プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積CVD合成[PDF:1.7MB]
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(2) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 2 合成用基材の準備と不純物混入の抑制. 銅箔(純度 99.7 %)を使用した。Ar/H 2 および He/H 2 の. 銅箔を基材とするグラフェンの CVD 合成では、合成前. 2 種類の混合ガスを用いて、銅箔のプラズマ前処理を比較. の銅箔の表面洗浄技術が特に重要である。さらにプラズマ. した。銅箔基材は石英窓から 50 mm に配置し、基材温. を援用する CVD(プラズマ CVD)では、プラズマ照射に. 度を350 〜 400 ℃に保持した。前処理の時間は 1分とした。. よる反応容器内部から放出される不純物、特にプラズマを. プラズマ前処理による銅箔表面の洗浄効果は、X 線光電. 励起するためのアンテナの部品である石英由来のシリコン. 子分光法(XPS) (アルバックファイ社、Phi ESCA モデル. のグラフェンへの混入を避ける必要がある。. 5800X, AlKα)により確認した。XPS 測定は、プラズマ. 市販の銅箔は表面の酸化を防止するため防錆処理が施. 洗浄後に反応容器から取り出して行った。洗浄後の大気暴. されている。また防錆処理被膜が施された銅箔でも表面. 露による銅箔表面の多少の酸化が不可避であるので、す. は通常、薄い酸化物で覆われている。良質なグラフェンの. べての試料について同一条件で XPS 測定を行い、スペク. 合成のためには、これら銅酸化物および防錆処理被膜を. トルを比較した。. 丁寧に除去する必要がある。グラフェンの熱 CVD 合成で. 反応容器内での銅箔基材のプラズマ前処理に続いて、. は、銅箔基材の電解洗浄およびそれに続く反応容器内で. He/H2/CH4 と Ar/H2/CH4 の 2 種類の混合ガスを用いてグ. の 1000 ℃程度の高温処理が銅酸化物と防錆処理膜の除. ラフェンのプラズマ CVD 合成を行った。堆積時間は 20 分. 去に有効である。さらに銅箔の表面平坦性を向上するた. とした。合成したグラフェン膜をラマン散乱分光(XploRa、. め、電解洗浄および高温処理前の化学機械研磨(CMP). HORIBA、スポットサイズ 1 µm、励起光 638 nm) 、エネル. も有効である. [17][18]. 。一方、電解洗浄は湿式であり、CVD. ギー分散型 X 線分光法(EDS) (JEOL-2100F、加速電圧. 合成作業までに再度汚染の可能性があることが課題であ. 200 KV、EDS 検出器 JED-2300F) 、XPS で評価した。断. る。したがって CVD 法とより相性の良い洗浄法の開発が. 面 TEM 観察用試料をガリウム集束イオンビーム加工で作製. 望まれる。この研究ではプラズマを利用することができる. するために、合成したグラフェン表面に非晶質炭素薄膜を蒸. ので、プラズマによる銅箔表面の洗浄法を確立することに. 着して補強した。TEM 観察は加速電圧 300 keV で行った。. よって、反応容器中で連続的に基材表面の洗浄とグラフェ. 図 2 は購入したそのままのタフピッチ圧延銅箔基 板の. ンの合成を行うことができる。これにより再汚染を防止す. XPS サーベイスペクトルである。 これらのピークは Cu 3d 、3p 、3s 、2p 、2s および Cu オージェに対応するピーク. ることが可能となる。 プラズマを利用するプロセスでは、プラズマを安定に維. に帰属される [28]。さらに C 1s と O 1s のピークが強度の小. 持するために不活性ガスを添加することが多く、その目的. さい Si 2p 、N 1s とともに観測された。これらはタフピッ. のため一般にアルゴンが使用される。一方反応容器壁等. チ圧延銅箔の表面を保護するためにコーティングされてい. からの不純物放出の原因となるスパッタリングの観点から. る窒素を含む有機ケイ素および炭化水素化合物を起源とす. は、より軽い不活性ガス元素を利用することが望ましい。. る。この研究ではプラズマ前処理により銅箔基材表面の不. [19]-[21]. 。そこで、最も軽い不活性ガス元素であり小さいスパッ. 反応ガス. タ収率が期待できるヘリウムを用いて、グラフェンのプラズ. 石英窓. スロットアンテナ. 導波管 マイクロ波. マ CVD 合成を試みた。 図 1 は表面波マイクロ波プラズマ CVD 装置の概略図で ある [13]。マイクロ波伝搬のための導波管が反応容器に接. 表面波プラズマ. 続されている。導波管にはスロットアンテナが装備され、. サンプル基板. 石英窓を通して反応容器内にマイクロ波を放射する。表面 波プラズマの場合、高密度のプラズマが石英窓の表面に. ステージ. 沿って励起される。表面波プラズマでは 2.45 GHz のマイク ロ波によって励起されるプラズマのカットオフ密度 7.4 ×1010 cm − 3 を超える高密度のプラズマが石英窓表面に沿って励 起される [22]-[27]。マイクロ波は生成した高密度のプラズマを 貫通することができず、銅箔基板は直接マイクロ波にさらさ れることはない。したがって低温から高温にわたって広い 範囲での基材の温度管理が容易である [10][11][14]。 グラフェン合成用の基材として厚さ 33 µm のタフピッチ. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). 真空ポンプ. 図1 表面波励起マイクロ波プラズマCVD装置の概略図[13]. Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics. −125 −.
(3) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). のままの銅箔基材と同様に観測され、酸素はこのプラズマ. 純物の除去を試みた。 図 3 にプラズマ前処理前後に観察した銅箔基材の XPS. 処理によりうまく除去されなかったことを示す。さらに、ピー. 高分解能スペクトルを比較した。まず、プラズマ処理による. クはより明瞭に分離されており、一定量の酸化物が Ar/H 2. 銅箔表面の銅酸化物の除去を O 1s の信号により調べた。. プラズマ処理の間に新たに形成されたことを示唆する。こ. O 1s の結合エネルギースペクトルを図 3(a)に示す。Ar/. れとは対照的に He/H 2 プラズマ処理では O 1s ピークは消. H 2 によるプラズマ前処理の場合、O 1s ピークが購入したそ. 失しており、酸素が効率的に除去されたことを示している。. 15000. 260. N 1s. 単位時間当たりの強度. 単位時間当たりの強度. 単位時間当たりの強度. 70 65 60. Cu 2p 3/2. 10000. Cu 2p1/2. 55 50. Cu 2s. Si 2p. 250 240 230 220 106 104 102 100 98. 404 402 400 398 396. 結合エネルギー (eV). 96. 結合エネルギー (eV). Cu Auger. 5000. O 1s C 1s Cu 3s 0 1200. 1000. 800. 600. 400. Cu 3p Cu 3d. 200. 0. 結合エネルギー (eV) 図2 プラズマ処理前のタフピッチ銅箔のXPSスペクトル[13]. Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics. (a). (b). ━未処理. ━未処理. 任意強度. 任意強度. CuO. ━アルゴン/水素プラズマ処理. ━ヘリウム/水素プラズマ処理. 535. 533. 532. 531. 530. 結合エネルギー(eV). 529. ━アルゴン/水素プラズマ処理. ━ヘリウム/水素プラズマ処理. 106. 104. ━アルゴン/水素プラズマ処理. 970. (d). ━未処理. 108. CuO. ━ヘリウム/水素プラズマ処理. 任意強度. 任意強度. (c). 534. Cu 2p 3/2. Cu 2p1/2. ━未処理. 960. 950. 940. 288.6 eV 286.5 eV O=C-O C-O-C. 285.0 eV. 284.5 eV. ━アルゴン/水素プラズマ処理. 284.1 eV. ━ヘリウム/水素プラズマ処理. 102. 100. 結合エネルギー(eV). 98. 295. 930. 結合エネルギー(eV). 290. 285. 結合エネルギー(eV). 280. 図3 プラズマ処理と、未処理で測定した銅箔のXPSスペクトル[13]. (a)O 1s 結合エネルギー、 (b)Cu 2p 結合エネルギー、 (c)Si 2p 結合エネルギー、 (d)C 1s 結合エネルギーピーク。 Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics. −126 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016).
