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非行傾向をもつ同性モデルの出現が母子家庭の男児の社会化に及ぼす効果

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Academic year: 2021

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非行傾向 を もつ同性 モデルの出現が母子家庭の

男児の社会化 に及ぼす効果

The Effect of the Encounter with the Male Juvenile

Delinquent on the Male Child of Broken

Home without the Father

人間に とっての性(sexuality)は、生得的な生物 学的要因に よってのみ規定 されてい るわけでな く、 生後の文化的 ・社会的な環境 との遭遇に よって影 響 され るところが大 きい ことに異論 はないであろ う。 人間の性は、文化の担い手であ りかつ伝達者 である家族や他者 との相互作用、 またマス メデ ィ ア等を通 じて、次第に社会化 されてい くものであ る。 ところで、現代社会では、機械や電子機器の高 度な発達に より肉体労働が減少 した こと、女性が 少 人数 しか出産 しな くな った こと、 ウーマ ン リブ の影響な どに よ り男女の平等化が促進 された こと か ら、性役割が変容 し平準化 しつつあるといわれ る。 また、男性 も女性 も、 もともと人間 としての 共通性を もっているのであ り、互いに相手の特性 のほ とんどを共有 している。 しか しなが ら、内容 は現代社会の影響を受け変質 し混乱を呈 しなが ら も、依然 として男女間では欲求や興味、考え方や 行動の多 くの点で体系的に異な っている。 したが って、男性性 と女性性の両者の特性を備えた心理 的 ア1/ ドロジニー(psychologicalandrogyny)の方 が、現代社会の多様な環掛 こ適応できる (Be

n,

1975)として も、 それ らは相対的にのみいえるこ とである。 また、生物学的な性 と異なった育て ら れ方を した場合には、性的同一性の混乱を もた ら し精神的不適応に陥 ることが知 られている。現実 にはた とえ心理的にであ って も、生物学的な性を 無視 して正常な自我が形成 され るな どとい うこと はあ りえないのである。 この ように論を展開す る な らば、同性のモデルに対す る同一視 (identifi -cation)あ るいは社会的学習(sociallerning)の機

Tetsuo Naito

制 に よる性的社会化は、性役割の形成に とどまら ず、パ ー ソナ リテ ィの形成な ど社会化全般 に重要 な役割を果たす ことが理解 され よう。 上述の ような背景か ら、本研究では、母1人子 1人の母子家庭の男児が、同性のモデル として軽 度の非行傾向を もつ相手 との交友 を開始 してか ら の変化 についての事例を とりあげ、社会化 の問題 を考察 しようとす るものである。 事 例 対象児 男児

S

、 5歳 11カ月。 家 族 母親A (48歳)は、高卒後金融業を営む親 のっ てで公務員 とな り、20歳の ときLと結婚。 1年後 にLと別居 し、親か ら家を建てて もら う。 30歳の とき、妻子を残 し出張 して きていた後に 本児

S

の父親 となる男性

N

と出会い、交際 をは じ めた。 Aが33歳の ときNとの交際を親に反 対 され 駈落 ちした。 AとNは2人とも (Aは レジ係 とし て) キ ャバ レーに勤務 し、ホテル住いで3年近 く 過 ごした。その後 Nは別の店に転勤 とな り単身赴 任 し、麻薬を常用す るよ うにな った。 1人で店を 任 された

A

は、 まもな く倒産 した ことと

、N

の麻 薬代のため多額の負債をかかえたため、親 に連絡 を と り返済 した。親か らNと別れ るように諭 され たがで きず、転居後再び同居 し別のキ ャ/1レーに 勤務。 Aは レジ係であるが、 Nはやがて支配 人と - 7 1

