問題と目的
青年がアイデンティティを形成していく上で、 対人関係の中での学びや気づきは非常に重要であ るが、一方で、他者と離れた時間・空間の中で、 自分自身の関心を探求したり、他者や社会と自己 との関係を振り返って考えたりすることも同じく らい重要である。増淵は、青年がそのようなこと に取り組む時間として「ひとりの時間」を提唱 し、研究を進めてきた (増淵,2014; 2016 など)。 本研究では、増淵 (2014) に従い、「ひとりの時 間」を「心理的にひとりでいる、単独であると感 じられる時間 (ただし、他者の存在や行為遂行の 有無は問わない)」と定義し、検討していくこと とする。 増淵 (2014) は、大学生を対象に「ひとりの時 間」とアイデンティティとの関連について検討し ている。パス解析の結果、「ひとりの時間」の過 ごし方の中でも、「個人的活動への没頭」の過ご し方が、ひとりで過ごす「充実・満足」感につな がるとアイデンティティ発達を促進するが、「個 人的活動への没頭」の過ごし方が、いつもひとり でいたいというような「孤絶願望」につながる と、アイデンティティ発達が抑制されることを見 出した。また、ひとりで過ごすことに関する感情・ 評価を基にしたクラスター分析により、対象者が 「ひとり不安群」「高自立願望群」「中庸群」「模索 群」「孤絶願望群」の 5 つに分類されることが示 された。さらに、Figure 1 に示すように、①ひと り不安群 (ひとりで過ごすことに孤独・不安感が大学生における「ひとりの時間」と
アイデンティティ発達過程との関連
増淵 裕子・今城 周造
Relationship between university students’ time spent alone and
the process of their identity development
Yuko MASUBUCHI and Shuzo IMAJO
This study used university students as participants to investigate how their thoughts on, and assessments of, spending time alone, as well as how they spent their time alone, were related to their process of identity development. A questionnaire-based investigation was conducted with female university students (N = 206). The results of multiple regression analysis revealed the following: (1) How they spent their time on self-introspection had a marked influence on identity, with the method, in particular, promoting “exploration” in the process of identity development. (2) Thoughts on, and assessments of, “a wish for isolation” inhibited identity development. (3) Thoughts on, and assessments of, “fulfillment/satisfaction” promoted “identification with commitment” in the process of identity development, and inhibited maladaptive “ruminative exploration.” We discussed the correspondence between these findings, and the hypothetical model of “time spent alone” (Masubuchi, 2014) and developmental changes in identity.
Key words : thoughts on, and assessments of, spending time alone(ひとりで過ごすことに関する感情・評価),
how students spend their time alone(「ひとりの時間」の過ごし方),
identity development(アイデンティティ発達),university students(大学生),