(4) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 次に図 3(b)に示すように、Cu 2p の結合エネルギース. は、Ar/H 2 プラズマの石英窓のエッチングによる SiO2 の形. ペクトルを調査した。購入したそのままの銅箔基材では、. 成である。それとは対照的に、He/H 2 プラズマ前処理後. スピン−軌道スプリッティングによる 2p (933 eV)、2 p. 1/2. の場合 Si 2p のピークは完全に消失した。以上のように、. (953 eV)とともに、二価の銅酸化物に起因するそれぞ. He/H 2 プラズマ前処理は銅箔表面のシリコン酸化物を含む. れのサテライトピーク(942.5 eV および 963 eV)を観測し. シリコン不純物を効果的に除去し、さらに石英窓のプラズ. 3/2. た. [29]-[33]. 。購入したそのままの銅箔の Cu 2p. 3/2. ピークは高. マエッチングを効果的に抑制することが分かった。 さらに、購入した銅箔基材に施される保護コーティング. エネルギー側に幅が広がっているが、これは Cu(OH) 2、 CuO 等の二価の銅酸化物によるものである. [29]-[33]. 。Ar/H 2. プラズマ前処理の場合には、二価銅に起因する Cu 2p. 材料を明らかとするため、図 3(d)に示すように C 1s 領域. 3/2. の XPS スペクトルを観察した。購入したそのままの銅箔で. のメインピークの高エネルギー側のショルダーとサテライト. は、285.0 eV、286.5 eV、288.6 eV の 3 つのピークがあっ. (934.5 eV および 942.5 eV)は消失している。一価の銅. た。285 eV に観測された強いピークは、主に sp3 混成状. 酸化物(Cu2O)による成分が 932.5 eV と 952.5 eV 近辺に. 態の C-C、C-H 結合グループによるものである [37]。286.5. まだ残っている [29]-[33]。以上より、購入したそのままの銅箔. eV に観察されたショルダーピークはエーテル / フェノール成. 基材表面は、二価の銅酸化物が一価の銅酸化物(Cu2O). 分の C-O-C 結合によるものであり、288.5 eV に観察され. / 銅(Cu)を覆っていることが分かった。Ar/H 2 プラズマ. た最も高い結合エネルギーはエステル / カルボキシル成分. 前処理により、二価の銅酸化物は基板から完全に除去され. の O=C-O 結合に起因する [37]。さらに図 2 のサーベイスペ. たが、一価の銅酸化物 Cu2O は除去されずに表面に残留. クトルの挿入図のように、400.2 eV に位置する窒素原子の. した。一方 He/H 2 プラズマ前処理後のスペクトルでは、一. 存在も認められる。これは、O=C-O、C-O-C、C-C、C-H. 価の銅酸化物 Cu2O、二価の銅酸化物 Cu(OH)2、および. 基と N 元素を含む別の銅箔の防錆剤を示唆するものであ. CuO に起因するピークおよびピーク幅の広がりは観察され. る。ベンゾトリアゾール(BTAH)が有効な銅の防錆剤と. ず、純銅の Cu 2 p. に起因するピークの. して利用されていることはよく知られている [38][39]。BTAH. み観察された。これは He/H 2 プラズマ処理後には図 ( 3 a). (C6H5N3)は O=C-O、 C-O-C の官能基を有していないが、. に示すように、銅箔表面の銅酸化物に関連する一切の O. Finšgar らは 10 mM の BTAH を含む 3 % NaCl 溶液中で. 1/2. および Cu 2 p. 3/2. 1s 信号がなかったことと整合する。以上の結果は、He/H 2. 1 時間の処理後の銅表面の XPS スペクトルで C 1s を観察. プラズマ前処理が銅箔表面の銅酸化物を除去するのに非常. し [38]、炭素質種の酸化が生じたか、銅の表面に酸化した. に有効であることを示している。. 炭素化合物が吸着したことを示唆した。彼らの報告したス. 次に、図 3(c)に示すように、Si 2p の結合エネルギーの. ペクトルは、図 3(d)の購入したままの銅箔基材のスペクト. XPS スペクトルにより銅箔基材上のシリコンの不純物の除. ルにたいへんよく似ている。彼らは角度分解 XPS 測定を用. 去を調べる。購入したそのままの銅箔基材表面で、Si 2p. いて、銅箔基材の最表面で、572.6 eV での Cu-BTAH 複. の結合エネルギーの領域に 102 eV のピークを観察した。. 合体のオージェ Cu-L3M4,5M4,5 領域の信号を観察した。我々. シリコーン等のシロキサン化合物が工場出荷前に銅箔基材. の測定は角度分解型ではないので、オージェ Cu 領域での. 表面の保護コーティングとして施されたと考えられる。シリ. Cu-BTAH 複合体の信号は観察することができなかった。. コン化合物の Si 2p の結合エネルギーは、シロキシユニッ. Ar/H2 によるプラズマ前処理後、プラズマ未処理基板. ト [34][35] とシリコン酸化物 [36] の酸化状態とに依存する。シ. に対して観察された 285 eV の C 1s のピークは鋭くなり、. リコン原子に結合する酸素の個数が増加すると、Si 2p の. 288.6 eV と 286.5 eV のピークは消失した。これは Ar/H2. 結合エネルギーが 101 eV から 103 eV にシフトする。図 3. プラズマ前処理により BTAH は簡単に分解されることを意. (c)に示す Si 2p の 102.0 eV の結合エネルギーはちょうど. 味する。285.0 eV の C 1s ピークは Ar/H2 プラズマ前処理. PDMS(poly-(dimethylsiloxane) )に対応している. [34][35]. 。. により 284.5 eV にシフトした。284.5 eV の結合エネルギー. Ar/H 2 プラズマ前処理の場合、Si 2p に起因する 103.0 eV. は、正確に PDMS に対応する [35]。したがって PDMS は. のピークが新たに出現したが、購入したそのままの銅箔の. Ar/H2 プラズマ前処理後の銅箔基材上にほぼ残留してい. 102.0 eV の Si 2p のピーク強度はわずかに減少した。Ar/. た。このことは、Ar/H2 プラズマ前処理後の図 3(a)の O. H 2 プラズマ前処理による 103.0 eV の Si 2p のピークが出現. 1s(532.0 eV)および図 3(c)の Si 2p(102.0 eV)におけ. した理由は二つ考えられる。第一の理由は PDMS の酸化. る PDMS の存在と矛盾しない。He/H2 プラズマ前処理後. であり、図 3(c)のように CH3SiO2 ユニット(PDMS)の酸. の、284.1 eV で観察された結合エネルギーピークは、sp2. 化による CH3SiO3 シロキシ単位の形成を示す。第二の理由. 結合で構成される HOPG のものに対応する [40][41]。ラマン測. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). −127 −.
