日本における教職員人事評価制度に関する研究 −
成果主義に基づく評価制度の地方受容を中心に−
著者
? ?廷
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第17288号
URL
http://hdl.handle.net/10097/00120787
博 士 論 文
日 本 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 関 す る 研 究
― 成 果 主 義 に 基 づ く 評 価 制 度 の 地 方 受 容 を 中 心 に ―
要 約
目 次 序 章 問 題 の 所 在 と 研 究 課 題 の 設 定 ··· 1 第 1 節 問 題 の 所 在 と 本 研 究 の 目 的 ··· 1 第 2 節 先 行 研 究 の 動 向 ··· 4 第 3 節 研 究 課 題 の 設 定 と 本 論 文 の 構 成 ··· 8 第 Ⅰ 部 教 職 員 人 事 評 価 制 度 を め ぐ る 論 理 と 制 度 分 析 第 1 章 産 業 界 に お け る 人 事 管 理 制 度 ··· 12 第 1 節 バ ブ ル 経 済 崩 壊 後 に 生 起 し た 成 果 主 義 的 人 事 管 理 ··· 12 1 「 能 力 主 義 的 」 人 事 管 理 か ら 「 成 果 主 義 的 」 へ の 転 換 ··· 12 2 「 成 果 主 義 的 」 人 事 管 理 の メ カ ニ ズ ム ··· 13 第 2 節 目 標 管 理 の 意 義 と 成 果 主 義 的 人 事 管 理 と の 関 連 性 ··· 18 1 目 標 管 理 の 意 義 と 課 題 ··· 18 2 目 的 別 に 対 応 す る 目 標 管 理 手 法 の 運 用 ··· 23 第 3 節 ま と め ··· 24 第 2 章 公 務 員 の 人 事 管 理 制 度 ··· 27 第 1 節 国 家 公 務 員 に 関 す る 人 事 管 理 ・ 評 価 制 度 ··· 27 1 内 閣 機 能 の 強 化 を 狙 っ た 行 政 改 革 の 始 動 ··· 27 2 行 政 改 革 の 徹 底 を 図 る 新 た な 公 務 員 制 度 の 構 築 ··· 29 3 公 務 員 制 度 に お け る 国 家 公 務 員 の 人 事 管 理 ··· 36 4 国 家 公 務 員 人 事 管 理 改 革 に お け る 人 事 評 価 の 確 立 ··· 41 第 2 節 地 方 公 務 員 に 関 す る 人 事 管 理 ・ 評 価 制 度 ··· 44 1 地 方 公 務 員 制 度 の 改 革 ··· 45 2 教 育 公 務 員 で あ る 教 職 員 の 人 事 管 理 を め ぐ る 議 論 ··· 47 3 中 央 教 育 審 議 会 答 申 に お け る 教 員 人 事 管 理 の 在 り 方 と 役 割 ··· 54 4 公 立 学 校 に お け る 教 職 員 の 人 事 管 理 制 度 の 構 想 と 課 題 ··· 65 第 3 節 ま と め ··· 68
第 3 章 教 職 員 の 人 事 管 理 制 度 ··· 72 第 1 節 教 職 員 を め ぐ る 職 務 上 と 身 分 上 の 特 殊 性 ··· 72 1 教 育 活 動 に 潜 む 教 職 の 専 門 職 性 ··· 72 2 一 般 公 務 員 と 異 な る 教 職 の 特 殊 性 ··· 74 第 2 節 教 職 員 が 公 務 員 で あ る 背 景 と 教 職 員 の 勤 務 評 定 ··· 76 1 「 待 遇 官 吏 」 か ら 教 育 公 務 員 へ ··· 76 2 人 事 院 に よ る 公 務 員 の 勤 務 評 定 の 原 型 ··· 78 3 政 治 的 行 為 排 除 を 目 的 と す る 勤 務 評 定 と そ の 形 骸 化 ··· 79 第 3 節 ま と め ··· 82 第 4 章 能 力 ・ 実 績 に 基 づ く 新 た な 教 職 員 人 事 評 価 の 始 動 ··· 87 第 1 節 先 行 改 革 実 施 都 県 の 事 例 ··· 87 1 評 価 の 目 的 ··· 87 2 評 価 者 ··· 89 3 評 価 項 目 ( 職 務 分 類 ) と 評 価 要 素 ( 評 価 の 主 眼 ) ··· 90 4 評 価 方 法 ··· 91 5 評 価 結 果 の 開 示 ・ 苦 情 処 理 ··· 100 6 考 察 ··· 101 第 2 節 「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 」 全 国 的 取 組 状 況 ··· 106 1 実 施 状 況 、 勤 務 評 定 と し て の 位 置 づ け ··· 106 2 実 施 方 法 ··· 108 3 評 価 方 法 ··· 112 4 評 価 に 関 す る 面 談 ··· 115 5 評 価 結 果 の 開 示 ··· 117 6 評 価 結 果 の 活 用 分 野 等 ··· 119 7 苦 情 へ の 対 応 ··· 120 8 取 組 状 況 の 全 体 的 考 察 ··· 122 第 3 節 ま と め ··· 124
第 Ⅱ 部 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 関 す る 実 態 調 査 第 5 章 地 方 公 共 団 体 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 関 す る 調 査 概 要 ··· 129 第 1 節 調 査 意 義 と 調 査 の 枠 組 み ··· 130 第 2 節 イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 含 め た 実 態 調 査 の ア プ ロ ー チ と 概 要 ··· 132 第 6 章 目 標 管 理 手 法 を 用 い る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ··· 139 第 1 節 宮 城 県 に お け る 資 質 向 上 を 前 面 に 出 し た 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ·· 139 1 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 目 的 と 仕 組 み ··· 140 2 給 与 へ の 反 映―新 し い 昇 級 制 度 ··· 145 3 宮 城 県 の 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 