統計に見る在日コリアンと日韓・日朝ダブル(1)の
現状一出生・死亡,「帰化」による人口動態一
著者
井出 弘毅
著者別名
IDE Kohki
雑誌名
アジア文化研究所研究年報
巻
41
ページ
46(47)-54(39)
発行年
2006
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00009360/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja一出生・死亡,
I
帰化」による人口動態-1
はじめに 本稿は在日コリアン及び在日コリアンと「日 本人J
との聞に生まれた日韓・日朝ダブルの人 口動態について,統計資料からその概要を把握 することを目的とする。 はじめにあたり断っておかなければならない が,統計資料から窺えることは,あくまでも現 実の一部分にすぎず,これをもってすべての現 象を説明することはできない。統計資料の数値 から漏れる人々がいることは当然のことであり, それらをも含めた数字というものは存在しない。 しかしある程度の傾向性を示すことにおいて, こうした統計の数字が有効で、あることは否めな いであろう。 最近,日本国内最大の民族的マイノリティと しての在日コリアン人口の減少が注目されるこ とが多いが,その実態ははたしてどのようになっ ているのか。その反面,在日コリアンと「日本 人J
との聞に生まれた日韓・日朝のダブルが増 加していると言われている。その現状と予想さ れる将来の状況について概要を描いてみたい。 2 在日に関する数字 在日コリアンに関する著作・研究論文の中で 紹介される数字として,外国人登録者のうち国 籍が「韓国・朝鮮J
(2)の者の人数がもっともメ ジャーなものである。しかしこれは日本圏内に9
0
日以上滞在する国籍が「韓国・朝鮮」の者の 統計であり,その中身は昔から住んで、いるいわ ゆる「在日J
(オールドカマー及びその子孫)(3) だけではなく,新たにやって来るニューカマー井 出 弘 毅
をも含んだ数字であることが指摘できょう。 「在日」とニューカマーの違いについては,来 日してから経過した時間だけではなく,生活経 験に根ざした様々な違いがあると思われるが, これらを峻別することは時間の経過と共に困難 になってきている。それは「在日」とニユ}カ マ}との聞をどこで線引きするかということに もよるし,両者間に生まれた子を,果たしてど ちらとして考えれば良いのかという問題をはら んでいるからである。他に少ないながらも可能 性があるものとしては,日本国内で生まれ,長 じて母国韓国に「帰国」し,そこで結婚・出産 を経験した後に,再度日本国内に住む場合など, 考えればきりがない複雑な状況が想定される。 この両者は在外韓人ということで言えば同じ 括りになるであろうが,両者の間には本名・通 名(通称名)の使用状況 1つについて考えてみ ても,大きな違いがある。「在日」の場合には 日本人からの差別を回避する意味で通名を名乗 ることが多かったのに対し,ニューカマーの場 合には本名をそのまま名乗っている場合がほと んどであろう。それにそもそもニューカマ}の 場合には名乗る通名すら存在しないということ もある。 そのため在日コリアンについて考える上で, 単に外国人登録者のうち国籍が「韓国・朝鮮」 の者をそのまま対象とすることには問題がある のではないだろうか。ちなみに2
0
0
4
年の外国人 登録者の中で国籍が「韓国・朝鮮」である者は6
0
7
,41
9
人である。このうち特別永住者は4
6
1
,46
0
人であり,これは全体の約76%
を占めている。 これを「在日 j のコアの部分とすると,残りの4
6
-(
4
7
)
統計に見る在日コリアンと日韓・日朝ダブルの現状 145,959人(約24%)がその他様々な在留資格 によって日本国内に在住している人々である。 個人の在留資格という視点から見ると,いわゆ るオ}ルドカマーとしての「在日」の多くは現 在の特別永住者であろう。他方,それ以外の在 留資格である者(教授,芸術,宗教,報道,投 資・経営,法律・会計業務,医療,研究,教育, 技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,興行, 技能,文化活動,短期滞在,留学,就学,研修) については,ほぽニューカマーであると言える だろう。またその他に「家族滞在