(5) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 定からそれらは非晶質のsp2 炭素膜であることが分かった。. ドは観測できなかった。Ar/H2 プラズマ前処理に引き続く. He/H 2 プラズマ前処理および Ar/H 2 プラズマ前処理の. Ar/H2/CH4 プラズマ CVD の場合、 2D バンド (2650 cm −1). 効果の差は、ヘリウム、アルゴンによる SiO2 のスパッタ率. が G バンドの半分の強度で観測された。He/H2 プラズマ前. の違いに起因すると考えられる。表面波プラズマ CVD の. 処理に続く He/H2/CH4 プラズマ CVD の場合、2D バンド. 場合、高密度プラズマが石英窓の近傍に励起されるため、. (2650 cm −1)と G バンドがほぼ同じ強度で観察された。. 石英窓のスパッタリングによるプラズマ中へのシリコンと酸. この結果を後述する透過電子顕微鏡観察と合わせて検討し. 素との混入が主たる問題であり、基材上へのこのような不. た結果、He/H2 プラズマ前処理した銅箔基材へ低温(350-. 純物の堆積を抑制する必要がある。Sigmund のスパッタ. 400 ℃)で He/H2/CH4 を用いてプラズマ CVD で合成した. リングの基本的な理論によれば、スパッタリング収率は標. グラフェンの結晶性は Ar/H2 でプラズマ前処理した基材へ. 的とイオンの原子量と原子番号に依存する. [20]. 。イオンエネ. の合成より品質が良いことが結論付けられる。すなわち、. ルギーが 100 〜 600 eV の場合、アルゴンイオンによる石. He/H2 プラズマ前処理は銅箔基材表面の銅酸化物と不純. 英(SiO2)のスパッタリング収率はヘリウムより 2.5 から 3.8. 物を効果的に除去し、銅表面のグラフェン合成に対する触. +. +. +. +. +. 倍大きい。He 、Ne 、Ar 、Kr 、Xe の SiO2 基 板に対. 媒機能を効果的に回復すると言える。グラフェンのプラズマ. するイオン衝突の分子動力学シミュレーションが報告され. CVD 合成は実質的に数十秒で完了し、短時間でグラフェ. [21]. 。SiO2 基板に対するスパッタリング収量は衝突す. ン膜を合成するポテンシャルを有する。高品質グラフェンを. るイオンの原子番号とともに増加した。これらのイオンの中. 高スループットで連続生産するためには、合成に先立って酸. で最も軽い He はエネルギーが 100 eV であっても SiO2 表. 化物と汚染物質を十分に除去する必要がある。. ている. 図 5 は Ar/H 2/CH4 および He/H 2/CH4 とで プ ラズ マ. 面の原子に有効にエネルギーを与えることができず、スパッ タリング収率がほぼゼロであることを示した。一方 Ar イ. ━未処理. オンは SiO2 を効果的にスパッタリングすることが分かった [21]. 。したがって、He/H 2 プラズマ前処理により、石英窓か. ら放出されるシリコンと酸素が銅箔基材に堆積することを ━アルゴン/水素プラズマ処理. 任意強度. 抑制することが可能であり、銅箔基材表面を効果的に清浄 化することが可能であることが明らかとなった。 Ar/H2 および He/H2 プラズマで前処理された銅箔基材 へのグラフェンの合成を Ar/H2/CH4 および He/H2/CH4 と. ━ヘリウム/水素プラズマ処理. で実施し、前処理なしの場合と比較した。図 4 にプラズマ CVD 法で合成したグラフェンのラマンスペクトルを示す。 He/H2/CH4 を用いたプラズマ CVD により、購入したまま. 500. の銅箔基材で、D' バンドに重なる G バンド(1520 cm −1). 150 115. 110. 105. 100. 2500. 3000. 図 4 銅箔基材上に合成したグラフェンのラマンスペクトル [13]. Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics 250. 単位時間当たりの強度. 単位時間当たりの強度. 200. 2000. ラマンシフト(cm ). 前処理を施していない購入したそのままの基材では 2D バン. (a) アルゴン / 水素 / メタン Ar H2 CH4. 1500. -1. と D バンド(1320 cm −1)が観測された。しかし、プラズマ. 250. 1000. 95. (b) ヘリウム / 水素 / メタン He H2 CH4. 200. 150 115. 結合エネルギー (eV). 110. 105. 100. 95. 結合エネルギー (eV). 図 5 (a)Ar/H 2 プラズマ処理後、Ar/H 2/CH4 混合ガス、 (b)He/H 2 プラズマ処理後、He/H 2/CH4 混合ガスを使用して合成した グラフェンで XPS 測定した Si 2p 結合エネルギースペクトル [13] Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics. −128 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016).
(6) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). CVD 合成したグラフェン膜の Si 2p の結合エネルギー周り. には、20 分間の CVD により 20 層程度の多層グラフェン. での XPS スペクトルである。Ar/H 2 前処理後に Ar/H 2/. 膜が銅箔基材上に直接堆積した。層間隔はグラファイトの. CH4 でプラズマ CVD 合成したグラフェンでは Si 2p(103.0. 0.335 nm よりわずかに大きい 0.34 であった。銅箔基材へ. eV)が明瞭に観察されたが、一方 He/H 2/CH4 で堆積し. の熱 CVD では、グラフェンの成長は 2-3 層に制限される. た膜では観察されなかった。膜に含まれる不純物に関して. [6]. より詳細な情報を得るため、エネルギー分散型 X 線分光. うに、ずっと厚い膜が銅箔基材上に成長する。これがプラ. 法(EDS)により、たいへん薄い膜(グラフェン一層または. ズマを用いる本手法の顕著な特徴といえる。一方 Ar を用. 二層)の表面元素分析を実施した(図 6) 。Ar/H 2/CH4 プ. いた混合ガスで成長したグラフェンの透過電子顕微鏡像で. ラズマで合成したグラフェンの場合、シリコンは約 2 %検. は、斜めの層状構造が銅箔基材表面上に確認された。層. 出されたのに対して、He/H 2/CH4 プラズマにより合成した. 間隔は 0.27-0.28 nm であり、CuO(110)の層間隔に一致. 膜ではバックグラウンド信号強度(0.8 %)以下であった。. する。このことは Ar/H 2/CH4 プラズマ CVD 中に銅酸化. 以上の XPS および EDS による分析から、石英窓からのシ. 物層が形成されることを示している。銅酸化物層の表面に. リコン不純物のグラフェン膜への取り込みは、He/H 2/CH4. 沿って層状構造の弱いコントラストも確認された。層間隔は. を使用することにより、Ar/H 2/CH4 より効果的に抑制され. 0.34-0.37 nm でありグラファイトの層間隔よりかなり大きい. ることが明らかとなった。. ので、銅箔基材と同様に堆積したグラフェン層の一部が酸. 。これとは対照的にプラズマ CVD では、この例に示すよ. 化したことを示唆している。. 基 板の前処理と同様に、プラズマ CVD で混合ガスに. この研究では銅箔基 材のプラズマ前処理方法を開発. 膜に大きな違いをもたらす。図 7(a)は Ar/H 2/CH4、 (b). し、銅箔基 材の表面状 態と不純物の取り込みを抑制す. は He/H 2/CH4 を用いて合成したグラフェン膜の断面透過. ることにより、プラズマ CVD で合成するグラフェンの高. 電子顕微鏡像である。ヘリウムを用いた混合ガスの場合. 品質化の手法を開発した。He/H 2 を使 用する銅箔基 材. 0. 0. 5. 200 100 150. 0 0. Cu Kα. 強度 ( カウント ). 250. 50 10. (b) ヘリウム / 水素 / メタン. 5. エネルギー (eV). Cu Kβ. 50. Cu Kβ. 150. 300. Cu Kα. 100. Si Kα. 200. C Kα Cu Lα. 250. O Kα. 強度 ( カウント ). 300. 350. (a) アルゴン / 水素 / メタン. O Kα Cu Lα Si Kα. 350. C Kα. He を利用するか Ar を利用するかは、堆積したグラフェン. 10. エネルギー (eV). 図 6 エネルギー分散型 X 線分光法(EDS)による一層または二層グラフェンの表面元素分析 [13]. (a)Ar/H 2/CH4 混合ガス、 (b)He/H 2/CH4 混合ガスを使用して合成。 Copyright (2014), with permission from The Japan Society of Applied Physics. (a) グラフェン 5 nm. 銅基板. (b). 図 7 表面波プラズマにより合成したグラ フェンの断面 TEM 像 [13]. グラフェン. (a)Ar/H 2/CH4 混 合ガス、 (b)He/H 2/CH4 混合ガス。 Copyright (2014), with permission from 5 nm The Japan Society of Applied Physics. 銅基板. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). −129 −.
