社会の一員として考え てほしい話題を提供すること。 ここに収めたもの以外にも、ちょっとした場でも一貫し てこの趣旨を通したつもりでいる。ここには収めていない が 、「 五 つ の 目 」 と い う 話 を し た こ と が あ る 。 周 り を よ く
に小さくて、ひとつまみで十粒くらいになってしまう。そ のことを知っていると、かぶの種は「まく」の方が事実に 即しているということがわかります。大根は、一粒ずつ穴 の中に植えていくので、植えましたになります。にもかか わらず、かぶの種を「植えました」のほうがいいと思うの です。 少し思い出していただきたいのですが、このお話ロシア 民話でした。そして、登場人物を確認すると、おじいさん、 おばあさん、孫娘、犬、猫、ネズミとなっています。難し く言うと、物語を読むときの、基本、ストーリー駆動の発 動です。ストーリー駆動の基本は、登場人物、事件、事件 の前後での変化です。そのうちの登場人物に注目すると、 アレッと気づきますか? お父さんもお母さんも出てこな いのです。このお話に描かれているロシアの時代、特定は されていませんが、おそらく、主たる働き手は、国の農園 などにかり出されていて、残されたお年寄りと子供で、生 計を担っていた時代でしょう。当然生活も裕福ではありま せん。そう考えると、おじいさんが、ピンセットでつまむ のがやっとなくらい小さなかぶの種も、一粒ずつ丁寧に植 える。当然大事に大事に育てる。だって、自分たちの命の 糧ですから。収穫の時に大変だったら、おばあさんや孫娘 だけでない、犬や猫や、ネズミだって、自分たちの命の糧 ですから、他人事でなく力を合わせる。 ・ ・ ・ 「 大 き な か ぶ 」 と い う お 話 覚 え て い ま す か ? 現 在 の 日 本の小学生は、どの教科書を使っている地域でも、小学一 年生で採用されている国語教材です。実は、どの教科書を 使っていても習う文章というのは、非常に少ないのです。 時代によって異なりはありますが、 「大きなかぶ」 以外には、 「ごんぎつね」 「大造じいさんとガン」 、そして中学で出て く る 魯 迅 の 「 故 郷 」 位 で す ね 。「 大 き な か ぶ 」 が ロ シ ア 民 話 の 翻 訳 、「 故 郷 」 が 中 国 文 学 の 翻 訳 で す か ら 、 誰 も が 知 っているという意味での国民的国語教材の半分以上が外国 文学だという皮肉な状況です。 さ て 、「 大 き な か ぶ 」 で す が 、 お 手 元 に 本 文 を お 配 り し ました。翻訳作品ですから、訳者によって違いがあります。 その一つ、冒頭の「おじいさんが種をまきました」のとこ ろ 、 一 方 は 、「 種 を 植 え ま し た 」 に な っ て い ま す 。 お 話 は ご存じだと思いますので、みなさんが持っているお話のイ メージから考えて、どちらの訳の方がいいと思いますか? 小学校一年生の教材としては、どちらがいいかを決める のは難しいのですが、私は、作品としては「種を植えまし た」の方を支持しています。ところで、かぶの種をご存じ ですか? これを知らないとどちらがいいか判断できない のですが、とっても小さいんですね。よく似ている大根や 小さい二十日大根(ラディッシュ)の種は、一粒ずつ指で 摘める大きさです。しかし、かぶの種は、それよりはるか
翌年には、 「この詩をどう読むか」 として石垣りんの 「挨 拶」を取り上げた。次のようである。 今日は、昨年六月にした小学校一年教材「大きなかぶ」 に続く、中学生の文学形象を読む力についての話です。 同じ作品でも、どういう側面に目を向けるかで読み取る ことががらりと変わる.小学校で学んできた読み方が、情 報駆動やストーリー駆動を中心とすると、中学校では、そ の上に要点駆動の反応を身につける必要があるという趣旨 の話でした。今回は、その要点駆動を使わないと読み取り が難しい特殊な作品を紹介します。石垣りんさんの 「 挨拶 」 という詩です。 (作品省略) さて、この詩、好きか嫌いかは別にして、作者のメッセ ージを受け止めることができましたか。その確認の一つと して、題名に込められた意味をキャッチできましたか? 実は私は最初できませんでした。そこで調べていくと、次 のような作者の書いた文章に出会いました。 勤め先の職員組合書記局に呼ばれ、明日は広島に原子爆 弾が投下された八月六日である。朝、皆が出勤してきて一 列に並んだ出勤簿に銘々判を捺す、その台の真上にはる壁 新聞に、原爆被災の写真を出すから、写真に添える詩を今 すぐここで書いてもらいたい。と言われ、営業時間中、一 小学校の時には、小さな力でも協力すれば大きな仕事を 成し遂げることができるというのに近い学びをしたと思い ますが、この協力は、実は、巨大な力に虐待されている民 衆の、生存をかけた抜き差しならない協力であった。そし てそれが民話という形で伝えられることによって、権力構 造が変化していっても、生存を守るための協力の大事さを 伝えていこうとした姿を読み取ることができるのではない でしょうか? 民族にとって大事な内容であるだけに、子 どものころから耳を通して喜んで聞き、体にしみこませ、 やがて、成人して、込められた意味を引き継いでいくとい う 願 い が 込 め ら れ て い る の で は な い で し ょ う か 。「 う ん と こしょ、どっこいしょ」の繰り返しや、一人ずつ増えてい く協力者の繰り返しなど、小さな子にもおもしろいと感じ させる仕掛けがされており、その仕掛けも、訳者が違うと 日本語への変換の仕方も異なるというところに、中学生と しての読みの面白さを見出すことはできないでしょうか? そういう部分への反応が、要点駆動と呼ばれているもので す。ストーリー駆動から要点駆動へ、その間をつなぐ反応 として表現駆動が欠かせないと思いますが、読みの能力の 発達、ただ難しいものを読むようになるだけではない。同 じものからも読み取ることが変わっていくところに、読む ことを勉強する意味があるというお話でした。
の意図を考えることが必要です。文学作品の受容には、テ キストによって創造された世界(意味)を読者として再構 成することがまずあって、その上で、作者がそういう世界 を読者に提示しようとした意図に対して、読者として反応 (評価)していくことで、作者と作品を通して交流してい くことができるのが中学生として獲得する読み方です。こ の詩の場合、石垣りんさんも述べているように、発表の仕 方 が 特 殊 で 、 そ れ だ け に 、『 ユ ー モ ア の 鎖 国 』 の よ う な 情 報がないと、作品世界の再構成自体が難しい。このような 場 合 に は 、『 ユ ー モ ア の 鎖 国 』 の よ う な 情 報 を 探 そ う と す ることも、読者に求められているということになります。 この後、見方の詩教育の読み方を取り上げ、山之口貘の 「 喪 の あ る 景 色 」、 香 山 美 子 の 「 ち い さ い 、 お お き い 」 を 取り上げて読み方に関する話をした。 二.附属小学校における講話 附属小学校における講話の類は、月曜の朝に行われた朝 礼と各種式の時の挨拶がそれに当たる。いずれも五分前後 の短いもので、朝礼は原則モニターを通しての放送で行わ れた。各種式の挨拶は、式の目的や心構え等について話す ことが多いので、そうではない話題のもののみを示した。 時間位で書かされたことがありました。 (詩 「 挨拶 」 ―省略) 題名は、友だちに 「 オハヨウ 」 と呼びかけるかわりの詩、 という意味で 「 挨拶 」 としました。 あれはアメリカ側から、原爆被災者の写真を発表してよ ろしい、と言われた年のことだったと思います。はじめて 目にする写真を手に、すぐ詩を書けと言う執行部の人も、 頼まれた者も、非常な衝撃を受けていて、叩かれてネをあ げるような思いで、私は求めに応じた。 (中略) 翌朝、縦の幅一メートル以上、横の壁面いっぱいの白紙 に筆で大きく書いてはり出されました。皆と一緒に勤め先 の入り口をはいった私は、高い所から自作の詩がアイサツ しているのにたまげてしまいました。