J
は主に上記 ニユ}カマーの家族(配偶者もしくは子)とし ての在留資格であり, ["特定活動」は法務大臣 が個々の外国人について特に指定する活動をす る在留資格である。「日本人の配偶者等」と 「永住者の配偶者等」については,親の世代か ら日本国内で暮らしてきた場合にはまず考えら れない在留資格である。「定住者」は,法務大 臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定 して居住を認める者であるため,主に日系人に 与えられている在留資格である。以上のことか ら,本稿では「在日」とニユ}カマーを分けて おきたい。 ただしこうした類推によってあらゆるケース を判別できるわけではない。単純に考えてみて も,日韓両国を常に行き来している人々や,生 活のベースは日本にありながらも日常的には外 国に住んで、いる人々,などが想定されていない ためである。 しかしながら,ある一時点におけるより詳細 な数字として上記のものは有効であると思われ る。ほほニューカマーであるとd思われる人々を 除いたという点において,より実際に近い数値 であるだろう。 1960年の急激な減少については,おそらく北 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への集団帰国 が影響を与えたのではないかと考えられる。こ の減少の様子は翌年以降も続いており,ここで かなり大規模な人口減少が起こったということ を窺うことができる。ちなみに1960年の帰国事 業による帰国者数は49,036人,翌臼61年は22,8剖01 人であつた(ω司)5 また 1凹98剖4年以降数年問に渡つて全体のi
減成少が 見られるが,これは日本の国籍法の改正に伴い,面在日」圏その他の在留静子
600 500 400 300 200 100。
~G~~ffi~~~æ~~oon~~nm~æ~~oo~æ%woomææ 年 グラフ 1 外国人登録者数のうち国籍が「韓国・朝鮮」の者の人口動態 ※「在日」の部分が無い年は元となる統計自体がないためである(ヘ - 47一(46)従来は自動的に韓国籍とされた者が,二重国籍 者もしくは日本因籍を選択することがでで、きるよ うになつたことによる(ω6ω) ここ最近の状況を見ると,日本国内における 国籍が「韓国・朝鮮」の者の人口は91年をピー クとして減少傾向にあることが窺える。さらに その中の「在日」については,全体の減少より もかなり急激な減少傾向を示していることが分 かる。 毎年新規に入国する外国人の中で韓国人が最 も多いのは確かであるが,日本国内での滞在が 短期の者が圧倒的に多いため外国人登録者数に は反映されていない(九そのため全体としては 緩やかな減少傾向にあるが,グラフ
1
からは, ある一定の割合で増加しているのがニューカマー の韓国人であり,反対に減少しているのは「在 日jであることを窺うことができょう。 3 婚姻と離婚の状況 先桂のグラフ1と比べると,こちらは「在日」 とニューカマーを分けることはできない。在留 資格別の婚姻関係のデータを参照することがで きればそれも可能となるだろう。 グラフ 2を見ると80年代半ばから90年にかけ て夫(日本)と妻 (1韓国・朝鮮J)の婚姻件数 が急増しているが,これについてはいくつかの 要因が考えられる。まず統一教会(世界基督教 統一神霊協会)の合同結婚(国際合同祝福結婚 式)による日韓関の婚姻の増加が指摘できょう。 オフィシャルwebサイトによれば1988年に韓 国において行なわれた6,516組のうち,韓国男 性と日本女性1,526組, 日本男性と韓国女性 1,060組の結婚が行なわれたとある。しかしこ れがそのまま全て反映されているとするならば, 現実とは逆になっている。すなわちグラフでは 急増しているはずの夫(日本)と妻 (1韓国・ 朝鮮J) は, 1,060件であるのに対して,緩やか な増加傾向にあるはずの妻(日本)と夫 (1韓 国・朝鮮J
)