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-な る。金回 りの良 く-な ったNは再 び麻薬を常用 し、 別 の女性たち との交際をは じめた。 Aが40歳 の ときLと協議離婚。 Nの子を流産す。 借金に追われ麻薬を打 ちなが ら暴力をふ る うNか ら逃 げ回 る生活の中で、 41歳 の とき再 び妊娠 した。 Aは とて も産む気になれず中絶す るつ も りであ っ たが、Nは検診 の とき送 り迎 えまで して出産 を勧 めた。 しか し、 Aの腹部が 目立つ頃か ら2人の関 係が悪化

。A

が身を隠 してい る間に

、N

は別の女 性を住居のマ ソシ ョソに引 き入れた。 その直後 に Nは麻薬常習で逮描 された。警察に面会に行 った ところ、 Nは 「知 らない、忘れた」 とAが内縁の 妻 であ ることを否定 した。す でに中絶 は不可能で 産む以外になか ったが、 Aは 「産 んで も子 どもは 育てない、い らな

」 と考 えていた。 しか し、N と別れ る決心 もつ き出産 した ところ、養育 したい 気持 ちが強 くな り、 「自分 の生活が安定す るまで の間施設-預けた

」 と希望。 出産費用は借金 し て退院。本児Sは生後24日日に乳児院 に一時保護 とな り、 ま もな く入所措置が とられ1歳9カ月 ま で在院 した。 このあいだ母親は毎月平均5- 6回面会 に行 っ ていた。本児Sが1歳5カ月のとき、 父親Nか ら母 親Aに別の県の運送会社で ま じめに働 いてい ると の電話連絡があ った。翌 月Nは、本児 と会い公国 に連れて行 き遊 んだ。 5カ後AはNの勤務先を訪 ね勤務ぶ りを確認 した。翌 月に

A

N

は新 しく借 家 をか り同居 を開始 した。 2カ月後 にNは離婚 し たが、 Aとの入籍は しなか った。 そのあ とAとN 2人の強 い希望に よ り、措置解除が決定 され本児 Sは引 き取 られた。 しか し結局 Nは Sを認知せず、 更生 しない ままに再び水商売に従事 し、同居 の生 活 も長続 きしなか った。 このためAと

S

は2人だ けの母子家庭 となった。母親 は現在 スナ ックを経 営 してい るが、以下 に述べ るよ うに本児 には問題 行動があ るし、お客が少ないので休業 してい る。 本児が落ち着いた ら開店す るつ も りでい る。知 人 か らは昼の仕事 を した方が よい といわれてい るそ うであ る。 本 児の生活史 と同性 モデルとの出会 い 本児

S

が親 に引 き取 られた 1歳9カ月か ら3歳 7カ月 までは、母親 の働いている問託児所 に預け られていた。 その後転居 してか らは現在に至 るま で、 アパ ー トの大家が面倒をみて くれ、外 に連れ 出 した り、七五三 のお祝 い まで して くれた。本児 は これ まで保育園や幼稚園には入 園せず、 自宅で 過 ごしてい る。 5歳3カ月頃 までの本児は、交友相手 もな くほ とん どの時間を家の中で過 ごし、お 人形遊 びや針 ・鉄 を使 うのが好 きで女児の よ うに遊 んでいた。 母親が不思議に感 じるほ どであ った。 これを心配 した大家 が、本児の遊び友達 として小学校1年 生 の男児3人と小学校5年生 の男児1名Bを紹介 し た ところ、一緒 に集団で遊ぶ よ うにな った。 とこ ろがそれか ら6カ月後 、本児の手が届 く低 い とこ ろに置いておいた財布か らお金がな くな っていた。 本児は まだ100円、 10円、 1円の硬貨や1,000円 札 と10,000円札の区別 もで きないのに、自分の財 布の中に1,000円札を4つ折 りに して入れ ていた。 また、本児を家族同様 にかわいが り、 自動販売機 のお金 まで扱わせていた大家 は、引 出 しか ら本児 がお金 を抜 き取 るのを 目撃 した。 母親 はいずれ の 場合に も、 「他人 の ものを盗んではいけない。言 うことを問かない と施設に入れる」 と厳 しく叱った。 ところがそれか ら2カ月後には、母親 のカセ ッ トテープ ・レコーダーを持 ち出 していた。 その直 後 に アイス ク リーム3個が入 った袋 を、 1年生の 友達 の家 の庭 に隠 していた。本児に カセ ッ トを返 す よ うに要求す ると、 「はい」 と答 えていたが、 その後 で 「な くな った」 といいは じめた。 アイス ク リームの入 った袋 の店名か ら、 テープ レコーダ ーを持 って行 ったのは5年生 の交友相手