147 第 2 節 秋 田 県 に お け る 教 員 の 自 主 性 を 活 か す 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ···· 156 1 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に お け る 目 的 と そ の 仕 組 み ··· 157 2 自 己 目 標 の 設 定 に 当 た り 独 特 の 職 務 分 類 と 資 質 向 上 お 狙 い ··· 162 3 秋 田 県 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 165 第 3 節 青 森 県 に お け る 職 務 全 般 の 中 で 機 能 す る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ·· 168 1 教 職 員 の 人 材 育 成 ・ 評 価 制 度 の 仕 組 み ··· 169 2 青 森 県 教 職 員 の 人 材 育 成 ・ 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 175 第 4 節 岩 手 県 に お け る 資 質 向 上 の 支 援 策 と し て の 教 職 員 人 事 評 価 制 度 180 1 目 標 管 理 手 法 に 基 づ く 「 教 育 活 動 支 援 ・ 育 成 プ ロ グ ラ ム 」 ··· 181 2 新 昇 給 制 度 に お け る 目 的 と 仕 組 み ··· 183 3 岩 手 県 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 186 第 5 節 福 島 県 に お け る 勤 務 評 定 と 共 存 す る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ··· 193 1 教 職 員 目 標 管 理 制 度 の 基 本 的 考 え 方 と そ の 仕 組 み ··· 193 2 福 島 県 教 職 員 目 標 管 理 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 199 第 6 節 山 形 県 に お け る 適 正 評 価 を 模 索 す る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ··· 202 1 教 職 員 人 事 評 価 の 目 的 と 基 本 的 な 考 え 方 ··· 203 2 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 仕 組 み ··· 203 3 評 価 結 果 の 開 示 ・ 異 議 申 立 と 評 価 結 果 の 活 用 ··· 205 第 7 節 考 察 ··· 206
1 目 標 管 理 手 法 に 基 づ く 新 教 員 評 価 制 度 の 目 的 と 考 え 方 ··· 206 2 評 価 制 度 の 仕 組 み 、 評 価 方 法 と 「 教 員 へ の 適 正 評 価 」 の 難 点 ··· 207 3 評 価 結 果 の 開 示 ・ 異 議 申 立 と 評 価 結 果 を 人 事 考 課 ・ 昇 給 へ 活 用 の 課 題 ··· 208 第 7 章 勤 務 評 定 路 線 を 継 承 し た 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ··· 212 第 1 節 愛 媛 県 に お け る 「 勤 評 」 改 善 方 式 の 教 職 員 人 事 評 価 制 度 ··· 212 1 勤 務 成 績 の 評 定 制 度 に お け る 目 的 と そ の 仕 組 み ··· 212 2 補 完 ツ ー ル と し て の 目 標 管 理 手 法 に よ る 自 己 評 価 ··· 216 3 愛 媛 県 教 職 員 人 事 評 価 制 度 で あ る 勤 務 評 定 の 運 用 ··· 219 第 2 節 香 川 県 に お け る 「 勤 評 」 を 基 盤 に し た 教 員 評 価 制 度 ··· 224 1 学 校 職 員 の 勤 務 成 績 評 定 の 目 的 と そ の 仕 組 み ··· 225 2 管 理 職 の み を 対 象 と し た 「 目 標 申 告 ・ 評 定 制 度 」 ··· 231 3 香 川 県 教 職 員 人 事 評 価 制 度 で あ る 勤 務 成 績 評 定 の 実 態 的 運 用 ··· 232 第 3 節 広 島 県 に お け る 勤 務 評 定 と 目 標 管 理 と を 並 行 式 な 教 員 評 価 制 度 236 1 広 島 県 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 趣 旨 と 目 的 ··· 239 2 人 事 評 価 制 度 に お け る 勤 務 成 績 評 定 ··· 241 3 自 己 申 告 に よ る 目 標 管 理 ··· 245 4 広 島 県 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 ··· 248 第 4 節 考 察 ··· 252 終 章 日 本 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 在 り 方 に つ い て ··· 256 第 1 節 研 究 成 果 の 概 要 と 得 ら れ た 知 見 ··· 256 第 2 節 日 本 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 可 能 性 ··· 261 図 表 一 覧 ··· 265 文 献 一 覧 ··· 267 謝 辞