の方が1,526件とかなり多くなって しまうからである。ちなみに87年から88年,そ して88年から89年にかけて見てみると,夫(日 本)と妻 (1韓国・朝鮮J)はそれぞれ658件と 2,622件の増加であり,妻(日本)と夫(
1
韓国・ 朝鮮J)はそれぞれ170件, 54件の増加でしかな い。これだけでは説明のつかない増加状況であ る。 また,この頃来日する韓国人女性が急増して いること,そして韓国人女性と日本人男性との 聞の結婚を仲介する業者の存在などもあり,こ うした形態の婚姻件数が増加したとも考えられl
一一夫(白扇長
(i韓国・朝鮮J)一←妻(日本)・夫(i耳目.塑喧?竺苧ぜ芋畦戸島
J
8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000。
65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 8788 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 グラフ2 国籍「韓国・朝鮮」の者同士,及びそれらの者と日本国籍者との婚姻件数 - 48 -( 45) 年統計に見る在日コリアンと日韓・日朝ダブルの現状 件 4,000 [ 一 ( 日 本 ) + 妻(i韓 国 朝 鮮J)十 知 「 韓 国 明 ) + 妻 ( 同 一島一夫妻とも「韓国・朝鮮J 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500
。
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05年 グラフ3 国籍「韓国・朝鮮」の者同士,及びそれらの者と日本国籍者との離婚件数 ※95年以前の夫妻とも「韓国・朝鮮」の離婚件数は発表されていない。 る。韓国人の入国者数から出国者数を引くと, 男性よりも女性の韓国人の方がかなり多い。ピー クはやはり90年代最初の頃であるヘ 他方,妻(日本)と夫(韓国・朝鮮)は95年 をピークとして緩やかな減少傾向に転じている。 そして86年を境に「韓国・朝鮮」同士の婚姻が 夫(韓国・朝鮮)と妻(日本)の婚姻件数を下 回るようになった。それらとは対照的に,夫 (日本)と妻(韓国・朝鮮)の婚姻件数は概ね 増加の傾向を示している。 国籍と性の組み合わせによって婚姻件数に顕 著な違いが見られることは注目に値する現象で はないだろうか。婚姻において,日本人そして 外国人という国籍に,夫そして妻というオプシヨ ンが加わることによって,著しいヴァリエーショ ンを示している。これは婚姻におけるジ、ェンダー との関連で考察されるべきであろう。 次にグラフ 3の離婚件数であるが,こちらも 婚姻のパターンによって,かなり顕著な傾向が 見られる。夫(日本)と妻(
1
韓国・朝鮮J)の 場合が飛び抜けて多い。しかしながらこれは先 に見た婚姻件数に比例したものと見るべきであ ろう。こころなしか描くカーブも若干のタイム ラグはあるもののほぼ同期しているのが分かる。4
減少するコリアン同士間の子と多数派とな るダブルの子 グラフ4
は先程見たものと同じく婚姻パター ンから嫡出子として生まれた子の数を示したも のである。父母共に「韓国・朝鮮」の場合が, 婚姻件数とも比例してか著しく減少しているこ とが分かる。 1987年から2004年の16年間に 4,384人の減少である。婚姻件数の内訳による と,同期間に件数自体は1,321件の減少である。 他方,その他の組み合わせにおいては若干の 増減はあるものの,概ね1990年代半ばにピーク を迎え, 2000年以降は緩やかな減少傾向に入っ てきたように見える。 96年から97年にかけて,父母共に「韓国・朝 鮮」とその他のパターンが数的に逆転している。 今後は,1
韓国・朝鮮J
から生まれてくる子よ りも,いわゆるダブルとして生まれてくる子の -49-(44)人 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000
。