B

ではな いか と追求す ると、 1,000円か2,000円で買 うとい われた とのことであった。 また同 じ頃B達 ととも に集団で踏切 に子供用の車を入れ、電車を止めた りした。 以前はいつ も母親 の後 をつ いて歩 いてい たのに、今では朝早 く飛 び出 した き り帰 って こな くな り、問題を起 こす よ うになった。 母親 は急 に 悪 くな った と驚 いてい るとのこと。 本児の観察 母親 の面談 のため一緒 に来所 した本児は、直前 に終了 した別 の母親が くザ りは じめた兄弟 を叱 っ てい るのを 目撃 した。 このため本児は 「帰 りたい

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よう !恐いようり と泣 き叫びなが ら、母親 の服 を 掴んでいた。母親が 「言 うことを聞かない と置 いて 行 く」 とい うと、本児は 「言 うこと聞 く、 いい子 にな る」 と泣 き続 けた。 臨床心理 士 (著者)が心理判定室で母親 と面談. す るため、児童福祉司 (女性)が遊戯室 に連れて 行 き遊 ばせていた ところが、不安 を感 じさせない よ うに両方 の部屋 の ド7-を開けていたため もあ ると思われ るが、 3回ほ ど母親 のそば まで来て様 子 を うかが った り、話 しかけた。 その後 は福祉司 と2人 で遊 んでいた。 帰 るときは母親 とともに 「あ りが と うございま した」 といいなが ら嬉 しそ うに礼を し、 「バイバ イ」 と声 を出 し手を振 りなが ら出てい った。 所 見 (1)本児が盗みを した ときに、 「言 うことを聞か ない と施設 にいれ ると」厳 し く母親 に叱 られ、そ の後 2カ月問題を起 こさなか った こと、(2)母親の 面談のため一緒 に来所 した とき、 よその兄弟が叱 られて いるのを 目撃 し 「帰 りたい よ う !恐 い よ う !」 と泣 きだしたこと、 そのとき母親に 「言 うこと を聞かない と置いてい く」 と叱 られ、 「言 うこと を聞 く、いい子になる」 と泣 き続けた ことか ら、 1歳9カ月 まで乳児院に入所 していた ことが外傷 体験 とな ってい ることを窺わせ る。 親に引 き取 られてか ら5歳3カ月頃 まで、お人 形遊びや針 ・鉄を使 うのが好 きで女児 の よ うに遊 んでいたのは、(1)施設に入所 していた1歳9カ月 までは、面会にきていた母親 とだけ弱い愛着が形 成 されていた こと、(2)父親 との出会 い と家族 との 同居、その後の父親の別居を体験す る中で母親-の愛着が強 固 とな った こと、(3)父親を含 め同性の モデルが身近にいなか った ことが原因 と推定 され る。 は じめての交友相手で、かつ同性のBら4名 と の出会 いは