要 約 本 研 究 は 、 公 務 員 制 度 に お け る 専 門 職 と し て の 教 職 員 に 関 す る 人 事 評 価 の 在 り 方 に つ い て 、 そ の 理 論 的 基 盤 及 び 展 開 の 実 態 を 追 究 し た も の で あ る 。 主 た る 研 究 対 象 は 、「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」 の 策 定 過 程 と 都 道 府 県 教 育 委 員 会 に よ る 展 開 過 程 で あ る 。 具 体 的 に は 、 文 部 科 学 省 の 政 策 方 針 と 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 の 展 開 過 程 を 対 象 と す る が 、 「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」 は 、 目 標 管 理 に よ る 成 果 主 義 の 評 価 手 法 で あ り 、 こ れ は そ も そ も 日 経 連 ・ 産 業 界 が 開 発 普 及 さ せ た も の で あ る た め 、 ま ず は 、 こ の 理 論 と 評 価 手 法 を 分 析 す る 。 こ の 成 果 主 義 の 評 価 手 法 が 産 業 界 に 普 及 し 一 般 化 し た と こ ろ で 、「 行 政 改 革 」 に よ る 公 務 員 制 度 の 人 事 評 価 改 革 に 至 り 、 遂 に は 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 の 教 員 評 価 改 革 に 及 ん だ 経 緯 を 踏 ま え 、 こ の 順 序 で 、 理 論 及 び 展 開 の 実 態 を 追 究 し 、 専 門 職 と し て の 教 職 員 を 育 成 す る 上 で の 改 善 課 題 と 必 要 条 件 と に つ い て 考 察 す る 。 上 記 の 観 点 か ら 先 行 研 究 を 再 吟 味 す る と 、、 成 果 主 義 評 価 の 生 成 か ら 「 行 政 改 革 」 へ の 波 及 、 そ し て 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 の 実 施 ま で の 全 過 程 が 追 究 さ れ て い な い こ と が 課 題 と し て 指 摘 で き る 。 と り わ け 日 経 連 ・ 産 業 界 の 成 果 主 義 評 価 ま で を 分 析 の 視 野 に 入 れ て い な い た め に 、 人 件 費 削 減 と 経 済 効 率 を 求 め る 成 果 主 義 評 価 の 本 質 が 十 分 に は 把 握 さ れ て い な い 点 が 重 要 で あ る 。 ま た 、 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 の 展 開 過 程 の 研 究 で は 、 特 定 地 域 の 歴 史 的 ・ 文 化 的 ・ 政 治 的 状 況 に 応 じ た 変 容 が 見 ら れ る と い う 研 究 は あ る も の の 、 多 数 の 県 を 比 較 す る こ と で 多 様 な 実 態 に あ る こ と ま で は 明 ら か に さ れ て な い 。 そ れ は 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 の 対 応 に つ い て 全 国 的 に 比 較 研 究 し て い な い こ と に よ っ て 生 じ て い る 課 題 で あ る 。 本 研 究 で は 、 産 業 界 の 成 果 主 義 人 事 評 価 に 遡 っ て そ の 本 質 を 追 究 し 、「 行 政 改 革 」 を 受 け た 文 科 省 の 「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」 の 審 議 経 過 を 議 事 録 に 即 し て 分 析 し 、 そ し て 、 東 北 6 県 を は じ め 愛 媛 ・ 香 川 ・ 広 島 な ど 各 県 教 育 委 員 会 を 可 能 な 限 り 訪 問
し 、 全 国 的 視 野 で イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を し た 上 で 制 度 ・ 運 用 手 法 を 比 較 し た 。 こ こ に 本 論 文 の 意 義 が あ る 。 研 究 方 法 と し て は 、 ① 先 行 研 究 の 研 究 に よ っ て 経 営 学 に お け る 人 事 管 理 、 人 事 経 済 学 、 教 職 特 殊 性 の 論 理 を 整 理 す る 。 ② ド キ ュ メ ン ト 分 析 を 通 し て 、 各 都 道 府 県 の 教 員 評 価 制 度 の 構 造 を 考 察 す る 。 ③ 教 育 委 員 会 へ の 半 構 造 イ ン タ ビ ュ ー に よ っ て 、 各 自 治 体 に お け る 教 職 員 評 価 制 度 に 潜 ん だ 教 育 委 員 会 が 教 員 評 価 に 対 す る 位 置 づ け 、 考 え 、 期 待 を 抽 出 し 、 そ こ か ら 伺 え た 教 育 委 員 会 が 教 員 ・ 学 校 に 対 す る 自 分 自 身 の 位 置 づ け を 踏 ま え 、 日 本 全 国 に お け る 教 員 評 価 制 度 の 意 義 と 役 割 を 解 明 し 、 教 員 評 価 制 度 の 仕 組 み を 明 ら か に す る 。 全 国 的 な 調 査 統 計 も 再 分 析 す る こ と で 、 成 果 主 義 人 事 評 価 の 本 質 と 変 容 の 過 程 を 明 ら か に す る が 、 と り わ け 教 員 に ふ さ わ し い 評 価 方 式 を 求 め る 各 県 教 育 委 員 会 の 動 向 が 重 要 で あ る 。 そ の 意 味 で 、 本 論 文 で は 、 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 態 に 着 目 し 、 各 自 治 体 に お け る 多 様 な 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 運 用 を 考 察 し な が ら 、 各 県 教 育 委 員 会 が 国 の 政 策 と 学 校 教 育 の ニ ー ズ と の 間 で 、 教 職 員 人 事 評 価 に 関 す る 制 度 構 成 、 及 び 評 価 方 式 と 運 用 を 追 究 す る こ と で 、 多 様 に 変 容 し て い る 評 価 方 式 を 確 認 す る 。 教 職 員 の 資 質 向 上 と 学 校 の 活 性 化 な ど 教 育 問 題 の 集 約 に 責 任 を も つ 各 県 教 育 委 員 会 は 、 教 職 員 人 事 評 価 制 度 を 構 成 す る 際 に 、 国 の 方 針 と 地 方 の 教 育 文 化 と の 間 で 、 実 現 可 能 な 均 衡 点 、 地 方 の 実 態 に 応 じ た 最 善 の 選 択 を 探 ら な け れ ば な ら な い 。 そ の 結 果 と し て 、 教 職 員 評 価 制 度 も ま た 多 様 な 方 式 で 運 用 が な さ れ て い る 。 