複合生態フィールド教育研究センター報告 第26
号
著者
東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド
教育研究センター
雑誌名
複合生態フィールド教育研究センター報告
巻
26
ページ
1-87
発行年
2010-12-27
URL
http://hdl.handle.net/10097/00129839
複 合 生 態 フ ィ ー ル ド 教 育 研 究 セ ン タ ー 報 告 東 北 大 学 大 学 院 農 学 研 究 科 附 属 複 合 生 態 フ ィ ー ル ド 教 育 研 究 セ ン タ ー 第 二 十 六 号
複合生態フィールド教育研究センター報告
第
26
号
平成22年12月
No.26
December 2010
東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター
Bulletin of Integrated Field Science Center
Bulletin of Integrated Field Science Center
序 文
国立大学が国立大学法人化して 6 年が経過した。その間,運営費交付金は減少を続け,老朽化している施設や備品の 更新もままならず,北山放牧地への道路の崩落等の災害に見舞われ,フィールドセンターの運営は厳しい状態が続いて いる。その一方で,「開かれたフィールドセンター」として,公開講座や小中学校の総合教育等への協力など地域社会へ の貢献活動は活発となっている。こうした活動で,川渡と女川の両生産システム部が受け入れている児童・学生・市民 の数は延べ約 900 名に達している。教員が一般市民向けの講座や出前授業とする機会も増えてきている。平成 21 年には, 新宿高島屋で開催された第 2 回「大学は美味しい」フェアに出展し,生産物(ブルーベリージャム,乾燥シイタケ,萩丸) の販売を通して,東京の消費者にフィールドセンターの宣伝を行った(実際には来客の対応で手一杯で十分に対応でき たとは言い難いが)。平成 22 年には,日本短角種の「グリーン・ヘルス・ウェルフェア牛肉」をもって第 3 回のフェア に出展した。 国立大学法人化以前の大学の対外的活動は,それぞれの専門の分野の学会や講演会が中心であり,一般市民向けに教 育研究の成果を説明するという機会はそれほど多くはなかった。しかし,冒頭に述べたように国の予算事情は厳しく, 科学技術に対する国民の眼は冷静である。「研究」という大儀名分で何でも許され多額の国費が投入されるという時代で はない。また自民党から民主党の政権交代に伴って行われた「仕分け」作業では,科学技術に対する理不尽な意見がま かり通った。こうした時代だからこそ,センターで行われている教育研究の内容,そしてその成果を積極的に一般市民 に公開し,そのことを通じて,私たちセンターへの支持基盤を確実なものとしていく必要があるだろう。 一般市民向け活動のみならず,大学本来の役割である教育の面でも新たな展開が求められている。文部科学省は大学 の附属施設のより効果的な利用を図るために,農場を含むさまざまな附属施設の共同利用を進めるべきとしている。当 センターは,複合生態フィールドとして他大学にはない広大なフィールドと優秀で充実したスタッフを有しており,こ れらを他大学の学生・院生の教育に有効に活用する方向を進めていくことが必要である。 大学全体では職員数の削減が続く中,幸いフィールドセンターに常駐する教員数は充実してきている。また,「地球共 生型新有機性資源循環システムの構築」(PICS)プロジェクトの中核として,また「生態適応グローバル COE」の国際モ デルフィールドとして,農学研究科以外の教員と本センター教職員との共同研究が進展している。センター内でも「知 の間欠泉」フィールドセンターセミナーが定期的に開催され,センターを中心として教育研究活動は充実しつつある。 こうした教育研究活動を通してフィールドセンターの存在意義を高めていく。それこそがセンターのさらなる発展につ ながるはずである。 平成 22 年 12 月 20 日 複合生態フィールド教育研究センター長齋 藤 雅 典
目 次
Ⅰ . 研 究 報 告
1. 投稿論文 1 2. 研究業績 1) 学会誌等への掲載論文 20 2) 著書・総説等 22 3) 口頭発表論文 24Ⅱ . 業 務 報 告
1. 概 況 33 2. 教育関係 42 3. 開放講座等 45 4. 平成 21 年度センター主催行事・支援主要行事 51 5. 平成 21 年度の主な来訪者等 52 6. 農産・飼料関係 54 7. 畜産関係 63 8. 材木関係 71 9. 機械関係 72 10. 事務関係 75Ⅲ . 資 料
1. 平成 21 年度複合生態フィールド教育研究センター技術発表研究会 78 1) 冬期湛水・有機栽培水田における耕種的抑草効果の検討 78 2) グリーン・ヘルス・ウェルフェア牛肉の生産の技術開発・研究 80 3) 生態適応 GCOE 拠点の整備に関する報告 81 2. 研修報告 チーズ製造における理論と技術について 82 3.2009 年 ( 平成 21 年 ) の気象概況 84 4. 職員等一覧表 86目 次
1. 投 稿 論 文
(1)横田 祥子・池田 直史・鈴木 裕・古澤 早耶・小倉 振一郎・佐藤 衆介 牛肉,豚肉および鶏肉の購入に対する消費者の意識調査 1 (2)山本 希・丹内 正樹・中井 裕 未利用バイオマスのリサイクルに関する研究−野菜・果物残渣のコンポスト化実証試験 9 (3)山本 理恵・三枝 正彦 遺伝子組換え植物見本園の作成と継続的モニタリング及び情報提供 13 論文データの訂正 192. 研 究 業 績
1)学会誌等への掲載論文 20 2)著書・総説等 22 3)口頭発表論文 241 わが国の食料消費構造は,戦後欧米化が進み,現在で は日常の食卓に食肉が当たり前のように料理として振る 舞われている。わが国で消費される食肉は,主に牛肉, 豚肉および鶏肉であり,これらは多様な食生活の重要な 食材となっているが,近年食肉の安全性に関わる状況が 大きく揺らぐ出来事が発生した。すなわち,クローン技 術による家畜生産,口蹄疫,2001 年に発生した BSE 問 題,食品産業の偽装事件,鳥インフルエンザの発生,お よび近年では豚を由来とする新型インフルエンザの発生 等である。こうした状況の中で,消費者がそれぞれの食 肉にどのようなイメージを抱き,どのような食肉を求め ているのかを明らかにすることは,今後わが国の食肉産 業の展開に向けて有用な情報の提供につながると考えら れる。 そこで筆者らは,消費者は食肉を購入する際にどのよ うなことを意識しているのか,ということについてアン ケート調査を行った。 材料と 分析に必要なデータを収集するため,アンケート調査 を実施した。質問項目として,わが国で一般的に販売さ れている牛肉,豚肉および鶏肉について,以下の 4 項目 に焦点を当てた。 1.各精肉に対する消費者の意識の比較 2.特に牛肉について,購入の際に重視する要素,脂 肪の割合の好みとその理由 3.飼育方法,機能性および快適飼育度が表示された 場合の重要性 4.食肉に対する意見および要望 実際に使用したアンケートの内容を以下に示す。 A.回答者の情報 1) 性別(男・女) 2) 職業(学生・社会人・主婦・その他 [ 具体的に記入 ]) 3) 年齢(20 代・30 代・40 代・50 代・60 代以上) 4) 一緒に食事をとる家族構成(両親・配偶者・子供 2 人・ 1 人で,など自由記述) B.普段買う肉について 1) 以下の肉を週にどの程度買いますか。また,1 番多 く買う肉に○をつけその理由をお答え下さい。 牛肉 ほぼ毎日 ・ 5 ~ 4 回 ・ 3 ~ 2 回 ・ 1 ~ 0 回 豚肉 ほぼ毎日 ・ 5 ~ 4 回 ・ 3 ~ 2 回 ・ 1 ~ 0 回 鶏肉 ほぼ毎日 ・ 5 ~ 4 回 ・ 3 ~ 2 回 ・ 1 ~ 0 回 【理由: 自由記述 】 2) 各肉に対するイメージはどのようなものがあります か(高級,ヘルシー,など)。また,購入する際 に一番重視する要素を次の中から選んで記号でお 書き下さい。 