高く、「ひとりの時間」を持つ頻度も少ない状態) →②模索群 (ひとりでも過ごせるようになりたい という自立願望が芽生えるが、まだひとりで過ご すことへの孤独・不安感が高いため、模索してい る状態にあり、自我同一性が揺らぐ状態)→③高 自立願望群(自立願望の高さから、実際にひとり で過ごす頻度も高くなり、ひとりで過ごすことに 孤独・不安が減り、充実・満足感が高まる状態) →④中庸群 (自立願望が達成されることで弱ま り、「ひとりの時間」 を過ごす頻度もひとりで過ご す充実・満足感もほどほどに落ち着く状態) とい う流れで発達的に変化する仮説モデルを提示し、 孤絶願望群は、③の高自立願望の段階で、他者や 社会と自分とのつながりや距離感がうまくつかめ なかったり、対人関係がうまく持てなかったりし た場合に、陥る可能性がある状態と推察した。 上記の研究において増淵 (2014) がアイデンティ ティの測定に用いた多次元自我同一性尺度 (谷, 2001) は、アイデンティティの感覚の高さを測定 する尺度であり、アイデンティティ発達の結果を 示すものである。アイデンティティに関する研究 は、アイデンティティ発達の結果に着目するもの と、Marcia (1966) のアイデンティティ・ステイ タスに代表されるようなアイデンティティ発達の 過程 (プロセス) に着目するものがあり、アイデ ンティティ発達においては、その結果だけでなく プロセスが青年の発達にとって重要と考えられて いる (中間・杉村・畑野・溝上・都筑,2014)。し かし、これまでに、ひとりで過ごすこととアイデ ンティティ発達のプロセスとの関連については検 討されていない。 アイデンティティ発達のプロセスやステイタス を 測 定 で き る 尺 度 と し て は、 従 来 よ り、 加 藤 (1983) の同一性地位判定尺度がよく使われてい る。この尺度は、Marcia の同一性地位理論の検討 と整理をふまえて作成され、「現在の自己投入」 「過去の危機」「将来の自己投入の希求」の 3 下位 尺度からなる。また、近年では、中間他(2014) が 多 次 元 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 発 達 尺 度 日 本 語 版 (DIDS-J) を開発している。この尺度は、Luyckx,
Schwartz, Berzonsky, Soenens, Vansteenkiste, Smits, & Goossens (2008) によって開発された多 次元アイデンティティ発達尺度 (the Dimensions of Identity Development Scale: DIDS) の日本語版 (Dimensions of Identity Development Scale: the
Japanese version, DIDS-J) であり、近年のアイデ ンティティ発達の枠組みに関する見解の変化に基 づき、コミットメント形成の過程だけでなく、コ ミットメント形成後にそれを維持・熟考していく 過程もとらえることができる (中間他,2014)。下 位尺度は、2 つのコミットメント次元(「コミッ トメント形成」、「コミットメントとの同一化」) と 2 つの探求次元(「広い探求」、「深い探求」)、 および「反芻的探求」の次元からなる。中間他 (2014) によると、「コミットメント形成」は「広 い探求」に対応するコミットメント、「コミット 䜂䛸䜚Ᏻ⩌ ᶍ⣴⩌ 㧗⮬❧㢪ᮃ⩌ ୰ᗤ⩌䠄㐺ᛂ䠅 䜂䛸䜚䛷㐣䛤䛩䛣䛸䛻 㛵䛩䜛ឤ䞉ホ౯ 䞉Ꮩ⊂䞉Ᏻ䛜㧗䛔 䞉⮬❧㢪ᮃ䛚䜘䜃ᐇ䞉‶㊊ 䚷䛿ప䛔 䞉⮬❧㢪ᮃ䛾ⱆ⏕䛘 䞉Ꮩ⊂䞉Ᏻ䛿౫↛䛸䛧䛶㧗䛔 䞉⮬❧㢪ᮃ䛜㧗䛔 䞉Ꮩ⊂䞉Ᏻ䛿ప䛟䛺䜚䚸ᐇ䞉 䚷‶㊊䛜㧗䜎䜛 䞉⮬❧㢪ᮃ䛜㐩ᡂ䛥䜜ᙅ䜎䜛 䞉ᐇ䞉‶㊊ឤ䛿䜋䛹䜋䛹䛻ⴠ䛱 䚷╔䛟 䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䛾 㐣䛤䛧᪉ 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢ᣢ䛴㢖ᗘ䛜 䚷ప䛔 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢䛖䜎䛟㐣䛤䛫䛺 䚷䛔 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢ᣢ䛱䛿䛨䜑䜛 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢㐣䛤䛩㢖ᗘ䛜 䚷㧗䛟䛺䜛 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢⮬ศ䛾䛯䜑䛻 䚷ά⏝䛷䛝䜛 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢㐣䛤䛩㢖ᗘ䛿 䚷䜋䛹䜋䛹䛻 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢㐣ᗘ䛻ᣢ䛯䛺 䚷䛟䛶䜒Ⰻ䛔≧ែ ⮬ᡃྠ୍ᛶ 䞉⯡ⓗ䛻୰⛬ᗘ 䞉⯡ⓗ䛻ప䛟䛺䜛䞉⮬ᡃྠ୍ᛶ䛾ᦂ䜙䛞 䞉⯡ⓗ䛻㧗䛔 䞉⯡ⓗ䛻㧗䛔 Ꮩ⤯㢪ᮃ⩌ 䞉⮬❧㢪ᮃ䛜㧗䛔 䞉ᐇ䞉‶㊊ឤ䛜㧗䛔 䞉ᑐே΅䜢᎘ᝏ䛧䛶䛔䜛 䞉䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䜢㐣䛤䛩㢖ᗘ䛜 䚷㧗䛔 䞉⯡ⓗ䛻ప䜑 䜂䛸䜚䛷㐣䛤䛩䛣䛸䛻 㛵䛩䜛ឤ䞉ホ౯ 䛂䜂䛸䜚䛾㛫䛃䛾 㐣䛤䛧᪉ ⮬ᡃྠ୍ᛶ Figure 1 「ひとりの時間」と自我同一性の発達的変化の仮説 (増淵,2014 より引用)
「自立願望」「充実・満足」「孤絶願望」の 4 下位 尺度について、「まったくそう思う (7)」「かなり そう思う (6)」「どちらかといえばそう思う (5)」 「どちらともいえない (4)」「どちらかといえばそ う 思 わ な い (3)」「 ほ と ん ど そ う 思 わ な い (2)」 「まったくそう思わない (1)」の 7 件法で回答を求 めた。 2.「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ)