従 っ て 、 国 が 策 定 す る 教 職 員 評 価 制 度 の 理 念 と 都 道 府 県 に お け る 現 実 と の 間 に 存 在 す る ギ ャ ッ プ を 克 服 し た 評 価 制 度 の 構 成 と 運 用 の 中 に 、 教 職 員 に ふ さ わ し い 人 事 評 価 の 在 り 方 を 探 り 出 す こ と が で き る 、 と い う の が 本 論 文 の 仮 説 で あ る 。 な お 、 現 在 、 教 職 員 は 専 門 職 と し て の 一 般 的 認 識 は 得 ら れ て い な い が 、 専 門 職 に 向 け て の 教 職 員 に ふ さ わ し い 人 事 評 価 の 在 り 方 に つ い て 、 貴 重 な 示 唆 も 得 ら れ る こ と が 期 待 さ れ る 。 本 文 の 構 成 に 関 し て は 、序 章 で は 課 題 意 識 、先 行 研 究 、本 研 究 の 方 法 と 構 成 に つ い て ま と め る 。 本 論 の 第 Ⅰ 部 で は 、 教 職 員 人 事 評 価 制 度 を
め ぐ る 論 理 と 制 度 分 析 で 4 章 か ら 構 成 さ れ 、( 1) 産 業 界 の 能 力 主 義 ・ 成 果 主 義 の 人 事 管 理 メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し 、( 2) そ の 影 響 を 公 務 員 の 人 事 管 理・評 価 制 度 に 捉 え た 上 で 、( 3)教 職 員 の 人 事 評 価 制 度 を 追 究 す る と い っ た 内 容 と す る 。 第 Ⅱ 部 で は 、 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 態 調 査 研 究 に つ い て の 3 章 か ら 構 成 し 、 東 北 地 方 の 宮 城 県 、 秋 田 県 、 青 森 県 、岩 手 県 、福 島 県 、山 形 県 と 愛 媛 県 、香 川 県 、広 島 県 の 教 育 委 員 会 へ の イ ン タ ビ ュ ー に よ る 実 態 調 査 を 内 容 と す る 。 各 章 の 内 容 は 以 下 の 通 り で あ る 。 第 1 章 で は 、 能 力 主 義 的 人 事 管 理 を 踏 ま え 、 産 業 界 に お け る 成 果 主 義 的 人 事 管 理 制 度 を 考 察 し た 。 成 果 主 義 的 人 事 管 理 で は 、 組 織 成 員 の 長 期 雇 用 及 び 年 功 的 賃 金 を 排 除 し て 「 総 額 人 件 費 」 の 運 営 方 式 に 切 り 換 え ら れ 、 人 事 管 理 の 基 準 は 学 歴 と 勤 続 年 数 か ら 従 業 員 の 実 績 と 役 割 に 移 さ れ た 。ま た 、目 標 管 理 に よ る 評 価 制 度 が 導 入 さ れ 、企 業 目 標 と 個 人 目 標 と の 連 鎖 が 図 ら れ 、 か つ 従 業 員 が 設 定 し た 目 標 の 達 成 度 に 合 わ せ た 処 遇 よ っ て 動 機 づ け の 効 果 も 計 画 さ れ た 。 成 果 主 義 人 事 管 理 の 特 徴 は 、( 1)総 額 人 件 費 、( 2)「 能 力 」よ り も「 成 果 」重 視 、( 3)代 替 的 な イ ン セ ン テ ィ ブ 制 度 に あ り 、ま た 、目 標 管 理 に よ っ て 、( 4 )個 人 目 標 の 自 己 統 制 、( 5)経 営 目 標 と 個 人 目 標 と の 統 合 、 と い う 機 能 が 期 待 さ れ て い る 。 要 す る に 目 標 管 理 に よ る 成 果 主 義 人 事 管 理 は 、 人 件 費 削 減 と 経 済 効 率 を 求 め る も の で あ り 、 自 己 目 標 と 企 業 目 的 と の 一 体 化 ・ 統 合 を 主 体 的 に 進 め る た め に 、 目 標 管 理 の 手 法 が 導 入 さ れ た こ と が 確 認 で き た 。 そ れ は 3 タ イ プ の 「 戦 略 重 視 型 」、「 評 価 重 視 型 」「 能 力 開 発 型 」が あ る が 、こ の 種 の 人 事 管 理 ・ 評 価 理 論 が 公 務 員 改 革 を 通 し て 教 員 評 価 に ま で 及 ぶ の で あ る 。 第 2 章 で は 、 国 が 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 対 し て 、 行 政 改 革 観 点 に よ る「 能 力・実 績 に 基 づ く 人 事 管 理 を 支 え る 評 価 制 度 の 確 立 」と 、教 育 改 革 観 点 に よ る 「 教 師 の 意 欲 や 努 力 が 報 わ れ 評 価 さ れ る 体 制 」 と い っ た 成 果 主 義 に 基 づ く 新 た な 訴 求 に 関 す る 形 成 背 景 に つ い て 追 究 し 、 そ の 組 織 の 目 標 達 成 と 教 職 員 の 資 質 能 力 の 向 上 と い う 異 な る 政 策 の コ ン セ プ ト に よ る 主 張 が 確 認 で き た 。
国 の レ ベ ル で は 、「 戦 後 型 行 政 」 と 言 わ れ た 、 肥 大 化 し 硬 直 化 し 制 度 疲 労 を 起 こ し た 政 府 組 織 か ら の 脱 皮 を 狙 い 、 内 閣 機 能 の 強 化 を 果 た す た め 、一 連 の 抜 本 的 な 改 革 を 行 っ た 。ま ず 、行 政 改 革 を は じ め 、行 政 組 織 の ス リ ム 化 と 人 件 費 の 抑 制 が 主 眼 に 置 か れ 、 総 額 人 件 費 に よ る コ ス ト 管 理 が 求 め ら れ た 。 つ ぎ に 、 国 家 組 織 に お け る 人 的 側 面 と 関 わ る 公 務 員 制 度 の 改 革 も 行 わ れ 、 長 期 勤 続 者 に 対 す る 過 度 処 遇 の 是 正 を は じ め 、「 信 賞 必 罰 」の 人 事 制 度 が 提 起 さ れ 、い わ ば 学 歴 ・ 勤 続 年 数 に 依 存 し た 年 功 序 列 的 な 人 事 慣 行 が 能 力 ・ 実 績 に 基 づ く 成 果 主 義 的 人 事 管 理 へ の 移 行 が 求 め ら れ た 。 