重視する要素:〔値段,生産国(国産,アメリカ産など), ブランド(神戸牛,仙台牛など),安全性,新鮮 さ(色),味,脂肪の割合〕 イメージ 重視する要素 牛肉 【 】 【 】 豚肉 【 】 【 】 鶏肉 【 】 【 】 3) 牛肉を購入する際,以下の要素をどのくらい重視し ますか。5 段階で評価して下さい(5: 非常に重視 する,4: ある程度重視する,3: どちらともいえ ない,2: あまり重視しない,1: 全く重視しない)。 A. 値段 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 B. 生産国(国産,アメリカ産など) 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 C. ブランド(神戸牛,仙台牛など) 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 D. 安全性 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 E. 新鮮さ(色) 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 F. 味 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 G. 脂肪の割合 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 4) 牛肉を購入する際,脂肪の割合はどの程度がよい と思いますか。理由もお書き下さい。 センター報告26 1-8(2010)
牛肉,豚肉および鶏肉の購入に対する消費者の意識調査
横田 祥子・池田 直史・鈴木 裕・古澤 早耶・小倉 振一郎・佐藤 衆介
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2 選択肢:多めの方がよい・ある程度あればよい・少 なめ ( 赤身 ) の方がよい・気にしない 【理由:自由記述】 5) 以下の要素の表示が行われたら,肉を買う際にど のくらい重視しますか。5 段階で評価して下さい (5: 非常に重視する 4: ある程度重視する 3: ど ちらともいえない 2: あまり重視しない 1: 全 く重視しない)。 ①飼育方法 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 (放牧,畜舎飼いなど) ②機能性 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 (高血圧やガンの予防作用など) ③快適飼育度 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 (飼育期間中の怪我,病気,ストレスの総合評価) 6) 最後に,消費者の立場から肉を買う上での意見・ 要望等があればお書きください(自由記述)。 このアンケートを, 2008 年 7 月下旬から 9 月中旬にか け,著者らおよびその親類または知人を通じて宮城,東 京,埼玉,福井および長野の各都県の住民に配布した。 回答者数は 193 人であり,依頼者の 95% から回答を得た。 果と 回答者の内訳をみると,男性が 60 人と女性の 133 人に くらべやや少ないものの,各年代から比較的バランスよ く回答が得られた(図 1)。 日常生活で一緒に食事をとる相手として,配偶者が最 も多く(53.4%),次いで子供(41.5%)であった(表 1)。 また,「一人で食事をとる」という回答は 25.9% であった。 この調査で得られた集計結果とそこから考察されるこ とを,性別および年代間の違いに注目しながら述べてい く。 1.消費者の食肉購入行動 各食肉を 1 週間に購入する回数を示したのが図 2 であ る。牛肉は週 0–1 回買うと答えた人が 79% で最も多かっ た。この理由として,価格が高いことからあまり頻繁に は購入せず,特売時にまとめて買いをすることが考えら れる。それに対し,豚肉および鶏肉は週 0–1 回および 2– 3 回買う人も多くみられた。これらの食肉は牛肉にくら べ低価格であり,1週間の食事で何回も食卓に上がるこ とが多い実態を反映していると推察される。 牛肉,豚肉および鶏肉の中でどの肉を最も多く買うか についての質問では,豚肉が 110 人と最も多く,次いで 鶏肉(41 人),牛肉(10 人),無回答(32 人)となった。 またその理由を図 3 に示した。ここで回答率とは,「そ の肉を最も多く買う」と答えた人に対するその理由を答 えた人の割合を意味する。また,「 料理のしやすさ 」 の 項目の中には 「 よく使うから 」「その肉を使ったメニュ ーが多いから」などを含む。 まず牛肉をみると,おいしさと料理のしやすさから購 入する人が多い一方で,「安さ」から選ぶ人は 3 種の肉 の中で最下位となった。消費者の購入行動として,基本 的に価格が「高い」と感じられた場合には購入しない(日 本食肉消費総合センター,2008b)。すなわち,消費者は センター報告第26 号 (2010) 表 1.日常生活で一緒に食事をとる相手. 食事の相手 人 数 親 42 (21.8) 配偶者 103 (53.4) 子供 80 (41.5) 兄弟,姉妹 12 ( 6.2) なし(一人で食事) 50 (25.9) その他 60 (31.1) カッコ内の数値は,回答総数(193 人)に対する割合(%)を示す. 図 1. アンケート回答者の性別 , 年代別および職業別人数
3 価格に対してきわめて敏感であるといえる。牛肉は高級 というイメージが強く,実際に 3 種の肉の中で最も値段 が高く家計に負担がかかるため,あまり購入されない(日 本食肉消費総合センター,2008b)と考えられる。本結 果より,安価であることは食肉購入の上で重要な要素と いえる。 「最も多く購入する」と回答した人数が最多となった豚 肉についてみると,目立った特徴は認められないものの, 「おいしさ」,「安価であること」および「料理のしやすさ」 が理由として挙げられた。さらに「体によい」,「栄養が 豊富である(豚肉は疲労回復に役立つビタミン B1 が豊 富)」といった理由から購入する人が多い結果となった。 すでに述べたように,豚肉は安価であることに加え,身 近な食肉小売店やスーパーなどで売られている部位や切 り方が豊富なため,様々な用途に対応できることが考え られる。 さらに鶏肉についてみると,安価を理由に購入する人 は 3 種の肉の中で最も多くなっているが,その一方で料 理のしやすさでは最下位となった。後述するが,鶏肉は 「ヘルシー」というイメージが強く,実際に「低脂肪だ から」という理由で購入する人が多い。このことから, 料理のしやすさや食材としての使いやすさが購入のポイ ントとなっているかもしれない。なお,消費者動向調査 (日本食肉消費総合センター,2008b)によれば,鶏肉は 冬季に購入世帯率が上昇する。鶏肉の最もポピュラーな 料理は唐揚げであり,次いで鍋料理となっている。この アンケートを冬期に実施していたとすれば,鶏肉につい てはこうした季節性が反映されたかもしれない。 以上のことから,食肉購入の際に重視される要素とし て,低価格であることに加え,料理のしやすさや用途の 多様性などの実用的な面も重視されており,食肉が低脂 肪,ビタミン豊富などの健康面へのメリットという付加 価値を兼ね備えていれば消費者にさらなる購入意欲をも たらすということが推察される。 2.各食肉に対する消費者の意識の比較 2-1)牛肉・豚肉・鶏肉のイメージ 牛肉では「高級」というイメージが半数以上を占め, 次いで「おいしい」イメージとなった。また鶏肉でも「ヘ ルシー」「安い」というイメージが強く,固定化してい る傾向が見られた。一方,豚肉では「安い」「庶民的」「栄 養がある・疲労回復」「おいしい」「ヘルシー」などイメ 横田ほか:食肉購入に対する消費者の意識調査 図 2. 牛肉 , 豚肉および鶏肉を購入する頻度 �� �� �� � �� �� �� �� ��� �� ��� ��� ��� ��� ������������� 図 3. 各食肉を最も多く購入する理由 � � �� �� �� �� �� �� �� �� �� � �� �� �� �� �� �� ��� �� � �� � �� �� � �� �� �� ������
ージに多様性が見られた(図 4)。また牛肉にのみ,「安 全面が不安(BSE)」という回答があった。牛肉の場合, 販売価格が豚肉および鶏肉のそれにくらべ高い(日本食 肉消費総合センター,2008a)ことや,「牛肉」からブラ ンド和牛を連想する消費者がいるため高級なイメージが 発生したものと推察される。豚肉ではイメージが分かれ たが,上位 2 項目の「安い」および「庶民的」はどちら も牛肉の「高級感」とは対照的なイメージである。消費 者動向調査(日本食肉消費総合センター,2008b)によ れば,年収が低いまたは成長期の子供を持つ世帯で豚肉 を多く購入している。低価格でかつ幅広い料理に用いる ことができる豚肉は,消費者にとって最も「庶民的」な 食肉であると思われる。また鶏肉のイメージについてみ ると,新小田ら(1992)が調査した結果では「料理しや すい」「低価格」「淡白で柔らかい」であり,健康を考え て購入する消費者が多かった。本結果は,それを裏付け るものとなった。 2-2)食肉を購入する際に重視する要素 牛肉,豚肉および鶏肉を購入する際に消費者がもっと も重視する要素を図 5 に示す。肉の種類別に,全体に対 するその要素を選んだ人数の割合で示されている。いず れの肉においても,「値段」「生産国」および「安全性」 について高い回答率が得られた。すでに述べたように, 消費者は基本的には価格を「高い」と感じると購入せず, 価格に対してきわめて敏感である。また,「生産国」の 情報は,近年消費者の関心が強い食肉の「安全性」を評 価する表示項目の 3 番目に挙げられており,いずれの食 肉も「国産」であれば 97% の消費者が購入するが,牛肉 では「アメリカ産」,豚肉では「中南米産」,鶏肉では「中国, 東南アジア産」で購入意向が低下するという報告がある (日本食肉消費総合センター,2008b)。消費者が食肉を 購入する際に「安全性」へ強い関心を示すことは,牛肉 では BSE 発生後に顕著に高まっているが(堀田,2004a; 2004b),豚肉でも 1980 年代からその傾向が認められてい る(堀内ら,1990)。 また同時に,この項目では肉の種類別の特徴もみられ た。すなわち,牛肉では「ブランド」,豚肉では「脂肪 の割合」,鶏肉では「新鮮さ」の要素が他の肉にくらべ 強く現れた。牛肉の場合,高齢者世帯ほど,また高収入 世帯ほどブランド牛肉を購入する傾向がある(日本食肉 消費総合センター,2008a;2008b)。またブランド和牛の 肉は他の肉とは異なり,高価格になっても購入量が減少 しない(日本食肉消費総合センター,2008b)。したがっ て,先に示したとおり牛肉は「高級」で「おいしい」と いうイメージが強いことから,多少高価格であってもブ センター報告第26 号 (2010) 4 図 5. 牛肉 , 豚肉および鶏肉を購入する際に重視する要素の比較 � � �� �� �� �� �� �� �� � �� �� ��
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図 4. 牛肉 , 豚肉および鶏肉のイメージ横田ほか:食肉購入に対する消費者の意識調査 5 ランド化して販売しやすい肉であると考えられる。次い で豚肉で「脂肪の割合」について多くの回答が得られた 理由として,脂身の少ない肉を求める消費者が多い(日 本食肉消費総合センター,2008b)こと,ならびに豚肉 は一般のスーパーマーケットや小売店で販売されている 部位や形態が多様であり,料理によって好ましい脂肪の 割合が変わることが考えられる。また鶏肉では「新鮮さ」 が重視されているが,それは他の肉にくらべ熟成期間が 短く痛みやすいため,消費者は新鮮さに対して特に注意 を払っていることがうかがえる。実際「鮮度の良さ」は, 消費者が食肉を購入する際に重視する基準の第 2 位とな っている(第 1 位は「安さ」である)(日本食肉消費総 合センター,2008b)。 図 5 のデータを男女別および年代別に集計した結果を 図 6 に示す。まず男女別にみると,値段は男性で,生産 国および安全性は女性でより重視する結果となった。ま た年代別にみると,若年層ほど値段を,高齢層ほど生産 国および安全性を重視する傾向があった。今回のアンケ ートの回答者の内訳として,男性の中には一人暮らしを している 20 代が多く,女性の中には中高年の主婦が多 かったことがこの様な結果をもたらした主な要因である と考えられる。図には示されていないが,一人暮らしの 20 代のみを集計したところ,男女ともに値段を重視する 傾向がみられた。このことをふまえると,家庭を持ち, 家族のために食事を作る機会が多くなると,値段のみな らず安全性にも配慮するようになることが伺える。また, 年代別および男女別いずれにおいても安全性および生産 国重視の傾向が似ていることから,生産国の情報を安全 性の指標としてとらえる消費者が多いと推察される。消 費者動向調査(日本食肉消費総合センター,2008b)によ れば,消費者はアメリカ産牛肉および中国・東南アジア 産鶏肉に対して特に強い抵抗感を示す。このことは,近 年の BSE 問題および鳥インフルエンザ発生に対する消費 者の懸念を示し,「国産のほうが外国産よりも安全」と 捉える人が多いことを意味している。また,同調査にお いて,食肉購入時の消費者の選定基準は,品質に関する 項目を除けば「生産国」や「産地・銘柄」等の「安全・ 安心」に関連する項目が高い結果となっている。これら のことから,各肉のイメージに一貫性は認められなかっ たが,食肉を購入する際に重視する要素は一部を除き概 ね同様であるといえる。 3.牛肉に対する消費者の意識 3-1)牛肉を購入する際に重視する要素 牛肉を購入する際に,「値段」,「生産国」,「ブランド」,「安 全性」,「新鮮さ」,「味」および「脂肪の割合」の各要素 をどの程度重視するかについて,5 段階で評価した結果 を図 7 に示す。「ブランド」以外の要素については,「非 図 6. 各食肉を購入する際に重視する要素の性別および年代間比較 � �� �� �� � �� � �� �� �� � �� �� � �� �� � �� �� �� � �������� � �� � �� �� �� �� ��� � �� � �� �� � �� � �� �� � �� �� � ���� 図 7. 牛肉を購入する際に重視する要素 �� �� � �� �� �� � � � � � � � � � �� �� � ����
常に重視する」または「ある程度重視する」と回答した 人が過半数を占め,特に「生産国」,「安全性」および「新 鮮さ」については「非常に重視している」と回答した人 が多い結果となった。前述の食肉の種類別のアンケート では,牛肉は他の肉にくらべブランドを重視する人が最 も多いという結果となったため,筆者らは「牛肉購入の 際にはブランドが比較的重視される」と予想していた。 しかし,牛肉に限定したこの問いでは,他の要素にくら べブランドはあまり重視されていないという結果となっ た。堀田(2004a;2004b)が実施した消費者調査でも同様 の結果が得られており,加えて高齢者ほど牛肉の購入頻 度は低いが高級牛肉を好み,購入時には生産国やブラン ド名を気にするという実態が示されている。今回の調査 では,回答者の中で 20 代の若者が 61 人と最も多かった ことが上記の結果をもたらした一因であると考えられる。 上のことから,牛肉を購入する際に重視する要素は他 の肉の購入時と類似しており,牛肉に特徴的な要素はな いことが明らかとなった。しかし,BSE 問題などの影響 からか,値段や鮮度だけでなく,生産国および安全性へ の意識が高まっているのは確かであり,「安く,安全で おいしい牛肉を食べたい」という消費者の意図が見て取 れる。 3-2)牛肉における脂肪の割合の好みとその理由 牛肉の好みの脂肪の割合について,「多め」,「ある程度」, 「少なめ」および「気にしない」,の 4 段階のどれを好む かについて,図 8 に結果を示した。好みの脂肪の割合に ついては,全体でみると「ある程度」または「少なめ」 を好むという回答が大部分を占め,男女間に大きな差は 認められなかった。年代別にみると,すべての年代で「あ る程度」および「少なめ」を好むという回答が大部分を 占めており,特に 30–50 代では「ある程度」を好むとい う回答が多く,20 代および 60 代では 30–50 代にくらべ「少 なめ」を好むという回答が多かった。 それぞれの脂肪割合を選択した回答理由についてみる と(図 9),まず「少なめ」がよいと回答した人では,20 センター報告第26 号 (2010) 6 図 9. 牛肉においてそれぞれの脂肪割合を好む理由 図 8. 牛肉の脂肪含有量に対する消費者の嗜好 �� �� � � �� � �� �� � �� �� � ����
代では「脂が苦手」,「太るから」という理由が多く,60 代では「健康のため」という理由が多くみられた。表現 は異なるものの,脂肪の少ない赤肉に対しては「美容・ 健康によい」というイメージがもたれているといえる。 また、30–50 代では「ある程度」と回答した人が多く認 められたが,その理由として「おいしさ」をあげる人が 多くみられたのと同時に,「脂肪が多すぎると健康に悪 い」のように健康に気を遣う回答もみられた。牛肉のお いしさと健康への配慮の両方を意識した結果ではないか と考えられる。なお消費者動向調査(日本食肉消費総合 センター,2008b)によれば,消費者の食肉購入時の留 意点として「脂肪が少ないこと」を選んだ人(44%)は「脂 肪が多いこと」(2.6%)にくらべはるかに大きかったも のの,「霜降りが少ないこと」を選んだ人(6.4%)は「霜 降りが多いこと」(12.4%)を選んだ人よりも少なかった。 消費者は食肉の「脂身」と「霜降り」とをまったく別の ものとして考えていると推察される。このことから,本 項目で「ある程度」または「少なめ」の脂肪割合を選択 した人の多くは,脂身をイメージした可能性がある。し かしこのことは同時に,低価格でヘルシーな赤肉主体の 牛肉の需要を示唆している。 以上より,脂肪の少ない赤肉を求める声は確実に存在 し,味や食感を改善していくことで,さらに多くの健康 に気を遣う中高年層に受け入れられるようになるのでは ないかと考えられる。 4.飼育方法・機能性・快適飼育度の表示の重要性 現在はまだ表示の行われていない飼育方法,機能性お よび快適飼育度がもし表示された場合,それぞれの要素 を購入の際にどの程度重視するかについて,5 段階で評 価された結果を図 10 に示す。すべての項目に対して「非 常に重視する」,「ある程度重視する」と回答した人が 50% 以上であったことから,関心はきわめて高いといえ る。また図には示していないが,性別,年齢別に集計し たところ,男性よりも女性,若年層よりも中高年層のほ うが各項目の表示をより重視する傾向にあった。また, 機能性と快適飼育度を重視する人がやや多い傾向がみら れた。これは,特定保健用食品や健康番組の影響で食品 の「機能性」という言葉が身近になっていること,およ び家畜福祉に関する消費者の関心の高まり(佐藤・岡本, 1996)から安全性の面から家畜がどのように飼育された のかについて関心を持つ人が多くなっているためと考え られる。これらの傾向は,すでに述べてきたように生産 国やブランド(産地・銘柄)への高い関心と一致する。 5.食肉に対する意見および要望 アンケートの最後に,食肉に対する希望または要望等 として記述されたものを取りまとめたのが図 11 である。 最近の食肉の安全性に関する報道の影響からか,安心・ 安全,明確で正しい表示を求める声が高いことがわかる。 また回答数は少ないが適切な飼育環境に対する要望もみ られた。佐藤・岡本(1996)の家畜福祉に関するアンケ ート調査によれば,わが国の一般市民の 70% 以上が「家 畜に対してストレスを与えない飼い方」を望み,「ある 程度の価格上昇をやむを得ない」と回答している。また, 小さい子供のいる世帯では「残留農薬」について,また 横田ほか:食肉購入に対する消費者の意識調査 7 図 10. 飼育方法 , 肉の機能性および快適飼育度の表示に関する消費者の意識 � � �� �� �� � � � � � � � � �� �� � ���� 図 11. 食肉に対する消費者の意見および要望
高齢者のいる世帯では「食品添加物」や「残留抗生物質」 について強い関心を示している(日本食肉消費総合セン ター,2008b)。これらのデータは,おいしさや低価格だ けではなく,安心して食べられる食肉とその安全性を示 す正しい表示が求められている結果といえる。「多少高 価格であっても,消費者自身が安全だと思える肉を買う」 といった意見もみられ,「安全は買うものだ」という意 識が生まれてきているように思われる。明確な基準や表 示方法などの規定を設けることで消費者の信頼を得るこ とができれば,「安全・安心」という消費者の目には見 えないものも商品化することが出来るかもしれない。 本調査を実施するにあたり,アンケートにご協力いた だいた皆様に厚く御礼申し上げる。本調査は東北大学農 学部応用動物科学系必修科目「畜産調査および見学」の 自主調査として 2008 年度に実施された。横田,池田, 鈴木および古澤の 4 名が主体的にアンケート調査を企画 し,データ解析および取りまとめを行い,その成果を陸 圏生態学分野の小倉と佐藤が論文として取りまとめた。 ご助言を賜った同学系の皆様に深く感謝申し上げる。 要 食の多様化が進み,安全性に対する消費者の意識が高 まっている現在,食肉に対する消費者の意識および要望 を知るため,193 名にアンケート調査を行った。 牛肉は週 0–1 回買う人が 79% で最も多かったが,豚肉 および鶏肉では 2–3 回買う人も多くみられた。また,最 も多く購入する食肉は豚肉,鶏肉,牛肉の順で多かった。 牛肉の購入理由は主に「おいしさ」と「料理のしやすさ」 であり,豚肉ではそれに加え「安価であること」,「体に よい」,「栄養が豊富である」など多様であった。また鶏 肉では「安価」を挙げた人が最多であった。 牛肉は「高級」「おいしい」というイメージが,鶏肉で は「ヘルシー」「安い」というイメージが強かった。一 方豚肉では「安い」「庶民的」「栄養がある・疲労回復」 「おいしい」「ヘルシー」などイメージに多様性が見られ た。しかし肉の種類によらず,消費者は「値段」「生産国」 および「安全性」を重視して購入していた。また牛肉で は「ブランド」,豚肉では「脂肪の割合」,鶏肉では「新 鮮さ」が他の肉にくらべ強かった。 牛肉購入の際,「生産国」,「安全性」および「新鮮さ」 が強く重視され,「ブランド」はあまり重視されていな かった。牛肉の脂肪割合については「ある程度」または 「少なめ」を好む人が大部分を占めた。「少なめ」を好む 人のうち,20 代では「脂が苦手」,「太るから」という理 由が,60 代では「健康のため」という理由が多かった。 飼育方法・機能性・快適飼育度の表示を重視して購入 すると回答した人は 50% 以上であり,男性よりも女性, 若年層よりも中高年層のほうが各要素をより重視する傾 向にあった。消費者は食肉に対して安心・安全,明確で 正しい表示を求める声が強く,適切な飼育環境に対する 要望もみられた。 以上の結果から,消費者は低価格であること,料理の しやすさや用途の多様性などの実用面を重視して食肉を 購入し,安心・安全,明確で正しい表示を求めている実 態が示された。 文 堀内 篤・曽根 勝・野口博道(1990)食肉市場におけ る豚肉ニーズに関するアンケート調査.静岡県中小家 畜試験場研究報告,3: 29–39. 堀田和彦(2004a)BSE 発生後の牛肉消費行動と意識構造 (1).畜産の研究,58: 853–860. 堀田和彦(2004b)BSE 発生後の牛肉消費行動と意識構造 (2).畜産の研究,58: 971–976. 日本食肉消費総合センター(2008a)平成 20 年度季節別 食肉消費動向調査報告(食肉販売店調査).pp. 1–249. 日本食肉消費総合センター(2008b)季節別食肉消費動 向調査報告(第 60 回消費者調査).pp. 1–296. 岡本直木・佐藤衆介(1996)家畜福祉に関する意識調査. 日本家畜管理学会誌,32: 43–52. 新小田修一・松岡尚二・井上政典・久木元忠延(1992)鶏卵・ 鶏肉に関する消費動向調査.九州農業研究,54: 117. センター報告第26 号 (2010) 8