(7) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). のプラズマ前処 理は、Ar/H 2 を使 用する前処 理と比較. を低減することにより、核生成密度の抑制を図り、グラフェ. して効果的に銅箔基 材表面の銅酸化物を除去すること. ンの結晶サイズ拡大と層数の制御性の改善を試みた。究極. ができ、さらに石英窓のスパッタリングに起因するシリ. の低炭素源濃度として、メタン等の含炭素ガスを供給する. コンによる基材の汚染を効果的に抑制可能である。He/. ことなく、銅箔に不純物として含まれる炭素、および反応. H 2 による銅箔基 材のプラズマ前処 理は、合成するグラ. 容器内の環境から供給される微小量の炭素を利用した。こ. フェンの結晶性を向上させる効果も有することを見出した。. の手法の開発によりグラフェンの結晶サイズの拡大とそれに. 合成したグラフェンへの石英窓からのシリコンの不純物の. 伴い電気特性の大幅改善を試みた。さらに AB 積層構造. 混入は、He/H 2/CH4 を用いることにより、Ar/H 2/CH4 を. を持つ二層グラフェンを制御性良く高収率で合成することも. 使用する場合と比較して、より効果的に抑制可能である。. 試みた。この手法は銅箔基材の通電加熱と水素プラズマ処 理を組み合わせた手法であり、熱 CVD と比較してより低温. 3 極低炭素濃度プラズマCVDの開発. かつ短時間という工業的に有利な手法の確立を目指した。. グラフェン透明導電膜の工業応用を実現するため、高品. まず水素 20 Pa の雰囲気で銅箔基材を直接通電加熱の. 質かつ高スループットの合成法の確立が必要である。前述. みにより 300、400、600、800、1000 ℃の各温度で 15 分. のように遷移金属(特に銅)を基材とする CVD によるグラ. 間熱処理を行い、反応容器中で室温に冷却した。銅箔の. フェンの合成が、現時点で最も有望である [6]。現在、可視. 面積は 6 mm × 6 mm であった。各温度で加熱処理した. 光透過率 90 %(グラフェン四層)でシート抵抗 30 Ωが、. 銅箔をラマン分光法 (堀場製作所XploRa、 直径 1 µmのビー. 熱 CVD で合成される高性能グラフェンの指標である 。. ムスポット、励起光 632 nm、図 8)により、熱処理だけ. ITO 透明電極よりも高い発光効率を有するグラフェンアノー. でグラフェンが合成されるか否かを確認した。. [7]. 上記と並行してメタン等の含炭素ガスを用いることなく水. ドを利用した有機発光ダイオード(OLED)の試作も報告 。このようなグラフェンの透明電極応用では可視. 素ガスのみを使用して銅箔の水素プラズマ処理を実施し、. 光透過率 90 ~ 93 % が要求されるため、3、4 層のグラフェ. 銅箔基材あるいは反応容器の環境から供給される極微量. ンが必要となる。したがって単層のみならず複数層のグラ. の炭素源を利用してグラフェンの合成を試みた [14]。水素プ. フェン合成の制御性を高める必要性がある。. ラズマ処理は水素ガス流量 30 sccm、圧力 5 Pa で 30 秒. された. [42]. ロール・ツー・ロール法によるグラフェンの大量生産を実. 間行った。プラズマ処理には低電子温度でイオン衝撃の低. 現するため、装置への熱負荷低減と合成時間の大幅な短. 減が期待できる表面波励起マイクロ波プラズマを利用した。. 縮が要求される。銅箔基材の直接通電加熱により装置の. 合成したグラフェンは導電性と光透過率を測定するた. 熱負荷を低減し、950 ℃でグラフェンのロール・ツー・ロー. め、透明な樹脂基材に転写した。微粘着性樹脂フィルムを. ル熱 CVD 合成する試みが報告された. [43]. 。この例では、. 透明樹脂基材として使用した。樹脂フィルムの厚さは 41 〜. 銅箔の送り速度は毎秒 1.5 mmであり、さらなる高スルー. 42 µm である。グラフェンを合成した銅箔と樹脂フィルムを. プット化が望まれる。また銅箔基材の熱膨張・熱収縮に起. 接着した後、銅箔を過硫酸アンモニウム水溶液(0.50 モル. 因するマイクロクラックの発生を抑制しグラフェンの品質を. /ℓ)でエッチング除去した。. 向上するため、いっそうの低温化も求められている。 我々は、処理温度の低温化と処理速度の向上を同時に 達成するグラフェンのプラズマ CVD 法の開発を行ってき. 高い. た。銅箔基材の巻き取り速度毎秒 5 〜 10 mmで高スルー. ンのプラズマ CVD の課題は、結晶サイズ(ドメインサイズ). 温度. マ CVD 法をデモンストレーションした [9][10]。一方、グラフェ. 1000 ℃. 任意強度. プット合成するロール・ツー・ロール方式低温表面波プラズ. 低い. れていることである。これについて、グラフェンのプラズマ 500. より、二次元方向の成長が阻害され、サイズの小さなフレー ク状の結晶の多層構造の形成と層数制御性の劣化が生じ ていることが原因と考えられる。 この研究ではグラフェンの合成に使用する炭素源の濃度. 600 ℃ 400 ℃. が 10 nm 以下と小さく、これにより電気伝導性が阻害さ CVD が有する非常に大きな成長速度と高い核形成密度に. 800 ℃. 1000. 1500. 2000. 2500. 25-300 ℃. 3000. ラマンシフト (cm-1) 図 8 水素雰囲気中、室温から 1000 ℃で加熱処理した銅箔の ラマンスペクトル [14] Copyright (2014), with permission from Elsevier. −130 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). /.