87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04年 グラフ 4 国籍「韓国・朝鮮」である者同士から生まれた子, 国籍「韓国・朝鮮」である者と日本国籍者との間に生まれた子 方が多数派となっていく。こうした現状をどう 考えるか,民族団体の対応が注目されよう。 ちなみにこうして生まれたダブルの子につい て考えてみよう。制度的には問題なく,日韓の どちらの国籍をも選択できる。日本で生まれ育 ち生きていく上で,はたして韓国籍を選択する だろうか。 ところで先のグラフ2で見た1990年の婚姻件 数の急増が,この出生にはほとんど反映されて いないことが分かる。これは一体どういうこと なのだろうか。あくまでも推測の域を出ないが, 結婚はしたものの,子どもを作っていないので はないかということが窺われる。 そこで先程の離婚件数と照らし合わせて見て みよう。多少の年のずれはあるが,概ね婚姻件 数と離婚件数の増減のカーブが対応しているこ とから,婚姻件数から離婚件数を差し引いてみ ると, 2,000件から3,500件へと緩やかな増加傾 向が現れる。こうした増加傾向があるにもかか わらず,生まれる子の数が減少しているのは, ホスト社会である日本の少子化の影響を少なか らずも受けているのかも知れない。5
増加する「帰化」許可者数 グラフ 5を見ると以前は「帰化」許可者のほ とんどを元「韓国・朝鮮J
の者が占めていたが, 最近では(特に90年代半ばから)その他の国籍 からの「帰化」許可が増えてきていることが窺 われる。これは相対的に見て,全在日外国人に 対する「韓国・朝鮮」の者の割合自体が減少し てきていることの反映とも言えるであろう。 2005年で全体に占める割合は63.5%である。こ の傾向は今後も進行していくことと思われる。 しかしながら,国籍が「韓国・朝鮮」の者の 「帰化」許可が増加傾向にあることは明らかで ある。在日してからの世代も 3世からそれ以降 の世代へと下がっていく中で,国籍に対する考 え方も世代によってかなり変わってきたことも 窺われる。 6 誕生一死亡ー「帰化」許可者=実貿増 グラフ 6は,いくつかの統計を合わせたもの - 50一(43)統計に見る在日コリアンと日韓・日朝ダブルの現状 12000人 8000 年 組 件 o q ノ ﹄ n u n u o o o Q U 内 n V 9 8 斗 E Q 以 内 , L A u d n U 9 内 M U n o n o n 6 4 06 q 4 8 n U 8 0 0 7 t 6 7 1 凋 斗 7 t q ノ ﹄ 7 n U マ r n O B n o n 帆 M 4 ハh v q 4 6 n U 6 0 0 F h u n o p o A 斗 R u q L F h u 10000 グラフ5 1952年から2005年の「帰化」許可者数の推移 ※1973年の「その他」の急増は,前年の日中国交正常化を受けて,台湾が国籍離脱の要 件を緩和したことによる一時的な在日中国人の「帰化」許可者の増加を示しているヘ 千人 十 出 生 十 死 亡 十 「 帰 化 」 許 可 者 十 世 15 10 5 10 グラフ 6 日本における国籍が「韓国・朝鮮」の者の増減 - 51一(42)
である。金英達は在日朝鮮人人口の変動要因と して次の 3点をあげている。 (1 ) 自然増減 プラス要因………出生 マイナス要因……死亡 (2) 社会的増減 プラス要因………入国永住 ①正規入国して定住化 ②「不法」入国して特別 在留許可 マイナス要因……永住出国 (3) 法的増減 ①単純出国(再入国許可を 取らないで出国) ②定住者の退去強制 プラス要因...・H ・..日本国籍の離脱・喪失 (日本国籍から韓国・へ) マイナス要因……日本国籍の取得(韓国・ から日本国籍へ)(叫 これの中から(1)と(3)の一部について,具体的 に示したものがグラフ 6である。 ひのえうま 1966年の出生の急減は,いわゆる「丙午」に 伴うものである。この年に生まれた女は男を食 い殺すという言い伝えから出産が避けられたも のと推測される。一般の日本人の聞にも同様に 出生の減少が見られ,日本に共に暮らす在日コ リアンの聞にも同様の現象が見られたと言えよ う。ちなみに日本の出生率(人口 1000人につき) は. 1965年の 18.6から 66年の 13.7と激減し. 67 年は 19.4となり前々年を上回った(11)。