第3学年 組 美術科学習指導案
指導者 1 単 元 印象派と20世紀絵画の先駆けとなった画家たち <鑑賞> 2 指導観 ○ 現行の授業時数では、作品制作の時間確保が精一杯で、時間をかけてゆっくりと絵画や彫刻を鑑賞するような 学習には、なかなか取り組みにくい現状である。また、生徒たちが中学卒業後に高校で美術を選択する生徒は四 分の一程度ではないだろうか。生涯学習の基礎を培うべき中学校での美術教育の弱体化は、これから生徒たちが 将来大人になって、美術文化に関心を抱きなから展覧会や美術館に足を運び、心豊かに生活していくことを阻害 しているように思えてならない。 19世紀後半、モネやルノワールら印象派の画家たちによって絵画の歴史は大きく動いた。光をとらえ、鮮や かな色彩を用い、大胆なタッチで生まれた絵画は、宗教画や貴族の肖像画のように写実的で落ち着き払った「き れいな絵」とはほど遠かった。それまではなめらかな絵肌や遠近法が絶対だったので、大半の人の目には、スケ ッチどまりの下手な絵にしか見えなかった。しかし、サロン展で認められることを目標とせず、光を追って制作 した印象派の画家たちの作品は多様で、水面の一瞬のきらめきや、都市生活をいきいきと描いたセンセーショナ ルで「新しい絵画」だった。さらに、その後のセザンヌやゴッホ、ゴーギャンらのポスト印象派やスーラの新印 象派の画家たちがそれまでの絵画の常識を覆し、のちの20世紀絵画の先駆けとなっていった。 本単元のねらいは,いまやコマーシャルに用いられるほど身近になっている印象派の画家たちが絵画の世界で 果たした革新的な物の見方や考え方、新鮮な感覚を理解し、その後の絵画に影響を与えた意義をつかませること と、画家たちの作品に対する姿勢の違いから、彼らの個性を理解させることである。これらの画家たちについて は身近な所でもたびたび展覧会が開催されており、ぜひ本物の絵にふれて鑑賞してみようと思うようにさせたい。 ○ 中学3年生ともなると、美術作品の背後に見え隠れする意図や、美術史的な意味などにも興味を持つことがで きるようになる。1学期に「ゴッホと浮世絵」というテーマでゴッホという画家と彼に影響を与えた浮世絵、画 家ゴーギャンとの関係など一人の画家にスポットをあて、その生涯や個性的な作風について学習した時にも、興 味を持って取り組めていた。 本学級の生徒には,作品制作に苦手意識を持っている生徒もおり、意欲的な生徒とそうでない生徒の制作進度 に大きな差が生じる傾向がある。苦手な生徒に自信を持たせることとして鑑賞内容を期末テスト問題にしたとこ ろテストには頑張ろうとする姿が見られたが、テストの点数主義的な生徒がいたことは課題である。また、1学 期の作品制作で「イメージを点描で表現する」というテーマに取り組んだ際、導入としてマグリットやダリ、シ ャガール、ムンクなどの画家について鑑賞学習を行って、イメージの表現の面白さに触れた。しかし、なぜこれ らの画家がこのような思想を持ち、何に影響されそのような表現に至ったのかについては理解が及んでいない。 これらの画家たちの多彩で個性的な表現も、印象派やポスト印象派の画家たちの革新からスタートしているとこ とについては初めて学習する内容であるので、興味を持って望んでくれるのではないかと考える。 ○ 本単元の指導にあたっては,ゴッホに影響を与えた印象派とは何だろうかという導入から、再度印象派にも影 響を与えた浮世絵やジャポニスムとも関連づけ、産業革命後カメラが出現するようになった当時の西洋の時代背 景から画家がたどっていった方向性について想起させたい。そして、画家が戸外で制作ができるようになり、印 象派の誕生に決定的な役割を果たしたとも言われるチューブ入り絵の具の発明もおさえておきたい。 また、印象派が誕生する直前のミレーのバルビゾン派の理念も、当時は新しい取組みであったことにもふれな がら、印象派が登場する以前の絵画と印象派の画家が目指した光あふれる表現の作風と見比べながら、その違い に気づかせたい。そして、その後、印象派をこえようとした意味での、ポスト印象や新印象派と呼ばれる画家た ちの個性の表現に展開を進めながら、20世紀の絵画の先駆的な役割の意味を探求させたい。 その際、変遷のプロセスをテレビジョンに映し出しながら、抽象表現やキュービズムといった表現の理解にも つなげるとともに、鑑賞の能力を高める知識の定着と、学習のまとめとして、印象派とその前後の画家の多様な 絵画を鑑賞し合わせ、その感想を全体に報告するという言語活動にも取り組ませたい。 