21
項目 増淵 (2014) の「ひとりの時間」の過ごし 方 (意味づけ) 尺度を使用した。「自己内省」「自 己解放」「個人的活動への没頭」「ストレスからの 解放」の 4 下位尺度について、その頻度を「とて もよくある (6)」「よくある (5)」「どちらかとい えばある (4)」「どちらかといえばない (3)」「あ まりない (2)」「まったくない (1)」の 6 件法で回 答を求めた。 3.「ひとりの時間」の過ごし方(行動)28
項 目 増淵・今城 (2014) の「ひとりの時間」の過 ごし方 (行動) 尺度を使用した。「思考・内省」 「休 息・解放」「コミュニケーション」「趣味」の 4 下 位尺度について、その頻度を「いつもする (5)」 「しばしばするある (4)」「ときどきする (3)」「ほ とんどしない (2)」「まったくしない (1)」の 5 件 法で回答を求めた。 4.多次元アイデンティティ発達25
項目 中 間他 (2014) の多次元アイデンティティ発達尺度 日本語版 (DIDS-J) を使用した。「コミットメン ト形成」「コミットメントとの同一化」「広い探 求」「狭い探求」「反芻的探求」の 5 下位尺度につ いて、「とてもよくあてはまる (5)」「ややあては まる (4)」「どちらともいえない (3)」「あまりあ てはまらない (2)」「全くあてはまらない (1)」の 5 件法で回答を求めた。 5.同一性地位12
項目 加藤 (1983) の同一性 地位判定尺度を使用した。「現在の自己投入」「過 去の危機」「将来の自己投入の希求」の 3 下位尺 度について、「まったくそのとおりだ (6)」「かな り そ う だ (5)」「 ど ち ら か と い え ば そ う だ (4)」 「どちらかといえばそうではない (3)」「そうでは ない (2)」「全然そうではない (1)」の 6 件法で回 答を求めた。 倫理的配慮 配布した質問紙に、研究の趣旨、倫理的配慮に ついて説明した文書を添付した。説明には、調査 メントとの同一化」は「深い探求」に対応するコ ミットメントである。そして、「広い探求」と 「コミットメント形成」によって、コミットメン トを形成するために多様な選択肢を探索する過程 を見ることができ、「深い探求」と「コミットメ ントとの同一化」によって、既に選択した対象が 真にコミットに値するか否かをさらに検討しそれ へのコミットメントを深めていく過程を見ること ができる (Luyckx, Goossens, & Soenens, 2006; Luyckx, Goossens, Soenens, & Beyers, 2006)。 Luyckx, Goossens, & Soenens (2006) は、これを アイデンティティ形成の二重サイクルモデル (a dual-cycle model of identity formation) と呼んで いる。本研究では、これら 2 つの尺度を使用して 検討することとする。 以上より、本研究では、ひとりで過ごすことに 関する感情・評価および「ひとりの時間」の過ご し方が、アイデンティティ発達のプロセスとどの ように関連するかを検討することを目的とする。 特に、ひとりで過ごすことに関する感情・評価お よび「ひとりの時間」の過ごし方のどの部分が、 アイデンティティ発達過程のどの部分に関連して いるのかを検討することにより、アイデンティ ティ発達過程の規定因となる「ひとりの時間」の 過ごし方やそこでの感情・評価について探る。ま た、それにより、増淵 (2014) で提示した仮説モ デル (Figure 1) およびパスモデルの妥当性につ いても検討する。方 法
調査対象者 都内にある女子大学の学生 206 名を調査対象と し、不回答を希望した 1 名を除く 205 名 ( 1 年生 82 名・2 年生 59 名・3 年生 63 名・学年不明 1 名、 平均 19.61 歳、SD = 0.99) を分析対象とした。 調査時期 2015 年 12 月。 実施方法 授業時間等を利用して集団実施した。 調査内容 1.ひとりで過ごすことに関する感情・評価26
項目 増淵(2014)のひとりで過ごすことに 関する感情・評価尺度を使用した。「孤独・不安」-.21∼-.30)。「孤独・不安」と、多次元アイデン ティティ発達の 5 下位尺度との間には、いずれも 有意な相関はみられなかった。 (
2
)ひとりで過ごすことに関する感情・評価と 同一性地位の各下位尺度との関連 「孤独・不安」 と「現在の自己投入」「将来の自己投入の希求」 と の 間 に 弱 い 負 の 相 関 が み ら れ た (rs = -.24, -.19)。「充実・満足」と「現在の自己投入」との 間に弱い正の相関がみられた (r = .18)。「自立願 望」と「過去の危機」「将来の自己投入の希求」 との間に弱い正の相関がみられた (rs = .28, .19)。 「孤絶願望と「過去の危機」との間に弱い正の相 関 (r = .23)、「現在の自己投入」「将来の自己投 入の希求」との間に弱い負の相関がみられた (rs = -.22, -.22)。 (3