センター報告26 9-12(2010) 1 に バイオマスとは,生物資源(bio)の量(mass)を表す 概念で,「再生可能な,生物由来の有機性資源で化石資 源を除いたもの」である(バイオマス・ニッポン総合戦略, 2006)。2006 年に国内で策定された「バイオマス・ニッ ポン総合戦略」によれば,循環型社会の形成,農林漁業・ 農山漁村の活性化,地球温暖化の防止に向けて,バイオ マスを総合的に最大限利活用し,持続的に発展可能な社 会を実現することを目標としている。それには「未利用 バイオマス」の利活用も含まれている。未利用バイオマ スの代表である農作物の非食用部は,年間で約 1300 万 t 発生しているが,その利用率は 30%と,家畜排せつ物な どの廃棄物系バイオマスの利用率(約 90%)よりもはる かに低い(農林水産省,2005)。このため,国内におけ る未利用バイオマスの利活用の促進が重要であると考え られる。コンポスト化はすでに一般的しているバイオマ ス利用技術であり,バイオマスの再生産が可能であるこ と,肥料として土壌に投入することにより,環境保全型 農業を推進できることなどから,未利用バイオマスにお いても有効な技術であると考えられる。 トウモロコシの皮は,農作物非食用部の一つであり, 日本国内においても年間で 244 万 t 発生すると推計され る(バイオマス情報ヘッドクォーター,とうもろこし の収穫量のバイオマス推計量 H16 年度計算値より推計)。 トウモロコシの皮はタンパク質,無機成分のほかに,難 分解有機物であるリグノセルロース(セルロース,ヘ ミセルロース,リグニン)を含む(Hang and Woodams,
2000)。一部は家畜用飼料,繊維として利用されている。 また国外においては畜ふんと混合して水素発酵すること により,水素を回収する研究(Prakasham et al.,2009)や, コウジカビを用いたクエン酸の発酵生産への利用も検討 されている(Hang and Woodams,2000)。コンポスト化を 行う場合,リグニンは初期には分解されず,また過程全 体での分解率も低いため(Tuomela et al.,2000),コン ポスト化への利用が進んでいないのが現状である。 パイナップルの冠芽は,国内では販売時,あるいは消 費時に除去される。一部は挿し木として繁殖に利用され ているが,その割合は低い。冠芽はヘミセルロースやリ グニンなどを含む。このため,パルプ製造の原料として の利用法が研究されている(Tran,2006)。また,抽出さ れたポリフェノールが,薬や機能性成分素材などの原料 として利用できる可能性が示されている(九州沖縄農業 研究センター,2003)。しかし,前述のようにリグノセ ルロースを含むことから,トウモロコシの皮と同様にコ ンポスト化は困難であった。 われわれはバイオプラスチックの生分解実験により,
未利用バイオマスのリサイクルに関する研究
−野菜・果物残渣のコンポスト化実証試験−
山本 希1・丹内 正樹2・中井 裕1 1東北大学大学院農学研究科 環境システム生物学分野,2東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターR e s e a r c h o n w a s t e b i o m a s s r e c y c l i n g : t h e t w o - y e a r t r i a l f o r c o m p o s t i n g o f r e s i d u e s o f f r u i t s a n d v e g e t a b l e s
N oz om i Y a m a m ot o, M a s a ki T a nna i , Y ut a ka N a ka iー
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図 1 2008 年度堆積処理試験の様子 a:搬入時の残渣,b:開始時(4/25), c および d:4/30,e および f:終了時(11/27) 図 2 2009 年度撹拌処理試験の様子 a および b:搬入時の残渣,c:開始直前(8/4)の残渣, d および e:開始直後(8/18) 9牛ふんコンポストとの混合によりバイオプラスチック分 解が促進することを観察している(小堤ら,2008)。バ イオプラスチックの一部はセルロースを原料としている ため(迫田ら,2001),上記の未利用バイオマスにおい ても単独ではなく,牛ふんコンポストとの混合により, その分解が促進されることが期待される。また,実規模 での試験を行うことにより,実用的かつ効率的なコンポ スト化処理条件を提言することができる。そこで,上記 の未利用バイオマスを牛ふんコンポストとともに実規模 で処理し,コンポスト化が可能であるか,さらにコンポ ストとして利用できるかを試みることとした。 2 材料と 1)コンポスト化施設 コンポスト化試験は,東北大学大学院農学研究科附属 複合生態フィールド教育研究センター(宮城県大崎市) に設置されている,オープン式堆肥化処理施設で行った。 施設は 2004 年から,同センター内で排出される牛ふん のコンポスト化処理を行っている。施設は床面,壁の一 部がコンクリート製である。屋根は半透明のポリカーボ ネイト製で遮光設備は無いが,換気設備がある。施設内 部は撹拌処理スペースおよび堆積スペースからなる。撹 拌処理スペースは片側にのみ側壁がある約 80 m のレー ンで,オープン式撹拌機 KS6-1800(日環エンジニアリン グ,宮城),ブロアーおよび下部通気ラインを備えている。 堆積スペースにはコンクリート製の隔壁が建造されてお り,通気設備はない。 2)コンポスト化処理の原料および処理の条件 〈2008 年度〉 2008 年度の処理は,2008 年 4 月 25 日から 11 月 27 日 まで行った。 原料として,みやぎ生活協同組合店舗の農産部門で発 生した農産物残渣(以下では残渣と記す)を用いた。残 渣は 2008 年 2 月 18 日から 2008 年 11 月 22 日まで受け 入れ,受け入れ量が多かったのは 6-9 月であった。残渣 はおもにトウモロコシの皮で構成されていた。ただし一 部にパイナップル冠芽,筍皮,クリが含まれていた(図 1a)。受け入れ総量は 36,913 kg だった。残渣の水分は約 87%前後だったため,堆積試験,実規模試験共に水分含 量を約 70%以下に調整して処理を行うこととした。 処理試験は 2 種類行った。 ・堆積処理試験 処理は 2008 年 4 月 25 日から 11 月 27 日まで 216 日間 行った。開始時は残渣を等量の肥育牛舎厩肥(おもにオ ガクズ)と混合し堆積した。撹拌は週 1 回重機(ホイー ルローダー)を用いて行った。下部通気は 1 時間おきに 1 時間通気する間欠式で行った。その後残渣を 5 月,6 月, 7 月に月 1 回,約 1,000 kg ずつ計 3 回追加投入した。残 渣の最終投入後 4 週間撹拌処理し,その後 3 ヶ月間堆積 のみの処理を行った。 ・撹拌処理実験 処理は 2008 年 4 月 18 日から 12 月 26 日まで,撹拌処 理レーンにおいて断続的に 252 日間行った。牛ふんコン ポストに残渣を重量割合で 5%となるよう混合し,処理 を開始した。牛ふんコンポストは,当フィールドセンタ ーで飼養されている乳牛および肥育牛のふんにおがくず を副資材として混合し,撹拌処理を約 1-2 ヶ月,堆積処 理を 2 ヶ月行ったものを用いた。撹拌は原則として週 2 回,自動撹拌機を用いて行った。下部通気は前述と同様 に行った。残渣と堆肥の混合物は 6 月 17 日,7 月 29 日, 10 月 9 日の計 3 回追加投入した。