(8) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 合成したグラフェンのシート抵抗は金合金プローブを用. 300 ℃の熱処理および 1000 ℃では観察されなかった。. いた四探針法により、6 mm × 6 mm の試料領域にわたっ. 図 9(a)に、熱処理をすることなく 30 秒間水素プラズ. て 1 mm 間隔で 36 点測定した。キャリア移動度は van. マ処理を行った銅箔のラマンスペクトルを示す。この場合、. [44]. によるホール効果測定で評価した。次に. グラフェンや非晶質炭素等、炭素関連の物質に起因する. 樹脂基材に転写したグラフェンに、塩化金による湿式ドー. ピークは観察されなかった。図 9(c)に 1000 ℃での加熱. ピングを行った。グラフェン膜を塩化金(20 モル /ℓ)のイ. 処理後に 30 秒間水素プラズマ処理を施した銅箔からのラ. ソプロピルアルコール溶液に浸漬し、その後乾燥させてドー. マンスペクトルを示す。非常に弱い G バンド(1580 cm −1). ピングを施した。. と D バンド(1350 cm −1)が観測されたが、2641 cm −1 か. der Pauw 法. 図 8 は水素雰囲気中で通電加熱のみの処理後、室温に. ら 2681 cm −1 の範囲で 2D バンドは観測されなかった。こ. 戻して観察した銅箔のラマンスペクトルである。300 ℃加熱. れは、この温度ではごく微量に供給される炭素原子が銅箔. では炭素に起因するラマンピークは観測されなかったが、. 基材の蒸発とともに消失し、グラフェンが形成されなかっ. 400、600、800 ℃で熱処理した銅箔からは非晶質炭素膜. たことを示唆している。図 9(b)は 850 ℃での加熱処理に. の形成を示すラマンピーク. [45]. が観測された。メタン等の含. 続いて同温度で 30 秒間水素プラズマ処理を施した銅箔か. 炭素ガスの反応容器内への導入は行っていないので、銅箔. らのラマンスペクトルを示す。明瞭な G バンドと 2D バンド. 内部に含まれる不純物炭素、あるいは反応容器内の環境. が非常に弱い D バンドとともに観測され、低欠陥のグラフェ. から供給される炭素等を起源とするものと考えられる。. ン形成を示している。. 銅箔が含有する不純物炭素の濃度を燃焼法により調べ. 次に、図 9(b)で 2D バンドの形状が 2 種類の異なっ. た結果、5-31 ppm であった。グラフェンの炭素原子の面. た線幅と強度分布をもつことが観測されたことから、さら. 15. 2. 密度は 3.8 ×10 /cm である。31 ppm の不純物炭素が銅. に詳細な解析を行った。. 箔の片方の表面にすべて析出し、一層のグラフェンシート. 図 10 に示すように、異なる 2D バンドのピーク半値全幅. が形成されるとすると、銅箔に必要な厚さは 15 µm であ. (FWHM)を有するグラフェン 2 種類が観察された。同. る。この研究において使用した銅箔の厚さは 6.3 µmであっ. じ合成条件の 12 個の試料に対してそれぞれ 46 点でピー. たので、銅箔に含まれる炭素では一層のグラフェン形成に. クフィッティングを行い、2D バンドの解析を行った。その. 不足する。したがって反応容器内の環境から主要な、ある. 際、文献の方法にしたがって、図 10(a) 、 (b)に示すよう. いは付加的な炭素原子が供給されると考えられる。反応容. に単一のローレンツ曲線または四つのローレンツ曲線の和. 器はオイルフリーのターボ分子ポンプシステムで排気してお. でフィッティングした [46][47]。AB 積層した二層グラフェンは. り、ベース圧力は 1.0 ×10 − 4 Pa 以下であった。今のところ 銅箔、反応容器の環境のいずれが主要な炭素供給源か不 明であるので、ここでの議論はどちらにも可能性があると して進めることにする。 銅箔基材を水素雰囲気中での直接通電加熱のみによ. (c) 1000 ℃加熱 + 水素プラズマ処理. り、炭素源ガスを一切供給することなく最高 1000 ℃で加 室温でラマン測定を行った。しかし図 8 に示したように、 室温から 1000 ℃の通電加熱のみでは、銅箔表面上にグラ. G. 任意強度. 熱処理した。その後水素雰囲気中で銅箔基材を冷却し、. D. (b) 850 ℃加熱 + 水素プラズマ処理. フェン形成を示す 2D バンド(2650 cm −1)のラマンピーク を観測することはできなかった。1350 cm cm. −1. −1. 2D. および 1580. の非晶質炭素によるブロードなピークは 1000 ℃での. 加熱で消失した。これは低圧下で銅の融点(1085 ℃)に (a) 水素プラズマ処理のみ. 近い温度で熱処理を行ったため、析出した非晶質炭素膜 が分解したか、あるいは銅の蒸発とともに蒸発したためと. 1000. 考えられる。. 2000. 2500. 3000. ラマンシフト (cm ) -1. したがって、水素雰囲気中、室温から 1000 ℃で加熱処 理のみを施した銅箔基材表面には、非晶質炭素膜の析出 が 400、600、800 ℃の熱処理で観察されたが、室温から. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). 1500. 図 9 各温度で水素プラズマ処理を施した銅箔のラマンスペクトル [14]. (a)加熱なし(水素プラズマ処理のみ)、 (b)850 ℃、 (c)1000 ℃。 Copyright (2014), with permission from Elsevier. −131 −.
(9) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 41.0 cm−1 から59.5 cm−1 の2D バンドのピーク幅(FWHM). 40 %が不整合積層の二層グラフェンであることが分かる。. を有し、四つのローレンツ曲線でフィッティングされる(図. グラフェン結晶中の欠陥に由来する D バンド(1338 cm −1). 10(a))。一方(二層グラフェンにおいて積層された単層グ. が非常に弱い強度で観測された。この手法のラマン分光法. ランフェンの間に角度の不整合が生じた AB 積層でない). による層数および積層構造の同定では、このプラズマ処理. 不整合積層を有する二層グラフェンは 36.0 cm −1 から 40.5. 条件で単層グラフェンあるいは三層グラフェンはすべての試. cm. −1. 料で観察されなかった。グラフェンの結晶サイズはラマンス. の 2D バンドのピーク幅(FWHM)を有し、左右対. ペクトルの D バンドと G バンドの相対強度から 100 nm 程. 称なローレンツ曲線でフィッティングされる(図 10(b) ) 。 AB 積層の二層グラフェンと不整合積層の二層グラフェン. 度であった(後述) 。従来法の炭素源ガスを用いて合成した. との収率を調べるため、2D バンドのピーク幅(FWHM). グラフェンでは、結晶サイズは 10 nm 以下であったのに対. のヒストグラムおよびラマンスペクトルのピーク強度比 2D バ. して、この手法の極低炭素源濃度のプラズマ CVD により、. ンド /G バンドを図 11 に示す。ラマン強度比(2D バンド /G. 格段に結晶サイズを向上することができた。さらに、プラズ. バンド)が 0.7 から 2.7 の場合は AB 積層二層グラフェン、. マ処理時間は 30 秒と熱 CVD と比較して非常に短時間で. 2.8 から 5.1 の場合不整合二層グラフェンと同定される。こ. あり、高速合成というプラズマ処理の特長を維持しており、. の結果、銅箔基材の 850 ℃での水素プラズマ処理により合. 高スループットのロール・ツー・ロール法等工業的な連続生. 成されたグラフェンの 60 %が AB 積層の二層グラフェン、. 産にたいへん適した手法であることを示唆している。. 任意強度. (b). 任意強度. (a). 2500. 2600. 2700. 2800 2500. 2600. ラマンシフト (cm-1). 2700. 2800. ラマンシフト (cm-1). 図 10 ラマンスペクトルの 2D バンドのピークフィッティング分析 [14]. (a)AB 積層二層グラフェン(四つのローレンツ曲線でフィッティング)、 (b)不整合二層グラフェン(一つのローレンツ曲線でフィッティング)。 Copyright (2014), with permission from Elsevier. 10. 15. 20. ■AB 積層構造の 2 層グラフェン ■不整合積層構造の 2 層グラフェン -- ガウスフィッティングカーブ. 40 %. 60 %. 40. ■AB 積層構造の 2 層グラフェン ■不整合積層構造の 2 層グラフェン -- ガウスフィッティングカーブ. 10. 63 %. 15. 5. 0 30. 正規化された頻度 (%). 正規化された頻度 (%). 20. 50. 60. 37 %. 5. 0 0.0. 2D バンドの半値全幅 (cm-1). 1.0. 2.0. 3.0. 4.0. 5.0. 2D バンドと G バンドの強度比 ( 任意単位 ). 図 11 2D バンドの半値全幅(FWHM)と 2D バンドと G バンドの強度比のヒストグラム [14] 赤は AB 積層二層グラフェン、青は不整合積層二層グラフェン。 Copyright (2014), with permission from Elsevier. −132 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016).