)「ひとりの時間」の過ごし方(意味づけ/ 行動)と多次元アイデンティティ発達との関連 「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ) に関して は、「自己内省」と「広い探求」「深い探求」「反 芻的探求」との間に中程度の正の相関 (rs = .43∼ .47)、「コミットメントとの同一化」との間に弱 い正の相関 (r = .16) がみられた。「自己解放」と 「広い探求」「反芻的探求」の間に弱い正の相関が みられた (rs = .14, .26)。「個人的活動への没頭」 と「広い探求」「反芻的探求」の間に弱い正の相 関がみられた (rs = .17, .30)。「ストレスからの解 放」と「反芻的探求」との間に弱い正の相関がみ られた (r = .20)。 「ひとりの時間」の過ごし方 (行動) に関して は、「思考・内省」と「広い探求」「深い探求」 「反芻的探求」との間に弱い∼中程度の正の相関 (rs = .38∼.40) がみられた。「コミュニケーショ ン」と「コミットメントとの同一化」「深い探求」 との間に弱い正の相関がみられた (rs = .17, .19)。 「趣味」と「広い探求」「深い探求」「反芻的探求」 との間に弱い正の相関がみられた (rs = .14∼.25)。 「休息・解放」は多次元アイデンティティ発達の 各下位尺度との間に有意な相関はみられなかった。 (4
)「ひとりの時間」の過ごし方(意味づけ/ 行動)と同一性地位の各下位尺度との関連 「ひ とりの時間」の過ごし方 (意味づけ) に関しては、 「自己内省」と「過去の危機」との間に中程度の 正の相関 (r = .40)、「将来の自己投入の希求」と の間に弱い正の相関 (r = .33) がみられた。「自己 の目的、調査結果は研究の目的以外には使用しな いこと、調査への参加は任意であり、参加の拒否 による不利益は一切ないこと、得られたデータは 個人が特定されない形で処理・分析し、調査デー タは責任をもって厳重に管理すること、本研究に 対する問い合わせ先などが含まれている。質問紙 には、調査に協力したくない場合に×印を記入す る欄を設け、これらの者は分析対象から除外し た。質問紙への回答をもって、調査協力の同意を 得たものとみなした。なお、本研究は、昭和女子 大学倫理委員会心理学系倫理問題部会の審査を受 け、承認されている (承認番号 2015-7 号)。結 果
本研究の分析には、IBM SPSS Statistics (ver. 25.0) を用いた。 1.尺度の確認と下位尺度得点の算出 5 つの尺度の各下位尺度について、Cronbach の α係数を算出したところ、ある程度の内的一貫性 が確認された (Table 1)。同一性地位判定尺度の 各下位尺度については、α係数は低めであったが、 元の尺度の分類に従い、このまま使用することと した。5 尺度それぞれについて、各下位尺度の合 計点を項目数で除したものを下位尺度得点とし た。下位尺度得点の平均値と標準偏差を Table 1 に示す。 2.各変数間の相関 ひとりで過ごすことに関する感情・評価および 「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ/行動) が、アイデンティティ発達のプロセスとどのよう に関連しているかを検討するため、各変数間の相 関分析を実施した。結果を Table 1 に示す。 (
1
)ひとりで過ごすことに関する感情・評価と 多次元アイデンティティ発達との関連 「充実・ 満足」と「コミットメントとの同一化」「広い探 求」との間に弱い正の相関がみられた (rs = .16, .16)。「自立願望」と「広い探求」「深い探求」 「反芻的探求」との間に弱い正の相関がみられた (rs = .17∼29)。また、「孤絶願望」と「コミット メント形成」「コミットメントとの同一化」「深い 探求」との間に弱い負の相関がみられた (rs =Ta ble 1 各下位尺度の基礎統計量と各下位尺度間の相関係数 ひと り で 過 ご す こ と に 関 す る 感 情 ・ 評 価 「ひ と り の 時 間 」の過 ご し 方(意 味 づ け ) 「ひとりの時間」 の過ごし方 (行動) 多次元アイデンティティ発達 同一性地位 平均 SD α 孤独・ 不安 充実・ 満足 自立 願望 孤絶 願望 自己 内省 自己 解放 個人的 活動 への没頭 ストレス からの 解放 思考・ 内省 休息・ 解放 コミュ ニケー ション 趣味 コミット メント 形成 コミット メント との 同一化 広い 探求 深い 探求 反芻的 探求 現在の 自己 投入 過去の 危機 将来の 自己 投入の 希求 ひとりで過ごすことに 関する感情・評価 孤独・不安 − − .53 *** − .29 *** − .02 − .10 − .27 *** − .25 *** − .12 − .04 − .13 − .05 − .15 * − .02 − .09 − .13 − .01 .13 − .24 *** .07 − .19 ** 2. 72 0. 92 . 86 充実・満足 − .29 *** .14 *. 28 *** .42 *** .45 *** .32 *** .09 .20 ** .11 .26 *** .09 .16 *. 16 *. 05 − .05 .18 ** .02 .12 5. 00 1. 13 . 83 自立願望 − .20 ** .40 *** .51 *** .41 *** .30 *** .34 *** .26 *** .15 *. 