一 方 、教 育 改 革 の 側 面 か ら 、公 務 員 で あ る 教 職 員 の 人 事 管 理・評 価 の 在 り 方 に 対 し て 、教 育 改 革 国 民 会 議 は 、「 教 師 の 意 欲 や 努 力 が 報 わ れ 評 価 さ れ る 体 制 」 と い う 教 職 員 の 職 能 と 意 欲 を 伸 ば す 人 事 評 価 制 度 の 構 築 を 政 策 方 針 と し て 提 案 し た 。 そ の 政 策 方 針 の 実 行 に 関 し て は 、 各 都 道 府 県 教 育 委 員 会 に 各 地 方 の 実 情 に 合 わ せ て 最 善 の 仕 方 を 考 え た 上 で 、 独 自 に 教 職 員 の 職 能 を 伸 ば せ る 人 事 評 価 管 理 体 制 を 構 築 す る よ う 要 請 し た 。 そ れ は 地 方 教 育 委 員 会 の 判 断 を 尊 重 す る 方 針 で あ っ た 。 し か し な が ら 、 行 政 サ イ ド が 要 請 し た 組 織 ・ 人 員 管 理 に 主 眼 を 置 い た 能 力 ・ 実 績 主 義 の 政 策 方 針 と 、 教 育 サ イ ド が 発 信 し た 教 員 の 意 欲 と 資 質 向 上 、 お よ び 職 務 遂 行 の プ ロ セ ス に 重 点 を 置 い た 政 策 方 針 と に は 微 妙 な ズ レ が あ り 、そ れ は 個 人 レ ベ ル( 能 力・実 績 )と 集 団 レ ベ ル( 同 僚 性 を 活 か し た 学 校 組 織 の 組 織 力 の 向 上 ) と い う 、 容 易 に は 整 合 し な い 異 な る 次 元 の 政 策 コ ン セ プ ト が 複 合 さ れ た も の で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 第 3 章 で は 、「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」 は 、 教 職 員 の 「 能 力 」 と 「 実 績 」と を 評 価 対 象 と し て い る が 、本 来 、教 職 員 は 如 何 に 評 価 さ れ る べ き か と い う 、 専 門 職 と し て の 教 職 の 本 質 に 関 わ る 問 題 を 考 察 し た 。 教 職 員 は 児 童 生 徒 に 知 識 基 盤 社 会 に 対 応 で き る 知 識 ・ ス キ ル ・ 態 度 を 教 え な け れ ば な ら な い 役 割 を 担 っ て い る が 、 そ の 知 識 ・ ス キ ル と は 既 存 の 知 識 を 考 案 、応 用 、展 開 し た 上 で 創 出 さ れ た も の で 、教 職 は 高 度 の 深 い 専 門 性 が 必 須 で あ る 。 児 童 生 徒 を し て 学 習 に 導 く た め に 、 有 す べ
き 専 門 的 な 知 識 ・ ス キ ル は 従 来 と 比 べ て 、「 無 境 界 性 」 と 「 複 合 性 」 と い う 特 徴 が 目 立 ち 、 さ ら に は 教 育 活 動 の 精 進 に 不 可 欠 な 省 察 と 判 断 と い っ た 精 神 性 や 、具 体 的 に 定 義 し が た い「 不 確 実 性 」が 潜 ん で い る こ と が 確 認 で き た 。 こ れ は ま さ に 教 職 員 が 求 め ら れ る 資 質 ・ 能 力 で あ り 、 「 専 門 職 性 」 の 本 質 で あ る と い え る 。 と こ ろ が 、 教 職 員 は 一 般 的 に 専 門 職 と し て は 認 め ら れ て い な い 実 情 に 加 え 、教 職 員 の 職 務 内 容 、職 務 遂 行 能 力 に 関 す る 定 義 が 確 立 し 難 く 、 従 っ て 評 価 基 準 の 設 定 に 関 し て も 定 め 難 い 現 状 に あ り 、 教 職 員 の 実 績 や 能 力 を 評 価 す る こ と 自 体 の 困 難 さ に つ い て 論 究 し た 。 他 方 、 国 民 教 育 制 度 を 確 立 し た 近 代 日 本 の 公 文 書 な ど を 通 し て 、 国 家 に よ る 教 職 へ の 認 識 と 位 置 づ け を 整 理 し 、 教 職 員 は 公 務 員 で あ り な が ら 、一 般 公 務 員 と は 異 な る 職 責 を 有 す る 特 有 の 性 格 を 有 す る 存 在( 特 殊 性 )で あ る こ と の 意 味 を 確 認 し た 。そ の 上 で 、こ れ ま で ど の よ う に 評 価 さ れ て き た か を 昭 和 33 年 の 勤 務 評 定 に 戻 っ て 捉 え 、戦 後 教 育 行 政 史 を 踏 ま え る こ と で 、 き わ め て 政 治 的 意 味 合 い の 強 い 事 情 に あ っ た こ と が 、多 く の 都 道 府 県 で は 勤 務 評 定 を「 形 骸 化 」せ ざ る を 得 な か っ た こ と を 明 ら か に し た 。 第 4 章 で は 、 文 部 科 学 省 は 、 勤 務 評 定 か ら 目 標 管 理 手 法 に 入 れ 替 え た 「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」 を 推 進 す る こ と に な る が 、 こ れ に 先 立 っ て 、ま ず は 東 京 都 、神 奈 川 県 、埼 玉 県 が 先 進 的 に 教 職 員 評 価 制 度 の 改 革 を 展 開 し た の で 、 こ れ を 分 析 す る こ と で 「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 」 の 「 モ デ ル 型 」を 把 握 し た 。そ の 後 、全 国 的 に 教 職 員 評 価 制 度 の 改 善・改 革 が 進 行 し 、 文 部 科 学 省 は 各 都 道 府 県 を 対 象 に そ の 進 捗 状 況 を 調 査 し て い る の で 、こ れ に よ っ て「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」の 全 国 的 動 向 を 捉 え た 。各 都 道 府 県 で は 、そ の 目 的・位 置 づ け と 評 価 結 果 の 運 用 手 法 な ど 多 様 に 展 開 さ れ て い る こ と が 確 認 で き た 。 し か し 、 統 計 調 査 だ け で は 、 そ の 具 体 像 が 十 分 に 把 握 で き な い た め 、 第 5 章 以 降 は 第 Ⅱ 部 と し て 、 9 県 の 教 育 委 員 会 を 訪 問 し て イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を し た 。 第 5 章 で は 、9 県 の 教 育 委 員 会 へ の 調 査 意 義 と 調 査 の 枠 組 み 、そ し て イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 含 め た 実 態 調 査 の ア プ ロ ー チ に つ い て 分 析 し た 。