何よりも、詩がこう いう発表形式で隣人に読まれる、という驚きでした。 (『ユ ーモアの鎖国』北洋社、一九七三年から) それで、ようやく納得できました。でも、ここまではス トーリー駆動の読み方です。職場の人に呼びかけるつもり で書いた詩を、一九五九年には、個人詩集『私の前にある 鍋とお釜と燃える火と』に掲載しました。そのことによっ て、読者は一九五二年八月六日の職場の同僚から、私たち を含め、時間と場所を限定しない一般読者になったわけで す。 この詩が一般読者に向けて発表されるときには、題を変 えることもできたのに、そのままの題を残した。その作者
22.朝礼(中庭) ㉑ 12月5日 陰暦 23.朝礼 ㉒ 12月 12日 霜柱 24.朝礼 ㉓ 12月 19日 おせち料理 25.三学期始業式挨拶1月 10日 正の字源 26.朝礼 ㉔ 1月 16日 漢字の成り立ち 27.朝礼 ㉕ 1月 23日 右と左 28.朝礼 ㉖ 1月 30日 文房四宝 29.朝礼(中庭) ㉗ 2月6日 目の体操 30.朝礼 ㉘ 2月 20日 きのゆりさんの詩 31.朝礼 ㉙ 3月 13日 神崎梅園 二〇一七年度 1.一学期始業式挨拶:4月6日 2.朝礼①4月 17日 しいたけの話 3.朝礼②5月1日 五七五「春・始める」優秀作品講 評 4.朝礼③5月8日 玉井宮での発見(中庭朝礼) 5.朝礼④5月 15日 特別な漢数字の読み方 6.朝礼⑤5月 22日 上を向いて歩こう 7.朝礼⑥5月 29日 どこを食べているのかな 8.朝礼⑦6月5日 (原稿不在) 9.朝礼⑧6月 19日人類の進化 10.朝礼⑨7月3日 五七五「思いやり・小さな命」優 秀作品講評 二〇一六年度 1.始業式挨拶:4月7日 桧原桜、現代の和歌 2.朝礼①4月 11日 三つの挑戦 二~六年対象 3.朝礼②4月 18日 「あ」の話 4.朝礼③4月 25日 春を感じる野菜 5.朝礼④5月9日 ゼニゴケ 6.朝礼⑤5月 16日 物事を見る目を鍛える 7.朝礼⑥5月 23日 五十音図の話 8.朝礼⑦5月 30日 狛犬の話 9.朝礼⑧6月6日(中庭実施初回) 校歌の話 10.朝礼⑨6月 20日 ジャガイモ 11.朝礼⑩6月 13日 フェニックス 12.朝礼⑪7月 11日 市村アイデア賞 13.朝礼⑬9月5日フェニックス改めソテツの話 14.朝礼(運動場)⑫9月 12日 お月様の呼び方 15.朝礼⑭ 10月3日「夏休みの思い出」川柳講評 16.朝礼⑮ 10月 17日 秋だなあ 17.朝礼⑯ 10月 31日 枕草子の秋 18. 朝 礼 ( 中 庭 ) ⑰ 11月 7 日 「 こ ん な と こ ろ ・ こ と に 見つけた秋」川柳講評 19.朝礼⑱ 11月 14日 年齢に関する熟語 20.朝礼⑲ 11月 21日 どんぐりの話 21.朝礼⑳ 11月 28日 鉛筆の持ち方
7.朝礼⑥5月 28日 難しい漢字に挑戦 8.朝礼⑦6月4日
one for all all for one
9.朝礼⑧6月 18日 大阪の地震と避難訓練 10.朝礼⑨6月 25日 大人になるってどういうこと? 11.朝礼⑩7月2日 「ちょうどいい」 12.朝礼⑪9月 10日 「エアコン利用」 13.朝礼⑫ 10月1日 春夏秋冬 14.朝礼⑬ 10月 15日 漂流プラスチックごみ 15.朝礼⑭ 10月 29日 においとかおり 16.朝礼⑮ 11月 12日 便利さは何のため 17.朝礼⑯ 11月 19日 一年生の詩 書くということ 18.朝礼⑰ 11月 26日「私の折々のことばコンテスト」 19.朝礼⑱ 12月3日 喪のある風景 山之口貘 20.朝礼⑲ 12月 10日歌詞の意味を考える 21.朝礼⑳1月8日 ゆずり葉 二年生以上を対象にした初年度の始業式では、季節に因 んだ桜の話題を取り上げ、次のようにことばで交流するこ との力を伝えようとした。 今日からそれぞれ学年が上がり、新しい教室で、新しい クラスのお友達とつくる、新しい学びの一年が始まります。 あいにくの雨ですが、校門の桜も満開です。春の訪れを知 11.