3 目 標 ○ 印象派が生まれた時代背景や日本美術との関係、革新的な技法などへの興味、関心を持とうとする。 (美術への関心・意欲・態度) ○ 画家の生き方や思想、心情まで深く考察しながら作品を鑑賞し、感想をまとめ発表することができる。 (鑑賞の態度)4 単元指導計画(計4時間) 関:関心・意欲・態度 鑑:鑑賞の態度 次 時 学習活動・内容 ねらいと手だて 評価規準 1 1 イメージの表現について画家から イメージの表現についてそ 関:イメージの表現に ① 学ぶ。 の面白さに気づかせ、画家の 興味関心を持つこ 一 ダリ「記憶の固執」、ムンク「叫 技法から学ぶ態度を養う。 とができる。 び」、シャガール、マグリット ○画家がどういう気持ちで表現 鑑:マグリットの技法 「大家族」「ピレネーの城」の したか考えさせる。 について理解し、 作品を鑑賞する。 ○マグリットの「置き換え」の イメージの表現の 2 イメージの表現の面白さに気づ 技法などの面白さに気づかせ 面白さを味わうこ き、作品鑑賞の楽しさを知る。 る。 とができる。 1 3 「ゴッホと浮世絵」につい学習す 関:ゴッホと浮世絵に ① る。 ゴッホの生涯や、その作風 興味関心を持つこ と浮世絵の関係について知る とができる。 ・ゴッホの作風や生涯について興 ことができる。 味、関心を持ち、その画家が作品 にこめた強い情熱を知る。 ○ゴッホが絵にかけた情熱やゴ ・ゴッホと関係が深いゴーギャンに ーギャンとの関係に気づかせ ついて理解する。 るために、資料を読ませる。 鑑:ゴッホの生涯を知 ・ゴッホの作風について正しく理 ○作風を知るために各班に実物 り、作品のよさを 二 解させる。 大の複製を準備する。 鑑賞できる。 ・ゴッホに影響を与えた浮世絵につ ○浮世絵について正しく理解さ いて正しく理解する。 せるためにその製作過程や浮 鑑:浮世絵の技法や、 世絵師について資料と学習プ 主な浮世絵師につ リントを用意する。 いて理解し鑑賞の ・浮世絵がゴッホだけでなく、西洋 ○西洋における浮世絵の意義や 態度を持つことが の画家たちに影響を与えたことを ジャポニズムについて理解さ できる。 知る。 せるために、影響を受けた他 の画家の作品を提示する。 1 4 「印象派の画家」について学習 印象派とその後の絵画につ 関:印象派の画家に興 ① する。 いて歴史的背景とその変遷を 味関心を持つこと ・モネを中心とする印象派の画家た おさえ、多様な絵画を鑑賞す ができる。 ちの光の表現について、これまで る態度を養うことができるよ の画家とは違う独自性を理解する うにする。 ・印象派が登場した頃の時代背景を ○光のとらえ方について視覚的 三 ・印象派がその後の絵画に果たした知る。 な理解を図るためにビデオ教材や鑑賞資料などを効果的に 意義を理解する。 使う。 ○印象派以前の絵画との違いを 時代背景と関連づけて理解で きるよう時代ごとの作品を見 せる。 2 5 「20世紀絵画の先駆けとなった ○スーラの表現方法を理解させ 関:セザンヌやスーラ ① 画家たち」について学習する。 るために実物大複製を見せる。 の影響から近代絵 ・新印象派について学習する。 ○セザンヌの表現からその後の 画はどう進んだか ・印象派をこえて表現しようとした 絵画への変遷を理解させるた 考え、20世紀の ポスト印象派について学習する。 めに視覚資料を見せる。 画家たちの作風に ・ポスト印象派や新印象派の画家た ○モンドリアンの抽象絵画への 興味関心を持つこ ちが20世紀絵画の先駆けとなっ プロセスやキュービズムの表 とができる。 た意義に気づく。 現技法を理解させるために視 ・具象絵画とモンドリアン「抽象主 覚資料を見せ、補足説明する。 鑑:個性を表現した画 義」やピカソの「キュービズム」 ○それぞれの個性的作風や画家 家の作風のおもし の違いから画家が表現したい意図 の生き方についても興味を持 ろさを理解し、そ を探る。 って感想をまとめさせ、報告 れぞれの作風の違 し合い発表させる。 いを個性と受け止 6 印象派の画家たちとその画家たち め、感想をまとめ が存在した時代の前後の絵画を各班 発表するとができ ごとに鑑賞し合い、発表する。 る。 本 時 ( 2 / 2 )