(10) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 表1 AB積層二層グラフェンの収率、移動度、および2Dバンドの半値全幅(FWHM)[14]. Copyright (2014), with permission from Elsevier 成長プロセス ( 基板厚さと温度). 移動度 (cm2/Vs). 2D バンドの半値全幅 (cm-1). AB 積層の収率 (%) [ ディスオーダー (%)]. 参考文献. Cu(25 µm), 1050 ℃. 1500-4400. 47.4-62.0. 90[10]. L. Liuet al. , ACS Nano.6, 8241(2012). Cu(25 µm), 1000 ℃. 350-400. ―. 67*1. K. Yan et al., Nano Lett.11,6(2011). Cu(25 µm), 1000 ℃. 580. 45.0-53.0. 99*2. S. Lee et al., Nano Lett.10,4702(2010). Cu(1.2 µm)-Ni(0.4 µm), 920 ℃. 3485. 38.0-50.0. 98*3. W. Liu et al., Chem. Mater.26,907(2014). Cu(25 µm), 980 ℃. ―. ―. 70[30]. L. Brown et al., Nano. Lett.12,1609(2012). Cu(6.3 µm), 850 ℃. 1000. 41-59.5. 60[40]. 本研究. *1 三層グラフェンが少量観測された。 *2 AB 積層二層グラフェンの残りは、32 %が単層グラフェン。 *3 三層グラフェンは全体の1 %。 Copyright (2016), with permission from Elsevier. 次に、上記で得られた銅箔基板上のグラフェンを微粘着 性樹脂フィルムで銅箔基板から転写し、分光光度計を用い. 単層グラフェンの遮光率 2.3 %から、本試料のグラフェン の層数はおよそ二層であることが分かった [49]。. て得られた透過スペクトルを示す。. 表 1 にこれまで報告された二層グラフェンについて、移. 図 12 は(a)グラフェン/ 微粘着性樹脂フィルム、 (b). 動度、収率、合成温度、AB 積層二層グラフェンのラマン. 微粘着性樹脂フィルム、光透過率スペクトルであり、さらに. スペクトルの 2D バンドのピーク幅(FWHM)を示す。こ. (c)は(a)を(b)で割り算することで求めたグラフェン. の研究の合成条件では、これまで報告されたものと比較し. のみの光透過率スペクトルである。 (微粘着性樹脂フィルム. て合成温度は低く、合成時間も短い。それにも拘わらず、. 自体の光透過率は波長 550 nm で 91.5 %であり、グラフェ. 室温でのキャリア移動度 1000 cm2/Vs は、従来のプラズ. ン/ 微粘着性樹脂フィルムでは 86.4 %であった。グラフェ. マ CVD 法で合成したグラフェンの移動度およそ 100 cm2/. ン膜のみの光透過率は波長 550 nm で 94.5 %であった。. Vs[13] と比較して、大幅に向上した。この研究より高い移 動度は、より高温での熱 CVD 法を用いて、L.Liu らにより. 100. 1500-4400 cm2/Vs[48]、および W.Liu らにより 3845 cm2/ Vs[50] が報告されている。このことはプラズマ CVD 法によ り合成する二層グラフェンの品質をさらに向上することが可. 光透過率 (%). 90. 能であることを示している。 上記の合成したグラフェン膜の平均のシート抵抗は 951. 80. Ωであった。本試料を塩化金によってドーピングを施した。 図 13 は塩化金によるドーピング後のシート抵抗マッピング. 70. 60. である。本試料の 6 mm × 6 mm の平均のシート抵抗は. (c) ━グラフェンのみ ( 計算値 ) (b) ━樹脂基材 (a) ━グラフェン / 樹脂基材 400. 500. 600. 130 Ωであった。 最も低いシート抵抗は100 Ω未満であった。 極低炭素源濃度のプラズマ CVD 法の開発により、従 700. 800. 波長 (nm). し、さらに層数の制御性を格段に高めることに成功した。. 図 12 (a) グラフェン/ 樹脂基材および(b)樹脂基材の光透過ス ペクトル [14]. (c)は(a)を(b)で割り算して得たグラフェンのみの透過スペクトル。 スペクトルの干渉模様は微粘着性樹脂フィルムがたいへん薄いことに よる。 Copyright (2014), with permission from Elsevier. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). 来と比較して合成するグラフェンの結晶品質を大幅に向上 グラフェン合成の炭素源として、銅箔に不純物として含まれ る炭素、および反応容器内の環境から供給される炭素を利 用した。AB 積層の二層グラフェンが 60 %、不整合の二 層グラフェンが 40 %の収率で合成された。二層グラフェン の平均シート抵抗は 951 Ωであり、室温でのキャリア移動. −133 −.
(11) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 5 ホール移動度と結晶品質の関係. 度は 1000 cm2/Vs であった。塩化金溶液によるドーピング を施しシート抵抗 130 Ωを達成した。. ホール移動度を測定した van der Pauw 素子に対して ラマン分光測定を行うことで、ホール移動度と結晶品質と. 4 大面積グラフェン合成技術の開発. の対応関係について調査した。ここでは、ラマン信号の D. この研究で開発した極低炭素源濃度と銅箔基材の直接. バンドと G バンドの強度比を結晶品質に関連した指標とし. 通電加熱によるプラズマ処理を用いた高品質グラフェン合. て扱った。図 15 にホール移動度と D バンドと G バンドの. 成法を用いて、 A4サイズの大面積グラフェン合成を試みた。. 強度比の関係を示す。この研究では、二つのグラフェン膜. 図 14 はこの手法で銅箔基材上に合成し、PET フィルム. を準備した。一つは、メタン/ 水素ガスを用いたプラズマ. に転写して作製した A4 サイズの大面積グラフェン透明導電. CVD で合成したグラフェン膜、もう一つは本プロジェクト. フィルムである。ドーピングなしの状態でグラフェンのみの. で実施したメタンガスを使用せずプラズマ処理と通電加熱. 光透過率は 92 %(3.6 層) 、シート抵抗は 500 Ω以下であ. 法と組み合わせて合成したグラフェン膜である。プラズマ. る。このようにこの研究で開発した極低炭素源濃度のプラ. CVD の場合、D バンドと G バンドの比は高く、移動度も. ズマ処理手法を用いて A4 サイズの大面積グラフェン透明導. 10-100 cm2/Vs であった。一方、新手法の場合、D バンド. 電フィルムの作製に成功した。. とG バンドの比は低く、 移動度は 100-1000 cm2/Vsであり、 これまでの手法と比較して 10 倍の電気伝導度を実現する. 6. ことに成功した。また、ラマン信号の D バンドと G バンド. $!"#" 150.0 3. $""#" 100.0. 2. 可能である [51]。低温プラズマ CVD の場合は 17 nm、ま. シート抵抗Ω. Y mm. %""#" 200.0. 4. 1 1. の比から、グラフェン膜のドメインサイズを見積もることが. %!"#" 250.0. 5. た水素プラズマ照射と通電加熱を組み合わせた場合は 170 nm であった。この結果からも、従来と比較してドメインサ イズが 10 倍程度拡大したことが分かる。 6 暗視野透過型電子顕微鏡によるドメインサイズの見. !"#"" 50.00 2. 3. 4. X mm. 5. 積もり. 6. この研究で実施したプラズマ処理で合成したグラフェン 膜のドメインサイズを直接見積もるために、暗視野透過型. 図 13 塩化金でドーピング後のグラフェン膜のシート抵抗マッ ピング [14]. 電子顕微鏡を用いた測定を行った。サンプルは TEM グ. Copyright (2014), with permission from Elsevier. リッドにグラフェンを PMMA を用いて転写したものを準備 した。図 16 の(a)に TEM 像、 (b)に制限視野回折パター ンを示す。TEM 像では一様なグラフェン膜が観察された. メタン / 水素を用いたプラズマ CVD 法. ホール移動度 (cm2/Vs). 1000. 水素プラズマ処理. 100. 10 0. 0.5. 1. 1.5. 2. D バンドと G バンドの強度比. 図 14 A4 サイズの大面積グラフェン透明導電フィルム 透過率 92 %、シート抵抗 500 Ω以下。. 図 15 ホール移動度と D バンド /G バンドの強度比 [15]. ◆ CH4/H 2 ガスを用いたプラズマ CVD、● CH4 なし H 2 プラズマ照射。 Copyright (2015), with permission from Elsevier. −134 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016).