残渣の最終投入後 8-10 週間撹拌処理を行い,その後堆積処理を 2 ヶ月間行った。 〈2009 年度〉 2009 年度の処理は,2009 年 4 月 15 日から 2010 年 3 月 まで行った。原料は前年度同様,みやぎ生活協同組合店 舗で発生した残渣であった。2009 年 4 月 15 日から 2009 年 12 月 29 日まで,6-8 月を中心に受け入れた残渣を用 いた。残渣はおもにトウモロコシの皮で構成されていた。 そのほかレタス葉,パイナップル冠芽,筍皮が含まれて いた(図 2a および b)。受け入れ総量は 21,980 kg だった。 コンポスト化処理は撹拌処理のみで 3 回行った。開始 時は牛ふんコンポストの上部に受け入れた残渣を堆積 し,撹拌機で撹拌した。用いた牛ふんコンポストは,当 センターで飼養されている乳牛および肥育牛のふん,わ ら,バークを原料として作成されたものである。撹拌は 原則として週 2 回(月曜および金曜)に行った。下部通 気は 1 時間おきに 1 時間通気する間欠式で行った。処理 の詳細を表 1 および以下に示す。 ・コンポスト① 図 3 2008 年度堆積処理試験における温度変化 図 4 2008 年度撹拌処理試験における温度変化 10 センター報告第26 号 (2010)
山本ほか : 未利用バイオマスのリサイクルに関する研究−野菜・果物残渣のコンポスト化実証試験− 2009 年 5 月 27 日受け入れ分までの計 1,430 kg を牛ふ んコンポストに加え,撹拌処理を行った。 ・コンポスト② 2009 年 6 月 6 日 か ら 8 月 4 日 受 け 入 れ 分 ま で の 計 13,190 kg を,牛ふんコンポスト約 116,100 kg と混合し, 8 月 12 日から 10 月 14 日まで 63 日間処理を行った(図 2c および 2d)。処理過程中は温度測定および成分分析な どのモニタリングを行った。 ・コンポスト③ 2009 年 8 月 14 日から 12 月 29 日受け入れ分までの計 7,360 kg を,随時牛ふんコンポストと混合,処理した。 2010 年 3 月末にはすべての処理を終了した(図 2e)。 3)温度,水分量の計測および成分分析 ・温度計測 堆積処理試験においては,コンポスト山の 4 カ所にお いて深さ 30 cm の温度を計測し,その平均値を算出した。 撹拌処理試験においては,レーンの縦方向に沿って 4-5 地点を温度計測地点とした。さらに 1 地点における測定 は,撹拌機と平行に 4 カ所で行い,平均値を 1 地点の平 均温度として算出した。 ・成分分析 成分分析は,十勝農業協同組合連合会農産化学研究 所(北海道帯広市)に依頼した。分析用の試料は,処理 終了時に 6 カ所から採取し混合したものを用いた。2009 年度はコンポスト②の処理開始 51 日目に採取した。分 析項目は一般成分として水分量,全窒素,全炭素,リン (P2O5),カルシウム(CaO),マグネシウム(MgO),カリウ ム(K2O),灰分,pH,EC および窒素成分として硝酸態窒 素(NO3--N),アンモニア態窒素(NH 4 +-N)を分析した。 3 果 1)コンポスト化における外観の変化および温度変化 〈2008 年度〉 堆積処理試験において,試験の進行とともに原料であ るトウモロコシの皮やパイナップル冠芽の原形は観察さ れなくなったが,一部の断片は処理終了時も観察された (図 1b,c,d,e,f)。 堆積処理試験における平均温度の変化を図 3 に示す。 温度は処理開始 5 日目で約 60℃となり,撹拌を行った期 間は 42-62℃を推移した。その後の堆積のみの期間でも, 200 日目までは上記の温度帯を推移した。終了時は 27.3 ℃だった。 撹拌処理試験における平均温度の変化を図 4 に示す。 温度は処理開始時の 42.5℃から低下せず,11 月まで 47-62℃を推移した。11 月以降は 30℃代に低下したが, 12 月に再び最大で 55℃に上昇した。 〈2009 年度〉 受入れた残渣は処理開始まで施設内に保管していたた め,夏期の高温により一部嫌気発酵が始まり黒変した(図 2c)。コンポスト②の処理開始時は約 129,290 kg だった が,処理終了時は約 89,250 kg となり,開始時の約 69% に減少した。処理の進行に伴い,用いたトウモロコシの 皮およびパイナップル冠芽はほとんど観察されなくなっ た(図 2d および e)。 温度は終了時をのぞき,処理開始直後から終了時まで, 42-61℃を推移した。縦方向の計測地点による温度変化 に明確な違いはなかったが,壁側の温度は低く,開放側 の温度は高くなる傾向が示された(図 5)。 2)成分分析結果 分析したサンプル全ての分析結果を表 2 に示す。成分 分析は,実規模試験のため一試験において一試料しか行 っていない。当センターで日常的に生産されている牛ふ んコンポストと比較して,硝酸態窒素量が多かったもの の,他の各成分に明確な違いは認められなかった。腐熟 の状態を示す C/N 比は,全国農業協同組合連合会(JA) が作成した家畜ふん堆肥の品質基準(20 以下)を満たし ていた。全窒素,リン,カリウムにおいても,基準値(乾 物当たり 1%以上)を満たしていた。 4 トウモロコシの皮およびパイナップル冠芽は,リグノ セルロースを含み,分解が困難とされているが,厩肥あ るいはコンポストと混合することにより,コンポスト化 が可能であることが明らかとなった。重機による撹拌で は分解は不十分であったが,機械撹拌では原型が認めら れないほど十分に分解された(図 6)。 成分分析の結果では,当センターで製造されている牛 ふんコンポストと著しく異なる成分は認められず,従来 の牛ふんコンポストと遜色はなかった。これは残渣の混 合率が重量で約 10%と少なかったこと,残渣のおもな 材料であったトウモロコシの皮,およびパイナップル冠 芽に含まれる全窒素,リン,カリウムなどの成分が,牛 図 5 2009 年度撹拌処理試験における温度変化 表 1 2009 年度撹拌処理試験の概要 11
ふんと大きな差がなかったため(中央畜産会,2000; Gaonkar and Kulkarni, 1989)と考えられた。 成分分析の結果は一試験における解析数が少なかった ため,有意差を検定することができなかったが,処理試 験間および牛ふんコンポストとの顕著な差は認められな かった。コンポストは肥料取締法で特殊肥料に分類され ており,国内における公定規格は存在しないが,JA が作 成した家畜ふん堆肥の品質基準(表 2)に照らすと,水 分量,全窒素,リン,カリウム,C/N 比については基準 を満たしていた。しかしカリウム含量は牛ふんコンポス トの平均値(乾物中 2.4%,畜産環境整備機構,1997) よりも高かった。また,EC 値は基準値を大きく超えてい た(基準値:5 mS/cm 以下)。当センターにおけるコンポ スト化は,戻し堆肥を加えて処理を行っていること,ま た,ふんに比べてカリウム含量が多い(畜産環境整備機 構,1997)尿も混合し処理していることから,カリウム が蓄積し, EC 値が高くなったと考えられる。土壌にカリ ウムを多量添加すると,カリウムが蓄積し,飼料作物に よるカルシウムやマグネシウムの吸収割合は低下する。 作物中のこれらの塩基バランス悪化は家畜にグラステタ ニー(低マグネシウム血症)発症の危険性を高めるため, 本コンポストの多量の施用は上記の現象を招くおそれが ある(畜産環境整備機構,1997)。今後の本コンポスト 製造においては,適正な残渣混合割合の決定,貯蓄時の 嫌気発酵の抑制法の検討など,課題はいくつか残るが, 土壌投入量を考慮するなどで本コンポストは肥料として 十分に使用可能であると考えられる。 文 バイオマス情報ヘッドクォーター HP. とうもろこしの収 穫量のバイオマス推計量 . (http://www.biomass-hq. jp/index.html) 畜産環境整備機構 .(1997)Ⅲ家畜ふん尿の利用 . 家畜 ふん尿処理・利用の手引き . pp.57-73. 中央畜産会 .(2000)第 1 章堆肥化の基本 . 堆肥化施設 設計マニュアル . pp.1-30.