「いつ も母親 の後をついて歩いてい た」本児を、母親 か ら分離 させ、彼 らをモデル と して男性的な遊びを学習す る契較 とな っている。 同時 にBの影響を受け、母親や身近な 人か ら金品 を盗む な どの問題行動を生 じている。 本児 の盗みに関 しては、母親か ら現金1回、物 品1回、大家か ら現金1回で、家族や家族同様 に してい る相手か らであ る。現在 までの回数 も少 な く、習慣化 してい るとはいえない。 Bの非行傾向 も強 い とはいえず、本児を本格的な非行に導 くと は考 え られ ない。 以上 の よ うな分析か ら、父親不在の本児 の母子 分離 を促進 し、男性的な遊 びや性役割 を狂得 させ、 社会 性 の向上 に貢献す る交友相手 との交 流を制限 す る よ りも、母親 を通 じて道徳 的価値基準 を狂得 させ る方が得策 と判断 された。 母親 への指導 まず、母親 としてはつ らいであろ うが、母親か ら分離 し同性の集団に加わ り、男性的 な遊 びが見 られ るよ うにな った ことは、本児の成長 に プ ラス であ ること、Bの非行傾向 も弱 く交友を制限 しな くて よい ことを説明 した。 つ いで盗みについては、家族や 同様の相 手に限 定 されてい ること、回数 も少な く現在 までの とこ ろ習慣化 されてお らず、交友相手Bの機嫌 を取 ろ うとしてな された可能性 もある点を指摘 した。今 後 も繰 り返すであろ うが、母親 としてほ、本児の 盗 まず にはい られ なか った、そ してその こ とを悪 い と感 じてい る感情を冷静に受け とめてや り、本 児が落 ち着 いてか ら話 して聞かせ るよ うに指導 し た。 また、本児は乳幼児期 に施設 に入所 した こと がつ らい体験 とな ってい ることか ら、叱 る ときた とえ効果があって も 「施設 に入れ る」 とい うべ き でない ことを伝 えた。ついで、本児が男性的な遊 びや行動を した ときは、后極的に支持 した りはめ てや るよ うに助言 した。 論 議 Lamb(1980)は、アタ ッチ メン ト行動を身体接 触 と身体的接触 に対す る欲求に密接 に結 びついた 行動 と定義 し、生後7カ月か ら2歳 までの母親 と 父親-の発現について縦断的に観察 した。 その結 果、生後1年6カ月 までは両者に差がなか った。 それ以降の2歳 までをみ ると、 ス トレス状 況では 母親 に、 ス トレスのない状況では父親 に対 して よ り多 く表 出 していた。 さらに分析す ると、 サ ンプ ル中の多数の男児が父親 の方を アタ ッチ メン トの -

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73-対象 としていた。 これに対 し女児では、あ るもの は父親を、あるものは母親を選択 し、 またあるも のは両親 を同 じよ うに選択 し、両者に違いがみ ら れ なか った。 また、父親は女児 よりも男児に対 し て よ り多 くの声 をかけていた。ついで、親が子 ど もを抱 くときの理 由を調べ ると、母親の方が多い のは世話を した りしつけ るためであ り、父親の方 が多いのは遊びのためであった。 さらに遊 びの内 容を検討す ると、父親は身体的遊びや子 どもを直 接刺激す るタイプや平行遊びが多いのに対 し、母 親 の方は 「いないいないは