(12) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 表2 プラズマCVDと熱CVDによるグラフェン合成の比較表 プラズマ CVD. 熱 CVD. ・低温プロセス. ・高温プロセス. ・大面積成膜. ・成膜面積に制限 (高温炉のサイズに制限). (アンテナによるプラズマ面積増大が容易) ・グラフェンの層数制御が広い. ・グラフェンの層数制御が狭い. ・高速連続成膜. ・高速化が難しい(昇温・冷却に時間が大). ・基板前処理・成膜プロセスが一体化でき. ・基板前処理(溶液使用)が必要で成膜が 別プロセスとなりスループットが不十分. 高スループット. ・コストが大. ・コスト低減が可能. が、制限視野回折パターンはいくつかのスポットが確認さ. 8 まとめと将来展望. れた。これは、異なる方位を持ったドメインがいくつか存. この論文では産総研で取り組んできたプラズマを援用す. 在していることを示唆している。次に、各スポットにおける. るグラフェンの高品質かつ高スループットの CVD 合成法確. 暗視野透過型電子顕微鏡像をそれぞれ図 16(c) (d)に示. 立の試みについて紹介した。プラズマ CVD 法の採用に当. す。どちらの暗視野 TEM 像とも、約 100 nm のドメイン. たって、He/H 2 プラズマ処理による銅箔基板の高純度化の. が形成されていることが確認できた。なお、このドメインサ. 解明、プラズマ発生部での石英窓からのシリコン不純物混. イズは、ラマン測定から見積もられるドメインサイズとほぼ. 入の抑制等を明らかにした。さらに核形成密度の低減のた. 一致している。. め極低炭素濃度プラズマ CVD 法を開発し、通電加熱とプ ラズマ CVD 法の併用による二層グラフェンの選択的合成. 7 プラズマCVD法と熱CVD法によるグラフェン合成. に成功し、グラフェンのグレンサイズを 10 倍にし、ホール. の比較. 移動度 1000 cm2/Vs まで向上させた。. 最後にこの 研究から得られた成 果に基づきプラズマ. プラズマ CVD 法と熱 CVD 法との相違点についてこの. CVD 法と熱 CVD 法によるグラフェン合成の比較を行った. 論文で詳細に触れなかったが、最近我々は熱 CVD 法に. (表 2)。. 比べ、プラズマ CVD 法が成膜速度の短縮、成膜温度の 低温化等の観点から優位性を明らかにした [16]。今後、現 在主流の高温熱 CVD 法合成によるグラフェン性能を超え. a. る高品質大面積グラフェンプラズマ CVD 高スループット合. b. 成の確立に邁進したい。 謝辞. I. 本成果の一部は NEDO「グラフェン基盤 研究開発」 (2012 年度~ 2014 年度実施)で得られたものである。. II 100 nm. c. 参考文献. d. 100 nm. 図16 (a)TEM像、 (b)制限視野回折パターン、 (c) (d)暗視 野透過型電子顕微鏡像 [15] Copyright (2015), with permission from Elsevier. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). [1] K. S. Novoselov, A. K. Geim, S. V. Morozov, D. Jiang, Y. Zhang, S. V. Dubonos, I. V. Grigorieva and A. A. Firsov: Electric field effect in atomically thin carbon films, Science, 306, 666–669 (2004). [2] A. Kumar and C. Zhou: The race to replace tin-doped indium oxide: Which material will win?, ACS Nano, 4 (1), 11–14 (2010). [3] A. K. Geim: Graphene: Status and prospects, Science, 324, 1530–1534 (2009). [4] K.H. Liao, A. Mittal, S. Bose, C. Leighton, K. A. Mkhoyan and C. W. Macosko: Aqueous only route toward graphene from graphite oxide, ACS Nano, 5 (2), 1253–1258 (2011). [5] C. Vi roja nad a ra , M. Sy väja r vi, R. Ya k i mova , L. I. Johansson, A. A. Zakharov and T. Balasubramanian: Homogeneous large -area g raphene layer g row th on. −135 −.
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(14) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). highly oriented pyrolytic graphite, Carbon, 49, 3242–3249 (2011). [38] M. Finšgar, J. Kovač and I. Milošev: Surface analysis of 1-hydroxybenzotriazole and benzotriazole adsorbed on Cu by X-ray photoelectron spectroscopy, J. Electrochem. Soc., 157, C52–C60 (2010). [39] R. M. Souto, V. Fox, M. M. Laz, M. Pérez and S. González: Some experiments regarding the corrosion inhibition of copper by benzotriazole and potassium ethyl xanthate, J. Electroanaly. Chem., 411, 161–165 (1996). [40] H. Kinoshita, M. Umeno, M. Tagawa and N. Ohmae: Hyperthermal atomic oxygen beam-induced etching of HOPG (0001) studied by X-ray photoelectron spectroscopy and scanning tunneling microscopy, Surf. Sci., 440, 49–59 (1999). [41] T. Terasawa and K. Saiki: Growth of graphene on Cu by plasma enhanced chemical vapor deposition, Carbon, 50, 869–874 (2012). [42] T-H. Han, Y. Lee, M-R. Choi, S-H. Woo, S-H. Bae, B. H. Hong, J-H. Ahn and T-W. Lee: Extremely efficient flexible organic light-emitting diodes with modified graphene anode, Nat. Photon., 6, 105–110 (2012). [43] T. Kobayashi, M. Bando, N, Kimura, K. Shimizu, K. Kadono, N. Umezu, K. Miyahara, S. Hayazaki, S. Nagai, Y. Mizuguchi, Y. Murakami and D. Hobara: Production of a 100-m-long high-quality graphene transparent conductive film by roll-to-roll chemical vapor deposition and transfer process, Appl. Phys. Lett., 102, 023112-1–023112-4 (2013). [44] L. J. van der Pauw: A method of measuring specif ic resistivity and Hall effect of discs of arbitrary shape, Philips Res. Repts., 13, 1–9 (1958). [45] J. Robertson: Diamond-like amorphous carbon, Mater. Sci. Eng., R37, 129–281 (2002). [46] L. G. Cançado, A. Reina, J. Kong and M. S. Dresselhaus: Geometrical approach for the study of G’ band in the Raman spectrum of monolayer graphene, bilayer graphene, and bulk graphite, Physical Review, B77, 245408-1–245408-9 (2008). [47] A. C. Ferrari, J. C. Meyer, V. Scardaci, C. Casiraghi, M. Lazzeri, F. Mauri, S. Piscanec, D. Jiang, K. S. Novoselov, S. Roth and A. K. Geim: Raman spectrum of graphene and graphene layers, Phys Rev Lett., 97, 187401-1–187401-4 (2006). [48] L. Liu, H. Zhou, R. Cheng, W. J. Yu, Y. Liu, Y. Chen, J. Shaw, X. Zhong, Y. Huang