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センター報告26 13-18(2010) 要 遺伝子組換え植物見本園を作成し農学部の大学生に見 学してもらい,遺伝子組換えに対する考えについて意見 を求めた。これからの遺伝子組換え植物普及の方法につ いて,食料以外の分野からの利用を進めることでイメー ジ向上を目指すことが必要と考えられた。また遺伝子組 換え植物の土壌微生物相への影響について希釈平板培養 法と PCR-DGGE 法を併用して検討した。どちらの手法でも 遺伝子組換え植物に起因する明らかな影響は認められな かった。 的 世界各地で異常気象が起こり植物の栽培環境が悪化し ているにも関わらず,人口は増え続け食糧不足が懸念さ れる今,食糧生産向上に対する研究は必要不可欠である。 これらの研究の一環として様々な機能を付与された遺伝 子組換え(Genetically Modified:GM)植物が各国の研究 機関で競って作出され,一部は既に実用化されている。 しかし,その一方で遺伝子組換え植物は開発の歴史が浅 い植物体であることから,食物としての安全性や生態系 への影響が懸念されている。そのため 2000 年には遺伝 子組換え生物一般の取り扱い方法の世界的なルール「生 物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカ ルタヘナ議定書」1)が採択され,環境中への影響をチェッ クする様々な試験が求められている。しかし,このよう な対策が採られていても,日本では遺伝子組換え植物に ついての情報不足もあって不信は根強く研究栽培さえ容 易ではない。その一方,世界的にはバイオエタノール生 産による国際的な穀物の不足からさらなる増産が求めら れ遺伝子組換え作物の利用が加速している。またエタ ノール生成時に遺伝子組換え酵母を利用する手法が模索 されるなど,遺伝子組換えを積極的に利用していこうと する流れがあり,日本国内の研究までも停止させること は将来の日本の経済,食糧事情に禍根を残すことになる。 中立的立場から遺伝子組換えの問題点と利点の両方の情 報を広く消費者に提供し,リスクだけでなく有益な部分 を含めて総合的な判断を促すことが必要である。 当センター内の遺伝子組換え植物隔離圃場ではその開 場以来,こういった情報提供に努めてきた。周囲三方を 林に囲まれ高い隔離距離が取れるなどの優れた立地を活 かし,アルカリ土壌耐性イネ2)やグリホサート耐性のイ ネやダイズ,デントコーン等の様々な遺伝子組換え植物 を栽培し,その度に消費者団体などへの現地見学を含め た説明会を実施してきた実績もある。 今回は東北大学の学生へ遺伝子組換え植物への理解を 促す情報提供の一環として,実際に見て触れられる教材用 の遺伝子組換え植物見本園を作成した。見学説明会を催 し,その後遺伝子組換え植物に対するアンケートを実施し て遺伝子組換え植物に対する考え方について確認した。 また見本園の土壌を採取して,遺伝子組換え植物の安 全性の問題として頻繁に挙げられる土壌微生物相への影 響を調査したので,これらの結果を併せて報告する。当 圃場では 2004 年から 2006 年まで希釈平板培養法でモニ タリングしている3)4)が微生物相に影響は認められてい ない。また,黄川田らの研究5)でも希釈平板培養法に よって土壌微生物相への影響が認められないことが示さ れている。しかし希釈平板培養法では培養可能な菌の比 較のみに留まるため,本研究は PCR-DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis: 変性剤濃度勾配ゲル電 気泳動)法を併用し比較検討した。 1. 栽培と見学会,アンケート調査について 1.1. 栽培 2007 年 8 月 30 日に東北大学大学院農学研究科附属複 合生態フィールド教育センターの遺伝子組換え植物隔 離圃場内アロフェン質黒ボク土(蔵王土壌)圃場に除 草剤(グリホサート)耐性遺伝子組換えデントコーン GA21 (SYT004) ( 以下 GM),非遺伝子組換えデントコーン (SYT0004C) ( 以下 non-GM) を播種した。処理は無処理・ 慣行除草剤散布・グリホサート散布の 3 処理を施した。 播種設計は 1 処理区 140cm × 5m 株間 20cm ×条間 70cm
遺伝子組換え植物見本園の作成と継続的モニタリング及び情報提供
山本 理恵・三枝 正彦
Making of Genetically Modified plants sample garden and continuous monitoring, and Information disclosure
R i e Y a m a m o t o , M a s a h i k o S a i g u s a
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ード
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生
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GGE
で 1 処理区につき 1 条(25 株)× 2 条を 2 反復設けた。 各 2 粒播きした後,防鳥ネットを圃場全体にかけて食害 を予防した。9 月 20 日に間引きを行い,一本立てとした。 除草剤はデントコーンの生育を待って葉齢が GM,non-GM 共に 10 枚を超えた 10 月 3 日に散布した。雄ずいは花粉 飛散の恐れがあるため切り取る予定だったが出穂する前 に冬期に入り生育が停止したため,花粉の飛散は起こら なかった。2008 年 1 月 16 日に GM,non-GM 共に低温と圧 雪による枯死を確認した。枯死した植物体は圃場内に鋤 き込んで処理した。 1.2. 見学会とアンケート調査 2007 年 9 月 26 日,東北大学農学部 3 年生 35 名(男 性 22 名,女性 13 名)に隔離圃場を見学してもらい,生 育中のデントコーンを前に今回の実験の目的や経緯,遺 伝子組換え植物の有利な点や問題とされる点,遺伝子組 換え植物一般について世界での栽培状況など説明を行っ た。その後,アンケートに答えてもらった。アンケート 内容は結果項目を参照。 一部の結果については農林水産省がインターネット上 で行った「安全・安心モニター第 4 回調査」6)(遺伝子 組換え作物に関する調査で平成 17 年実施,対象は満 20 歳以上の国内居住者 1287 名,世代構成は不明)や,滋 賀県が行った「遺伝子組換え作物についての県政モニ ターアンケート」7)(平成 17 年実施,対象は滋賀県民 252 名,世代構成は 20 歳代 15%,30 歳代 22%,40 歳代 14%,50 歳代 17%,60 歳代 32%),神奈川県が行った「遺 伝子組換え作物の栽培規制に関するアンケート」8)(平 成 21 年実施,対象は県民 279 人)と比較した。 2. 土壌微生物相の検定について 土壌サンプルは同一圃場内の裸地土壌 ・GM 栽培土壌 ・non-GM 栽培土壌の 3 種類を用い,解析法は希釈平板培 養法9) ・PCR-DGGE 法10)11)の 2 種類で比較を行った。 11 月 9 日 ( 播種後 71 日目 ) に各土壌ごとに 5 ヶ所(裸 地土壌は 10 ヶ所)を採取した。1 ヶ所ごとの採取方法は デントコーンの茎の根元から 2cm 離れた地点を各 8 点(図 1 参照),それぞれの地点において直径 1cm の金属筒を差 し込み土壌表面から深さ 10cm まで抜き取って採取した。 これら 8 点の土壌をよく混合したものを 1 サンプルとし た。 2.1. 希釈平板培養法 サンプルから 1g を取り出し滅菌水に混合して段階的 に希釈した溶液を作成した。これらを,細菌一般を培養 するために YG 培地,放線菌を培養するために HV 培地, 糸状菌を培養するためにローズベンガル培地に各 3 枚そ れぞれ塗り付けた。これらの培地を 28℃で,YG 培地とロー ズベンガル培地は 2 日間,HV 培地は 7 日間培養した。形 成されたコロニー数から細菌一般,放線菌,糸状菌の菌 数を求めた。これらを乾土 1g 分に換算し,GM の土壌微 生物相への影響を non-GM や裸地と比較検討した。 2.2.PCR-DGGE 法 土壌サンプルは希釈平板培養法と同一のサンプルを用 いた。1 サンプルにつき乾土 0.2g から PowerSoil ™ DNA Isolation Kit(MO BIO 社)を用いて DNA 抽出を行った。 PCR の条件は,DNA 液からの PCR については nested-PCR で 真 正 細 菌 の 16S rRNA 遺 伝 子 を 対 象 と し た 27f-1492r(Weissburg et al., 1991)と 341f-907r(Muyzer et al., 1997)のプライマーを,コロニーダイレクト 図 1 土壌採取方法 表 1 PCR 及びコロニーダイレクト PCR で使用したプライマーと増幅条件 14 センター報告第26 号 (2010)