-

」な どの伝統的な も のや読書であった。 さらにLambは、多 くの研究者が、(1)性的同一 性の発達の臨界期は生後2- 3年 までであ るとし、 (2)男子は生後数年問父親が不在であると、適切な 性役割を身につけ るのに困難を生 じやす く、(3)父 親は性にふ さわ しい行動を とることについて、 と くに息子の場合には母親 よ りも強い関心を もって お り、(4)女子は性的分化の過程が男子 よ りも遅い 時期には じま りかつ緩やかである、 ことを指摘 し ているのを受け、 「父親は、子 どもの乳児期か ら、 とくに男子に とって性固有の行動の発達を促進 さ せ る特別に重要な役割を演 じている」 と結論 して い る。 ところで、父一子関係に母親が及ぼす影響につ いて展望 したLynn(1978)の男児に関す る記述に よれは、結婚生活が うま くいってい る場合には、 母親は男の子に父親の考えを伝達 し、父親 の価値 観や規範意識を支持 し、子 どもに とっての男性モ デル としての父親のイ メージを強化す る。 これに 対 し夫に批判的な母親は、男の子に対 して、あか らさまに、あるいはそれ とな く、女 らしさを身に つけ るよ うに勧めて しまいやすい。そ して長期に わた って父親が不在の場合には、不在中に母親 と 男児 との問に強い粋が結ばれ るので、父親が帰 っ て きた とき子 どもも父親 も相互に適応す るのに時 間がかか り、なかなか よい関係ができないはか り か母親 と男児の幹が ます ます強 くなるのである。 また、別居、離婚、死亡により家庭に父親が いない 場合には、母親は子 どもの父親についてのイ メー ジ形成を左右できる立場にある。 もし父親が家庭 を去 った とき子 どもが小 さければ、父親について のイ メージは母親の操作だけで決 って しま う。不 在の父親について母親が軽蔑的ないいかたを して いると、男の子は父親に対 して否定的なイ メージ を もつ ようになるだけでな く、 自己概念を も否定 的に形成 し、不適応行動に陥 って しま う。そ して Clausen(1962)はさらに、 家庭 に男性役割をとる モデルがない ことよ りも、母親が不在の父親、あ るいは男性一般に対 して とる態度の方が よ り重大 な影響をあたえる要因であ ることを指摘 してい る。 またBiller(1969)は、 5歳の男児 を もった夫の ない母親を対象に、子 どもの レス リングとか泥遊 びなどを どの程度受容す るか拒否す るか、すなわ ち子 どもが男性的であるように励 ます程度につい て調査 した。その結果、母親が男 らしさを促進す る程度 と、子 どもが男性的なゲームを選好す る度 合や教師がその子 どもを男性的 と評定す る程度が 関係 していた。 この結果は、父親が いないことで 起 こ り得 る危険性を母親が認識 し、男児の男性的 行動を強化 し積極的に価値づけ ることで、性的社 会化 を促進できることを示唆す る。 しか しなが ら、 父親がいない とい うことは、同時 に母親に とって は夫の喪失を意味す る。夫があたえて くれ るべ き 愛情、性的満足、財政上の支え、監督に際 しての 助力、 ともに考え責任を共有 して くれ る人の喪失 を意味す るのである。 この よ うなス トレス状況の 中で、 さらに多 くの場合男性-の不信感を ともな いなが ら、親 としての役割を果た さねばならない。 その役割には、通常は母親が担 う社会の下位組織 の1つの単位 として家族が円滑 に働 き続け るよう にす るための表 出的桟能 と、通常 は父親 が分担 す る家庭 を社会 に関係づけ るための道具的枚能 (Parsons,1964)の両方が含め られ るのである。 以上の知見を もとに、本研究の事例を振 り返 っ てみ よう。 まず、出生直後か ら1歳9カ月まで乳 児院に収容 されていた ことがあげ られ る。母親は 毎月5- 6回面会に行 っていたが、 これでは愛着 形成に不十分であろ う。 また近年の研究か ら愛着 形成の対象 となることが知 られ るよ うになった父 親に対 しては、 1歳6カ月 までは1度 も会 ってお らず形成 され るべ くもない。麻薬常習で逮捕 され、 母親 との内縁関係を否定 し、刑務所 に入 ってか ら は音信不通であった父親については、それ まで本 児に語 られ ることもなか ったであろ う。 それゆえ、 漠然 とした父親 イメージの形成 もで きなか ったで