30 *** − .02 .01 .25 *** .17 *. 29 *** .07 .28 *** .19 ** 5. 28 0. 81 . 72 孤絶願望 − .05 .24 *** .19 ** .19 ** − .01 .03 − .25 *** .15 * − .21 ** − .30 *** − .10 − .22 ** .02 − .22 ** .23 *** − .22 ** 2. 73 1. 32 . 80 「ひとりの時間」の 過ごし方(意味づけ) 自己内省 − .54 *** .45 *** .39 *** .67 *** .24 *** .22 ** .27 *** .09 .16 *. 45 *** .43 *** .47 *** .08 .40 *** .33 *** 4. 38 0. 97 . 88 自己解放 − .75 *** .65 *** .29 *** .32 *** .13 .33 *** − .03 .03 .14 *. 14 .26 *** − .01 .28 *** .13 4. 99 0. 75 . 86 個人的活動への没頭 − .63 *** .11 .25 *** .07 .43 *** − .01 .03 .17 *. 12 .30 *** .00 .23 *** .10 5. 05 0. 79 . 80 ストレスからの解放 − .14 *. 22 ** .11 .24 *** − .01 .09 .09 .08 .20 ** − .09 .20 ** .02 4. 37 1. 07 . 72 「ひとりの時間」の 過ごし方(行動) 思考・内省 − .27 *** .38 *** .40 *** .08 .13 .40 *** .40 *** .38 *** .03 .40 *** .30 *** 3. 27 0. 82 . 90 休息・解放 − .22 ** .17 * − .04 .02 .02 .02 .08 − .08 .06 − .05 4. 18 0. 69 . 87 コミュニケーション − .33 *** .08 .17 *. 13 .19 ** .14 .09 .05 .25 *** 3. 21 0. 79 . 72 趣味 − − .08 .02 .21 ** .14 *. 25 *** .07 .28 *** .18 ** 3. 45 0. 84 . 65 多次元 アイデンティティ発達 コミットメント形成 − .85 *** .53 *** .61 *** − .17 *. 67 *** .03 .24 *** 3. 09 0. 89 . 87 コミットメントとの同一化 − .59 *** .60 *** − .14 *. 68 *** − .04 .37 *** 2. 94 0. 79 . 86 広い探求 − .74 *** .36 *** .47 *** .31 *** .55 *** 3. 44 0. 78 . 84 深い探求 − .37 *** .46 *** .29 *** .44 *** 3. 35 0. 78 . 78 反芻的探求 − − .20 ** .41 *** .22 ** 3. 58 0. 79 . 79 同一性地位 現在の自己投入 − − .01 .47 *** 3. 59 0. 90 . 63 過去の危機 − .17 * 4. 09 0. 77 . 40 将来の自己投入の希求 − 3. 92 0. 76 . 45 *p <. 05 , ** p<. 01 , *** p<. 001
び「自己内省」からの正の標準偏回帰係数 (β= .16, p<.05) が有意であった。「コミットメントと の同一化」に対しては、「充実・満足」からの正 の標準偏回帰係数 (β= .18, p<.05)、「孤絶願望」 からの負の標準偏回帰係数 (β= -.31, p<.001)、 「自己内省」からの正の標準偏回帰係数 (β= .19, p<.05) が有意であった。「広い探求」に対して は、「自己内省」からの正の標準偏回帰係数 (β= .47, p<.001)が有意であった。「深い探求」に対 しては、「孤絶願望」からの負の標準偏回帰係数 (β= -.27, p<.001)、「自己内省」からの正の標準 偏回帰係数 (β= .39, p<.001)、「思考・内省」か らの正の標準偏回帰係数 (β= .18, p<.05)が有 意であった。「反芻的探求」に対しては、「充実・ 満足」からの負の標準偏回帰係数 (β= -.21, p< .01)、「自己内省」からの正の標準偏回帰係数 (β = .51, p<.001)、「趣味」からの正の標準偏回帰 係数 (β= .17, p<.05)が有意であった。 次に、同一性地位の各下位尺度を目的変数とし た場合について述べる。「現在の自己投入」に対 しては、「充実・満足」からの正の標準偏回帰係 数 (β= .25, p<.001)、「孤絶願望」からの負の標 準偏回帰係数 (β= -.30, p<.001)が有意であっ た。「将来の自己投入の希求」に対しては、「孤絶 願望」からの負の標準偏回帰係数 (β= -.24, p< .001)および「自己内省」からの正の標準偏回帰 係数 (β= .40, p<.001)が有意であった。「過去 の危機」については、偏相関分析を実施したとこ ろ、「思考・内省」との偏相関係数のみ .22 ( p< .01)と有意であった。 