山本ほか : 遺伝子組換え植物見本園の作成と継続的モニタリング及び情報提供 PCR では 341f-907r(Muyzer et al., 1997)のプライマー をそれぞれ用いた。PCR 反応の DNA ポリメラーゼは Ex Taq(Takara) を使用した。温度条件等は表 1 の通りであ る。DGGE については D-code system(Bio-Rad)を用いた。 方法は同社のプロトコルに準拠した。8% アクリルアミド 中の変性剤の濃度勾配は 30% 〜 55%(変性剤 100% ; 7M 尿素,40% ホルムアミド)で PCR 産物をアプライ後 160V で 8 時間泳動を行った。 3. 希釈平板培養法と PCR-DGGE 法の比較 希釈平板培養法で得られたコロニーの内,高い頻度 で観察された 6 種類のコロニーからコロニーダイレクト PCR にて増幅産物を得て,土壌から抽出された DNA を鋳 型とした PCR 産物と共に DGGE 法を行い,検出されたバ ンドを比較した。 果 1. 栽培結果とアンケート結果 1.1. 栽培結果 播種時期が東北地域の慣行時期から遅れたが,GM と non-GM は同程度に生育し葉を展開させた。除草剤散布 後の様子を写真 1 に示した。中央の枠線で囲まれた区は non-GM +グリホサート処理区であるが,non-GM とその周 囲の雑草がグリホサートによって枯死している。その隣 で,同様にグリホサートを散布された GM +グリホサー ト処理区は除草剤の影響を受けることなく緑色を示しそ の周囲の雑草のみが枯死している。 1.2. アンケート結果 アンケート結果を表 2 に示した。 1.「遺伝子組換え」についてあなたはどのくらい知識を 持っていますか? 「ある程度は知っている」63% と農学部の学生らしく, 大半が遺伝子組換えについての知識を持っている自負 があるようである。具体的な遺伝子組換え生物を挙げ てもらう質問にもほとんどの学生が除草剤耐性ダイズ やデントコーン,青いバラ,光るラットなど最低でも 1 つ以上の回答を示した。 一方,滋賀県の結果では「よく知っている」「ある程 度知っている」を合わせて 53.2% にとどまった。 2. 遺伝子組換え生物のイメージは? 「良い」は 17% であった。理由として遺伝子組換え生 物の有用性があげられた。71% だった「どっちでもない」 の理由として大きく分けると「心情的には嫌だが,こ の技術は必要になってくるだろう」という意見と「い まだ未知の部分があるので分らない」とする慎重論が 見られた。「悪い」は 0% であったがやはり心情的にマ イナスのイメージがあり,有用な技術であるという知 識との葛藤から間を取って「どっちでもない」を選択 したものと思われる。 農林水産省の結果でも「肯定的」,「概ね肯定的」な意 見を合わせて 13%であり,似た傾向が見られる。 3. 遺伝子組換え食品を食べたいですか? 「はい」34%「いいえ」20%「その他」46% と大きく意見 が分かれた。 「はい」の理由として「興味本位」や「機能性,低コスト」 があげられた。また「自給率の低い日本だから既に食 べているだろう」という冷静な意見も見られた。また 「安全性試験を通ったものだから,より安全性が高い だろう」という遺伝子組換えの評価試験の存在を理解 した上での意見もあった。「いいえ」は「摂取した際 の人体への影響について確約されていないから」とい う意見が多かった。「その他」については「安全と安 心の違いであり,進んで食べようとは思わないが害が 無いなら食べてもよい」という条件付きの意見が多く, 不信感が根底にあることがうかがえた。 これに対し,農林水産省の結果では遺伝子組換え食品 に対して「全く気にならない」「あまり気にならない」 が合わせて 21%,同様に滋賀県では 16.3%,神奈川 県では 18%となった。 この設問に対しては自治体等のアンケート結果よりも 遺伝子組換えについてわずかに理解が見られる。 4. 遺伝子組換え食品を食べざるを得ない状況になったら どう思いますか? 「全く気にしない」40% は遺伝子組換え食品へ不信感が ないので平気であるという意見が多く「しょうがない」 54% は日本の食糧自給率の低さを理解しての諦めの意 見が多く,「絶対にいやだ」という意見は 0% であった。 他の設問では拒絶する意見も見受けられるが,日本の 食料自給率を知っている学生だけに,「状況によって は」であるが不本意であっても遺伝子組換え食品を受 け入れる可能性はあるようである。 5. 健康に寄与する等の機能性遺伝子組換え食品があっ 写真 1 デントコーン GM、non-GM の栽培状況 (枠線で囲んだ部分は non-GM グリホサート区) 15
たら購入しますか? 「はい」31%「いいえ」34%「その他」34% と完全に意 見が分かれた。「機能と値段次第では?」という流動 的な意見もあった。しかし「はい」の割合が上記の質 問「3. 遺伝子組換え食品を食べたいですか?」で「は い」と答えた割合とほぼ同じであることであることか ら,除草剤耐性などの生産者にのみ有益な特性を持つ 第一世代遺伝子組換え植物とは異なり,健康に良い成 分を多く含んだりアレルギーを緩和するなどの消費者 にとって有益な機能を持つ第二世代遺伝子組換え植物 であっても,口に入るものに対する慎重論は根強いと いう事がこの結果から見受けられる。 6. 劣悪環境でも育つ,環境浄化能が高いなどの遺伝子組 換え作物の開発は必要ですか? 「はい」が 91% と高い割合を示した。理由として挙げ られた「日本には関係無いが,環境の悪い発展途上 国には必要」という意見が示している通り,環境問題 であったり自分達の口に入らないものの場合はハード ルが低く,肯定意見が多かった。但し,在来種や微生 物からの開発では飢餓や環境悪化に間に合わないだろ うからという冷静な視点からの肯定意見や,今後の日 本の国際貢献として必要という大局的な意見もみられ た。 7. 遺伝子組換え作物の研究は日本では規制が厳しい現状 ですが,海外では開発が進んでいる国もあります。こ の状況についてどう思いますか? これは自由意見欄であり,様々な意見が得られた。「研 究するためには国民の理解を得る努力が必要」という 意見や,「海外にも規制を求めないと日本に輸入され るものが心配」という意見がある一方で,「技術自体 は日本に必要であり日本でももっと研究を進めるべき で海外と同等程度に規制を緩めても良い」という意見 もあった。 大学生は農水省やその他の自治体のアンケート対象よ りも世代構成や遺伝子組換えについての知識が均質なた め,意見の傾向も似てくるものと思われたが,今回のア ンケートを全体的に見ると肯定派と否定派と中立派に意 見が分かれる結果となった。2008 年 7 月に内閣府が発表 した「遺伝子組換え技術に関する意識調査結果について」 図 2 アンケート結果 16 センター報告第26 号 (2010)