第 6 章 と 第 7 章 で は 、 教 職 員 人 事 評 価 制 度 が 各 自 治 体 に お け る 制 度 構 成 と 運 用 手 法 と の 実 態 に つ い て 追 究 し た 。 ま ず 、 6、 7 章 に お け る 各 節 の 前 半 で は 、 東 北 六 県 お よ び 愛 媛 県 、 香 川 県 と 広 島 県 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 対 し て 、 そ の 評 価 制 度 の 仕 組 み に つ い て 、 県 教 育 委 員 会 が 公 表 し た 手 引 き や 実 施 要 領 な ど の 書 面 資 料 と 教 育 委 員 会 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 通 し て 整 理 し 考 察 し た 。 計 9 つ の 自 治 体 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 関 し て は 、 大 枠 に 東 北 6 県 の 「 目 標 管 理 手 法 を 用 い る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」 あ る い は そ の 変 型 タ イ プ と 愛 媛 、 香 川 、 広 島 の 3 県 の 「 改 善 し た 勤 務 評 定 を 継 承 し た 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」 の タ イ プ と に 分 け ら れ る 。 各 自 治 体 が 目 標 管 理 手 法 を 主 た る 位 置 に 導 入 す る か 、 あ る い は 勤 務 評 定 を 主 た る 位 置 に 継 承 す る か と い う 評 価 方 式 の 選 定 で は 、 実 は 旧 勤 務 評 定 の 運 用 状 況 と 関 わ っ て い る こ と が 確 認 で き た 。 具 体 的 に い う と 、 東 北 6 県 の よ う に 旧 勤 務 評 定 が 形 骸 化 し て い た 場 合 、 旧 勤 務 評 定 を 廃 止 し た う え で 、 目 標 管 理 手 法 を 地 方 公 務 員 法 に 定 め る 勤 務 評 定 と し て 導 入 す る こ と に な っ た 。 そ れ に 対 し て 、 愛 媛 、 香 川 、 広 島 の 3 県 の よ う に 旧 勤 務 評 定 の 評 価 手 法 を 見 直 し た 上 で 現 行 制 度 と し て 対 応 す る 場 合 は 、 旧 勤 務 評 定 は 現 在 に 至 る ま で 人 事 管 理 シ ス テ ム と し て 機 能 を し て き た と い う 背 景 が あ る 。 そ の 場 合 、 目 標 管 理 手 法 が 勤 務 評 定 の 補 完 ツ ー ル と し て 、 愛 媛 県 は 学 校 に 活 用 の 周 知 を 、 香 川 県 は 管 理 職 に 限 定 し て 、 広 島 県 は 全 教 職 員 に 導 入 し て い る も の の 、 人 事 管 理 的 な 運 用 よ り 教 職 員 の 意 欲 的 な 取 組 を 促 す 目 的 と し て 運 用 さ れ て い る と い う 実 情 が 把 握 で き た 。 9 県 の 調 査 結 果 か ら 、 各 自 治 体 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 が 形 成 さ れ る 際 に は 、 外 的 推 力 で あ る 国 の 政 策 方 針 と 、 評 価 の 内 的 価 値 で あ る 教 職 の 特 殊 性 と の 関 係 性 だ け で な く 、 そ れ 以 外 に 、 各 都 道 府 県 の 抱 え る 歴 史 的・文 化 的・政 治 的 事 情 を 反 映 し た「 教 育 文 化 」の 側 面 が 重 要 な 影 響 要 因 で あ る と 推 察 で き た 。 第 6 章 と 第 7 章 に お け る 各 節 の 後 半 で は 、 各 自 治 体 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 実 際 的 運 用 に つ い て 各 教 育 委 員 会 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調
査 を 通 し て 確 認 し た の で 、 以 下 2 つ の パ タ ー ン に 分 け た 上 で 、 そ の 共 通 し て い る 部 分 の み を 抽 出 し 具 体 的 な 調 査 結 果 を 説 明 す る 。 第 1 に 、「 目 標 管 理 手 法 を 用 い る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」の タ イ プ に 関 し て 、前 述 の 通 り 、旧 勤 務 評 定 が 人 事 管 理 的 な 機 能 を 喪 失 し 、い わ ば 形 骸 化 し た た め 、 旧 勤 務 評 定 を 廃 止 し た う え で 、 目 標 管 理 手 法 に よ る 評 価 制 度 が 地 方 公 務 員 法 で 定 め た 勤 務 評 定 と し て 運 用 さ れ て い る 。 こ の 場 合 、 目 標 管 理 手 法 は 教 職 員 人 事 評 価 制 度 の 軸 と な り 、 教 職 員 の 自 己 申 告 に よ る 目 標 の 設 定 ・ 取 り 組 み ・ 達 成 度 評 価 と 評 価 者 と の 面 談 と い う PDCA サ イ ク ル に 基 づ く 1 年 間 の 取 り 組 み を 通 し て 進 め ら れ て い る 。 そ の 目 標 管 理 手 法 は 、 職 務 遂 行 状 況 に 対 す る 教 職 員 自 身 の 省 察 ・ 気 づ き を 引 き 起 こ し そ の こ と が 主 体 的 な 資 質 能 力 向 上 へ の 精 励 に つ な が る と 見 ら れ 、 事 実 、 評 価 者 と 教 職 員 と の 面 談 を 通 し て 双 方 の 意 思 疎 通 が 果 た さ れ る こ と で 、メ リ ッ ト が 確 認 で き た 。