以上より、ひとりで過ごすことに関する感情・ 評価については、「充実・満足」と「孤絶願望」 がアイデンティティの各下位尺度に影響してい た。「充実・満足」からは、「コミットメントとの 同一化」および「現在の自己投入」に対して正の 影響、「反芻的探求」に対して負の影響がみられ た。「孤絶願望」からは、「コミットメント形成」 「コミットメントとの同一化」「深い探求」「現在 の自己投入」「将来の自己投入の希求」に対して 負の影響がみられた。 「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ/行動) については、「自己内省」の過ごし方 (意味づけ) のアイデンティティへの影響が顕著であり、「思 考・内省」「趣味」の過ごし方 (行動) も影響する 解放」と「過去の危機」の間に弱い正の相関がみ られた (r = .28)。「個人的活動への没頭」と「過 去の危機」の間に弱い正の相関がみられた (r = .23)。「ストレスからの解放」と「過去の危機」 との間に弱い正の相関がみられた (r = .20)。 「ひとりの時間」の過ごし方 (行動) に関して は、「思考・内省」と「過去の危機」との間に中 程度の正の相関 (r = .40)、「将来の自己投入の希 求」との間に弱い正の相関 (r = .30)がみられ た。「コミュニケーション」と「将来の自己投入 の希求」との間に弱い正の相関がみられた (r = .25)。「趣味」と「過去の危機」「将来の自己投入 の希求」との間に弱い正の相関がみられた (rs = .28, .18)。「休息・解放」は同一性地位の各下位 尺度との間に有意な相関はみられなかった。 3.ひとりで過ごすことに関する3尺度の各下位 尺度すべてを説明変数、多次元アイデンティ ティ発達および同一性地位の各下位尺度を目的 変数とした重回帰分析 ひとりで過ごすことに関する感情・評価および 「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ/行動) が、アイデンティティ発達のプロセスにどのよう に影響しているかを検討するため、ひとりで過ご すことに関する 3 尺度の各下位尺度すべてを説明 変数、多次元アイデンティティ発達および同一性 地位の各下位尺度を目的変数とした重回帰分析 (ステップワイズ法) を実施した。ただし、同一 性地位の下位尺度である「過去の危機」について は、過去に自分の生き方に迷うような危機があっ たかについて問う内容であり、現在について尋ね ているひとりで過ごすことに関する 3 尺度よりも 時間的に先行する内容であると考えられるため、 重回帰分析は実施せず、ひとりで過ごすことに関 する 3 尺度の各下位尺度を統制した形で、ひとり で過ごすことに関する 3 尺度の各下位尺度との偏 相関係数を算出した。結果を Table 2 に示す。多 次元アイデンティティ発達および「過去の危機」 を除く同一性地位の各下位尺度いずれを目的変数 とした場合にも、決定係数は有意となった。 まず、多次元アイデンティティ発達の各下位尺 度を目的変数とした場合について述べる。「コ ミットメント形成」に対しては、「孤絶願望」か らの負の標準偏回帰係数 (β= -.24, p<.01)およ
が、「コミットメント形成」「コミットメントとの 同一化」「深い探求」「現在の自己投入」「将来の 自己投入の希求」に負の影響を及ぼしていた。 人と一緒にいることが苦痛だ 、 できることな ら、いつもひとりでいたい というように、極端 に他者との関わりを回避しようとする「孤絶願 望」が高いと、アイデンティティ発達が抑制され ることが示された。これは、「個人的活動への没 頭」の過ごし方が、いつもひとりでいたいという ような「孤絶願望」につながると、アイデンティ ティが抑制されるという増淵 (2014) のパス解析 結果とも一部共通する結果である。アイデンティ ティとは、他者や社会との関わりの中で自分自身 を位置づけていく側面を持つことから、対人関係 を極端に回避していると、 自分がすでに決めた 人生の目的が本当に自分に合うのかどうか、考え る という「深い探求」や、探求の結果としての 「コミットメント形成」「コミットメントとの同一 化」が難しくなると推測される。また、項目内容 が「深い探求」「広い探求」に近いと考えられる 「将来の自己投入の希求」や、「コミットメント形 成」「コミットメントとの同一化」に近いと考え られる「現在の自己投入」にも負の影響を及ぼす 部分がみられた。具体的には、「自己内省」の過 ごし方 (意味づけ) から多次元アイデンティティ 発達のすべての各下位尺度に対して正の影響があ り、特に探求の 3 下位尺度 (「広い探求」「深い探 求」「反芻的探求」) に対して影響が大きかった (βs = .39∼.51)。また、「自己内省」の過ごし方 は、同一性地位における「将来の自己投入の希 求」にも影響していた。「思考・内省」の過ごし 方 (行動) からも、「深い探求」に正の影響がみら れた。「趣味」の過ごし方 (行動) からは、「反芻 的探求」に対して正の影響がみられた。
考 察