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あろ う。 1歳 9カ月過 ぎに両親 に引 き取 られ たが、 す でに形成 され てい るのは母親 との粁だけであ り、 父親 と本児 のいずれ もが適応す るのに困難 を感 じ た と思われ る。 父親が再 び不在 とな って家庭崩壊 してか らは、母親- の強 い愛着が生 じてい る。犯 罪傾 向を もち再 び家族を遺棄 した父親 について、 本児が肯定的 イ メージを もつ よ うに母親が努力す るな ど考 え るべ くもない状況であ った。 この よ う な物理的 に も心理的 に も長期間にわた る父親 の不 在が、本児 の父親- の同一視を不可能 に した とい え よう。 さらに保 育園に も幼稚園に も通 園せず、 交友相手 もな くほ とん どの時間を家 の中で過 ごし た ことが、 お人形遊 びや針 ・鉄を使 うのが好 きで 女児 の よ うに遊 ぶ傾向を もた らした といえ よう。 こ うした経緯 の中で軽度の非行傾 向を もつBと 出会い、は じめて同一視 の対象 とな る同性 モデル を得た といえ よ う。 そ して父親不在がB-の愛着 的傾向を強 めた と考 え られ る。 このため以前はい つ も母親 の後をついて歩 いたのに、今では朝早 く 飛 び出 した き り帰 って こな くな り、Bをモデル と して男性的行動がみ られ るよ うにな ったのであろ う。 それ とともに母親や家族的人物か らの盗みを す るよ うにな った といえ よ う。非行的行動は問題 であ り、母親を通 じて道徳的価値基準を獲得 させ る必要があ るが、本児の男性役割獲得や よ り一般 的 な社会化 のためには、 同一視 の相手であるBと の関係は重要であろ う。 そ して母親が本児 の男性 的行動を強化 し選好 させ ることが望 まれ る。 要 約 本研究は、母1人子1人の母子家庭 の男児が、 同性の モデル として軽度の非行傾 向を もつ相手 と の交友 を開始 してか らの変 化についての事例を と りあげ、性役割 の獲得 と社会化の問題について検 討 した ものであ る。 事例 の男児は、 出生時 か らの長期にわた る父親 の不在 に よ り、母親-の強い愛着を もつ よ うにな り、父親-の愛着形成や 同一視がで きなか った。 お 人形遊 びや針 ・鎌 を使 うのが好 きで、幼稚園や 保育園に も通園せず、家の中で女児の よ うに遊 ん でいた。母親は本児が男性的行動を とるよ うに働 きかけ るのに成功 していなか った。 この よ うな状 況の中で同性 モデル とな る軽度の非行傾 向を もつ 年長者 との交友が開始 され、 この相手への同一視 に よ り男性的役割行動 と問題行動がみ られ るよ う にな った。 これ らの経緯について、父親が子 ども の発達に及ぼす影響に関す る研究や性的社会化 に 関す る研究に よる知見を援用 し、分析 的に考察、 論議 された。 (1990.6.28受理) 引用文献

Bem,S.L.1975Sexroleadaptability:oneconse -quenceorpsychologicalandrogyny.Journal ofPersonality and SocialPsychology,31,

634-643.

Biller,H.B.1969 Father absense, maternal encouragement,andsexroledevelopmentin kindergarten-ageboys・childDevelopment,

40,539-546.

Clausen,J.A.1962 Personalityattributesand theperceptionofparentalauthority.Paper presentedatthemeetingoftbeAmericanSoci -ologicalAssociation,St.Louis,August.

ラム 黒岩 誠 (訳)1986 2歳までのアタッチメ ント (愛着)の発達 ペダーセソ (柄) 依田 明 (監訳) 父子関係の心理学 新曜社 (Pedersen,

F.A.1980The father-infant relationship: observationalstudiesinthefamilysetting.)

第2章,27-52.

リン 今泉信人 ・黒川正流 ・生和秀敏 ・浜名外喜男 ・ 舌森 護 (共訳)1981 父親 :その役割と子ども の発達 北大路書房 (Lynn,D.B.1978 The ratber:hisroleinchilddevelopment.)

パ ー ソソズ 武 田良三 (監訳)1973 社会構造と パーソナ リティ 新泉社(Parsons.T.1964 So-cialstructureandpersonality.)

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