朝礼⑩7月 10日 自助・共助・公助 12.二学期始業式挨:9月1日 社会の一員 13.朝礼⑪9月4日 夏休み明け五七五の募集 14.朝礼⑫ 10月2日 神無月・選挙・ヤマボウシ 15.朝礼⑬ 10月 16日 五七五優秀作品講評 16.朝礼⑭ 10月 23日 台風一過、権利と義務 17.朝礼⑮年 10月 30日 無名で届けられた本 18.朝礼(中庭)⑯ 11月6日 リンゴみたいなほっぺ 19.朝礼⑰ 11月 13日 「楽」のはなし 20.朝礼⑱ 11月 20日 こぶとりじいさんの話 21.朝礼⑲ 11月 27日 詩「ちいさい おおきい」 22.朝礼(中庭)⑳ 12月4日 agree to disagree 18頁 23.朝礼 ㉑ 12月 11日 野菜が入ったことわざ 24.朝礼 ㉒ 12月 18日 おーいお茶新俳句大賞 25.朝礼 ㉓ 1月 15日 詩「はなののののはな」 26.朝礼 ㉔ 1月 22日 塩の話 二〇一八年度 1.新入生を迎えることば:4月 12日 2.朝礼①4月 16日 山笑う 3.朝礼②4月 23日 花並べ 4.朝礼③5月7日 校歌の由来 5.朝礼④5月 14日 五七五表彰 6.朝礼⑤5月 21日 ゼニゴケⅡ
ことばで交流することの話は、 九月以降、 五七五 (俳句) の兼題による投句を呼びかけることにつながっていく。兼 題ごとに、優秀作を選び講評を加えて紹介することになっ た。京都教育大学の植山俊宏先生に、三年生の俳句の指導 に来ていただいたことも大きな力になった。強制しないこ とを旨としていたので、投句の数は一〇〇を超えることは 少なかったが、三年の任期が終わるまで続けることができ た。 続く、一年生も揃った朝礼では、一年生に関心を持って もらうことと、六年生にとっても発見のある話ということ に 留 意 し た 話 題 「『 あ 』 の 話 」 で あ っ た 。 熊 本 地 震 の お 見 舞いに続けて、次のように話した。 今日は、 「あ」 のお話をしようと思います。 (「あ」 の提示) 一年生のみなさん、これが「あ」です。 そ れ で は 問 題 で す 。「 あ 」 と い う ひ ら か な か ら 何 か 連 想 することがありますか? 三 択 に し ま す 。( 選 択 肢 提 示 ) ① 一 番 最 初 ② 安 心 、 安全、やすらか③大きな声で気持ちよさそう。 「 一番最初 」 を思い浮かべた人、常識派ですね。五十音図 の 一 番 か ら 、そ の よ う に 連 想 す る と 思 わ れ ま す が 、「 阿 吽 (「阿吽」 の提示) の呼吸」 という表現で用いられる 「阿」 は 口 を 開 い て 最 初 に 出 す 音 、「 吽 」 は 、 口 を 閉 じ て 出 す 最 らせる花は、国によって違いがありますが、日本の桜は、 外国の人から見てもうらやましがられているようです。 さて、昨日のラジオ放送で知った桧原桜のことを紹介し ます。 三二年前、福岡市の桧原という所にあった桜並木が、道 路を広げる工事のために、花が咲くのを前に、切り倒され ることになりました。一本目が切り倒されたのを見て、市 民の一人土居善胤さんが、歌を詠んで、その短冊を残った 桜の木につるしました。 「花あわれ せめてはあと二旬 (に じゅん) ついの開花を ゆるし給え」 (桜の花がかわいそ うだ、せめてあと二十日ほど 最後の花を咲かせるのを許 し て や っ て ほ し い ) そ れ に 誘 わ れ 、 多 く の 人 た ち が 桜 を 惜 し む 和 歌 を 次 々 に 枝 に つ る し ま し た 。 そ の 中 に は 、「 桜 花(はな)惜しむ 大和心の うるわしや とわに匂わん 花の心は」という進藤市長からの返事の歌もあり、工事 の計画は中止され、 桜は今年も満開に咲き誇り、 桧原桜 (ひ ば る さ く ら )と 呼 ば れ て 市 民 に 親 し ま れ て い る と い う 話 で す 。 土居さんは、自分の気持ちを表現しただけで、まさか本 当に市長が読んでくれて、桜が残されることになるとは思 っていなかったと言います。人の心を打つことばの力って すてきだなと思い紹介しました。私たちも身近な発見をこ とばにして、友だちと交流してみませんか。