本研究の目的は、ひとりで過ごすことに関する 感情・評価および 「ひとりの時間」 の過ごし方が、 アイデンティティ発達のプロセスとどのように関 連するかを検討することであった。相関分析およ び重回帰分析の結果をもとに、以下に考察する。 ひとりで過ごすことに関する感情・評価とアイデ ンティティ発達プロセスとの関連 重回帰分析より、「孤絶願望」の感情・評価 Table 2 ひとりで過ごすことに関する 3 尺度の各下位尺度を説明変数、アイデンティティ各下位尺度を目的変数 とした重回帰分析結果 (ステップワイズ法) 多次元アイデンティティ発達 同一性地位 コミットメント 形成 コミットメント との同一化 広い探求 深い探求 反芻的探求 現在の 自己投入 過去の危機 将来の 自己投入の 希求 β β β β β β correlationparctial β ひとりで過ごすことに関する感情・評価 孤独・不安 .09 充実・満足 .18* −.21** .25*** −.09 自立願望 .14 孤絶願望 −.24** −.31*** −.27*** −.30*** .13 −.24*** 「ひとりの時間」の過ごし方(意味づけ) 自己内省 .16* .19* .47*** .39*** .51*** .15 .40*** 自己解放 −.01 個人的活動への没頭 .01 ストレスからの解放 .06 「ひとりの時間」の過ごし方(行動」 思考・内省 .18* .22** 休息・解放 −.08 コミュニケーション −.07 趣味 .17* .05 R2 .08** .16*** .22*** .33*** .31*** .13*** .21*** 注)「過去の危機」のみ偏相関係数を記載 *p<.05,**p<.01,***p<.001らなる「自立願望」は、探求との関連が強いこと が示唆された。「ひとりの時間」の充実や自立を 模索する姿勢は、他者・社会の中での自分自身の 位置づけを模索する姿勢につながると考えられる。 「ひとりの時間」の過ごし方(意味づけ/行動) とアイデンティティ発達プロセスとの関連 重回帰分析の結果、「ひとりの時間」の過ごし 方 (意味づけ) の「自己内省」から多次元アイデ ンティティ発達のすべての下位尺度への正の影響 がみられ、特に、「広い探求」「深い探求」「反芻的 探求」「将来の自己投入の希求」という探求の次 元への正の影響が顕著であった。この結果から、 「ひとりの時間」に、人生や生き方、過去や将来 について考えたり、自分を見つめなおしたりする ことは、アイデンティティ発達のプロセスを促進 すること、また、コミットメント形成の過程とコ ミットメント形成後にそれを維持・熟考していく 過程の両方に寄与していることが示唆された。 「過去の危機」があることで「自己内省」「思考・ 内省」 をする頻度が高まり、それが 「広い探求」 につながり「コミットメント形成」を高める、ま た 「深い探求」 につながり 「コミットメントとの 同一化」を高めるという流れが推測される。 「ひとりの時間」の過ごし方の「趣味」は、「反 芻的探求」に正の影響を及ぼしていた。しかし、 相関レベルで見ると、「広い探求」「深い探求」と も正の相関がみられることから、「ひとりの時間」 に趣味に打ち込むことは、さまざまな探求を促進 する可能性が考えられる。 「ひとりの時間」の過ごし方 (意味づけ) 尺度に おける「自己解放」「個人的活動へ没頭」「ストレ スからの解放」からは、重回帰分析ではアイデン ティティへの有意な影響がみられなかった。しか し、「自己解放」「個人的活動への没頭」は、「広 い探求」「反芻的探求」「過去の危機」と正の相 関、「ストレスからの解放」は「反芻的探求」「過 去の危機」と正の相関がみられた。「過去の危機」 があることで、「ひとりの時間」にありのままの 自分で過ごしたり、好きなことに没頭したりする 頻度が高まり、このような姿勢が、適応的であれ 不適応的であれ、アイデンティティ発達プロセス の初期段階の探求のきっかけとなっていく可能性 が推測される。一方、「ストレスからの解放」は、 ことが明らかになった。 「充実・満足」の感情・評価は、「コミットメン トとの同一化」「現在の自己投入」に正の影響、 「反芻的探求」に負の影響を及ぼしていた。「充 実・満足」の感情・評価は、「個人的活動への没 頭」の過ごし方や (r = .45, p<.001)、「趣味」の 過ごし方 (r = .26, p<.001) とも有意な相関が見 られていることから、自分の目標や好きなことに 打ち込む時間として「ひとりの時間」を活用でき ていることで、「ひとりの時間」の過ごし方に充 実感や満足感を持ち、「ひとりの時間」を有効に 使えるようになったと感じていると考えられる。 また、探求の結果としての「コミットメントとの 同一化」「現在の自己投入」にも正の影響を及ぼ していたことから、「ひとりの時間」に充実・満 足感を感じられることは、アイデンティティ発達 を促進すると考えられる。この結果は、「個人的 活動への没頭」の過ごし方が、ひとりで過ごす 「充実・満足」感につながるとアイデンティティ を促進するという増淵 (2014) で得られたパスモ デルを支持するものであると言える。一方、「反 芻的探求」に対しては負の影響がみられた。「反 芻的探求」は、 どんな人生を進みたいのか、ど うしても考えてしまう などの項目からなり、中 間他 (2014) の研究においては、自尊感情と負の 関係に、抑うつ傾向と正の関係にあることが示さ れ、不適応傾向との関連が示唆されている下位尺 度である。「ひとりの時間」に「充実・満足」感 を感じられると、延々と考え続けてしまうような 不適応的な探求は少なくなることが示唆された。 「孤独・不安」「自立願望」の感情・評価から は、重回帰分析ではアイデンティティへの有意な 影響がみられなかったものの、相関レベルでは、 「孤独・不安」と「現在の自己投入」「将来の自己 投入の希求」との間に有意な負の相関、「自立願 望」と「広い探求」「深い探求」「反芻的探求」 「過去の危機」「将来の自己投入の希求」との間に 有意な正の相関がみられた。ひとりで過ごすこと に「孤独・不安」感が強いと、他者を気にせず に、自分の目標や好きなことに打ち込んだり、打 ち込めるものを探していこうとしたりすることは 難しいと考えられる。また、 「ひとりの時間」 を楽しめるようになりたい 、 友達と一緒でなく ても行動できるようになりたい といった項目か