5 本時 平成22年11月18日(木)第5校時 第1美術室 第三次の2時(2/2) (1) 本時の指導観 本時は印象派と新印象派、ポスト印象派と呼ばれる画家たちの鑑賞学習の2時間目である。前時まで に印象派の画家たちが誕生した時代背景を理解させ、モネやルノワール、ドガらの絵を通して、その「光」 の表現に注目させながら、それまでの絵画との違いや印象派の革新性をおさえていった。さらに印象派 と呼ばれるスーラの点描法までを学習している。そこで本時は、印象派をこえて個性的な表現をめざし たポスト印象派の画家のうち、「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌに注目させ、彼の理念が後の絵画 に引き継がれ、20世紀絵画の先駆けとなった表現の多様化と、抽象表現やキュービズムの登場につな がっていった意義をつかませたい。 また、これまでの鑑賞学習のまとめとして、印象派とその前後の画家たちの絵を身近に感じさせる手 だてとして各班ごとに資料を準備した。ある画家を取り上げた一冊ずつの資料本のうち、一部の絵を指 定し、絵の鑑賞のポイントを読ませながら、各班で鑑賞した感想などを交流し合わせ、全体に発表させ たい。このような活動を通して、受け身的な鑑賞学習から一歩進んだ言語活動を取り入れることで、そ れぞれの画家たちの表現にも興味、関心を持たせ、生徒自らが美術館に足を運べるようにしたい。 学習活動 具体的な手だて 定着活動 画家が表現した意図を探る鑑賞活動に取り組ませる。 目標設定 画家の作風、生き方、心情などを通して感じ取ったことを深める目標を設定させる。 習得活動 美術史的な時代背景をおさえ、表現の多様性を知り、鑑賞のポイントを理解させる。 活用活動 既習内容をもとに各画家が生きた時代背景、思想のもと、その個性的表現に着目しながら班で鑑賞し合わせ、感想を交流し発表させる。 《深い思考》 振り返り活動 自主的に学習を深めたいと思うような資料を準備し、感想をまとめさせる。 (2) 主眼 新印象派やポスト印象派の画家たちについての学習から、その後の20世紀絵画の先駆けとなった表 現の意義を理解しながら多様な作品を鑑賞する意欲と態度を持つことができるようにする。 (3) 準備 学習プリント 鑑賞用参考資料 鑑賞本 パソコン TV 各班ごとのクリアホルダー (4) 過 程 学習活動・内容 主な支援 評価の観点(方法) 形態 配時 1前時の学習を振り返る ○「グランドジャットの日曜日」の 一 斉 8 ・一人の画家について、作者の心情や 実物大の資料から、新印象派のス 意図、創造的な表現の工夫などを感 ーラの色彩理論や形態の単純化や じ取り見方を深める 【定着活動】 点描表現の意図を探らせる。 2本時のめあてを確認する 印象派をこえて 表現しようとし た画家の個性的 表現を理解し、 10 ・ポスト印象派について印象派をこえ ○独自性をつかむためにゴッホ、ゴ その後の絵画に 一斉 た表現の独自性を学習する。 ーギャン、セザンヌの作風をおさ 果たした意義が ・「近代絵画の父」とよばれるセザン える。 理解できている ヌの表現が20世紀絵画に影響を与 ○セザンヌの作風と抽象絵画やキュ か。 えたことを理解する。 ービズムの共通点を示す資料を見 (学習プリント) ・抽象絵画やキュービズムの表現につ せる。 いて理解する。 【習得活動】 ○抽象化のプロセスを理解させるた めにモンドリアンの「木」を見せ 3多様な作品を鑑賞する各自の目標を設 る。 定する。 【目標設定】 ○各班に画家についてまとめた本を 渡し、鑑賞のポイントから鑑賞の 4前時からの学習のまとめとして、印象 視点の目標設定を行わせる。 派の画家たちと印象派が登場した前後 ○実物大のサイズの資料を見ながら 班 30 の時代の絵画の変遷と多様化を理解し 各視点で鑑賞した感想を学習プリ ながら、班ごとに、ミレー・モネ・ド ントにまとめさせる。 ガ・ルノワール・ゴッホ・ゴーキャン ○画家の生き方や時代背景、作風な 画家の生き方や ・セザンヌ・ピカソの中から一人の画 どにも着目して鑑賞するよう助言 多様な表現に興 家について鑑賞し合い、感じたことを していく。 味を持ち、絵画 全体に発表する。 ○多様な表現として、筆のタッチや を鑑賞する意欲 視点① 鑑賞のポイントを読んで 光の表現などについても着目して を持つようにな ② 実物大の資料を見て 鑑賞するよう助言する。 ったか。 ③ 画家について感じたことは ○班で感想をまとめさせ、代表一人 (様相観察) ④ 筆触や色彩から伝わったこ に発表させる。 とは 【活用活動】 5各班からの発表を聞いて感想をまとめ ○今後機会を見つけ、鑑賞してみた る。 【振り返り活動】 いという気持ちにさせるために、 一 斉 2 身近な展覧会について紹介する。 めあて 20世紀絵画の先駆けとなった画家たちについて学習し、多様な 絵画の鑑賞の仕方を学ぼう。