一 方 で 、目 標 管 理 手 法 は 個 人 単 位 で の 発 想 で あ り 、 教 職 員 自 身 の 挑 戦 や 課 題 が 目 標 の 内 容 に な り 、 そ の 個 人 的 な 目 標 を め ぐ る 取 組 と 達 成 状 況 が 評 価 対 象 と さ れ 、 そ れ ら 個 人 的 な 職 務 遂 行 状 況 に 基 づ い た 評 価 結 果 が 人 事 管 理 の 基 礎 資 料 と な る 仕 組 み で あ る 。 し か し 、 問 題 は 個 々 人 が 設 定 し た 目 標 の 困 難 度 が 統 一 的 に 調 整 し が た い た め 、 自 己 目 標 が 絶 対 的 な 評 価 指 標 で は な く な り 、 全 教 職 員 を 含 め た 集 団 に お け る 人 事 管 理 に 反 映 す る 際 の 適 正 性 に 疑 問 が 残 っ た 。 ま た 、 そ も そ も 旧 勤 務 評 定 の 時 代 か ら 教 職 員 人 事 評 価 制 度 が 長 期 に 亘 っ て 人 事 管 理 機 能 が 不 完 全 の ま ま で あ っ た た め 、 勤 務 評 定 を 目 標 管 理 手 法 に 入 れ 替 え た と し て も 、 評 価 結 果 の 人 事 運 用 が 依 然 と し て 教 職 員 団 体 に 激 し く 反 発 さ れ 、 そ の 実 行 の 難 し い 現 実 が イ ン タ ビ ュ ー 調 査 で 窺 え た 。 そ れ を 配 慮 し た 解 決 策 は 、 旧 勤 務 評 定 の 人 事 管 理 機 能 を 別 立 て の「 昇 給 制 度 」と し て 生 き 返 ら せ 、別 枠 の 評 価 と し て 二 元 的 に 運 用 す る こ と で 、 教 職 員 の 昇 給 決 定 に 使 用 さ れ る こ と に な っ て い る 。 し か し 、 目 標 管 理 に よ る 評 価 手 法 は 地 公 法 で 定 め た 勤 務 評 定 と し て 位 置 づ け ら れ る 原 則 に 戻 っ て 考 え る な ら 、 目 標 管 理 手 法 に よ る 評 価 結 果 を あ え て 人 事 管 理 に 運 用 し て い な い 点 は 、制 度 と し て 実 に「 パ ラ ド ッ ク ス 」
で あ る と 指 摘 で き る 。 第 2 に 、「 勤 務 評 定 を 改 善 し た 上 で 継 承 し た 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」の タ イ プ に 関 し て は 、 旧 勤 務 評 定 が 形 骸 化 し な か っ た た め 、 評 価 結 果 を 人 事 管 理 に 活 か す こ と が 当 た り 前 の よ う な 雰 囲 気 に な っ て お り 、 評 価 結 果 を 人 事 管 理 に 活 用 す る こ と が 明 確 に 定 め ら れ 、 実 際 に も そ の よ う に 運 用 さ れ て い る 。 目 標 管 理 手 法 の よ う に 評 価 者 と 教 職 員 と が 定 期 的 に 意 思 疎 通 の で き る 面 談 や 目 標 の 取 り 組 み に よ る 能 力 の 向 上 な ど の 利 点 は な い が 、 そ の 代 わ り に 、 評 価 結 果 に 基 づ い た 適 材 適 所 の 人 事 配 置 を 通 し て 、 教 職 員 の 人 材 育 成 と 資 質 向 上 が 図 ら れ て い る こ と が 分 か っ た 。ま た 、評 価 作 業 が 煩 雑 な 目 標 管 理 手 法 を 導 入 し な い( 限 定 導 入 )こ と に よ っ て 、教 職 員 の 業 務 負 担 を 軽 減 す る こ と 実 現 で き た 。全 体 的 に 、 勤 務 評 定 を 継 承 し た タ イ プ の 教 員 評 価 制 度 が 「 人 事 管 理 」 と い う 側 面 に 関 し て は 、 比 較 的 に 効 果 的 で あ る と 認 め ら れ る 。 し か し 、 そ の 評 価 結 果 は 旧 来 通 り 未 開 示 の ま ま と な る た め 、 評 価 制 度 自 体 は 教 職 員 の 資 質 向 上 に 直 接 の 働 き か け が 発 生 し て な い と 指 摘 で き る 。 評 価 結 果 を 教 職 員 へ フ ィ ー ト バ ッ ク す る こ と を 含 め 、 勤 務 評 定 を 継 承 し た 教 職 員 人 事 評 価 で は 、 教 職 員 の 職 能 向 上 に 資 す る 評 価 プ ロ セ ス を 編 み 出 す 工 夫 が 必 要 で あ る 。 ま た 、 本 タ イ プ の 評 価 制 度 に お い て は「 評 価 者 」が 主 役 で あ り 、評 価 結 果 の 妥 当 性 ・公 正 性・納 得 性 の 観 点 か ら 評 価 者 の 評 価 能 力 が 問 わ れ る 。 そ の た め 、 評 価 者 の 評 価 能 力 や リ ー ダ ー シ ッ プ の 発 揮 に 特 化 し た 研 修 の 整 備 が 評 価 制 度 の 成 否 に 関 わ る と 指 摘 で き る 。 以 上 の 研 究 結 果 を 踏 ま え 、 日 本 に お け る 教 職 員 人 事 評 価 制 度 に 関 し て は 、文 科 省 の 主 導 に よ る「 教 職 員 の 資 質 向 上 」と「 学 校 の 活 性 化 」と い う 教 育 的 観 点 に 基 づ く 教 員 の 職 能 成 長 の 要 請 と 、「 小 さ な 政 府 」に 始 ま る「 行 政 改 革 」の 観 点 に 基 づ く 学 校 組 織 の 効 率 的 管 理 の 要 請 と い う 2 軸 で そ も そ も 構 成 さ れ て い る と 捉 え ら れ る 。 し か し 、 そ う し た 本 質 を 有 す る「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」の 理 念 が 、そ の ま ま 地 方 に お い て 実 施 さ れ る と は 限 ら な い 。む し ろ 理 念 と 実 態 と の 間 に は 乖 離 が 生 じ る 。 な ぜ な ら 、地 方 に は そ の 地 方 固 有 の 歴 史 的・社 会 的・文 化 的 な 風 土 が あ