中庸群は、増淵 (2014) の研究で高自立願望群 より発達的に後に出現すると推測され、「ひとり の時間」の発達の最終段階に位置づいており、 「自立願望」が達成され弱まり、「ひとりの時間」 の「充実・満足」感もほどほどに落ち着いた状態 である。この群は、アイデンティティ発達プロセ スにおいては、アイデンティティ発達の第二段階 として、コミットメント形成後にそれを維持・熟 考していく過程とされる「深い探求」とその結果 としての「コミットメントとの同一化」に焦点が 当たると推測される。また、これらを促すのは、 「自己内省」「思考・内省」の過ごし方や、ひとり で過ごすことの「充実・満足」感であることが示 唆される。 孤絶願望群は、「孤絶願望」 が高く対人交渉を嫌 悪していることを特徴とする群で、増淵 (2014) では、高自立願望の段階で、他者や社会と自分と のつながりや距離感がうまくつかめなかったり、 対人関係がうまく持てなかったりした場合に、陥 る可能性がある状態だと考えられている。この群 は、アイデンティティ発達のプロセスにおいては、 探求もコミットメント形成もコミットメントとの 同一化も抑制される特徴があると考えられる。 ひとり不安群は、ひとりで過ごすことに「孤 独・不安」感が高いことを特徴とし、他者の目を 気にせずに安心してひとりで過ごせないことか ら、アイデンティティ発達プロセスにおいては、 「現在の自己投入」や「将来の自己投入の希求」 が低くなると考えられる。 模索群は、自立願望の芽生えとアイデンティ ティの揺らぎを特徴とする群であり、アイデン ティティ発達プロセスにおいては、「自立願望」 の芽生えによって「反芻的探求」が高くなる段階 であると推測される。「広い探求」「深い探求」の ような建設的な探求にはまだ至らない段階で、自 分の人生についてぐるぐると思考をめぐらせなが らも、まとまりがつかない状態と言え、「ひとり の時間」も積極的に過ごそうとするがそこでの充 実感は低く、趣味に逃避している可能性もある。 以上より、①ひとり不安群:ひとりで過ごすこ とに孤独・不安感が高く、「ひとりの時間」を持 つ頻度も少ない状態であり、アイデンティティの 探求はまだ始まっていない段階→②模索群:ひと りでも過ごせるようになりたいという自立願望が 「ひとりの時間」の過ごし方の中でも、 人間関係 での精神的疲れをいやす時間 、 嫌なことを忘れ る時間 といった消極的な過ごし方であるため、 「広い探求」との関連はみられず、「反芻的探求」 とのみ関連がみられたと考えられる。 「ひとりの時間」の過ごし方 (行動) 尺度におけ る「休息・解放」「コミュニケーション」からは、 重回帰分析ではアイデンティティへの有意な影響 がみられず、相関レベルでも、「休息・解放」と アイデンティティ各下位尺度には有意な関連がな かった。しかし、「コミュニケーション」は、「コ ミットメントとの同一化」「深い探求」「将来の自 己投入の希求」との間に弱い正の相関がみられ た。「コミュニケーション」は、「ひとりの時間」 に SNS を使って、友人・知人とやりとりする 、 インターネットで発信する などの項目からな り、「ひとりの時間」にもコミュニケーション行 為をするという下位尺度である。弱い相関ではあ るが、「コミットメントとの同一化」「深い探求」 というコミットメント形成後にそれを維持・熟考 していく過程との関連がみられたことは、アイデ ンティティ発達の初期 (広い探求→コミットメン ト形成) よりも第二段階 (深い探求→コミットメ ントとの同一化) において、他者・社会との交流 やその中での他者・社会と自己とのすり合わせが 重要となってくることを意味しているのではなか ろうか。そのために、「ひとりの時間」にも積極 的にコミュニケーションを取る姿勢が出てくるの ではないかと推測される。 ひとりで過ごすことに関する感情・評価および 「ひとりの時間」の過ごし方(意味づけ/行動)と アイデンティティ発達に関する仮説モデルの検討 上記の考察について、増淵 (2014) の「ひとり の時間」と自我同一性の発達的変化の仮説モデル (Figure 1) を関連づけて考察すると、高自立願望 群は、「自立願望」が高いことを特徴とする群 で、アイデンティティ発達プロセスにおいては、 「広い探求」が中心となっている段階と考えられ る。したがって、アイデンティティ発達の初期段 階としての「広い探求」とその結果としての「コ ミットメント形成」に焦点が当たっていると言え る。また、これらを促すのは、「自己内省」の過 ごし方であることが示唆される。
て、さらに検討を深めることができると考える。
引用文献
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