これを単 純に模倣して出生率(外国人登録者のうち国籍 「韓国・朝鮮」の者の数1000人につき)を出し てみると. 21.7 (65年)から 16.4(66年)へと 激減し.21.9 (67年)へと回復している。 また 1985年の出生の急減は日本の国籍法の改 正により,韓国人夫と日本人妻との聞に生まれ た子の国籍について,日韓のどちらかを選択す ることが可能となったためであると考えられる。 それまでは,一律に父親の韓国籍を子が受け継 ぐとされていたが,法改正により届出による日 本国籍取得が認められたことで,日本国籍を選 択したケ一スカが宝羽カか冶なりあつたためでで、ある(凶1臼凶2白) 明らかな減少傾向を示す出生と,なだらかな 増加傾向を示す死亡,そして増減を繰り返しつ つも確実に増加傾向にある「帰化」許可を反映 し実質的な増減は,ほほ「帰化」許可者数に 反比例する形で推移しているのが分かる。
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おわりに 一般的に,移民がホスト国の国籍を取得する ことは広範に見られる現象であり,何も特別な ことではない。しかし,こと在日コリアンに関 してはこの一般論が当てはまらないと言われて きた。統計データもその一端を示すものとなっ ている。様々な理由により来日し,数十年間に も渡って子孫を産み増やしてきた「在日」が, ホスト国である日本の国籍をとらなかったのは 何故かということである。 在日コリアンがその国籍を日本国籍へと変更 しない理由としては,植民地支配を受けたとい う歴史的な理由や.r
帰化」制度は同化政策だ からというものや.r
国籍は最後の砦J
という 国籍がなくなったら.r
民族」的なものを示す ものを全て失ってしまうという危機感からだと 言われてきた。また「帰化」する際に,日本的 氏名を行政から指導されることにより民族名を 失ってしまうということも,かつては忌避の理 由とされてきた。とりわけ.r
民族の裏切り者」 というレッテルを同抱から貼られることや,完 全な「日本人」には到底なれないといった情報 も回避させる要因となりえたはずである。 これまでの日本国籍取得の方法は,主として 「帰化」によるもの,届出によるもの,そして 日本籍者と「韓国・朝鮮」籍者の聞の国際結婚 の結果として生まれてくる子ども達の国籍選択 によるなど,様々なものがあると言える。 そういう中で最近「帰化J
ではなく,簡易な 届出による国籍取得の制度化を目指す動きがあ る。この立場の人々は.r
在日」自体が不自然 なものであり,一日も早く日本国籍を取得せよ という主張を持っている。その上で「コリア系 日本人」として生きていくことを主導しているO - 52-(41)統計に見る在日コリアンと日韓・日朝ダブルの現状 確かに日本国籍になったとしても,チェサに 代表されるような,コリアンの伝統的な習俗を 保ち続けていくという方向性も考えられるし, 民族名のままで「帰化」するということについ ても,実際にそういう事例はいくつもある。し かしそれを制度として主導していくという方向 性はいかがなものであろうか。 在日コリアンは近い将来消滅するのではない かという議論がある。統計から窺うことのでき る傾向性からすると,それは十分予想できるこ とである。いわゆる「在日」は減少の一途を辿っ ており,単純に計算して2050年頃には日本から 消滅すると見ることもできょう(凶。しかしなが ら,様々な方法で消滅しない方途を模索してい るのも事実である。民族組織を軸とした民族教 育や同胞同士の結婚斡旋事業,子ども時代から 青年期,その後に至るまでの人生の各時期にお ける会の存在,などである。こうしたものが存 在する限り,
I
在日」のコアな部分が単純に消 滅することはほとんど考えにくい。また,ニュー カマーと「在日」との間の動態にも注目すべき であろう。 いずれにしても統計データから見てきた通り, これまでの推移から今後の状況を考えると,ダ ブルのマジョリテイ化ということが指摘できょ う。この人々を今後どのように処遇していくの かによって,I