ケ」である。 さて、これは何でしょう? 大学の敷地を探検していて 見つけました。調べてみると、 ゼニゴケの一種でした。季節 によって形を変えるようです。 雄と雌でも姿が違うそうです。 そのこともおもしろいので すが、この様子を見ていると、 椰子の木がいっぱい生えてい るように見えてきませんか? 自分が小さくなって、椰子林 の中で迷子になるような錯覚を覚えます。もし、そのまま、 この小さな世界の住人になったとしたら、どんな事件が待 っているのだろうかと、想像を膨らませそうになりました。 地球のことを考えるということは、こういう小さな生き物 たちのことも真剣に考えていくということなのかなと思い ます。 今地球上では、これまでに無いほどの環境の変化が人間 の行為によって引き起こされており、そのために、ある推 計では百年前の一万倍位のスピードで生物が絶滅している と言われています。毎日百種以上の生物が絶滅しているの 後 の 音 、 と 解 釈 さ れ 、「 阿 吽 」 で 宇 宙 の 始 ま り と 終 わ り と を表す仏教語といわれていることも根拠になります。 やすらかな気持ち、安心、安全を思い浮かべた人、知性 派ですね。 「あ」という平仮名は、 「安」という漢字からで きています。 (変化を提示) 「安」はやすらかと読むし、安 全、安心は、安を使った熟語ですからね。 大きな声が出そうで気持ちいいと思った人、感性派です ね。お隣同士で口を観察しながら「あ」から順番にゆっく り 「 あ い う え お 」 と 声 を 出 し て み て く だ さ い 。「 あ 」 が 一 番大きな口の開きをしているでしょう。息がたくさん出る から開放感があって気持ちいいんですね。 実は、田中校長の田中にも「あ」がたくさん隠されてい ます。ターナーカーと音を伸ばして声に出すと見つけられ るかな。 二〇一六年度附小の子ども達が全員そろった初めての朝 礼なので、 全員で気持ちのいいスタートを切ろうと、 「あ」 の話をしました。 五十音図、母音と子音、ひらかなの字源、仏教語と幾つ もの糸口を盛り込んでいる。モニターを通しての放送朝礼 なので、学級では担任が、子ども達に応じて話を補ってく れることに期待した内容であった。 写 真 を 使 っ た 話 も 複 数 回 行 っ て い る 。 例 え ば 、「 ゼ ニ ゴ
らうために、パネルの類を多用もしたが、子ども達や教職 員の好意的な受け止めがあったからこそ話し終えることが できたと感謝している。 (本学研究科・学部教員) だそうです。便利な生活に慣れてしまうと、知らないうち に、弱い生物を絶滅するようなことをしているかもしれま せん。 ゼニゴケの椰子の森に迷い込んで、そこから見える世界 を想像することが、私たち人類が生き延びる大事な視点を 与えてくれるのかもしれません。 「 ゼ ニ ゴ ケ 2 」 で は 小 学 校 の 敷 地 内 の ゼ ニ ゴ ケ を 題 材 に した。その他に写真ではなく実物で、校門脇のソテツ、中 庭のヤマボウシなど、意外に見過ごしている特徴に目を向 け、新たな発見を家族にも話せるようなものとして選んだ 題材である。 「霜柱」も同様の素材であった。 歌詞も数曲取り上げた。童謡の類で意味もわからずに歌 っ て い る も の や 、 坂 本 九 の 「 上 を 向 い て 歩 こ う 」、 本 田 路 津子の 「一人の手」 、 中島みゆきの 「糸」 などを取り上げた。 ことばのニュアンスまで感じて理解するという点では、 季語を取り上げた「山笑う」 、「適当」や「いい加減」と比 べて話した「ちょうどいい」 、「においとかおり」の使われ 方なども話題にした。 興味を持ってもらえなければいくら高尚な話をしても受 け止めてもらえない。そのことは、中学校の時よりもはる かに厳しく迫ってきた。その割に、小学生には難しいこと を随分と話したと自覚している。少しでも興味を持っても