and X. Duan: High-yield chemical vapor deposition growth of high-quality large-area AB-stacked bilayer graphene, ACS Nano., 6, 8241–8249 (2012). [49] R. R. Nair, P. Blake, A. N. Grigorenko, K. S. Novoselov, T. J. Booth, T. Stauber, N. M. R. Peres and A. K. Geim: Fine structure constant defines visual transparency of graphene, Science, 320, 1308 (2008). [50] W. Liu, S. Kraemer, D. Sarker, H. Li, P. M. Ajayan and K. Banerjee: Controllable and rapid synthesis of high-quality and large-area Bernal stacked bilayer graphene using chemical vapor deposition, Chem. Mater., 26, 907–915 (2014). [51] L. G. Cançado, K. Takai, T. Enoki, M. Endo, Y. A. Kim, H. Mizusaki, A. Jorio, L. N. Coelho, R. M.-Paniago and M. A. Pimenta: General equation for the determination of the crystallite size La of nanographite by Raman spectroscopy, Appl. Phys. Lett., 88, 163106-1–163106-3 (2006).. Synthesiology Vol.9 No.3(2016). 執筆者略歴 長谷川 雅考(はせがわ まさたか) 1990 年京都大学大学院工学 研究科博士後期課程修了、同年工 業技術院電子技術総合研究所。現在産総研ナノ材料研究部門炭素 系薄膜材料グループ・研究グループ長。2011 年~技術研究組合単 層 CNT 融合新材料研究開発機構グラフェン事業部プロジェクト本 部長。ダイヤモンド半導体の電気伝導性制御、単結晶ダイヤモンドの CVD 成長、ナノ結晶ダイヤモンド薄膜の CVD 合成、グラフェンの CVD 合成の研究開発に従事。この論文では、研究課題全体のとり まとめ、グラフェン用プラズマ CVD 装置および合成手法の開発を担 当。 津川 和夫(つがわ かずお) 1992 年早稲田大学理工学部電子通信学科卒業、1998 年早稲田 大学大学院理工学研究科電子・情報通信学専攻博士中退。同年~ 2000 早稲田大学理工学部助手。2000 年~ 2003 年(財)ファインセ ラミックスセンター FCT 研究本部研究員、2003 年~ 2011 年産総研 新炭素系材料開発研究センター・ナノカーボン研究センター・ナノチュー ブ応用研究センター特別研究員・テクニカルスタッフ、2011 年~ 2013 年技術研究組合単層 CNT 融合新材料研究開発機構グラフェン事業 部研究員。2010 年~ 2013 年早稲田大学理工学術院非常勤講師。 2013 年~現在コーンズテクノロジー株式会社ダイヤ成膜装置部アプリ ケーションマネジャー。博士(工学)。この論文では、CVD によるグ ラフェンの合成、評価等を担当。 加藤 隆一(かとう りゅういち) 2008 年筑波大学第三学群工学基礎学類卒業、2011 年筑波大学 院数理物質科学研究科物性・分子工学主専攻博士前期課程中退。 2016 年筑波大学院数理物質科学研究科物性・分子工学博士後期課 程在学中、2011 年~技術研究組合単層 CNT 融合新材料研究開発 機構グラフェン事業部研究員、現在に至る。この論文では、ヘリウム を用いたグラフェン用銅基材のプラズマ前処理技術の開発および低炭 素源濃度を用いた 2 層グラフェンの合成、解析等を担当。 古賀 義紀(こが よしのり) 1969 年早稲田大学理工学部応用化学科卒業、1974 年早稲田大学 大学院理工学研究科応用化学専攻博士中退。同年工業技術院東京 工業試験所入所、同年博士(理学)。1989 年~ 1990 年化学技術研 究所企画室長補佐、高分子解析課長。1993 年~物質工学工業技術 研究所分子計測研究室長、レーザー反応研究室長。2001 年~ 2008 年産総研新炭素材料開発センター副センター長。2010 年~ 2014 年 日本大学理工学研究科大学院非常勤講師、2015 年~三重大学大学 院工学研究科非常勤講師。2011 年~技術研究組合単層 CNT 融合 新材料研究開発機構グラフェン事業部、研究員現在に至る。この論 文では、プラズマ分析および 2 層グラフェン解析等を担当。 石原 正統(いしはら まさとう) 1991 年東京理科大学理工学部工業化学科卒業。1993 年日鉱金属 (株)倉見工場研究部研究員(現:JX 日鉱日石金属)。1997 年東京 理科大学大学院基礎工学研究科材料工学専攻博士後期課程修了、 博士(工学)。1997 年科学技術振興事業団科学技術特別研究員。 2000 年工業技術院物質工学工業技術研究所入所。2001 年産総研 新炭素系材料開発研究センター研究員。2015 年ナノ材料研究部門炭 素系薄膜材料グループ主任研究員として現在に至る。この論文では、 湿式法による基板前処理、透明基材へのグラフェンの転写と透明導 電フィルムとしての用途開発等を担当。 山田 貴壽(やまだ たかとし) 1996 年東海大学工学部電子工学科卒業。1998 年東海大学大学院 工学研究科電子工学専攻博士前期過程終了、同年青山学院大学理工 学部助手。2003 年東北大学多元物質化学研究所助手。2004 年産. −137 −.
(15) 研究論文:プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積 CVD 合成(長谷川ほか). 総研入所。現在ナノ材料研究部門炭素系薄膜材料グループ主任研究 員。この論文では、プラズマ CVD グラフェンの不純物分析解析と電 気特性評価担当。 沖川 侑揮(おきがわ ゆうき) 2007 年名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒業。2012 年名 古屋大学大学院工学研究科博士後期課程量子工学専攻修了。 博士 (工 学)。同年産総研ナノチューブ応用研究センター入所。現在ナノ材料 研究部門炭素系薄膜材料グループ主任研究員。この論文での主な寄 与は、グラフェンを用いたデバイスの作製およびデバイスの電気伝導 特性評価、結晶性評価を担当。. 査読者との議論 議論1 全体について コメント(阿部 修治:武蔵野大学) この論文は、著者らの開発したグラフェンのプラズマ CVD 合成技 術について、そのプロセスを詳細に実験的に検討した上で、さまざま な独自の工夫により高品質のグラフェン合成が可能であることを実証 的に論じており、説得力があります。. される炭素がグラフェンの原料ということになりますが、いずれも工 学的に制御できないファクターです。確かに結晶サイズが向上し、プ ラズマ処理時間も短くなっていますが、工業生産への展開は見通せる のでしょうか? 回答(長谷川 雅考) 極低炭素濃度での核形成サイトの減少による結晶サイズの改善が 明らかにされたことから、工業生産において、生産プロセスでの不純 物モニターが重要であること、さらに核形成サイト数を減少させて良 質のグラフェンを成膜することが今後の工業プロセスにおいて極めて 重要なことが明確になりました。したがって、過剰炭素源の供給は グラフェンの品質を落とす原因となるため、工業生産の展開では、反 応容器等からの不純物モニターが必要になると考えられます。現在、 A4 サイズのベンチスケールであるため、さらに大型連続成膜化に向 けて最適濃度炭素源の連続供給が必要になると考えられます。. コメント(羽鳥 浩章:産業技術総合研究所) グラフェンの高品質高速大面積合成を可能とする技術は、その応用 分野として大きく期待されている透明電極の実用化に向けて鍵となる ものであり、その技術開発の過程を構成学的に論じることは極めて 興味深いことと考えます。この論文は、プラズマ CVD によるグラフェ ン透明導電膜の高品質・高スループット合成技術の確立に向けた研 究開発の経緯を示したものとして、 意義のある論文であると思います。. 議論3 目標の達成に向けた技術選択について 質問・コメント(羽鳥 浩章) この論文では、不純物混入の解決、グラフェン核形成密度の低減 による品質向上、二層グラフェンの選択的合成の開発という各要素 技術に関して、それぞれの開発の背景、シナリオ、シナリオに基づく 開発結果がまとめられており、最終的には大面積グラフェン透明導電 フィルム合成の成功に至る過程が示されています。一方で、グラフェ ン透明電極の実用化という最終目標の達成に向けた技術選択という 観点では、この論文でも一部述べられている熱 CVD 法との相違点 等、競合技術との対比も含めて議論すると、著者らが大面積グラフェ ン透明導電フィルム開発の成功に至った全体シナリオが読者に理解さ れやすくなるかと思います。. 議論2 工業生産への展開について 質問・コメント(阿部 修治) 「極低炭素濃度プラズマ CVD」においては、含炭素ガスをまったく 使っておらず、銅箔中の不純物炭素や、反応容器内の環境から供給. 回答(長谷川 雅考) プラズマ CVD 法の高スループットによる優位性が理解されるよ う、この論文の 7 章に、プラズマ CVD と従来の熱 CVD 法との比較 の表を作成し、挿入いたしました。. −138 −. Synthesiology Vol.9 No.3(2016).
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