在日」のコアな部分と民族団体 の将来像も変わってくるのではないだろうか。 (本稿は,平成16年度および平成17年度井上円 了記念研究助成金(東洋大学)の交付を受けて 行った調査研究の一部である。) <参考文献> 金英達 (1990)r
在日朝鮮人の帰化』明石書庖。 厚生労働省大臣官房統計情報部『人口動態統計』 各年度版。 国立社会保障・人口問題研究所編 (2006)r
人口統 計資料集 (2006年版H
。
入管協会『在留外国人統計』各年度版(昭和34, 39, 44, 49, 60, 62年度版,平成元, 3, 5年度版, 7年度版以降)。 法務省入国管理局『出入国管理』各年度版。 (1981)r
出入国管理の回顧と展望 昭和55年 度版』。 関寛植 (1994)r
在日韓国人の現状と未来』白帝社。 森田芳夫 (1996)r
数字が語る在日韓国・朝鮮人の 歴 史J
明石書庖。<
5
主 > (1)日韓・日朝ダブルとは,日本国籍者と韓国籍者, または日本国籍者と国籍表示が「朝鮮」となっ ている者との聞に生まれた子のことである。 (2)国籍「韓国・朝鮮」とは,大韓民国の国籍,そ して記号としての「朝鮮J
籍である。前者につ いては特に説明は不要で、あろう。後者は誤解さ れることが多いが,いわゆる北朝鮮(朝鮮民主 主義人民共和国)の国籍を指すものではないこ とに注意が必要である。日本は北朝鮮とは国交 を有していないため, 日本においては北朝鮮 (朝鮮)国籍は存在しない。外国人登録証の国籍 記載に従前のままの「朝鮮」とある者のことで ある。ただしこの中のある者は,韓国ではなく 北朝鮮を支持するとの政治的立場により,韓国 籍への書き換えを行なっていないのも事実であ る。 (3)ここで言う「在日」とは,次のものを指す。 1952 年から1991年までは,法126-2-6該当者(昭和20 年9月2日以前から日本に在留する者について 特に在留資格がなくても在留することができる), 4-1-14 (永住者), 4-1-16-2 (法126-2-6の子), 4-1-16-3 (法務大臣が特に在留を認める者),協 定永住 (1965年から), 1991年以降は特別永住者 のみである。入国管理法制の改正により,様々 な在留資格が存在しているが,そのいずれにお いても,いわゆるサンフランシスコ講和条約発 効に伴う日本国籍離脱者及びその子孫である者 を中心としている。 (4)在留外国人統計は平成7年度版よりも前のもの については毎年刊行されていないため,参照で きたものの数値のみを載せた。 (司法務省入国管理局(1981)r
出入国管理の回顧と 展 望 昭 和55年度版jp.129より。 (6)日本の国籍法の改正(父系血統主義から父母両 系主義)により,父親が韓国籍で母親が日本国 籍であっても,その子は日韓の二重国籍者とな ることができ,それは日本国民とみなされるた め外国人登録の対象から外れたことによる。ま た同改正では届出による日本国籍取得の制度が 新たに作られ,両親のうちどちらかが日本国籍 53 -(40)者である場合20歳未満の子は届出により日本国 籍を取得することができるようになったためで ある。 (7)2004年の入国外国人の中で韓国が最も多く 177万 4,872人であり,これは全外国人の 26.3%を占め ている。その中で短期滞在は139万6,988人であり, 全韓国人の約78.7%を占めている。 (8)金英達 (1990) p.23-24による。 (9)国籍「韓国・朝鮮」の入国者から出国者を引い た も の ( 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 編 (2006)より)を参照すると,次の通り女性の方 が男性よりも圧倒的に多いことが分かる。また, 90年代前半にピークがあることが窺われる。 年 男 ( 人 ) 女 ( 人 ) 75~79 -274 2,788 80~84 ,1771 11.720 85~89 18,610 27.154 90~94 44.478 42.469 95~99 12.556 34.435 同森田 (1996) p.162より引用。なお「北朝鮮国籍」 という表記は,現時点では間違いである。理由 は上記注(2)を参照されたい。 仕1)国立社会保障・人口問題研究所編 (2006)より。 似)