り 、 都 道 府 県 教 育 委 員 会 は 地 方 の 実 情 を 踏 ま え た 独 自 の 具 体 的 施 策 を 立 案 す る 必 要 が あ る か ら で あ る 。 中 央 の 理 念 と 地 方 の 実 情 と の 間 に 挟 ま れ た 都 道 府 県 教 育 委 員 会 は 、 現 実 的 な 選 択 を し な け れ ば な ら な い 。 そ れ は 時 代 と 社 会 が 変 容 す る 中 で 、 動 的 に 理 念 と 現 実 と の 間 の 均 衡 点 を 探 り 続 け 、 外 的 推 力 と 内 的 価 値 と に 対 す る 最 善 の 選 択 を 導 く プ ロ セ ス で あ る 。 本 研 究 に お い て 提 示 す る 具 体 的 事 例 か ら 、 そ う し た 現 象 を 捉 え る こ と が で き た 。 他 方 、旧 勤 務 評 定 を 廃 止 し た う え で 導 入 し た 目 標 管 理 手 法 に よ る「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」 で は 、 目 標 管 理 手 法 に よ る 評 価 結 果 と 人 事 運 用 と の 乖 離 が 生 じ て い る こ と が 実 態 調 査 に お い て 多 く み ら れ た 。 宮 城 県 を 例 に と れ ば 、 県 教 育 委 員 会 が 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 を 導 入 す る た め に 、 教 員 の 資 質 向 上 の 側 面 を 最 優 先 の 目 的 と し て 強 調 せ ざ る を 得 ず 、 結 果 的 に 、 学 校 目 標 と 離 れ て 個 人 的 見 込 み で 資 質 向 上 を 目 ざ す 教 員 が 出 現 し 、 学 校 の 活 性 化 や 人 事 管 理 に 直 接 に は 活 用 で き な い 事 態 が 見 ら れ た 。「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」で は 、人 事 処 遇 に 生 か す こ と は 困 難 で あ る の で 、 人 事 管 理 上 必 要 な 評 価 結 果 と 処 遇 が 可 能 な よ う に 、 別 枠 で「 新 昇 給 制 度 」を 設 定 す る と い う 経 緯 が 見 ら れ た 。し か し 、そ の 実 質 の 人 事 管 理 機 能 を 果 た す「 新 昇 給 制 度 」は 、元 来 の 教 職 員 の 資 質 向 上 と 学 校 の 活 性 化 と い う 目 的 か ら 離 れ 、 評 価 方 法 と 評 価 基 準 が 曖 昧 で 、 そ の プ ロ セ ス も 公 開 さ れ て い な い 。言 わ ば 、「 新 昇 給 制 度 」は 旧 勤 務 評 定 を 別 形 式 で 生 き 返 ら せ た と 言 っ て も 過 言 で は な い 。 目 標 管 理 手 法 と 別 立 て に 作 ら れ た 人 事 運 用 の た め の「 新 昇 給 制 度 」は 、「 新 し い 教 職 員 評 価 制 度 」 が 目 指 し た あ り 方 と は 異 な る 結 果 を も た ら し た と 指 摘 で き る 。 も う ひ と つ 、 公 務 員 制 度 に お け る 人 事 評 価 と 専 門 職 と し て の 教 員 の 在 り 方 に 関 わ る 問 題 で あ る が 、 専 門 職 と し て の 教 職 を 志 向 す る な ら 、 民 間 企 業 や 一 般 公 務 員 に お け る 人 事 管 理 ・ 人 事 評 価 は 、 そ の ま ま 教 員 評 価 に は な じ ま な い 側 面 が あ る こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 第 3 章 で 追 究 し た よ う に 教 職 員 の 職 務 は 複 雑 で 多 岐 に わ た り 、 し か も 際 限 が な い 。職 務 内 容 が 限 定 的 で あ れ ば 、そ の 成 果 も 測 定 可 能 で あ る 。教 員
の 場 合 、 職 務 内 容 が 曖 昧 か つ 無 限 定 で あ り 、 そ の 成 果 の 測 定 も 困 難 で あ る 。 こ の た め 、 民 間 企 業 で 開 発 さ れ た 組 織 マ ネ ジ メ ン ト 論 や 成 果 主 義 的 人 事 管 理・人 事 評 価 を 杓 子 定 規 に 教 員 評 価 に 適 用 す る の で は な く 、 教 職 の 特 殊 性 を 踏 ま え た 教 員 評 価 制 度 を 開 発 す る 必 要 が あ る 。 都 道 府 県 教 育 委 員 会 は 、 民 間 企 業 や 一 般 公 務 員 と 教 育 公 務 員 と の 職 務 の 違 い を 認 識 し た う え で 、 現 実 的 か つ 効 果 的 な 制 度 の 運 用 を 図 ら な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て 、今 後 の「 新 し い 教 職 員 人 事 評 価 制 度 」の あ り 方 と し て 求 め ら れ る こ と は 、 画 一 的 な 運 用 と 一 般 化 は 避 け て 、 教 育 現 場 の 事 実 に 即 し て 、よ く 面 談 を す る こ と で あ る 。校 長・教 頭 と 教 員 が そ の 仕 事 の 事 実 か ら 多 く の こ と を 語 り 合 え る な ら 、 互 い に 教 育 の 専 門 家 と し て 理 解 と 納 得 の も と に 、新 し い 道 を 見 出 す こ と が 期 待 で き る 。そ う で あ れ ば 、 評 価 結 果 の 開 示 と 異 議 申 し 立 て の 権 利 保 障 は 不 可 欠 な 条 件 で あ る 。 た だ し 、評 価 し た 以 上 は 、正 し く 人 事 管 理 に 生 か す こ と で あ る 。教 職 員 の 雇 用 契 約 が 終 身 雇 用 に 近 く 、能 力 形 成 も「 習 熟 能 力 」の 性 質 と 類 似 す る た め 、 教 職 員 に 安 定 的 に 成 長 す る 賃 金 体 系 と 長 期 に わ た る 評 価 の 蓄 積 に よ る 人 事 配 置 と い っ た 人 事 管 理 の 運 用 が 適 切 と な る 。 さ ら に 、 豊 か な 面 談 に 支 え ら れ た 教 職 員 評 価 と 、 適 材 適 所 に 生 か す 人 事 管 理 が 展 開 さ れ る こ と で 、 未 来 へ の 可 能 性 が 拓 か れ る の で あ る 。